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『誇り高き国へ』北村経夫(2013年)を読書。

保守の立場から憲法改正と教育改革を主張。また出身地長州の志士に関する記述も多い。
憲法改正を考える時代かもしれませんが、日本人にそれだけの見識があるのか。

お勧め度:☆☆

キーワード:変革、保守、アイデンティティー、日米安保条約、岸信介、自主独立、日本国憲法、安倍晋三、長州人、吉田松陰、教育改革、誇り

○はじめに
・この国難に「変革」が望まれるが、何を守り何を変えるかが重要。日本には生き残る強さがあり、それは誇れる事である。

○政治家を目指した理由
・著者は山口県田布施町に生まれた。山口県は8人の総理大臣を生み、田布施町は2人の総理大臣を生んだ唯一の町。
・中央大学卒業後に1979年ペンシルベニア大学に入学。留学中に様々な感銘を受けた。①当年イラン大使館人質事件が発生、大統領選でカーターが敗れレーガンが勝利する。レーガン(保守)による「変革」が強く記憶に残る。②米国は移民により継続的に発展した。③米国では政治家、教師が尊敬されている。④米国ではアイデンティティー(帰属意識)が明確。アイデンティティーがあるとグローバル化に生き残れる。アイデンティティーの基本は郷土愛で、日本の歴史・文化・伝統に誇りを持つ事が重要。
・1985年ペンシルベニア大学卒業後に産経新聞に入社。中曽根首相の番記者になる。当時は首相に貼り付いて取材ができた。

○政治は結果-岸信介
・明治政府が不平等条約を解消したのは1911年関税自主権回復。しかし戦後の占領で1951年片務的な「日米安保条約」を締結。それを改定させたのが岸信介。岸は結果を重んじる政治家だった。1955年保守合同を行い、経済を回復させる土台を作った。
・戦後の占領期に白洲次郎はGHQ民生局と交渉を重ねるが、日本国憲法では抵抗できず敗北する。
・1960年日米安保改定時、岸と佐藤栄作(実弟)は首相官邸で新条約の自然承認を待つ。政治家には誰よりも高い視線で先を読む必要がある。その時著者は5歳だったが、田布施町の岸宅にデモ隊が押し寄せたのを記憶している。
・戦後の経済回復で物質的には豊かになったが、精神が軽視される様になった。

○何を守り、何を変えるか
・安倍晋三は「現在と未来に対してはもちろん、過去に対しても責任を持つ」と述べ、保守の精神を強調。
・日本は平清盛、徳川家康、明治維新などによって「変革」を繰返した。戊辰戦争で勝海舟は西郷隆盛を愛宕山に誘い江戸を見せ、無血開城に至らした事は称賛できる。
・日本には「赦す」精神がある。物部氏(神道)と蘇我氏(仏教)との宗教戦争で蘇我氏が勝利するが神道は存続した。
・近年コーポレートガバナンスが問われているが、これは「会社愛」で乗り切る事ができる。これは国に対しても云えて、国に対し愛・誇り・自信が必要である。そのための国の伝える力(広報)が今は不足している。

○宿題
・日本は経済成長は達成したが「自主独立」は達成していない。日本を変える事ができるのは愛国心を持った政治家である。
・「日本国憲法」はGHQ民生局の局員25名が、わずか1週間で作成したもの。しかも25名に憲法の専門家は一人もいない。「自主憲法を制定」して、始めて「真の独立」が達成される。また第9条など明らかに時代にそぐわない条文もある。集団的自衛権は自然権である。
・日本は「自国を守る」事を考える=軍国主義の誤った考えがある。

○長州人
・安倍晋三は父から「命懸けでやる」、祖父から「正しいと思った事は揺るがない」を受け継ぐ。
・吉田松陰は松下村塾を開き、高杉晋作、久坂玄瑞、桂小五郎、伊藤博文、山縣有朋、井上馨、吉田稔麿などを育てた。
・長州藩は「八月十八日の政変」で京都を追放される。1864年「禁門の変」で回復を試みるが敗れる。その数日後には四ヵ国連合艦隊により下関が占拠される。交渉に当たった高杉は彦島の租借を拒否。1865年高杉ら84名は功山寺で挙兵し、佐幕の俗論派を倒す。
・伊藤は日本初の総理大臣となり大日本帝国憲法を発布した。山縣は奇兵隊に入って頭角を現し、元老として影響力を持った。桂太郎は首相となり日英同盟を締結し、日露戦争に勝利する。山田顕義は民法・商法・民事訴訟法などを整備した。
・薩摩藩は現実的で財政改革、殖産、農業改革、軍制改革などに成功。

○教育改革
・フィリピンから帰還した小野田寛郎は「日本人は利己主義になった」と悔やむ。
・人は両親、郷土、それらの文化・伝統・歴史、さらには国家に守られている事を忘れてはいけない。
・日本の「ゆとり教育」「デジタル教科書」は間違い。
・フィンランドの学力が高いのは教師に対する尊敬の念が強いため。西洋医術の宇田川玄真は坪井信道を教え、蘭方医となった坪井は「日習堂」で緒方洪庵を教え、緒方は「適塾」で福沢諭吉を教えた。福沢は慶応義塾を開き多くの優秀な生徒を育てた。
・日本で自国に誇りを持つ高校生は50%しかいない、米国、中国では70%以上が自国に誇りを持っている。この危機的状況は教育改革によって脱する必要がある。
・日産社長カルロス・ゴーンの教育に対する考え-初等教育の目的は知識と人格形成、高等教育の目的は知識と経験。人間形成の多くは家庭教育が負い、子供に自分の意見を主張させることが大切。日本の大学はオープンでない。社会に対する考え-社会には多様性が重要。企業では年齢より貢献度や実績を重視すべし。

○あとがき
・言葉は人を作る。著者を作った言葉は「一心定而万物神(一心定まりて万物神となる)」。政治を発信する立場から、政治を解決する立場になる事を決心した。

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