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『亡国の首相 安倍晋三』横田一(2016年)を読書。

安倍政権を様々な点から批判しています。安倍政治は既得権益を守るための政治に感じます。

各地方で様々な事が起こっているのを知りました。ニュースだけでは分かりませんね。
真実を見れる目を持ちたいものです。

著者の記事を編纂しているので、多少重複がある。

お勧め度:☆☆

キーワード:<人質事件と原発>身代金、ゴールデンタイム、有志連合、クローズアップ現代、原発テロ、<日韓関係>橋下徹、慰安婦問題、<アベノミクス>金融緩和、<TPP>水田維持/戸別所得補償制度/土地改良事業、医療制度、<戦争法>安保関連法/戦費破産、オスプレイ/佐賀空港軍事空港化、<昭恵夫人>脱原発、小泉元首相、<土建政治>巨大防潮堤、資材不足/人手不足、スーパー堤防、鬼怒川水害、山口県知事選、<辺野古新基地>島尻安伊子、沖縄県知事選、沖縄振興予算、海砂

<後藤健二人質事件と原発テロ>
○人質事件
・2015年1月ジャーナリスト後藤氏がイスラム国により殺害される。彼は古賀茂明氏が「I am not ABE」と云うに相応する取材活動を行っていた。フセイン像が倒される映像や米軍の近代兵器の成果を示す映像が流される中、彼はクラスター爆弾で足を失った少女などの映像を現地で撮り続けていた。
・彼が取った映像はNHK『クローズアップ現代』の企画会議に通ったが、放送直前に諸星衛理事の横やりで放送中止になる。

・後藤氏/湯川氏が拘束されている時、安倍首相は中東を訪問し「イスラム国と戦っている国に2億ドルの援助をする」と表明する。これによりイスラム国から同額の2億ドルの身代金を要求される。※背景に色々あったんだ。それでこの表明が騒がれたのか。
・後藤氏の殺害がネットに流されると、安倍首相は「政府は全力を尽くした、痛恨の極みだ。日本はテロに決して屈しない」と表明する。

・イスラム武装勢力に拘束され、自ら交渉し解放された韓国人ジャーナリスト金栄美氏は「日本政府は”ゴールデンタイム”を逃した」と指摘する。”ゴールデンタイム”とは身代金要求など人質を公表する前の段階の事で、公表されると日本は有志連合に加わっているのでイスラム国は強硬姿勢を取るしかない。金氏は「中東ではお金で解決できない事はない。”ゴールデンタイム”であれば、少ない金額で彼らを解放できた」と発言している。

・古賀茂明氏は「安倍首相は2億ドル支援を表明した時、なぜ”人道支援”を強調しなかったのか。官僚は必ずリスク回避の手段を掲示しているはず」と指摘する。彼は安倍首相は確信犯であり、「国民虫けら、米国神様」なのかと発言する。彼は「I am not ABE」の意味を「安倍首相の発言は民意を表していない」と説明している。

・2003年5月『クローズアップ現代』で後藤氏の取材映像が放送中止になる。当時の担当プロデューサー永田浩三氏は、フリーの後藤氏の映像を「反戦の立場で取り、丁寧な取材」と評価していた。後藤氏は『週刊こどもニュース』『クローズアップ現代』などに映像を持ち込んでいた。ところが諸星衛理事の「フリーランスの映像は使わない」(純血主義)が壁になる。
・後藤氏の映像はバグダッドの市民生活を取材したもので、病院の庭に埋められた遺体とそこを探す家族/クラスター爆弾で足を失った少女/町を自由に歩けない市民などが収められていた。国際部はNHKが取れない映像と高く評価していた。しかし放送5日前、諸星理事の命令で異例の放送中止になる。
・NHK関係者は放送中止は「時の政権の批判を避ける」本能的防御が働いたのではと見ている。

・永田氏は「テロを生む貧困/格差の構造的問題」「米国やイスラエルに対する憎悪」に目を向けるべき、また「日本は米国/イスラエルは友達だけど、アラブも友達だった」「エジプトでの2億ドル支援の表明は”狂気の沙汰”」と言っている。

