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『石油業界の動向とカラクリ』芥田知至(2008年)を読書。

以前から知りたかった産業なので、本書を選択。
エネルギーの多様化や経済低迷で石油業界も厳しそう。

広く浅く解説しているので、詳細は解説されていない。
またリーマンショック直前の古い本なので、情報が古い。特にシェールオイル/シェールガスの記述がない。
中盤までは面白かったが、解説範囲が広すぎて、後半はダレた。

お勧め度:☆☆(概要は十分理解できる)
内容:☆☆(税制/商品取引まで解説)

キーワード:<石油、石油産業とは>エネルギー、非在来型石油資源、<石油の歴史>ジョン・D・ロックフェラー/スタンダード・オイル、イラク石油会社/赤線協定、セブン・シスターズ、アラムコ、石油輸出国機構(OPEC)、石油危機、イラン革命、逆オイルショック、<石油の日本史>日本石油/宝田石油/ライジングサン石油、原油輸入、戦時統制、石油業法、狂乱物価、特定石油製品輸入暫定措置法、代替エネルギー、原油価格、<日本の石油業界>元売、石油開発会社/石油精製会社/石油販売会社、石油需要、<日本の石油企業>新日本石油、出光興産、昭和シェル石油、ジャパンエナジー、コスモ石油、三井石油、エクソンモービル、東燃ゼネラル、国際石油開発帝石、AOCホールディングス、<石油業界のポイント>アジアプレミアム、WTI/ドバイ原油、仕切価格/業転、コモディティ、バイオ燃料/バイオエタノール/バイオディーゼル、<石油業界と関連の深い業種>ガソリンスタンド、石油化学工業/ナフサ、合成樹脂/合成ゴム/合成繊維、石油開発会社、ガス/電力、商品取引所、<税金・規則の基礎知識>石油石炭税、揮発油税・地方道路税/軽油引取税/石油ガス税/航空機燃料税、エネルギー政策基本法、石油備蓄法、品確法、独占禁止法、PL法、<もっと石油を知ろう>バレル/ガロン、サワー/スイート、ライト/ヘビー/API度、石油精製/炭化水素、天然ガス/石油ガス、ガソリン/灯油/軽油、重油/潤滑油/アスファルト、BTX類/オレフィン/高分子化合物、揮発油/ナフサ、<世界の石油企業>スーパー・メジャーズ、サウジ・アラムコ/イラン国営石油会社、ロスネフチ/ガスプロム、中国石油/中国石化/中国海洋石油、メキシコ/ベネズエラ/ブラジル、<原油価格高騰の影響>ガソリン価格、燃油サーチャージ、電力価格、LNG/LPG、<原油価格高騰の背景>市場原理、油田開発/製油能力、新興国、物価上昇、<主要産油国と地政学>テロとの戦い、イラク、イラン、ナイジェリア、ベネズエラ、<市場とマネーと石油>先物取引、オイル・マネー、原油高、投機、<未来への対応>環境問題、地球温暖化/温室効果ガス、京都メカニズム、代替エネルギー、水素電池、コージェネレーション

<第1章 石油、石油産業とは>
○石油とは
・石油は、原油/ガソリン/灯油などの総称です。またガソリンなどは原油から作られる石油製品です。石油は化学的には炭化水素です。石油は燃え易く、熱エネルギーになります。これを運動エネルギー/電気エネルギーに変換できます。
・石油/石炭/天然ガスは化石燃料です。これらは有限な資源です。また燃焼させると二酸化炭素と水になり、地球を温暖化します。石油から合成樹脂(プラスチック)/合成ゴム/合成繊維などの原材料が作られます。石油は液体なので、利用し易くなっています。

○石油産業とは
・石油産業は大きく分けると、上流部門/下流部門に分かれます。上流部門には、探鉱・採掘を行う企業が入ります。海底油田に達するリグは1機で数百億円します。油田探しは山師と云えます。
・油田の採掘は欧米の企業が強力ですが、最近は中東/中国/インド/ブラジルなどの企業も行っています。

・下流部門には、原油を精製する企業と石油製品を販売する企業が入ります。日本の大手石油会社はこの精製を行っています。しかし世界的には、エクソン・モービル/シェルなど上下部門を運営する企業が多くあります。

○石油はどこに
・石油は生物の死骸とされています。そのため大陸移動により沈下した「堆積盆地」で生成されます。世界に600個の堆積盆地があり、その30%で油田・ガス田が発見されています。
・油田の7割が深度1K~3Kmで、中生代の地層です。その多くは中東/西シベリア/メキシコ湾にあります。埋蔵量としては、サウジアラビア/イラン/イラクの順です。

○石油は枯渇する?
・ある経済学者は「石油が貴重になると、高価になるので、枯渇しない」と言っています(※面白い考え)。一般的に「40年説」があります。これは確認埋蔵量(1.2兆バレル)を年間消費量で割ったものです。ただしまだ発見されていないものを含めると、2.3兆バレルあるとされます(究極可採埋蔵量)。

・ここで注目されるのが「非在来型石油資源」です。具体的にはカナダの「オイルサンド」、ベネズエラの超重質油「オリノコ・タール」、米国の「オイルシェール」などで、それぞれ1兆バレル/2兆バレル/3兆バレルあるとされます。※凄い量だな。

○コラム-金属/石油の共通点・相違点
・鉄は加工し易く、強度があります。またアルミニウム・銅など、それぞれ特徴があります。また金属は合金にできます。また回収・リサイクルも容易です。
・石油は液体で輸送・保管に便利です。石油は燃え易く、燃料になります。ただし燃やすと二酸化炭素と水になり、リサイクルは困難です。金属の需要は景気で変動しますが、石油の需要は安定しています。※「石油の需要は安定」か。ならば備蓄も計算できるな。

<第2章 石油の歴史>
○石油産業は米国で始まる
・1859年米国ペンシルベニア州タイタスビルで、探鉱・採掘・精製が始まります。ここで「鋼式機械掘り」で採掘が行われます。当時の用途は灯油でした。※そう言えば西洋人は、大西洋のクジラを絶滅させた。

・1862年「ジョン・D・ロックフェラー」が、巨大財閥となる石油産業への投資を始めます。1880年代になると、その独占が非難されるようになります。1911年その「スタンダード・オイル」が34社に分割されます。※第1次世界大戦の前だな。
・一方世界でも石油会社が誕生します。ノーベル兄弟とロスチャイルドは「シェル」を誕生させます。またロシアの生産量は米国と並ぶようになります。19世紀末「ロイヤル・ダッチ」が誕生し、オランダ領東インド(インドネシア)の油田を開発します(※今はロイヤル・ダッチ・シェルだな)。1908年中東のイランで、英国人により「BP」の前身が誕生します。

○セブン・シスターズ(七人の魔女)
・20世紀になると、石油は自動車・航空機の燃料として使われるようになります。1911年フォード社は、自動車の量産を始めます。英米はかつてはドイツの影響下にあったイラクの石油に関心を持ちます(※第1次世界大戦後、英国とオスマンが、イラクを巡ってゴタゴタしている)。米国は第1次世界大戦で連合国に石油を供給し、枯渇の問題があった。※この頃から枯渇問題があったのか。
・1928年シェル/BP/エクソン(※スタンダード石油ニュージャージーが前身)/モービル(※スタンダード石油ニューヨークが前身)/フランス国営石油会社が、「イラク石油会社」(IPC)を設立し、イラクの石油問題は解決します(※世界恐慌直前だな)。この会社はサウジアラビア/アラブ首長国連邦での事業も共同で行い、世界的競争を回避しました(赤線協定)。※何で赤線なのか。

・1917年ロシア革命によりバクー油田は国有化されます。世界で石油の販売競争が起き、価格が下落します。※さっきは枯渇問題が起きたとあったのに。
・1928年エクソン/BP/シェルは、世界の石油資源を3社で分割する「アクナキャリー協定」を結びます。後にこれに米国企業のテキサコ/ガルフ/モービル/アトランティックが加わり、「セブン・シスターズ」(七人の魔女)となります。

