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『AI経営で会社は甦る』冨山和彦を読書。

デジタル革命第3期(IoT、ビッグデータ、AI)と、またそれによって経営がどう変わるかを解説。前半はデジタル革命、後半は経営/人材を解説。
第2期はグローバル/カジュアルでアップルなどが勝利したが、第3期はローカル/シリアスなので勝者は変わるとしています。

IT用語/経営用語の羅列なので、関係者でないと難しい。また原則はシンプルだが、実例を多く挙げて説明するので、冗長的に感じる。

お勧め度:☆(ページ数が多い、主に経営者/イノベーター向け)

キーワード:デジタル革命、グローバル/カジュアル、ローカル/シリアス、AI、ビッグデータ、人材、スマイルカーブ現象、ハイブリッド経営/クローズ型組織/オープン型組織、自動運転、アマゾン、ローカル型産業/中堅中小企業、フェアユース一般条項、一国二制度/ワイガヤ経営、プロ経営者、ヒューマンキャピタル(人的資本)、産学連携、グローバル人材、カンブリア爆発

<はじめに>
・ここ数十年デジタル革命が続いているが、日本はその本質を理解できず、乗り遅れている。
・近年のデジタル革命第3期ではAI/ディープラーニングが注目されているが、これはあくまで道具であって、必要なのはビジネスセンス(ビジネス力)である。

・デジタル革命第3期には2つの特徴がある。1つ目の特徴は「グローバル」から「ローカル」への流れである。安倍内閣が打ち出した「地方創生」「働き方改革」はこれに対応する。2つ目の特徴は「カジュアル」から「シリアス」への変化である。第2期はインターネット内での「バーチャルな世界」であったが、第3期は物と結びつく「リアルの世界」に移る。

・経営は、このローカル/シリアスを掴めるかに掛かっている。
・第2期の勝者の組織はプロフェッショナルモデルであったが、第3期でサラリーマンモデルの日本に勝機はあるのか。

<AI革命の真相>
○「バーチャルの世界」から「リアルの世界」へ
・デジタル革命第3期(IoT/AI)により、発電設備/航空エンジン/建機/自動車などでは単にモノを売るのではなく、より高効率/高利便性のサービス/コトを売るようになる。

・第1期では、ダウンサイジング/水平分業化で「ウィンテル」がIBMに勝利した。
・第2期はユビキタス革命で、アップル/サムスン/クアルコムやグーグル/アマゾンが勝利する。

・今やIoT/ビッグデータ/AIによってデジタル革命第3期が始まっている。これまでのデジタル革命はサイバー空間に限られていたが、第3期は「リアルでシリアスな世界」に及ぶ。よってこのイノベーションは情報処理産業だけでなく、全産業に影響を与える。
・ドイツが「インダストリー4.0」を掲げているが、これは生産管理を企業横断的に行うもので、大した事ではない。

・第3期ではトヨタのライバルはライドシェアの「ウーバー」やレンタカー会社になると考えられる。要するにモノを売っても利益は出ず、コトを売る事で利益を得られるようになる。

○「稼ぐ」構造が根こそぎ変わる
・マイクロソフトのMS-DOSは優れた製品ではなかった、検索エンジンを開発したのはヤフーであった、日本の液晶/半導体は世界最先端であった、いずれも最先端の技術を持った企業が勝者にはならなかった。要するに「稼げるビジネスモデル」を構築できるかが重要である。

・AI研究は人材の流動性が高く、アルゴリズムもオープンなので、「稼ぐための技術」は独占されない。よって無理にキャッチアップしたり、諦めるのではなく、AI技術を柔軟に取り込む事が重要である。
・日本的経営は同質性/連続性/すり合わせ/ボトムアップ/コンセンサスの特徴があり、「あれも、これも」の経営である。これを致命的欠点にしないため、「あれか、これか」の選択が必要になる。

・デジタル革命により「スマイルカーブ現象」が起き、「ファブレス化」が進む。「スマイルカーブ現象」とは川上(サプライヤー)/川下(サービス提供者)は利益を出せるが、川中(組立)は利益を出せない事を云う。
・「ブロックチェーン」により銀行の巨大なシステム/支店網は不要になる。「小さい事、若い事」が優位になる。
・以上のように不確実な事が多く、経営力が問われる時代になる。

○「シリアスな世界」でのAIの進化
・「生産性」が高まると、生産者の所得が上がり、結果として消費力/投資力が増え、好循環を生む。AI技術はこの「生産性」を高める。
・「ネットビジネス」はフリーライド構造/限界費用ゼロでメガベンチャーが生まれた。逆に云えば参入障壁が低く、利益を上げるのは困難になる。