・韓国人ジャーナリスト金栄美氏は「イスラム国はSNSを利用して宣伝戦をしているので、誰でも接触できる」「日本政府はトルコ/ヨルダン経由で接触した可能性はある」「イスラム国は重要幹部で迅速に意思決定している」「イスラム国はスンニ派で、中東のスンニ派国家からの寄付金と油の密輸で資金を得ている」「イスラム国は残忍な行動で宣伝戦を行っている」と発言している。

○原発テロ
・日本の原発はテロに対し”ノーガード状態”である。米国では全原発を150人の武装部隊が防備している。
・「原発ゼロ社会」を掲げた小泉元首相は「政権は原発テロ対策をしていない」と批判する。

・フランスでの同時多発テロによりイスラム国を空爆する”憎しみの連鎖”が始まったが、いつ「同時多発原発テロ」が起きても不思議でない。※米国同時多発テロが想定外だった様に。でも原発を攻撃すると、報復は核攻撃になる可能性がある。
・中東に原発が少ないのは核開発と警戒されるのを避けるためである。現にイスラエルはイラン/シリアの原発建設を空爆している。

<解決しない日韓関係>
・2015年5月橋下徹大阪市長は大阪都構想の住民投票で敗れ、政界引退を表明する。国会では「安保関連法」の審議が始まっていたが、「維新大阪組」は法案の修正を勝ち取ろうとする維新執行部の足を引っ張る。夏場になると「維新大阪組」は”御家騒動”を起こし、安倍政権の下僕になる。
・2015年11月自民党は「大阪ダブル選挙」で手抜きし、自公/共産推薦候補は敗れ、「おおさか維新」は延命される。

・安倍政権と橋下氏の「慰安婦問題」の発言は類似している。2013年5月橋下氏は「風俗業を否定する事は、従事者への差別」と発言している。
・1997年安倍氏は「若手議員の会」で「韓国にはキーセン・ハウスがあって、日常的な事である」と発言している。これは戦場での”JK援助交際ビジネス”を容認する発言で、日韓関係を戦後最悪にしたA級戦犯である。
・安倍首相が「慰安婦=売春婦=ビジネス」の考えを改めない限り、日本人は嘲笑され続ける。

・2001年NHK『ETV2001』の「慰安婦問題」を扱った番組が幹部の指示で劇的に内容を変えられる。
・1990年代NHKは「慰安婦問題」に関する番組を何本も放送していた。しかしNHKは2014年の橋下市長の「慰安婦容認発言」/朝日新聞の「慰安婦検証報道」、いずれに対しても検証番組を作成していない。これは籾井勝人NHK会長による”NHK支配”のためである。

<一億総玉砕のアベノミクス>
・2015年藻谷浩介氏は「安倍政権は年金積立金の1/4を株につぎ込み、国民をバクチに引き込んだ」と批判する。藻谷氏は『デフレの正体』『里山資本主義』を著作し、年間500回の講演をこなしている。※最近『里山資本主義』を読んだ。
・藻谷氏は「2012年貿易赤字は6兆円(80円/ドル)に達し、100円/ドルになると貿易赤字は20兆円に拡大し、さらにハイパーインフレ/金融セクター崩壊の恐れがる」と金融緩和/円安誘導を批判する。
・藻谷氏は「株価の上昇で儲けているのは一部の人で、多くの人は中東諸国の貢君になっている」「株で儲けた人は金融商品を買うだけで、消費に回っていない」「”マネー資本主義”により残さなくて良い借金/汚染物質(使用済み核燃料など)を残している」「”里山資本主義”でブランドを育てるべき」と発言している。

・クルーグマン教授は「日本の異次元緩和は失敗した」と発言する。そもそも日本で物価上昇率が2%を超えた事はほとんどない。
・日銀は国債を年80兆円購入しているが、10年買い続けると全ての国債を買い尽くす。国債購入で民間銀行にお金が回っても、民間銀行に貸出先はない。アベノミクスで実質GDPに効果があったのは「金融緩和」ではなく、「財政政策」(公共事業)である。しかしいつまでも「財政政策」できる訳ではなく、社会保障費の削減/消費税増税が必要になる。

