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『学びなおすと政治・経済はおもしろい』南英世(2015年)を読書。

需要と供給/財政/憲法/戦争などに重点を置き、十二分に解説しています。
政治・経済の基礎学習に最適です。

お勧め度:☆☆☆(政治・経済に疎い人向け)

キーワード:<不景気はなぜ起きる>実質経済成長率、国内総生産(GDP)、モノが売れない、ケインズ/有効需要の原理、有効需要不足(デフレギャップ)、財政政策/減税/金融政策/為替レート、インフレーション、長期不況、通貨供給量(マネーストック)/マネタリーベース、資本/労働/技術、<市場の仕組み>家計/企業/政府、マクロ分析/ミクロ分析、株式会社、市場メカニズム/需要曲線・供給曲線/完全競争市場、消費者主権、寡占・独占市場/公共財/外部経済・外部不経済/所得分配の不平等/公共事業、<日本の財政>政治/選挙、アダム・スミス/自由放任政策、マルクス/社会主義、ケインズ/修正資本主義、所得税/法人税/消費税、地方税/固定資産税/事業税、社会保障費関係費/国債費/地方交付税交付金、財政赤字/建設国債/赤字国債、プライマリー・バランス/インフレーション、<国際経済の仕組み>比較生産費説/比較優位、自由貿易/保護貿易、国際収支、固定相場制/変動相場制、購買力平価説、空洞化、FTA/EPA、<憲法と法の支配>国家権力、人の支配/法の支配/市民革命、明治憲法、日本国憲法/基本的人権/統治機構、法律、人権、自由権/近代憲法、社会権/現代憲法、<日本の政治制度と国会>55年体制、国会議員/政治資金、国会/法律/常任委員会、立法国家/行政国家、政治的無関心、<日本の安全保障>平和憲法/自衛隊、日米安全保障条約、憲法改正、<国際政治と戦争>植民地/第1次世界大戦/第2次世界大戦、国際連盟/国際連合、米国/モンロー宣言/トルーマン・ドクトリン、<根本的価値観の対立>自由と平等、個と国家、トレード・オフ関係

<はじめに>
・著者は30年以上、高校で政治・経済を教えてきました。本書は「社会人になって政治・経済を学び直したいが、大学の専門書だと時間が取れない、時事問題に関する本だと理論的でない」という人に最適です。本書は「理論の厳密さ」より「分かり易さ」を優先しています。

・本書の要点は、①ケインズの「有効需要の原理」、②リカードの「比較生産費説」、③「法の支配」、④「集団安全保障体制」です。

<不景気はなぜ起きる>
○景気の良し悪しを知る
・経済は不景気/失業/デフレなど、人間と同じように病気になります。それを避けるのが経済学の役割です。

・特に失業は重要です。著者も30代民間の研究所に勤めていましたが、会社は火の車で、退職しました。日本はバブル崩壊後、パート/契約社員などの非正規雇用が全労働の4割を占めています。

・景気は「実質経済成長率」で判断します。日本はオイルショック(1973年)とバブル崩壊(1991年)を機に、「実質経済成長率」を段階的に下げています。オイルショック前は約10%経済成長していましたが、オイルショック後4%前後に低下します。さらにバブル崩壊で2%前後に低下し、「失われた20年」となります。※グラフを見ると顕著。

・国の経済力を表しているのが「国内総生産」(GDP)です。これは1年間に作られた財/サービスの総和です。教師が授業した/医師が医療活動した/ピアニストが演奏活動したなどのサービスも、これに含まれます。日本のGDPは488兆円(2014年)で世界第3位です。

・しかしGDPでは「景気の良し悪し」は分からりません。GDPの前年比が「名目経済成長率」です。さらに「名目経済成長率」から「物価上昇率」を除去したのが「実質経済成長率」です(実質経済成長率=名目経済成長率-物価上昇率)。「景気の良し悪し」は、この「実質経済成長率」で判断します。

・2%の経済成長は低く感じられるかもしれませんが、「72の法則」によれば36年でGDPが倍増します。※等比数列だな。2%でも1世代(36年)で2倍豊かになるのか。

・GDPは1位米国/2位中国/3位日本ですが、一人当りにすると、日本は3万9千ドル、中国は7千ドルです。一般的に3.5千ドルを超えると車が売れるようになり、1万ドルをこえると先進国になります。

○不景気はなぜ起こる
・景気が悪くなると、失業者が増える/賃金が下がる/モノが売れないなどの現象が起きます。実はこれは、「モノが売れない→物価の低下/会社が赤字→賃金の低下→リストラ/失業者が増える→経済成長率の低下」の連鎖になっており、不景気の根本原因は「モノが売れない」なのです。

・この不景気の根本原因を、初めて解決したのがケインズです。彼は『雇用、利子、および貨幣の一般理論』で「有効需要の原理」を明らかにします。
・彼はここで、不景気の根本原因を「モノが売れないから」とします。それまでは、「モノが売れないと価格が下がり、結局は全てが売れる」となっていました。彼は「買う人を増やす事で、売れ残りがなくなる」としました(有効需要の原理)。

○ケインズの教え
・自動車会社が200万円の車を100万台生産したとします。これが50万台しか売れないと赤字になり、企業の規模を縮小します。こんな企業が増えると不景気になります。つまり社会の総需要が総供給を決めているのです(有効需要の原理)。有効需要とは”心で欲しいと思っている需要”ではなく、”実際にお金で買われる需要”です。

・総需要(有効需要)は、総需要=消費+投資+政府支出+(輸出-輸入)で表せます。ところが総需要には変動があり、総供給>総需要=消費+投資+政府支出+(輸出-輸入)が起こると不景気になります。
・不景気を起こす原因は、消費はほぼ安定しており、投資です。そのため景気の判断で「民間設備投資」が注目されます。

・2014年総需要は488兆円でした(消費296兆円、投資106兆円、政府支出101兆円、輸出86兆円、輸入101兆円)。もし完全雇用水準での総供給が510兆円だとすると、総供給(510兆円)>総需要(488兆円)となり、約20兆円の「有効需要不足」(デフレギャップ)が生じていた事になります。※不景気の原因は投資としたが、消費は投資の3倍もある。あなどれない。

○不況を克服する
・不況を克服するには、どうすれば良いでしょうか。まず公共投資を中心とする「財政政策」です。「財政政策」には政府支出を増やすだけではなく、「乗数効果」があります。この典型例が「世界恐慌」時のニューディール政策です。※次世代にメンテナンスなどのつけを残すけど。
・2つ目が「減税」です。これにより「可処分所得」が増え、消費が増えます。※将来不安から消費が増えるとは限らない。
・3つ目が投資を増やすための「金融政策」です。「金融政策」には2つの方法があります。1つは日銀が国債などを買う「公開市場操作」による「買いオペレーション」です。これにより市場に出回るお金が増え、投資し易くなります。もう1つは「預金準備率操作」です。これも同様に投資を促します。しかしこちらは1991年を最後に実施されていません。
・4つ目が「輸出-輸入」を増やす方法で、為替レートの操作です。しかしこれは原則禁止されています。

○もし、有効需要を作り過ぎたら
・有効需要を作り過ぎると、総供給<消費+投資+政府支出+(輸出-輸入)となり、「インフレーション」になります。経済の運営は山の尾根を歩いているのと同じで、左は不況の谷、右はインフレの谷になります。

