『右肩下がりの君たちへ』佐藤優を読書。
5人の知識人にそれぞれ情報、希望、家族、変化、いじめについてインタビュー。
大半の知識人はTV討論などで知っていたが、知らない知識人もいた。各知識人の著作も読みたい。
日本は成熟社会で悲観する事はないが、課題ありと思った。
お勧め度:☆☆
○情報-津田大介
・著者はメルマガの開始時『堀江貴文のブログでは言えない話』『津田大介のメディアの現場』を参考。堀江は個人の意見に対し、津田はチームで情報を仕分け。津田の原点は雑誌『SPA!』のライター。情報源は人4割、新聞・書籍・公式資料3割、ネット3割。
・スノーデンは純粋が故に暴露。彼はアナーキストでありプーチンは嫌っている。ネット・セキュリティは国家権力にとっては無いに等しい。
・ツイッターはニュース・ネットワークとして定着。SNSの流行でエコーチェンバー現象(自分の意見が多数意見と誤解)が発生。
・津田は東浩紀、開沼博等と自主メディアの作成へ。雑誌の編集部の様に後進が育っている。
・日本は悲観する事はない、他人との信頼関係構築を大切に。
○希望-古市憲寿
・東大の「希望学」は、希望は個人でなく社会の問題として捉える。
・ブータンは幸福の国と言われるが、情報を遮断した独裁国家。
・ピースボート等で海外に出て「自分探し」をする人がいるが、自分をよく知る母にインタビューするのが一番。
・古市はアソシエーション(ある目的で組織を結成)でなくコミュニタリアン(共同主義者)。加藤秀俊『メディアの発生-聖と俗をむすぶもの』に感動、将来は古層に関する本を書きたい。希望は持つものでなく、持たされるものと考える。
・著者は英国で階級社会を実感。露国ではトイレットペーパーが買えた時の感動を忘れない。買いたい物を壁に貼り、3ヶ月後に残っていたら購入。
・北欧も物不足。高福祉高負担だが国家権力が強く警察国家で「国家フェミニズム」。
・日本の格差社会が階級社会に変わる事を恐れる。就職難・結婚難の団塊ジュニアが高齢化する30年後、都心が高齢者スラムに。
・日本には知(新聞、書籍)を求める人が多く、可能性は高い。
・古市は身近で心地よいコミュニティを肯定。今存在する希望に気付かないのは勿体ない。
○家族-萱野稔人
・恋愛結婚は物々交換と考える、今日結婚難なのは求め合うモノが弱くなったため。
・企業は利益追求で家族を養う分の賃金をカット。日本人の多くがサラリーマンになり、家庭が職場でなくなった。安心して仕事を任せられるのは自営業の子女だった。
・著者は移民でゲートシティが生まれる可能性がある。萱野は日本で働くメリットがないため移民は来ない。
・中国は経済成長率の維持のため過剰投資でバブルが懸念される。
・日本人の海外就職は戻る事ができなくなる片道切符。海外で共同体に属さないのは生存リスク。
・結婚は奪い合いを止めるための儀式。最終的なセーフティネットである家族で信頼を得ることが最良の幸せで人生の目的。結婚前の同棲を勧める。
・不倫は絶対だめ。離婚は結婚の3倍のエネルギーを必要とする。
○変化-木村草太
・安倍政権は「日本が侮辱されている」と怒ってる、また忠誠心を重視。内閣官房長官補・兼原信克、国家安全保障担当・谷内正太郎が安倍政権を動かす。
・憲法学の歴史は100年程で若い。ナチスはワイマール憲法の改正でなく憲法解釈や法律の修正で対応。
・安倍政権なので排外主義者が目立たない。ヘイトスピーチ禁止法案は注目されたり金が集まったりで逆効果。放置すれば消滅する。間違った言説は淘汰されるが、政治権力の言説は異なる。
・外交官はウィーン条約で保護されるが、著者は密漁問題でロシア警察官に殴打される。
・橋下大阪市長の「行政が民事訴訟を支援すべき」に賛成。市民は法の知識に乏しい、木村さんの様な信頼できる専門家から憲法・法律を学んでほしい。分からないと言えなかったり、意見がコロコロ変わったり、後出しジャンケンで説明する専門家は信用できない。書評も参考になる。
○いじめ-荻上チキ
・いじめは昔から世界中に存在。被害者にはソーシャルスキルが必要。著者は外務省でトイレ掃除等のパワハラを経験。
・被害者は組織から退出し加害者のみ残り「この組織は健全な場所」となる。いじめは高ストレスの閉鎖空間で発生。体育会系の根性論は無用。
・いじめは人間の攻撃性と快楽性が原因。文部省に本気でいじめ対策させるには出世を餌にするのが最良。文部省はいじめの統計化を。対策には根本治療と対処療法がある。監視にはスクールガーディアン制度(生徒からの報告)が有効。
・日本の将来は知的エリートに期待。