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『世界の見方が変わる50の概念』齋藤孝を読書。

50の概念を解説しています。苦手の分野ですが、幾つかは頷ける概念があった。
記号の消費、差異の体系、反証、間主観性、正・反・合、智・仁・勇などは面白かった。

著者はベストセラーを出しているので、その内それらも読んでみたい。

子供の頃、曖昧な事象を言葉にする有効性を感じた事があった。
また20歳頃、難しい熟語に関心を持った時期があったが、その後はサッパリです。

お勧め度:☆☆

キーワード:概念/知力、パナプティコン/内面化、野生の思考/文明の思考、オリエンタリズム/一括り、ノマド、トゥリー・リゾーム/ネット、記号の消費/実体、差異の体系、パラダイム、反証可能性、実存主義/選択、不条理、間主観性/決め付け、エス・自我・超自我、快感原則・現実原則/バランス、中庸/孔子、イデア、理念型/分節化、超人/駱駝・獅子・幼子、身体知、自然体/武道、呼吸、型、技化・量質転化、顧客/顧客満足、マネジメント/イノベーション/ドラッカー、交渉、他力本願/親鸞、アイデンティティ/ガンジー/夏目漱石、天地有情/自意識、離見の見、スタイル/コミュニケーション、加速度、フロー体験、弁証法/正・反・合、胆力/勝負、素読、マインドフルネス/瞑想、通過儀礼、過剰性、美意識、単独者、浄化、祝祭、侵犯/越境、上機嫌、模倣、ビルドゥング/自己形成、智・仁・勇、悟り、粋

○序
・「概念」は英語ではコンセプトです。バラバラな物事の本質を言葉にしたのが「概念」です。そのため「概念」は抽象的です。したがって「概念」を述べる時は、具体的な事象と一緒に述べる必要があります。

・「万有引力」「仁義礼智信」は「概念」です。「概念」は先人の知恵/思考の結晶で、世界の見方を変えてくれます。マックス・ウェーバー/ジョルジュ・バタイユなどの「概念」を使うと効用があり、知的な喜びをもたらします。※簡単に言わないでくれ。

・著者は本を書いていましたが、自分の考えを一方的に主張するだけでした。「間主観性」(主観と主観が混じり合い、共通のものが生まれる)を知り実践すると、ベストセラーが生まれました。

・著者は大学生になると「概念」を渉猟しました。当時は「現代思想」がブームで、「知の力」で世の中を変えれる雰囲気がありました。今は教師を育てる仕事をしていますが、自身の体験を基に「概念」を教えています。
・「概念」は使いこなす事(=知力)が重要です。「概念」を使いこなせると、対象の実体や自分の立ち位置が見えるようになり、不安は解消し、ストレスは減ります。※「概念」を知ると共に、体験も必要でしょうね。

・古代哲学の「概念」/現代思想の「概念」/東洋思想の「概念」、これら全ての「概念」が使えます。

○パナプティコン
・「パナプティコン」は英国の哲学者ジェレミ・ベンサムが考案した言葉で、「全てを見る」を意味します。刑務所がこの構造になっています。人間は監視されていると、自然と規律に服従します。
・現代社会では、職場では上司に監視され、学校では先生に監視されます。これらの監視によって、自発的に規律に従うようになります(監視の内面化)。※監視カメラも多いし。

○野生の思考
・「野生の思考」は仏国の社会人類学者レヴィ=ストロースの著書の名前です。これはアマゾンの先住民が豊かな生活をしている事から、その場にあるもので上手に対応する事を云います(プリコラージュ)。この反対語が「文明の思考」で、計画的に物事を進める事を云います。※誰かが「計画が旨くいくのは、その前提条件が全て揃っている場合に限る」と言ってた。
・「文明の思考」だと大量生産になるので、原子力発電/環境破壊/地球温暖化/核兵器などの問題を起こしています。

○オリエンタリズム
・パレスチナ系米国人で文学研究者エドワード・サイードは、西洋が作った東洋のイメージを「オリエンタリズム」と名付けました。彼は、東洋を非近代的から「エキゾチック」/非倫理的から「感情的」/理解不能から「神秘的」とした事に異議を唱えました。

・日本人は「日本には四季がある」と云いますが、赤道直下を除いて世界中で四季があり、日本固有のものではありません。
・日本人はアジアや欧州を一括りに考えているかもしれませんが、アジアにも東アジア/東南アジア/南アジア/中央アジア/西アジアがあります。男性/女性で一括りにするのも考え物です。「レッテル貼り」は止めましょう。