○日本はなぜ長期不況から脱出できないのか
・ある人が貯蓄をすると、その人はお金が貯まります。ところが皆が貯蓄をすると、消費は減少し、会社は儲からず、給料が下がり、総貯蓄額は減少します。これを「合成の誤謬」と云います。
・バブル崩壊により1400兆円の資産が失われ、家計も企業も倹約に向かいました。その結果、「合成の誤謬」により長期不況となったのです。巨額の国債残高のため政府支出の拡大はできません。また金融政策を行っても、企業は設備投資に消極的です。

・普通お金と言った場合、銀行預金も含みます(※ダブルカウントだな)。通貨供給量(マネーストック)=日銀券発行残高+補助貨幣(貨幣)+銀行預金。一方日銀が管理できるお金「マネタリーベース」は、「銀行が日銀に置いている当座預金」を含みます。「マネタリーベース」=銀行の当座預金+日銀券発行残高+補助貨幣(貨幣)。
・安倍政権での金融緩和で「銀行の当座預金」は積み上がりました。しかし企業が投資しないため、マネーストックは増えず、景気は回復していません。

・経済成長の要因は「資本」「労働」「技術」です。「資本」はお金ではなく、社会インフラや工場設備です。しかし道路建設に携わる関係者は儲かっても、長期的には維持管理費が負担になります。
・次は「労働」です。高度成長期、若い労働力が都会に出て、家や車を買い、有効需要を引き上げました。今は人口減少に入り、家/家具/家電/衣類などあらゆるモノが溢れ、消費需要は低迷しています。若者はモノを買うお金がなく、団塊の世代は老後のためお金を貯め込んでいます。企業は安い賃金を求めて海外に移り、日本の労働者の賃金も引き下げられています。これだと有効需要は落ち込むだけです。
・最後が「技術」です。戦後日本はパテント料を払って高度な技術を取り入れていました。しかし今は世界のフロントランナーになり、自らが新技術を開発する必要があります(イノベーション)。それには教育改革が必要です。※打開策は教育改革くらい?

<市場の仕組み>
○マクロ経済学とミクロ経済学
・経済の主体は「家計」「企業」「政府」の3つです。日本には5千万世帯があります。労働者は6600万人いて、500万円の給料をもらっています。「家計」は所得から税金を払い、その残り9割を消費し、1割を貯蓄しています。「企業」は420万社あり、1年で500兆円の財/サービスを作り出しています。「政府」の財政規模は1年で90兆円です。

・経済には2つの分析方法があります。日本全体を見る「マクロ分析」と、家計/企業が「市場」でどのような行動をしているかを見る「ミクロ分析」です。前章は「マクロ分析」で、本省は「ミクロ分析」です。

○会社を作る
・企業には様々な形態がありますが、その代表が「株式会社」です。株式会社は、株式で資金を集め、利益の一部を株主に還元する会社です。ちなみに日本の会社法では、資本金1円から株式会社を設立できます。
・資本金3億円の株式会社を設立したとし、Aさんが1億円を出資し、200万株(通常1株50円)を保有したとします。配当が1株10円あったとすると、Aさんは2千万円受け取れます。

○株式市場の話
・株式会社で事業が成功すると経営者は「上場」します。上場すると資金集めも容易になり、優秀な人材も集まります。また株式の売買も容易になります。
・株は証券会社を通じて売買します。2千円の株を1千株買い、それが3千円で売れると、100万円の「値上がり益」を得られます。※キャピタルゲインだな。
・前述のAさんが、株価が3千円になった時に200万株を売ると、60億円を手にする事ができます。これが「創業者利益」です。ソフトバンクの孫正義氏は同社の株を2億3千万株所有しています。

○市場メカニズム
・経済は「需要と供給がアンバランスだから」で大概が説明できます。なぜ株価が暴落するのか/なぜ円高になるのか/なぜ銀行の利子がこんなに安いのか/なぜ失業率が4%もあるのか/なぜデフレになるのか、これらは「需要と供給がアンバランスだから」で一応説明できます。

・経済学に「需要曲線・供給曲線」があります。縦軸は価格、横軸は数量(人)が単位です。「需要曲線」は、価格が安い時は買う人は多数ですが、価格が高くなるに連れ、買う人は減っていきます。したがって「需要曲線」は、右下がりの曲線になります。逆に「供給曲線」は、価格が安い時は売る人は少数ですが、価格が高くなるに連れ、売る人は増えていきます。したがって「供給曲線」は、右上がりの曲線になります。
・この「需要曲線」と「供給曲線」の交点が「均衡点」で「均衡価格」を表します。この「均衡価格」より高い価格で販売すると、供給>需要となり、売れ残ります。逆に安い価格で販売すると、供給<需要となり、品不足になります。この結果、価格は「均衡価格」に収束します(自動調節機能)。このような市場を「完全競争市場」と云います。

・例えば、ある株式会社の利益が大幅に増加すると予想されると、その会社の株を購入したい人が増加します(「需要曲線」が右に移動)。そうすると「均衡点」(均衡価格)は高くなります。
・例えば、天候の影響で白菜の生産が増えた場合、「供給曲線」は右に移動します。そうすると「均衡点」(均衡価格)は安くなります。※この辺は基礎かな。

・市場は4種類あります。財市場/金融市場/労働市場/外国為替市場です。前述した財市場では価格を媒介し、需要と供給が調整されます。金融市場では利子率、労働市場では賃金、外国為替市場では為替レートで需要と供給が調整されます。

・しかし多くの市場は「完全競争市場」ではありません。バーゲンセールは早い者勝ち、宝くじは抽選です。大学入試にはテストがあり、領土争いでは戦争が起きます。すなわち需要と供給の調整手段に、①お金、②先着、③抽選、④テスト、⑤戦争などがあります。東京大学の入試を①②③ですると考えると、楽しくなります。

○市場の役割
・消費者のニーズを生産者に伝えているのが市場での価格です。そのため価格が自由に変動する事が大変重要です。資本主義では競争は”善”とされます。競争により価格が下がり、品質は向上します。
・企業は「どの製品を、どれだけ作るか」を意思決定しなければいけません。これにより土地/労働/資本の資源配分を決定します。これらに大きな影響を及ぼしているのが消費者です(消費者主権)。

○市場は万能ではない
・市場は万能ではなく、「市場の失敗」が幾つかあります。1つ目は「寡占・独占市場」です。現実は生産者が多数の「完全競争市場」は少なく、生産者が数社の「寡占市場」が大半です。ビール/自動車/パソコン/カメラ/ガラス/ポテトチップス/インスタントラーメン/新聞など皆「寡占市場」です。※電力/携帯・スマホとかもあるな。
・このような市場では、生産者が一定の利益を上乗せして価格を決めています。そのため公正取引委員会が「独占禁止法」に違反していないか監視しています。

・2つ目は「公共財」です。道路/橋/警察/国防などは民間企業では採算が合わず、政府が行っています。

・3つ目は「外部経済・外部不経済」です。「隣の家の庭が立派なので、それを楽しめる」「駅ができて便利になった」「コンビニができて便利になった」などが「外部経済」です。問題は「隣に工場が建ち、騒音・悪臭が酷い」などの「外部不経済」です。これは法律で対処するしかありません。※この言葉は初めて聞いた。

・4つ目は「所得分配の不平等」です。世界一の資産家はビル・ゲイツで9兆円の資産があると云われています。一方で多くのホームレスがいます。この貧富の差は、累進課税制度や社会保障制度で修正する必要があります。

・5つ目は「電力・ガスなどの公共事業」です。電力・ガスなどを供給するための設備には莫大な費用が掛かります。したがって必然的に独占企業になります。このような産業では、政府が価格を認可する必要があります。

