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『人間の浅知恵』徳岡孝夫を読書。

世の中で起きた様々な事象を繊細な表現で叙述。
著者はジャーナリストとして世界を巡り、豊富な知識・国語力・感受性に驚きます。逆に云えば、読者にそれが要求されます。
残虐性が少し感じられるのは世界を見てきた事と、戦争を知っている最後の世代のためか。

お勧め度:☆☆(私には少し苦手な本)

キーワード:スカルノ/スハルト、カストロ、全斗煥、カダフィ、パウロ、エリザベス女王、ジョン・F・ケネディ、運転手、アームストロング、シアヌーク、ペテロ、フランシスコ2世、サッチャー、オバマ、ビッグ・スリー、エベレスト、西域、南シナ海/台湾、高速鉄道事故、怒る文化/謝る文化、汚職、ネール/インディラ、ブット、宝石、オサマ、性犯罪、ハイチ地震、救済/消費、格差社会、フクシマ、ラジウム、intrusion、体罰、自由、銃乱射事件、少子化、ギリシャ、虐待、英会話、角栄/小沢

○独裁者
・インドネシアではスカルノが多島・他民族・多宗教の大国を独立させたが、横紙破りの独裁者だった。1965年クーデタでスハルトに権力が移る。スハルトは腐敗・汚職を行ったが、30年間国を治めた。
・反米のキューバ・カストロには638回の暗殺計画があった。1962年キューバ危機で世界核戦争の危機に晒されたが、フロリダ州から145Kmの共産国はソ連崩壊後も存続している。
・イラク、エジプトなど中東では「権力とは腕力なり」が常識。ミャンマーも同様であり、軍事政権は権力を離そうとしない。韓国・全斗煥は1880年光州事件を鎮圧し大統領になるが、1888年反政府運動により政権移譲。
・リビア・カダフィの行方が知れない。1970年代の航空機ハイジャックはカダフィがトリポリにいたため。独裁は息子を可愛がり人間的。
・「目からウロコが落ちる」はキリスト教の使徒パウロの回心が起源。

○忘れがたき人
・1953年英国エリザベス女王が戴冠。当年は米国アイゼンハワーが大統領に就き、スターリンが死に、朝鮮戦争が休戦となり、ヒラリーがエベレストに登頂した年だが、何よりも女王の戴冠が戦後消沈する国民を勇気付けた。
・ジョン・F・ケネディの演説は立派とされるが、シュレジンジャーかレンセンが書いたのだろう。ジョセフ・P・ケネディ(JFKの弟ロバート・ケネディの孫)が下院議員に立候補。著者はロバート・ケネディにインタビューした事がある。
・関越自動車道でツアー・バスが大事故を起こした。著者もイタリア-パリ間の列車が運休になり、臨時バスでパリに向かった。著者は運転手の隣で見守り、キャンディを1Kg食べた。
・1969年米宇宙飛行士アームストロングが世界で初めて月に降りる。著者と彼は同い年。彼はニューヨークに残らず、飛行技術の発展に尽力した。
・韓国・全斗煥大統領がミャンマーを訪れた時、北朝鮮はアウンサン廟を爆破した。それなのにミャンマーは北朝鮮と国交回復。カンボジアでシアヌークにインタビューしたが、前日シアヌーク自作自演の映画を見せられた。東南アジアも危ない。
・初代ローマ教皇ペテロはローマでの布教を断念しようとしたが、イエスの忠告でローマに戻る。最後は十字架に架けられるが、その地が今の聖ペテロ大聖堂。
・新教皇にアルゼンチンの枢機卿ベルゴリオが択ばれる。彼はフランシスコ2世と改名。フランシスコ1世は暴れん坊だったが「乞食坊主」となる。
・英国元首相サッチャーが国葬となる。彼女はフォークランドを守り、「小さな政府」を断行した。

○米国
・オバマはハワイでケニア人の父と白人の母との間に生まれ、インドネシアで初等教育を受けた。彼は米国黒人の代表者だろうか。
・金融危機でビッグ・スリーが政府に緊急支援要請。3社首脳は役員用ジェット機で物乞いに来た。
・著者の知人ロビンは大統領選でオバマの戸別訪問をボランティア。黒人街を訪れると好意的な人が多かった。
・米国大統領は尊厳される。しかしオバマ大統領の議会の演説「不法移民の保険料は出さない」で議員から「嘘つき」の野次があった。

○中国
・北京オリンピックの聖火がエベレストを超える。1953年ヒラリー初登頂から既に3千人が登頂し、今はエベレストはゴミの山。聖火リレーのため北面のベースまでアスファルト道が作られた。
・日本人は玉門間、陽関以西の「西域」にときめいた。チベット人はラマ教(仏教)を信じ、言語・文化が異なる。「西域」はインド、ロシアと国境を接する重要地域、またチベットはガンジス川、ブラマプトラ川、揚子江などの水源である。
・中国が空母を保有し、数年で海洋大国になる。ゼニを持った子供はオモチャを欲しがる。国内の反政府運動を鎮圧するのは皮肉にも人民解放軍。自国利益しか考えない中国による南シナ海/台湾での有事が懸念される。
・高速鉄道が温州市郊外で事故。事故車両はその場に埋められた。事故原因は落雷とされた。落雷は世界中で毎日起きている。
・中国は米国のF16戦闘機の台湾への売却に強烈に怒る。一方日本の首相はひたすら謝る。「怒る文化」と「謝る文化」の差が明瞭。
・薄熙来は解任され、薄の側近・王立軍は米領事館に逃げ込んだ。薄夫妻と親交のあった英国人は急死した。汚職は中華文化圏の特徴。彼らの理想は「福禄寿」(幸福・俸禄・長寿)。
・中国(温家宝首相)は東南アジアで「怖いオジサン」になり、米国(オバマ大統領)は「優しいオジサン」になった。