○ノマド
・「ノマド」は「遊牧民」を意味します。「自分の領域を固執されず、自由に生きる事」を指します。しかし「会社を辞める」などは現実的ではありません。
・近年似た取り組みを会社が行っています。組織横断的なプロジェクトや、仕事が終われば自由に時間を使ってよいなどがあります。※Googleは自由時間を強制していた。

・「ノマド」の考え方は教育(理系/文系の枠に嵌めない)/読書(※簡単に言えば、乱読かな)にも通用します。また「ノマド的」生き方は多様性を認め、差別/排他性の排除に繋がります。

○トゥリー/リゾーム
・仏国の哲学者ジル・ドゥルーズは「トゥリー」(樹木)/「リゾーム」(地下茎)の概念を立てました。「トゥリー」は上下関係や指示系統が明確な、軍隊のような組織です。一方の「リゾーム」はネットワーク型の集団で、ゲリラみたいな集団です。
・教育の場でも、生徒の自由度を重視する「リゾーム型」の教育が取り入れ始めています。
※「集合知」「草の根」とか、類似の言葉は沢山ありそう。

・著者はネットでニュースや商品のレビューをよく見ますが、頷ける意見が多くあります。著者は昭和歌謡が好きですが、ネットには『分れの朝』には3バージョンあって、このバージョンが最も枯れているなどの意見も見られます。

○記号の消費
・人は「商品」を選ぶ時、ブランド品を選ぶ傾向にあり、これらは「サービス」「文化」にも当て嵌まります。提供する方は差異化/差別化を商品戦略としています。
・「格付け番組」がありますが、普段から贅沢な食事をしている人でも、その判別は出来ません。

・消費を煽るために差異化する「記号」を付けているに過ぎません。典型的な例が「芸能人の△△さんも使用しています」です。要するに「記号」を食べ、「記号」を着ているに過ぎません。※面白い表現だ。
・雑誌『暮らしの手帖』はファッション/飲食物/料理/商品を徹底的にテストしていました。※聞いた事はあるが、見た事はない。
・結婚相手を見つける時の、年収/学歴も同じです。

○差異の体系
・スイスの言語学者フェルディナン・ド・ソシュールは「差異の体系」を唱えました。仏国では蛾と蝶を区別しません。雪国では雪を、粉雪/牡丹雪/沫雪などに区別します。この様にAにはAの意味があるのではなく、AとBの差異が意味(※言葉かな)を生み出しているとする考えです。※全くその通りだ。英語で旅行に該当する単語が一杯あるのに驚いた事がある。

・この手の例は沢山あり、英語圏では長ネギ/玉ネギは、全てオニオンである。日本では全てチーズであるが、欧州ではカマンベールチーズ/ブルーチーズ/モッツァレラチーズに分かれる。

○パラダイム
・著者はトーマス・クーンの『科学革命の構造』を読んで「パラダイム」をカッコ良いなと思った。「パラダイム」は「ある時代の支配的な見方/捉え方」を指します。

・「天動説」から「地動説」など、劇的な「パラダイム・シフト」が起きました。これは社会/経済でもあります。帝国主義の時代、日本は日清戦争/日露戦争/太平洋戦争と突き進むのを、皆当然と思い、「パラダイム・シフト」は起きませんでした。
・ランプから電灯への転換、これも「パラダイム・シフト」です。スマホの登場も「パラダイム・シフト」です。教育では生徒が授業を聞くものから、生徒が自主的に学ぶ「アクティブ・ラーニング」に転換し始めています。エネルギーに関しても、「代替可能エネルギー」(※再生可能エネルギー)への転換が検討されています。

○反証可能性
・英国の哲学者カール・ポパーは「科学は客観性を持つと考えがちですが、反証されていない仮説に過ぎない」と述べています。「反証」とは「ある主張に対し、反対の例を呈示する事」です。※知らない言葉だ。

・自分の主張に「反証」されたら嫌な気になりますが、素直に改めたいものです。真実を認めないと、「大本営発表」になってしまいます。
・湯川秀樹は自分の仮説を潰す事を、常に精一杯やったそうです。※最近の科学者の事件とは逆だな。