・「市場の失敗」から「市場メカニズム」を批判する人がいますが、これは間違いです。「市場は人類最大の発明」と云えます。

<日本の財政>
○もし税金がなければ
・もし税金がゼロなら国家は活動ができません。警察/消防はなく、道路も作られません。逆に税率が100%なら、所得は全て税金になり、これだと勤労意欲を失います。税金を誰からどれだけ集めるのか、それを何に使うのか。これが「政治」で、その政治家を選ぶのが「選挙」です。

○政府の役割の変遷
・私達は資本主義社会に生きています。この資本主義は約200年前に誕生しました。資本主義で重要な思想が、アダム・スミス「自由放任政策」/マルクス「社会主義」/ケインズ「修正資本主義」です。

・18世紀後半アダム・スミスは「利己心」を、経済活動の原動力として肯定しました。彼は「市場メカニズム」を信頼し、「自由放任政策」(レッセ・フェール)が最良の政策とし、政府の活動は道路/警察/消防/国防に限定すべきとしました。

・しかし自由競争に任せた結果、貧富の差/恐慌/失業/労働問題などの問題が発生します。そこで登場したのがマルクスの「社会主義思想」です。彼は1867年『資本論』で「社会主義思想」を説きます。1917年「ロシア革命」が起こり、ソヴィエト連邦が誕生します。その後も北朝鮮/中国/ベトナム/キューバなどの社会主義国家が誕生します。※彼は社会主義を説いたのではなく、資本主義を批判したらしいが。

・社会主義の特徴は、①私有財産の否定/生産手段の国有化、②計画経済、③私的利潤追求の否定です。
・著者が学生の頃は、先生の圧倒的多数がマルクス経済学の信奉者でした。しかし1991年ソ連の消滅で社会実験は終わります。※まだ完全に資本主義化されていない中国が残っている。

・ソ連が崩壊した理由は幾つかあります。1つ目は市場が存在しなかった事です。ソ連には270万種類にも及ぶ公定価格がありました。2つ目は勤労意欲の低下です。一生懸命働いても働かなくても給料が同じなら、サボろうとするものです。3つ目は政治的自由の欠如です。

・ケインズは政府が経済活動に介入する事で、資本主義の欠点を補えると考えました(修正資本主義)。戦後は多くの国で、この「ケインズ理論」が採用され、恐慌は消えました。
・また第1次世界大戦後、全ての人に人間らしい生活を保障すべきとする「生存権」が主張されるようになります。この「生存権」は「ケインズ理論」と結び付き、「福祉国家」への道が開かれます。

・政府の役割を小さい順に並べると、小さな政府(スミス)<大きな政府(ケインズ)<社会主義(マルクス)となります。今は多くの国が「ケインズ政策」を採用していますが、規制緩和/競争促進など「小さな政府」に戻そうとしています。※新自由主義かな。

・一般会計予算は96兆円(2014年度)ありました。この使用目的は3つに分かれます。1つ目は、道路/警察/消防/国防などの「公共財」です。多くの「公共財」は無料で利用できます。2つ目は「所得の再分配」です。資本主義では「貧富の差」が生まれます、これを累進課税/社会保障で解消します。3つ目は「経済の安定」です。これはケインズによって提唱されたものです。

○日本の財政状況
・日本には国税が22種類、地方税が26種類あります。国税で代表的なのが、「所得税」「法人税」「消費税」です。この3つで国税収入の3/4を占めます。
・「所得税」は「累進課税制度」になっており、所得4千万円の場合、税率は45%です(※頭打ちらしいけど)。サラリーマンは源泉徴収され、自営業者は確定申告で税金を納めます。「法人税」は企業の利益に掛けられます。「法人税」は景気に左右される不安定な財源です。酒税も国税です。

・地方税には「住民税」があり、前年の所得に対し課税されます。他に「固定資産税」「事業税」などがあります。※事業税は歳入に大きく影響しそう。

・税には負担する人と納める人が同じ「直接税」と、異なる「間接税」があります。日本の国税は、直接税の方が多くなっています。※消費税率が低いからかな。

・2014年度の「一般会計予算」は96兆円でした。その内50兆円が税収で、残りは国債で補っています。家庭に例えると500万円の収入しかないのに、1千万円に相当する生活をしている事になります。この借金は子や孫が負担します。※日米は借金漬けだが、欧州は財政規律がある。

・歳出は「社会保障費関係費」「国債費」「地方交付税交付金」で7割を超えます。「社会保障費関係費」は毎年1兆円増え、「国債費」も増えています。「地方交付税交付金」は地域格差をなくすための支出です。

・税金は所得/資産/消費に掛けられます。「租税の公平」を寄せ鍋の費用負担に当て嵌めると、①所得の多い人が多く負担する(垂直的公平)、②多く食べた人が多く負担する(受益者負担)、③均等割りにする(水平的公平)があります。

○膨らむ財政赤字
・日本の借金付け財政は50年続いています。税収と歳出をグラフにすると、その差は増々大きくなり、「ワニの口」と云われます。

・国が発行する国債には、「建設国債」「赤字国債」があります。「建設国債」は道路/橋などを造るための国債で、後の世代でも使用できるため認められています。一方「赤字国債」は1年限りの特例で認められる国債です。しかしそれが毎年になっています。

・日本最初の国債は、1965年「赤字国債」2590億円です。翌年からは「建設国債」が発行されます。1973年オイルショック後は、ほぼ毎年「赤字国債」が発行されています。1991年バブル崩壊後は公債残高が激増し、800兆円に達しています。公債残高の対GDP比で、日本は先進国で最悪です。
・景気が悪い時に国債を発行し、景気が良くなると増税するのが原則ですが、増税を政策にすると選挙で負けるため、増税は行われないのです。

・日本では投資先がないので、銀行/保険会社は国債をせっせと買っています。そのため国債の9割は国内で消化されます。そのため国債の価格は一向に下がりません。これも需要と供給の関係です。
・日本の個人金融資産は1590兆円あり、そこから個人ローンを引いた1千兆円が「ヘソクリ」と云えます。この「ヘソクリ」が国債を支えています。しかし団塊の世代は「ヘソクリ」を切り崩し、若い世代は「ヘソクリ」を貯める余裕がありません。いつかは国債が売れ残る日(Xデー)が来るでしょう。

・国債価格が暴落(金利が上昇)すると、破綻する金融機関が現れ、金融不安から株価も暴落し、為替市場では円も暴落します(債権・株式・為替のトリプル安)。政府は国債の金利負担からさらに国債を発行すると、火に油を注ぐ事になり、「ハイパーインフレーション」が起きます。1991年ロシアで、物価が26倍になる「ハイパーインフレーション」が起きました。
・例えば100倍のインフレが起こると、タクシーの初乗り運賃600円は6万円になり、預金100万円は実質的に1万円になります。
・この事態への対処方法は、外貨資産(外貨預金など)への乗り換えです。また不動産/株式(?)/金もインフレヘッジとして有力です。しかしこれらは資産を持っている人で、資産のない人には被害が直撃します。

○財政再建に向けて
・財政再建の第一歩が「プライマリー・バランスの均衡」で、1年間の経費(国債費を除く)を、その年の税収で賄う事です。

・財政赤字を解消するには支出を減らす「節約」が有効ですが、国家公務員を全員解雇しても4兆円にしかなりません。
・税収を増やすには「経済成長」があり、外国からの投資/外国人観光客を増やす/専業主婦の活力などがありますが、いずれも微々たるものです。また増税は有権者の理解を得られ難く、しかも財政再建には消費税40%が必要とされます。

