『日本経済のミステリーは心理学で解ける』廣宮孝信を読書。
第1章では経済を物理学/生物学/心理学などの観点から解説している。日本経済の先行きに楽観的になれる。
以降の章では無意識/感情/調和的統合などを述べており、心理学/哲学に思える。余り関心がないので冗長的に感じる。
ただし、第4章の「○○らしい」と唱える、正反対の事を考える、は参考になるかも。
お勧め度:☆
キーワード:<はじめに>より科学的な思考態度、国土強靭派/リフレ派、脳科学/心理学、人間集団/人間、限界、<成長と繁栄を運命づけられた世界経済>ダークエネルギー、経済成長、財政破綻/超回復、欧州債務危機、質量保存の法則/エネルギー保存の法則、収支バランス、工業力、独自通貨、財政余裕度、ヒッグス粒子、ハイパーインフレ、格差問題、第三の道/統合、<マクロ経済=人間の集合体の心理>脳科学/心理学、情動・感情、意識/無意識、ワーキングメモリー/前頭前野、集合的無意識、元型、断言/反復/感染、個人/群衆、白血球、種の保存・進化・繁栄、民族性、公共工事、心臓/DNA、うつ/躁、救世主コンプレックス、感情コントロール、<限界突破のための個人心理-準備編>喜び/悲しみ、恐怖の条件付け、ストレス/格差問題、抑圧/反乱、否定/肯定、距離、大衆化/個性化、強欲、意識化、天下統一、イメージ訓練、心理療法、月齢、<限界突破のための個人心理-実践編>感情コントロール法、内観法、興味深い現象、モデル化、瞑想、運動、群集心理、良い気分、両者の肯定、恋愛、不遇、<おわりに>徳
<はじめに より科学的に経済に向き合う>
○国土強靱派VSリフレ派
・日本の経済論壇には「政府は景気に介入すべきだ VS 景気対策は金融緩和だけにすべきだ」「国の借金は大丈夫だ VS 国の借金は限界だ」などの対立軸がある。この原因を経済学者ブランシャールは「実験できないため」とした。
・そこで著者は対立する意見を両方とも正しいと仮定し、この対立・矛盾を乗り越えるアイデアを考案します。このアイデアが構築できたなら、高度な体系的整合性/普遍的な法則的認識が得られ、科学性が高まります。これを「より科学的な思考態度」と呼びます。※抽象的で厄介そう。
・ここで「政府は介入すべき」「公共工事はやるべき」「国の借金は大丈夫」を「国土強靭派」とし、「金融緩和だけにすべき」「公共工事は有害無益」「国の借金は限界」を「リフレ派」とします。※金融緩和で国債を大量に購入していなかった。
・月刊誌『VOICE』(2014年5月号)で両者が論争しています。金融緩和については両者は認めています。公共工事については「リフレ派」は「必要な工事は行うべき」とし、「国土強靭派」は「不要不急の工事はすべきでない」としており、両者に大きな対立はありません。
・次に公共事業の効果ですが、「リフレ派」は「マンデル・フレミング・モデル」(※知らない)により、国債の増発で金利が上がり、円高になり、効果は弱められるとしました。一方「国土強靭派」は、今の日本では金利は上昇しないとしました。この両者の意見を「間違いである」と断定できる根拠はありません。※結局、経済はカオスなので様々な説が許されるかな。
・ここで「マンデル・フレミング・モデル」に1つの視点を付け加えます。「政府が借金を増やす事で金利が上昇し、景気が抑制されるなら、それは民間の借金でも景気が抑制される」です。経済成長には借金総額が増え続ける必要があり、銀行預金が主力の貨幣供給(マネーサプライ)の拡大が必須です。従って経済成長では「マンデル・フレミング・モデル」の効果が発現し続け、両者が対立する理由は存在しなくなります。※難解。
・両者を統合すると「金融緩和を行い、国の借金で必要な公共事業を行い、経済を自立成長軌道に復帰させる」となります。「国の借金」については第1章以降で述べます。
○マクロ経済を理解するためには心理を知る必要がある
・著者の今までの著書は「国土強靭派」に立っていますが、本書は両者を正しいと仮定しています。その理由は幾つかあります。
・まず2000年代前半「小泉旋風」が吹き荒れ、新自由主義に傾斜させました。この時国民は①論理的思考によって彼に投票した、②「自民党をぶっ壊す」などの扇情的キーワードで感情的に投票したのどちらにしても、脳科学/心理学に踏み込む必要性を感じたためです。※景気は気なので。それにしても、嫌な方向に向かている。
・心理学は「人間が刺激にどう反応するかの学問」で、経済学は「人間集団が刺激にどう反応するかの学問」です。両者は生物学を親とする兄弟の学問なのです。これに気付き、脳科学/心理学を学ぶ機会を得ました。
・著者は感情的に「国土強靭派」を応援し、感情的に「リフレ派」を批判していたのかもしれません。「より科学的な思考態度」を取るためには、感情的になる事を肯定しなければいけません(詳しくは第2章以降)。
○70兆個の細胞
・社会は人間の集団で、人間も70兆個の細胞の集団で、両者は驚くほど似ています(※なんでや)。世界は戦争/クーデター/財政破綻/バブル崩壊/経済恐慌などを経て繁栄に至りました。人間も挫折/失敗をバネに成長します。
・兵法書『孫子』に「囲師は必ず闕(か)け」とあり、「敵を追い詰めると思わぬ反撃に合うので、逃げ道を用意しろ」を意味します。最近のシリア/ウクライナ/イラクは追い詰め過ぎた結果と云えます。一方人間に例えると、人間を追い詰め過ぎると、いずれ爆発します。
・古典には一人の人間から人間集団にまで適用できる「共通原理」が存在します。それは人間が共通して持つ感情・情動のシステムがあるためです。
・人間が感情・情動をコントロールできれば、思考能力/記憶力/免疫力高め、その国は国力を圧倒的に高める事ができます(詳細は第3章)。
○本書の構成
・第1章はマクロ経済を取り上げます。マクロ経済は人間と共通性があり、限界を突破し、成長してきた事を述べます。第2章ではマクロ経済をより深く知るため、感情の生物学的仕組みや集団心理を述べます。第3章では、「否定はストレスを生み、野生を呼び覚ます。肯定はストレスを解除し、理性を呼び戻す」の理論モデルから、誰もが個人の心理を取り扱える枠組みを提供します。第4章では、読者が感情コントロール法を開発するための方法論を述べます。
・読者が感情をコントロールできるようになったとします。それが家族/会社/国/人類に広がれば、人類の限界はなくなります。
<成長と繁栄を運命づけられた世界経済>
○宇宙は加速度的に限界を突破し続けている
・宇宙は加速度的に際限なく膨張しています。第1章は成長を運命づけられた経済の話ですが、宇宙と経済は非常に似ています。宇宙は膨張しているため、エネルギー密度は薄まると思われますが、エネルギー密度は一定で変わらないのです。これは「ダークエネルギー」によります。
・また質量がある物質には「万有引力」が働きます。「万有引力」があるにも拘わらず、宇宙は加速度的に膨張しています。
○大恐慌は成長を加速させる
・「国は破綻・挫折すると、その後経済は加速成長する」「多くの国は限界に達しても、その限界を突破してきた」などの経済的事実があります。
○経済成長って何
・経済成長は「国民経済の量的規模の拡大」の事で、実質国民総生産(GNP)または実質国内総生産(GDP)で表されます。
・米国は1929年大恐慌で29%、英国は第一次世界大戦で21%、日本は第二次世界大戦で50%落ち込みますが、その後成長を加速させています。
・宇宙の膨張は減速から加速に転じたとされます。これも米国/英国/日本が挫折(減速)後に、成長を加速させたのと似ています。
○筋肉は断裂後、超回復する
・筋肉痛になると2~4日後に、その筋肉は一段と成長します。筋肉はレジスタンス運動(繰り返し抵抗を掛ける運動)により一部破断しますが、元より太い筋線維が再生されます(超回復)。※経済/宇宙/筋肉の共通性か。
○財政破綻国も超回復する
・1990~2002年に財政破綻した事例が33件あります。破綻年を中心に前後10年の実質GDPをグラフにします。これを見ると破綻前の最高値を破綻後に更新できなかったのは、ウクライナ/ジンバブエの2件しかありません。経済も筋肉と同じく、「超回復」するのです。
○財政破綻は、どうでも良い話
・また財政破綻があったにも関わらず、一貫して実質GDPを伸ばしている例(ケニア、ミャンマー、スリランカ)もあります。ルワンダは大虐殺事件が財政破綻の原因であり、クウェートはイラクによる軍事占領が原因です。この様に財政破綻は政治的・軍事的事件からも起こります。
○欧州債務危機は借金でなくストレスで首が回らない
・2009年から始まるギリシャ/スペイン/イタリアなどの財政危機は財政問題と考えられます。しかしユーロ加盟国は単独で決定する事ができず、この問題も単純な財政問題ではなく、政治問題と云えます。
・ユーロ加盟国を一人の人間に例えると、様々な葛藤でストレス状態になり、思考能力/記憶力/免疫機能の低下、血圧/血糖値/心拍数の上昇を起こしているのです。欧州債務危機も時間は掛かるかもしれませんが、必ず「超回復」します。
・それでは日本の財政破綻はどうでしょうか。「財政破綻論者」も「財政破綻しない論者」も感情的になっていると思われます。著者は「感情的になる事は正しい」「論理的だけでなく、感情的にも納得する必要がある」から、この問題については第2章以降で述べます。
○質量保存の法則とエネルギー保存の法則
・学校で「質量保存の法則」を習いましたが、この法則は「欧州原子核研究機構」(CERN)により絶対的なものでなくなりました。電子と陽電子(電子の反粒子)をほぼ光速で衝突させると、元の質量の3万倍の物質が生まれました。要するに光速で運動するエネルギーが、質量のエネルギーに変わったのです。
・速度がゼロの状態で、物質のエネルギーE=mc²となります。また光は質量はありませんが、エネルギーE=hν(h:プランク定数、ν振動数)となります。
○経済はエネルギーの流れ、または交換
・質量を持つ物質も、質量を持たない電磁波/光も全てエネルギーです。また「経済は物理的なエネルギーの流れ、または交換」と云えます。そして経済も「エネルギー保存の法則」に支配されています。