○実存主義
・人は境遇/遺伝子を自分で選んで生まれた訳ではありません。しかしこの運命を受け入れて、自分の選択に責任を持って生きるのが「実存主義」です。
・今の晩婚化/非婚化も、現状を変えたくない保守的な考えがあるように思えます。サルトルは「我々は自由の刑に処せられている」と言っています。

○不条理
・世界で最も裕福な8人が、最も貧困な36億人分の資産を所有しています。これは「不条理」です。貧困の連鎖も「不条理」です。「1億総中流」と云われた時代は、「不条理」の少ない時代でした。それを壊したのが「新自由主義」です。

・自分の責任でないのに、その責任を押し付けられ、「自分が後始末をします」と言えたら”不条理の英雄”です。※これは考える。
・徳川家康は”不条理の英雄”です。小さい頃から人質になり、織田信長/豊臣秀吉に対しても我慢を続けました。
・社会人になって不条理に耐えられず、会社を辞めてしまうと、”転職の連鎖”になってしまいます。したたかに生きる事も必要です。

○間主観性
・オーストリアの哲学者エトムント・フッサールが考えた「間主観性」とは、例えば二人が自分が考える理想(主観)を語り、二人が共有出来る主観に至る事を云います。主観に先立って”客観世界”があるのではなく、「各自が主観を主張し、そこから”客観的世界”が模索される」考えです。
※考え方は納得するが、普段使ってる「客観的」とは、数値などで証明する事と思うが。違うかな。

・この「現象学」の考え方は、「決め付けを止める」(現象学ではエポケー)の考え方です。「リンゴは赤い」「殺人事件が増えた」などを決め付けず、一旦保留する考え方です。※現象学?
・モネはスイレンを書き続けますが、それは水や光の状態で、千変万化するためです。宮崎駿さんは女性が座るシーンで、何度もスカートの翻りを観察して、アニメにしたそうです。又吉直樹さんは「関西人だから、皆ボケと突っ込みと思われては困る」と言っています。
・人は誰も先入観/決め付けがあります。これを括弧の中に入れる習慣を身に付けましょう。

○エス/自我/超自我
・オーストリアの精神医学者ジークムント・フロイトは動物的本能を「エス」とし、善悪/ルール/道徳観/倫理観/自己規制などを「超自我」とし、「エス」と「超自我」を調整するのものを「自我」としました。※自我の意味が違うような気がする。
・「超自我」が強過ぎると、「~しないといけない」となり、自分を失います。逆に「エス」が強過ぎると、欲動に走ってしまいます。両者のバランスが重要です。

・親の権威が強過ぎ、成人してからも親の呪縛から逃れられないケースが増えています。また逆に「自由放任」で育てるケースも増えています。重要なのは「エス」と「超自我」を調整する能力です。

○快感原則/現実原則
・幼児は自分の欲望だけで生きています。フロイトはこれを「快感原則」と呼びました。また大人になるにつれ、我慢を知り、社会的行動が出来るようになります。この成熟した状態を「現実原則」と呼びました。

・現代はコンビニなど、「快感原則」に応えるサービスが当たり前になり、満足出来ないとキレる若者が増えています。
・「快感原則」が強過ぎると我がままで自分勝手な人になり、「現実原則」が強過ぎるとストレスが溜まる人になります。要は両者のバランスが重要です。

○中庸
・古代ギリシャの哲学者アリストテレスは、「人間が幸福に暮らすには、知恵/知識/思慮/技術を身に付けるだけでなく、徳が必要で、『中庸』の習慣が重要」としました。例えば快楽に対しは、放埓と節制の中間(中庸)に努めるべきとしました。

・ギリシャ語の”メソテース”に「中庸」が当てられたのは、”儒教の祖”孔子が「『中庸』が最上の徳である」と説いていたからです。孔子の一貫した価値観は「中庸」です。それは「温故知新」や「人間関係には、適度な距離感が大切」などに表れています。
・松下幸之助の考え方は「中庸」です。英語では「中庸」は”Golden mean”です。

・「中庸」の考えは、様々な場所で使えます。独裁政治と衆偶政治の「中庸」を考えてみる。「短期」の事ばかり考えている時に「長期」の事を考えてみる。など様々あります。

○イデア
・古代ギリシャの哲学者プラトンは、明確に見えなくても「本質」が理解されているものを「イデア」としました。例えば「三角形を描け」と言われたら、様々な形の三角形が描かれますが、それらは全て三角形です。

