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『もっと株に強くなる「日経」の読み方』日本経済新聞社(2009年)を読書。

本書は株取引の応用編です。『株に強くなる「日経」の読み方』が基礎編です。

株式会社、株式市場などの奥深さを感じます。
本書は株式の中長期保有を勧めています。

お勧め度:☆(株取引をしている人)

キーワード:短期投資/中長期投資、ファンダメンタルズ/チャート、買収/買収防衛策、配当、ショック、目標株価、信用取引、新規公開株、ネット証券、自動売買/スクリーニング、デイトレーダー、対面型証券、掲示板情報/ブログ/IR、投資スタイル/敗者のゲーム/ドルコスト平均法、ETF、割安株/成長株、配当/株式分割/自社株買い/株主優待、株主総会/総会屋、取締役/監査役/委員会設置会社、粉飾決算、議決権行使、買収防衛策、グローバルスタンダード、証券取引所/新興市場、MBO/LBO、有価証券報告書/目論見書

<まえがき>
・バブル以降日本企業の1株利益は横ばいで、新興国に比べ見劣りしている。

<投機と投資>
○デイトレーダー
・個人の金融資産で株式が占める割合は3.6%に過ぎず、他国に比べて低い。
・「短期投資」は楽しいかもしれませんが、合理的ではなく、「中長期投資」を勧めます。

○資産配分
・資産配分は3分法(土地家屋1/3、預貯金1/3、株式1/3)がお勧めです。若い方はリスク資産を増やしても良いと思います。

○株式投資のルール
・投資単位などは各社バラバラですが、100株単位で50万円以下で買える様に証券取引所が要請しています。決済は「4日決済」に統一されます。

○一攫千金
・株式の売買は、ファンダメンタルズ(基礎的諸条件)を主眼に置き、チャートを2次的に利用するのが良いと思います。

○企業価値
・「企業価値」は時価総額とも云えます。株式投資はあくまでも「将来性」に着目し投資して下さい。

○買収
・株式は個人投資家にとっては金融商品ですが、「買収」を目的とするファンド/企業にとっては「経営を支配するための手段」です。
・株主総会の決議には過半数の賛成で通る「普通決議」と、2/3の賛成が必要な「特別決議」があります。※知らなかった。
・企業買収が増えた背景は①株式持ち合いが減った②経営面で有効③買収専門家が育ったです。

○M&A
・「公開買い付け(TOB)」による買収が起こると、企業の株価は上がる事が多い。
・キャッシュリッチな会社や経営の舵取りに問題がある会社は、投資ファンドの買収の対象になります。
・買収される心配のない会社を除いて、大半の会社が「買収防衛策」を取っています。

○配当
・「買収防衛策」として、個人投資家を重視し、増配する企業が増えた。
・CSR重視/コーポレートガバナンス改革などの「買収防衛策」を取る会社もあるが、その実状は疑わしい。

○インフレ
・「株価=業績÷金利」なので、金融緩和による低金利は株価に好影響です。インフレ懸念で金利を上げると、株価の下げ圧力になります。※この公式は分かり易い。

<失敗談>
○リーマンショック
・○○ショックが起こると、機関投資家は他人のお金を預かっているため、売らざるを得ません。一方個人投資家は塩漬けの判断もあり得ます。
・ソニーショックやライブドアショックもあり、単純に「下がったら買い」でもありません。

○ANAとJAL
・JALは日本エアシステムを経営統合しましたが、運賃の引下げ/引上げをしない条件が付きました。これでは寡占化のメリットがありません。またJALは国策会社で、従業員組合が多数ある/経営陣の内紛があるなどの問題があったと云えます。※そこまで見て投資しないといけないのか。
・公共輸送機関/電力会社は利用者優先で、株主優先の経営はできません。

○トヨタ自動車
・2008年度トヨタは営業赤字になりました。投資家は「復活するのか、そのまま衰退するのか」の判断が必要です。復活派の理由に①自動車の需要はまだあるなどがあり、衰退派の理由に①自動車離れ②電気自動車の雄になるとは限らないなどがあります。※2008年はそんな時期だったのか。

○目標株価
・アナリストの目標株価を鵜呑みしてはいけません。目標株価には前提条件があります。
・ITブーム頃、アナリストが投資銀行からのバックマージンを期待して、泡沫会社を有望会社に設定する問題がありました。今はその問題は解消されています。※サブプライムローンも格付けに問題があった様な。
・上場企業は約4千社ありますが、アナリストが調査しているのは、その内1千社程です。しかも複数社が調査しているのは、その半分しかありません。

