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『北京レポート 腐食する中国経済』大越匡洋(2016年)を読書。

日本経済新聞社の記者として2012年から2016年まで4年間中国に駐在し、そこでの取材から中国の状況(主に2015年)を解説しています。
「共産党政権自体がリスク」が基本で、腐敗/元切り下げ/不動産バブル/株バブル/構造改革などを解説しています。
中国に対する評価は一般的なものと変わりませんが、それを多くの取材から解説しています。

余剰にはバブルが必然なのを感じます。特に中国では投資先が一点に集中するのでリスクが高い。
バブルの根源は金融危機直後の4兆元対策にあり、かつてから国民全員が一斉に「右へ倣え」させられる体制もリスクです。
もう少し言えば、中国バブルは不動産などによる官製バブルです。

お勧め度:☆☆(中国に関心が高い人向け。ページ数は多いが、文章は難しくない)

キーワード:習近平、反腐敗運動、中高速成長、全国人民代表大会(全人代)、薄熙来、新常態、SDR、元切り下げ、株バブル、影の銀行(シャドウバンキング)、4兆元対策、李克強、土地使用権、新区/鬼城、一人っ子政策/相続税、戸籍、灰色収入/不作為(サボタージュ)、終わりなきバブル、AIIB(アジアインフラ投資銀行)、新シルクロード構想(一帯一路)、南シナ海領有権問題/九段線、不買運動/愛国主義、2つの100年/中国の夢、正当性/抗日・反日、市場との対話、元買い介入、供給サイドの改革/過剰設備、宅配業/高鉄

<はじめに>
・中国の中間層の多くは、中国からの脱出を考えている。著者も中国の先行きに不安を感じているが、中国人自身も同様である。

<党員9千万人の岩盤>
○党が一切を指導
・習氏は「核心」とされ、内政/経済/外交/言論/文化/改革など全ての分野でトップにいる。習氏は権力基盤を固めるため「反腐敗運動」を展開している。当初は「習李体制」と考えられていたが、今はそれは死後になっている。

・習氏の父は元副首相習仲勲で、習氏は「紅二代(革命第2世代)」である。2016年習氏は政治局常務委員会で「党が一切を指導する」と宣言する。
・習氏への権力一極集中が進む中、中国経済は「高速成長」から「中高速成長」に減速している。

○官製メディアの幹部が殴られる
・高級料理店での同窓会で「官製メディア」の中堅幹部が殴られる。彼は公務員なので格安でマンションを2軒取得し、それを自慢したため殴られた。中国では権力との距離によって利得で差が出る。
・改革派経済学者呉敬璉は「社会矛盾は臨界点に達した。改革を始めなければ」と言う。

・2016年全国人民代表大会(以下全人代)で李克強首相は、「供給側(サプライサイド)改革」「新経済(ニューエコノミー)の発展」「中高速成長の維持」を演説する。
・「反腐敗運動」により官僚は縮こまり、「不作為(サボタージュ)」している。前述呉氏は「革命は不要だが、改革が必要」と言う。

○臭いものには
・「薄熙来」は重慶市のトップであった。その際暴力団撲滅キャンペーンで民間資産を没収し、私有したとされる。彼の裁判は「ワイドショー化」されたが、重慶市での行動は隠蔽された。彼の腹心で公安局長だった王立軍は、「金持ち名簿」を彼に渡したと云われている。

○反腐敗運動の衝撃
・軍幹部は数万円する高級白酒/高級ワインを飲酒している一方、農村から出て来た「農民工」は月1万円もしない地下室で生活している。
・「反腐敗運動」で「付け届け」に使われる「買物カード」の売上が減少し、百貨店の売上は2割減った。

・庶民は「反腐敗運動」を冷めた目で見て、「腐敗していない幹部はいないのでは」と言う。広東省深圳には「習一族」のビルが建ち、「パナマ文書」には「習一族」の名前がある。

○「新常態」を叫ぶ
・「新常態(ニューノーマル)」とは「リーマンショック後に世界経済が立ち直っても、以前の状態に戻らない」と云う考えである。
・中国人民銀行(以下人民銀)の周総裁は「軟約束」(政府を当てにして、返す当てのない資金を借りる)の改革を訴えた。しかし庶民は高利で資金を借りて、「理財商品」を購入した。