・洞窟の入口で火を焚いて、ある物の影を洞窟の中に映します。洞窟の中の人は影しか見れません。プラトンは影(現実の世界)に捉われるのではなく、本物(イデアの世界)を追求すべきとしました。
・プラトンの弟子アリストテレスは、逆に「物事の本質は理想の世界ではなく、現実の世界にある」と説きます。ニーチェも「天上界の価値を認めると、人間の価値が奪われる」と説きます。※分からない概念だ。「イデア」って「アイデンティティ」の基かな。

○理念型
・独国の社会学者マックス・ウェーバーは「理念型」を唱えました。これは社会現象を実験する事は難しいため、「理念型」と云う定点を設け、そこからの距離で測る考え方です。光の三原則(赤、青、緑)を考えると分かり易いと思います。

・「支配」を例にすると、3つの「理念型」(①伝統的支配-伝統的権威による、②正統的支配-法律的根拠による、③カリスマ的支配)に分けられます。ヒトラーによる支配は、①ゲルマン民族②法改正による議会支配③カリスマ的人気などで理解出来ます。
・この「分節化」は顧客の行動を分析する場合にも使われています。※クラスター分析とかあったよな。

○超人
・ニーチェは「超人」を提唱しました。これはスーパーマンではなく、「人間の卑小さを乗り越えようと努力している人」を指します。人間は他人の成功を恨んだりしますが、自分の価値を自身で高めようとしている人を「超人」としました。イチロー/日野原重明さんなどが、これに該当します。
・またニーチェは「精神の3段の変化」(駱駝、獅子、幼子)を示しました。「駱駝」は義務を背負っている人。「獅子」は義務から解放され、自由を獲得した人。「幼子」は自由を楽しんでいる人を指します。ニーチェは自由の中から価値が生まれると考えたのです。

○身体知
・映画『燃えよドラゴン』でブルース・リーは「考えるな。感じろ!」と言っています。テニスコーチのティモシー・ガルウェイは「アウター(実際の)ゲームに勝つには、インナー(心の)ゲームに勝つ事」と言っています。これは失敗や「~すべき」などを考えていると勝てないの意味です。ニーチェも「もっと体の声を聞け」と言っています。これが「身体知」です。

○自然体
・一般的に云われる「自然体」はリラックスした状態で、回りの変化にも柔軟に対応出来る状態を云います。
・武道では少し違って、「技」としての「自然体」になります。宮本武蔵は『五輪書』で「惣体自由」と呼んでいます。武道では「上虚下実」(上半身がリラックス、下半身が充実)が基本です。深呼吸も「自然体」を作るコツです。

○呼吸
・著者は呼吸の研究を長年続けています。「人間関係は呼吸で決まる」と考えます。「阿吽の呼吸」「息が合ってる」などの言葉があります。※「呼吸」と云うより、価値観や考え方の一致では。
・息が深い人は多くの人と合わせる事が出来ます。息を長く吐く事が重要です。

○型
・「型」は合理的な上達方法です。武道/芸道では「型から入れ」と言われます。達人/先人が見い出した「型」を積極的に取り入れるべきです。トヨタが強いのは「カンバン方式」などの「型」があるからです。

○技化/量質転化
・自転車に乗れると「技」になり、一生のものになります。「技化」するには反復練習を繰り返す必要があります(量質転化)。
・著者は武道をやっていたため、英語/歴史/スポーツなど、様々な事を「技化」する事を考えました。本書の「50の概念」も知っているだけでは意味がなく、「技」となって使えるかどうかが重要です。
・無意識で出来るようになるまで、最初は意識して行い、「技化」させる必要があります。※まあそうだな。

○顧客
・「顧客」はドラッカーが唱えた概念です。「顧客志向」「顧客ニーズ」「顧客満足」などで使われています。彼は「顧客」は少なくとも2種類あるとしました。例えば生活用品であれば、主婦と小売店です。※面白い考え方だな。中間消費者と最終消費者かな。

・最近は教員も生徒/学生を「顧客」と考えるようになり、「顧客満足」を意識するようになりました。
・著者は『声に出して読みたい日本語』を出すまでは、2千部位しか売れませんでしたが、「顧客」の欲求を探り、「顧客ニーズ」を考える事で、260万部のベストセラーを出せました。

○マネジメント
・大学入試の問題を一人でやっても解けませんが、二人でやると簡単に解けるものです。これが「マネジメント」です。組織の生産性を上げるのが「マネジメント」です。要するに人的資源を最大限に活かす行動です。『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』でお馴染みと思います。