・残された方法は「インフレーション」です。物価が10倍になれば、800兆円の借金は実質的に1/10に減じられます。この「インフレーション」は預金している人が損をし、借金している人が得する政策です。要するに借金を一番抱えている政府が得する政策で、「インフレ税」と云われます。一部の政治家には、この方法がインストールされています。※この方法しかないとは、恐ろしい。

<国際経済の仕組み>
○自由貿易と保護貿易
・国際貿易は利害対立が激しい場所です。日本はコメに778%の関税を掛けて農家を保護しています。TPPは農家にとって、死活問題です。

・貿易の原則は「自由貿易」です。これを証明したのがリカードの『比較生産費説』です(※比較生産費説を英国とポルトガルの毛織物とワインの生産で説明しているが、文章で説明するのは難しいので省略)。結論は英国は生産費が安い(比較優位の)毛織物だけを生産し、ポルトガルも生産費が安いワインだけを生産した方が、毛織物もワインも生産量が増加する。

・世界恐慌からブロック化し、第2次世界大戦が起きました。その反省から、1947年自由貿易を推進する「GATT」(関税及び貿易に関する一般協定)が結ばれ、1995年「WTO」(世界貿易機関)に改組されます。
・しかしいかなる場合でも「保護貿易」が否定される訳ではなく、幼稚産業は保護されるべきです。例えばかつての日本の自動車/コンピュータ(半導体?)などがそれに該当し、関税/輸入制限で保護されるべきです。

○国際収支表の読み方
・2014年国際収支の統計方法が変更されました。大項目は大きく「経常収支」(貿易・サービス収支、第1次所得収支、第2次所得収支)「金融収支」「資本移転等収支」になりました。

・発展途上国は工業化のための借金で「金融収支」は赤字、輸出品も少なく「経常収支」も赤字になります。先進国は輸出品も多く、海外進出も盛んで、「経常収支」「金融収支」共に黒字になります。さらに海外資産を多く持つため、「第1次所得収支」も増加します。

・日本の国際収支の特徴は、①海外進出で「第1次所得収支」が黒字、②産業の空洞化で「貿易収支」は赤字、③海外援助などにより「第2次所得収支」「資本移転等収支」が赤字です。※日本は海外資産で儲け、さらに海外に投資している。

○為替レートと私達の暮らし
・1944年国際経済の「IMF体制」(ブレトン・ウッズ体制)が構築されます。これで米ドルだけが金との兌換が可能で、各国の通貨は米ドルに固定されます(固定相場制)。
・しかしドルの信認が徐々に揺らぎ、1971年「金ドル交換停止」になり(ニクソンショック)、1973年「変動相場制」に移行します。為替レートは「外国為替市場」で決まるようになります。

・「外国為替市場」は100万ドル単位で取引され、24時間取引されています。1日で5兆ドルが取引され、これは貿易総額の100倍です。※要するに投機対象にされている?

・為替レートは、長期的には購買力平価に収束します(購買力平価説)。日本はデフレ、米国は穏やかなインフレなので、円高になっています。

・一方短期的には、3つの要因で決まります。①経常収支の動向です。ある国の輸出が増えると、最終的にその国の通貨が買われます。②金利の動向です。ある国で金利が上がれば、その国で運用する方が利益を上げやすくなり、その国の通貨が買われます。③ファンダメンタルズ(失業率、物価上昇率、景気)の動向です。ファンダメンタルズが良好であれば、その国の金融資産が買われ、通貨も買われます。
・しかし金利が上がれば、資金が流入し円高になりますが、それによりファンダメンタルズが悪化し、円安になります。よって為替レートは「分からない」が正解です。

・日本の資産バブルは、金利を史上最低水準にまで下げた事が原因です。これにより土地/株などの資産インフレが起きました。金利を下げ続けたのは、1987年米国で株が大暴落する「ブラックマンデー」が起き、日本は金利を挙げる事ができなかったのです。

○円高になるとどうなるか
・円高になると、海外旅行がしやすくなります。一方輸出は伸び悩み、輸出企業が打撃を受け、「円高不況」になります。逆に輸入製品の価格は下がり、原油価格が下がるので、ガソリン/電気料金/石油製品などの価格が下がり、国内物価が下がります。
・また円高になると、企業は海外に進出し易くなり、国内産業は「空洞化」します。そのため今の日本は、幾ら金融緩和しても投資されず、不景気から脱出できません。※空洞化したのに失業率は不思議と低い。余ほど生産性が低いのかな。まあ日本は脱製造業したのかな。

・円高の時にドルを買い、円安になってそのドルを売ると、「為替差益」が出ます。逆を行うと、「為替差損」が出ます。
・富裕層は、日本の財政破綻によるハイパーインフレからの円安に備え、外貨預金しています。

○進む地域的経済統合
・戦後「GATT」(関税及び貿易に関する一般協定)が結ばれ、その後「WTO」(世界貿易機関)に改組されました。しかし決定方法が全加盟国一致なので、関税引き下げ交渉(ラウンド交渉)は難航しています。※これもWTO改革の1つかな。

・そこで特定の地域で関税撤廃する動きが盛んになっています。「EU」(欧州連合)「ASEAN」(東南アジア諸国連合)「TPP」(環太平洋パートナーシップ協定)「APEC」(アジア太平洋連携協定)などがあります。
・EUでは関税は撤廃され、共通通貨「ユーロ」が使われ、欧州中央銀行(ECB)が設立され、経済統合が進んでいます。政治統合されれば、「欧州合衆国」になります。

・少数の国で関税撤廃するのが「FTA」(自由貿易協定)で、NAFTA(北米自由貿易協定)などがあります。さらに人的交流(労働?)なども含めた「EPA」(経済連携協定)もあります。これらに似たものに戦前の「ブロック経済」がありますが、これらは世界的な関税撤廃が目標なので「ブロック経済」とは異なります。

・しかし関税撤廃には影の部分があり、比較優位でない産業は衰退します。日本の場合、TPPにより関税で保護されていた農業は、経営が成り立たなくなります。また戦争などにより農産物の輸入ができなくなると大変で、「食料安全保障」にも説得力があります。

<憲法と法の支配>
○憲法の誕生
・本章からは話がガラッと変わって憲法の話になります(※経済から政治)。まず「国家」の条件は、領土/国民/統治権です(国家の3要素)。特に重要なのが統治権(国家権力)です。国家は道路/学校/公園/警察/消防などの公共財やサービスを提供します。また犯罪者を逮捕し、裁判し、死刑を執行したりします。

・著者は学生に政治学を教える時、まず「国家権力は非常に怖い存在である」を教えます。ヒトラーのユダヤ人大虐殺/スターリンの大虐殺/ポルポトによる大虐殺/毛沢東の文化大革命/鄧小平の天安門事件/小林多喜二の獄門死などを教えます。

・18世紀までは「絶対王政」でした。国王が法律を作り、それを執行し、裁判もやり、全て自由に行っていました。これを「人の支配」と云います。それに対し人類が考え出したのが、国王の権力を制限する法であり、議会です。1215年国王と議会が契約書『マグナ・カルタ』にサインしますが、これが世界最初の憲法です。このように法で権力を制限するのが「法の支配」です。

・「人の支配」から「法の支配」への移行は、名誉革命/米国独立革命/仏国革命などの市民革命でなされました。これらの革命により権力構造は、「王-法-国民」から「法-王・政府-国民」に代わります。
・この市民革命を理論的に支えたのが、ホッブズ/ロック/ルソーの『社会契約説』です。この考えは「米国独立宣言」「日本国憲法」などにも記されます。