・習指導部は2013年地方幹部の人事評価を変更する。以前は経済規模/成長率が主要指標であったが、それに環境保護/省エネ/過剰設備解消などの重要指標を加えた。
・2016年全人代で李首相は「供給側改革」を掲げたが、これは過剰設備解消/「ゾンビ企業」淘汰などの構造問題の言い換えに過ぎない。

<「市場を管理せよ」の大号令>
○指導者のメンツ
・中国には2021年(共産党結成100年)/2049年(中国建国100年)の「2つの100年」がある。

・「中国の夢」に「元の国際化」がある。中国には外貨への両替金額の上限などの規制があり、2010年元は自由度をクリアできず「SDR」に採用されなかった。。2015年11月金利自由化を行い、SDRへの採用が決定する。SDR採用を成就した人民銀へ、金融監督当局が再編されつつある。
・2015年8月人民銀は突然元を切り下げる。これは市場の混乱をおこし、世界経済における中国リスクを露呈した。

○市場との対話より党内の風向き
・2015年8月「元切り下げ」から中国経済の減速が懸念され、世界的株安になる(人民元ショック)。前月の輸出額減少が「元切り下げ」のダメ押しになった。

・2015年6月から中国株は急落していた。人民銀は利下げで、関係当局は株式投資手数料の引き下げなどで対応するが、「焼け石に水」だった。
・2015年上半期「真の実質経済成長は5%」がインターネットに流れ、生産能力の過剰から製品価格は下落していた。中国当局の経済統制に対する信頼感は揺らいでいた。

・習指導部は「株価急落」のデマをネットに流したとして、200人を摘発し、さらに「世界株安の原因は米国の利上げ」と反論した。
・2015年9月習指導部は「レバレッジが高まり、リスクが溜まっていた」「中国株の下落が世界に影響を与えた」と「株バブル」と認める一方、「中国経済のファンダメンタルズは強い」と弁明した。

○ルールはババ抜き
・株価急落に対し証券監督管理委員会が導入した「サーキットブレーカー」は4日で撤回された。習指導部は国際的なメンツを失った。2016年2月証券監督管理委員会の肖鋼は「株バブル」の責任から更迭される。彼は「影の銀行(シャドウバンキング)」を「ネズミ講」と断じていた。

・内モンゴル自治区オルドス市/河北省邯鄲などで不動産価格の下落から不動産開発会社が破綻した。国有銀行は庶民を相手にせず、海外への投資も禁じられているため、「影の銀行」に投資するしかない。
・2016年ネット金融「e祖宝」の倒産により、庶民は北京市の陳情受付に殺到した。※群がる中国人

○4兆元対策の亡霊
・粗鋼生産能力の過剰は4億トン(日本の年間生産能力の4倍)ある。生産過剰から鉄筋/石炭価格が2割減少するなど、価格が下落している。国有企業では従業員を解雇できず、赤字経営になっている。
・2008年胡錦濤指導部は「4兆元対策」を打ち出す。これは世界経済の「救世主」になったが、今はその亡霊に苦しんでいる。

・中国の経済成長の減速は、実は2007年から始まっていた。本来は構造改革(国有企業の効率化、金融市場の開放、資源の再配分など)が必要であった。
・甘粛省蘭州市では山を崩し、25K㎡の「新城(新しい街)」を造成している。

・習指導部は4つの過剰(①製造業の過剰設備②住宅在庫③地方政府の借金④企業の高コスト)の解決に向け、「新常態」を口を酸っぱくして唱える。

○李克強の焦り
・2015年の経済成長率は6.9%となり25年ぶりの低い伸びとなる。経済を指導する李首相の存在感は日増しに低下している。習氏との不仲説もあり、2017年共産党大会で首相から外れるとの噂もある。
・2016年1-3月地方政府の資金調達を手掛ける「融資平台」の債務発行額が5千億元を超えた。目先の景気回復をもくろむ李首相と、長期での構造改革を目指す習氏との対立があるのでは。

・中国王朝崩壊の原因は腐敗とインフレである。共産党が国民党を打ち破ったのは、国民党による腐敗とむやみな通貨発行によるインフレである。1989年「天安門事件」の原因も価格統制撤廃によるインフレとされる。その点では今は低インフレで心地よい状態と云える。

<土地は金なり>
○古びた打ち出の小槌
・中国の地方政府は「土地使用権」を不動産開発会社に売却して収入を得ている。その額は歳入の3割を占める。2015年その収入が前年割れとなった。これは過剰につくった住宅在庫が原因である。