○サウジ油田の発見
・1938年ソーカル(現シェブロン、※スタンダード石油カリフォルニアが前身)がサウジアラビアで大油田を発見します。そして「アラムコ」が設立され、サウジでの事業を一手に担います。アラムコにテキサコ/エクソン/モービルも加わり、米国4社の運営になります。

・第2次世界大戦でも米国は連合国に石油を供給し、枯渇問題になり、1945年米国とサウジアラビアは協定を結びます。しかし産油国では、国際石油資本に利益が集中する事に不満がありました。1948年ベネズエラ政府は、50%の採掘権料を得る事に成功します。サウジ政府も追随します。現在では産油国が90%以上を取得しています。
※油田は国が保有し、採掘権を民間が入札する仕組みと思っていた。逆かな。後、権益とは採掘権の事かな。
・中東では欧米への不満が高まり、エジプトのナセルは親英政権を倒し、スエズ運河の統制権を握ります。

・産油国は「公示価格」に基づいて支払うよう、国際石油資本に求めました。しかしその公示価格はセブン・シスターズが決めていました。※これは採掘権料の事?
・1980年アラムコは国有化され、1988年全資産を引き継ぎ、「サウジ・アラムコ」となります。1990年代サウジは世界最大の産油国になります。

○石油危機
・1950年代ソ連はボルガ・ウラル油田(※ポルガとなっていたが、ボルガに変更)の開発が進み、共産圏の需要を上回ります。これが西側にも流れ、原油価格は下落します。1959年セブン・シスターズは、産油国に支払う「採掘料」の基準となる公示価格を引き下げますが、産油国の不満を高めます(※採掘権料も理解していないのに、採掘料が出てきた)。1960年サウジアラビア/ベネズエラが主導し、「石油輸出国機構」(OPEC)が設立されます。
・1968年イラクでクーデターによりサダム・フセイン政権が誕生します。1969年リビアではカダフィが政権を掌握します。リビア/アルジェリア/イラクの石油産業が国有化されます。アブダビ(※アラブ首長国連邦の首長国)/クウェート/カタールは採掘権料の引き上げに成功します。※ここは採掘権料になってる。

・1973年アラブ諸国とイスラエルが「第4次中東戦争」を起こします。OPECは70%の値上げを通告します。さらに「アラブ石油輸出国機構」(OAPEC)は、「イスラエルがパレスチナから撤退するまで、毎月5%減産する」と発表します。
・それでも米国がイスラエルを支援したため、サウジは米国への石油輸出を止めます。1974年OPECは石油価格を2倍に引上げ、原油価格は3ドルから11.65ドルに跳ね上がります。※石油価格と原油価格の違いは。
・こうして「第1次石油危機」は起きます。石油価格は国際石油資本に代わり、OPECが決するようになります。※原油価格には、WTI/北海ブレント原油/ドバイ原油スポット価格などがあるが、全てが連動して高騰かな。

・原油価格の高騰で恩恵を受けたのはソ連です。チュメニ油田の生産は拡大し、1970年代後半に世界第1位の産油国になります。※それなのに崩壊した?

○第2次石油危機
・1979年「イラン革命」が起き、米国に依存するパーレビ国王体制は打倒され、ホメイニ師が指導するイスラム政権に替わります。イランの減産で、石油不足が懸念されます。1978年OPECは4段階の値上げを決定していましたが、イランの情勢に伴い、値上げを繰り上げます。しかし1979年のカラカス総会では価格決定できませんでした。その後も原油価格は上昇し、40ドル/バレルを越えます。※産油国が力を持った事で、3ドルが40ドルになった。

○逆オイルショック
・1982年OPECは原油の生産枠を決めますが、それは守られず、供給過剰になります。またイランの国連制裁も解かれたため、その輸出も始まります。さらに北海やメキシコの油田開発も進みます。また先進国は、自動車の燃費向上/住宅の断熱/原子力エネルギーなど、脱石油に取り組みます。
・1985年サウジアラビアは需給のアンバランスを調整する役割をしていましたが、政府販売価格(GSP)方式を放棄し、ネットバック方式(※後述)に転換します。これにより原油価格は下落します。

・こうした経緯により原油価格は市場取引で決定されるようになり、OPECは生産量を調整する「生産量カルテル」に変質します。原油価格は10ドル/バレルを切り、ソ連は財政状況を悪化させます。また石油メジャーも経営を悪化させ、投資が停滞します。※結局、市場原理になったんだ。安心した。

○コラム-寡占は悪いか?
・OPECは原油市場の4割を占め、一定の影響力を持ちます。しかし安定供給が行われるのは、好ましい事です。また欧米の石油資本ほど、影響力は強くありません。
・その中でサウジアラビアは生産量の調整を行ってきました。また近年ではブラジル/マレーシア/中国が力を付け、競争は激しくなっています。また今後は代替エネルギーとの競争も促されます。

<第3章 石油の日本史>
○日本の石油産業の始まり
・古書に、「天智天皇に、燃ゆる土・燃ゆる水が献上された」とあります。近代的には、江戸末期の開港により、石油ランプが使われるようになり、かなり普及します。

・1888年「日本石油」が設立され、日本の石油産業が始まります(※日清戦争前だな)。当社は新潟県尼瀬海底油田の開発などに成功します。一方「宝田石油」も合併・吸収により、事業を拡大します。
・外資では、1900年スタンダード・オイルが直江津に製油所を建設します。またサミュエル商会(ロイヤル・ダッチ・シェル)が、1900年「ライジングサン石油」を設立し、1909年福岡県西戸崎に製油所を建設します。この4社による価格競争が起きますが、1910年4社協定が成立します。

○採掘から精製へ
・1910年頃から電灯が普及し、灯火の用途は減少します。一方で漁船の軽油や、自動車のガソリンの需要が増加します。また重化学工業でも機械の動力として必要になります。また軍艦も燃料が石油(※石炭では?)から重油に替わります。すなわち石油の用途は、灯火用から動力用に変わります。

・国内の原油生産量は、1915年48万キロリットルでしたが以降減少し、輸入に転じます。
・日本石油と宝田石油は統合し、日本石油になります。神奈川鶴見に製油所を造り、輸入原油の精製を始めます。「旭石油」は西戸崎の製油所を賃借して、輸入原油の精製を始めます。「小倉石油」は横浜で、「三菱石油」は川崎で輸入原油の精製を始めます。

○戦時統制
・1931年「満州事変」が起き、戦時統制に向かいます。1934年「石油業法」が施行され、石油製品の国内での精製、国内備蓄などが強化されます。この時、丸善石油(コスモス石油)/東洋商工(興亜石油)が駆け込みで設立されます。1937年石油製品は「富士桜印」に統一されます。※灯油缶のキャップが「富士桜印」だったかな。

・1941年米国・英国・オランダが日本への石油輸出を禁止します。日本の自動車は代用燃料(石炭、木炭、天然ガス)を使うようになり、灯油・軽油も切符制になります。※切符制は配給制の1つかな。
・1941年12月日本は「太平洋戦争」に踏み切ります。日本はボルネオ/スマトラを占領し、原油の輸送を開始しますが、間もなく制海権を奪われ、補給路を断たれます。また国内の製油所も2/3が被曝します。

○戦後復興期
・占領期、日本のあらゆる産業は非軍事化されます。1949年「ノエル報告」により、製油所が再開されます。1952年石油製品は自由販売になります。この再開に外資が導入され、中東原油による消費地精製方式が導入されます(※朝鮮特需の頃だな)。また石油の優位性から、石炭から石油への「流体革命」が起きます。※これは米国の指示で、炭鉱で大規模な労働争議が起きた。

・当時の日本は外貨が不足しており、石油の輸入に外貨が優先的に割り当てられます(※外貨不足は幕末からの問題かな)。1962年「石油業法」が制定されます(※また石油業法か)。その内容は、①精製業の許可制、②輸入・販売業の届出制、③生産・輸入量の届出制、④石油製品販売価格の標準価格の設定です。