<農村/医療崩壊を招くTPP>
○農業分野
・2015年10月安倍政権はTPP対策で、非主流派の小泉進次郎氏を農林部会長に抜擢する。
・翌月兵庫での意見交換会で農家の大西さんが「短期的対策より長期的対策が必要と思います。構造改革/業界再編/規制緩和の仕組み作りをして欲しい」「水田の維持が重要」と発言する。しかし自民党は水田維持政策である「戸別所得補償制度」の予算を削減する。

・「土地改良事業」は「ウルグアイラウンド対策」として始まったが、農業が縮小する中で”ピカピカの農地”を作っても有効に活用されなかった。しかし土地改良事業会長の二階俊博総務会長と農水族の西川公也元農水大臣は相談し、評価されていた「戸別所得補償制度」を減額し、ハード中心の「土地改良事業」を増額した。このカムフラージュに利用されたのが”客寄せパンダ”の小泉氏であった。

○医療分野
・民主党の篠原孝元農水大臣は「TPPは関税だけでなく、医療制度をはじめ日本の制度が米国の言いなりに変えられる恐れがある」と発言する。※ISD条項かな。
・韓国の弁護士は「米韓FTA」を振り返り、①ジェネリック医薬品を使いたい韓国と新薬を使わせたい米国の対立があった②「エコカー補助金制度」が頓挫した③「遺伝子組換食品」の表示は困難になったなどを紹介した。※色々問題があったが、今後どうなるのか。

・山田正彦元農水大臣は米国現地調査で、①米国はTPPなどの自由貿易協定に消極的②「遺伝子組換食品」の表示撤廃は当然などを感じた。
・米国の製薬会社はTPP交渉で、①後発医薬メーカーではなく、先発医薬メーカーが治験データの独占権を持つ②日本の薬価基準を決める委員会に米国の製薬会社を参加させる③政府決定に対し異議申立する権利を企業に与える④手術方法も特許にするを要求している。また厚労省/公的保険制度も標的されており、日本の医療制度を「営利モデル」に置き換えようとしている。

<戦争法で戦費破産>
○政府
・憲法学者の小林節慶応大学名誉教授は「安保関連法(戦争法)は自衛隊を米軍の二軍として海外派遣するもの」「安保関連法は戦費破産は招く恐れがある」と指摘する。これは安倍首相の「国民虫けら、米国神様」を表している。※最近小林氏の本を読んだ。

・米国の外交政策誌に日本が購入予定の兵器として①ロッキード社F35②水陸両用車両③グラマン社グローバルホーク④イージス艦/ミサイル防衛システムが列記されていた。※詳しくないけど、近年購入した様な。
・2015年8月安保法制特別委員会で山本太郎参院議員は、「米軍はイラクのファルージャを攻略した時、兵士に『武器/双眼鏡/携帯電話を持つ人は殺せ、逃げる人も殺せ』と指示した」と発言し、自衛隊の任務拡大(駆け付け警護)でこれに同調する可能性を指摘した。

・「中期防衛力整備計画(2014~18年)」にはオスプレイ17機(1機211億円)を購入する計画が含まれている。オスプレイは危険な機種とされている。安倍政権はこの欠陥兵器(オスプレイ)の受け皿に「佐賀空港軍事空港化」と「辺野古基地建設」を同時に進め、二重投資している。

○佐賀県
・2014年11月古川康佐賀県知事は「佐賀空港軍事空港化」容認の見返りに、翌月の総選挙での佐賀2区の「自民党公認」を得る。古川氏の後継者には樋渡啓祐武雄市長が指名される。
・2014年12月佐賀1区で病身の民主党原口一博が奇跡的に当選する。「佐賀空港軍事空港化」(オスプレイ受入)に県民の怒りが爆発したと云える。
・一方の佐賀2区では開票早々、自民党古川氏の当選が確定する。古川知事は最後の県議会で「オスプレイ受入/原発再稼働/諫早干拓開門など課題が山積しているのに辞任は議会軽視だ」と追及され、「安倍政権の傀儡知事」と批判されていた。
・自民党は総選挙で安倍首相/小泉進次郎などが応援演説に入るが、「佐賀空港軍事空港化(佐賀1区)」「原発再稼働(佐賀2区)」「TPP」には触れなかった。