○勝ち組企業
・ケインズは株式投資は「美人投票」と云っています。人気企業を買うのも1つの方法です。いかし株価が上がるか下がるかは、材料次第です。
・「勝ち組企業」(優良銘柄)を買ってミドルリスク/ミドルリターンを選択するか、「負け組企業」(再生銘柄)を買ってハイリスク/ハイリターンを選択するかは、投資家の選択/責任です。※本書は常にこれです。

○信用取引
・株式投資には現金と信用があります。「信用取引」は証券会社から株式を借りて、それを売買する取引です。「信用取引」には保証金が必要です。

○経営者リスク
・新興企業への投資は魅力がありますが、大企業の参入/上場による制度上の負担/経営者の変質などのリスクがあります。

○新規公開株
・株式上場(IPO)の目的は①資金調達②創業者利益です。新規公開株で儲けるのは絶対ではなくなっています。
・取引所から上場廃止処分を受けるケースでは、上場廃止前に売却した方が良いと思います。

<ネット証券>
○ネット証券
・ネット証券の魅力は手数料の安さです。また投資信託/外国株/社債/先物/オプション/IPO/FXなど、各種サービスが提供されています。

○売買手法
・売買価格は差し値/成り行きが基本ですが、カブドットコム証券などは「自動売買機能」を提供しています。
・ネット証券の「スクリーニング機能」は充実しています。

○デイトレーダー
・デイトレーダーは1日の売買が終わると、反対売買をして持ち高を翌日に持ち越ししません。元は証券会社のディーラーがやっていた手法です。
・デイトレードが普及した理由は、材料/板情報/売買高などの情報が提供される様になったためです。

○信用取引
・信用取引の手数料が安いのは、株を買う時に証券会社からお金を借りますが、その金利があるためです。
・信用取引はハイリスク/ハイリターンと云われますが、手持ち株のヘッジや「ペア・トレード」に使えます。
・ネット証券は株式市場のすそ野を広げましたが、リスクの高い信用取引が簡単に出来る様になったのは、功罪の「罪」です。

○対面型証券
・今はネット証券が8割で、対面型証券は2割になっています。対面型証券の利用者は①インターネット/パソコンに不慣れな人②証券会社のアドバイスを聞きたい人③資産運用を証券会社に任せている人です。
・今後対面型証券は、富裕層に特化/アジア株に強みなど特徴を出す必要がありそうです。

○システムトラブル
・システムトラブルに備え、複数の証券会社に口座を設ける防衛策も考えられます。

○掲示板情報
・ネット証券では掲示板情報を提供しています。この情報を鵜呑みするのは危険です。
・株式投資をテーマにしたホームページ/ブログ/SNSなどもあります。著名ブロガーのサイトは注目されています。
・近年、企業はIR(Investor Relations、投資家向け広報)に積極的です。

<投資スタイル>
○短期投資/長期投資
・長期投資は「みんなでハッピーになろう」「果報は寝て待つ」です。短期投資は「短期的な行き過ぎ」を狙うのが良いでしょう。

○敗者のゲーム
・「敗者のゲーム」は株式投資について書かれた本の名前です。「勝負はミスによって決まる」がこの本の内容です。プロの投資家に個人投資家が勝つのは簡単ではないと書かれています。
・その意味で、プロの投資家が運用する「投資信託」、中でも「インデックスファンド」が有益です。

○さわかみファンド
・長期の投資信託で有名なファンドに「さわかみファンド」があります。当ファンドはサラリーマンの長期運用をターゲットにしています。

○ドルコスト平均法
・長期投資の方法に「ドルコスト平均法」があります。この方法は一定の少額で継続的に長期投資する方法です。リスクの時間的分散と云えます。※定額貯蓄、財形貯蓄みたいだな。

○ETF
・指数連動型の投資信託には、通常の投資信託と上場しているETF(Exchange Traded Fund)があります。ETFは売買が容易で、信託報酬が安くなっています。またETFは外国株(中国、ロシア、ブラジルなど)/金/商品指数/REIT指数など、様々な指数に連動しています。

○資産分散型ファンド
・投資対象には国内株式/国内債券/外国株式/外国債券があります。これらに分散投資するのが「資産分散型ファンド」です。
・日本株/外国株/米国債/コモディティーに連動するETFと国債を買って資産分散させるのを勧めます。

