『外国人が見た日本史』河合敦を読書。
外国人が残した日本に関する記録を、5章(古代・中世、戦国、江戸、幕末、近代)に分けて紹介。
日本文化の流れや日本人の性格が分かります。
好奇心が強い、勤勉、冷静など日本人の性格は昔と変わっていないと感じます。
お勧め度:☆☆
○古代・中世
・概説-4C後半から大和政権は南朝鮮を巡り高句麗と戦う。538年仏教伝来、以降古墳に代わって寺院を建立。平安時代、摂関政治が行われ、やがて武士が台頭。朝鮮では李朝が興り、中国では元が明に代わり、倭寇が跋扈。
・『魏史』-連合国の邪馬台国、女王卑弥呼・壱与の記述。風俗(服装、食事)、制度(身分、一夫多妻、重い刑罰)の記述もある。
・好太王碑-404年高句麗が南朝鮮で日本に勝利。
・南北朝『宋書』-478年武(雄略天皇)は安東大将軍倭国王を名乗る。
・『隋書』-600年文帝が遣隋使を諭したと隋側に残る。607年遣隋使小野妹子の「日が昇る国・・」で煬帝は激怒。
・日本は中国の律令制を模倣したが科挙は導入せず。しかし「蔭位の制」で貴族は世襲。
・フビライに仕えたマルコ・ポーロは『東方見聞録』に黄金の国と記す。
・1266年フビライは国書を送るが北条時宗は無視。74年元寇が起こる。
・1402年日本を訪れた朝鮮人宋希璟は三毛作、海賊に驚く。平安時代に開墾は終わり、鎌倉時代に二毛作、室町時代に三毛作と生産性を高めた。耕作に向かない対馬・壱岐・松浦は倭寇の本拠に。
○戦国
・概説-1455年鎌倉公方が関東管領を討つ、67年応仁の乱起こる(戦国の始まり)。1543年ポルトガル人来航、鉄砲/キリスト教が伝わる。戦国大名は盛んに鉱山開発。92年海外進出を図る秀吉は朝鮮出兵、陶工を連れて帰る(有田焼、薩摩焼、萩焼)。
・宣教師ザビエル-欧州の騎士は大砲などで権威を失うが、日本の武士は権威を持ち、武器を重んずるのに驚く。
・宣教師ルイス・フロイス-信長は性急、激昂、家臣の忠言を聞かないなどワンマン。光秀は信長に贈与するなど狡猾。
・朱子学者姜沆(朝鮮出兵で捕虜)-日本人は熱しやすく冷めやすい、起請文から信心深いと記す。「天下一」の流行、下剋上の世の中を記す。農民は米でなく雑穀を食べ、仏教から肉食せずと記す。欧州から輸入した南蛮菓子(カステラ、金平糖、ビスケット)は希少だった。
○江戸
・概説-1639年ポルトガルを締出し、欧州では蘭国のみと貿易。生糸・絹織物・砂糖などを輸入、金銀銅・陶磁器を輸出。商館員は私貿易で蓄財。朝鮮とは釜山の倭館で貿易。生糸・朝鮮人参の国産化で衰退。最大の貿易相手は明・清で金銀銅を輸出。中国の貨幣を支えた。
・商館長カロン-1636年伊達政宗死亡時、20名殉死。51年家光死亡時も数名が殉死。4代家綱で殉死禁止。「三行半」は再婚許可状(離婚証明書?)。江戸は女性が少なく、5、6回結婚する例も。離婚したいがため家事を怠ける例も。若い女性は自由だった。
・蘭国医師ケンペル-日本人は大変礼儀正しい。貿易は年1回で商館員は江戸参府が楽しみ。江戸では日本人学者と接触。商館長は「和蘭風説書」を幕府に提出。『日本誌』は欧州でベストセラーに。
・ロシア軍人ゴロウニン-18C「教育爆発」が起き、19C就学率は70%以上に。
・朝鮮通信使申維翰-歌舞伎の若衆が男娼に。
・蘭国医師ツュンペリー-日本各地に遊女が。遊女の頂点の花魁(太夫)は偉大なホステス。畳は日本固有で大きさは統一、全ての部屋に畳が。微罪でも死刑で親族にも及ぶと驚く。米国公使ハリスが治外法権を要求したのは厳罰のため。
○幕末
・概説-1853年米国ペリー提督の来航から幕末が始まる。これは18C末英国産業革命による大量生産・大量消費が原因。日本は貿易によりインフレとなり、庶民は尊王攘夷運動が盛んに。英仏は横浜を極東の重要拠点に。ペリー来航から15年で幕府は崩壊。
・ペリー、英国公使オールコックは日本の技術力に関心。ペリーは蒸気機関車のミニチュアを送るが、1年後佐賀藩が本物を製作。プラントハンター・フォーチュンは日本は草鞋を履かせていたが蹄鉄を直ぐに真似たと驚く。蘭国医師シーボルトは幕臣の好奇心を利用し伊能図を入手。
・ペリー、オールコックは相撲に批判的。シュリーマン(トロイア遺跡を発見)は正座なので机が不要、食後の片付けが素早いと感嘆。
・米国公使ハリス、米国通訳ヒュースケンは富士山に感動。仏国軍人スエンソンはどこに行っても富士山に出会うと記す。
・ヒュースケンは台風後の日本人の冷静な対応に驚く。1855年安政大地震は幕府のせいにされた。江戸は明暦の大火など、頻繁に大火が発生。「自然に逆らっても仕方がない」「宵越しの金は持たない」などが日本人の観念となる。
・ヒュースケンは西洋化は日本に悪徳を持ち込むと記す。ハリス、オールコックは日本人は幸福であると記す。
○近代
・概説-1894年朝鮮を巡り日清戦争、1904年満韓交換で日露戦争。列強と同様、朝鮮・満州を植民地化し帝国主義に。37年盧溝橋事件で全面戦争に。45年降伏。
・米国作家シドモア-日本人は桜に関心が高い。享保以後、上野、飛鳥山、御殿山、隅田堤が名所に。
・英国旅行家イザベラ-福島・新潟の県境で極貧の農民に出会う。
・小泉八雲-日本人は洗練されており、利己的な西洋化を憂う。
・1881年ハワイ国王カラカウアは日本を訪れ、後継者の婿に山階宮親王を要望。また移民を歓迎し人口の4割が日系に。93年王朝は倒される。
・独国医師ベルツ-1889年帝国憲法発布で市中が騒ぎ。憲法は天皇主権なのに自由民権家が批判しないので不思議がる。ただし大正時代は今に近い政党政治に。
・独国建築家タウト-日本に亡命。伊勢神宮の式年遷宮に感嘆。式年遷宮の理由は技術伝承、腐食防止など。
・米国国務長官ハル-1941年11月26日開戦を覚悟し厳しい条件のハル・ノートを掲示。12月7日米大使館は最終14部の清書に手間取り手交が遅延。日本の最後通告を批判。
・米国学者ベネディクト-日本人は恩を忘れない。
・マッカーサー-昭和天皇の紳士的態度に感動。
・アインシュタインの平和活動(核廃絶など)は湯川秀樹らに引き継がれる。
・孫文-日本は十数年で欧米に追付いた。日本に劣らない中国も可能。1915年21ヵ条要求で親日から反日に。
・米国大使ライシャワー-世界的指導者になるため問題解決に積極的に参画して欲しい。