『散歩でわかる経済学』跡田直澄を読書。
題名は「散歩」となっていますが、内容は政治への提言/批判で、高級住宅街/下町/大都会/農村/郊外都市から対象をピックアップしています。
知らない事が多少あった。
お勧め度:☆☆
キーワード:電線、JR/私鉄、農地、駐車場・アパート/相続税、タスポ、宗教法人/信教の自由、公園/遊具/球技、少子化、祭り、社会福祉法人、雨水/下水/合流、酒屋、シャッター商店街、アニメ、場外馬券売り場、PFI(プライベート・ファイナンス・イニシャティブ)、ガソリン価格、危機管理、高級ブランド店/あこがれ、ガス灯/パブリック・マネジメント/パブリック・アドミニストレーション、六本木ヒルズ/東京ミッドタウン、公益法人、国立新美術館/新公共事業、大学院大学、病院/外科/麻酔医/産科医、医療制度/日本医師会、地下鉄/大深度法、農業政策/減反政策、河川、遺伝子組み換え作物、山村留学、私立大学、消費者金融/貸し渋り、特定健診制度/メタボリックシンドローム、外国人犯罪、ワーキングプア、ネットカフェ難民、生命保険会社、国際ボランティア貯金、消費期限/賞味期限、マンション
<高級住宅街散策-成城学園>
○電線/電線
・2億円の豪邸が連なる成城学園にも、電柱/電線が立ち並ぶ。海外の高級住宅街は地中ケーブルなので、こんな事はない。
・昔は各家庭に20アンペアを1本引いていたが、今は5本が普通である。
○JR沿線
・JR沿線には私鉄沿線と違って高級住宅街がない。これは国鉄に不動産部門がなかったから。私鉄は安価な農地/山林を買って、計画的に宅地開発を行った。
○散見される農地
・市街化区域の所々に桑や栗が植えられた空き地がある。これは地主が、固定資産税が殆どタダの農地にするためです。
○駐車場/アパート
・高級住宅街で場違いのコイン式駐車場や賃貸アパートを見ます。これは土地を担保に借金をして、相続税を逃れるためです(例:土地価値1億円、借金1億円、相続税0円)。
○タスポ
・未成年者にタバコを購入させないため、「タスポ」が導入された。しかし「タスポ」の実効性(カードの貸し借り、顔認証など)は問題が多い。また収集された個人情報はJTに流れている。日本の官僚は自分たちの権限/予算を拡大する事に注力し、規制を増やしている。
○宗教法人
・日本は「信教の自由」が保障されていて、宗教法人の認証は至って簡素である。同様にインターネットでの「表現の自由」や「報道の自由」が過度に保護されている。
○公園の運営
・公園の花壇に、リタイアした人が植えたと思われる花が咲いていた。公園の運営は、財政難の地方自治体ではなく地区住民に任せるべき。
・安全が重視され、公園から遊具(ブランコ、ジャングルジムなど)がどんどん撤去されている。また公園での球技は禁止され、子供達は屋内でバーチャルな世界に浸っている。
○少子化
・日本は少子化が問題になっている。スウェーデンの法律は「婚外子」を普通の子と同等としている。一方日本では「嫡出子」と「非嫡出子」は平等でない。また日本の法律では堕胎と出産が同数である。
<下町散策-浅草>
○祭り
・浅草の「三社祭」は浅草寺の「祭り」ではなく、浅草神社の「祭り」です。
・「祭り」には2種類ある、一つは地域住民のため、もう一つは外部から人を呼び込み、経済効果を期待するものです。北海道の「YOSAKOIソーラン祭り」は学生が企画した「祭り」で、成功した例です。
○病院/幼稚園
・病院などの社会福祉法人は所得税/固定資産税を大幅に免除されます。幼稚園も社会福祉法人で、お寺がよく経営している。
○マンホール
・歩道に貼られたベージュ色のレンガは、汚水処理の残滓から作られています。※知らなかった。
・今のパイプは「雨水」と「汚水」が設置されていますが、かつては雨水と汚水を同じパイプに流す「合流」が行われていた時期がある。
○酒屋
・「お酒」の流通は「総卸し」→「仲卸し」→「小売」と昔と変わっていない。また「お酒」の販売は免許制で、「人口基準」などの規制が厳しかったが、今は緩和されている。
○シャッター商店街
・シャッター商店街が多くみられます。商店街の再開発を大手ディベロッパーに任せるのではなく、商店主による再開発を行政がファンドで支援するのが望ましい。