○マクロ経済=あなた+あなた以外の世界全体
・あなたが支払ったおカネは、誰かのフトコロに入ります。従って「あなたの支出」=「あなた以外の世界全体の収入」です。またあなたが収入を得ると、「あなたの支入」=「あなた以外の世界全体の支出」です。よって「世界全体のマクロ経済」は、「あなた」と「あなた以外の世界全体」を連結決算(合計)したものです。あなたがどれだけおカネを使おうと、どれだけ収入を得ようと、世界全体の収支バランスはゼロです。これはおカネに関する「エネルギー保存の法則」です。
・あなたを日本政府/ギリシャ政府に置き換えても成立します。「日本政府の収支」+「日本政府以外の世界全体の収支」=ゼロです。
○政府の赤字は民間の黒字
・日本の場合、「政府の赤字」が「民間の黒字」とほぼ等しくなっています。よって「政府の借金問題」は「民間の貯蓄問題」です。
・日本には現金(お札、コイン)は95兆円しかありませんが、銀行預金は1249兆円あります。銀行はこの預金で安定した国債を購入しています(849兆円)。
・さらに日本は過去30年以上、「民間の黒字」が「政府の赤字」を上回っており、国民は豊かになり、貯蓄を増やしています。※国際収支は重要。ただし民間/国民も様々かな。
・ところがギリシャは政府も民間も赤字体質です。外国から借金して、モノを買っているのです。
○経済に秩序とバランスをもたらすもの
・日本では、「国の借金」が加速度的に増えても、「民間の貯蓄」が加速度的に増え、それを支えました。これは宇宙の「ダークエネルギー」のようです。一方ギリシャには「国の借金」を支える「ダークエネルギー」が国内に存在しないのです。著者はこの違いは、①工業力、②通貨発行権の有無と考えます。※価値を作る方法は、モノ作りと通貨発行しかないからな。
○経済はカネでなくモノ
・カネにまつわる諺に「カネは天下の回りもの」があり、モノに関しては「命あっての物種」があります。人間は水/食べ物などのモノがなくては生きて行けず、カネはモノを交換するための手段に過ぎません。従って経済成長の根源は工業力/技術力です。
○技術力=豊かさ
・技術力の一つである食糧生産力を見ると、江戸時代は人口の8割が農民で、その8割が実際に農作業していました。よって農業従事者1人で1.5~2人分の食糧を生産できました。現代は1人で30~50人分の食糧を生産できます。
・現代の子供がなりたい職業は、1位ナニー(ベビーシッター)、2位スポーツ選手、3位パティシエ、4位保育士、5位ファッションデザイナーです。いずれも皆が食糧生産に励まなければならなかった江戸時代にはなかった職業です。ただしこれらの職業は技術者と呼べそうになく、将来が心配です。※サービスとして価値は生んでいる。
・米国は1人で200人分の食糧を生産できますが(ただし遺伝子組換え作物が多い)、中国は1人で2.8人分しか生産できません。中国の農民は貧しく、5億人おり、下手をすれば飢え死に/暴動に直結します。※この数字は驚きだな。逆に考えれば、近代化の余地が無限にある。
○工業力がなければ、借金するしかない
・日本製の自動車が世界中を走り回っています。ユーロ圏ではドイツが日本と同様で、「政府+民間」の財政が健全で、貯金が積み上がっています。ギリシャ製の自動車/テレビ/冷蔵庫/スマホなどを聞いた事があるでしょうか。モノ作りが苦手なギリシャは、借金をして外国からモノを買うしかないのです。
○独自通貨は経済の強力な安定剤
・ギリシャは独自通貨ドラクマを放棄し、共通通貨ユーロを採用しました。これにより政府のみならず、民間も借金漬けになったのです。ギリシャの金融純資産(2011年)はGDP比-87%で、極めて巨額の「外貨建て借金」です。
・ギリシャが独自通貨を発行し続けていれば、通貨安になり、輸入減/輸出増になり、国際収支は維持できていたはずです。
・日露戦争前、政府は4.8億円(90兆円相当)の円建て国債を発行します。銀行が国債購入を渋ったため、日銀が全額を貸し付ける恐れもありました。ところが日銀が、銀行の国債購入に対し資金融通したため、大半の国債は銀行が購入しました。日銀の銀行への資金融通は2700万円で、国債総額の6%で済みました。
・中央銀行が国債(自国通貨建て)を幾らでも買う姿勢を示せば、国債は幾らでも発行できます。ただし過剰な通貨発行はインフレに陥ります。しかし多少の通貨発行であれば自国通貨安となり、国際収支は改善されます。この様に独自通貨は経済安定の極めて重要な要素です。
・ユーロ圏全体の金融純資産はGDP比-9%で問題のない状況です。米国はGDP比-24%です(※基軸通貨なので幾ら借金しても問題ない?)。ユーロ圏は「借金で首が回らない」のではなく、「ストレスで首が回らない」のです。
○技術力こそが財政余裕度を高める
・戦前の日本や発展途上国などモノ作りが弱い国は自国通貨が信用されず、外貨建て借金が増えます。
・高橋是清は「アダム・スミスは『富国論』で、国富の元は金ではなく品物と書いている」と言い、また「スペイン/ポルトガルは他国のモノを無闇に買い、自国でモノを作らず、金銀が流出した」と言っています。そんな中、日本はモノ作りができるようになるため、金(ゴールド)による借金を重ね、「拡大均衡政策」(?)を進めました。
・著者は前著で「財政余裕度」に重要な指標を4つ選びました。①外貨建て債務、②経常収支、③対外純資産、④インフレ率です。①~③は外国との技術力・工業力との力関係によります。④も基本的には同じで、モノを作る力があれば、モノ不足(インフレ)は生じません。
・ある国が外貨建て借金を返せなくなる流れは、技術力が低い→外貨建て借金が増える→財政破綻→通貨価値の下落→激しいインフレです。
・日本の場合、国民の貯金が「ダークエネルギー」になっており、その源泉は技術力です。※団塊の世代が貯金を切り崩し、若い世代は貯金できない時代に入るが、大丈夫か。
○日本の財政余裕度は世界一
・日本の「財政余裕度」は世界一です。①外貨建て債務では、97年「アジア通貨危機」/08年「リーマンショック」などで、外貨建て債務の問題を抱えた国を救済しています。
・97年「アジア通貨危機」で、日本の銀行団が韓国の返済繰り延べを表明し、韓国は国家破綻から救われました。この時、韓国政府の債務は対GDPで、たった9%でした。
・②経常収支では、日本はオイルショック(1980年代)以降、黒字を続けています。これは恐るべき黒字体質です。
・「アジア通貨危機」の韓国は、30年以上財政黒字でした。2008年国家破綻したアイスランドは、4年連続財政黒字でした。1929年「世界大恐慌」を起こした米国は、10年連続財政黒字でした。国全体の収支を見ないと、意味がないのです。
・日本は20年以上③対外純資産が世界最大です。日本の④インフレ率は世界最低水準です。
※これらから財政問題は放って置いて、技術力・工業力の向上に注力すべきだな。
○麗しきヒッグス粒子
・宇宙の始まりは「ビックバン」とされてきましたが、今日では「インフレーション」とされています。「インフレーション」はアメーバ程度の宇宙が一瞬で銀河系程の大きさに膨張した現象ですが、この無秩序な状態に質量を与えたのが、「ヒッグス粒子」です。
○ハイパーインフレの止め方
・「第一次世界大戦」で敗北したドイツは、①戦争で大量の物資を消耗、②領土/炭鉱/鉱山を失う、③莫大な賠償金を課せられます。①②で物不足になり、さらに③巨額の外貨建て債務を負ったのです。そしてハイパーインフレを決定的にしたのが、仏軍・ベルギー軍によるルール地方占領です。これによりマルクは金(ゴールド)に対し、1兆分の1まで価値を下げます(ハイパーインフレ)。要するにマルクの価値は、全くなくなったのです。
・そのため第1段階として、中央銀行「ライヒス・バンク」の信用が失墜したため、新たに中央銀行「レンテン・バンク」を設立します。この銀行は地主/農業資本家が土地で半額を出資し、残り半額を商工業者が出資しました。そのためこの銀行が発行した新貨幣「レンテン・マルク」は土地/金の裏付けがあり、ハイパーインフレは止みます。
・第2段階として、「ライヒス・バンク」に金本位通貨(ライヒス・マルク)を発行させました。これによりハイパーインフレは完全に収束します。※この話は知らなかった。
・宇宙に秩序を与えたのが「ヒッグス粒子」なら、ハイパーインフレに秩序を与えるのは金/土地なのです。
・次にブラジル/アルゼンチンのハイパーインフレを見ます。両国は1800年代から財政破綻を常習的に起こしています。両国とも1990年代に年率3,000%のインフレを起こします。ハイパーインフレの定義は年率13,000%ですが、ハイパーインフレとします。
・両国とも、このハイパーインフレの前に外貨建て債務の不履行を起こしています。これにより自国通貨の信用が失われ、ハイパーインフレとなったのです。
・ところが両国は1990年代に「ドルペッグ制」で自国通貨の価値を安定させ、ハイパーインフレをあっさり収束させています。特にブラジルは徐々に自国通貨を切り下げ、経済を順調に回復させています。両国は米ドルを「ヒッグス粒子」のように使い、秩序を与えたのです。
・人間が混乱している時、前頭前野が理性を取り戻させます(詳細は次章以降)。国家経済にも理性を取り戻す方法が存在するのです。また驚く事に、両国は財政破綻後に力強い経済成長をしています。財政破綻が切っ掛けになり、「超回復」しているのです。
○資本主義と社会主義の調和的統合
・2011年エジプト/チュニジアの革命、米国ウォール街での占拠運動、2013年トルコ/ブラジルでの反政府デモ、2012年ハンブルクでのネオナチと左派の衝突、イスラエルでの焼身自殺など、いずれも実質GDPが過去最大の時に発生しています。これらは経済成長しても格差問題があるからです。
・イスラエルでの事件が起こる1年前、左派新聞が「今必要なのは、新自由主義/隠れ資本主義(?)/真っ赤な社会主義ではなく、健全で豊かな社会的統合」と書いています。
・この「健全で豊かな社会的統合」とは、”何もかも政府が面倒を見る社会主義”でもなく、”政府は一切何もすべきでない資本主義”でもない「第三の道」です。