○石油危機と狂乱物価
・1973年「第1次石油危機」で「狂乱物価」になります。電力を多く使う紙の値段が上がるとされ、店頭からトイレットペーパーがなくなります。※理由はあったんだ。コロナは影響なさそうだ。
・この経験から、石油需給適正化法/国民生活安定緊急措置法/石油備蓄法が制定されます。これにより、1979年「第2次石油危機」では物価上昇が抑制されます。

○規制緩和
・「第2次石油危機」後の1983年、自由化・国際化に対応すべく、経済での規制緩和が進められ、石油産業もその対象になります。
・1986年「特定石油製品輸入暫定措置法」(特石法)が制定されます。これはガソリン・灯油・軽油の輸入を許可した会社に限定する法律でしたが、自由化の前段階でした。その後、ガソリン生産枠指導の廃止、灯油在庫指導の廃止、ガソリンスタンド(※以下GS)建設指導の廃止、精製設備許可の弾力化(※以下省略)などの第1段階の「規制緩和」が行われます。

・1996年特石法は10年の時限立法だったため、廃止と共に第2段階の「規制緩和」が行われます。さらに「品質確保法」が制定され、石油備蓄法が改正されます。その後、石油製品輸出の自由化、セルフ式GSの解禁なども行われます。

○競争激化
・1980年代以降、石油産業は規制緩和・自由化されました。そんな中で国際競争に巻き込まれています。また「バイオ燃料」などの「代替エネルギー」との競争も加わります。
・GSの競争は激しく、利益が少なくなっており、他社の顧客を奪うしかない状況です。石油精製は装置産業なので、稼働率を高める必要があります。それには規模の拡大が有効です。

○コラム-なぜ原油高は注目される
・市況商品(コモディティ)で最も規模が大きいのが原油です。GDPにおいても、原油の消費金額は4~5%で、突出しています(鉄鋼1%、銅/アルミニウム/小麦/トウモロコシ/大豆0.2%)。
・原油価格が上昇すると、エネルギー全般の価格は上昇し、金属製錬のコストも上昇します。穀物をバイオ燃料として利用しているため、原油価格は穀物価格にも影響します。

<第4章 日本の石油業界>
○石油業界の規模
・総務省の産業分類で石油業は、①原油・天然ガス鉱業、②石油製品・石炭製品製造業、③燃料小売業です。①は油田開発、②は石油精製・元売、③はGSなどです。
・総務省の調査では、会社は6.2万社で、44万人が働いており、化学工業/銀行業に匹敵します(※1社7人程度か)。また総合商社/電力会社/ガス会社/運送会社/石油化学工業にも石油部門はあります。※鉄鋼業にも石油部門はありそう。

○元売とは
・日本の石油業界は「元売」が中心です。これは石油製品の1次卸売業と云えます。つまり自社の製油所や提携した精製会社から石油製品を仕入れ、特約店/給油所/大口企業などに販売しています。普通、石油開発会社/輸送会社/精製会社/物流会社などを資本支配下に置いています。

・「石油連盟」には19社が加入しており、新日本石油(※JXTGエネルギー)/エクソンモービル(※JXTGエネルギーかな)/昭和シェル石油(※出光興産)/出光興産/コスモ石油/ジャパンエナジー(※JXTGエネルギー)/東燃ゼネラル石油(※JXTGエネルギー)/太陽石油/三井石油(※JXTGエネルギーかな)/九州石油(※JXTGエネルギー)の10社が大手です。エクソンモービル/昭和シェル石油/東燃ゼネラル石油が外資系元売、残り7社が民族系元売です。
・また新日本石油・コスモ石油、エクソンモービル、ジャパンエナジー・昭和シェル石油、出光興産の4グループに分かれます。新日本石油と出光興産は連携を深めています。
※現在は、JXTGエネルギー/出光興産/コスモ石油/太陽石油の4社が残存。しかもJXTGエネルギー・コスモ石油グループと出光興産が連携しているのかな。1社独占では。

○石油関連業界
・石油業界は上流部門/下流部門に分かれます。上流部門は原油の生産までで、それ以降の原油の輸送/原油の精製などは下流部門になります。日本では上流部門の会社を、「石油開発会社」と呼んでいます。
・「石油開発会社」には、それを専門とする「石油資源開発」「国際石油開発帝石ホールディングス」と、石油会社系/総合商社系があります。日本の輸入の1割を占めます。

・石油蒸留設備(150キロリットル/日)を持つ会社が「石油精製会社」です。普通、石油精製会社は元売会社と提携しています。「石油販売会社」には、2次卸売する特約店と、GSなどの販売店があります。

○収益動向
・石油企業の収益は、原油市況に連動します。多くの企業は原油を輸入しているので、原油高は原材料高になります。しかし在庫の評価も上がるので差益となります。「保有する安い原油から石油製品を作る」とも解釈されます。※在庫の「先入先出法」かな。
・しかし原油高は需要減を招きます。現にガソリンは、2005年をピークに需要が減少しています。中長期的に見ても、人口減少/自動車の低燃費化/省エネルギー/代替エネルギーなどにより、石油需要は減少期に入りました。※経済縮小以上に縮小するのか。

○経営改善
・精製能力は、2000年535万バレル/日から、2007年483万バレル/日に1割減少しています。従業員数も2006年2万人を切り、10年で半減しました。※どの産業も厳しいな。
・各社は業務提携し、規模の経済性を高めようとしています。また代替エネルギーを扱ったり、潤滑油や有機ELの素材などの開発にも力を入れています。

○コラム-イスラム金融
・イスラムでは「利息」が禁止されています。そのため「ムラバハ」「イスティスナ」「ムシャラカ」「ムダラバ」などの方法が使われます(※それそれ説明があるが省略)。近年では欧米や日本の金融機関も「イスラム金融」を行っています。それはイスラム圏の経済が活発なためです。

<第5章 日本の石油企業>
○新日本石油 ※JXTGエネルギー
・日本最大の石油会社で、油田開発/石油精製/石油製品販売を世界で行っています。1999年日本石油と三菱石油が合併し、2008年九州石油を統合しています。石油需要の減少から、総合エネルギー企業を目指しています。

・石油製品の輸出も行っています。石油精製と石油化学の一体化も進めています。
・パプアニューギニアでの油田開発、カナダでのオイルサンド、北海油田などを開発しています。
・新エネルギーでは、燃料電池でジャパンエナジー/コスモ石油と提携しています。LNGではGTL(天然ガスの液体燃料化)の研究を行っています(※常温での液体化かな)。バイオマス燃料のETBE(?)を共同輸入しています。

○出光興産
・「人間尊重」が経営理念です。石油精製と石油化学の統合を他社と共同で行っています。※この他社は、同系列の他社?同業他社?
・石油製品・石油化学製品の新素材を開発しています。潤滑油事業を展開しています。アダマンタン(?)は感光性樹脂として需要増が望まれます。有機ELも同様です。
・北海油田/ベトナムで油田を開発しています。オーストラリアでは石炭、カナダではウランを開発しています。

○昭和シェル石油 ※出光興産
・1985年昭和石油とシェル石油が合併しました。現在の出資比率は、一般50%、シェル・グループ35%、サウジ・アラムコ15%です。経済性の高い原油を輸入しています。
・石油製品販売では、サービスステーション(※以下SS)でガソリン/軽油/LPガスなどを販売し、自動車修理/車検などを行っています。製造業/電力/ガス/輸送業/土木建築業/漁業などにも販売しています。
・太陽電池/水素電池などの開発・販売も行っています。

○ジャパンエナジー ※JXTGエネルギー
・1992年日本鉱業の石油部門と共同石油が合併しました(※石油と石油?)。新日鉱グループの中核企業で、エネルギー分野では当社、金属分野では日鉱金属がコアです。
・新潟のガス田、アブダビ/中国/パプアニューギニアの油田を開発しました。重質原油の精製に競争力があります。
・潤滑油では、車両用/電気絶縁油/冷蔵庫用などを提供しています。ポリエステル繊維/ナイロン/洗剤・香料などの原料や、工業用洗浄剤/環境対応型溶剤(?)なども提供しています。※化学メーカーだな。

