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『会計ドレッシング』村井直志を読書。

企業における不正会計(粉飾、横領)の実例と監査方法、防止法などを解説。

不正会計は近年、複雑化・長期化・巨額化しているそうです。これも業績至上主義の影響かも。

会計に関係している人向け。

お勧め度:☆(専門的)

○ノリタケ
・子会社で25年間経理部門に所属した社員が3億7千万円を横領。中小企業の場合、公開義務がなく、表沙汰になる事は少ないが頻度は多い。
・資本金5億円以上の会社は、会計監査人の設置を義務付けられている。

○ローソン
・チケット販売子会社が不正会計。やり手専務がプレジール社に協賛金を横流し、賄賂を受ける。エンタテイメント業界特有の「前払精算」が温床に。
・公認会計士は試査(サンプリング)で監査している。
・角界の八百長はデジタルフォレンジックで発覚。

○広島ガス
・税務署職員の指摘で子会社の循環取引が発覚。経営管理者が猜疑心を持っていれば、架空売上計上を回避できた可能性がある。
・循環取引は通常の商流取引と違い、起点・終点がない。取引を停止した瞬間、巨額な損失が発生する。

○アジア航測
・J-SOX導入時の内部監査で期間帰属処理の不正が発覚。売上計上基準は「納品基準」を採用していたが、判断・運用基準が全社的に統一されていなかった。防止策として納期間近での仕様変更は専門家に相談する。
・過度の業績至上主義は不正会計をもたらす。

○近鉄
・近鉄の子会社で横領と不正会計が発覚。社員は管理者から与えられた特権IDを使い11億円を横領。
・この横領を契機とした社内調査で、別子会社の粉飾決算が発覚。当子会社の社長は強烈な個性を持っていた。また業務システムと会計システムの連動を改造していた。

○フタバ産業
・監査法人が仕掛品と建設仮勘定の増加を指摘。6期合計で1千億円の減益修正に。経理部門が多忙で、本勘定への振替がされていなかった。現場と経理部門間のコミュニケーション不足と会計リテラシーの不足が原因。改善策はBSでの著増減分析など。

○メルシャン
・ノンコア事業(水産飼料事業部)で不正会計が発覚。水産業界特有の業者との「貸し借り」がエスカレートし循環取引に。生物管理は難しい。
・架空取引(循環取引など)の検知は予算実績差異分析、顧客毎の回転分析、売掛金の年齢調べが有効。

○シニアコミュニケーション
・上場を目指す社長、営業担当、財務担当は成長性をアピールするため、滞留売掛金、架空費用、長期売上債権、残高確認書などで不正を繰返す。売上計上基準は「進行基準」を採用。
・IPO、MBOにはそれぞれメリット、デメリットがある。

○ビクター
・ケンウッドとの合併前、欧州販社のリストラ会議で販売促進費の先送りなどの不正会計が発覚。韓国産ディスプレイに苦戦し不正に至った。
・日本と文化が異なるため海外では現地の公認会計士を活用する。特殊取引スキームの場合「仕訳テスト」で異常点を確認する。

○本田技研工業
・水産物の「預かり在庫取引」をする子会社で循環取引が発覚。水産業界特有の「持ちつ持たれつ」があり、またジョブローテーションもなかった。
・循環取引検知のポイントは、環境悪化なのに増収増益、ヒアリング、取引相関図、在庫状況、取引先の状況など。

○不正発生のメカニズム
・不正会計には粉飾と横領がある。発生の根源は①動機②機会③姿勢・正当化。
・粉飾における①動機には業績低迷、過大なプレッシャー、②機会には事業特性、監視活動の不備、③姿勢・正当化には経営者の不正に対する態度などがある。
・上場企業でも不正が発生するのは、内部統制の対象を重要性の高いグループ会社や取引に限定しているため。

○不正防止
・粉飾の兆候は①異常値の発生②不誠実な態度③うま過ぎる話。横領の兆候は①金にルーズ②不誠実な態度③身分不相応な生活。
・文豪ゲーテも福沢諭吉も複式簿記を絶賛。
・不正防止のための七つ道具は①モニタリング②コミュニケーション③ジョブローテーション④ダブルチェック⑤クロスチェック⑥コンプライアンス⑦ガバナンス。
・不正防止のための意識改革は①会計リテラシー②モラル。

○不正発覚
・発覚するパターンは①会計監査人の指摘②社内監査③人事④日常業務⑤密告⑥自主申告。
・不正調査は①情報の収集②情報の分析③仮説の構築④仮説の検証で実態解明。手続は①書類・証憑の確認②ヒアリング③メール分析④データ解析⑤外部への調査など。
・ヒアリングでは相手に反感を抱かせない、犯罪用語を使用しないなどに注意。
・不正により金融商品取引法や会社法に規定された行政処分や刑事罰を受けます。また損害賠償義務を負います。
・2010年度にコンプライアンス違反で倒産した会社は115社、うち48社が不正会計。

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