・良い成果を残すためには、組織の方向性/ビジョンを示し、「イノベーション」を起こす必要があります。この「イノベーション」は技術の革新ではなく、システムの革新です。
・「分権化」「民営化」「知識労働者」「非営利組織」などの多くの概念を掲示し、その運用方法を説いたところにドラッカーの凄さがあります。

○交渉
・人生は「交渉」の連続です。職場での顧客/上司/部下との「交渉」、身近での家族/友人/恋人との「交渉」など、全てが「交渉」です。「交渉力」を身に付けるのは重要です。

・弁護士の射手矢好雄さんは、「交渉」には①利益②オプション③BATNA(Best Alternative to Negotiated Agreement)の3要素が大事と言っています。①「利益」とは、自分の利益を明確にしておく事、②「オプション」とは、複数の譲歩案を掲示する事、③「BATNA」とは、交渉が決裂した場合の代替案(逃げ道)です。

○他力本願
・親鸞の言う「他力本願」は、自分を預ける事で得られた安らかな境地です。親鸞は「南無阿弥陀仏」でこれを得られるとしました。※宗教は皆似ている。
・迷っている人は、自力で解決しようと力んでいるからです。これは「うつ病」の原因になります。他力だと自己嫌悪に陥りません。

○アイデンティティ
・「アイデンティティ」は米国の発達心理学者E・H・エリクソンが唱えた概念で、「自分の存在を明らかにするもの」(存在証明)です。
・彼は「アイデンティティ」を2つの要素に分けました。①自分の中で一貫性を持つもの、②自分の本質的な部分を他者と共有しているものです。①は”男性である”などがあります。②は”鹿児島県出身/明治大学卒業/阪神ファン”などで、他者との結束が生まれます。※男性も②に含まれそうだな。

・ガンジーは民族衣装を着る/インドで綿製品を作る/英国の塩の専売に反対するなどで、インド人としての「アイデンティティ」を目覚めさせました。
・夏目漱石は英国に留学し、英国の学者の言いなりで良いのかと疑問を持ちます。彼は自己本位に転換し、研究/小説で成果を残しました。

○天地有情
・哲学者の大森荘蔵さんは「喜怒哀楽の感情は心の中にあると思っているが、世界そのものが感情的である」(天地有情)と書いています。これを山水画/文人画/印象派の絵画で説明しています。
・医師で作家の南木佳士さんや数学者の藤原正彦さんは、「心を病んだ時、『天地有情』に助けられた」と言っています。
・著者は自意識過剰を「自意識メタボ」と呼んでいます。

○離見の見
・「離見の見」は能の世阿弥が説いた言葉です。彼は自分を客観視する努力が必要としました。
・「離見の見」が身に付くと、自分の言い間違いを瞬間に気付くようになります。「離見の見」を身に付けた人は、「自己修正機能」を持ち、全体を俯瞰出来る人です。
※皆こんな能力を身に付けているのだろうか。私の場合、次の事ばかり考えているが。

・欧米では読書を通して「メタ認知能力」(メタは”高次””超えた”などの意味)を身に付ける、「リーディング・ワークショップ」と云う授業が行われています。この授業により「自分自身を認知する能力」「自己客観視力」が身に付きます。
・著者は学生に他人のディスカッションを観察させる方法で、「メタディスカッション能力」「メタ視点能力」を身に付けさせています。
※他人をじっと観察したら、色々な事が分かるでしょうね。好きじゃないけど。

○スタイル
・歌手の井上陽水/ユーミン/桑田佳祐などは、それぞれが自分の「スタイル」を持っています。彼らは一貫した流儀/やり方を持っています。
・画家のゴッホ/ルノワール/ムンクも、それぞれ自分の「スタイル」が確立しています。そのため一流画家の絵画は、偽物を作り易いのです。
・ゴッホは生前は作品が全く売れませんでした。それでも人に喜ばれる作品を作ろうと自分を追い込み、奮闘しました。それによって「スタイル」が確立したのです。※良い話だ。

・吉田松陰は「松下村塾」を開き、ディスカッションにより志士を育てました。ピカソ/マティス/ブラックはモンマルトルの安アパート「洗濯船」に集いました。手塚治虫/石ノ森章太郎/赤塚不二夫/藤子・F・不二雄らはアパート「トキワ荘」に集いました。天才達は交友好きです(スタイル間コミュニケーション)。

