top learning-学習

『なぜ中国は覇権の妄想をやめられないのか』石平を読書。

漢・唐の歴史から中華思想を解説し、今日の海洋進出を解説。
中国を理解する上で、ぜひ読んでおきたい。第2次習政権は何かを起こすかも。

お勧め度:☆☆☆(読み易く、必読)

キーワード:中華秩序、朝鮮、ベトナム、近代、海洋戦略

○はじめに
・今日の中国の海洋進出は毛沢東の「中華思想」からの「中華秩序の再建」が根底。朝鮮、ベトナムの「中華秩序」への対応は過去から一貫している。「中華秩序」を破壊したのは近代日本で、中国はそれを清算していない。

○習政権
・2013年習近平が国家主席に就く。習政権は「民族の偉大なる復興」を掲げ、上から目線の「親・誠・恵・容」を外交理念とした。これらは「中華思想」から来る毛沢東の遺志。
・2014年習政権はベトナム、フィリピンと和解し、北京開催のAPECで「中国中心のアジア」(新中華秩序)を示し、大会を成功裡に終えた。これに対しオバマは同盟強化など「アジア重視」を強調。

○中華秩序
・「中華思想」は自己中心的な思想で、周辺民族を「東夷・西戎・南蛮・北狄」と蔑み、「冊封」で属国として認める思想。
・漢王朝は南越国、衛氏朝鮮を冊封。「文景の治」後、匈奴、南越国、衛氏朝鮮を滅ぼし直轄地とした。
・隋王朝は高句麗遠征に失敗し、2代で滅びる。
・唐王朝は新羅と連携し高句麗を滅ぼし、東・西突厥を一掃し、「六都護府」を設置。その後朝鮮(高麗、李氏朝鮮)は中華王朝に恭順に、一方ベトナム(呉朝、丁朝、黎朝など)は面従腹背。これは今に通じる。

○近代
・清は列強に連敗(1840年アヘン戦争など)。51年キリスト教団が母体で「中華思想」を否定する太平天国が乱を起こす。
・1858年フランスはコーチシナ戦争で南ベトナムを獲得。84年清仏戦争でベトナムの領有権を得る。
・1868年日本は明治政府を樹立。72年清に冊封する琉球国に琉球藩を設置。79年沖縄県を設置し直接統治。
・94年日本は「朝鮮独立」を大義名分とし日清戦争で勝利、清は朝鮮の宗主権を放棄。04年日露戦争開戦時、朝鮮から財政権・外交権を奪う、10年日韓併合。
・1931年日本は満州事変で満州国を建国、37年日中戦争で首都南京を陥落。日本版中華思想の「八紘一宇」で満州、中国(南京汪政権)、フィリピン、ビルマ、タイを属国に。結果的に日本の敗戦で諸民族が独立。
・日米開戦は米国の石油禁輸が遠因で、「ハル・ノート」が決め手。「ハル・ノート」には、当時は斬新な4原則(領土保全・主権不可侵、内政不干渉、通商平等、平和的解決)が記されていた。

○毛沢東・鄧小平
・1950年「中華秩序の再建」を目指す毛沢東は朝鮮戦争に参戦。これは隋・文帝の高句麗討伐と類似。ベトナム戦争ではベトナム共産党を支援するが、ベトナムを従属できず。ソ連とは対立し世界で孤立。内政では「大躍進」「文化大革命」で失敗し貧困国に。
・鄧小平は「改革開放」で経済成長を目指す。1980年から2014年でGDPは140倍に。これは漢の「文景の治」に類似。
・80年代海軍司令官・劉華清は12年までに近海(第1列島線内)、20年までに外洋(第2列島線内)の制海・制空権を支配する「海洋戦略」を確立。
・1990年代中国は海軍力を増強、00年代胡錦濤は度々海軍軍事行動を取る。01年「国防教育法」を制定し「国防教育」を必須に。10年国民皆兵のための「国防動員法」を施行。

○新中華秩序
・2012年習近平が総書記に就き、「民族の偉大なる復興」「海洋強国」を掲げる。これは毛沢東の「中華秩序の再建」と鄧小平の「海洋戦略」が結合した「新中華秩序」。13年「レーダー照射事件」など挑発・威嚇行為を連発。同年東シナ海に防空識別圏を設定。
・2011年オバマは中国を警戒し、米海軍・空軍の60%をアジアに配置する「リバランス政策」を発表。14年オバマは日本、韓国、マレーシア、フィリピンを歴訪し、日本では「尖閣諸島を安保対象とする」と明言、フィリピンでは「領土問題は国際法で解決」と強調。
・経済面では2014年習政権はアジア・インフラ投資銀行(AIIB)を設立、APECにてアジア太平洋自由貿易圏(FTAAP)を提唱。「中華秩序の再建」は習政権の使命。

○日本の対応
・海洋が主体の「新中華秩序」は日本も対象、また中国は「中華秩序」を破壊した日本を清算していない。
・2012年習政権と同時に安倍政権が誕生、安倍政権は「法の支配」を掲げ有効な対中外交。特に14年アジア安全保障会議で各国を味方に付け中国を批判。
・2014年孤立する中国はAPECに備え各国と和解。ベトナムは共産党書記長の発言で中国の紛争海域での石油掘削を終わらせる。一方韓国・朴大統領は「反日親中」に走る。
・2014年中国はAPECでの日中首脳会談の条件に「領土問題を認める」「靖国神社に参拝しない」を掲示するが日本は拒否、中国は条件を取り下げ、習近平は尊大な態度で会談に応じる。

top learning-学習