top learning-学習

『DNAの98%は謎』小林武彦(2017年)を読書。

最近「ゲノム編集」などをよく聞くので、基礎知識習得のため本書を選択。

ゲノムには遺伝情報とそれ以外の部分(非コードDNA)がありますが、本書は主に後者を解説しています。

ゲノムはまだまだ未解明で、これからも色々な事が分かってくるでしょう。

細胞(タンパク質)の製造装置であるゲノムがどんな物で、どんな機能を持つか分かった。

お勧め度:☆(専門用語が多出)

キーワード:<非コードDNAの発見、そしてゴミ箱へ>遺伝子、染色体、DNA(デオキシリボ核酸)、発現、ゲノム、エクソン、DNA配列の決定、<非コードDNAのゴミからの復権>クロマチン構造、ヘテロクロマチン、胚性幹細胞(ES細胞)、転写の調節、DNAの複製、染色体の凝縮・分配、ゲノムの再編成、<非コードDNAと進化>トランスポゾン/非コードRNA、レトロトランスポゾン、イントロン、SNP(スニップ)、遺伝子増幅、リボソームRNA遺伝子、<非コードDNAの未来>ORF、偽遺伝子、ゲノムの不安定性、がん、マイクロRNA、ゲノム編集、Y染色体

<はじめに>
・生物は環境に適応したものは生き残り、そうでないものは絶滅します。生物の遺伝子の情報を持つのがゲノム(全遺伝情報)ですが、その98%は遺伝子の情報を含まないとされてきました。そのためこの領域は「ジャンク(ゴミ)」「非コードDNA領域」と呼ばれています。しかし近年この領域が生命の誕生に重要な事が分かってきました。

<非コードDNAの発見、そしてゴミ箱へ>
○遺伝子
・遺伝学で重要な発見をしたのがグレゴール・ヨハン・メンデルです。1865年彼はエンドウの交配から3つの法則(①顕性(優性)の法則、②分離の法則、③独立の法則)を発見します。
・具体的には丸い種(AA)とシワ種(aa)から、第1世代(F1)では丸い種(Aa)のみが生まれ、第2世代(F2)では丸い種(AA、Aa×2)とシワ種(aa)が生まれる事を発見したのです。しかしこの法則も30年以上も忘れ去られます。

○染色体
・1902年ウォルター・サットンがバッタの染色体を発見します。これが遺伝子と考えられるようになります。
・その後トーマス・ハント・モーガンがショウジョウバエの遺伝から、様々な性質が4グループに分かれ遺伝する「連鎖」を発見します。これは相同染色体の数と一致しました。

○遺伝物質
・遺伝子がどんな物質でできているかを発見したのがグリフィスとアベリーです。彼らは「肺炎双球菌」の実験から、遺伝子がタンパク質ではなくDNA(デオキシリボ核酸)でできている事を発見します。「グリフィスの実験」(1928年)「アベリーの実験」(1944年)。※実験内容は複雑なので省略。

○二重螺旋構造
・1953年ワトソンとクリックはDNAが「二重螺旋構造」なのを発見します。DNAは塩基/糖/リン酸で1つの単位(ヌクレオチド)をつくり、ヌクレオチドが連なって1本の鎖になり、2本の鎖が「水素結合」して「二重螺旋構造」になっています。DNAの塩基はG(グアニン)/A(アデニン)/T(チミン)/C(シトシン)の4種類があり、塩基同士が「水素結合」(A-T、C-G)しています。
・細胞が分裂する時、2つの鎖が分かれ、それぞれが相手の鎖をつくり、「二重螺旋構造」が2つになります(後述)。

・この「二重螺旋構造」の発見が「分子生物学」の始まりです(※分子レベルに至ったためだな)。1962年彼らは「ノーベル生理学・医学賞」を受賞します。

○タンパク質を作る仕組み
・DNAがタンパク質を作る作用を「遺伝子の発現」と云います。
・「発現」は、まずDNAのコピー(メッセンジャーRNA、mRNA)が作られ、このmRNAとリボソームによりタンパク質が作られます。この手順は全ての生物で共通です。DNAとmRNAは、糖がデオキシリボースかリボースかの違いがあります。