・佐賀県知事選に立候補した樋渡前武雄市長は敵味方を峻別し、”佐賀の橋下徹”と呼ばれていた。樋渡氏は古川前知事と同様に「佐賀空港軍事空港化」「原発再稼働」に賛成していた。
・2015年1月佐賀県知事選では、一部の自民党議員と「JAさが」(農協)が山口祥義氏を擁立する。当初は樋渡氏が有利であったが、終盤山口氏が抜き去る。これは”中央対地方の戦い”で、”地方”が勝ったと云える。
・自民党は佐賀県知事戦で菅官房長官/谷垣幹事長などを続々と佐賀入りさせたが、”争点隠し選挙”を繰り広げた。そもそも佐賀空港建設時、県と漁協は「佐賀空港を軍事利用しない」と覚書を交わしていた。
・佐賀県知事選は2014年7月滋賀県知事選、11月沖縄県知事選に続く3連敗で、農協の離反が大きく影響した。山口新知事は「オスプレイ受入」を白紙撤回した。

<家庭内野党の昭恵夫人>
・2012年8月昭恵夫人は「上関原発」の対岸にある「祝島」を訪れ、「今後は飯田哲也氏と自民党のパイプ役を務めます」と発言する。飯田氏は”脱原発の旗手”である。
・2012年12月総選挙で自民党は圧勝し、安倍首相が返り咲く。2012年7月山口県知事選で「脱原発」を掲げ当選していた山本繁太郎知事(自公推薦)は、徐々に「原発推進」に転換する。
・「エネルギー基本計画」の審議会から外された飯田氏は「安倍政権は”原子力ムラ内閣”」と批判する。

・2011年7月安倍氏と飯田氏は面会している。共に山口県出身/神戸製鋼勤務で共通点がある。しかし違う点は、飯田氏は神戸製鋼に勤務するが”原子力ムラ”に落胆し退職し、「自然エネルギー推進」に向かわせる。2012年7月山口県知事選はその二人の闘いとも云える(飯田氏は立候補するが、山本氏に敗れている)。
・飯田氏は日中韓による「東アジア自然エネルギー共同体」を構想している。

・小泉元首相は首相在任中は「原発推進」だったが、辞めた後に「脱原発」に転換した。小泉氏はその理由を「原発は安全/コストが一番安い/クリーンエネルギーを信じていた。しかし今は全部嘘だったのが分かった」と発言した。また「日本は満州がないとダメになると云われたが、戦後復興した。オイルショックのお陰で、環境先進国になった。原発ゼロでも自然エネルギーで経済成長する」と発言した。

<被災者を苦しめる土建政治>
○巨大防潮堤
・2015年3月「国連防災世界会議」が仙台で開かれ、昭恵夫人は「大人の目を開かせるため、若者が力が必要です」と訴える。しかし土地所有者/建設業者を潤すだけの巨大防潮堤事業は進められている。「美しい国へ」を掲げる安倍政権は「国土強靭化」を合言葉に、防潮堤の建設を推進している。

・2013年10月昭恵夫人は「東北の美しい未来を考えるフォーラム」で「防潮堤はどこに必要で、どこで不要なのかを考え直して欲しい」と発言する。続いて首都東京大学横山准教授は「防潮堤は仙台平野では費用対効果は大きいが、リアス式海岸では小さい」と批判する。
・2014年5月昭恵夫人は「気仙沼市小泉地区の防潮堤は自然景観を破壊する」と発言するが、村井嘉浩宮城県知事は「現地の合意を頂いた」として見直さなかった。国道45号線に防潮堤機能を兼ねさせる代替案も提出されたが、見直される事はなかった。
・2014年7月小泉地区の最後の説明会が開かれ、推進派(地権者である長老)対見直し派(若者、女性)の対立となる。「維持管理費(年2億5千万円)を子供達に負担させたくない」などの意見も出たが、小泉復興政務官は現行案を見直さなかった。
※公共事業は極力地方に権限移譲すべきだ。

