『本当は分裂は避けられない!? 中国の歴史』八幡和郎を読書。
中国の古代から現代までの国の興亡や民族を解説。
ウイグルは歴史的に見れば中国だが、民族自決の観点から独立が許される。チベットはローマ教皇の様な立場。
中国に早急な民主化を要望。
お勧め度:☆☆(大変詳しい)
○文明、支那・中国、漢字
・モンゴロイドには南方系と北方系があり、数千年前に北方系が南下し黄河文明を興した。長江流域からも遺跡が発掘される。
・夏(前2224年~)の存在は不確実、殷(商、前1766年~)の存在は確実。
・「支那」の起源は古代インドが「チーナ」と呼んでいた為。「中国」は1905年孫文が中国革命同盟会を結成してから。
・漢字は大雑把で、助詞、時制、単数複数がない。発音も変化し「明」は呉音(南北朝)で「みょう」、漢音(唐)で「めい」、唐音(宋以降)で「みん」。
○民族、辛亥革命
・中国は5族(漢、満州、モンゴル、ウイグル、チベット)を56民族に細分。漢民族が94%を占める。
・1911年10月10日武昌蜂起。12年1月1日孫文が中華民国成立を宣言。3月10日袁世凱が臨時大総統に。
○夏・殷(商)・周
・黄帝を含む三皇五帝の神話がある。
・夏の創始者禹は息子啓に王位を譲り、以降世襲に。
・前1766年殷の天乙が夏を滅ぼす(易姓革命)。殷後期の首都殷墟は漢方薬の化石から発見。
・前1122年武王が殷の紂王を討ち、周を建国。
・前771年周は内紛で東西に分裂、首都が鎬京から洛陽に移り東周(春秋・戦国)時代に。春秋五覇者、戦国七雄が存在。長江以南に楚(湖南・湖北省)、呉(江蘇省)、越(浙江省)が栄える。「呉越同舟」「臥薪嘗胆」などの故事が生まれる。日本人は呉の子孫と云われる。
○秦・前漢
・始皇帝が中国統一、郡県制(中央から代官を派遣)で統治。焚書坑儒には批判。
・楚の項羽と漢の劉邦が争う。劉邦が勝利し郡国制(諸侯に領地を分与)で統治。儒教、農業重視。7代武帝は「呉楚七国の乱」、匈奴を平定、楽浪郡を置く。シルクロードで仏教伝来。
○後漢・三国・晋・南朝
・洪武帝が後漢を再建。後漢は宦官、外戚、道教一派「太平道」の「黄巾の乱」で衰退。
・魏の曹操は合理主義者で詩人。220年子の曹丕は後漢の献帝から禅譲。蜀の劉備、諸葛亮は人気がある。孫権が呉を建国、武将の連合体で海外との交易が盛ん。
・265年司馬炎が魏から禅譲され西晋を建国。316年西晋は匈奴に滅ぼされ、翌年司馬睿が建康(南京)に東晋を建国。南朝(宋、斉、梁、陳)の首都は建康。
・後漢洪武帝は奴国に金印を贈る。邪馬台国卑弥呼は魏から銅鏡100枚を授かる。266年邪馬台国壹與が西晋に朝貢。
・413年「倭の五王」讃(仁徳)が東晋に朝貢。451年「倭の五王」済(允恭)は百済を除く朝鮮半島の宗主権を宋から認められる。北方民族に追われた漢文化(服装、食事作法、正座、儒学、切腹)が日本に伝わる。仏教は東晋から百済、さらに6C百済聖明王が日本に伝える。
○五胡十六国・北朝・隋
・匈奴、鮮卑など五胡は羌のみ現存。
・398年道武帝が北魏を建国、3代太武帝が華北統一。東魏、西魏に分裂、それぞれ北斉、北周に禅譲。
・589年楊堅が禅譲され隋を建国。科挙制、府兵制、均田制など中央集権化。三省六部は三権分立。運河建設。
○唐
・618年李淵は隋から禅譲され唐を建国。2代太宗は中国最高の名君と云われ、突厥などは喜んで配下に。3代高宗の皇后則天武后は中国で唯一の女帝。
・660年百済滅亡、百済王族が日本に亡命。日本は遣唐使で中国文明(文字、律令体制)を受容。
・9代玄宗は安定期を演出。地方は節度使が指揮する藩鎮で安定。楊貴妃、節度使安禄山、史思明が関係する「安史の乱」(755~63年)が起こる。文化的にも全盛期で李白、杜甫、王維が活躍。仏像が大量の銅を使用する為、仏教より道教を重視。
○五代十国・宋・遼・金
・唐は「黄巣の乱」で衰退、907年朱全忠は唐を滅ぼし後梁を建国。五代は後梁、後唐、後晋、後漢、後周で首都は開封(後唐を除く)。
・960年後周の武将趙匡胤(太祖)が宋を建国。宋は科挙制を完成させ官僚国家に、中国で経済が最も発展した時代。