・「ビッグデータ」の活用は以前から行われていた。しかし「ビッグデータ」に有効なデータが含まれているのか、データの鮮度に問題はないか、分析結果にどれだけの価値があるのか、など課題が多い。
・「ビッグデータ」をAIが分析し、有効なデータを判断する。導かれた判断に則り、IoTはさらに有効なデータを収集し「ビッグデータ」に蓄える。これはAIによる好循環で、「リアルでシリアスな世界」でこれを起こせるかが重要である。

○日本に勝機
・欧米では仕事を奪われるため移民同様、AI導入に抵抗がある。一方日本は少子高齢化から人手不足で、AI導入に肯定的である。
・ローカル経済に積極的にAIを導入すべきを、政治はタクシー業界で失業者が出るなどと規制緩和しない。人手不足を解消するためには、どんどん規制緩和すべきである。
・AIは「死の谷」を越え、事業化/製品化の段階にある。

・製造業は既にロボット化が進んでいるので、AI導入の効果は小さい。一方リアルの医療/介護/接客サービス、さらには交通/運輸/物流サービスへのAI導入は効果が絶大である。
・AIは馬/牛/蒸気機関/自動車などと同様、あくまでも道具であって、人間が苦手な仕事/嫌な仕事を置き換えれば良い。ヒト型ロボットに拘る必要はない。

○オープンイノベーションとブラックボックス化
・デジタル革命第2期はスピーディーな対応で利用者/メニューを増やしたメガプラットフォーマー(グーグル、フェイスブック、アマゾン)が生まれた。第2期はオープン化が根本であったが、第3期になると対象が自動運転/介護/採掘などになるため個別化する。また現地でのメンテナンスが必要になるため、ローカル性が重要となる。すなわち第2期とは反対にクローズ化/ブラックボックス化する。

・例えば機械系のAIを開発する場合、機械学習で得られたデータを基本として、経験蓄積したハード技術と実用蓄積したフィードバック情報から他社と差別化できるAIを開発できる。※難しいが何となく分かる。
・AIは「いいとこどり」すれば良い。アダム・スミスやリカードが言ったように「比較的劣位は捨て、比較的優位を利用する」が基本である。

・AIのトップエンジニアは流動性が高い。よって優秀なエンジニアを囲い込むことは難しく、有期契約になる。人材に対してもシェアリングエコノミーの発想が必要である。
・AIのアルゴリズムの開発は力仕事ではない。優秀なエンジニアがいれば、少人数で開発できる。要するにアカデミズムの差が出る。米国がAIで先行しているのは、カーネギーメロン大学/MIT/スタンフォード大学/カルテック/トロント大学が優れているから。

・欧米の新薬メーカーは合併により川下(臨床実験、認可取得、マーケティング)をメガファーマ化し、製薬メーカーは川上(バイオ創薬、ゲノム創薬)にシフトして成功した。これは今後の戦略の参考になる。※これも何となく分かる。

○日本の自動車メーカーは生き残れるか
・「スマイルカーブ現象」は川上(企画、設計、部品)/川下(販売、メンテナンス)は利幅が取れるが、川中(製造、組立)で利幅が取れない現象を云う。笑顔の口の形から来ている。
・パソコンで川上(インテル)と川下(マイクロソフト※UIなのでここか)に挟まれた日本のパソコンメーカー(川中)が敗れたのも、この現象である。
・インターネットで川下(グーグル、アマゾン、アップル、フェイスブック)と川上(クアルコム、アーム)が勝ったのも、この現象である。※負けはどこだろう。

・川上または川下にシフトできない会社は致命的になる。サンヨーしかり、シャープしかりである。パソコンで敗れ、AV家電で敗れ、次は自動車にその波が来る。
・ドイツのフォルクスワーゲンはモジュール化が進み、そこにコンチネンタル/ボッシュが標準モジュールを供給している。水平分業型モデルのため、ドイツは自動運転で先行している。

・一方日本のメーカーは、どこも作り込み型企業なのでモジュール化は進んでいない。しかし個々のパーツの精度/性能/耐久性への要求は非常に高く、これらを満たすには、日本の長期雇用による技術の蓄積(連続性)は優位である。