○工事費高騰で苦しむ被災者
・東日本大震災の被災地では仮説住宅での生活が続くなど生活再建が進んでいない。一方で大型復興事業は進んでいる。「高台移転」「三陸自動車道」などの大型復興事業が集中したため、資材高騰/人手不足が起き、皮肉にも小規模な復興事業が遅れる結果となっている。

・陸前高田市では230億円の巨費を投じ、高さ12.5mの巨大防潮堤が作られている。しかしその場所の地下30mは軟弱地盤で、以前の防潮堤は津波が来る前の地震によって破損していた。陸前高田市でも国道45号線に防潮堤機能を兼ねさせる代替案が出されたが、見直されなかった。「高台移転」により人が住まなくなった土地に巨大防潮堤が必要なのかの批判もある。

・宮城県では3,140億円(163Km)、岩手県では2,810億円(66.6Km)の防潮堤の計画があり、鹿島/間組/銭高組/戸田建設などが受注している。南海トラフ地震に備え紀伊半島/四国/九州でも”津波特需”が生まれる可能性がある。
・安倍政権は建設業界に献金/選挙応援を求め、その見返りに「国土強靭化」を推進している。

・「三陸自動車道」「宮古盛岡横断道路」「東北横断自動車道釜石秋田線」の3路線の建設が加速化している。仮設住宅から抜け出せない被災者は「復興事業なら何でも」から「必要なものを最優先で」に変わって来ている。
・大型復興事業により人手/重機/資材が不足しているため、河川事業では既に契約しているのに、工事を開始できない状況にある。また建設業者は「利益率が高い三陸自動車道の工事の入札を待っている」などの選り好みが始まっている。

・所有者が確定できない土地が多くあるのも復興が進まない原因の一つで、そのためには被災地限定の特別法が必要です。入札不調/辞退も復興が進まない原因です。「おらが大槌復興食堂」の経営者は、「店舗を建てる土地はあっても、建築費が通常の2倍に高騰したの建てれない」と訴えます。

・陸前高田市では「巨大防潮堤」「三陸自動車道」の建設が進む中、住民は仮設住宅から出られない状況が続いている。住民からは「大型復興事業の資材/人手を住宅再建に回して欲しい」との声が上がっている。住宅建設費の見積は当初1,500万円だったのに5割増しになり、諦めた住民もいる。※土木と建築で、それ程影響はないと思うが。
・奥尻島での経験「防潮堤は一番最後で良かった」は活かされず、被災者は苦しんでいる。
※予算総額を余り増やさないで東北に重点配分なら、資材不足/人手不足はそれ程起きなかったのでは。

○河川政策も住民軽視
・自民党の土建政治復活を代表するものに「スーパー堤防」がある。2012年総選挙で自民党が圧勝すると、2012年度補正予算/2013年度本予算で「スーパー堤防」に49億円を付ける。江戸川区は早速要請し、北小岩の「スーパー堤防」再開で12億円を確保する。
・2010年事業仕分けで、「スーパー堤防」の完成予定は2200年で総工費は66兆円である事が判明していた。

・江戸川区のスーパー堤防取消訴訟を支援する渡邉氏は「”点”で話にならない」「スーパー堤防上のマンションは高く売れ、防災予算で造成工事しただけ」と批判する。
・利根川流域で今後30年で使える総予算は9,600億円であるが、江戸川で「スーパー堤防」11Kmを作るのに1兆円以上掛かる。もっと有効な防災工法を選ぶべきである。

○鬼怒川水害は人災
・2015年9月鬼怒川の堤防が決壊する。鬼怒川は「10年に一度の大雨に耐えられない」とされていたが、河道整備の計画は立てられなかった。
・「水源開発問題全国連絡会」の嶋津共同代表は「巨額の予算が投じられている『湯西川ダム』の建設を中止し、鬼怒川下流部の河道整備を進めるべきだった」と指摘する。「国交省認定の堤防を整備すると莫大な費用が掛かるが、堤防の真ん中にソイルセメントを入れる工法や、鋼矢板を立てる工法であれば安価に強化できる。この工法を取っていれば越水やパイピングによる破堤を防げた」と指摘する。
・安倍政権は「国民の命を守る」と言っているが、河川利権を守る事に徹している。