○憲法を守らなければいけないのは
・前述したように、憲法は国家権力に向けられたものです。憲法は国家権力が暴れ出さないように、檻の中に閉じ込めるものです。これを「立憲主義」と云います。
・日本国憲法には「天皇・・国務大臣、国会議員、裁判官・・は、この憲法を遵守し擁護する義務を負う」(第99条)と記されています。

・しかし国民に向けられた条文もあります。秘密投票の保護(第15条)/奴隷的拘束からの自由(第18条)/児童の酷使の禁止(第27条)/勤労者の団結権(第28条)などです。しかしこれらは「人権の保障」を国家権力に示したものです。
・また国民の義務も記されています。教育(第26条)/勤労(第27条)/納税(第30条)です。これらは憲法の趣旨に馴染みませんが、「国民に対する倫理的指針」と見るべきでしょう。

・経済発展が遅れたドイツでは君主が憲法を定め、怪しげな政治体制になりました。それを真似た「明治憲法」も同様です。

・「明治憲法」には3つの特色があります。①天皇主権です。最高権力者の権力を制限する憲法を、最高権力者が定めた矛盾する憲法です。そのため「明治憲法」は日本版絶対王政と云えます。※面白い表現。
・②三権(立法、行政、司法)は天皇の下にあり、軍の統帥権/緊急勅令/独立命令(?)/大権なども天皇の下にありました。そのため軍が「戦争だ」と言っても、議会は何もできませんでした。
・③人権は「臣民の権利」として、法律の範囲内だけ認められました。国民ではなく臣民で、天皇の部下だったのです。

・これらから「明治憲法」は本来の立憲主義ではありません(外見的立憲主義)。議会の権力が強まった時期(大正デモクラシー)もありましたが、権力者に対する拘束力は弱いものでした。

○日本国憲法の全体像
・日本国憲法の「三大原理」は、国民主権/平和主義/基本的人権の尊重です。これには「明治憲法」からの反省が多く込められています。また日本国憲法は、「基本的人権の保障」(第3章)と「統治機構」(国会、内閣、司法)で構成されています。

・憲法は103条からなりますが、「基本的人権の保障」(第3章)が3割を占めます。また「全ての国民は個人として尊重される」(第13条)と記され、これが憲法の精神を表しています。
・「基本的人権の保障」が目的で、「統治機構」(国会、内閣、司法)はそれを守るための手段です。「天皇」(第1章)/「平和主義」(第2章)も基本的人権を守るための規定です。
※前節と本節の憲法の解説は面白かった。

○憲法と法律の関係
・法律は全部で1935本あります。その代表が、刑法/民法/商法/刑事訴訟法/民事訴訟法です。法律を作る人(国会?)は憲法に則った法律を作ります。そして国民はその法律に従って生きています。
・「教育を受ける権利」(第26条)により公立学校/支援学校が作られ、義務教育は無償になっています。「働く権利」(第27条)によりハローワークが作られています。「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」(第25条)により大気汚染防止法/水質汚濁防止法が作られ、生活保護法/国民年金法/厚生年金保険法/国民健康保険法/介護保険法/雇用保険法/労働者災害補償保険法/児童福祉法/身体障害者福祉法/老人福祉法/児童手当法/感染予防法/食品衛生法などが作られました。※法曹は勉強が大変だ。

・法律が憲法に違反している場合、裁判所に訴える事ができます(違憲立法審査権)。これまでに幾つか違憲判決で無効になっています。①嘱託殺人重罰規定、②衆議院定数訴訟、③在外日本人選挙訴訟、④婚外子相続差別、⑤受刑者の選挙権などが無効になっています。※詳細省略。

○人権保障の歴史
・憲法が生まれたのは、国王による人権侵害を防ぐためでした。こうして生まれたのが「自由権」です。「自由権」には、精神的自由/人身の自由/経済的自由などが含まれます。「自由権」が含まれた憲法を「近代憲法」と呼びます。
・国民は「自由権」を得て、安心して産業活動できるようになり、資本主義が発達しました。「自由権」は、アダム・スミスの「小さな政府論」「自由放任政策」にも通じています。※政治と経済が繋がっている。

・しかし資本主義が発達すると、貧富の格差/恐慌/失業/労働問題などの問題が起きました。これでは自由・平等が満たされず、社会主義運動が起き、諸問題を解決するための法律が成立していきます。
・1919年国民の最低限の生活を保障する「社会権」が盛り込まれた「ワイマール憲法」が誕生します。「社会権」を含む憲法を「現代憲法」と呼びます。「社会権」には、生存権/教育を受ける権利/勤労の権利/労働三権(※団結権、団体交渉権、団体行動権)などが含まれます。

・「近代憲法」は「国家は国民生活に介入するな」でしたが、「現代憲法」はむしろ「介入しろ」に変わったのです。※これは面白い。憲法にも変遷があるんだ。

・憲法に記されていないが、社会の変化で新しく認められた人権が幾つかあります。①「環境権」(健康で快適な環境の回復・保全を求める権利)です。これは「幸福追求権」(第13条)「生存権」(第25条)の拡大と考えられますが、”ドラえもんのポケット”になる恐れがあるため、裁判所は消極的です。
・②「プライバシーの権利」(自己に関する情報をコントロールする権利)です。これは「幸福追求権」(第13条)を根拠に裁判所も認めています。「個人情報保護法」が成立しましたが、情報社会における新たな課題となっています。
・③「知る権利」です。民主主義は国民が自由に考え、自由に意見を表明できるのが大前提です。そのためには社会の現状を正確に知る必要があります。1999年「情報公開法」により権利として確立しました。
・④「自己決定権」です。これは尊厳死/自殺/売春などで、「幸福追求権」(第13条)が根拠になっています。しかしこれには様々な議論があります。

・人権保障は国家内に留まるものでしたが、世界に敷衍しています。1948年「世界人権宣言」が出され、1969年「国際人権規約」が成立し、1979年「女子差別撤退条約」/1989年「子供の権利条約」などが誕生しています。
・これまでは内政干渉とされていた事も、人権に関しては通用せず、人権侵害があると、世界から非難されます。※今の中国はどうなんだろう。この節も中々面白かった。

<日本の政治制度と国会>
○政治とは何か
・日本では国民が代表を選び、彼らが政治を行っています(間接民主制)。その国家権力が暴走しないように憲法が作られました。また国家権力を立法/行政/裁判所に分け、お互いに監視させています(三権分立)。
・政治の主人公は国民で、総理大臣/国会議員/裁判官、これらは皆国民の下僕です(国民主権)。

○戦後政治を振り返る
・歴史は金持ち(資本家)と貧乏人(労働者)の対決と云えます。戦後の日本も、「自由民主党」(自民党)と「日本社会党」(社会党)の闘いです(55年体制)。
・自民党の支持層は財界などで利益を得ている人達と、農村の人達です。農村の人達が支持しているのは、農業保護政策のためです。また自民党は憲法改正を目的としています。
・社会党は資本主義を否定し、社会主義を肯定しています。そのため社会党の国会議員には労働組合の出身者が多数いました。憲法改正に対しては、平和主義から反対しました。
・「日本共産党」も資本主義を否定し、共産主義国家を作る事を目標にしています。社会主義をさらに推し進めたのが共産主義です。
・「公明党」は日蓮正宗系の宗教団体「創価学会」がバックにいます。公明党は自民党と社会党との中間を路線としています。都市部の貧困層が支持基盤です。