・この「第三の道」は、「格差縮小のため政府はカネを出すが、それは国民の努力を引き出す方式にする」のが特徴です。「第三の道」を使って、「将来の労働力不足に備えるロボット技術の開発」「将来のエネルギー不足に備える新エネルギー技術の開発」「将来の食糧不足に備える食料生産技術の開発」を推進すれば、経済成長を続ける事ができます。
・万が一財政破綻があっても、インフラ/技術があれば、「超回復」します。逆に財政破綻を恐れて、投資しない方が危険です。
・社会主義/資本主義、いずれも行き詰まり、矛盾する両者を統合するのが「第三の道」です。「はじめに」にも書きましたが、この統合が本書のテーマで、「より科学的な思考態度」です。
・欧州は統合を試みていますが、対立を生んでいます。よって本書での統合は「調和的統合」の言葉を使い区別します。
・「第三の道」「調和的統合」「超回復」、これらは全て一致します。人が葛藤を乗り越えて成長するのも、これに相当します。対立する両者を、何れも正しいとする発想法です。第3章/第4章で述べますが、マクロ経済/政治(人間集団)と個人心理には高い共通性があります。※嫌な方向に向かっている。
○経済成長は無限大
・経済成長に限界がないのは、宇宙の「ダークエネルギー」が増え続けているのと同じです。宇宙には無尽蔵にエネルギーがあるので、それをタダ同然で利用するのが「究極の状態」です。「究極の状態」になると、必要な仕事/生産/サービスは全てロボットがやってくれます。人間は平安貴族のように遊んで暮らすだけです。
・「究極の状態」になるには、①技術が極限まで発達する、②経済格差が許容範囲に収まるが条件になります。そのためには「全人類が心理的に安定する」が必須条件になります。ゆえに「究極の物資の完成」は「究極の人間(精神)の完成」と云えます。
<マクロ経済=人間の集合体の心理>
○心の動き=完全なる物理的現象
・経済の安定には、個人の心理/脳の仕組みを知る事が必須です。人間一人ひとりの心理が行動に直結し、その総合計が経済です。
・心の動きは、完全なる物理的現象です。物理的な動きの理解に役立つのが「脳科学」で、心の動きそのものの理解に役立つのが「心理学」です。本書では「心理学」として「ユング心理学」を取り上げます。
・人間が集団を形成すると、個人とは全く違う性質を発揮します。それは相互作用が働くためです。これに関してはル・ボン『群衆心理学』が役立ちます。ユング/フロイト、さらにレーニン/ムッソリーニ/ヒトラーが当書から影響を受けています。
○感情の科学的アプローチ
・心の状態を表す言葉に「情動」と「感情」があります。本書では、①「情動」と「感情」を明確に区別します。また、②「情動」が先で、「感情」が後になります。
・①に関し、ダマシオは「情動は身体的・生理的な反応。感情はその身体的・生理的な反応を脳で感じている」としています。またユングは「情動は興奮/爆発/我を忘れた状態/生理的な状態。感情は価値を付加する機能」としています。
・次に②「情動が先で、感情が後」を「ヘビのようなものを見た」で説明します。
❶「情動を誘発しうる刺激」の評価と定義-視覚情報が視神経に入り、❷で登場する偏桃体が利用できる情報に加工されます。
❷情動の誘発-偏桃体は他の部位(※どこ?)に照合して、”危険”と判定した場合、「情動の実行」を担当する部位に伝達します。
❸情動の実行-前脳基底/視床下部/脳幹などの部位は、”危険”に対応するための身体的な反応を実施するよう、身体全体に命じます。
❹情動状態-身体的な反応を実施します。例えば、身をすくめる/飛び退くなどです。
❺感情-情動状態により再び情報が脳に集約され、恐怖/怒りなどの感情を抱きます。
・これらより「情動」「感情」は物理的な現象です。情報伝達は化学物質の生成と放出で行われます。心拍数や血糖値の変化も物理的な現象です。※当たり前。人体内で起こる以上は、全て物理的な現象。
○意識/無意識を脳科学で
・情動・感情は、無自覚/自動的/無意識に行われます。「ヘビのようなものを見た」後の無意識の動作の後に、「よく見ると、木の枝だった」などの認識する機能が「意識」です。
・「意識とは何か」について多くの脳科学者は、「ワーキングメモリー」(前頭前野、前頭前皮質、前頭連合野)と呼ばれる短期記憶システムを提案しています(※何で短期なの?短期間しか存在しないからみたいだな)。今皆様が本書を読んで、本書の内容を意識できるのは、そのような情報が「ワーキングメモリー」に存在するからです。
・ユングは意識/無意識を以下に説明しています。意識は、ある瞬間、同時に存在する内容をわずかしか保持できない。そのため意識の領域は、瞬間に制約されている。意識に保持されないものは全て無意識である。意識は「狭い」「瞬間的」の特徴を持つが、無意識は「巨大」「連続的」の特徴を持つ。
・脳科学的には、偏桃体/前脳基底/視床下部/脳幹/身体は無意識を構成する要素です(※条件反射の小脳は含まないのかな)。一方、感覚野/高次の大脳皮質は意識を構成する要素です。
・人間の脳は大脳皮質が発達し、その30%を高度な判断や思考を司る前頭前野(前頭前皮質、前頭連合野)が占めています。単細胞生物や原始的な生物には前頭前野がなく、意識がありません。※中間の生物はどうなんだ。
○ユングの無意識=個人的無意識+集合的無意識
・ユングは無意識を個人的無意識と集合的無意識の2層に分けています。集合的無意識は全人類共通の普遍的な性質が収まっている領域です。※嫌な方向に進んでしまった。
○集合的無意識への誤解
・著者は20歳頃にユングの集合的無意識を知っていましたが、ずっと誤解していました。2年程前、ユングの講義録を読んで理解できました。
・集合的無意識は分類上の用語です。心の領域で「意識」以外が「無意識」です。「無意識」で個人的なもの以外が「集合的無意識」です。よって「心の領域=意識+個人的無意識+集合的無意識」です。
※それなら集合ではなく共通的無意識かな。また無意識に個人的なものは少ないのでは。ヘビを見て、掴みにいく人や噛みつく人はいないと思うけど。ん、赤ちゃんなら掴みにいくかも。意識だけでなく無意識の行動にも学習(ヘビは怖い)が関係している。また、なぜ意識は個人的と集合的に分けないのか。
・ユングは「解剖学的には2つの眼と2つの耳と1つの心臓があるように、身体の個人差は僅かです。同様に心も一致している」と言っています。また「脳には何百万年を経て作り上げられた共通する心の機能が存在する」と言っています。
○集合的無意識の本当の意味合いは、全生物共通アプリ
・ここで生物全体に共通の心的機能を考えます。情動は「入力された刺激に対する、自動的な身体的反応」です。ゾウリムシは単細胞生物ですが、尖った針/高温・低温/栄養濃度などに反応します。植物も重力に逆らって枝葉を伸ばし、根を地中に張ります。どんな生物にも「情動的な反応」があります。
・生物には動物/植物/菌類に関わらず「情動的反応」を担当する部位があります。これはDNA(遺伝子)とも、分子/原子/素粒子に共通の性質と考えられます。※生き残った生物が持つ性質では。
・人体は炭素/水素/酸素/窒素などで構成され、さらにそれらは素粒子(クォーク、グルーオン)からなります。人間の思考/行動が、素粒子/原子の振る舞いと共通的パターンを持っていても不思議ではありません。※論外の思考。
・この様な共通的な心的パターンを、ユングは「元型」としました。この「元型」は、本書の最重要キーワードです。※意味不明の言葉が、本書の主題になった。
・この「元型」が入っている場所が「集合的無意識」です。これをスマートフォンで例えると、スマートフォンが「集合的無意識」で、デフォルトで入っている「アドレス帳」「電話機能」などが「元型」です。
○情動は感染する
・ユングは「『元型』は強い感染力を持つ」としています。「朱に交われば、赤くなる」「類は友を呼ぶ」「赤信号、皆で渡れば、怖くない」などです。またユングは「言葉が通じない国で皆が笑えば、自分も笑うしかない。政治的に興奮している群衆の中にいれば、興奮しない訳にはいかない」と言っています。※そこで理性は働かないだろうか。これは理性が働く前の無意識(情動・感情)の世界だった。
・「十字軍」「フランス革命」のように、人間は原始的で野蛮な性質を帯びやすくなります。人間は集団の中で原始的(※非理性的かな)になり易く、さらに自己の生命を捨て、英雄的な行動に出ます。※これは集団的動物に共通する性質だな。これも種が生き残る条件かな。
・ル・ボンは「一定の条件が整えば、多数の人々が、あたかも完全な一人の人間のように振る舞う」としました。※難解。完全な一人の人間とは原始的な人間みたい。
・ユングは元型的なものとして「救世主コンプレックス」を例にしています。患者が医師を、「自分の夢を達成する人、尋常の医者でなく霊的な英雄、救世主」などと思い込んでいると、医師は「自分は救世主、並大抵の人間ではない」と考えるようになります。精神科医は患者からの”猛攻”に耐えられなくなり、去るそうです。※結局どっちや。救世主になろうとするのか、しないのか。大体自分は医師を懐疑的に見ているので、前提から異なる。
・ユングは「元型の感染力は強いため、人々に元型を与えると、群衆は全て一人の人間のように動く」と言っています。※元型を与えるって何だろう。
○断言、反復、感染
・ル・ボンの『群衆心理学』は大衆指導者に多大な影響を与えました。彼は指導者が用いるべき手段を、断言/反復/感染としました。近年の小泉首相/橋下大阪府知事/オバマ大統領も、この手段を使用しました。無条件の断言は、群衆に思想を沁み込ませる確実な手段です。また彼は「断言/反復/感染は、広告やマスコミで絶大な力になる」と指摘しています。
・「国の借金」問題でも、断言/反復/感染は絶大な威力になります。「国の借金は1千兆円。ハイパーインフレで日本は破滅だ」が毎日流されると、日本の財政破綻論が猛威となります。
・「ぶっ壊す」などの破壊的な言葉が、人々の心を鷲掴みにするのは、人々の心が不安定になっているからです。そのため「経済を安定させるためには、経済学より脳科学/心理学」と考えています。※人の心を安定させれば、経済を誤魔化せる?