○地元山口県での土建政治
・2013年1月中尾友昭下関市長は「安倍首相になり『山陰自動車道』『第2関門橋』の建設が進むと」と年頭挨拶する。安倍政権は2012年度補正予算で「ミッシングリンク整備」(未開通路線の解消)で623億円を確保する。
・安倍首相は「長州出島計画」の失敗に懲りていない。下関市に755億円を投じ国際港湾を建設したが、風が強い/税関が不便などからほとんど利用されていない。「下関北バイパス」には780億円を投じている。「8千人の雇用効果がある」との触れ込みだったが、人口は33万人から28万人に減じている。

・2012年8月山口県知事に就任した山本繁太郎氏(前述)は、2014年1月辞職願いを提出するが、2ヶ月後に肺がんで亡くなる。自民党山口県連は水面下で候補者を選定し、村岡嗣政氏を擁立する。一方知事選再出馬が予想された飯田哲也氏(前述)は選挙準備不足などから出馬を断念する。

<利権屋がうごめく辺野古新基地>
・島尻安伊子参院議員は2007年沖縄県参院選補欠選挙で当選し、国政デビューする。2010年参院選では「新基地建設」に反対し当選する。ところが安倍政権発足1年後の2013年11月沖縄選出議員全員が「新基地建設」に転向する。2014年11月沖縄県知事選で島尻氏/櫻井よしこ氏は沖縄入りし、地元2紙(琉球新報、沖縄タイムス)を叩いている。

・「公共事業でばらまく見返りに、基地を受け入れてもらう」は自民党の伝統的手法である。「沖縄メディカル・イノベーション・センター構想(OHMIC構想)」はその一つである。
・自民党の基地政策の”アメ”である「OHMIC構想」は、先進医療施設/新薬開発拠点を普天間の米軍住宅跡地に作る計画である。「OHMIC構想」の旗振り役を島尻氏が務めている。しかし地元では治療費で維持費が賄えるのかと、この巨大プロジェクトに困惑している。

・2014年11月沖縄県知事選で仲井眞弘多知事は「辺野古推進」「普天間解決が最優先」「南北縦貫鉄道」「那覇空港の滑走路増設」をアピールするが、「新基地建設反対」の翁長雄志に大差で敗れる。

・「辺野古新基地建設」には2,100㎥(内1,700㎥は県外から)の埋立土が必要になる。これを仕切るのが地元の建設会社『東開発』の仲泊弘次会長である。辺野古埋立の「現行案」(V字滑走路)は仲泊氏の「浅瀬案」と守屋武昌防衛事務次官の「陸上案」の折衷案である。※そうなんだ。

・2014年1月名護市市長選で辺野古移設反対の稲峰進市長が再選する。高市早苗政調会長/竹下亘衆院議員は那覇市を訪れ、「沖縄振興予算」の大盤振る舞いの見返りに、選挙支援を要請するが、自民党推薦の末松文信氏は敗れる。
・「沖縄振興予算」は基地反対が強まると増加する傾向にある。2014年度「沖縄振興予算」の目玉は「沖縄科学技術大学大学院」で、新研究棟建設/機器購入/橋梁建設の概算要求200億円が満額回答される。「恩納南バイパス」(事業費360億円)も完成したが、当地が産学共同の研究開発拠点になる雰囲気はない。

・2015年5月佐賀地裁で唐津市発注工事の贈収賄事件で有罪判決が下る。瀬戸内海では海砂採取が禁止されたため、玄界灘は海砂の一大産地になる。しかしこれにより「呼子のイカ」などの漁獲量が減少する。2015年1月佐賀県知事選で当選した山口祥義知事(前述)が海砂採取を規制強化するか注目される。
・長崎県のA社は「諫早湾干拓事業」での海砂採取で大きな利益を得る。「辺野古埋立」「上関原発建設」でも安い中国産の砂でなく、玄界灘の海砂が使用される可能性が高い。

<あとがき>
・2016年は日本の将来を決める”選挙の年”であり、安倍首相の正体を浮き彫りにするのが本書の主旨である。金栄美氏/古賀茂明氏/永田浩三氏/小林節氏/山本太郎氏/藻谷浩介氏などの発言を参考にさせて頂いた。感謝したい。

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