『「経済効果」ってなんだろう?』宮本勝浩を読書。
経済効果と云う言葉を時々聞きますが、その計算例を紹介。
経済効果=直接効果+1次波及効果+2次波及効果。GDPは中間財を除きますが、経済効果では波及効果として含めます。
数値化すると効果を比較できて面白い。対象が都会にあったり、すそ野が広いと経済効果が大きい。
お勧め度:☆☆
キーワード:経済効果、直接効果、波及効果、産業連関表、イノベーション、吉本興業、阪神タイガース、AKB48、たま駅長、ウリ坊とみわちゃん、パンダ、ダルビッシュ投手、ハンカチ王子、ハミカミ王子、大阪マラソン、東京スカイツリー、ユニバーサル・スタジオ・ジャパン、百舌鳥・古市古墳群、ミシュランガイド、奈良の大仏、食博覧会、くいだおれ太郎
○イノベーション-吉本興業
・当社は明治45年創業。戦後衰退するがテレビに柔軟に対応し大発展する。2011年の当社の経済効果は1307億円。
・経済学者シュンペーターのイノベーションを当社に当てはめると①新商品開発-従来演芸は落語・浪曲・講談だったが、漫才・新喜劇に変えた②生産方式-弟子入りを芸能学校に変えた③マーケット獲得-地方・海外に進出。お笑い以外(スポーツ、歌手、飲食業、メディアなど)に進出。
・当社は「不易流行」を掲げる(本質を守り、かつ新しい変化を求める)。また「出る杭は打たれる」ではなく「出る杭は伸ばす」。
・経済効果は直接効果、1次波及効果、2次波及効果の総和。直接効果は吉本興業や飲食店などの直接の売上増加額。1次波及効果は吉本興業や飲食店などに材料などを卸している会社の売上増加額。2次波及効果はこれらの経営者・従業員の収入アップによる消費増加額。
○イノベーション-阪神タイガース優勝
・2003年阪神優勝の直接効果は①観客数増加-入場料・交通費・飲食費などで52億円②優勝セール-105億円③外食などの増加-416億円④阪神グッズの売上増-74億円⑤スポーツ紙の売上増-32億円⑥放映権・広告収入の増加-24億円⑦定期預金の増加-212億円(※サービスなので、これも加えるのか?)で917億円。経済効果は1481億円。
・星野阪神のイノベーションは①通期の優勝争い②大型トレード(金本、片岡など)③ファンを京阪神から全国に拡大④コーチングスタッフの入替など。
○イノベーション-AKB48
・AKB48は2011年CDシングル売上でトップ5を独占。しかし2005年最初の公演の観客は7人だった。
・直接効果は270億円、経済効果は564億円。また雇用創出効果は6556人、粗付加価値(粗利)は494億円。
・秋元康氏のイノベーションは①新商品開発-CDに投票権を付与。アイドルグループの多人数化。じゃんけん大会・握手会・撮影会②コストダウン-メンバーは派遣社員③マーケット獲得-姉妹グループを地方・海外で結成。
○動物-たま駅長
・和歌山電鐵・貴志駅長に猫の「たま」が就く。メディアが報道しファンが殺到。全国でこれを真似したが動物が人に懐かなかったり、交尾期に逃げたりで失敗。貴志駅の成功は「たま」の大人しい性格のおかげ。
・乗客・グッズ販売・観光客の増加による経済効果は11億円。さらに宣伝広告効果(新聞、テレビでの報道を金額化)は約3億円。
○動物-ウリ坊とみわちゃん
・福知山市動物園で共に親から逸れたウリ坊と子ザルを預かっていたが、ウリ坊の背中に子ザル「みわちゃん」がしがみ付く様になる。これが報道されフィーバーとなる。経済効果は約6億円。
○動物-パンダ
・2011年上野動物園のパンダ「リーリー」「シンシン」が公開された。直接効果(運輸業13億円、サービス106億円)から「東京都産業連関表」を用いて計算すると、1年間の経済効果は208億円。ちなみにパンダの1年間のレンタル料は8300万円、食事代は800万円。
○スポーツ-ダルビッシュ投手