○アジア
・著者はインド初代首相ネールの公邸を訪れた事がある。そこにはエリザベス女王、ヨハネス23世、JFK、フルシチョフなどと一緒に写った写真があった。ネールの死後、その娘インディラ・ガンジー が首相になるが、歴史に残る強権政治で警備兵に暗殺される。続いてその長男ラジブ・ガンジーが首相になるが、1991年彼も自爆テロで暗殺される。
・著者はパキスタンのズルフィカル・ブットが首相に就任する前、彼の大邸宅でインタビューした事がある。その数年後、彼は政争で処刑される。彼の娘ベナジル・ブットも首相になるが暗殺される。
・インドのネール/インディラ父子もパキスタンのブット父子も「銀の匙をくわえて生まれ」、大邸宅で育ち、英国に留学した。国民は彼らに治められるのが好きなのか。
・ミャンマーはルビー、サファイア、翡翠を産出、特にルビーは世界一。軍事政権は制裁を受ける中、それで生き延びた。世の中で最も足の早い物は麻薬・武器・宝石。
・同時多発テロの首魁オサマ・ビンラディンが米国により殺害された。中東の新聞の論調は様々だった。今はオサマが起こした反米思想にではなく、「普通の人」が起こしたリビア/シリア/ヨルダン/イエメンでの民主化や人権に関心が向かっている。
・著者は東京オリンピック前にギリシャ-インド間を車で走破。当初は上海まで車の予定だったが、ビルマで拒否されビルマには空路で入国。ビルマに入ると雰囲気が東洋に変わる。ミャンマー(ビルマ)は今、民主化を進めているが疑わしい。
・2012年「お釈迦さまの国」インドの首都ニューデリーで性犯罪・殺人事件が起き、世界に衝撃を与える。シンガポールの病院が被害者を引き受けたが、息を引き取った。

○一筋縄では行かぬ
・カリブ海のクルージングは人気がある。そのハイチで地震があり、20万人が亡くなった。クルーズ船のハイチ寄港に不道徳との批判があったが、船客の消費や寄港料は貴重な収入であり、政府・自治体・住民は寄港を要望した。
・世界同時テロによる世界貿易センターの倒壊で景気後退が心配されたが、政府・議会、企業、消費者が消費に転じ、景気後退は起きなかった。
・2011年ニューヨークで格差社会反対デモが起こる。1963年生まれと1993年生れで65歳時点の資産が25%違うとされる。資本主義は貧困を再生産している。
・「フクシマ」が世界に知られ、独国メルケル首相は原発廃止に向かったが、賢明な選択だろうか。
・キュリー夫人はノーベル物理学賞と化学賞を受賞。仏国では時計や飛行機の計器に塗られたラジウムの除去作業が今でも行われている。
・中国は日本の尖閣国有化を「intrusion(不法占有)」として批判。同日、雑誌に英国キャサリン妃のトップレス写真が載り、英国は「intrusion」として批判。
・世界新記録を出せなかった古橋広之進を葉室鉄夫が一喝。新聞社ではかつて、記事を書いた記者はデスクのOKが出るまで、立っていなければならなかった。酷い時には殴られた。女子柔道監督は体罰で辞任した。真実は何処にあるのか。

○極北の人間性(※意味不明)
・コロンビア人の父と仏国人の母の間に生まれたベタンクールはコロンビア大統領選に立候補するが、コロンビア革命軍に拘束される。しかし仏軍特殊部隊により救出され、自由を得る。著者は戦時中、空襲を逃れるために防空壕に逃げる。自由を感じたのは「うさぎのダンス」を聞いた時だった。
・フィンランドで少年による銃乱射事件が2件あった。これらは米コロラド州での銃乱射事件を模倣したと考えられる。これはグローバリゼーション(インターネット)の影響では。
・日本の年間出生数は109万人だが、中絶数も25万人ある。赤ちゃんは生まれる前から「間引き」されている。また一人前に育てるのに2200万円掛かる。勤務時間を減らして出生数が増えるだろうか。
・ギリシャは緊縮政策(公務員削減、消費増税など)で消費低迷。日本が「東のギリシャ」になる心配はないのか。
・Vサインは英国首相チャーチルが始めた。英国は階層社会だが、上流階級の学校では虐待が行われていた。

○なに言うとんねん
・『曾根崎心中』の見せ場は「道行」にある。
・NOVAに行って英語を喋れる様になっても、「ゲンジモノガタリはどんな小説?」と聞かれて答えられないと意味がない。英語教育が強調されているが、数学者・藤原正彦は一にも二にも国語と言っている。
・田中角栄は小沢一郎に目を掛けた。角栄と小沢は共通点が多い(越山会/陸山会、軍団/小沢グループ、中国訪問)。鳩山由紀夫は「首相にしていただいた方」では。鳩山首相が母親から貰ったお金は20億円と云われる。生前贈与税は高いよ。

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