・907年耶律阿保機は契丹(後に遼)を建国。遊牧民は北面官、農耕民は南面官が支配(最初の征服王朝)。
・1115年女真族の完顔阿骨打は遼から金を独立。25年遼を滅ぼし、27年「靖康の変」で宋を滅ぼす。その後は南宋と争う。太宰大弐の平清盛は南宋と交易。
○元・明
・テュルク語、モンゴル語、ツングース語(満州語)、朝鮮語、日本語はSOV型(主語-目的語-述語)。
・1234年モンゴルのチンギスを継いだ2代オゴタイは金を滅ぼす。71年4代フビライは元を建国、76年南宋の首都臨安に入城、南宋を滅ぼす。
・918年高麗建国。1259年モンゴルに降伏。「文永・弘安の役」で元寇に参加。1388年李氏朝鮮が興り、明に朝貢。「文禄・慶長の役」で秀吉と戦う。
・1368年白蓮教徒「紅巾の乱」のリーダー朱元璋は南京に明を建国。3代永楽帝は北京に遷都、独裁強化。
・明は朱子学を絶対視し、科挙で八股文を強制。紫禁城、定陵を建設、万里の長城を改修。娯楽性・社会性の高い文学が生まれる(『金瓶梅』『西遊記』『三国志演義』『水滸伝』)。宦官鄭和は巨艦で7回海外遠征。勘合貿易に限定し第2次倭寇が起こる。
○清
・明に攻められ大都を放棄したモンゴルは北元(タタール)として存続。
・1616年満州族(女真族)ヌルハチは後金を建国。2代ホンタイジは北元のハーンから玉璽を献上され、36年大清帝国に改称。
・李氏朝鮮は明・清に朝貢。琉球王国は明・清と徳川幕府に朝貢。
・中国で尊敬される皇帝は唐太宗、清4代康熙帝、5代雍正帝。康熙帝は「三藩の乱」を鎮圧、『康煕字典』を編纂。雍正帝は「奏摺」を精読、軍機処を設置。
・6代乾隆帝は新疆ウイグル、チベット、台湾を支配し領土が最大。『四庫全書』を編纂。四大名著『紅楼夢』が著される。
○清末・中華民国
・1842年清はアヘン戦争の南京条約で賠償金、香港割譲、上海開港を負う。アロー戦争の58年天津条約、60年北京条約で公使の北京駐在、キリスト教布教、アヘン輸入、天津開港を負う。51年キリスト教「太平天国の乱」が発生、郷勇曽国藩が鎮圧。
・清は洋務運動、「戊戌の変法」で近代化を試みるが挫折。伊藤博文を顧問に迎える案もあった。
・1905年孫文は中国革命同盟会を結成、三民主義を掲げる。12年中華民国成立を宣言、孫文は大総統に。16年袁世凱が皇帝に就くが死去。
・1924年北洋政権打倒から第1次公共合作。26年蒋介石は北伐開始、27年国民党右派で南京国民政府を樹立。32年日本は宣統帝溥儀を擁立し満州国を建国。36年「抗日」から第2次公共合作。37年盧溝橋事件で全面戦争に、共産党の八路軍は本格的な戦闘を避ける。
○中華人民共和国
・1949年毛沢東は中華人民共和国の建国を天安門で宣言。50年朝鮮戦争勃発、ソ連の参戦なく義勇軍で米国と互角に戦う。53年五ヶ年計画を開始。58年第2次五ヶ年計画(大躍進)開始、餓死者1千万人を出し失敗。
・1960年頃は自由主義は福祉・教育で劣り社会主義と拮抗。
・1966年紅衛兵が暴走、劉少奇、鄧小平を追放(文化大革命)。76年毛沢東死去。77年新首相華国鋒が江青夫人ら4人組を逮捕し終結。
・1978年鄧小平は大平正芳から傾斜生産方式を教授され改革開放を確信。
○民族・領土問題
・中国にはチベット、ウイグルの民族問題、南沙諸島、尖閣諸島、台湾、香港の領土問題がある。
・大乗仏教は高度に発達しチベット仏教に。630年吐蕃建国。1720年清がダライ・ラマ七世を擁しラサを占領。1904年清の宗主権を認めるラサ条約締結。
・1755年清の乾隆帝がジュンガル部を併合。1844年新疆省を設置し直接統治、今は新疆ウイグル自治区。
・1997年香港は50年間一国二制度で特別行政区に。
・台湾は本省人(戦前から居住)85%、外省人(戦後大陸から移住)13%。
・満州には朝鮮族自治区、沿海州の問題がある。
○エピローグ
・1978年鄧小平が最高権力者になり改革開放を開始。89年天安門事件で趙紫陽が失脚。中国経済の発展は朱鎔基首相の功績が大。
・世界で指導的な役割を果たしたいなら、中国は民主化を断行すべし。