○近代的・理性的な個人と原始的・本能的な群衆
・人間は個人の時は近代的・理性的ですが、群衆に入ると原始的・本能的になり、全く異なる性質を持つようになります。群衆は暴力的になり易い一方、自己破棄/献身/無私無欲/自己犠牲になります。また群衆は異質のものに対し、排他的・攻撃的になります。※群衆心理だけで1冊の本が書けるだろう。
○白血球に見る群衆の元型
・白血球の一種に「ナチュラルキラー細胞」(NK細胞)があります。「NK細胞」はウィルスに感染した細胞やガン化した細胞を破壊します。同じく白血球の一種の「好中球」は、傷付いた細胞の細菌を飲み込んで生命を終えます。「NK細胞」「好中球」は造血幹細胞から分化しており、共に異質なものを排除する性質を持ちます。
・人体での「自己犠牲的な攻撃性」は、社会/国家/企業/家庭でも見られます。※共通性があってもおかしくない。
○元型が歴史を創る
・ユングは「個人的無意識」と「集合的無意識」を区別する研究をしました。ある黒人が「車輪に磔にされた男」を夢で見ました。これは彼が実際に見た事はなく、彼の先祖も見た事がないと思われるため、全人類共通的(元型的)なものとしました。※夢は無限に見るが、磔にされた人間なんて一度も見た事はないはず。
・またユングは、「太陽が複数に分割されたイメージは、車輪が発明される前の旧石器時代から描かれており、これが車輪の発明に繋がった」と仮説しています。※この辺りパスしたい。
・またユングは、「科学者ケキュレは、ヘビが自分の尾を咥えているイメージ(結合の元型イメージ)からベンゼン環を発見した」逸話を紹介し、「ケキュレの幻想が、途方もない化学の隆盛に貢献した」と主張しています。※そりゃあ、色々なものが発見のヒントになる。
・このユングの「結合の元型」は、フロイトの「エロスの本能」と繋がります。この「エロスの本能」には、性的なものだけでなく、普遍的な愛情/他人に好かれたい気持ち/他人と仲良くしたい気持ちなどが含まれます。一言で言えば、「種の保存」のための元型で、生き残るためには異姓同士の結合や集団の団結が必要です。
・フロイトはル・ボンの群集心理の講論を受け、「エロスこそ、世の全てを結合する」(※超省略)と述べています。
・群集心理の元型は、「排他的・攻撃的かつ自己犠牲的」で「種の保存」に役立ちます。さらにケキュレがベンゼン環を発見したように、「種の進化・繁栄」に役立ちます。言い換えれば、元型の産物である情動・感情は、「種の保存・進化・繁栄」に不可欠なものなのです。第1章で詳述しましたが、経済が破綻しても成長を続けているのは、元型の保守的作用/進歩的作用のためです。※破滅に向かおうとする人はいない。それが元型か。
・ル・ボンが述べた国家レベルにおける保守的傾向を紹介します。「1790~1820年仏国では、最初群衆は王政派だったが、革命派になり、ついで帝政になり、やがて王政派に戻った」。多くの犠牲を払って王政を倒したのに、王政に戻ったのである。
・革命は排他的・攻撃的で保守的な元型的作用で極めて残虐となりましたが、その背後の進歩的な元型的作用により進化・成長・繁栄がもたらされたのです。
○元型の民族性と政治経済体制
・ここで民族レベルの元型に触れます。ル・ボンは「ラテン系は中央集権を好み、国家の仲介を求め、平等を求める。一方アングロ・サクソン系は国家を無視し、自己の創意にのみ頼る。そのため英国は君主制であるが民主的。南米の国家は憲法を持つ共和国でありながら専制政治である」としました。
・これは今も変わっておらず、中南米諸国は社会主義的・保護主義的で、かつ独裁的な指導者が多く見られます。また英国/米国は、無政府的・新自由主義的な政策が好まれます。そのため米国は新自由主義と社会主義の”良いとこ取り”である「第三の道」を進むべきです。
・一方日本人は、アングロ・サクソン系ほど独立心/自己主張が強くなく、集団で力を発揮する民族です。かといって、ラテン系のように政府にベッタリでないため、やはり米国などとは異なる「第三の道」を進むべきです。
・日本は災害大国のため、公共工事の増額が良いでしょう。公共工事を増やす事は、民間企業の努力を引き出す事になります。公共工事では談合や価格入札が問題になっていましたが、2005年「公共工事の品質確保の促進に関する法律」により、企業の技術が評価される仕組みになりました。
・公共工事は、どうでも良い財政破綻ではなく、物流の破綻を防ぐ「第三の道」です。何度も強調しますが、国家社会の安定/繁栄の根源はカネではなくモノであり、技術力です。
・これを実現する前に、「国の借金」問題の議論が必要になります。今建設業界は”既得権益”ではなく”危篤権益”になっています。このままではインフラの維持すら難しくなります。国民の心理状態が不安定になり、「国の借金は1千兆円。日本は破滅だ」などが、断言・反復・感染するようになると、お終いです。
・米国の銃規制を日本人は理解できません。これは理論的ではなく、感情的に理解すべきです。米国は英国からの自由を求めて独立しました。銃を所有する権利は、自由である事の根源の権利です。
・大規模な人間集団における問題/民族レベルの問題などの元型的な問題は、理論的ではなく、感情的な理解を試みるべきです。※本書では述べられていないが、宗教は大変重要である。述べられていない理由は何だろう。
○情動は心臓の電磁場でも感染する
・ローゼンタール(ピグマリオン効果の発見者)が、頭が良いとするネズミ群と頭が悪いとするネズミ群を迷路で競争させました。結果、頭が悪いとするネズミ群が勝利したのです。これは学生達が、頭が悪いとするネズミ群を励ましていたためです。ネズミ達はそれを見たり/聞いたりして「感染」していたのです。※パス。
・ストレスを研究するハートマス研究所が”心臓の発する電磁場”について、「心臓の電場の振幅は脳の60倍」「心臓の磁場の振幅は脳の5千倍」「心臓と脳は、神経系/生物物理系/生物科学系/電磁場で連携している」などを報告しています。※大幅に省略。
・重要なポイントは、①心臓は脳に比べ圧倒的に強い電磁場を持つ、②心臓と脳は電磁場で連携している、③心臓の電磁場により、周りの人/動物と情動的な連携がされている、④良い感情は心臓の鼓動を規則的にするです。※電磁場ってそんなに強弱があるかな。電磁コイルなら強い電磁場を作れると思うが。電磁場の勉強が必要だ。
○情動はDNAの量子場でも感染する
・ハートマス研究所はDNAに対しても幾つか実験しています。実験①-感情のコントロール法を訓練した被験者10人と訓練を受けていない被験者18人が、試験管に入れたDNAに対し、らせん構造が捩れるまたは開くように2分間念じます。この結果、感情のコントロール法を訓練した被験者の場合、10%の割合でDNAを変化させる事ができましたが、訓練を受けていない被験者の場合、1%しか変化させられなかった。
・実験②-心拍数変動が最も綺麗な被験者に、試験管に入れたDNA3つを1つのビーカーに入れ、それぞれらせん構造が強く開く/程々に開く/開かないように念じさせた。すると強く開くように念じたDNAほど、紫外線(波長260nm)の吸収率が大きく変化した。※念じるのは指向性が高いんだ。ところで紫外線の吸収率は何を意味するのか。
・実験③-同様な実験を0.5マイル(800m)離れて行ったところ、紫外線の吸収率が2.8%変化した。※超ピンポイントの指向性。被験者の念じる以外の外因は遮断されているのか。
・これらの結果から、①強い感情を持って念じると、DNAの構造が変化する、②強い感情を持って念じると、3つのDNAを別々に変化させたり、離れた場所にあるDNAを変化できるとなります。ハートマスの研究者は「人間の意思は、量子真空のエネルギーに影響を与える事ができる」としました。さらに「光/重力を伝える伝導体があるように、人間の思考を伝える伝導体が存在する」と考えました。
・読者は疑問を持たれるかもしれませんが、重力でさえ不思議な力です。重力は宇宙の全ての物体に伝わり、距離が離れると加速度的に影響が小さくなります。※最近読んだ本に、力には4種類(重力、電磁力、強い力、弱い力)あると書いてあった。
・群衆は一定の条件(視覚情報、聴覚情報)が揃うと、一人の人間(原始人、※この意味か、やっと分かった)のように振る舞います。これは国政選挙/暴力革命だけでなく、マクロ経済も同様です。※本節の最後の一文だけは認めるが、それ以外はパス。
○マクロ経済は群集心理
・英語の”depression”は経済学では「失業を伴う不景気」(恐慌)ですが、心理学では「うつ病」です。「大恐慌」の反対の「バブル景気」は英語で”boom”です。心理学でこれに対応するのが「躁状態」です。「躁状態」だと、気分が高揚/楽天的/自信過剰/よく働く/よくしゃべるとなる一方、思うようにならないと興奮する/激しく怒るとなります。
・「バブル景気」になると、多くの人が「躁状態」になり、群集心理が「躁」になります(※ホントに、そうか)。以上より「大恐慌=うつ、バブル景気=躁」と云えます。
・日本の戦前56年間(1885~1940年)と戦後56年間(1955~2010年)のインフレ率を比較します。平均は共に3%台で変わりませんが、変動幅が大きく異なります。戦前は最大33.3%/最小-15.4%に対し、戦後は最大24.5%/最小-1.5%で、戦後のインフレ率は平均値付近に集中しています。※これは規模の小さいブロック経済と、規模の大きいグローバル経済の違いでは。
・これはハートマス研究所での「感情が安定すると、心拍数も安定する」と同じで、「群集心理が安定すると、経済も安定する」のです。戦前は「5.15事件」「2.26事件」や、閣僚の暗殺/クーデターが相次ぎ、国民の心理が安定していませんでした。
・中国の諺に「天、民を矜(あわ)れむ。民の欲する所は、天、必ずこれに従う」とあり、これは「国民の欲求によって、国家の運命は決まる」を意味します。※易姓革命かな。
・物質面だけに着目すると、戦後はモノ作りの効率も物流機能も高まり、想像を絶する「物質的豊かさ」になりました。そのため「衣食足りて礼節を知る」にあるように、人々の精神は安定したのです。※戦前は精神が安定しなかったので経済も不安定だった。戦後は経済が安定したので精神も安定した。戦後は精神の安定が先でない。
