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『マネー経済学』松原淳一を読書。

日本の金融と経済状況を解説。分かり易いので、金融の入門書に最適。

お勧め度:☆☆☆

○マネー構造
・1990年代前半までGDPとマネーストックは同規模だったが、GDPは頭打ちに、マネーストックは増加。これは実物経済は停滞、金融経済は拡大を意味する。
・金融資産-企業は高度成長期は設備投資で資金不足だったが、今は資金余剰。家計は資金余剰が続いたが、高齢者が増え縮小傾向。政府はバブル崩壊以降、大幅な資金不足。日本は長年の海外投資で対外純資産は世界最大。
・投資対象-高度成長期は設備投資、バブル期は資産投資、米国バブル期は外債投資、今はキャッシュ。キャッシュ選好で日本経済は安定。
・2013年異次元金融緩和(マネタリーベース、国債保有の増加)で溢れた資金がどこに向かうかが重要。

○企業の資金
・バブル崩壊以降、企業売上は停滞、利益率は低下。今は3/4の企業が納税していない(欠損法人)。
・日本のROAは3%、新興国は10%以上。日本では投資せず、現預金、対外直接投資、対外証券投資が増加。企業の成長力は低下したが、安定性は増した。
・金融機関の預金は増加、融資は減少。住宅ローンの獲得競争が激化。メガバンクは海外融資が拡大。
・日本株式の売買は半分以上が海外投資家。海外ファンドマネージャーは為替レートに機敏に反応し株式売買。

○家計の資金
・家計(含む個人事業主)の金融資産は1510兆円。ただし資産超過になるのは50代以降。直接金融(株式、債券)は少なく、間接金融(預貯金、保険)が多い。
・勤労世帯の貯蓄率は安定、高齢世帯の貯蓄率はマイナス。今後高齢世帯が増え貯蓄率はマイナスに。

○政府の資金
・財政赤字額は1997年GDP比100%、2011年GDP比200%、世界で突出して高い。財政支出はGDP比42%で標準的だが、税収はGDP比15%で世界最低レベル。税収が少ないのが問題。
・金融機関は多量に国債を購入するが、それでも資金余剰。
・財政出動すると景気回復し税収が増える(ケインズ理論)とされていたが、景気回復せず巨額な債務残高が残った。
・国債を消化しているのは企業・家計の余剰資金。しかし企業の競争力は低下、家計は高齢化で資金が減少、国内で消化できなくなる。その時は大幅な金利上昇に。
・デフレ脱却(物価上昇)は税収増と金利上昇となるが、財政改善するかは不透明。
・増税方法として①消費税②相続税③金融資産税(貯蓄課税)④インフレなどが考えられる。

○日銀
・日銀券の単価は1枚13円。ただし利益は政府に納付。
・金利自由化前は公定歩合操作、預金準備率操作、公開市場操作で金利調整。自由化後は公開市場操作で金利調整。
・2001~06年量的金融緩和を実施。マネタリーベースを増やしても貸出は増えなかった。
・日米の実質金利(物価上昇を加味した金利)は日本が1.74%高く円高。円安になると輸入物価が上昇し、企業物価・消費者物価も上昇する。
※円安→物価上昇→実質金利低下→さらに円安→?
・2013年物価目標(上昇率2%)を公表、経済界の「期待」に働きかけた。
・2013年異次元金融緩和を開始(①操作目標をマネタリーベースに変更②国債の保有増加③ETF、J-REITの保有増加)。溢れた資金がどこに向かうか、デフレ/キャッシュ選好は終焉するか、出口戦略は問題ないかは不透明。

○為替
・2008年リーマンショック後、安全資産の円に世界の資金が流れ円高(70円台)に。
・2012年野田首相が解散総選挙、次期安倍政権の金融緩和が期待され円安に。13年物価目標(上昇率2%)の公表で円安(100円台)に。
・日本の貿易収支は減り所得収支は増えている。2005年所得収支が貿易収支を上回り、貿易立国から投資大国に。
・為替取引33.2兆円中、貿易取引は0.6兆円、大半は資本取引。為替(安全資産の円)は世界金融経済の影響を強く受けるようになった。
・為替の決定理論は長期は購買力平価、中期は経常収支、短期はアセットアプローチ。購買力平価にはビックマック理論、実質実効為替レートがある。為替には日米金利差(米国金利)が大きく影響。米国金利が上昇すると米国への投資が増え円安に。為替は資本収支で決まる時代に。

○まとめ
・日本経済は安定・停滞しているが、企業が競争力を失い、家計の貯蓄がマイナスになると国債を国内で消化できなくなり、国債は下落します。円安になりデフレ/キャッシュ選好時代は終焉します。
・アベノミクスによる異次元緩和で溢れた資金がどこに向かうかが重要。

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