・自民党と社会党の対立は冷戦構造を反映したものでした。自民党は経済最優先で、長期に亘って国民の支持を得ます。

・国会議員には1年で約4千万円(給料2190万円、文書交通費1200万円、政務・立法調査費780万円)が支払われます。しかし落選すると”ただの人”です。

・選挙には「ジバン」「カンバン」「カバン」が重要とされます。「ジバン」は支持してくれる地域/組織です。国会議員はJR/私鉄は無料で、飛行機も月4往復は無料です。そのため「金帰火来」と云われます。また息子が受け継ぐ事が多く、世襲議員が多くいます。労働組合は社会党議員の「ジバン」、創価学会は公明党議員の「ジバン」とも云えます。
・「カンバン」は知名度です。テレビでの有名人/大学教授/弁護士/官僚などが優位になります。
・「カバン」は資金力を指します。1通82円の葉書を10万人に送れば、820万円になります。選挙戦は「二当一落」と云われ、2億円使えば当選するが、1億円では落選する意味です。「公職選挙法」で選挙運動員に報酬を払う事は一部を除き禁止されています(※それなのにお金が必要?)。

・国会議員になると大臣になりたいものです。自民党では大臣になるための条件が形成されました。1つは「族議員」と云われる専門性を持つ事です。もう1つは派閥に属し、当選を重ねる事です。当選6回(約15年)で大臣が回ってきます。
・さらに首相になるには、派閥を作り、国会議員を繋ぎとめる必要があります。お盆には「氷代」200万円、暮れには「もち代」200万円、選挙時には軍資金1000万円を贈ります。100人の派閥だと、盆・暮れに2億円、選挙時に10億円が必要になります。

・自民党の議員は資金を「政治献金」で集めています。そのため企業から賄賂をもらい、見返りとして便宜を図る汚職事件が跡を絶ちません。「ロッキード事件」は、ロッキード社が全日空にトライスター21機(1機60億円)を売り込むため、田中首相に5億円賄賂を贈ったとされる事件です。
・また「パーティ」でも資金を集めています。かつて竹下登は3万円のパーティ券を6万枚売りさばいた事がありました。実際にパーティに出席したのは1万人でした。

・こうした金権腐敗をなくすため、1994年「政党助成法」が成立しました。議員1人当たり4千万円の政党助成金が公布されています。また企業との癒着を防ぐため、1994年「政治資金規正法」が改正され、企業から政治家個人への献金は禁止されています。
※やはり経済は面白いが、政治は面白くない。

○55年体制の崩壊とその後
・1993年総選挙で自民党は分裂し、細川護熙氏を首相とする連立内閣が誕生し、「55年体制」は崩壊します。1994年社会党は自民党と連立政権を樹立し、急速に支持を失います。
・社会党に代わって自民党の対立軸になったのが「民主党」(1996年結成)です。しかし民主党も保守政党で、労働組合「連合」の支持を受ける議員から、元自民党の議員までおり、「寄せ集め」の感があります。

・1994年衆議院選挙から「2大政党制」を期待し、「小選挙区制」が導入されました。2005年郵政民営化をめぐる衆議院選挙で、自民党は296議席で圧勝します。2009年衆議院選挙で、民主党は308議席で政権を奪取します。2012年衆議院選挙で、自民党は294議席で政権を奪い返します。この選挙では自民党への得票は43%でしたが、79%の議席を獲得しました。「小選挙区制」の増幅機能により、オセロゲームに変わりました。

○国会という所
・国会には通常国会/臨時国会/特別国会があります。「特別国会」は衆議院が解散された後に首相を選ぶための国会で、2~3年に1度開かれるだけです。「通常国会」は1月に召集され、150日間開かれます(延長は1回)。「通常国会」で予算/法律が審議され、成立します。夏は夏休みとなり、秋に「臨時国会」が開かれます(延長は2回)。

・憲法には「国会は国権の最高機関」(第41条)とあります。国会の仕事は「法律の議決」「条約の承認」「内閣総理大臣の指名」「憲法改正の発議」などです。衆議院は「法律の議決」「条約の承認」「内閣総理大臣の指名」「予算の先議権・議決権」で優越が認められています。また衆議院だけに「内閣不信任決議権」が認められています。

・1回の通常国会で約100件の法案が提出されます。法案には「議員立法法案」「内閣提出法案」がありますが、大半が「内閣提出法案」です。「内閣提出法案」も大臣が作る訳ではなく、各省庁のキャリア官僚が原案を作り、「内閣法制局」で最終チェックを受け、「閣議」に掛けられます。
・「閣議」は毎週火曜日/金曜日に開かれます。「閣議」で審議される事はなく、花押を押すだけの”サイン会”です。

・国会に提出された法案は、まず「常任委員会」で審議されます。「常任委員会」は衆議院/参議院共に17あります。国会議員は1つ以上の「常任委員会」に参加しなければいけません。
・「常任委員会」には予算委員会/財務委員会/経済産業委員会/国土交通委員会などがあります。一番暇なのが懲罰委員会で、一番忙しいのが議院運営委員会です。※国会対策委員会は各政党に置かれるんだ。
・予算委員会はあらゆる分野に関係するので、全ての大臣が出席します。またテレビ中継が行われるため、質問時間が厳守されます。
・「常任委員会」で可決された法案は、本会議で採決され、法律として成立します。本会議での採決には「党議拘束」が掛かります。※100%掛かるのかな?

・本来、立法権は行政権より上位と考えられています(立法国家)。憲法には「内閣は国会に対し連帯責任を負う」(第66条)とあり、衆議院で不信任決議されると、内閣総辞職か衆議院解散となります。議院内閣制では議会が内閣より上位になければいけませんが、実際は内閣の方が上位になっています(行政国家)。
・「行政国家」である事は、幾つかの事実から証明できます。①内閣不信任決議は30数回出されていますが、可決されたのは4回だけです。②大半の法案は内閣から提出され、国会議員に法案を作る能力はありません。③法律は抽象的な内容だけになり、具体的な内容は政令・省令で定めるようになりました。※立法国家/行政国家の言葉は初めて聞いた。

・憲法では内閣総理大臣はいつでも国会を解散できます(第7条解散)。解散直後の「バンザーイ」は”やけっぱち”かもしれません。

○政治的無関心の増加
・選挙民は近視眼的な見方をします(部分最適)。一方政治家は将来の事を考えなければいけません(全体最適)。しかし実際は選挙に勝つため、地元利益誘導型の政策をアピールし、痛みを伴う改革は先送りします。これでは民主主義の将来は暗いものになります。※ポピュリズム/大衆迎合主義かな。
・また多数決原理も危険で、少数派が迫害される危険がります。ヒトラーは国民に圧倒的に支持されていました。

・日本は投票率が低く、政治的無関心が広まっています。これは政治・経済が難しいのが理由です。しかし政治を分かっている人でも投票しない人がいます。これは政治への無力感と考えられます。また高齢者の投票率が高く、「シルバー民主主義」になっています。

・国会には「弾劾裁判所」があります。戦後7名の裁判官が罷免されています。※これは国民審査とは別だな。

<日本の安全保障>
○自衛隊と憲法第9条
・戦後世界では紛争により2千万人以上が亡くなっています。日本は平和でしたが、その理由として、平和憲法/自衛隊/日米安全保障条約/国連の存在があります。特に憲法(前文、第9条、第66条)の存在は大きかったと思われます。第9条では「戦争放棄」が記されています。第66条には「大臣は文民に限る」と記され、「シビリアン・コントロール」になっています。※わざわざ第66条もあるのか。

・憲法が制定された当初は、政府も一切の軍備を放棄していました。しかし1949年中華人民共和国が成立し、翌年朝鮮戦争が勃発すると、マッカーサーは7万5千人の「警察予備隊」の創設を命令します。これが1952年「保安隊」になり、1954年「自衛隊」に名称変更されます。今では世界第7位の国防予算を使っています。