・このmRNAの3つの塩基の情報から1つのアミノ酸(タンパク質)が作られます。塩基は4種類あるので、3つの塩基で64通り(=4³)のアミノ酸を指定できます(ただしアミノ酸は20種類しかない)。この組み合わせを「コドン」と云います。この「コドン」も全生物で共通です。mRNAの人工合成により「コドン」は解明されています。
・作られたアミノ酸は連結してタンパク質になり、消化酵素/筋肉(アクチン)/赤血球(ヘモグロビン)などになります。

○ゲノム
・1980年代に入ると、人為的に遺伝子の破壊(ノックアウト)ができる酵母菌の研究により、遺伝子の全体像が明らかになりました。
・これにより「ゲノム」の概念が生まれます。「ゲノム」は遺伝子と染色体の合成語で、生物が持っている遺伝情報全体を示します。「ゲノム」はヒトゲノム/大腸菌ゲノム/酵母ゲノムなど、生物名と共に使います。

○ヒトゲノム計画
・1980年代日本でヒトゲノムの解読が始まります。しかしこれには金銭的問題/倫理的問題がありました。特に金銭的問題が大きく、1990年代米国/英国/日本などで共同研究する事になりました。
・2000年大まかな塩基配列が決まり、クリントン大統領/ブレア首相が記者会見を行いました。クリントン大統領は「人類が作った最も価値のある地図」と称賛しました。
・ゲノムを解読した割合は、米国67%/英国22%/日本7%でした。2003年「ヒトゲノム計画」は完了し、30億塩基対/2万2千遺伝子が解読されました。

○非コードDNA
・タンパク質が作られる手順は、まず「DNAがmRNAに転写される」と説明しましたが、正確には「DNAがmRNA前駆体に転写され、mRNA前駆体がスプライシングされてmRNAになる」です。スプライシングにより「エクソン」(遺伝情報)だけが残るmRNAが作られます。この時、1つの遺伝情報から複数の遺伝情報が作られます。※塩基の種類が変わる?
・ヒトゲノムの解明で30億塩基対の内、遺伝情報を持つ「エクソン」は2%で、残り98%は遺伝情報を持たない「非コードDNA領域」だったのです。

・この「非コードDNA領域」は様々な種類に分類されます。その内ゲノム全体の40%を占めるのが、「レトロトランスポゾン」です。これはゲノム上でその位置を変えます(※位置を変える?そんな事があるの?)。「レトロトランスポゾン」にはSINE(短い散在性反復配列)/LINE(長い散在性反復配列)があります。SINEの長さは数百塩基対、LINEは数千塩基対です。他に数百塩基対以下の「マイクロサテライト」もあります。

○DNA配列の決定
・1980年代のDNA配列の決定方法は「サンガー法」です。この方法だとヒトゲノムの配列を決めるのに数年掛かります。次に出たのが「ショットガン法」です。さらにキャピラリーと云う管でDNAを分離する方法が開発され、この装置が「第1世代シーケンサー」です。その後も開発が進み、「次世代シーケンサー」ではヒトゲノムの配列を1週間程度で決めれます。
※各方法の詳細が説明されているが省略。ところで配列は個体毎に異なり、”決める”ではなく、”調べる”では。

・ヒトゲノムの配列が決定した言っていますが、実は「非コードDNA領域」は決定していません。それは「非コードDNA領域」が重視されていないためです。

<非コードDNAのゴミからの復権>
○ゲノムを支える非コードDNA
・ヒトゲノムの場合、98%が「非コードDNA領域」です。しかしその領域は「遺伝子の維持」、すなわちDNAの複製/分配/修復、遺伝子の発現の調節を担っています。

・「非コードDNA領域」の話をする前に、酵母の話をします。酵母はヒトと同じ真核生物で、ヒトゲノムの30億塩基対に対し、1500万塩基対と小規模です。そのため多くの研究に酵母が使われています。

○クロマチン構造
・染色体はDNAとタンパク質が結合した「クロマチン構造」になっています。8つのタンパク質(ヒストンH2A、ヒストンH2B、ヒストンH3、ヒストンH4それぞれ2つ)がヒストンを作り、これにDNAが巻き付いています。
・このヒストンは「修飾」により、結合がゆるくなった目覚めた状態(ユークロマチン)と、きつくなった眠った状態(ヘテロクロマチン)を変移します。クロマチンにこの2つの状態が存在するのは、ウイルスなどの”よそ者”から守るためです。