○ユングの予言と感情コントロールの社会的意義
・「救世主コンプレックス」に話を戻します。コンプレックスは日本語では「劣等感」ですが、ユングによると「感情によって結ばれている心的内容の集まり」になります。「救世主コンプレックス」は「救世主を求める心的パターン」と「救世主になりたい心的パターン」に分けられます。「救世主を求める心的パターン」は「うつ的パターン」、「救世主になりたい心的パーン」は「躁的パターン」と云えます。
・1935年ユングは「救世主コンプレックスは集合的無意識の元型的なイメージであり、現代のように方向を失っている時代で賦活(※活発)される」「元型が賦活され、生活に入り込み、全ての人間を捉えてしまう。私はドイツで何が起こるかを、1918年に予見していた」と述べている。
・方向を失った日本も、小泉首相/橋下大阪市長による「ぶっ壊す」などの元型が大いに活性化したのです。いざという時に猛威を振るうのは情動・感情で、論理・理性ではないのです。※本当だろうか。
・ユングの言葉に戻ります。彼は「第一次世界大戦前、知識人は『我々は戦争を起こさない理性を持っている』と言っていたが、空前絶後の戦争を起こした。戦後も戦争の原因や平和計画を議論している。彼らは元型のイメージが人間の運命を決定する事を知らない」と述べています。
・彼は「元型の影響を抑え込む事はできない」とし、この問題を解決するヒントを、①元型的(非個人的)なものと個人的なものを区別する、②自分を幸福にするものは、外ではなく内にある、③元型的(非個人的)なものに形を与え、それとの関係を保つ(?)としています。現代は脳科学が発達し、ハートマス研究所の研究成果もあり、元型的なイメージに形を与える事が容易になっています。
・感情のコントロールは、個人の幸せ/家庭の幸せ/国家の幸せ/世界の幸せに必須です。
<限界突破のための個人心理-準備編>
○感情は生命の内部状態を知らせるセンサー
・本章では人間一人ひとりの感情に深く切り込みます。人間には喜び/悲しみがありますが、「喜び(肯定的な感情)は生命体としてバランスが取れている状態」、「悲しみ(否定的な感情)は生命体としてバランスが取れていない状態」です。
○感情の役割
・改めて情動・感情を区別すると、情動はゾウリムシのような単細胞生物にもあります。一方感情は経験とセットで記憶され(連合学習)、高等生物にしかありません。身体的反応である情動にマーク付けされている事から、ダマシオは「ソマティック(身体的)マーカー仮説」と名付けています。
・「記憶と感情が結び付けられている」と云う概念は、「コンプレックス」(感情によって結ばれている心的内容の集まり)と一致します。これは感情コントロール法を考える上で重要です。
○トラウマと恐怖の意義
・「否定的な結果をもたらした選択肢を避けるよう、否定的な情動・感情が喚起される」と述べましたが、この「恐怖学習」は生物に必要不可欠なシステムです。
・「パブロフの犬」にあるように、犬に肉を見せる時にベルを鳴らすようにすると、ベルが鳴るだけでヨダレを垂らすようになります。またルドゥーは「ウサギは水たまりに出かけ、キツネに合うと、水たまりに近付くだけでウサギを警戒するようになる」(※これは習性では)と言っています。この様に「恐怖の条件付け」(恐怖学習)は一回の経験でも学習します。
・ネズミに電気ショックと音を与え、「恐怖の条件付け」させますが、その内音だけでは反応しなくなります。しかしニューロン間の相互作用は消去されず残っているのです。これが「心の傷」「心的外傷」の正体です。
・この「恐怖の条件付け」(恐怖学習)/「トラウマ」の仕組みが分かると、人々が「国の借金」をなぜ怖がるかが理解できます。物心付いた頃から「借金で夜逃げ」「借金で一家離散」などの話から、「借金は恐ろしい」と条件付けされるのです。第1章で説明しましたが、本当に怖いのは「モノ不足」で、「国の借金」ではありません。
・「国の借金は大変だ」と恐怖する事は、感情的には100%正しいのです。「国の借金」への恐怖を消去する事は不可能なのです。そのため経済問題を解決するのに、経済学だけでなく心理学/脳科学が必要になるのです。恐怖心を消去、いや抑制するのに、意識・理性を担当する前頭前野を活性化する必要があるのです。※結局、理性(経済学)なのでは。
○ストレスは野生と理性の切り替えスイッチ
・ストレスの元々の意味は、構造物に対する物理的力です。これが生理学に応用され、嫌悪/恐怖に対する生理的反応になりました。
・ストレスが生じると脳/身体は「戦闘モード」になり、ストレスが解消されると脳/身体は「休息モード」になります。ストレスに晒されると、「ヘビのようなものを見た」時のように、論理的思考/消化機能/免疫機能などは停止し、この瞬間に関わる機能だけに特化されます。
・この時、トラウマを抑制するには、意識・理性を担当する前頭前野を活性化する必要があるのですが、前頭前野を不活性化され、逆に偏桃体が活性化されます。「恐怖の情動」が生起され、恐怖に条件付けられた記憶がよみがえり、ますますストレスが高まり、「原始人的」な振る舞いを担当する偏桃体が活性化されるのです。
・簡単に言えば、ストレスが高まると前頭前野などの意識系(理性)が弱まり、偏桃体なども無意識系(野生)が強まります。これは元型的/原始人的な状態です。
・社会が高ストレスな状態になると、「借金が怖い」「ぶっ壊す」などの恐怖や不安を煽る文言が受け入れられ易くなります。ストレスが高まると免疫機能は低下します。また前頭前野は弱まり、理性を失い、思考能力は低下します。※人間はそんなに愚かかな。
・特に長期的なストレスは、意識的記憶を担当する海馬にダメージを与えます。虐待を受けた子供やPTSD(心的外傷後ストレス障害)になったベトナム帰還兵は、海馬が委縮しています。強いストレスは、人を病気にし、思考能力/記憶力を低下させ、生涯に発揮できるパフォーマンスを低下させます。
・社会が高ストレスな状態になると、免疫機能の低下から病気の人が増え、医療負担が増大します。技術者の思考能力/記憶力/体力は低下し、物質的豊かさも低下します。環境技術/エネルギー生産・利用技術も進展せず、悪循環に陥ります。
・その高ストレスの要因に「格差問題」があります。格差拡大は社会のストレスを高め、技術的・物質的豊かさを奪います。
○適度なストレスは成長を刺激する
・弱いストレスはアドレナリンを活性化させ、海馬(意識的記憶を担当)を強化します。海馬は日中に学習した記憶を、睡眠中に大脳皮質に送っており、記憶には休憩(睡眠)が必要なのです。また軽度の不安を感じている人の方が、加算作業などで作業量が多くなる研究結果もあります。また筋肉は多少の断裂が、成長を促します。
・この様に「厳し過ぎず、甘過ぎず」の「第三の道」が、最も合理的・生産的なのです。※第三の道は両者の統合なので、何にでも使える。
○抑圧(否定)は全てストレス
・心理学に「抑圧」と云う言葉があり、これは感情コントロール法で便利な言葉です。「抑圧」とは、「嫌なもの/都合の悪いものを無意識に見ないふりをして、自分を守る事」「事実を事実として受け入れず、無意識に拒絶する事」です。しかし事実は確実に記憶に残り、「感情的緊張」「葛藤」を持ち続けます。
・強いストレス(トラウマ)は外示的記憶(言葉で表現できる記憶)を担当する海馬を弱めますが、逆に情動を記憶・再生する偏桃体は強化され、無意識的な情動のみが記憶されます。これが「抑圧」の科学的根拠です。
・ユングは「抑圧」の働きをする元型を「影」と名付けました。大人しく育てられた子は攻撃的な事を斥けるようになりますが、その「影」は非常に攻撃的になります。
・心理学では「抑圧」は”無意識での否定”ですが、感情コントロール法を考えるため、「抑圧」の意味を”意識的な否定”に拡大します。
・反格差運動/ウォール街占拠運動の時、デモ行進した退役軍人が「我々は余りにも長く、ウォール街に『抑圧』された」と演説しています。専制君主による圧政も「抑圧」です。専制君主は自分が倒される不安から、余計に国民を「抑圧」していたかも知れません。
・弱いストレスであれば好ましい結果を生みますが、強過ぎると前頭前野は弱体化し、偏桃体により制御不能になり「反乱」が起きます。民族・種族レベルでもストレスが強過ぎると、暴力革命/テロなどの「反乱」が起きます。劣等感/優越感も「抑圧」であり、否定です。
○愛と感謝
・ハートマス研究所によれば、愛や感謝の気持ちの時は、心拍数は安定します。波形の綺麗さは、肯定的な感情(愛情、感謝、共感)>リラックス>否定的な感情(怒り、不満、不安)になります。
・愛は「誰かを大切に思う気持ち」、感謝は「何かの重要性や意味を理解する事」で、共に「高く評価する事」であり、最大限の肯定です。一方怒り/不安/恐怖などの否定的感情は、否定された時の防御反応/ストレス反応です。つまり「肯定はストレスを弱め、否定はストレスを強める」のです。
・高く評価する事が良いのなら、「自分を高く評価する」「他人を褒めまくる」「嫌いな人を高く評価する」などが考えられますが、無理強いは抑圧になります。
○人と人との適切な距離
・①仕事をしていれば嫌な人とも付き合わなければいけません。また②あなたが自分を抑圧しないで、勝手気ままに振る舞う場合もあります。それぞれの対処法を考えます。①嫌な人との付き合いは、可能な限り距離を置く事です。さらに不満に思っている事を、穏やかに表明するのが妥当です。②自分勝手に振る舞うは、「自分も相手も必要以上に抑圧しない」のが最良です。自分と他者の両者を肯定する方法です。
・これまでの事から、①人と人との間には最適な距離がある、②人々の心のあり様で、最適な距離が変わると云えます。これは原子核と電子が引力と斥力で一定の距離を保っているのと同じです。
○国と国との適切な距離
・国は人間集団のため、国家間にも適切な距離があります。また国民の心理によって、その適切な距離も変わります。
・1943年ユングは「国際化により、人々は拠り所を失い、大衆化し、混沌状態になる」とし、これを第二次世界大戦の原因としました。この「大衆化」とは、原始人的になる事です。つまり「大衆化」とは、救世主コンプレックス/結合/残虐性/自己犠牲などの元型が理性によって統合されない分裂状態にあります。彼は感情コントロールができていない「大衆化」された状態は、世界大戦が起きる危険があるとしたのです。
