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『モノづくりで幸せになれる会社となれない会社』坂本光司、林公一を読書。

下請けだと親会社に主導権を握られ、利益も少なく経営が不安定になります。脱下請け/自立化に成功した18社を紹介。
脱下請けに重要なのは社長の決断、自社の分析(SWOT分析)、信頼・人脈などかな。

お勧め度:☆☆

キーワード:モノづくり、工場数減少、グローバル化、脱下請け、製品市場マトリックス、仕入力、通信販売、ODM、地の利、経営品質、パートナー企業(アライアンス)、ヒト・モノ・カネ・情報、モノからコト、透明化(見える化)、行政(公的機関)、福祉サービス事業、信頼関係、スピード、経営計画

○脱下請けの必要性
・日本の工場数はグローバル化などによりピークの1983年78万から2010年43万にほぼ半減。この大半は下請企業・協力工場と思われる。この減少はかつては繊維製品などの軽工業であったが、近年は日本の中核産業である電気・電子、機械、精密機械工業にまで及んでいる。
・大都市圏の巨大な工場を地方に移転し、それに伴い下請企業・協力工場も移転する傾向も見られたが、工場数が増加した都道府県は一つもない。
・ダーウィンは進化論で「生き残ったものは強いものではなく、時代に適応したもの」と云っている。それは企業にも当て嵌まる。

・工場数減少の要因は6つあります。①グローバル化で国際分業になり海外生産・海外調達に変わった。②消費対象がモノからコトに変わった(成熟化・ソフト化・サービス化)。③製造業の開業率の低下。④生産取引が「クローズド分業」「ピラミッド分業」から「オープン分業」「ネットワーク分業」に変わった。⑤部品・ユニットの共通化が進んだ。⑥大手メーカー間の連携。

・時代の変化・問題は一過性なのか構造的なのか見極める必要があるが、この様に工場数減少は一過性の問題ではなく構造的な問題で、生き残るためには脱下請け/自立化する必要がある。
・従業員20人未満の工場の年間給与は300万円だが、1千人以上だと650万円になり、所得格差問題もある。

・製品市場マトリックスには4分類ある。①既存市場・既存製品②既存市場・新製品③新市場・既存製品④新市場・新製品。

○脱下請けの実例-既存市場・既存製品
・大垣精工-金型の設計・製造・販売。同社の特徴は①設計から販売まで一貫生産②多種多様な金型③市場の分散(多業種)④世界最先端(HDDサスペンション)。成功の要因は先端技術へのチャレンジとグローバル化への対応。海外進出は、社長の観光気分での韓国展示会が始まり。人材育成のため大学での「金型学科」の設置を目指す。

・久米繊維工業-Tシャツの製造・販売。肌着だったTシャツをカラーバリエーションなどによって一大ムーブメントを起こす。今は受託製造、自社商品、ダブルネーム(コラボ商品)がそれぞれ売上の1/3を占める。当初は某アパレル会社の受注製造に依存していたが、「取組先」を作る事に経営方針を転換。「半製品」「逆張り」「仕入力」が特徴。

・沢根スプリング-バネの製造・販売。社長が米国でバネの通信販売の成功を見て、小口受注と即日発送が特徴の通信販売「ストックスプリング」を開始。在庫が多くなり、軌道に乗るまで数年掛かった。成功の要因は本業が順調であった事と、米国の成功を見て自信があった事。

・タカハタ電子-ピッキングシステムなどの物流・生産システム、液晶、有機EL、ODM。カラーテレビの下請けが日米貿易摩擦による自主規制で直撃を受け、自社開発に転換。自社設備の内製化を始め、チェッカー、テスター、ピッキングシステムの開発に成功する。ITバブル後に経営危機があったが、業績連動型報酬制度で切り抜ける。今後は設計から納品まで一貫して提供するODMに期待。成功の要因に電子・機械産業が集積する地の利(山形県米沢)もある。

・東海バネ工業-高品質のバネを製造し、71期連続黒字。バネは東京スカイツリーや原子力発電所で使用されている。ドイツの企業を視察し、受注単価の決定は製造側にある事を再認識。コンピュータの活用により取引先を拡大。「東海バネでなければ」と云われるのを目標とする。工場の建設費を通常の1.5倍に増やし、職人を大切にする。

・能作-スズ製品(食器など)の製造。富山県高岡は銅器の産地で、問屋が絶大な力を持つ。「シリコーンゴム鋳造」で加工が難しいスズ製品の製造に成功。スズ100%の自社商品で売上を拡大。今後も海外の展示会に出展し、ブランド力を高めたい。