・ダルビッシュ投手のテキサス・レンジャーズ入団による直接効果は70億円。米国の産業連関表がないので乗数効果を2.5倍(日本は2.1倍)とすると、経済効果は177億円になる。
○スポーツ-ハンカチ王子
・2011年「ハンカチ王子」斎藤佑樹が日本ハムに入団。直接効果は観客数増加、グッズ売上増加、放映権収入増加、宣伝広告収入増加などで37億円、経済効果は52億円。
○スポーツ-ハミカミ王子
・2008年「ハミカミ王子」石川遼はプロに転向。直接効果はスポンサー契約、ギャラリー数増加、グッズ売上増加、大会賞金総額増加などで91億円(※スポンサー契約、大会賞金総額は消費じゃないと思うけど?)。直接効果から「日本産業連関表」を用いて計算すると経済効果は202億円。
・また賞金王となった2009年はさらに増し経済効果341億円、雇用創出効果1761人、粗付加価値(粗利)308億円。1人のプロスポーツ選手の経済効果としては驚嘆すべき数字。
○スポーツ-大阪マラソン
・2011年「第1回大阪マラソン」が開かれる。ランナー関係者の消費支出10億円、一般観戦者の消費支出59億円、ランナーの消費支出5億円、グッズ売上5億円などから直接効果は100億円、経済効果は124億円。
○テーマパーク-東京スカイツリー
・2012年東京スカイツリーがオープン。入場者による経済効果は835億円、建設事業による経済効果は1861億円(※これは開業前の複数年分では?)、周辺商業施設での経済効果は1485億円、合計4182億円で膨大。
○テーマパーク-ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)
・2011年開業10周年となり10年間の経済効果を計算。USJの総売上額、入場者の大阪府内での飲食費・交通費・宿泊費から直接効果は1兆322億円、経済効果は1兆2490億円。今後はリピーターを増やすために2012年にオープンした子供向けの「ユニバーサル・ワンダーランド」に期待。
○観光-百舌鳥・古市古墳群
・21世紀の主要産業は環境・医療・情報・観光と云われている。百舌鳥・古市古墳群が世界遺産に登録された場合の経済効果を計算した。大阪府内の直接効果は観光客の増加で294億円、経済効果は309億円。
○観光-ミシュランガイド
・ミシュランはタイヤ会社。ミシュランガイドは1900年自動車旅行を推奨するためガソリンスタンド、ホテルなどを紹介したのが始まり。
・2009年「ミシュランガイド京都・大阪2010」が出版されたが、その経済効果を計算(ちなみに三つ星7店、二つ星25店、一つ星118店)。店の規模が様々なので、三つ星・二つ星の店は20%、一つ星の店は10%売上増加したと仮定すると直接効果31億円、経済効果43億円。
○観光-奈良の大仏
・「奈良の大仏」は正確には「東大寺盧舎那仏像」、745年制作開始、12年後の757年完成。3年分の国家財政が掛かったとされる。
・大仏鋳造と大仏殿建築の総経費は4657億円となった(原材料費3363億円、人件費1292億円など)。
○食-食博覧会
・1985年から4年毎、大阪で食博覧会が開かれている。2009年に11日間開催される「'09食博覧会・大阪」の経済効果を計算。事務関係者・入場者の消費支出から経済効果203億円、雇用創出効果1375人、粗付加価値(粗利)183億円となった。
○食-くいだおれ太郎
・2008年食堂「大阪名物くいだおれ」が閉店。「大阪名物くいだおれ」の来客数は年間35万人、「くいだおれ」を目的とした人をこの内3割(10万5千人)とすると、経済効果は約17億円となった。
○経済効果
・公共事業では経済効果に類似の費用対効果分析で10年間の便益比率が2に満たない場合、建設しないなどの基準がある。
・経済効果には検証が必要である。