○非コードDNAを「眠らせる」
・酵素による脱アセチル化で、ヘテロクロマチン(眠った状態)に変移します。しかしDNA全体がヘテロクロマチン化するとマズいので、脱アセチル化を止める境界が必要になります。その境界には2種類あり、1つ目は「物理的な壁」で、100塩基対足らずの「tRNA遺伝子」がその境界になります。2つ目は「機能的な壁」で、ヒストンアセチル化作用を持つ酵素と結合すると、テロクロマチン化が止まります。
※DNAは全てDNAと思っていたが、RNAもあるの?

○三毛猫はメス
・ヒトなどの動物細胞にもヘテロクロマチン化があります。よく知られるヘテロクロマチン化に「X染色体」の不活化があります。ヒトは23対46本の染色体がありますが、その内2本は男性の場合はXY染色体、女性の場合はXX染色体になっています。女性はX染色体を2本持つため、1本が常に不活化(ヘテロクロマチン化)されています。
・猫の毛に色(オレンジまたは黒)を付ける遺伝子はX染色体にあり、メス猫は2本のX染色体を持つため、オレンジの部分と黒の部分ができるのです。

・マウスは受精5日後に100個程度の胚性幹細胞(ES細胞)になります。このES細胞はヘテロクロマチンの割合が小さく、分化が容易な状態になっています。分化が進むと「非コードDNA領域」はメチル化されヘテロクロマチン化されます。※メチル化?脱アセチル化では。

○遺伝子の発現の調節
・遺伝子の発現で最初に行われるのが、DNAからmRNAへの転写です。生物の体節(頭~体~足)を作る遺伝子は、DNA内で並んでいます。生物の発生段階では、その場所に応じた遺伝子のみが活性化され、転写され、その部位が作られます。この「転写の調節」を行っているのが「非コードDNA領域」です。

・ヒトの遺伝子は2万2千個見つかっています。これだと2万2千種類のタンパク質しか作れませんが、実際は10万種類あります(※アミンノ酸は20種類で、タンパク質は10万種類か)。それはmRNAを作るスプライシングで、エクソン(遺伝情報)の選択をしているためです(選択的スプライシング)。この情報も「非コードDNA領域」にあります。
※DNAは設計図でも手順書でもある。まるでプラモデル。

○DNAの複製
・人間には37兆個の細胞がありますが、全ての細胞がゲノムのフルセットを持っています。1962年ジョン・ガードンがカエルの分化した細胞の核を受精卵に移植し、これを成長させ、それを証明しました。またこの実験は分化した細胞の核を初期化できる証明にもなりました。1996年ウィルムットが羊で核移植を成功させ、クローン技術が注目されるようになりました。山中伸弥が開発したiPS細胞は、分化した細胞に4つの遺伝子(山中4因子)を加え、未分化のiPS細胞を作っています。

・「DNAの複製」に話を戻します。「DNAの複製」は細胞分裂の前に行われます。「DNAの複製」は「非コードDNA領域」にある複製開始点から始まります。「二重螺旋構造」であったDNAはジッパーのように2つに分かれ、各塩基に相補する塩基が結合し、結果的にDNAが複製されます。しかしこの複製は方向性があるため、DNAの末端(テロメア)が複製されません。そのためDNAの複製を繰り返すと、複製されるDNAは段々短くなり細胞の寿命になります。しかし寿命の長い「幹細胞」により、新しい細胞がドンドン作られています。
※複製を繰り返すと寿命になる。これは生物の致命的欠陥だな。
※幹細胞の説明がない。幹細胞って分化前の細胞のはずだが、分化後もあるのか?