・万協製薬-スキンケア用医薬品、医薬部外品、化粧品の製造。神戸で1社の下請けをしていたが阪神・淡路大震災で工場が全壊し、三重に移転。OEM、スキンケア商品への特化、機械化で体制整備。ドラッカーの「経営品質」から「成果発表会」「ジョブローテーション」「モジュール化」「マニュアル化」「提案制度」「バンキューイントラネット」「プチコミファミリー」を導入。

○脱下請けの実例-既存市場・新製品
・アイエイアイ-産業用ロボットの開発・設計・製造・販売。大手A社に100%依存していたが、取引での不公平から脱下請け。今は90%が自社商品。直交型ロボットを開発し、販売力のあるFAメーカーに販売を任せ、売上を爆発的に増やした。今は25ヵ所の営業所を持ち、さらに売上を増やしている。

・徳武産業-シューズの製造。元は手袋の縫製工場であったが、脱下請け後はスリッパ→バレーシューズ→ルームシューズ→ケアシューズと推移し、今は売上の96%が自社商品。ケアシューズ「あゆみ」は老人施設への販売方法を変える事で売上を伸ばしている。

・名古屋精密工業-エレベーター、エスカレーター部品などの加工。かつては映写機、自動車部品、グラビア印刷機の加工をやっていたが、何れも撤退。今は前会長がかつて在籍していた三菱電機の「パートナー企業」としてエレベーター、エスカレーター部品を加工。同社はヒト(社員)、モノ(設備)、カネ(非同族会社)、情報を大切にしている。

・中田工芸-業務用・個人用ハンガーの製造・販売。かつては行商で販売していたが限界となり、商社に販売を委託する。90年代デフレ経済になり個人用ハンガーのネット販売を開始(製販一体への原点回帰)。また「モノからコト」に価値観が変わる。ひょんな出会いで青山ツインビルや新宿伊勢丹にショールームを開店。

・メトロ電気工業-ヒーターユニット、照明用電球、カーボンヒーター管の製造。照明用電球に始まり、赤外線電球、ヒーターユニット、ハロゲンヒーター管、カーボンヒーター管を製造。成功の要因は①積極的な需要の開拓②利益より品質・信用を重視。

○脱下請けの実例-新市場・既存製品
・片岡機械製作所-ピストンリング加工専用機の製造・販売。汎用旋盤機メーカーとして地位を固めつつあったが、大手と事業が重なり危機感を感じ、国産化されていないピストンリング加工専用機の製造に特化。3本加工、CNCなどで高機能化し、今は世界シェア60%を占める。同社は経営の透明化を図り、従業員の信頼を得ている。

○脱下請けの実例-新市場・新製品
・伊吹電子-音声増幅器の製造。プリント基板などを製作していたが、社長の母親が耳が不自由になり音声増幅器を開発。新聞・テレビ・行政などで取り上げられ、売上が拡大。下請けと自社商品の両立を方針としている。

・パーソナルアシスタント青空-福祉サービス事業。当初は玩具メーカーの基板の加工/部品の組立をする100%下請け会社であった。親企業及び同社が危機の時、社長に障害を持った三つ子が生まれる。これを機に訪問介護サービス、児童ディサービス、就労継続支援事業などを始める。就労継続支援事業では障害者がホンモノの農産物を作っている。

・東海電子-アルコール検知システムの製造・販売・保守。大手計算機メーカーの下請けをやっていたが経営が不安定であった。2001年システム開発部門を立ち上げ、「業務用アルコール測定システム」を完成させる。その後エンジン始動との連動、再検査機能、記録機能など高機能化。成功の要因はバス会社2社との信頼関係と人材にある。

・不二工芸製作所-バイオ事業、アグリ事業。カシオ計算機の下請けをやっていたが、海外移転を機に脱下請けに取組む。偶然「発芽そば発酵エキス」を発見するが、富士・富士宮地域にはカプセル産業の土壌があった。成功にはスピード、コミュニケーション、ネットワークが重要。

・ミサト工業-自動車部品加工の100%下請け会社であったが、高級毛抜き「NOOK」がヒット商品になる。会社では「社長の権限の移譲」「工程の見える化」を行い、製品の企画・設計、販売は専門会社と連携した。公的機関の支援も役立った。

○脱下請けのためのポイント
・脱下請けには「販売力がない会社はアライアンス(業務提携)する」「組織体制を整える」「海外では会計事務所、金融機関、公的機関を利用する」などが重要。
・経営計画は以下の手順で実践します。①経営理念の策定②経営ビジョンの策定③経営戦略の策定④行動計画・業績計画の策定⑤モニタリング。また経営戦略の手順は①市場の確定(商品の確定)②自社技術の分析③自社が何をすべきか決定する。

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