・一流選手は自分の「スタイル」があるから勝負に強いのです。自分の「スタイル」を練り上げたいものです。

○加速度
・ニュートンの運動方程式は「F=ma」(F:力、m:質量、a:加速度)です。物は一旦動き出すと、一定速度で動き続けます。
・これは物理での理論ですが、物事を動かすには、最初の「加速度」が重要です。最初の1ヶ月/最初の数回が重要です。一旦動き出すと等速運動しますが、摩擦により減速します。その時は再度加速(家族サービス、飲み会など)する必要があります。

・デカルトは難問に対しては、細分化して対応する事を提案しています。例えば家を購入する時は、資料を請求する/現地を見に行く/ローンを計算するなど段階的に達成し、最終的に大きな目標を達成するアプローチです。
・著者も一日を、大学の授業/大学の事務/本の仕事/テレビの仕事/余暇の時間/読書の時間などの小さなブロックに分けて取り組んでいます。

○フロー体験
・「フロー体験」はハンガリー出身の米国の心理学者ミハイ・チクセントミハイが唱えた概念です。これは来た球を打つだけのように、自然な流れの中で上手くやっている状態です。
・彼は「自分のスキルと目標が不一致のため、一日の大半はストレスが発生したり、退屈な時間になる。一方スキルと目標が一致している時が『フロー体験』(没入状態)で、この状態だと作業の効率も上がり、能力の向上も望める」としました。
※ネットなどで夢中になる時があるが、その時に得た情報は身になる気がする。

○弁証法
・日本は対立を避ける傾向にあるが、西洋は矛盾/対立をパワーの源泉としています。「矛盾があるから次の段階に進める」、これが「弁証法」(対話術)です。「弁証法」は「テーゼ(正)→アンチテーゼ(反)→ジンテーゼ(合)」が基本です。「ジンテーゼ(合)」は一つ上の次元に引揚げられているため、「アウフヘーベン(止揚)」とも呼ばれます。※分かり易い説明。

・独国の哲学者ヘーゲルは、「歴史の変遷(古代から中世、絶対王政から共和制、近代国家の形成など)は矛盾を乗り越えた結果」としました。
・独国の哲学者ユンゲン・ハーバーマスは、「『真理』など不変のものはなく、真摯な対話から合意が生まれる」(対話的理性)としました。

・日本人は対立を避けますが、「弁証法」からすると、この態度は生産的ではありません。※これは日本人の欠点だと思う。初等教育で変えていく必要がある。

○胆力
・繊細な人は「胆力」のある人に憧れますが、どんな人でもプレッシャーに強くなれます。それは勝負すべき時に、きちんと「勝負」する事です。真剣勝負を避けた人は中途半端な自信しか得られません。「人事を尽くして、天命を待つ」です。

・スポーツ心理学のジム・レーヤーは『メンタル・タフネス』でメンタル・トレーニング法を説いています。※最近メンタル・トレーニングと云う言葉を聞かなくなったな。
・ドストエフスキーは「人間は慣れる動物」と定義しています。最初は驚いたとしても、慣れると驚かなくなります。

○素読
・江戸時代、寺小屋では『論語』を「素読」していました。「素読」すると、その文章は心身に刻まれます。
・著者は、寺小屋で「素読」の教材であった『金言童子教』『実語教』の解説本を出版しています。※知らない書物だ。

・福沢諭吉/夏目漱石/森鷗外/幸田露伴などは「素読世代」です。漢文自体が外国語ですから、オランダ語/英語を学ぶ時、それが役に立っています。※そうかな。
・「素読世代」の次に「教養世代」が来ますが、彼らは知識はあるが、体に刻み込まれている訳ではありません。

・”神の民”イスラエル(※ユダヤ人?)は3千年以上前から『聖書』を「素読」しています。『コーラン』の内容はよく理解出来ませんが、「素読」すると気持ちよくなります。
※『コーラン』自体が暗誦を意味するのか。『シャリーア』『スンナ』はムハンマドの言行で、内容を理解出来ると思う。
※本書では、素読/音読/朗読/暗誦が使われていますが、「素読」で統一しました。