・鄧小平は改革開放路線を進める一方、この「土地使用権」を売買する仕組みを整えた。財源が限られる地方政府は「融資平台」をつくり借金を重ねても、「土地使用権」の売買で返済できる仕組みであった。※こんな仕組みなのか。
・2014年3月末に返済期限が来た地方政府の借金で、579億元は借り換えで対応したが、8億元はデフォルトになった。

○「鬼城」の実像
・内モンゴル自治区オルドス市は20万人が住める「新都心」を建設したが、現在は4万人しか住んでいない。河南省鄭州市には高層ビル/高級マンションが建てられたが、空きオフィス/空き部屋が目立つ。
・地方政府は旧市街が過密になると郊外に「新区(ニュータウン)」を建設する。しかしその多くは「鬼城(ゴーストタウン)」になっている。

・貴州省貴陽市は人口400万人にも拘らず、500万人を吸収できるニュータウンを建設している。遼寧省瀋陽市のニュータウンには建設途中で止まったマンションが見られた。直轄地重慶市には「マンションを1軒購入すれば、1軒サービスします」の宣伝もあった。

・個人が資産運用するには不動産に投資するしかなく、「土地神話」は根強い。
・中国は「一人っ子政策」のため、結婚すると双方の両親から住宅を引き継ぐ。しかも中国には相続税がない。

○都市化の虚実
・習指導部は「人の都市化」(農民を都市住民に変える)を強く指示している。
・薄熙来がトップを務めた直轄地重慶市は「地票取引制度」のモデル地区だった。「地票取引制度」は農村の農地を増やす一方、都市の開発を可能にする制度である。※説明が難しい。

・李首相は「3つの1億人問題」を表明した。3つの1億人とは①農民工の都市定住②内陸部での都市拡大③老朽住宅の再開発である。
・中国では「城市」(大都市)と「鎮」(人口数万人の町)を都市としている。2011年に都市化率は50%を超え、2015年には56%まで上昇した。習指導部には小規模都市への戸籍移転を緩和し、サービス業を育成する思惑がある。

○格差を広げる官製経済
・中国の公務員は格安で住居を取得できる。これを転売して利益を得ることも多い。また公務員は福利厚生も厚く、謝礼/贈答品などの「灰色収入」もある。贈答品などの「灰色収入」は、GDPの2割から3割あるとされる。
・2014年春、建設業者から「今年は投資の認可が下りない」とため息が聞かれた。これは「反腐敗運動」が厳しく、公務員が「不作為(サボタージュ)」しているためである。※そこまで腐っているのか。

○終わりなき中国式バブル
・2015年の中国バブルは中国指導部の制御でなんとか沈静化した。しかし中国では「終わりなきバブル」が続く。
・2015年GDP実質成長率は「7%前後」で踏み止まった。しかしそれを支えたのは金融業である。

・2015年の「株バブル」は住宅市況の不振から、習指導部が株式投資を煽ったためである。習指導部は「新シルクロード構想(一帯一路)」「国有企業改革」「環境保護」などのスローガンを掲げ、株式投資を煽った。
・2015年「株バブル」が崩壊すると証券会社による株価維持政策(PKO)や新規株式公開(IPO)の延期などの対策を取るが、庶民の怒り/不信感は治まらなかった。

・「株バブル」がはじけると、余剰マネーは大都市(北京、上海、深圳など)の不動産市場に舞い戻った。中国では住宅ローンなどには頭金が必要だが、抜け穴もあり、あっと言う間に融資規模は1兆元になった。
・中国では官が切っ掛けをつくり、民が群がるバブルは繰り返される。

<強国への渇望「中国の夢」>
○AIIBの挑戦
・2015年3月英国がAIIB(アジアインフラ投資銀行)への参加を表明すると、ドイツ/フランス/イタリアも追随する。金立群(後のAIIB総裁)は日本の参加を促すが、日本は首を縦に振らなかった。

・中国がAIIB設立に踏み切った遠因に、米国によるIMF改革の停滞やイラン/スーダンと取引した銀行への制裁がある。これにより中国は欧州/アジア/中東に決済銀行10ヵ所を新設する。
・2015年末AIIBは当初アジア21ヵ国の予定が、57ヵ国で発足する。

