『FTA/EPAでビジネスはどう変わるか』を読書。
FTA(自由貿易協定)のについて余り知らなかったので勉強になった。
FTAを利用しないと損。このまま関税撤廃に進めば良いのに。
物品については詳しいが、サービス、投資、知財は詳しくない。
FTAを理解したい人や利用したい企業向け。
お勧め度:☆☆
キーワード:FTA、特恵関税、原産地規則、ASEAN、TPP、RCEP、サプライチェーン
○はじめに
・自由貿易の重要性は47年GATT、95年WTOと継承。その理念を基に2国間、多国間(広域)FTAが締結されるように。FTAで重要な規則が「原産地規則」。
○FTAとは
・FTAは自由貿易の推進が理念で、関税撤廃、非関税障壁の除去を目指す。EPA、TPPはFTAに属する。
・広域FTA内で製造された物品は「累積原産地規則」で「特恵関税」を受け易く、価格で優位に。
・FTAには投資家と国家の紛争を仲裁するISDSを明記する必要がある。
・13年米国・EU-FTA(TTIP)が衝撃に。韓国は11年EU、12年米国とFTAを発効。FTAは物品貿易だけでなくサービス貿易、知財保護、電子商取引、環境、人材などを網羅する。
・日本は農業保護で貿易自由化度が92%と低い。円高で苦しむが、日本・ASEAN-FTAで救われた。
・日本は農業を産業化(大規模化・法人化、減反廃止)する必要がある。
・「特恵関税」を受けるための「原産地規則」は難解で負荷となるが、広域FTAで幾らか軽減される。
・FTAは直接投資、インフラ輸出、開発輸入も促進する。ISDSは国家の突然の変更から投資家を保護するための条項。
○貿易自由化
・WTOはGATT(関税・貿易協定)、GATS(サービス貿易協定)を継承、FTAはWTOを継承。中国の発展は01年WTO加盟による。
・FTAの交渉ではSPS(検疫)、TBT(工業品検査)、アンチダンピング/セーフガード、投資(ローカルコンテントなど)に注意。
・FTAのサービス貿易ではGATSを上回る規定がされる。サービス形態には商業拠点の移動、国外消費、人の移動などがある。
・日本のEPA(経済連携協定)はFTAに人の移動、知財保護などを付加した協定。日本はブランド力を保持するため商標権、意匠権を確保する事が重要になる。
・日本・ASEAN-FTAにより(例)マレーシアで製造した自動車が「累積原産地規則」により「特恵関税」を受けて他のASEAN国で販売できる。
・FTAは輸出だけでなく、製造業の中間財の輸入、百貨店・スーパー・コンビニ・通販・衣料店の消費財の輸入でも利用されている。
○利用
・FTAは締結国の産品が「原産品」か否かを判定し「特恵関税」を与える協定。FTAの交渉で「原産地規則(①原産地基準、②積送基準、③原産地手続)」を規定する。
・①原産地基準で「原産品」か否かを判定する。「原産品」にはⅠ完全生産品Ⅱ実質的変更Ⅲ原産材料からの生産の3種類がある。Ⅰ完全生産品は締結国で得られた産品(農水産品、鉱物など)。Ⅱ実質的変更は「関税番号変更基準」「加工工程基準」「付加価値基準」のいずれかを満足した産品。「関税番号変更基準」は全ての非原産材料の関税分類番号(HS)が完成品の関税分類番号と異なれば「原産品」と判定する基準。
・③原産地手続は輸入者が通関で「原産品」である事を証明する手続き。原産品の証明書「特定原産地証明書」は輸出元の発給機関(日本の場合商工会議所)が発給する。日本はFTAの拡大(13協定)で発給件数は05年5千件から12年15万件に増加。
・「特恵関税」には①関税撤廃品目②段階的関税撤廃品目③特別品目④非対象品目の4種類がある。
・原産品判定の申請は生産者または輸出者が行う。申請には原産性を立証する資料(生産データ)が必要。広域FTAでは「累積原産地規則」により第3国の材料が原産材料となり「原産品」と判定される。
○活用
・「特恵関税」の利用で2割の価格差が生じる。日本からの輸出(金型、自動車部品、高品質鋼板、高機能繊維、化学品・化粧品、食品・飲料など)でFTAが活用されている。
・「原産地規則」の理解は重要なので、税関や発給機関に相談する事。また生産者と輸出者の連携も重要。
○アジア
・日本とタイは日本・タイ-FTA(利用率71%)と日本・ASEAN-FTA(利用率3%)を締結。タイはASEAN、中国、インド、豪州、韓国などとFTAを締結、何れのFTAも利用率が50%を超える。日本・ASEAN-FTAでは「累積原産地規則」が規定されている。日本企業はタイに生産拠点・サービス拠点を設置すべし。
・今最も注目されるのはASEAN・中国-FTA。「リインボイス」が認められ、シンガポール、香港を拠点とした仲介貿易が可能に。04年香港・中国-FTA、11年台湾・中国-FTAが発効。日本企業の中華圏でのビジネスに有効。
・インドはタイ・インド-FTA(04年発効)、ASEAN・インド-FTA(10年発効)、日本・インド-FTA(11年発効)を締結。
○世界
・メキシコはNAFTA(94年発効)、EU(00年発効)、南米(12年発効)などとFTAを締結し、米州のハブ。日本・メキシコ-FTAも有効。
・第3国FTAも有効-(例)米国・韓国-FTAを利用し米国で生産した自動車を「特恵関税」で韓国で販売。
・サービス貿易では「人の移動」も重要。韓国は「地域専門家制度」で人材育成。
○日本
・日本は13のFTAを発効しているが、カバー率は19%と低い。拡大には「原産地規則」の理解が必要。
○貿易システム
・広域FTAを利用した広域取引が主流に。税コスト・機動性・人材が優位のシンガポール、香港に「地域統括拠点」を設置し、「リインボイス」や「ネッティング(相殺)」を活用し現地通貨で決済。決済通貨はドルから人民元、アジア通貨に変化。
○物流
・生産拠点の広域化で物流の統合が重要に。上海-シンガポール間をトラック輸送する「SS7000」、博多港-上海間をコンテナ輸送する「上海スーパーエクスプレス」、多品種・小ロットを扱う「バイヤーズ・コンソリデーション」などの物流サービスがある。
○課題
・生産拠点の広域化でサプライ・チェーン・マネジメント(SCM)が重要に。
・日本の農政(コメにおける高関税・減反による高価格維持など)は改革が不可欠。