○コスモ石油
・1986年丸善石油/大協石油/コスモ石油が合併します。千葉・四日市・堺・坂出に製油所を持ちます。1999年精製・物流で新日本石油と提携します。2007年アブダビの「国際石油投資公社」(IPIC)が筆頭株主になり、業務提携を結んでいます。
・国内にSSが4,600あり、車検やカーケア用品を販売しています。石油製品は海外でも販売しています。アブダビ/カタールで油田を開発しています。

○三井石油 ※JXTGエネルギー
・三井物産と協力し、世界から原油を調達し、極東石油工業の千葉製油所に送っています。極東石油工業には、三井石油とエクソンモービルが半分づつ出資しています。石油製品は隣接する三井化学/東レにパイプラインで送られています。
・全国で300のSSを持ちます。一般企業にも重油などを販売しています。

○エクソンモービル・ジャパングループ ※JXTGエネルギー
・エクソンモービル・ジャパングループは、エクソンモービルの100%子会社のエクソンモービル有限会社や、東燃ゼネラル石油/東燃化学/極東石油などからなります。エッソ/モービル/ゼネラルのブランドを持ちます。製油所は4つ、SSは5,055持ちます。
・世界から原油を輸入し、石油製品/石油化学製品を生産しています。潤滑油でトヨタと50年以上も共同開発しています。※潤滑油の話が多いな。潤滑油は燃焼させないので消費量は多くないと思うが、種類が多いかな。

○東燃ゼネラル ※JXTGエネルギー
・2000年東燃とゼネラル石油が合併しました。東燃は航空機燃料などの石油精製が中心で、ゼネラル石油は三井物産系の会社でした。石油化学の東燃石油化学は子会社です。
・当社のブランドは「ゼネラル」ですが、「エッソ」「モービル」とも共通の販売戦略を持ちます。エクソンモービルの世界的ネットワークを利用し、石油製品・半製品の交換を行ています。
・基礎化学製品(オレフィン、芳香族)や特殊製品(微多孔膜、中間体製品、接着剤原料、特殊ポリエチレン)などを製造しています。

○国際石油開発帝石ホールディングス
・2006年インドネシアでの開発を中心とする国際石油開発と、国内での開発を出発点とする帝国石油が経営統合します。世界で60以上のプロジェクトを持つ石油開発会社になります。資産は海外の油田・ガス田や国内の天然ガスです。原油・コンデンセート(?)・ガスの生産量は41.8万バレル/日です。
・石油・天然ガス開発はリスクが高く、活動地域/契約形態/作業ステージ/原油と天然ガスのバランスが重要です。統合により安定性が増しました。アゼルバイジャン/カザフスタンの油田、オーストラリアのガス田が立ち上がり、国際的にも準メジャーになります。

○AOCホールディングス ※富士石油
・アラビア石油は、サウジアラビア/クウェートでカフジ油田/フート油田を発見した先駆的な開発会社です。2000年サウジでの利権は失効しますが、クウェートでの利権は継続しています。他にメキシコ湾/北海/中国に開発案件を持ちます。2007年の原油販売量は10.4万バレルでした。※日本の原油輸入量は16億バレル/年(440万バレル/日)だけど。
・富士石油は石油精製を行う中核企業です。千葉県袖ケ浦の製油所で19.2万バレル/日を精油しています。1994年設立されたペトロプログレスは、東南アジアで原油・石油製品の調達・販売を行ています。

○コラム-財閥と資源
・多くの財閥は、資源ビジネスの成功から始まっています。しかしそれは簡単ではありません。資源は個人ではなく、多くの人が必要とするものです。アルミニウム/石油/ウランなど皆そうです。
・資源の供給側は、規模の拡大によるコストの削減が容易なため、企業の合併・買収が繰り返されています(※多くの業種で寡占が進んでいると思う)。これは供給の安定性・信頼性になりますが、独占禁止法の問題になる場合もあります。※JXTGエネルギーの市場占有率は相当高いのでは。

<第6章 石油業界のポイント>
○原油輸入
・原油は油田から港湾施設までパイプラインで輸送され、タンカーで日本に運ばれます。中東だと航海日数は1ヵ月程度になります。タンカーにはULCC/VLCCなどがあります。荷動きが活発になると、運賃も上昇します。
・北米には域内や中南米の原油があり、欧州には北海やロシアの原油があります。アジアには油田が少ないため、価格に「アジアプレミアム」が加算されています。※インドネシアでは力不足かな。

○WTI
・原油の「指標銘柄」となっているのが「WTI」(West Texas Intermediate)です。米国テキサス州で産出される原油ですが、現在は40万バレル/日しかありません。それでも原油の指標銘柄となっているのは、「ニューヨーク・マーカンタイル取引所」(NYMEX)に「Light Sweet Oil」の先物が上場されているためです。※よく分からない。
・他に北海原油の指標銘柄に「ブレント」、中東原油の指標銘柄に「ドバイ」があります。※アブダビとドバイは、それぞれどんな特徴があるのか。

○中東原油
・日本は原油の8割を中東から輸入しています。それは産油国の国営会社と直接取引(DD取引)によります。この取引には転売の禁止などの条項が付けられています。ところが「ドバイ原油」は15万バレル/日ですが、取引の自由度が高いため、指標価格になっています。※原油取引は長期契約が多いと聞いた事がある。後、スポット価格とは何だろう。
・ややこしい話になりますが、「価格」にもクオリティがあります。取引の量・頻度が少ないと信頼性が下がります。そのため「オマーン原油」も指標価格の参考にされます。東京工業品取引所(TOCOM)に「中東産原油」が上場されていますが、これは「ドバイ原油」と「オマーン原油」の平均値です。

○業転価格
・元売会社が特約店などに卸す価格を「仕切価格」と呼びます。GSは小売価格と仕切価格の差がマージンになります。発電用の重油、石油化学用のナフサ、運輸会社の燃料などは元売会社が直接販売しています(インタンク方式)。
・石油製品は「連産品」のため、必要な製品を必要な分だけ作るのは困難です。そのため業者間の転売を行っています(業転)。これが「業転価格」です。しかし「業転」は市況を崩すため、悪いものとされます。

○コモディティとしての石油
・原油などの「1次産品」を「コモディティ」と呼びます。コモディティは、品質・機能・形状などが標準化・共通化されています(※JISとかあるけど、もっと括りが大きいか)。そのため交換・代替が容易で、商品取引所で取引されます。コモディティには、原油・ガソリン・天然ガスなどのエネルギー関連や、金・プラチナ・銅・ニッケルなどの金属や、トウモロコシ・大豆・小麦などの穀物があります。※米は品質のバラツキがあるけど。

・パソコン・テレビ・自動車などもコモディティと呼ばれます。コモディティは差別化が難しく、利益率が低下します。※左記製品の仕様には、バラツキがあると思うが。
・ガス・電気・水道・郵便・鉄道・銀行などは必需性・公共性が高い事業です。これらの事業は国家が関与するケースが多いのですが、石油は米国で民間が始めたため、企業により営まれています。かつてはスタンダード・オイルやセブン・シスターズなどが、莫大な利益を上げてきました。
※国営も多いけど。各種事業が公共サービスになったのに、それらの根源である石油が国営化されなかったのは不思議だな。

○バイオガソリン
・各国がバイオ燃料を促進しています。ブラジルではサトウキビから、米国ではトウモロコシから「バイオエタノール」が生産されています。欧州/米国では、廃油などから軽油に近い「バイオディーゼル」が作られています。※日本では余り聞かないが、穀物も輸入になるからかな。
・2007年日本でも「バイオガソリン」の販売が始まりました。ブラジル/米国のエタノール(※バイオエタノール?)は、直接ガソリンに混入しますが、日本は欧州と同様に、エタノールからETBEを合成し、ガソリンに混入しています。※ETBEって何だ?ETBEにすると良い事があるのかな。
・しかし「バイオ燃料」の過熱は、メキシコの主食「トルティーヤ」や中国の豚の飼料を高騰させ、問題になっています。日本では廃材・木屑からバイオ燃料を作る技術開発が進められています。