○きしむ米中関係
・2016年6月「アジア安全保障会議」で米国国防長官は「中国は孤立している」と発言する。
・2013年6月訪米した習氏はオバマ氏に「太平洋は米中を受入れる空間がある」と発言するが、米国は相手にしなかった。11月中国は東シナ海に「防空識別圏」を設け、南シナ海では岩礁を埋め立て、軍事拠点化する。

・2013年3月日本がTPP参加を表明すると中国は焦り、「新シルクロード構想(一帯一路)」を国家戦略に格上げした。中国と米国は、経済/政治/外交/軍事など様々な領域で対立が明らかになる。

○覆された「九段線」
・2016年7月ハーグ仲裁裁判所が「南シナ海領有権問題」の判決を下す。これは「九段線」を否定し、中国の全面敗訴になる。
・中国は台湾/チベット/南シナ海を「核心的利益」としている。そのため判決に対し、甘粛省/湖南省/江蘇省などでアップル製品/ケンタッキー・フライド・チキンなどの「不買運動」が起こった。

・AIIBの顧問に鳩山元首相が就いた。これは「孤立していない中国」の演出である。
・前述したが、中国の中間層は”いち早く子弟や財産を国外に脱出させること”を考えている。「愛国主義」を心から叫ぶ人は、経済発展に乗り遅れた貧しい人達である。※中国の所得構成はピラミッド型だよな。

○出発点は陰謀論
・中国には「陰謀論」(外国勢力が中国政権の転覆を謀っている)があるが、これは被害妄想と紙一重である。
・2013年3月日本のTPP参加表明で、中国の焦りは沸点に達した。これへの対抗から「新シルクロード構想(一帯一路)」を打ち出す。当初は経済目的だったが、安全保障も含めた国家戦略になった。中国は原油の対外依存が6割に達するため、南シナ海/マラッカ海峡は最重要である。

・習指導部が「一帯一路構想」を表明したことにより、様々な投資計画がこれに結び付けられた。ドイツから重慶市に専用列車で自動車部品が輸入され、重慶市からはノートパソコンなどが輸出された。しかし採算は取れていない。
・トルコのクンポート埠頭やギリシャのピレウス港は「中国の港」となり、中東欧では中国による鉄道建設が始まっている。

○2つの100年
・習指導部は「”大国”から”強国”へ」をスローガンにしている。技術革新/ブランド確立を目的とし、製造業の10分野(IT/ロボット/バイオなど)を重点産業に定めた。
・中国には2021年(共産党結成100年)/2049年(中国建国100年)の「2つの100年」がある。2049年には富強/民主/文明/調和で社会主義を現代化する「中国の夢」がある。「中国の夢」は「中華民族の偉大な復興」と云える。

・中国は「自由、平等、公正、法治、富強、民主、文明、調和、愛国、勤勉、誠実、友好」の12語を核心的価値としている。しかし自由/民主/法治などは西側のものと異なる。中国の民主は自由な選挙を認めていない。そもそも中国では西側の「基本的人権」が認められていない。
・習指導部は共産党の正当性を示すため、「中国の夢」「中華民族の偉大な復興」を唱え続けるしかない。

○日本という隣国
・2012年9月中国商務省の定例記者会見で「反日デモの補償をどう考えているのか」の質問に、報道官は「①違法行為に反対する②中国は法治国家なので、外資の権利は保護される③外資は公安/商務部門に支援を求めること」と回答する。「尖閣諸島の国有化に経済制裁するのか」の質問に、「不法な行為(国有化)の責任は日本にある」と回答する。

・2012年9月中国各地で反日デモが起こる。北京の大使館前には1~2万人が集まり、パナソニックの工場では破壊や放火があり、トヨタ自動車の販売店も放火された。
・中国では「尖閣諸島は中国領土」と説明しており、庶民からは「また日本は中国に侵略したのか」の声もあった。

・習指導部に変わると日中関係は悪化の一途をたどる。2014年9月3日を「戦争勝利の記念日」に定める。翌年の当日には、盛大な軍事パレードを実施する。習指導部は共産党の正当性を示すため、抗日/反日を利用している。