○マインドフルネス
・「マインドフルネス」は”気付き””覚醒”などを意味し、感覚や知覚が開かれた状態です。”思慮がない””注意散漫””集中力欠如”の反対の状態です。
・「マインドフルネス状態」にする方法に「瞑想」があります。「瞑想」での「腹式呼吸」により、「マインドフルネス状態」を長く維持出来ます。近年、大学の授業や企業で「瞑想」が取り入れられています。
・「マインドフルネス」では、過去や将来の事を考えず、今の瞬間に集中する事を要求します(前後際断)。※「瞑想」した事はあるが、自分を”無”にするのは難しい。

・マハトマ・ガンジーに「あなたは50年間、毎日15時間以上働いている。バケーションが必要では」と問うと、「私は毎日がバケーションです」と答えました。

○通過儀礼
・バンジージャンプ/割礼/刺青/猛獣狩り/元服/七五三などは「通過儀礼」です。「通過儀礼」の現代版としては、受験/入社/結婚があります。入社などの「通過儀礼」を受けていない人は、浮ついた人になります。

・真鍋昌平の漫画『闇金ウシジマくん』/ロマン・ロランの長編小説『ジャン・クリストフ』など、「自己形成」を題材にした漫画/小説があります。『ジャン・クリストフ』を基に大人になるために必要な10のプロセス(一人暮らし、異性との交際、就職など)を挙げて、学生と確認しました。
※著者は大学で、色々な試みをしていますね。

○過剰性
・孔子は「過ぎたるは及ばざるがごとし」と言っていますが、若い時は少しやり過ぎた方が良いと思います。飲み過ぎで酒量が分かる/遊び過ぎて反省する/仕事をやり過ぎて体の限界を知るなどがあります。

・英語の先生になりたい学生に、A4で10枚の英文を書かせました。居酒屋のメニューについて/好きな漫画についてなど、結構書けるものです。
・同じく学生に1週間で5冊本を読ませましたが、意外にこなせるものです。
・ドストエフスキーの小説には「過剰な人」ばかりが出てきます。著者はこれを伝授するため、『過剰な人』を出版しました。

○美意識
・日本人は「美意識」が強く、武士道/恥の文化/負けの美学などがあります。
・不動産バブルの時、3千万円のマンションを1億円で売って利ザヤを稼ごうとし、金銭的な不良債権になりましたが、これは精神的な不良債権にもなったと考えます。

・自分が「美意識」を持っているか躊躇する人は、自分を象徴する言葉(例えば地道)をキーワードにすると良いと思います。
・版画家の棟方志功はゴッホに感銘を受け、ゴッホになろうとします。結果、「世界の棟方」になります。※尊敬する人って必要かな。

○単独者
・大学には常に連んでいる学生がいますが、そういう人は伸びません。著者は大学受験に失敗し、10年後に大学の職を得るまで、「単独者」になって猛烈に勉強しました。「単独者」になる事で、人間は強くなります。

・1960年岸信介は「日米安保条約」の改定を単独で決断します。しかしこの結果、日本の平和は維持され、経済発展したのです。
・スポーツのチームで上手く機能しないチームがあります。これはメンバー同士がもたれ合って、気持ちが緩んでいるためです。一人ひとりが「単独者」になって、協調してこそ、強いチームになります。

○浄化
・世の中が厳しくなり、動じないタフさが必要ですが、モヤモヤをスッキリさせる「浄化作用」も有効です。

・アリストテレスは「悲劇には『浄化作用』がある」とします。評論家の福田恒存は「芸術の役割/効用は感情の『浄化』にある」と言っています。近松門左衛門は『曾根崎心中』などの心中物を書き続けました。日本で心中物が根付いたのは、「浄化作用」があるからです。
・映画『ラ・ラ・ランド』『君の名は。』にも「浄化作用」があります。※映画『火垂るの墓』を思い出した。不思議な現象だ。

○祝祭
・仏国の哲学者ジョルジュ・バタイユは「祝祭」を概念にしました。人間の欲望は過剰のため、それを放出する「祝祭」が必要になります。

・幼児は常に「祝祭」と云えます。目にするもの/耳にするもの、全てに関心を寄せます。大人になると「祝祭感覚」を失っていきます。著者は「出会いの時を『祝祭』に」を座右の銘にしています。

○侵犯
・ジョルジュ・バタイユは「エロティシズム」を、「禁止された性的行為の領域を『侵犯』する事で生じる不安/興奮」としています。
・「中心と辺境」の考えがあります。「中心」は共通の価値を認めている集団で、「辺境」は少し外れた所です。しかし新しい価値は「境界人」「越境人」がもたらします。