○コラム-日本経済の苦境
・2000年代は30年ぶりの高成長期です。新興国の高度成長は、1次産品の価格を上昇させますが、新興国が安い工業品を供給するため、インフレになりませんでした。※出版直後にリーマンショックで経済は失墜。
・しかし製造業の比重が高い日本は、原材料価格の上昇と、製造業製品の先進国・新興国との価格競争で苦しい状況です。原油価格は20ドル/バレルから、100ドル/バレルに上昇しています(※円高もあったはず)。しかし原油価格が上昇すれば、高燃費の日本車はもっと高く評価されても良いはずです。

<第7章 石油業界と関連の深い業種>
○ガソリンスタンド
・ガソリンの小売価格と卸売価格(※仕切価格では)の差が「流通マージン」で、GSの利益です。この流通マージンは、自由化により1990年頃から縮小しています。さらにガソリンの消費量も2005年がピークで、以降減少しています。そのためGSは、1995年6万軒から2007年4.5万軒に減っています。
・そのためセルフサービスの店舗が急増しています。また石油製品以外の自動車の点検・補修や、専用品を販売するようになりました。

○化学工業
・「石油化学工業」は、1920年代に精製する際に発生する炭化水素から、化学製品を合成したのが始まりです。日本の石油化学工業は、「ナフサ」を原材料としています。ナフサは6割を中東から輸入し、4割を国内で生産しています。※大半を国内で生産していると思っていた。ならばナフサの輸入量も相当あるのでは。

・ナフサから、オレフィン(エチレン、プロピレン、ブタジェンなど)や芳香族(ベンゼン、トルエン、キシレンなど)の「基礎製品」が作られます。これらから中間品を経て、合成樹脂(プラスチック)/合成ゴム/合成繊維などの最終製品が作られます。
・最終製品は分子量が1万以上の合成高分子です。合成高分子は、基本構造単位(モノマー)が数百から数千結合したものです。例えば合成樹脂「ポリエチレン」は、エチレンを基本構造単位としています。また合成繊維「ナイロン」はカプロラクタムを基本構造単位としています。※この節だけで1冊の本になる。

○石油開発会社
・日本は中国に抜かれるまで、世界第2位のエネルギー消費国でした(※エネルギー=原油+天然ガス+輸入石油製品かな?石炭は?)。原油の確保は、安全保障で重要な政策課題です。しかし日本企業が権益を持つ油田からの原油は、全体の1割しかありません。
・海外で油田開発しているのは、「石油資源開発」「国際石油開発」「アラビア石油」などの「石油開発会社」です。しかし産油国の政策が変更されたりする中で、欧米の石油資本と競争するのは大変です。※サハリン1とかあったな。
・「総合商社」も、原油の調達/石油製品の販売/油田開発への投資などを行っており、存在感があります。

○ガス会社/電力会社
・ガスには2種類あります。「都市ガス」はメタンが中心で、「液化天然ガス」(LNG)から作られます。「プロパンガス」はプロパンとブタンが中心で、「液化石油ガス」(LPG)から作られます。※都市ガスは空気より軽く、プロパンガスは空気より重いとかあったな。
・発電所には、水力発電/原子力発電/火力発電などがあります。日本では火力発電が多くなっています。
・ガスも電力も元は石油や天然ガスで、市場原理により価格の連動性があります。エネルギー分野も規制緩和/自由化が進められていますが、エンロン(※総合エネルギー会社)が破綻したり、米国カリフォルニア州で大規模な停電が起こっています。

○商品取引所
・世界には多くの「商品取引所」があります。商品取引所も利益を得るのが目的なので、品揃えを増やしたり、決済システムを導入したり、24時間営業を行っています。
・取引所の合併・吸収も見られます。英国の「ロンドン国際石油取引所」(IPE)は、米国の「国際コンチネンタル取引所」(ICE)に買収されました。ICEは石油会社(BP、ロイヤル・ダッチ・シェル、トタール)や金融機関などにより設立されたエネルギーの電子商取引所です。※他に世界にどんな商品取引所があるか解説して欲しい。
・日本には「東京工業品取引所」「中部商品取引所」で原油・石油製品を扱っています。

○コラム-鉄鉱石・石炭の値上げ
・鉄鉱業界は2008年度鋼材価格の4割値上げを、自動車メーカー・電機メーカーに要請しました。これは石炭が3倍、鉄鉱石が65%引き上げられた事によります。鉄鋼は代替が困難な商品です。
・2007年後半から石油価格が上昇し、輸送運賃/プラスチックなども値上がりしています。また銅/非鉄金属(アルミニウムなど)/農産物(小麦、大豆、トウモロコシ)なども値上がりしています。

<第8章 税金・規則の基礎知識>
○石油関連税制
・石油にはまず「石油石炭税」が課されます。輸入原油・石油製品は2.04円/リットル、LPGは0.67円/キログラムの課税です(※輸入関税は別にあるのかな)。湾岸戦争時には、「石油臨時特別税」も課されました。

・またガソリンには「ガソリン税」(揮発油税、地方道路税)が課されます。これは製油所から出荷される時点で課税されます(※仕切価格・小売価格に転嫁かな)。ただし石油化学原料(ナフサ)/塗料・印刷インキ/輸出用は免税されます。揮発油税は48.6円/リットル、地方道路税5.2円/リットルです。※書かれていないけど、揮発油=ガソリンかな?
・ディーゼル車の軽油には「軽油引取税」が課されます。これは最終引取者(※GS?)が納税します。32.1円/リットルです。ただし農林水産用/船舶用/鉄道用は免除されます。※どれも基本は、個人課税・企業免除だな。
・LPガスには「石油ガス税」が課されます。これは充填者が納税します。9.8円/リットルです。航空機燃料(ジェット燃料)には「航空機燃料税」が課されます。これも航空機の使用者が納税します。26円/リットルです。
・さらにこれらの最終的な消費者に、消費税が課されます。

○石油諸税の用途
・石油諸税は総額で6兆円になります。これらは特定財源なので使途は決まっています。「石油石炭税」は、技術開発/備蓄費用/代替資源開発に使われます。
・揮発油税・地方道路税/軽油引取税/石油ガス税は「道路特定財源」でしたが、財政の悪化で、「一般財源化」に変わる予定です。「航空機燃料税」は空港整備に使われています。

・1989年「消費税」が導入され、物品税・電機税・ガス税は廃止され、酒税・たばこ税は調整されました。しかし石油諸税は調整されませんでした。また近年では「炭素税」の導入が検討されています。

○主な規制
・2001年「石油業法」が廃止され、石油業界の規制は、ほぼ撤廃されました。翌年「エネルギー政策基本法」が制定されています。この基本方針は、①安定供給の確保、②環境への適合、③市場原理の活用となっています。また「エネルギー基本計画」を3年毎に検討する事になっています。※エネルギー・ミックスかな。
・石油業界は自由化されましたが、品確法/石油備蓄法/PL法/独占禁止法などが関係します。

○石油備蓄法
・日本は「第1次石油危機」を教訓とし、石油の安定供給を図ってきました。2002年「石油の備蓄の確保等に関する法律」(改正石油備蓄法)が制定されました。2006年時点、国家備蓄が90日分(すべて原油)、民間備蓄が82日分(原油45%、石油製品55%)あります。※民間備蓄は、生産過程における在庫とも考えられるな。

・為替政策などのマクロ経済政策は国際協調されますが、石油政策も同様です。2005年大型ハリケーンがメキシコ湾岸の石油施設を破壊しましたが、各国が石油備蓄を放出し、原油価格の上昇を阻止しました。

○品確法
・自由化で価格が下がるのは好ましいが、品質が下がっては困ります。1996年「揮発油等の品質の確保等に関する法律」(品確法)が制定されます。対象はガソリン/灯油/軽油です。
・この「強制規格」に適合しない場合、処罰されます。この「標準規格」に適合した製品は、店頭や計量器に「SQマーク」を表示できます。※大半が標準規格を満足しているのでは。その検査は頻繁にするのだろうか。