・彼は分裂状態が統合される事を「個性化」「自己実現」言っています。※日本語だと大衆化は一般化・普遍化で、個性化は分裂化・独立化で逆の気がする。
・人は近付き過ぎると摩擦が生じます。しかし感情コントロールができていれば、摩擦は生じません。
○TPP
・オバマ大統領は「貿易協定は勝者/敗者を作らず、大多数の国民に良いものであるべきだ」と演説します。ところが貿易交渉の権限を持つ連邦議会には詳細な情報は知らされず、ハリバートン(石油)/シェブロン(石油)/PhRMA(研究製薬協会)/コムキャスト(ケーブルテレビ)/映画協会などには詳細な情報が知らされていました。
・反格差運動/ウォール街占拠運動の参加者は、「政府は企業に買収されている」「企業の『強欲』と貧富の格差を終わらせる」と語っています。
・2012年著者は前著で、「彼らの『強欲』は、お金や富を失う事に対する恐怖である。この恐怖に基づく政策は、格差を拡大させ、成長を鈍化させ、社会を不安定にし、果ては革命を起こさせるだろう。彼らは恐怖心からのエネルギーを格差拡大ではなく、格差是正に向けるべきだ」と書いています。※専制君主と同じだな。
・今の恐怖心に基づくルールは、寡占・独占をもたらすルールになっています。そのため多くの人を抑圧し、ストレスとなり、社会の分断(大衆化)を起こしているのです。
・この問題に対処するには、多くの人に情報を公開し、長い時間を掛けて論議し、「調和に基づくルール」を作る必要があります。
・「強欲」の本質が「恐怖」であるなら、これは「種の保存」のためであり、”善”です。例え「破綻」が起きても「超回復」します。しかし「破綻」は、少しでも小さく留めたいものです。※ここで破綻/超回復の原理が出てきた。
○脱同一化/脱自動化/意識化
・感情コントロール法を考える上で便利な言葉に、「脱同一化」「脱自動化」があります。自分を苦しませる感情/気持ち/思考/記憶/体験は同一化されており、苦しみからの解消方法が「脱同一化」です。自動的に起こる知覚や反応のパターンを観察する事で、そこから解放されます。これが「脱自動化」です。「脱同一化」も「脱自動化」も同じ事で、ユングはこれを「意識化」としています。
○個性化=心の内なる戦国時代の天下統一
・人は70兆個の細胞からなる巨大な組織です。心の構造も脳神経回路パターンからなる巨大な組織です。人間集団の記録である歴史を知る事で、心の構造を知る事ができます。
-天下統一モデル-
・豊臣秀吉は支配領域(意識)を広げ、天下統一を目指します。秀吉に天下統一を妨げる徳川家康が登場します。しかし「内なる敵」(恐怖の条件付けされた記憶)は消す事はできません。消そうとすると「影」は成長します。そこで秀吉が取った賢明な方法は、妹を家康に嫁がせる方法でした。否定/抑圧ではなく、肯定する方法です。
・個人的無意識(国内)は天下統一できても、集合的無意識(諸外国)は簡単ではありません。しかし集合的無意識は車輪の発明/ベンゼン環の発見など、人類の発展に貢献します。そのため集合的無意識(諸外国)とは交易など、程々の距離を保つのが無難です。
・次に天下を治めた家康は、キリスト教を禁止します。ポルトガルは布教に拘ったため、幕府はポルトガルと断交(適切な距離)します。一方布教に拘らないオランダとは交易(適切な距離)を続けます。
・心の中で無意識的な抑圧を実行するのが「影」です。「影」は元型で、集合的無意識(諸外国)に相当します。ユングは「『影』を消し去るのではなく、『影』といかに共存するかが重要」と述べています。
・秀吉は天下統一に成功しますが、心の内なる天下統一は失敗します。彼は甥の秀次とその家族30数名を皆殺しにします。今の欧州の混乱も同様で、心の内なる天下統一ができてないのに、統一通貨の発行/国境検査の撤廃などの物理的な天下統一を急いだためです。
・ここで「a.精神と物資の天下統一」「b.国の借金に関する悲観論と楽観論の天下統一」「c.新自由主義と社会主義の天下統一(第三の道)」について論考します。
a.精神と物資の天下統一
・ユングは「自然科学の発達は精神を王座から引きずり下ろし、物資を王座に付けた。しかし科学はこの裂け目に架橋しようとしている」と言っています。近代の科学の発達で「科学は合理的だが、宗教は非合理」(唯物論)となった。しかし人々の心が不安定になり、科学の方から「心の性質」を理解する動きが見られる。
・宗教は元型的なもの、集合的無意識に存在する得体のしれないものにイメージを与え、意識化し、これらと付き合えるようにします。科学の発達により、「元型的なものと旨く付き合うノウハウ」を失い、社会が不安定化し、二度の世界大戦を起こしたのです。
・「元型的なものと旨く付き合うノウハウ」にキリスト教の洗礼があります。これは「二度生まれる」を意味し、親離れをスムーズにするための儀式です。「二度生まれる」は古代エジプトにもあり、全人類共通的=元型的なイメージです。この様に宗教は「元型的なものと旨く付き合うノウハウ」を提供しました。
・科学技術の発展で「心のあり様」も科学的に解明されつつあります。精神界と物質界の調和的統合も成されると思います。脳科学/生理学/生物学/物理学などにより、ストレス/トラウマと云った精神的なものも、科学的/論理的/物理的に捉えられるようになってきました。
b.国の借金に関する悲観論と楽観論の天下統一
・著者は「国の借金悲観論」の恩恵を受けています。2000年代初頭「国の借金」問題から『日本破綻論』が起こり、著者は「国の借金」について調べるようになり、さらに心理学/脳科学/マクロ経済を調査検討するようになりました。
・本題の「国の借金」ですが、悲観論には2つの根底があります。①借金は悪であり、危険である。②政府の支出に頼って会社を経営するのは怠惰である。
・楽観・肯定論からすると、「国の借金」が増え続けても、水/食料/エネルギー/労働力などの入手は可能です。「外貨建て借金」の問題がなく、民間部門が「借金モード」にならない限り、それは可能なのです。※民間(家計?)の貯蓄は着実に減っているらしいが。
・悲観・否定論と楽観・肯定論を統合するなら、水/食料/エネルギー/ロボットへの技術投資/教育投資に限って「国の借金」を増やすのです(技術立国国債)。
・「②政府の支出に頼るのは怠惰」ですが、「努力しなければ、お金を受け取れない」を原則にすれば問題ありません。第2章で説明した公共工事の枠組みは、そうなっています。
・以上を纏めますと、①「国の借金」は、将来不安を解消する目的の投資に限定する(技術立国国債)、②政府支出を努力・勤勉を引き出す「第三の道」的な使い方に改めるです。
c.新自由主義と社会主義の天下統一(第三の道)
・新自由主義的な「小さな政府」と社会主義的な「大きな政府」を統合する経済論を紹介します。木下栄蔵教授が提唱する「正と反の経済学」です。企業が意欲的に投資する「正の経済」(通常経済)では「小さな政府」が適していますが、企業が委縮して投資せず、貯蓄を増やす「反の経済」(恐慌経済)では「大きな政府」が適しています。
・この「正と反の経済学」も「第三の道」も、全ての経済論を肯定し、新自由主義と社会主義を調和的に統合しています。※現にこれで運用されているのでは。
-内なる家臣団モデル-
・次にあなたの70兆個の細胞を、あなたの内なる家臣団と見なします。家臣団には様々な性格の者がいますが、キーワード(※根底?)は「100%忠義」です。
・平安時代末期、源頼朝は平氏政権をあっさり倒します。これを元木泰雄教授は”褒美”の違いとしています。平氏政権は配下の武士団を朝廷の統治機構の中で働かせます。一方頼朝は、軍事的功績に応じて、所領の給与・安堵を行ったのです。
・ではあなたの家臣団には何を与えれば良いのか、「高い評価」「愛情」「感謝の気持ち」を与えれば良いのです。愛情や感謝は前頭前野を活性化し、精神の無秩序に秩序を与えます。
-森の中のクマさんモデル-
・山形県のウェブサイトに、「クマに出会った時は、クマと向き合って下さい。大声を出したり、背を向けて逃げるのは、クマを刺激して危険です」とあります。大声を出す/背を向けて逃げる/死んだふりをするは否定・抑圧です。一方向き合うのは肯定です。
・自分の心の中の”クマ”に出会った時は、「脱自動化」「脱同一化」「意識化」して、しっかり向き合って下さい。”嫌な気分”になっている事を認め、”嫌な気分”になっている部分を肯定して下さい。
-犬・猫モデル(ペットモデル)-
・ペットは可愛いものですが、思い通りにならない事もあります。しかし精一杯愛してあげましょう。ただし溺愛は抑圧になります。
-子育てモデル、保育園モデル、小学校モデル-
・子供が思い通りにならない、園児が思い通りにならない、生徒が思い通りにならない。よくある話です。基本的には100%肯定し、適度な距離を保って下さい。ただし甘やかし過ぎず、厳し過ぎずです。
・親子関係が崩れている時、子は親が最も触れて欲しくない部分を攻撃してきます。親子関係が崩れている時は、最適な距離を保つべきです。
・あなたが「内なる家臣」と調和が取れていない時も、「内なる家臣」はあなたの最も脆弱な部分(トラウマ)を攻撃してきます。この場合も、脆弱な部分を認め、肯定して下さい。それにより「脱自動化」「脱同一化」が可能になります。
○イメージトレーニング
・イメージトレーニング/イメージ訓練(Mental Practice、以下MP)は、想像の中で練習する訓練法です。MPには効果がある/ないの両方の意見があります。訓練に利用するイメージに、「客観的なイメージ」(ビデオカメラなどでの外部からのイメージ)と「主観的なイメージ」(自分の視点からのイメージ)がありますが、後者の方が効果があると分かってきました。これも「対立する両者を肯定し、新しい考えを生み出す」アプローチによります。科学はこのアプローチで発展してきたのです。
・過去の研究から、「MPよりも実地訓練(Physical Practice、以下PP)の方が効果がある。さらにMPとPPを組み合わせた方が効果がある」と分かってきました。これを式にすると、MP<PP<MP+PPです。これこそ正に、精神と物資の調和的統合です。両者が統合した時、効果が最大化するのです。
