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『黒田日銀 最後の賭け』小野展克を読書。

デフレ脱却のための異次元緩和を解説。今年1月のマイナス金利導入は記述なし。
異次元緩和を多方向から解説している良書。

お勧め度:☆☆☆

○デフレ脱却
・人がモノやサービスへの欲望を失いデフレに、それがスパイラル化し長期デフレに。異次元緩和は円の価値を傷付け、モノやサービスへの欲望を取戻す。
・量的緩和は金利誘導でなくマネー量の調整なので「非伝統的政策」。
・異次元緩和実験のポイントは、量的緩和の実証と「出口」の成否。
・独国は第一次大戦後、巨額の赤字国債を中央銀行が引受けハイパーインフレに。日本も第一次石油ショック後、消費者物価指数(CPI)が26%増となった年がある。

○黒田総裁の誕生
・2003年速水総裁は量的緩和開始。06年CPIのプラス化で量的緩和解除。
・本田悦朗は2000年ゼロ金利解除した時、米エコノミストから批判されリフレ派(緩慢なインフレを継続)に転換。安倍は山本幸三、浜田宏一、高橋洋一の指南でリフレ派に転換。
・2012年9月自民党総裁選で安倍は「外交・安保、経済の安倍」をアピールし総裁に。12月安倍総裁は金融政策/財政政策/成長戦略を掲げ衆院選で勝利し首相に。本田は内閣官房参与に。
・日銀総裁候補に武藤敏郎、岩田一政等が挙がったが、国際性が重視され黒田東彦に。
・総裁の決定は衆参両院の同意が必要。2013年4月黒田総裁決定は渡辺みんなの党代表の協力があった。

○略歴
・東大法学部で法哲学を専攻。1967年大蔵省に入省。第一次石油ショック時、外国為替管理法による資本規制を担当。75年IMFで活躍。78年主税局調査課で消費税の経済効果を分析。99年財務官(ナンバー2)に就任。03年リフレ派バーナンキと意気投合。

○日銀
・中央銀行の役割は①通貨に信用を与える②銀行の銀行。リーマンショック時はCPや社債を購入し急場をしのぐ。日銀法では「物価の安定」が使命。無担保コール翌日物市場で短期金利を操作。
・非伝統的政策には①量的緩和②時間軸政策③リスク金融商品の買上げがある。
・1993年「中央銀行の独立性が高い程、インフレ率が低い」が論文発表され、独立性を高める事が潮流に。97年日銀法が改正され、独立性が高まる。
・日銀の政策委員会は総裁、副総裁2人、審議委員6人で構成。
・1882年松方正義大蔵卿の建議で日本銀行創立。
・1929年浜口雄幸首相、井上準之助蔵相が金解禁(金本位制復帰)、世界恐慌で円高となり輸出が大打撃。31年犬養毅首相、高橋是清蔵相が金本位制離脱、国債引受けで景気回復。
・1942年日銀法制定。戦時統制色が強く、赤字国債を引受けインフレに。
・1971年ニクソンショック、73年第一次石油ショックに日銀は対応。
・1985年プラザ合意、87年ブラックマンデーによる金融緩和で資産バブルに。三重野総裁は5回の利上げでバブルを潰す。
・「金融政策はインフレには有効だが、デフレには効果がない」が日銀の伝統的な考え方。藻谷浩介、河野龍太郎は「デフレの原因は少子高齢化による需要不足」で、リフレ政策に批判的。
・「出口」の方法は①国債の売却②短期金利の引上げ。国債を売却すると価格急落の恐れがある。

○異次元緩和の成否
・1998年デフレが始まる(CPIがマイナスに)。99-00年ゼロ金利政策を開始。01-06年量的緩和を開始。10年リーマンショック後、包括緩和(REIT、ETF等のリスク資産を購入)を開始。
・2013年4月金融政策決定会合で量的・質的金融緩和を決定(黒田バズーカ)。CPI2%増を目標とし、マネタリーベースを2倍、リスク資産の購入も増やす。市場に衝撃。しかし国債市場の評価は錯綜し、国債価格は下落し長期金利が上昇。
・2014年4月消費増税。5月発表1-3月GDP速報値は駆け込み需要で年率5.9%増。8月発表4-6月GDP速報値は年率6.8%減と大幅に落込む。黒田総裁は「日本経済は着実に回復」と強気発言。10月シェールオイルの増産で原油安に。デフレ脱却シナリオに打撃。
・2014年10月金融政策決定会合で追加緩和を決定(黒田バズーカ第2弾)。同時に政府はGPIFの国内株式投資増大を発表。FRBは量的緩和終了を発表。市場に衝撃。
・2014年11月安倍首相は消費再増税延期で衆院解散。議席増で政権基盤を盤石に。
・2015年4月目標(CPI2%増)達成時期の後ろ倒しを発表。円安、雇用改善、賃金上昇で市場からの批判なし。
・2015年8月中国経済減速リスク、FRB利上げ観測で市場混乱。
・「出口」の議論は時期尚早だが、市場が混乱する恐れがある。
・2015年3月リフレ派原田泰が、6月布野幸利が審議委員に就任し、黒田体制が強固に。
・本田内閣官房参与は日銀法改正(雇用の最大化を目標に追加。インフレ目標を政府が定める)を指摘。

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