○独占禁止法
・当然ですが石油業界にも「独占禁止法」が適用されます。ロックフェラー(スタンダード・オイル)は独占状態を作り、不当な利益を得たのです。また複数の会社が価格・シェアを談合する「カルテル」も処罰されます。※生産調整はカルテルではないのか?関係ないけどカルテ/カルト/カクテルなど似た言葉が多い。
・石油業界は「規模の経済」が働き易いため、独占が生じやすい業界です(※JXTGエネルギーの占有率はどれ位だろう)。逆に日本は企業数が多く、国際的な競争力は劣っています。しかし大手元売によるSSへの不当廉売や、優越的地位の濫用は問題になっています。

○PL法
・「製造物責任」(Product Liability、PL)は、製品の欠陥により消費者などが損害を被った場合、その製造者が負う責任です。1995年「PL法」が施行されています。以前は被害者が製造者の過失を証明する必要がありましたが、欠陥と損害の関係が証明されれば、製造物責任を問えるようになりました。実際、「灯油とガソリンを間違えて販売した」などの問題が発生しています。

○コラム-暫定税率の期限切れと一般財源化
・2008年国会審議が停滞し、「ガソリン税」が53.8円/リットルから25.1円/リットルに下がります。しかしこの利点はなさそうです。税収が減った分、別の財源が必要になります。また原油の輸入量が減る訳ではありません。
・一方「一般財源化」はどう評価すべきでしょうか。「道路特定財源」は、「道路建設の必要性」「地域格差の是正」が背景でしたが、「地方自治」「地域振興」などを見直す時期にあります。

<第9章 もっと石油を知ろう>
○バレル
・原油の単位にバレルがあります。これは19世紀米国で原油を輸送する時に樽(barrel)を利用したからです。1バレル=159リットルです。米国のSSでのガソリン給油はガロンです。1バレル=42ガロン、1ガロン=3.79リットルです。一方アジアでは原油・石油製品を重量(トン)で扱います。

○原油の品質
・原油は産地によって油質が変わります。不純物である硫黄分の多い原油を「サワー」、少ない原油を「スイート」と云います。サワーは硫黄分を取り除く必要があるため、安くなります。
・比重の軽い原油を「ライト」、重い原油を「ヘビー」と云います。ライトにはガソリン・灯油・軽油が多く含まれ、ヘビーには重油・アスファルトが多く含まれます。ライトの方が価格が高くなります。
・比重を表す単位に「API度」があり、比重が軽いほど数値が大きくなります。超重質油(26未満)/重質油(26~30)/中質油(30~34)/軽質油(34~39)/超軽質油(39以上)です。※初耳。

○石油精製
・原油には炭化水素以外に、硫黄・窒素・酸素・金属などの化合物が含まれます。「石油精製」とは、これらの不純物を取り除き、炭化水素を種類毎に分離する事です。
・炭化水素には、メタンCH₄/エタンC₂H₆/プロパンC₃H₈/ブタンC₄H₁₀などがあり、炭素数が50を超えるものもあります。炭素数が増えると重くなり、沸点は高くなります。

・石油精製ではガソリン/灯油より価値の高い石油製品(?)を作るため、幾つかの工夫をします。①水素を添加する、②触媒を利用する、③高温高圧にするです(※水素を作る技術は確立してそう)。例えば炭素数16の炭化水素から、「オクタン価」が高い炭素数8のイソオクタンを作ります。あるいは炭素数3/炭素数4の炭化水素から、「オクタン価」が高い炭化水素を作ります。また鎖状の炭化水素から、石油化学の原料となる環状の芳香族を作ります。
※炭化水素もメチャクチャ種類があるな。こんなのコントロールできるのかな。ガソリンにも様々な種類の炭化水素が含まれていそうだな。

○天然ガス・石油ガス
・原油を採掘した時に出る天然ガスは処理が難しいため、かつては燃やされていました。現在はパイプラインで運ばれています。天然ガスはメタン/エタンからなり、メタンは-160度で液化し、体積は1/600になります。日本はその液化した天然ガス(LNG)を中東などから輸入しています。

・プロパン/ブタンは圧力を加えると液化するため、メタン/エタンより取り扱いが容易です。家庭用の「プロパン・ガス」は、液化石油ガス(LPG)が主成分です。一方都市ガスは、メタンが主成分です。※石油ガスは精製段階で作られるんだろうな。天然ガスからではなく、石油からだろうな。

○ガソリン・灯油・軽油
・ガソリンは炭素数が5~10の炭化水素です。エンジンはガソリンと空気を混合し、圧縮し爆発させます。しかし圧縮時に自然発火(ノッキング)する事があります。「オクタン価」を上げるとノッキングは起きません。※炭素数を8に近付けると良いのかな。

・灯油は炭素数が9~15の炭化水素です。主に暖房に使われています。航空機のジェット燃料も、多くは灯油です。※ジェット燃料は、ガソリンより揮発性が高いと思っていた。
・軽油は、ディーゼル車/船舶/ガスタービンに使われます。※ガスを使わないのにガスタービン?

○重油・潤滑油・アスファルト
・蒸留で分留できなかったのが「残油」です。これを気化させるには、気圧を下げる必要があります。重油は、軽油と残油を混合して作ります。「A重油」は軽油が中心ですが、軽油引取税は課されません。漁船や農業機械のディーゼル・エンジンに使われます(※A重油は、ほとんど軽油だな)。残油が中心の「C重油」は、工場/発電所の大規模ボイラーに使われます。

・「潤滑油」は安定性が重要です。残油から抽出され、添加物を加え、粘度/耐久性を調整します。潤滑油は自動車/工場の機械/家電製品など、様々な場所で使われます。※確かに潤滑油は様々だな。普通の石油類より作るのが難しそう。関係ないけど、接着剤も種類が一杯ある。
・「アスファルト」は、分留が困難な炭化水素です。道路の舗装に使われます。

○BTX類・オレフィン・高分子化合物
・BTXとは、ベンゼン(Benzen)/トルエン(Toluene)/キシレン(Xylen)の頭文字で、ベンゼン環を有する「芳香族」の事です。芳香族は鎖状のパラフィンや環状のナフテンから作られます。
・エチレン/プロピレン/ブタジェンなどの「不飽和炭化水素」(オレフィン)も、重要な化学工業の原材料です。これもパラフィンから作られます。

・オレフィンや芳香族(BTX)から、「高分子化合物」を作るのが石油化学工業です。オレフィンからはポリエチレン/ポリプロピレン(※合成樹脂)、芳香族からはナイロン/ポリエステル(※合成繊維)などが作られます。※この辺り基本だろうが、覚えられない。
・「高分子化合物」は分子量が1万以上で、基本構造単位(モノマー)が規則的に結合したものです。それぞれ特有な性質を持つ、合成樹脂(プラスティック)/合成繊維/合成ゴムとなります。

○揮発油
・揮発油税法には「揮発油は、摂氏15度で比重が0.8017を越えない炭化水素」となっています。ガソリン/軽油/ジェット燃料は揮発油として課税されます。この定義から外れるもの(みなし揮発油、ガソリンの添加剤など)にも揮発油税が課せられます。※軽油は軽油引取税、ジェット燃料は航空機燃料税が課せられたけど、さらに揮発油税も課されるの?

