『IMFと世界銀行の最前線』井出穣治/児玉十代子を読書。
IMFと世界銀行を知りたかったので選択。世界銀行はODA、ADBなどの開発支援機関の一つ。
お勧め度:☆☆(概要を知るには十分)
○IMFの概要
・IMFの役割は①火消的金融支援②サーベイランス(金融経済監視)③技術支援。
・金融支援にはコンディショナリティ(条件)が付される。
・加盟国に対しサーベイランスを行い、脆弱性が発見された場合、コンサルテーション(政策助言)する。
・技術支援は統計・財政・金融の専門家を派遣する。
・IMFの職員は、しばしば加盟国にミッション(出張)する。
・組織は地域局(アジア太平洋局など)と機能・特別サービス局(財政局、統計局など)に大別される。トップに専務理事、さらにその上に理事会が存在。職員数は約2500人。
○IMFの仕事
・政策助言は「ファイナンシャル・プログラミング」を基に行われる。
・「ファイナンシャル・プログラミング」で国民所得勘定、財政収支勘定、国際収支勘定、貨幣勘定の現状を調査し、将来を予測する。
・金融システムのコンサルティングは①金融システムの健全性②銀行監督・規制の制度設計の改善余地③開発支援の有効性をチェック。
・金融システムの健全性の監視に「金融セクター評価プログラム」を使用。
○IMFの今後
・2008年以降、加盟国を横並びで評価するエクササイズなどで経済・金融の脆弱性の監視を強化。
・インフレ率の安定は重要だが、不動産バブルを見落とすなどの疑問が呈されている。
・中南米は経常収支危機、アジアは資本収支危機なのにアジア通貨危機で同様の支援をし、タイ、インドネシア、韓国はトラウマに。チェンマイ・イニシアティブで通貨スワップ協定。
・理事会の投票権は出資割当額(クォータ)に準じ、改革中。
・経常収支の不均衡は重要課題。
○世界銀行の概要
・世銀は発展途上国の経済成長や貧困の撲滅を目標とする開発金融機関。国際復興開発銀行(IBRD)と国際開発協会(IDA)から成る。IRDBは新興国、IDAは低所得国が融資対象。他に姉妹機関としてIFC、MIGA、ICSIDがある。
・理事会が業務を監督・承認。職員は1万人以上。職員は地域とセクター(農業、教育、運輸など)のマトリックスで管理。
○オペレーション(融資業務)
・融資業務の案件は発掘→準備→審査→承認→実施・監理→評価のサイクルで行われる。準備で作成される審査調書は重要。
・中国は重要なクライアント。中国はスケジュール管理が上手でスピード感がある。
・案件の事業主はクライアント。世銀の役割は融資基準(技術基準、実施体制、投資効果など)を審査する事。
・案件に当たるタスクチームはリーダー、エンジニア、エコノミスト、専門家から成る。
・ミッション(出張)はクライアントが作成した報告書を精査する重要な仕事。
・案件の審査までに5段階のレビューを行う。
○世界銀行の今後
・環境変動への対応は世銀が誇れるナレッジ。
・案件の成功事例、失敗事例を刊行している。
・案件に最先端技術を取り入れるのではなく、クライアントに適した技術を取り入れるのが最良。
・ワシントンから現地への分権化が課題。分権化のメリットは迅速性だが、情報共有のデメリットがある。
・世銀の課題はコスト削減、財務見直し、組織改革。