・文化人類学者の山口昌男さんは、「社会は『中心と周縁』からなり、『周縁』は他者性を持つため、豊饒性を持つ」としました。
・また彼は「道化」についても言及しています。「『道化』は善・悪/破壊・生産/賢者・愚者などの二面性を持ち、トリックを使い、神/王/社会を混乱させた」としました。

・戦中の「一億玉砕」はおかしな事ですが、これに対し「越境」する人はいませんでした。
・ビートルズは既成音楽の枠を「越境」した集団です。積極的に「越境」して、新しい価値を創造したいものです。

○上機嫌
・ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)は「日本人は常に笑顔である」と書いています。しかし知識人の時代になり、日本は「不機嫌の時代」になりました。明治の文豪には「不機嫌」な人が多くいます。

・若い内は「不機嫌」でも構いませんが、35歳位でまだ「不機嫌」でいると、それは「未熟者」で、感情のコントロールが出来ない人です。
・成果主義/非正規雇用/リストラなど、労働環境は苛烈さを増しています。この時代、必ずしも能力の高い人が生き残る訳ではなく、明るい人/元気な人の下に人は集まります。「上機嫌」はリーダーシップの条件です。「上機嫌」を演出しましょう。

○模倣の欲望
・仏国の思想家ルネ・ジラールは「欲望は他者の欲望を模倣する事で出来ている」と説きました。例えば「ある女性がある男性を好きだと告白すると、別の女性がその男性を好きになる」です。これを「欲望の三角形」と云います。
・テレビCMで美味しそうに食べていれば、それが欲しくなる。紅茶キノコ健康法がブームになる。ビリーズ・ブート・キャンプが流行る。これらは全て「欲望の模倣」です。※「欲望の模倣」と云うより、価値判断の依存かな。

・教育とは「憧れに憧れさせる力」です。高橋尚子さんを育てた小出義雄さんは自身も走るのが好きでした。選手達はそんな監督に教えてもらいたいと、惹きつけられるのです。※まあ熱意のない教師は嫌だな。

○ビルドゥング
・「ビルドゥング」は「教養による自己形成」を意味する独語です。ゲーテ『若きウェルテルの悩み』ロマン・ロラン『ジャン・クリストフ』ヘルマン・ヘッセ『デミアン』トーマス・マン『魔の山』などは「ビルドゥングスロマン」(教養小説、自己形成小説)です。

・著者も若い頃の行動は漠然としか記憶にありません。しかし思い出した事をメモしてみると、バカな事もしたが、自分の成長を感じられます。
・ドストエフスキーの『罪と罰』で、主人公ラスコーリニコフはプライドが高く、老婆を殺し金を奪います。自分にも思い上がりがあったなと思ったりします。

○智・仁・勇
・孔子は人徳として「智・仁・勇」を説いています。江戸時代の儒学者・佐藤一斎は、「村長であれば、悪事を探し調べる『知恵』、孤児/困窮者への『仁』、悪者を懲らしめる『勇気』があれば良い」と説いています。

・「智」は物事が分かる「判断力」、「仁」は情けの感情で「思いやり」、「勇」は困難を恐れない「勇気」「行動力」です。この「三徳」で自分を評価すると良いと思います。「智」は頭、「仁」は胸、「勇」は腹でしょうか。※前述の「理念型」と似ているな。

○悟り
・外国人が好きな言葉に「禅」があります。「禅」のルーツはインドです。「悟り」は「禅」によって得られ、今の時間に集中出来ている/自分への意識が強過ぎない/リラックスしている状態です。「禅」では過去/未来を意識から断つ「前後際断」が大切にされます。

・著者も「悟り」を重視しています。「無の境地」でやっている時に良い成果を残せます。

○粋(いき)
・俳優の高倉健さんの演技を見ていると「粋」を感じます。
・哲学者の九鬼周造さんは、「色気(媚態)」「心の強さ/張り(意気地)」「垢抜けした態度(諦め)」がバランスした状態を「粋」としています。「媚態」は惚れた相手を自分のものにしたい欲望です。この欲望を維持させるのが「意気地」「諦め」です。この3つが揃っている人は、人を惹きつけます。

・今の時代、目の前の問題解決に精一杯で、世の中は希薄化しました。「粋な生き方」をする人が増えれば、世の中は活性化します。※「粋」は難解。

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