<なぜ日本企業は有利か>
○ハードとソフトの融合が焦点
・デジタル革命第2期は「バーチャルでカジュアルな世界」であったが、第3期は「リアルでシリアスな世界」になる。第2期ではソフトの修正で問題を解決できたが、第3期になると、どの部分をソフトで解決し、どの部分をハードで解決するか「すり合わせ」が必要になる。第2期と第3期では理論が全く異なるので、第2期の勝者が第3期の勝者にはならない。

・日本のメーカーは「クローズ型組織」で連続性があり、ハードウェア技術の蓄積で有利である。米国のメーカーはファブレス化し、ボーイングは部品を組み立てるだけである。※当然企画はしていると思う。

○ハイブリッド経営
・これまでのデジタル革命での日本企業の敗因は、組み込みソフト開発会社が不当に低い地位に甘んじた事による。この敗因は自動車で圧倒的なシェアを占めながら利益を出せなかったルネサステクノロジにも当て嵌まる。

・日本企業は基幹業務システムでもERPシステムでも「作り込み」を行って、陳腐化したレガシーシステムの負債に苦しんでいる。デファクトスタンダードがあれば、それを利用すれば良いだけである。
・デジタル革命第3期では「オープンで不連続なイノベーション」と「クローズで連続的/蓄積的なイノベーション」のインテグレーション(統合)が重要になる。

・そのためには「ハイブリッド経営」が要求される。日本企業の成否は「捨てるべきものを捨てるか」に掛かっている。自社開発を止めて、買収/ライセンス取得/人材引き抜きなどで対応すべきである。
・コマツは良い例で、鉱山で自動運転しているダンプカーは米国の技術を多く取り入れている。

・日本のM&Aが成功しないのは、従来からの「クローズ型組織」から買収した企業に対し、やっかみが出るからである。新たなテック系組織は、海外に特区として設置すべきで、また特区はトップ直属とし、日本文化(5Sなど)を押し付けない。

○「モノづくり日本」にチャンスあり
・デジタル革命第3期はソフトとハードの「すり合わせ」が重要になるため、日本企業は注目されている。DARPAのギル・プラットはトヨタ(TRI)に来た。ホンダのASIMO(二足歩行ロボット)は最先端を歩み、その技術を利用し「倒れないバイク」を発表している。
・IT系ベンチャーがITとは桁違いの安全性/耐久性/信頼性が求められる自動車を作れるとは思わない。

・「自動運転」の実用化には2つのアプローチがある。1つは既存の自動車メーカーが事故防止から自動ブレーキ/自動ハンドルなどで「レベル2(運転補助)」「レベル3(緊急時のみドライバーが運転)」とレベルを上げるアプローチである。もう1つはグーグルなどのネット系企業が、いきなり「レベル4(完全自動運転)」を目指すアプローチである。超シリアスな世界では、連続的アプローチ(前者)が勝利すると考えている。
※2通りのアプローチがあるのか。

・「自動運転」の覇者はウーバーになるかもしれない。「自動運転」が「レベル4」に達すると、どの車もそのシステムを搭載する可能性が高い。そうなると自動車自体での差別化は起こらず、配車サービスとカーシェアリングの利便性/ローカル性の競争になる。
・実は「ネットビジネス」での差別化は難しい。中国にはウーバーより優れた配車サービス「滴滴出行」がある。アマゾンの勝利は、倉庫にAI技術/自動化技術などをどんどん取り入れたり、ドローンを活用するなどローカル・ディストリビューションに注力したのが要因である。

○ローカル型産業/中小企業にチャンス到来
・デジタル革命第3期では「スマイルカーブ現象」が起こるため、「ローカル型産業」はチャンスである。深刻な人手不足をIoT/ビッグデータ/AIで解消できる。
・ローカル型産業(小売、飲食、宿泊、運輸、物流、建設、医療、介護、農業)は労働集約度が高く、AIのブレークスルーの恩恵を最も享受できる。

・ローカル型産業の主役は地域密着型の中堅中小企業で、その「勝ちパターン」は「地域の覇者」「商圏の覇者」になる事である。
・なおGDPの7割、雇用の8割はローカル型産業が占めている。

○国の役割
・国の役割は介入とレッセフェール(放置放任)の中間にある。
・日本は「系列型モデルでクローズ型組織」に偏っているが、ドイツは同様の企業(ダイムラー、BMW)も存在するが、「水平分業型モデルでオープン型組織」の企業(フォルクスワーゲン)も存在し、両者のバランスが良い。

・1つの会社で複数の事をやらせるのは良くない。ある会社は電気自動車、ある会社は燃料電池車など分業させるのが望ましい。「レッドオーシャン」で消耗戦すると、共倒れになる。「二兎を追う者は」になる。
・国の役割は「イノベーターが社会実装できるよう制度整備する」「産学連携のイノベーションシステムを整備する(後述)」である。やはり攻撃は最大の防御である。