・自衛隊に対して3つの解釈があります。①学会で多くの支持がある「通説」です。これは「自衛隊は憲法違反」とする説です。②一方合憲とするのが「少数説」です。これは「国際法上、自衛権は認められている。憲法も自衛を認めている」とする説です。政府はこの説に依拠しています。③恵庭事件/長沼ナイキ基地訴訟/百里基地訴など、様々な「判例」があります。合憲としたものはなく、逆に違憲としたものも1件しかありません。多くは、「主権の代表者が国会で判断すべきで、裁判で判断すべきでない」とし、判断を避けています。

○日米安全保障条約
・米軍は140万人で、その内26万人が海外に展開しています(※海外展開は2割か)。日本には「日米安全保障条約」により、4万3千人が駐留しています。米軍基地の75%は沖縄にあります。1978年より米軍駐留費の一部(2千億円)を日本が負担しています(思いやり予算)。

・憲法は、日本を守るために自衛隊が出動する「個別的自衛権」を禁止していると読めますが、国際法は認めています。また国際法は、同盟国と共に戦う「集団的自衛権」も認めています。
・保守派は、「『日米安全保障条約』により日本の領域は共同で防衛されるが、米国が攻撃された場合は日本は防衛しない(片務性)。この負い目から日本は米国の言いなりになっている」としています。

○違憲論議から国際貢献論議へ
・1990年イラクがクウェートに侵攻します。国連は武力行使を容認し、翌年「湾岸戦争」になります。日本は憲法第9条から自衛隊を派遣せず、世界から批判されます。そのため1992年「PKO協力法」を成立させ、自衛隊の海外派遣が可能になります。これにより日本は「専守防衛」から離れていきます。

・さらに1997年「日米防衛協力のための新指針」(新ガイドライン)を発表し、1999年「周辺事態法」により、周辺地域への自衛隊派遣が可能になります。2001年「米国同時多発テロ事件」により、「テロ対策特別措置法」を成立させ、戦時下のアフガニスタンに自衛隊を派遣します。

・これらから日本が攻撃のターゲットになる可能性も高まり、「有事法制」の要求も高まっています。日本は「湾岸戦争」以降、常に右に舵を切ってきました。2013年には「特定秘密保護法」が成立し、米国からの情報が保護されるようになりました。※2015年「平和安全法制」(安保法)が成立している。

○憲法改正論議の高まり
・憲法には「戦力を保持しない」とありますが、自衛隊は存在します。これは憲法を改正せず、憲法を捻じ曲げて解釈しています(解釈改憲)。

・「憲法改正」には、①各議院で2/3以上の発議、②国民投票で過半数の賛成が必要で、ハードルが高くなっています。このような憲法を「硬性憲法」と云い、米国/韓国/仏国/イタリア/カナダも同様です。一方ドイツは憲法が詳細なため、頻繁に改正されます。※硬性憲法の言葉は知らなかった。

・日本国憲法には、国民主権/平和主義/基本的人権の尊重の「三大原理」があり、これに反する改正はできません。憲法改正を望む人達は、第9条「戦争の放棄」の変更を望んでいます。しかし憲法改正のハードルは高いため、2014年安倍内閣は「集団的自衛権の行使の容認」を国会で審議せず、閣議決定しました。これは立憲主義を危うくし、かつ戦争のできる”普通の国”に日本を近付けました。※これは三大原理のいずれにも反しているみたい。

<国際政治と戦争>
○国際政治の現実
・国際政治は「国益」をめぐる国家間の生存競争です。「国益」には、領土/資源/宗教/民族/イデオロギーなどがあります。人類は「国益」をめぐって、絶えず戦争してきました。近年「人類益」を追求すべきとの考え方もありますが、これはまだ理想主義と云えます。
・国際政治は「主権国家」単位に展開します。「主権国家」が誕生したのは、1648年「ウェストファリア条約」以降です。それまではローマ法王が上位にあり、「主権国家」は存在しませんでした。
・近代の歴史は、「覇権国」を見ると大雑把に理解できます。「覇権国」は、おおよそ100年周期で交代しています。16世紀ポルトガル/スペイン、17世紀オランダ、18~19世紀英国、20世紀米国と変遷しています。

・1871年ドイツはビスマルクにより統一されます。遅れたドイツに植民地はなく、英国の3C政策に3B政策で対抗します。ドイツは「第1次世界大戦」で敗れ、「ヴェルサイユ条約」で1320億金マルク(国家予算17年分)の賠償金を科せられます。

・1929年「世界恐慌」が起き、植民地を持つ英国/米国/仏国はブロック政策で、外国製品を排除します。植民地を持たないドイツはオーストリア/チェコ、イタリアはエチオピア、日本は満州を侵略します。その結果「第2次世界大戦」が起きます。「第2次世界大戦」は科学の進歩で、5~6千万人の犠牲者が出ます(ソ連2.6千万人、中国1千万人、ドイツ1千万人、ユダヤ人600万人、日本300万人)。※後の東側が圧倒的に多い。

○戦争を防ぐための2つの工夫
・今日では戦争は”悪”とされますが、19世紀までは”悪”ではありませんでした。そのため以前は「勢力均衡政策」を取っていました。「第1次世界大戦」前の三国協商/三国同盟などが該当します。しかし結局戦争を起こしています。

・そこで「第1次世界大戦」後に生まれたのが、「集団安全保障体制」です。全ての国が1つの国際組織に加盟し、ルールを破る国があれば制裁を加える仕組みです。そこで生まれたのが「国際連盟」でしたが、①大国の不参加、②全会一致の原則、③武力制裁の欠如により、失敗します。

・1945年「国際連合」(国連)が成立します。国連は総会/事務局/安全保障理事会/経済社会理事会/国際司法裁判所/信託統治理事会からなります。
・「安全保障理事会」は5常任理事国/10非常任理事国で構成され、常任理事国には拒否権が認められています。また「安全保障理事会」の決定には従う必要があり、武力制裁も加える事ができます。
・しかし国連にも幾つか欠陥があります。①国連軍が存在せず、その見通しもない。②冷戦期は米ソが拒否権を乱発し、「安全保障理事会」が機能しなかった。③常任理事国が国際法を破っても制裁できない。特に③は深刻な問題で、国連から制裁を受けるのはイラクのような小国に限られました。
・そのため国連にも過剰な期待はできません。第2代事務総長は「国連は天国に連れて行く機関ではなく、地獄に落ちるのを防ぐ機関」と言っています。

○正義のための戦争はあり得るか
・戦争に対しては3つの考え方があります。①「正戦論」です。これはキリスト教的正戦論で、相手は不正義になります。
・②「無差別戦争観」(近代~19世紀)です。「戦争に正義/不正義はなく、全て合法」とする考え方で、ローマ法王の権威が失墜した事で生まれました。そんな中でもグロチウスは「国際法」が必要としました。
・③「戦争の違法化」(20世紀以降)です。1920年「国際連盟規約」/1928年「不戦条約」/1945年「国連憲章」、いずれも戦争を違法としています。※今は③って事か。

・「戦争は違法」とされましたが、以下の戦争は許されています。①防衛戦争(個別的自衛権)。②軍事同盟国が攻撃された場合(集団的自衛権)。ただし集団安全保障が機能するまでの暫定措置です。③国際法に違反した場合の武力制裁。
・しかし戦争はどう取り繕っても”人殺し”です。ましてや核兵器は非人道的な兵器で、正当化され得ません。