○投資スタイル
・プロの投資家でさえ指数連動型を利用していますが、企業を選択して投資するのが基本です。

・個別株への投資スタイルには2種類あります。①バリュー株投資(割安株)②グロース株投資(成長株)。中堅以下の証券会社は、どちらかに強みがあります。
・一般的に景気悪化で低金利の時は、①バリュー株の値上りが期待され、逆に景気が回復し高金利の時は、②グロース株の値上りが期待されます。

・規模(大型株、中小型株)による分け方もあります。小型株/新興企業への投資こそ醍醐味ですが、新興企業の株価はすでに割高になっている事が多いです。

<配当利回り>
○株主配分
・企業が得たお金から経費/金利/税金を支払った残りが「資本」として蓄積されます。このお金を「現預金」として蓄えるのか、設備投資して事業を拡大するのか、あるいは株主に配分するのかが重要です。
・近年は無駄なお金を抱え込んでいると買収の対象になるため、配当金を増やす傾向にあります。

○配当
・配当には3種類あります。①安定配当②配当性向③配当利回り。①安定配当は一定配当を継続する方法です(かつてはこの方法が多かった)。②配当性向は純利益に対する配当総額の比率です(業績連動型)。③配当利回りは株価に対する配当の比率です(株価連動型)。
・一般的に新興企業は「配当性向」が低く、成熟企業は高くなります。

○配当落ち
・株主が支払った資本金と利益の蓄積が「株主資本」で、これに保有株/土地などの損益を加えたのが「自己資本」です。配当を支払うと「自己資本」が減るため、その分株価も下がります(配当落ち)。

○株式分割
・「株式分割」は株主配分ではありませんが、「株式分割」する会社は成長力がある会社と思われるため、株価が上がる事が多い。

○自社株買い
・普通、企業が「自社株買い」した時は、その株式を抱え込みます(金庫株)。
・「自社株買い」すると、自社株は除くので「1株当り利益」は高くなります。同様に「自己資本利益率(ROE)」も高くなります。

・「金庫株」は他社買収に使用する場合があります。また「ストックオプション(株式購入権)」に「金庫株」を充てる場合もあります。あるいは「消却」して発行済株式を減じる場合もあります。

○株主配分
・株主の収益には2種類あります。①インカムゲイン(配当益)②キャピタルゲイン(売却益)。
・2000年頃から企業は配当金を上げるなど、株主重視に変わって来ています。

○配当課税
・普通の個人投資家は配当課税(所得税7%/住民税3%)が源泉徴収されます。ただし売却損がある時は確定申告すれば、配当課税を還付できます。

○株主優待
・株主優待も株式投資の楽しみです。

<株主の責任、企業の責任>
○総会屋
・以前は株主総会を「異議なし」の合唱で「シャンシャン総会」で終わらせるため、総会屋(与党総会屋)が利用されていました。最近は経営陣も株主総会を丁重に進める様になりました。
・株主総会は会計年度末後、3ヶ月以内に開く必要があり、集中日に集中していましたが、今は分散しています。

○会社は誰のもの
・経営を監視する取締役/監査役を選ぶのが株主総会の主な目的です。近年は監査役を置かない「委員会設置会社」もあります。
・企業の利害関係者(従業員、顧客、取引先、地域社会など)をステークホルダーと云います。

○IR
・企業がIR(Investor Relations、投資家向け広報)に積極的な理由は、①ファン作り②敵対買収に備え、企業の理解者を増やす③企業の意思を表明するなどがあります。しかし本来の目的は、経営陣と株主の認識ギャップをなくすためです。

○内部統制
・「内部統制」は法令を順守する体制を整える事です。上場企業は会計データの社内体制が整っている事を示す「内部統制報告書」を作成する義務があります。「内部統制」に対しては賛否両論があります。
・3K(建築基準法、貸金業法、金融商品取引法)により官製不況に陥ったとの意見があります。

○取締役会
・監査役制度を廃止して、米国流の「委員会設置会社」(指名委員会/報酬委員会/監査委員会)に替えた会社もあります。どちらも監査強化が目的ですが、今後は社外取締役の重要性が増すと思われます。

○粉飾決算
・「有価証券報告書」の正確性にお墨付けを与えるのが公認会計士/監査法人の役割です。
・近年では「証券取引等監視委員会」が外部監査していますが、粉飾決算は絶えません。「中央青山監査法人」は粉飾決算を指南したため解散しました。

○議決権行使
・機関投資家は「議決権行使指針」を定めて、議決権を行使しています。「企業年金連合会」は約17%に反対票を投じています。特に退職慰労金/取締役の選任/買収防衛策に対し反対票を投じています。
・米国には議案の分析を専門とする会社が存在します。
・企業が開示する大株主は保管銀行で、実質株主ではありません。そのため実質株主を調査する調査会社が存在します。