・ガソリンには揮発油税、軽油には軽油引取税、ジェット燃料には航空機燃料税が課せられますが、石油化学製品の製造に使用する揮発油は免税されます。具体的には製油所から石油化学工場に出荷される揮発油(ナフサ)は免税されます。
・実は「ナフサ」とガソリンは沸点が同じです。原材料として留分されたものがナフサで、それを製品化したものがガソリンです。

○コラム-オプション取引
・ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)では、原油のオプション取引も行われています。オプションには、コール・オプションとプット・オプションがあります。※詳しい説明がされているが省略。

<第10章 世界の石油企業>
○欧米スーパー・メジャーズ
・1999年米国最大のエクソンと2位のモービルが合併します。この様に1990年代後半から2000年代前半に、欧米の国際石油資本が再編されます。セブン・シスターズは、エクソン・モービル(米)/ロイヤル・ダッチ・シェル(英蘭)/BPアモコ(英)/シェブロン・テキサコ(米)の4グループになります。これに仏国のトタールを加え、「スーパー・メジャーズ」と呼ばれます。
・石油を採掘すると埋蔵量が減少します。2004年この埋蔵量が減少し、「ピークオイル論」になりました。国際石油資本は代替エネルギーに目を向ける事はなかったのですが、そちらにも関心を示すようになりました。

○産油国の国営石油会社
・石油企業には、国際石油企業(IOCs)と国営石油企業(NOCs)があります。近年後者の存在感が増しています。
・「サウジ・アラムコ」はサウジアラビアの国営会社です。埋蔵量・生産量は世界最大で、近年は海外での石油精製・石油化学に進出しています。石油企業の世界ランク2位は「イラン国営石油会社」(NIOC)です。3位以下は、エクソン・モービル/BP/ベネズエラ石油会社(国営)/ロイヤル・ダッチ・シェル/中国石油となっています。※上位7社で、民間は3社。
・他にメキシコ/ロシアなどの国営・政府系企業も上位にいます。※日本は20位以内にいない。ランキングの決め方は説明されていない。

・OPECは生産量カルテルで、原油価格に影響を及ぼそうとしています。これは石油生産国(※産油国?)と石油消費国の対立と云えます。ただし産油国の国営企業は、海外で下流部門に進出し、影響力を高めています。

○ロシアの石油会社
・ソ連は1980年代まで米国と並ぶ産油国でした。ソ連崩壊で混乱しますが、2000年代に入り、生産量を増やしています。
・ロシアの「ロスネフチ」「ガスプロム」は、共に国家が50%以上を出資しています。ロスネフチはロシアの石油の70%を産出します。ガスプロムは世界最大の天然ガス企業です。他に「ルクオイル」「TNK-BP」などの石油企業があります。

○中国の石油会社
・中国は石油の純輸出国でしたが、1993年純輸入国に転じ、現在は石油需要の半分を輸入しています。
・「中国石油天然気集団公司」(中国石油、CNPC)は、中国での石油・天然ガスの開発を担ってきました。近年は、精製・流通にも進出しています。
・「中国石油化工集団公司」(中国石化、Sinopec)は、石油精製を担ってきました。近年では油田開発にも進出しています。中国石油は北部、中国石化は南部が地盤です。
・「中国海洋石油」(CNOOC)は、海洋油田を開発しています。※東シナ海かな。

○中南米の石油会社
・メキシコは米国に隣接するため、早くから生産していました。そのためカンタレル油田は、既にピークアウトしました。地下資源を国有化する事が憲法で定められており、「メキシコ石油公社」(PEMEX)が石油・天然ガス事業の上流部門を管理しています。
・ベネズエラはOPECを結成し、セブン・シスターズを揺るがせようとした国です。国営会社の「PDVSA」が石油資源を管理していますが、1999年に就任したチャベス大統領が反米姿勢を取り、原油の生産量が減少しています。
・ブラジルは中南米で第3位の産油国です。「ペトロブラス」が独占していましたが、独占が禁じられました。ペトロブラスは産油量を急増しています。

○コラム-エルニーニョ
・米国の冬の気温に「エルニーニョ」が関係しています。エルニーニョはペルー/エクアドルの沖合で海面温度が上昇する現象です。その期間は普通半年ですが、1年半になる時もあります。

<第11章 原油価格高騰の影響>
○ガソリン、灯油が高い
・元売会社が毎月、原油価格を仕切価格に反映させるようになっており、ガソリン・灯油の小売価格は、それに影響します。しかしガソリン・灯油には精製コスト/輸送コスト/人件費などが掛かっており、原油価格に直結しません。
・家計は、電気代9千円余/ガス代6千円弱/灯油代2千円弱/ガソリン代6千円弱など、エネルギー関連に毎月3万5千円余使っています。2000年代に原油が高騰しましたが、企業間の競争があり、企業がそれを吸収する傾向にあります。

○トマト、マグロが高い
・漁業は原油価格に大きく影響します。遠洋マグロ漁船は重油を3キロリットル/日消費します。1キロリットルで1万円値上がりすると、1年間で1千万円(3万円/日)のコスト高になります。※1万円の値上げがピンと来ない。
・トマトのハウス農家は、10アールで8千リットルの重油を使います。重油が50円から60円に値上がりすると、年間で8万円のコスト高になります。10アールのハウス農家の所得は100万円です。
・トウモロコシ・大豆も原油の影響を受けます。トウモロコシ・大豆からバイオ燃料を作る動きが広がっているからです。

○ガソリン価格の決まり方
・石油は大掛かりの設備で精製されます。そのメンテナンス費用も必要ですし、装置を動かす人件費も必要です。そのため原油が10%上がっても、ガソリン価格が10%上がる訳ではありません。またガソリン税は卸売価格に掛るのではなく、体積に対し掛けられるので、原油価格は影響しません。ただし原材料の原油が10円上がると、ガソリンもそれ近く上がります。

○航空運賃の決まり方
・航空機燃料も各種あります。通常は灯油に近いジェット燃料です。航空機は燃料を多く使うので、原油価格は収益に大きく影響します(※コスト分析したら、面白いかも)。そのため航空運賃とは別に燃油サーチャージを徴収しています。

・燃料費の上昇がコストを押し上げていますが、規制緩和などで企業間の競争が激しく、各社はタクシー料金/バス運賃/宅配料などを値上げできません。燃料の値上げを各社が負担しているのです。※最終的に規制緩和のしわ寄せは、弱い立場の労働者が負った。

○原油高なのに電力安
・先進国の電力価格の推移を見ると、エネルギーが多様化している米国、北海油田を有する英国、原子力発電を活用する仏国は、安価で安定しています。一方発電用燃料を輸入する日本/イタリア/ドイツは、高価で変動しています。特に脱原子力を勧めたドイツや、仏国に電力を依存するイタリアは値上がりしています。
・一方日本は異常に高かった電力価格が下がりつつあります。これは電力自由化による競争や、各社の経営努力によります。※総括原価方式は、まだあるのかな。

○ガス料金
・日本ではメタンが主成分の「都市ガス」が利用されています。欧米では、天然ガスがガス田からパイプラインで運ばれ、発電や石油化学の原料に使われています。日本は中東などから、液化した天然ガス(液化天然ガス、LNG)を輸入しています。
・また日本ではプロパンガスも利用されています。この中味は液化されたプロパン/ブタン(液化石油ガス、LPG)です。LPGは原油を精製する段階で得られるので、LPGの需要は緩み易く、価格の上昇は抑えられています。

・LNG/LPGは、不純物(窒素酸化物、硫黄酸化物)を排出せず、二酸化炭素の発生も少ないため、「クリーンエネルギー」です。そのため米国では不足しています。そのためLNG/LPGの価格も、原油と連動しています。

○コラム-円高
・日本には円安が良いとの認識があります。しかしこれは大企業製造業の意見と思われます。円高は一般市民からすると、食料品/衣服/家具などが安く買えます。
・世界では通貨高の国の方が、経済パフォーマンスは良くなっています。資源が安く買えるので、これも有利です。日本も穏やかな円高が望ましいと思われれますが、金利が低く、人口減少する日本に投資する外国人は少ないので、円高になり難くなっています。

<第12章 原油価格高騰の背景>
○原油価格
・第2次石油危機後、原油価格は低迷しました。しかし2000年代に入ると、持続的に上昇しています。この原油価格は、石油企業や産油国が決めている訳ではありません。「ニューヨーク・マーカンタイル取引所」(NYMEX)などの商品市場で決まります。石油企業/産油国/消費者/機械メーカー/先進国/発展途上国などの世界経済で決まります。原油需要は増え続けており、そのため原油価格は上昇したのです。