・「正義は勝つか」の質問に疑問を感じます。歴史を振り返れば、戦争に勝った方が正義になっています。「第2次世界大戦」で勝った米英仏は、「民主主義がファシズムに勝った」としました。はたしてソ連は民主主義だったでしょうか。もし日本が勝っていれば、「日本はアジアから欧米勢力を駆逐した」となり、「広島・長崎に原爆を落とした米国は、市民を大虐殺した戦争犯罪者」になったでしょう。
・今日はメディアで正当性をアピールする事が重要になっています。私達もその真偽に深く耳を傾ける必要があります。

○国際政治をさらに理解する
・国連と並んで世界で大きな役割を果たしているのが米国です。米国は欧州での宗教的迫害から逃れた人達が建国しました。そのため自由/民主主義などの価値観を大切にしています。
・米国から見れば、欧州は”悪”なのです。英国の上院議員には貴族/聖職者しかなれません。貴族と庶民では、飼うペットも違えば、飲むアルコールも違います。※パブの入口も違うらしい。英米の違いは意外とあるかな。でもこれらは身分制に限った話だ。

・自らを”善”、欧州を”悪”とした米国は、1823年「モンロー宣言」を発表します。これは「米国/欧州は互いに干渉しない」(孤立主義)とする宣言です。米国が「国際連盟」に加盟しなかったのも、これに起因します。
・しかし「第2次世界大戦」後、英国が後退し、ソ連が台頭した事で、米国は180度転換します。1947年「トルーマン・ドクトリン」は孤立主義を捨て、”世界の警察”となる宣言でした。
・米国は時々思い出したように戦争します。それは古くなった軍備を一掃するためです。米国には「軍産複合体」の構造があります。

・「第2次世界大戦」により、朝鮮は南北に分裂します。1950年「朝鮮戦争」が起こり、今は休戦状態です。
・BC10世紀頃、パレスチナはユダヤ人の土地でした。ところがAD1世紀、ローマ帝国により、ユダヤ人はパレスチナから追い出されます。しかし19世紀末、パレスチナに国家をつくる運動(シオニズム運動)が始まり。1948年イスラエルが建国されます。これにより、そこに住んでいたパレスチナ人とユダヤ人との紛争が始まります。
・スイスは永世中立国ですが、「ハリネズミ国家」と云われます。それは強力な軍備を持っているからです。徴兵制もあり、食料の備蓄もされ、住居には核シェルターも備わっています。

<根本的価値観の対立>
○価値観の違い
・これまで見てきたように「自由と平等」「競争と保護」「個と国家」など、価値観の違いから様々な対立があります。※この3つは、個の利益追求と多数の利益追求で類似しているかな。

○自由・平等について
・仏国革命は「自由」「平等」「博愛」を目指しましたが、自由と平等は対立する概念です。自由を追求すれば平等が犠牲になり、平等を追求すれば自由が犠牲になります。

・平等には2種類あります。スタートラインで平等の「機会の平等」と、ゴールで平等の「結果の平等」です。不平等が著しくなると社会不安を招きますが、逆にこれを追求すると「インセンティブ」が働かなくなります。

・自由を分かり易くするため、2つのベクトル(精神的自由、経済的自由)に分解します。縦軸に精神的自由、横軸に経済的自由を取り、4つの領域に分割します。共に小さいのが「共産主義」で、共に大きいのが「リバタリアニズム」(自由至上主義)になります。精神的自由は小さいが、経済的自由が大きいのが「保守主義」です。精神的自由は大きいが、経済的自由が小さいのが「リベラリズム」です。
・アダム・スミスの「自由放任主義」やミルトン・フリードマンの「新自由主義」は「リバタリアニズム」に属します。小泉内閣/安倍内閣の「規制緩和」「伝統への回帰」は「保守主義」に属します。

・「自由競争」は人間の能力を引き出し、生産効率を高めます。平等を重視すると「モラルハザード」を起こします。社会主義が崩壊したのは、結果の平等を追求したためです。※中国は大枠は国が決めるが個々の競争はさせている。”良いとこ取り”のミックスな政策かな。

・戦後の日本は平等を重視しました。「年功序列型賃金」/国が金融機関に行った「護送船団方式」/建設・土木の公共事業などがあります。しかしバブル崩壊以降、「結果の平等」から「機会の平等」に転換しています。

○個と国家の対立
・個と国家はしばしば対立します。憲法第13条には「全ての国民は個人として尊重される」とありますが、一方で第12条には「個人の権利は公共の福祉のために利用する」とあります。
・戦前は個人が国家の犠牲になるのが美談でした。家庭でも個人より家、学校でも個人より学校が重んじられました。
・この反動から日本国憲法では個人の尊重が強調されました。しかし公道での暴走/公園での落書き/ゴミのポイ捨て/援助交際などは、単なる「わがまま」です。

・国はバイクに乗る時、ヘルメットの着用を義務付けています。これは命を守るためです。同じような理由で「年金制度」も導入しています。
・「夫婦は仲良くすべし」を憲法に盛り込む案もありますが、国が家庭生活に入るのは、”行き過ぎ”の気がします。※最近問題の親子関係はどうなんだろう。
・憲法に「義務規定」が少ないとの意見もありますが、憲法は国家権力を制限するもので、当然と思います。
・「わがままな人間が増えた原因は憲法」との意見があります。しかしこれは、核家族化/都市化などによる教育力の低下が原因と考えられます。人間は様々な方向を向いています。それを1つの方向に向けさせるのは危険です。

・日本は右傾化しています。1999年「国旗国歌法」/2006年「教育基本法の改正」/2013年「特定秘密保護法」など、個人尊重から国家尊重に移行しています。
・「教育基本法」第2条には「伝統と文化を尊重し、・・国際社会の平和と発展に寄与する」と記されています。戦前への回帰を思わせます。
・日本は明治維新により欧米思想を取り込みますが、次第に日本の伝統・文化を重んじるようになり、「第2次世界大戦」に突入します。敗戦より個人が尊重されるようになりますが、バブル崩壊/湾岸戦争頃から日本の伝統・文化を重んじる方向に舵を切ったようです。

○選択の時代
・政治・経済学は自分一人が幸せになるための学問ではなく、皆が幸せになるための学問です。

・政治・経済には「トレード・オフ関係」がよく見られます。お金を稼ごうと一生懸命働くと、遊ぶ時間がなくなります。失業を減らそうとすると、物価が上昇します。物価を下げようとすると、失業が増えます。物価と失業は「トレード・オフ関係」にあります。「社会保障と税」「所得の平等と累進課税」「自由と規制」「環境と経済発展」なども「トレード・オフ関係」です。

・幸せとは何でしょうか。一般的に先進国の人は幸せで、発展途上国の人は幸せでないイメージがあります。ある商社マンが、浜辺でのんびりしている現地人に「なぜ働かないんだ」と聞きました。すると現地人は「なぜ働くんだ」と聞き返します。商社マンは「お金を貯めて、浜辺でのんびりしたいんだ」と答えました。
・地球は宇宙船に例えられます。この地球には環境/人口爆発/食糧/資源・エネルギーなど、国益に捉われていると解決が難しい問題が多くあります。「これからは地球上の一人ひとりを大切にする方向へ進むべき」と考えます。※コスモポリタニズムかな。

<あとがき>
・政治・経済学には困難な点が幾つかあります。1つは実験ができない点です。また現実は複雑で、政策効果も単純に測れません。
・また政治・経済学の理論は現実に追い付けず、常に後を追い駆けています。※誰かが「経済学の理論は、現実を説明するために作られる」と言っていた。

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