・MPに関して幾つか実験結果があります。①スキーの実験-MPとPPのグループとPPのみのグループを比較しました。MPの効果は、ボーゲンのような簡単な技能では効果があったが、シュテム・ターンのような複雑な技能では効果がなかった。
・②ゴルフの実験-100m先に7番アイアンで打ち込むMPを、「主観イメージ」と「客観イメージ」で行った。「主観イメージ」では効果があったが、「客観イメージ」では効果がなかった。
・③ダンスの実験-3つのグループに分けた。第1グループは、20分間の身体訓練のみ(PP)。第2グループは、5分間のイメージ訓練と20分間の身体訓練(MP+PP)。第3グループは、第2グループの身体訓練の間で5分間自分のビデオを見せた(MP+PP+ビデオ)。結果は、第3グループ(MP+PP+ビデオ)>第1グループ(PP)>第2グループ(MP+PP)だった。
・興味深いのは③ダンスの実験の第2グループで、イメージ訓練がストレスになったのです。従って感情コントロール/ストレス・コントロールも重要なのです。よって人の能力を最大化する公式は、MP<PP<MP+PP+EP(情動的訓練、Emotional Practice)となります。さらに宗教的信仰(Riligious Belief)を加えるべきと考えます。
○ガン治療における、精神と物資の調和的統合
・1970年代頃から米国では、ガン治療に心理療法を併用するようになりました。その治療法には以下の特徴があります。①外科手術/放射線治療と心理療法を組み合わせる。②否定的な感情を抑圧しない。③リラックス法(?)とイメージ訓練を併用する。④死生観まで言及する。
・①は前節と同じ話です。物質的なもの(外科手術、放射線治療、薬物治療)と、精神的なもの(心理療法)の調和的統合が最も効果があります。
・②は感情コントロールの話です。この治療法を行っているシーゲル医師は、「感情を抑圧してはいけない。気分が悪い時に『元気です』と答えるのは抑圧です」「病棟で評価が低い(従順でない)患者ほど免疫機能が高かった」と述べています。
・③のリラックス法は後述します。イメージ訓練は、「サイモントン療法」では、「ピグマリオン効果」(教師が生徒を優秀と信じていると、成績が上がる)/「偽薬効果」(効果がある薬と信じると、実際に効果が上がる)を紹介しています。同じ薬を医師から「よく効く新薬」として与えられたグループと、看護師から「効果の分からない新薬」として与えられたグループを比較すると、医師グループは75%が症状が好転したが、看護師グループは25%しか好転しなかった。
・シーゲル医師は、治療法を選択するのに「絵画療法」を応用しています。例えば外科手術と放射線治療が候補の場合、患者にそれらの治療法の絵を描かせます。その絵から治療法を選択します。
・④の死生観は、サイモントン夫妻もシーゲル医師も「人はいつか死ぬ」を大前提とし、肯定します。「死への恐怖」も抑圧しません。
・心理療法と医術的療法を組み合わせた「サイモントン療法」を受けた末期ガン患者は、平均余命が倍以上になりました。また「サイモントン療法」を受けると、生活の質が向上し、残された家族のショックも緩和できました。
・以上より心理療法を組み合わせる事で、①ストレス・コントロールが行われ、免疫機能が向上する、②生活の質が向上し、家族との愛情が深まるとなります。「心の内なる戦国時代の天下統一」が人生の目的とすれば、「生活の質が向上」「家族との愛情が深まる」はその目的達成に繋がります。
・「恐怖」「抑圧」などのキーワードは、個人の人生でも、マクロ経済/政治でも重要です。またイメージ訓練は医療負担/社会保障負担の軽減に繋がります。
○イメージ訓練の応用
・著者は大学の成績は悪かったのですが、大学院受験でイメージ訓練を取り入れ、学科内で2位で合格できました。”合格イメージ”を持つ事で、心理は安定し、記憶力/思考能力を高く維持できました。一方税理士試験は失敗事例になりましたが、生活の質は高く保てました。
・阪神大震災を経験し、「自己啓発本」を読むようになりました。大学院受験では旨く行きましたが、その後旨く行かなくなり、「信じ方が足りないから成功しない」と思うようになりました。しかし心理学/脳科学を勉強するようになり、それは「抑圧」であると知りました。ダンスの実験で説明しましたが、感情のコントロールが重要なのです。
○月と太陽の影響
・米国の精神科医リーバーは、4000件の殺人事件の傷害時刻と月齢の関係を調べ、それに有為な関係があったとしました。
・また著書『月の魔力』に、「先天的盲目の男性のホルモン濃度は月齢と一致した」「女性の月経サイクルは月齢と一致した」「コネティカット州のカキをイリノイ州に空輸すると、最初の1週間はコネティカット州の満潮時刻に殻を開いたが、その後正常になった」と書き、「月の重力が人体に影響を及ぼしている。もしくは重力変化による電磁場の変化(?)が人体に影響を及ぼしている」と書いています。
・この様な身体に大きな影響を与える要因が存在する事の認識は、感情コントロールを考える上で非常に重要で、「意識化」「脱同一化」「脱自動化」を容易にします。またこの様な影響は元型のように「抑圧」する事ができません。さらにこの様な影響は地球全体に及ぶので、マクロ経済/政治にも影響を及ぼします。※月がね。拡張し過ぎ。
<限界突破のための個人心理-実践編>
○否定→ストレス生成、肯定→ストレス解除
・二度の世界大戦は「個性化」できなかった事にあります。国民が感情やストレスをコントロールできるようになれば、国力は圧倒的に高まります。本章では「否定はストレスを生み、野生を呼び覚ます。肯定はストレスを解除し、理性を呼び戻す」を活用した感情コントロール法を提案します。
○感情コントロール法を開発するための基本方針
・人は一人ひとり遺伝的要因や出生後の経験が異なります。そのため「愛情」「感謝」「恐怖」などの言葉へのイメージも様々です。そのため最良の感情コントロール法は、「一人ひとりが、今の自分に最適な方法を作り上げる方法論」としました。
○ひとり心理学研究所
・1900年代初頭の草創期の心理学者は、自分の心を観察し、心を研究しました(内観法)。すなわち「ひとり心理学研究所」の設立です。皆様が所長であり、主任研究員であり、被験者です。この枠組みは個人の幸せ/能力向上のみならず、家庭/企業/国家/人間集団の幸せ/能力向上に直結します。※拡張し過ぎ。
○内なる暴れ馬を鎮める魔法の呪文
・「魔法の呪文」とは、例えば自分がイライラしている時、自分を客観視し、「それは興味深い現象だ」と言う事です。この方法で「脱同一化」「脱自動化」が簡単にできます。「自分自身」(※もっと分かり易い表現ないかな)と「情動反応」を切り離す事ができます。
○モデル化、擬人化
・前章で、天下統一モデル/内なる家臣団モデル/森の中のクマさんモデル/犬・猫モデル(ペットモデル)/子育てモデル・保育園モデル・小学校モデルを掲示しました。これらを使い、あなたの中で起こっている「反逆」を、人や動物に例えて下さい。
・例えば「大変嫌いな人がいる」場合は、「家臣団は、あいつが死ぬほど嫌いなようだ」(内なる家臣団モデル)や「私の中の猫(?)は、あいつの事を嫌いらしい」(ペットモデル)などで彼らの存在を「意識化」し、「承認」して下さい。これにより彼らは落ち着きを取り戻します。※人はそんなに情緒不安定かな。情緒不安定な人は、ごく少数では。
・著者は原稿をパソコンで書いていますが、頻繁にフリーズし、その度にイライラしました。ある時、このパソコンの状態と自分の状態が同じなのに気付きました。それ以降は、フリーズしてもニヤニヤしていられるようになりました。
○瞑想
・「脱同一化」「脱自動化」は、瞑想の研究から生まれた言葉です。近年では瞑想に関し、着実で冷静な研究が行われています。
・瞑想には「集中型」「洞察型」の2種類あります。「集中型」は1つの対象に注意を固定します。「洞察型」は精神機能の性質を洞察します(?)。後者の代表的なものに上座部仏教の「ヴィパサナ瞑想」があります。これは心理療法として導入されています。意識に上ってきた全てのものを肯定する方法で、自身の内なる事実をありのまま観察し、心の安定を得る手法です。
・神経症レベルの心理的病に、瞑想の「抑圧解除的技法」が有効です。「神経症」は持続的な心因(家庭/職場/学校での失意、経済的破綻、失恋など)により発現し、心理面だけでなく運動機能/知覚機能などに障害をもたらす疾患です。ただし「神経症」より重いレベルの傷害「精神病」には、適用すべきでないとされます。
○瞑想の応用
・著者は体が弱く、しょっちゅう頭痛/腹痛を起こしていました。「洞察型」の瞑想は、自分の中で起こっている事を、そのまま実況中継する方法です。「どうやら、お腹が痛いらしい」と中継する事で、痛さが和らぐのです。
・この方法は全てに応用できます。肩や首のコリが酷い時、「どうやら、酷くこっているらしい」。失恋や試験に落ちたりして辛い時、「どうやら、かなり辛いらしい」。寝付けない時、「どうやら寝付けないで、かなり辛いらしい」。昔のケガが痛む時、「どうやら、古傷が痛むらしい」。冷え性で足が冷える時、「どうやら、冷えるらしい」などです。※他多数紹介しているが省略。
・以上、①自我と「それ以外」を切り離す、②切り離した「それ以外」を承認する、が基本方針です。あなたの中で生じている嫌な気分/ストレスを肯定する事は、前頭前野を活性化し、偏桃体を抑制し、ストレスを軽減します。ただし病気・ケガを、この方法だけで解決しないで下さい。心理療法<医術的療法<心理療法+医術的療法です。
○散歩
・心理療法で説明したサイモントン夫妻は、「運動」がガン治療に効果がある事を報告しています。さらに以下の研究事例を紹介しています。「ガンによる死亡率は、ほとんど筋肉を動かさない人が最も高く、重労働者が最も低かった」「ネズミに摂取カロリーを制限し、運動させたグループの発ガン率は16%に低下した。一方、食事制限もなく、運動もさせなかったグループの発ガン率は88%に上がった」。
・サイモントン夫妻は、「運動はストレスの結果発生する産物を吐き出させる」としています。ストレスにより「戦闘モード」になり、それにより生産された血糖/ストレスホルモンは消費・消滅されなければなりませんが、運動がそれを行っていると考えられます。