・滋賀県長浜市では「黒壁銀行」を中心にガラスショップ・工房/ギャラリー/美術館/レストランなどが作られ、「魅力的な町」の1位に選ばれた。
○アニメ
・アニメは日本のコンテンツ産業を代表します。政府はアニメを輸出産業として支援すべきです。
○場外馬券売り場
・場外馬券売り場「ウインズ」の誘致を、地方自治体は経済的効果から賛成しますが、地域住民は反対します。
・ちなみに競馬は農林水産省、競艇は国土交通省、競輪は経済産業省、「スポーツ振興くじ」は文部科学省の管轄です。※知らなかった。
○PFI
・吾妻橋は1769年江戸商人が幕府の許可を得て建て、成功した例です。今日の日本でもPFI(プライベート・ファイナンス・イニシャティブ)を行われていますが、不十分です。
○ガソリン価格
・原油価格が1バレル当り100ドルを超えると、ガソリン価格が一斉に上がりました。要するに、それまでは石油メーカーに利益があった訳です。
<大都会散策-銀座・六本木>
○危機管理
・電線/マンホール/送電所/電車など、天災やテロに脆弱な施設が多く存在します。日本は右傾化し、米国と中国の対立が明らかになってきました。国民/政府は危機管理にもっと関心を持つべきです。
○高級ブランド店
・地価の高い銀座に、高級ブランド店が沢山ありますが、これは売上が目的ではありません。目的は「あこがれ」を持ってもらうためで、買ってもらうのは海外の店で良いのです。
○ガス灯
・銀座の通りにガス灯が設置されていますが、デザインが冴えない。これは行政(国土交通省)が「パブリック・マネジメント」(公共の経営)ではなく、「パブリック・アドミニストレーション」(公共の管理)になっているからです。
○六本木ヒルズ/東京ミッドタウン
・六本木は六本木ヒルズや東京ミッドタウンの完成で注目されています。六本木ヒルズの土地は毛利藩邸から陸軍、米軍と所有が変わり、町は欧米風になりました。1959年テレビ朝日が購入し、その頃から森ビルが中心となり再開発が進められ、2003年六本木ヒルズがオープンしました。「ヒルズ族」には、地権者である一般住民も含まれています。
・東京ミッドタウンは2007年に開業しました。こちらは防衛庁跡地の払い下げ後、三井不動産/安田生命/積水ハウスと地元住民と出店各社により計画が進められました。この手法は各地での駅前再開発の参考になります。
○首都高速下の駐車場
・首都高速下の駐車場は公益法人「東京都道路整備保全公社」が運営しています。駐車料金と都から迷惑・違法駐車防止で収入があると思われます。また天下りも入っていると思われます。
○国立新美術館
・国立新美術館は2007年開館しました。これは日米貿易摩擦の解消のための「新公共事業」によって建てられたと思われます。
○大学院大学
・「政策研究大学院大学」は国立大学で、現役の公務員が学んでいます。事務員のトップには文部科学省の天下りが就き、その下のスタッフには縁故採用の旧公務員が就いています。事務員と教授との力関係は、縦割りなので平等です。
※最近聞き慣れない大学があると思ったら、そんな大学なのか。
○病院
・医学界では、以前は外科の権威が高かったのですが、外科は患者から訴えられる可能性があり、外科/産科/小児科の人気が下がり、麻酔医の人気が高まっています。産科医は女性が多く、労働時間も過酷なので不足しています。
○ドラッグストア
・英国の医療制度は包括医療制度(NHS)なので、医師は収入を保証されており、薬を出し惜しみする傾向にある。一方日本の医療制度は「出来高払い」なので、過剰医療になる。政府はNHS方式を導入しようとしていますが、「日本医師会」が反対しています。※医療制度も様々あるな。
○地下鉄
・土地の所有権は、民法では「土地の上下に及ぶ」とされています。しかし土地バブルにより2001年「大深度法」が施行され、地下40m以深は公共事業なら使用可能となりました(三大都市に限定)。
<農村散策-鳥沢>
○休耕田