○染色体の分配
・細胞の分裂は、DNAの複製→染色体の凝縮・分配→細胞の分裂の順番で行われます。「染色体の凝縮」の仕組みは、まだ明確に分かっていません。しかし出芽酵母の場合、「非コードDNA領域」のリボソームRNA遺伝子に折り畳みタンパク質「コンデンシン」が結合する事で起こります。
・染色体が長くなると、その分リボソームRNA遺伝子/「コンデンシン」も長くなり、凝縮力も強まります。

・凝縮された染色体は両極に引っ張られ、それぞれの細胞に分配されます。この時「非コードDNA領域」の「セントロメア」(染色体が交差する部分)に両極から伸びた微小管が結合し、微小管により両極に引っ張られます。「セントロメア」の長さは、ヒトの場合、数万塩基対から数百万塩基対です。
※染色体は2対になっていると思うが、それが同時に複製され、4対になるのかな?

○ゲノムの再編成
・ゲノムは基本変化しませんが、変化する時があります。それを幾つか説明します。
・ヒトには「免疫グロブリン」と云われる抗体を作るタンパク質があります。しかし抗体は、様々な抗原(ウイルス、細菌、花粉など)の1種類しか攻撃できません。そのため「免疫グロブリン」を作る「グロブリン遺伝子」は再編成によって変化しているのです。仕組みとしては「グロブリン遺伝子」にV/D/Jの3つの可変領域があって、V/D/Jの遺伝子がランダムに変化する事で、1千万種類以上の抗体を作っています。

・出芽酵母にも「遺伝子の再編成」の機能があります。出芽酵母にも性別に類するa株/α株がありますが、これは3番染色体の「MAT遺伝子」で決まります。この「MAT遺伝子」の配列(カセット)も再編成で変化します。

・単細胞生物のテトラヒメナは大胆な再編成を行っています。テトラヒメナは大小2つの核を持ちます。小核は生殖核で遺伝子は発現しません。一方小核から分裂して作られた大核では、遺伝子が発現しタンパク質を作り、生命を維持しています。この大核は再編成により、「非コードDNA領域」が大幅に取り除かれ、小型化しています。
※DNAは生命維持の根源なので、全容解明は大変だろうね。まるで人間社会を解明するようだ。

<非コードDNAと進化>
○サルとヒトの違い
・「非コードDNA領域」は遺伝子の発現の転写調節に深く関わっています。「ノーベル生理学・医学賞」を受賞した大隈良典の「オートファジー」(自食作用)もそれに当たります。細胞が飢餓状態になると、転写因子によりオートファジー遺伝子が発現され、自食作用が起きます。これは短期の変化です。一方長期の変化は進化に繋がります。

・500万年前ヒトはチンパンジーから分かれました。その100万年前にゴリラが分かれています。ヒトの染色体は23対46本ですが、チンパンジー/ゴリラは24対48本です。これは2つの染色体が融合し、2番染色体(2番目に大きい)となったためです。
・ヒトとチンパンジーの遺伝子部分を比較すると、1~2%しか違いがありません。塩基が1~2%違っても作られるアミノ酸が変わる可能性は低く、さらにタンパク質となると、さらに変わる可能性は低くなります。
・キーとなる遺伝子の違いが形態の違いをもたらしたと考えられます。例えばヒトは下顎を動かす咀嚼筋がチンパンジーより少ないのですが、これは咀嚼筋を作る遺伝子が失われたためです。これにより頭の形状や食生活など、多くの変化をもたらしたと考えられます。

・一方ヒトとチンパンジーでは「非コードDNA領域」は大きく異なります。DNAの末端「テロメア」の隣はサブテロメアで、この領域はヘテクロマチン化(不活化)されていますが、ヒトはこのサブテロメアが大幅に減少しています。この「非コードDNA領域」が遺伝子に変化を与えたと考えられます。

○進化の促進と抑制
・「非コードDNA領域」の大半は移動する遺伝子「トランスポゾン」です。この「トランスポゾン」がコード領域に移動する確率は低く、移動しても1つの体細胞であれば、その影響は極小です。しかし生殖細胞で移動が起こると、確実に子孫に影響します。