・著者は上記のような運動として、散歩が簡便で効果的な方法と考えています。実際多くのアイデアは、家の中を歩き回っている時や散歩中に思い付いています。散歩中は、論理的思考を担当する意識系(前頭前野、海馬)と、情動反応を担当する無意識系(偏桃体など)が調和的に協働していると考えられます。
○気分を悪くするニュースへの接し方
・近年テレビの視聴率は下落傾向にあるそうです。著者は、「テレビは群集心理を映し出すモニター」と考えています。2012年衆院選挙の党首討論で、安倍総裁を「安倍総理」と呼ぶ党首が相次ぎました。これは群集心理が影響したと考えています(※意図的では)。今後もテレビ/新聞でどの様に群集心理が影響するか観察したいと思います。政治だけでなく芸能/文化/ファッションにも群集心理が反映すると考えています。
・「気分を悪くするニュース」への接し方ですが、「脱自動化」手法が有効です。「それは興味深い現象だ」「どうやら、嫌な気分になっているらしい」と言ってみてください。
○より良い気分になるための方法
-より良い気分になるための方法1-
・方法1は以下の手順になります。
①椅子に座るか、仰向けに寝て、「さっきより、少しだけ良い気分になったところを想像してみよう」と唱えます。
②少しだけ良い気分になった事を確認し、「さっきより、さらに少しだけ良い気分になったところを想像してみよう」と唱えます。
③最高に良い気分になるまで、②を繰り返します。この辺りで、多くの人は限界に達します。
④「今まで経験したことがないくらい最高の良い気分になったところを想像してみよう」と唱えます。
⑤「さらにもう一段限界を超えて、もっと良い気分になったところを想像してみよう」と唱えます。※リラックスした時、α波が出る、そんな状態かな。リラックスより肯定が上だったな。
・「良い気分」を「深い愛情」「深い感謝の気持ち」などに置き換えるのも良いでしょう。「愛情」「感謝の気持ち」は最大限の肯定で、自律神経を調和的にします。
-より良い気分になるための方法2-
・方法1は言葉が長過ぎ、また想像する作業が入るため、意識的なエネルギーをかなり消耗します。そこでフロイトの「自由連想法」と、脳科学者ルドゥーの記憶実験から方法2を開発しました。
・「自由連想法」は精神分析の重要な要素(?)で、連想した事項を自由に記述する方法です。これで連合学習した情動・感情の身体感覚の記憶を、”無理なく引っ張り出す”事ができます。
・”無理なく引っ張り出す”記憶実験があります。健忘症患者と健常者に単語のリストを見せ、その後以下の3種類の指示を出しました。①手掛かりなしで「できるだけ多くの単語を思い出せ」、②単語の最初の3文字を掲示し、「できるだけ多くの単語を思い出せ」、③単語の最初の3文字を掲示し、「最初に心に浮かんだ単語を述べよ」。
・結果、①②では健忘症患者は失敗だらけでした(※数が少ない?)。一方③では健常者と変わらないほど成功したのです(※誰でも単語の一つは出てくる)。この③「心に浮かんだ」と云うやり方は、意識系ではなく、無意識系の記憶回路が作動しているからです。
・この事から、「心に浮かんだ」(自由連想)は、無意識系の記憶回路を作動させ、無理なく、抑圧せず、情動・感情の身体感覚の記憶を引っ張り出せるのです。
・以上より、方法2は以下の手順になります。
①どんな姿勢でも構いません。「深い感動。自由に連想」と唱えます。
②「感動状態」が深まると、「もっと深い感動。自由に連想」と唱えます。これを繰り返し、「感動状態」を可能な限り深めます。※感動を連想するとは限らない。
・これを「感動した映画」「美しい景色」「親切にしてもらった事」などを視覚的にイメージしながらやると、やり易くなります。「深い感動」を「深い感謝」に変えるのも良いでしょう。著者の場合、疲れている時は「深い感謝」、元気な時は「深い感動」がしっくりきました。
○心身調和・リラックス法
・以上より統合的なリラックス法「廣宮メソッド」を考えてみました。
①全身をスキャンし、不快な箇所では「この辺りが○○らしい」と唱えます。
②再度全身をスキャンし、「この辺りが柔らかくなった状態。自由に連想」と唱えます。
③「深い感謝。自由に連想」「深い感動。自由に連想」などを唱え、感謝/感動を極限まで高めます。
④感謝/感動の気持ちが高まったところで、目標達成/願望実現のイメージ訓練を始めます。③までで肯定的感情を高めることで、イメージ訓練の効果を高めます。
・「深い感謝」「深い感動」の文言は、「○○が旨く行った時の状態」「病気が治った時の状態」などに自由に変えて下さい。大切なのは、あなたが快適になる事です。
○より科学的な思考態度
・これまで「対立物を両方とも正しいと仮定し、矛盾を解消する」(=より科学的な思考態度)を紹介してきました。これを「イライラの解消」に応用してみます。
・「対立物を両方とも正しいと仮定し、矛盾を解消する」は同じ親から生まれた「双子の兄弟」と云えます。「国の借金」問題は、誰かが赤字(借金の増加)になれば、誰かは黒字(金融資産の増加)になっています。これは正に「双子の兄弟」です。
・あなたがイライラしている時、「イライラを発生させている部分」と「本当はイライラしたくない部分」があるのです。これもあなたを親とする「双子の兄弟」です。よって「イライラする事は100%正しい。しかしイライラしたくないと思っている事も100%正しい」のです。※よく分からない。
・恐怖は生命を保全するための危険回避システムです。「病気を怖がるのは100%正しいし、病気を治したいと願っている事も100%正しい」のです。
○泥沼にはまらない恋愛論
・多くの人が「人を好きになり、心が不安定化した」経験をします。相手の言葉/仕草に一喜一憂します。
・これは発展途上国の経済や群集心理と同じで、元型です。とにかく一緒にいたい(結合の元型)/どんな犠牲も厭わない(英雄の元型)/この人を救えるのは自分だけ(救世主の元型)/その人が意に沿わない行動をすると攻撃的になる(異質に対する攻撃性)などです。
・心が不安定になっているのは、強烈なストレスにより、前頭前野が機能低下し、偏桃体が活性化し、原始人的になっているからです。
・もし本当に相性が良い人であれば、心が不安定になる事はありません。そんな時は「どうやら、私の心は分断されているらしい」「好きだと云う気持ちも、嫌いだと云う気持ちも100%正しい」と唱え、「脱自動化」「脱同一化」して下さい。そして分断された「大衆化」の状態を、調和的に統合された「個性化」の状態に持って行って下さい。
○不遇の時代が長く続く時
・「苦し状況」は恋愛に限りません。信頼していた人から裏切られた時、長年勤めた会社を去る時、努力しても何年も絶望的な状況など様々です。
・徳川家康は織田/今川の人質になり、三河一向一揆で多くの家臣に背かれ、信長からは長男/正妻の殺害を強要されます。しかし数十年の不遇の後、天下人になります。
・この様に長期の不遇の時代を耐え忍ばなければならない事もあります。そんな時は本章で紹介した「脱自動化」「脱同一化」「個性化」の方法論を活用し、少しでも軽やかに過ごして下さい。無理なく、抑圧なく、自然な形で軽やかに過ごせば、十分な能力を発揮でき、環境の打開も可能です。
<おわりに 科学的である=徳を積む>
・宮城谷昌光の作品に「才覚でつかむ成功は真の成功ではない。徳を積め」とあります。「徳を積む」は「より科学的な思考態度」と密接な関係があります。
・漢和辞典で「徳」を引くと、「古代には神を知る能力、ついで力の意になった」とあります。「神を知る能力」は完全に調和が取れた状態で、その人の「力」が最大限に引き出せる状態です。
・中国の古典『老子』で「徳」について書かれており、一句ずつ解説します。
「その雄を知りて、その雌を守れば、天下の谿となる」-「雄」は男性的なもので「意識」「論理的思考」です。「雌」は女性的なもので「無意識」「感情」です。「天下の谿」は「全てを収容する器」です。
「天下の谿となれば、常の徳は離れず、嬰児に復帰す」-徳の備わった状態/嬰児は、完璧にバランスの取れた状態です。
「その白きを知りて、その黒きを守れば、天下の式(のり)となる。天下の式となれば、常の徳は忒(たが)わず、無極に復帰す」-「白」(善)と「黒」(悪)を治めれば、天下の模範となる。天下の模範となれば、「無極」(偏りのない状態)になる。どんな人にも善と悪があり、その両方を治める事が重要です。悪を「自己の利益」、善を「他者の利益」とすれば、その両方を最大化させるのが最適解です。
「その栄を知りて、その辱を守れば、天下の谷となる。天下の谷となれば、常の徳は乃ち足り、樸に復帰す」-「栄」(優越感)と「辱」(劣等感)を治めれば、「全てを収容する器」になり、「樸」(無垢の木、完璧にバランスの取れた状態)になる。
・『老子』の「徳」は、「雄と雌」「白と黒」「栄と辱」の正反対の概念の両方を治めた状態です。これは「より科学的な思考態度」に通じ、矛盾する両者を肯定し、両者を統合するアプローチです。※本書では出なかったが、中庸と云う言葉がある。
・本書で、「国土強靭派とリフレ派」「資本主義と社会主義」「国の借金の大丈夫派とだめ派」「イメージ訓練の効果の有無」「ガン治療での物理療法と心理療法」「心の内なる対立物の安定を図る方法論」などを書いてきました。これらは「徳を積む」ためのものです。またこの概念は、自分の考えと矛盾する考えを、あえて引っ張り出し、強制的に視野を広げる応用もできます。
・以上のように、「徳を積む」は幅広い概念で、「徳の元型」と云えます。
・ユング自身、「徳の元型」により限界を突破した経験があります。彼の患者に、ジャワで原住民に育てられた女性がいました。彼女は性的に乱れており、「バビロンの偉大な売春婦」と呼ばれていました。ある時彼は、高い丘にある城の高い塔に、優雅な婦人が座っているのを夢で見ます。それは彼女でした。彼女を見下していた事に気付き、翌日夢の内容と今までの誤った態度を彼女に話します。これにより彼女の治療は完成します。
・本書は「徳の元型」について書いたものです。皆様が「徳の元型」を活かし、個人レベル/家庭レベル/会社レベルで限界を突破する事を期待します。それは国家レベル/人類レベルの繁栄に繋がります。