・日本は著作権法で「フェアユース一般条項」が認められていない。これはイノベーションの妨げになっている。
・国は「AI開発ガイドライン」の素案を公表したが、これは透明性が高く、逆に開発者を委縮させてしまう。

・グローバルチャンピオンのアマゾンとローカルチャンピオンのヤマト運輸は提携している。各国の携帯電話もバラバラである。すなわちラストワンマイルにローカルチャンピオンが生まれ、グローバルチャンピオンと共存/補完する社会になる。

<日本企業が取るべき政策>
○天才技術者を雇う方法
・今までの日本のイノベーションはクローズで連続的/蓄積的であった。これは企業にとって、先の見通しが立て易く、ゆえにキャッチアップも容易であった。
・日本の企業は同質性が高く、女性/外国人が少なく、ダイバーシティ(多様性)に欠ける。AIを開発したいなら、この組織風土を変える必要がある。
・プロフェッショナル型組織は、年棒で格差のある野球チームと考えれば良い。

○一国二制度
・組織には機能/利益を優先するゲゼルシャフト組織(機能組織)と同質性を優先するゲマインシャフト組織(共同体組織)がある。共に長所短所がある。
・投資銀行は完全なプロフェッショナル型組織である。日本の某金融機関が「投資銀行宣言」をして失敗したが、サラリーマン型組織で育った人間がプロフェッショナル型組織をマネージできないのは当然である。

・ホンダが「ワイガヤ経営」を提唱したが、日本企業は辺縁部にオープンキャンパス的な空間を作り、それを拡大/深化すべきである。リクルート/KDDI(KDDI∞Labo)/ホンダ(HondaイノベーションラボTokyo)は、これができている。
※少し外れるが、最近副業を容認する傾向にある。

○プロ経営者
・プロフェッショナル型組織の運営のため、「プロ経営者」を連れて来ても無駄である。サラリーマン型組織が根付いた企業のトップだけを「プロ経営者」に差し替えても、反発されるだけ。※日産はどうだったのか。
・「プロ経営者」は短期的な結果を出す事には秀でているが、本質的な組織改革はできない。

・日本の問題は遺伝子/DNAレベルにあるので、改革は容易でない。GEでジャック・ウェルチがやった改革が参考になる。GEは日本の総合電機メーカーと同じく多角化していた。彼は20年掛けて改革を成し遂げた。
・日本人は戦後を見ると分かるように、諦めた時、変わる事ができる。シャープ/カネボウ/JAL、いずれも諦めが付かず、傷口を広げた。

・著者は「IoT推進ラボ」の支援委員会の座長である。ベンチャーは技術に対しオープンであるが、大企業はある程度まではオープンであるが、保身からある所で線引きをする。これは逆に連携を妨げる。

○リアルキャピタルからヒューマンキャピタルへ
・プロフェッショナル型組織の源泉は、ヒューマンキャピタル(人的資本)である。

・アームはスマホ向けCPUで世界シェア95%を占める。ソフトバンクはアームを3兆円で買収したが、このお金は株主に行く。しかもアームのライセンスもやがて切れる。買収ではなく、3兆円で優秀なエンジニアを引く抜くのが正しい。これが人への投資である。※納得。
・孫氏は「IoT時代への先行投資」と発言したが、アームはスマホ時代(デジタル革命第2期)の勝者であって、IoT時代(第3期)の勝者になるとは限らない。

・著者は経営共創基盤(IGPI)の代表取締役である。弊社を1千億円で買収したいと言う人がいたが、バカかと思う。買収すれば著者にお金が入って嬉しいが、それよりも全社員を1千億円で引き抜くのが正しい。
・ソフトウェア会社の買収は失敗する事が多い。それはリアルキャピタル(お金)ではなくヒューマンキャピタル(人的資本)に価値があるからである。

・資本主義(キャピタリズム)はリアルキャピタルの産業には適するが、ヒューマンキャピタルの産業には適さない。産業のコアが知識集約型にシフトすると、資本主義が成り立つのか注目される。ソフトバンクのアーム買収もこの実験台である。※この理論は面白い。
・現に法律事務所/会計事務所/コンサルティングファーム/投資銀行は非上場が多い。