・「トランスポゾン」の移動を抑制しているのが「非コードDNA領域」で作られる「非コードRNA」です。「非コードRNA」の「Xist」は、通常のmRNAと同様に2万塩基対が転写され、スプライシングされ、そのままX染色体内に残り、遺伝子の発現の不活化を行います。
・「非コードRNA」には転移抑制の機能があります。「非コードRNA」はRNA結合タンパク質「アルゴノート」と複合体を作り、「レトロトランスポゾン」のmRNAを分解したり、リボソームの翻訳を阻害します。※トランスポゾンは直接移動する物質で、レトロトランスポゾンは転写/逆転写で移動する物資みたい。
・また「非コードRNA」は「アルゴノート」と複合体を作った後、ヘテクロマチン・タンパク質と結合し、ヘテクロマチン化(発現抑制)します。

・これらの防御システムを備えた「非コードDNA領域」は際限なく大きくなりました。これらの防御システムを掻い潜った生殖細胞により、進化が促されたと考えられます。

・「レトロトランスポゾン」の多くはSINEです。その一つである「AmnSINE1」はエンハンサーとなって脳の進化を促したと考えられます。
・哺乳類は胎生しますが、これは「レトロトランスポゾン」が遺伝子に変化し、胎生に進化したと考えられています。胎盤を形成する「PEG10遺伝子」は「レトロトランスポゾン」と相同性が高い遺伝子です。
※進化は生殖細胞の遺伝子の変化でしょうね。

○脳の進化-イントロンの謎
・「イントロン」は遺伝子の内部にあり、ヒトゲノムでは30%を占めます。しかしスプライシングにより取り除かれます。遺伝子は2万2千種類しかないのに、タンパク質は10万種類つくられます。これは選択的スプライシングによります(以上前述)。
・ヒトの脳を作る遺伝子は大変長くなっています。これは「イントロン」が多く含まれているためです。そのためDNAが切断され、遺伝子の変化が起こり易くなっています。
※DNAの切断をDNA複製の阻害から説明しているが難解。
※人間は様々な経験で成長するが、遺伝子も様々な変異から成長するのかな。

○変異を生むSNP(スニップ)
・ダーウィンの「進化論」は簡単に言うと、「種内の多様な個体の中で、環境に適した個体が多くの子孫を残し、その種のメインになる」です。
・ダーウィンの有名な観察にガラパゴス諸島の鳥「フィンチ」のくちばしがあります。それぞれの地域にそれぞれの環境に適したくちばしを持った「フィンチ」が生き残っていたのです。

・近年「変異」の多くがSNP(スニップ)で起こる事が分かってきました。「スニップ」はDNAの塩基が置換/挿入/欠失する事で、ヒトの場合、血液型/肌の色/体形/体質などに影響を与えます。ヒトの場合、30億塩基対あり、その0.1%が個体で異なり、それがヒトの多様性になっています。※たった0.1%で、こんなに多様なのか。
・糖尿病はインシュリンの不足によりますが、この原因も「スニップ」によります。
・「スニップ」の95%は「非コードDNA領域」に見られます(※ほぼ長さに比例だな)。これが遺伝子の発現の量/時期/組織の調節に影響を与えています。

○遺伝子増幅
・DNAの複製を阻害する構造に「パリンドローム構造」があります。これは「二重螺旋構造」の2本鎖に突出が生じ、配列にずれが生じる現象です(※キンクみたい)。「パリンドローム構造」ができると、DNAの複製中に1本鎖が切れますが、「相同組換え」で修復され、DNAの複製が再開されます。再度複製されるため、これが遺伝子増幅です。
※複製と増幅の違いが理解できず。再度の複製により、同じ配列が追加され、それを増幅と云っているのかな。
・一卵性双生児のゲノムを調べると、かなり違っており、それはコピー数の変化で、器官/臓器毎にも見られました。

○ヒトの色覚、ヨザルの目
・ヒトの網膜には2種類の視細胞(錐体細胞、桿体細胞)があります。錐体細胞は色を識別する細胞で、桿体細胞は光を識別する細胞です。錐体細胞には3種類あり、それぞれ青を認識するS遺伝子、赤を認識するL遺伝子、緑を認識するM遺伝子から作られたタンパク質を持ちます。S遺伝子は7番染色体にありますが、L遺伝子/M遺伝子はX染色体にあり、大変類似しています。そのためL遺伝子/M遺伝子の片方が失われ、「色覚異常」「色覚多様性」になっています。