・一方で2015年訪日中国人は前年比で倍増する。また日本の文化/生活をビジュアルに紹介する雑誌『知日』は月5~10万部売れている。

<中国崩壊論の虚実>
○ソロス氏への過剰反応
・2016年1月統計局長が臨時記者会見で「中国経済は安定している」と発言する。これは直前のダボス会議でのソロス氏の発言「中国経済のハードランディングは不可避」に対処するものであった。
・中国リスクは中国当局が市場と対話しないことにある。人民銀の周総裁は「中国は世界最大の外貨準備を持つ」と発言し、実際元安を継続的な「元買い介入」で阻止した。

・2015年中国は為替介入で外貨準備を5千億ドル減少させ、それが元売りの悪循環を生んだ。人民銀は市中銀行の預金準備率を引き下げ、「元買い介入」による流動性低下を防いでいた。
・中国当局は「元買い介入」を継続しているが、その詳細は明らかにせず、宣伝文句「中国経済は安定」を繰り返すだけである。この不透明から不信感/不安感が募っている。

○鉄余り、日本4つ分
・2016年2月清華大学教授は「中国経済は金融政策だけでは問題を解決できない、”供給サイドの改革”が必要だ」と発言する。
・2016年3月李首相は全人代で「”ゾンビ企業”に適切に対処する」と「供給サイドの改革」を宣言する。

・中国の粗鋼生産能力の過剰は4億トンあり、日本の年間生産能力の4倍もある。李首相は「15年までに9千トン減らし、さらに1億~1億5千トン減らす」と発言するが、一時的に休止しただけなので、実際は1~2億トン増えている。過剰設備が解消しないのは、鉄鋼業の半数以上が民営化されていることによる。

・石炭価格の下落で、国有石炭会社では管理職の出勤が半分になったが、給与も半分になった(隠れ失業問題)。中国には過剰設備/デフレ圧力/雇用不安など複合的なリスクがある。
・中国が「中所得国の罠」に陥るかは構造改革(供給サイドの改革)に掛かっている。

・一方インターネット通販は3割拡大し、1990年代はGDPに占めるサービス業の割合は3割であったが、今は5割を超えている。

○北京、上海、わが世の春
・中国の都市部では「電動車(電動自転車)」が普及している。インターネット通販の拡大で宅配業者は「電動車」を増やしている。また宅配業の配送員は製造業に代わる雇用の受け皿になっている。
・一方地方では「高鉄(高速鉄道)」の誘致合戦がし烈である。「高鉄」誘致による不動産価格上昇は、庶民が手っ取り早く豊かになれる近道である。

○忍び寄る老い
・2016年1月習指導部は「一人っ子政策」を撤廃し、「二人っ子政策」に変わった。「一人っ子政策」による無戸籍者が1300万人いると推定される。
・2015年4月重慶市で医療費の自己負担が突然2倍になる。しかしその直後の抗議デモで、6日後には白紙撤回となる。中国の医療保険制度が始まったのは1990年代で、まだ未成熟と云える。※中国でも民主的なことが起きるんだ。

○「L字」志向の落とし穴
・政府系シンクタンクの元副主任は「過剰設備の解消/ゾンビ企業の淘汰と云った構造調整をしなければ、経済は安定しない」と発言する。党中央財経指導小組弁公室主任の劉鶴(習氏の経済ブレーン)は「383報告」で土地/金融など8分野の改革を提起する。
・2013年習氏は「3中全会」で「市場に決定的な役割を果たさせる」方針を打ち出す。しかし金利自由化など一部では進展が見られたが、程遠い状態と云える。

・雲南省大理の「洱湖」湖畔に旅館経営者が旅館を建設していたが、水質改善からいきなり中止になる。「洱湖」湖畔に廃墟が連なる。※市場と対話していない。
・2015年1~9月期の造船受注は前年から7割減少し、造船会社の経営破綻が相次いでいる。

・2016年3月末不良債権は1兆4千億元となり、前年から4割増えた。中国は10年でGDPを2倍(年7%成長)にする計画だが、地方のインフラ投資は加速するが、構造調整を後回しにしている。これは以前の方法と変わらない。

・中国指導部は短期の景気を下支えする力はあるが、中長期の安定成長を保てるかは疑問である。英国の歴史家は「権力は必ず腐敗する」と断言する。

<終わりに>
・言い掛かりでしかない理由で拘束された中国人に「中国と日本、どちらが明るいか」と尋ねると、「やはり中国が良い」と答える。中国の民衆には活力が溢れている。彼らには手っ取り早い金儲けに走る傾向があるが、「がんじがらめの規制」をかいくぐる「イノベーション」に長けている。

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