○本当の株主
・表上の株主は投資事業組合/匿名組合で、実際の出資者は匿名になっています。※こんな問題があるんだ。
・株式の保有期間で議決権に差を付ける案もあります。フランスでは長期間保有者は最大で3倍の議決権があります。
・敵対的買収の防衛策に、株式持ち合いの復活/新株予約権の発行などがあります。

○買収防衛策
・買収者は経営陣にとっては敵対的になりますが、一般株主にとっては敵対的とは限りません。
・敵対的買収者に対しては「新株予約権」の発行で防衛すると事前警告する企業が増えました。「第3者割当増資」で防衛する方法もありますが、1株当りの価値が減少します。※「新株予約権」と「第3者割当増資」は違うんだろうな。後で調べないと。

・世界の時価総額トップ10は米国6社、中国4社で、日本トップのトヨタ自動車は25位です。日本の社会風土が経営統合を妨げていると考えます。

○3ヶ月決算
・1990年代に日本の株式会社制度は、米国の圧力でグローバルスタンダード(4半期決算、時価会計、連結決算、社外取締役、委員会設置会社、企業買収など)を受入れました。
・2008年法律で4半期決算に変わりました。これにより中長期経営が短期業績に振り回される恐れがあります。

<勉強すれば、もっと儲かる>
○証券取引所の役割
・証券取引所の意義は取引を1ヵ所に集め、公正な価格を決める事にあります。また証券取引所は将来性のない企業から有望な企業に資金を回し、資金の効率的な配分を行っています。

○市場の監視
・「東京証券取引所グループ」は「東京証券取引所」/「東京証券取引所自主規制法人」で構成されています。「東京証券取引所自主規制法人」は上場基準/上場後の情報開示/取引などを監視しています。

○証券取引所の種類
・証券取引所は東京/大阪/名古屋/札幌/福岡にあり、他にジャスダック取引所などがあります(※今は大阪は統合されている)。

○新興市場
・新興市場は「新興企業向け株式市場」の略称で、マザーズ市場(東京)/ヘラクレス市場(大阪)などがあります。2007年「NEO」、2009年「TOKYO AIM」が新たに開設されました。
・新興市場は担保主義の銀行では抱えきれない「リスクマネー」を新興企業に供給しています。

○MBO、LBO
・MBO(マネージメント・バイアウト)は経営による買収です。上場していたワールドは、社長が「公開買い付け」により株式の95%を取得し、上場を廃止しました。社長はこの目的を経営の長期化と説明しています。テクノエイトも同様の目的でMBOしています。
・LBO(レバレッジ・バイアウト)は借入金による買収です。ソフトバンクによるボーダフォン買収がそれに該当します。LBOには友好的と敵対的があります。

○MSCB、新株予約権
・MSCB(ムービング・ストライク・コンパーチブル・ボンド)は「転換価格修正条項付き転換社債」で、転換社債の一種です。転換価格が株価より1割程度安く設定されます。通常私募で発行されます。※転換社債については良く理解していない。

○黄金株
・黄金株を発行すると、敵対的勢力が多数の株式を保有しても取締役の解任などを拒否できます。国際石油開発帝石は黄金株を発行し、政府がそれを保有しています。
・親子会社が共に上場する場合、50%以上株式を持ち合うケースが多いので、一般株主の利益は軽視されます。この場合、業績が重複計算されたり、親会社と子会社で時価総額が逆転するなどの問題も起こります。

○有価証券報告書
・企業の経営分析は、スピードを重視する場合は「決算短信」、深く知りたい場合は「有価証券報告書」を利用すると良い。※アマチュアが理解/分析するのは難しいのでは。
・「有価証券報告書」の財政状態/リスク情報(通貨リスク、存続リスクなど)をチェックして下さい。また経営者・役員の経歴/役員報酬もチェックして下さい。またコーポレートガバナンスの仕組み/社外取締役もチェックして下さい。
・「有価証券報告書」の末尾に「監査報告書」が記載されています。適正意見/意見差し控え/不適正意見も確認して下さい。

○目論見書
・企業が有価証券を募集/売り出す場合、「目論見書」を交付します。「目論見書」には発行する株式数/資金の使い道などが記載されています。資金の使い道は新規店舗の開設/借入金の返済など様々です。
・「目論見書」の業績からPER(株価収益率)を計算し、必ずチェックして下さい。また大株主/役員/リスク情報もチェックして下さい。

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