・霊長類の大半は昼行性ですが、ヨザルだけは夜行性です。ヨザルは光を識別する桿体細胞にレンズ様構造を持ち、弱い光を識別できます。これは187塩基対の配列を10万コピー持つためです。※凄い量。

○リボソームRNA遺伝子
・リボソームRNA遺伝子は巨大な反復遺伝子で「非コードDNA領域」の王様と呼ばれています。リボソームはmRNAからタンパク質を作る翻訳装置で、リボソーム・タンパク質とリボソームRNAからなります。
・出芽酵母ではタンパク質の70%がリボソーム・タンパク質で、RNAの60%がリボソームRNAです。ウイルスはリボソームを持たないため、タンパク質を作れず、生物に分類されません。※ウイルスは生きているのに、生物でないんだ。

・大腸菌/枯草菌は7コピー、酵母菌は150コピー、ヒトは350コピーのリボソームRNA遺伝子を持ちます。リボソームRNA遺伝子は遺伝子のため転写する必要があり、進化した増幅作用を持ちます。
※複雑な複製手順が説明されているが省略。リボソームRNA遺伝子にはコピー数の減少や増加を防ぐ機能が備わっているみたい。

<非コードDNAの未来>
○遺伝子の謎
・ヒトにはタンパク質をコードする2万2千個の遺伝子がありますが、この数は他の真核生物と余り変わりません。一方ヒトを作るタンパク質は5~10万種類ありますが、これは選択的スプライシングによります(前述)。

・遺伝子の判定は以下の手順で行います。①塩基配列が”ATG”で始まり、3つ組の読み枠(ORF)がある程度の長さである。②作られたmRNAが存在する。③作られたタンパク質が存在する。そのため「開始が”ATG”」「ある程度の長さ」の条件を変える事で、遺伝子の数は変わってきます。※全然確定していないのでは。
・100アミノ酸以上がタンパク質、100アミノ酸未満がペプチドです。実際小さな(短い?)ORFがmRNAに転写され、リボソームとくっ付き、ペプチドが作られています。

○偽遺伝子の発現制御
・「非コードDNA領域」には、お役御免になった「偽遺伝子」が存在し、その数はヒトの場合遺伝子以上(3万個)あります。この「偽遺伝子」は転写されており、オリジナルの遺伝子の発現量を調節しています。

・また「偽遺伝子」は免疫機構で活躍しています。1つの抗体産生細胞(リンパ球)では1種類の抗体しか作れないため、あらかじめ何億種類もの抗体産生細胞を用意しておく必要がります。そのため鳥類では免疫グロブリン遺伝子のCJV遺伝子(※ヒトはVDJ?)が「偽遺伝子」のV領域でランダムに合成され、何億種類もの抗体産生細胞が作られます。

○ダメージからの回復
・ゲノムは内的/外的要因により傷付けられます。内的要因に「活性酸素」があります。「活性酸素」により塩基のグアニン(G)が酸化すると、通常はシトシン(C)と水素結合しますが、アデニン(A)と結合するようになります。結果的にG-Cの組合せが、T-Aの組合せに変異します。

・一方外的要因には放射線/紫外線や化学物質があります。1本鎖に傷が入るケースに、紫外線によりチミン(T)同士が結合し「チミン2量体」になり、DNAが切断されます。この多くは光回復機構/塩基除去修復機構/ヌクレオチド除去修復機構により修復されます。

・外的要因では、強い放射線や発がん性の高い化学物質により2本鎖が切断されるケースもあります。これは細胞周期(※説明がない。G0:分裂停止期→G1:合成準備期→S:合成期→G2:分裂準備期→M:分裂期みたい)の合成期(S期)で複製が止まっている場合は、姉妹染色分体により修復されます。しかしそれ以外の分裂停止期(G0期)/合成準備期(G1期)では、姉妹染色分体がないため、切れた部分を少し削って繋げます。これは最も多く使われる修復方法ですが、変異となります。
・ヒトゲノムの98%が「非コードDNA領域」で、これらの外的要因をかわしていると云えます。