・1942年「食糧管理法」により、米は農家から高く買い取り、消費者に安く販売し、差額を国が負担する事になりました。その後米が余るようになったので、休耕田に補償金を出す政策(減反政策)を導入しました。これにより農家に立派な家が建っています。
・企業が払っている税金は50兆円に及びます。一方農家は農地の固定資産税は殆ど無税(1800円/アール)で、逆に補助金(休耕田1枚30万円)をもらっている状況です。農業の保護政策を止めて、普通の競争産業にすべきです。
・また農林水産省は「構造改善事業」で予算を確保し、農地を整備しています。
○河川
・日本には国が管轄する「一級河川」が13,994水系、地方自治体が管轄する「二級河川」が7,090水系あります。繋がる河川すべてが対象なので「水系」と云っています。
○遺伝子組み換え作物
・日本では遺伝子組み換え作物に抵抗がありますが、品種改良と変わりありません。
○山村留学
・近年長期・短期の「山村留学」が行われています。「山村留学」には山村の経済が活性化したり、子供のアトピーが直るなどの効果があります。
※SEALDs奥田愛基が沖縄で学生生活を送った話は聞いた事がある。
<郊外都市散策-立川>
○私立大学の広告
・電車内で私立大学の広告をよく見るが、これは自分達が「教育サービス産業」である自覚がなく、保守的で安易な方法である。
・立命館大学は大分県に「立命館アジア太平洋大学」を開校し、世界各国から学生を受入れ、英語で授業をしている。※秋田県にも同様な大学があった気がする。
○消費者金融
・駅前では消費者金融のビルと看板が目立つ。
・日本の銀行は担保主義なので、担保がないとお金を貸さない。担保がない人は消費者金融で借りるしかないが、消費者金融は信用度と関係なく金利10%で一律のため、「貸し渋り」により中小企業の倒産が増えた。
○スポーツクラブ
・駅前のスポーツクラブは活況である。
・政府は医療費抑制のための「予防医療」から「特定健診制度」を開始した。国保には大企業と中小企業で差があるなど問題が多く、「特定健診制度」の目玉である「メタボリックシンドローム」(メタボ)は有名無実化する可能性がある。
○外国人犯罪
・近年外国人犯罪が10倍に急増したとされるが、その判断には慎重を要する。まず外国人自体が増えている、さらに来日する外国人の大半は、犯罪率が高い若者です。日本人の若者と比較する必要がある。
○ワーキングプア
・小泉構造改革で「ワーキングプア」(年収200万円以下)が増えたとされる。しかし「ワーキングプア」でも親と同居するなど、生活に困っていない人がいる。実際に生活に困っているのは、都会で自活している入社したて(年収200万円程度)のOLです。
・また「ワーキングプア問題」の本質は経済面ではなく、精神の荒廃にある。欧米ではカウンセリングが充実しています。
○ネットカフェ
・ネットカフェに泊った事がある、彼らは小奇麗で「ネットカフェ難民」に思えなかった。
○生命保険会社
・駅前の一等地には、大概生命保険会社のビルがある。戦後生命保険会社は「保険のおばちゃん」に高級将校の未亡人を採用した。その理由は元部下が加入してくれるからです。
・生命保険に加入していると所得控除を受けれる。政府が生命保険会社を優遇する理由は、国債を買ってくれる事と、天下り先だからである。
○郵便局
・どこの町にも郵便局がある。郵便局には国際的な社会貢献をする「国際ボランティア貯金」がある。著者はそのお金の使われ方を視察した事がある。ネパールは砂漠が多く、失明率が30%の町があり、目の不自由な女性に乳絞りの牛(1頭5万円)を援助していた。また体育館(300万円)も援助していた。※知らなかった。
○スーパー
・食品には「消費期限」と「賞味期限」が表示されている。「賞味期限」はJAS法で規定されているが、業者の自主規制に近い。またメディアは「賞味期限」が切れていたと頻繁に騒ぐ。「賞味期限」は不要なのでは。
○マンション
・最近「空きマンション」をよく見る。マンションの流通は「建設業者」→「不動産ファンド」→「消費者」となっている。政府は銀行の「不動産ファンド」への貸出に引当金を設けた。これにより銀行は貸し渋り、マンション取引が滞留している。※不動産バブル対策かな。