○産学連携
・先進国の産業はリアルキャピタル(お金)からヒューマンキャピタル(人的資本)/ナレッジキャピタル(知識資本)にシフトしている。気が付けば、ナレッジキャピタルは米国の大学(スタンフォード、カルテック、ハーバード、MITなど)に集約している。
・東大も「ユーグレナ」「ペプチドリーム」「シャフト」などのベンチャーを立ち上げたが、米国との差は歴然である。著者は東大産学協創推進本部(旧東大産学連携本部)とも関係が深い。

・今日企業は「中央研究所」を持たない傾向にある。これは優秀な研究者の繋ぎ止め/長期投資への敬遠などが理由である。米国でもベル研究所(AT&T)/ワトソン研究所(IBM)などが縮小された。

・大学には①基礎研究②概念実証(プロトタイプ作成の前段階)が求められている。大学への補助金が削減される中でも、両方を追求しなければいけない。
・デジタル革命第3期の開発は「基礎研究から応用へ」と云ったリニア(直線)の開発ではなく、スパイラル(螺旋)の開発になる。※自動運転の開発現場を見たが、そんなに凄そうに見えなかった。

・東大の大学ランキングでの位置は年々下がっているが、トップ・オブ・トップのレベルは下がっていない。彼らは大企業志向ではなく、スタートアップ志向である。彼らにはグーグル/アップル/アマゾンさえも「古くて大きな会社で魅力がない」と映っている。

・オックスフォード大学でAI/ディープラーニングの開発をしている川上和也氏は「AI開発はビジネスと直結し、スピードが命である」「日本は高機能製品の製造に優れている」「日本はビジネスに直結しない人工知能研究所が設立されるなど、アカデミアが業界を引っ張っている」「製品は必ずしも最新の技術だけで構成されている訳ではない」などをレポートしている。

<AI時代のリーダー>
○「グローバルの世界」と「ローカルの世界」
・「グローバルの世界」と「ローカルの世界」は共存/補完するので、無理にグローバル化する必要はない。グローバル化する人は、一握りの人で結構である。どこの国でも経済の7割はローカル型産業が占めている。

○グローバル人材を目指すには
・「ローカルの世界」で生きると決めれば、高いお金を払って英会話を学ぶ必要はない。
・大英帝国は植民地の支配層を英国に留学させ、英国の価値観に染め帰国させた。今の中国はリスクヘッジのため、子弟を海外に留学させている。

・グローバル人材になるには、MIT/ハーバードなどで修士以上の学歴が必要になる。著者はスタンフォード大学の卒業後や、「産業再生機構」を終えた時にベンチャーに誘われたが断った。
・「グローバル人材にならないと生き残れない」の強迫観念があるが、「グローバルの世界」で成功するためのハードルは高く、大半の人は外国語とは関係ない「ローカルの世界」で生活している。

○AI時代で消える仕事、残る仕事
・AIは飽きる事なく、24時間同じ作業を繰り返す。よって会計士/経理の仕事は減らせる。一方税理士/弁護士は交渉/裁量の余地が大きいのでAIには向かない。
・AIによって中間管理職の仕事は大幅に削減される。反対にトップのマネージメント能力が重要になるので、早い内からトップの経験を積むべきである。大企業に勤めている人は、30代くらいから関連会社/子会社に積極的に出向すべきである。※この対象者は限られる。
・半沢直樹のドラマにあるように日本はダーティワーク/権力闘争が多く、日本経済が低迷するのは当然である。

・業務報告レポートなどの作成はAIに置き換わる。どちらかと云うと、外勤の仕事より、内勤の計算/知識ベースの仕事がAIに置き換わる。
・産業史を見ると、人間が苦手な仕事は機械などに置き換わっている。しかし仕事がなくなる訳ではなく、それ以上に新しい仕事が生まれている。

・デジタル革命第3期の影響は「グローバルの世界」より「ローカルの世界」の方が大きいため、「ローカルの世界」を重視すべきである。そのため大都市の高度人材を地方に還流させる必要がある。著者は「日本人材機構」でそれを始めた。

<千載一遇のチャンス>
・古生代カンブリア紀に生物の種類が爆発的に増えた(カンブリア爆発)。これは生物が「目」を持った事による。AI/ディープラーニングの進歩は、この「目」に匹敵する。
・ソフトサイド(AIアルゴリズム)/ハードサイド(センサー、カメラなど)の進歩が有用なデータを集め、さらにそのデータがAIアルゴリズムを進歩させる好循環が起きている。

・デジタル革命第3期は「グローバルの世界」「ローカルの世界」に大きな影響を与える。同質性/連続性に偏った日本企業がどう変われるかが、日本の命運を決める。

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