『日本経済は盤石である』長谷川慶太朗(2015年)を読書。
中国バブル、ギリシャ危機、日本の繁栄を解説。
世界各国に関する本を時々読むが、日本ほど成熟し安定した国はないと楽観する事がよくある。日本、ドイツは危機を乗越え、国民性に優れているのかも。
お勧め度:☆☆(読み易い)
○中国バブル
・2015年6月上海株急落、政府は介入的措置を取るが効果なし。前期不動産投資額は9.4%減。GDP増のための投資で鬼城(ゴーストタウン)が出現。5月自動車販売台数は初のマイナス。前期GDPは政府目標に一致するが、不動産、製造業で弱い数字が。
・鉄鋼などで生産過剰かつ設備過剰。李克強指数は経済失速を示している。
・日本への旅行はビザの影響でリピータが増え、買置きができる歯磨き剤などを「爆買い」。
・カナダ、オーストラリア、香港は中国人の不動産購入に対し投資移民プログラムを停止。
・日本が安保法案の成立を急いだのは、北朝鮮崩壊時、韓国居住の日本人を救出するため。
・欧州はアジアでの投資機会を逃したくないためAIIBに参加。日本は原子炉、火力発電などで高い技術を持ち影響はない。
・人民元の市場化は名ばかりで、継続的に切下げしている。
○ギリシャ危機
・2015年7月財政改革法案は可決されたが、暴動が起こる。翌日欧州安定メカニズムによる第3次ギリシャ金融支援が決定。銀行の窓口は閉鎖され、ATMで限度内の引出しのみ可能であったが、当面の危機を脱する。
・ユーロを離脱すると石油を輸入し、旅行業のみが頼りの経済は破綻する。公務員が多いのは民間企業が倒産すると国営化するため。
・米国は反共産主義からギリシャ、トルコに軍事・経済支援した歴史がある。ドイツは欧州での覇権を確立するためギリシャを見捨てない。
・1990年「マルクを捨てユーロに統一するなら統合を許す」から東西ドイツ統合。ドイツは東独を敗戦国として徹底的に解体し最強に(文系教師をクビ。共産党、社会民主党、労組をパージ。東独外務省は8人を残し全員解雇)。ドイツがギリシャを甘やかさないのは、このため。
○日本の繁栄
・2015年軍艦島、韮山反射炉などが世界遺産に。日本は東アジアで産業革命した唯一の国。
・大阪紡績はいち早く電灯を用い、昼夜二交代制で量産。東海道本線の逢坂山トンネル、琵琶湖疏水などの土木技術、日本銀行、横浜正金銀行などの金融システムも優れた。
・国際収支の知的財産権使用料は2015年5月1ヶ月で3900億円の黒字。2013年技術貿易収支は2兆8千億円の黒字、日本の技術貿易は他国を圧倒している。
・日本の技術革新は1973年石油ショックが導いた。デフレ下では企業努力により技術革新が起こる事が多い。
・日本は老朽化したビルや自動車で25億tの鉄鋼在庫があり、リプレースする事で鉄鉱石の輸入が不要となる。鉄鋼業は売上の2%を研究開発に投資。鋼材1tを石炭0.5tで作る(米国1.2t、中国2t)。
・ジェットエンジンに使用されるタービンブレードはIHIが優れる。
・日本技術力の代表は工作機械で世界シェアは27%。工作機械に必須のNC装置はファナックが世界一。世界の産業ロボット133万台中、30万台がファナックなどの日本製。
・安倍政権は医療福祉、防災、メンテナンス、生活、娯楽で使用されるサービスロボットを成長戦略に。
・日本のソフトパワー(ユニクロ、ヤマトHDの宅急便、カラオケ、セブン・イレブンのコンビニ)も見逃せない。
・インフラ輸出は大規模なため資金面で企業の負担となるが、メガバンクが海外展開しているので問題ない。近年地方銀行も海外展開し、シンジケートローンに参加。