○生命の寿命
・リボソームRNA遺伝子は反復遺伝子で、「ゲノムの不安定性」を象徴する領域です。しかしコピー数が減少しても、複製阻害タンパク質(Fob1)/非コード・プロモーター(E-pro)による増副作用で、コピー数を回復します(前述)。

・細胞の老化は「ゲノムの不安定性」に依存します。著者のグループにより、リボソームRNA遺伝子の非コード・プロモーター(E-pro)がゲノムを安定化させ、ヒストン脱アセチル化酵素(Sir2)がその転写を抑制している事が証明されました。
・また外国のグループにより、ヒストン脱アセチル化酵素(Sir2)を活性化する物質「ニコチンアミドモノヌクレオチド」(NMN)が発見され、抗老化作用が期待される物質です。

○がんの発症
・酵母でリボソームRNA遺伝子の非コード・プロモーター(E-pro)を破壊すると、寿命が1.5倍に伸びます。ところがその分、変異が蓄積され、異常な細胞が増えます。これはヒトだと「がん」に当たります。
・明治/大正時代の寿命は40歳代でしたが、「がん」で亡くなる人は少数でした。現在は公衆衛生/栄養状態の改善で、80歳代まで生きるようになりました。しかし死因のトップは「がん」になりました。これは「ゲノムの劣化」まで生きるようになったためです。

・近年「非コードDNA領域」の機能を模した「マイクロRNA」を投与し、ウイルスの感染を防ぐ治療が研究されています。また遺伝子の発現異常を抑制する「マイクロRNA」の研究も進められています。※最近聞いた遺伝子治療かな。

○ゲノム編集
・「非コードDNA領域」の研究が急速に進んだのはDNA配列の決定技術の進歩によります。タンパク質をコードしている遺伝子は変異体を作り易いため、機能の予測は容易ですが、非コードDNAは遺伝子ではなく、反復配列なので、機能の予測は用意ではありません。

・近年の「ゲノム編集技術」の進歩で、どんな生物種でも、どんな領域でも、どんな複雑な改変も可能になりました。
※「クリスパー・キャスナイン」(CRISPR/Cas9)が解説されているが難解。とにかくゲノム編集は簡単みたい。

○Y染色体
・ヒトは23対46本の染色体を持ちますが、その内1対は、女性はXX染色体、男性はXY染色体になっています。X染色体には1千以上の遺伝子があります。一方Y染色体は生殖腺を精巣に分化させるSRY遺伝子がありますが、50~80の遺伝子しかなく、大半は「非コードDNA領域」になっています。
・Y染色体は進化が早いため、500万年後には消滅すると考えられています。トゲネズミは、既にY染色体を失っていますが、雌雄は存在します。
※これが男性がいなくなる原因かな。でも男性と女性が生まれる確率は半々だけど。だけど生殖細胞の染色体が23対45本になると、どうなるんだろう。

○増え続ける非コードDNA
・ヒトには「非コードDNA領域」が98%もあり、今後も増え続けると考えられます。「非コードDNA領域」の変化は劇的な変化をもたらしませんが、ヒトを徐々に進化させます。
・ヒトは猿人→原人→旧人→新人→現代人と進化すると共に、背は高くなり、大脳皮質は大きくなり、体毛は薄くなってきました。この傾向は今後も続くと考えられます。ただしゲノムが変化しても、繁殖し、子孫を多く残す事が条件になります。
・ゴクラクチョウはユニークな進化を遂げています。この鳥のオスは鮮やかな羽を持ち、しかもダンスを踊ります。メスはそんな鳥に惹かれ、子孫を増やし、その方向に進化したのです。

・”もてる”事が進化の重要な要因です。かつては狩りなどの身体能力が高いヒトが”もてた”かもしれません。今は経済力があるヒトが”もてる”でしょう。しかしこれは経済的に豊かな国の話で、その先進国は人口を増やしていません。人口が増えているのは、経済的に貧しい国です。
・近年AIやネットワークが発達し、ヒトの価値観も大きく変わるでしょう。これに生物種としての繁栄も大きく影響されるでしょう。

<おわりに>
・ゲノムの研究は、コード領域から「非コードDNA領域」に移り始めています。「非コードDNA領域」は劇的な変化をもたらしませんが、ヒトを徐々に進化させます。

top learning-学習