○余剰生産力の低下
・まず原油価格上昇の要因を、供給サイドから見ます。1970~80年代、産油国・石油資本が生産力の増強に積極的に投資したため、原油価格は低迷しました(※石油危機があったけど)。そのため近年は投資を抑えているのです。
・近年は代替エネルギーへの投資が推進され、石油への投資は抑制されています。探査に必要な機器は値上がりし、油田取得の費用も高騰し、投資の採算性が望めないのです。※意外と厳し業種なんだ。
・埋蔵量が十分にあっても、採掘する設備が整っておらず、余剰生産力は低い水準にあります。これも価格上昇の要因です。しかも産油国のナイジェリア/イラン/イラク/ベネズエラは情勢が不安定で、これも価格上昇の要因です。

○米国の製油能力の不足
・油田開発への投資も低迷していますが、製油所への投資も低迷しています。米国の製油能力は1981年がピークで、その後低下し、今は回復基調にあります。これは石油企業が製油所の統廃合を行ったからです。※製油能力の不足が原油価格を上昇させる理由が説明されているが、分からないので省略。製油がネックなら、原油は余るけど。
・石油市場では、製品価格から原油価格を逆算する「ネットバック方式」が利用されます。その原油価格が魅力的であれば、産油国・石油資本は売り込みを行い、価格は下がります。従って製油能力の不足が価格を上げる訳ではありません。※前述と逆。どっちなんだ。

○新興国の石油需要
・新興国での乗用車の普及、電力消費量の増大などで原油需要は増大しています。「BRICs」(中国、インド、ブラジル、ロシア)の原油需要は世界全体の18%で、世界全体の年率1.7%の伸びに対し、5%拡大しています。新興国の伸びが、石油需給を逼迫させています。
・しかしこの3国(中国、ブラジル、ロシア)は大産油国で、事実は中国/インドの消費量の増加分より、ロシア/ブラジルの生産量の増加分の方が多くなっています。従って新興国の伸びが、石油需給を逼迫させているのは正しくありません。※これも、どっちなんだ。と言うより、新興国は4ヵ国だけではない。

○先進国の石油需要
・日本・欧州の石油需要は頭打ちです。それは自動車の普及率の安定/人口の安定/省エネルギー/代替エネルギーの普及などによります。
・一方米国の石油需要は依然増加傾向にあります(※石油危機後、欧州は減少、日本は維持、米国は2割増)。しかも世界全体の1/4を占めます。※2位中国の約3倍。1人当たりにすると10倍超。恐ろしい消費量だな。何に使っているのか。
・米国の需要の内訳を見ると、ガソリンや暖房油が増加しています。そのため毎週発表される米国の石油需給が原油価格に大きく影響します。

○世界景気拡大・原油高・低インフレ
・現在と石油危機との違いは、①中東戦争/イラン革命と比べリスクは低く、オイルマネーが世界に還流している、②原油価格の上昇が穏やか、③石油製品の価格は安定している。③が特に重要で、世界経済の拡大で、企業は価格の上昇ではなく、数量の増大で利益を出せるようになったのです。※世界経済は厚みを持った。

・実際石油危機と違い、消費者物価の上昇は穏やかです。この要因は金融政策/労使関係など様々ありますが、最大の要因は新興国の工業化で、安い製品が世界に供給できるようになったのです。特に中国が、一次産品価格の高止まりと最終製品価格の安定をもたらしています。※グローバル化だな。

○コラム-コモディティ
・原油/金/銅/小麦/大豆などの1次産品が「コモディティ」(商品、Commodity)で、これは「Common」(共通)と語源が同じです。商品取引所では商品の品質や単位が、予め定まっています。
・近年自動車/パソコンなどが「コモディティ化」したと言われます。多くの人が所有するようになり、ブランドや技術による差別化が難しくなったからです。

<第13章 主要産油国と地政学>
○対テロ戦争
・2001年アルカイーダにより「同時多発テロ」が起きます。1990年代は冷戦が終結し、米国経済は好調に推移しますが、「テロとの戦い」が重要課題になります。米国はアフガニスタンのタリバン政権との戦争に踏み切ります。
・2002年ブッシュ大統領は北朝鮮/イラク/イランを「悪の枢軸」と名指しします。2003年米国は「イラク戦争」を開始します。「テロとの戦い」は石油と直接関係しませんが、中東情勢には関心が寄せられます。※ホルムズ海峡封鎖とかもあるし。

○イラク
・親米国家だったイラクは、「イラン・イラク戦争」(1980~88年)で多大な被害を被ります(※共に大産油国だな)。1990年イラクがクウェートに侵攻した事で、「湾岸戦争」が始まります。
・イラクには、スンニ派/シーア派/クルド人の3大勢力がいまが、油田はシーア派/クルド人の地域にあります。そのためスンニ派のサダム・フセインは強権政治になったとされます。
・2003年「イラク戦争」が始まり、直ぐに終了しますが、その後もイラクでテロ活動が続いています。そのためイラクの原油生産量は1980年頃がピークで、その後は200万バレル/日で低迷しています。

○イラン
・イランは人口7千万人の大国です。原油を400万バレル/日生産しますが、その4割を国内で消費しています。しかし原油の輸出は、全輸出の8割を占めます。その輸出先は。日本2割/中国1割などとなっています。またイランは天然ガスも多量に生産します。これらから、イランは対米関係で強硬姿勢を見せています。

○ナイジェリア
・ナイジェリアは250の部族が存在し、また貧困への不満もあり、部族対立・宗教対立が絶えません。そのため武装勢力による石油施設の破壊が頻発しています。
・ナイジェリアの生産量の半分(100万バレル)を米国が輸入しています。しかもナイジェリアの原油(ポニー・ライト)は軽質のため、原油市場への影響は大きくなっています。

○ベネズエラ
・ベネズエラは資源ナショナリズムが強く、OPECを主導した歴史を持ちます。1990年代に石油会社は民営化されますが、1999年に就任したチャベス大統領により、石油資源を国家がコントロールするようになります。そのため親米であった「ベネズエラ石油公社」(PDVSA)の生産量は落ち込んでいます。一方で中国への輸出は増加しています。※米国が去れば、中国/ロシアが入る。
・ベネズエラでは、超重質油の「オリノコ・タール」が採れます。これは、カナダのオイル・サンドと並んで、非従来型の資源です。
※何れの国も不安定だな。サウジアラビ/ロシア/ブラジルの解説がないのは何故だ。

○コラム-原油と金
・コモディティを代表する商品が、原油と金です。しかし大きく異なります。原油は日々消費されるもので、景気変動に影響されます。一方金は保有手段として使われます。また質量当りの価値も大きく違います。原油は貯蔵コストが掛かりますが、金は少なくて済みます。
・ただし値動きは似ています。景気拡大すると需給が逼迫し、原油価格は上がります。またインフレへのヘッジから、金の価格も上がります。※商品市場については関心ないが。

<第14章 市場とマネーと石油>
○原油価格
・原油価格は取引所など、多数の参加者がいるで市場で決まります。※詳しく説明されているが省略。

○先物取引
・「先物取引」は、1ヵ月先/1年先などの期日に売買する約束をする取引です。価格変動リスクをヘッジする手段です。
・日本の航空会社が100万ドルの航空機を注文したとします。注文した時点では1ドル=100円で1億円です。しかし1年後の決済時に1ドル=125円だと、(125-100)×100=2500万円の為替差損が生じます。しかし先物市場で1年後のドルを、1ドル=110円で100万ドル調達していれば、リスクは発生しません。
※注文時に(110-100)×100=1000万円の損失になり、決済時に(125-110)×100=1500万円の為替差損になるのでは。
※先物市場と現物市場は別に存在し、また先物市場は期日毎に存在するのかな。

・原油の取引は普通、約定日の1ヶ月後が受け渡し日になります。そのためその間に購入権の転売が行われます(先渡し)。実際、生産者/仲介業者/投資銀行/製油業者が先渡しを行っています。

・商品先物取引では、銘柄/期日/場所/決済方法/単位/保証金/手数料などの詳細を決めます。先物取引の利点は、品質保証や多くの参加者を集められる事です。
※金とかなら商品として均質だろうが、原油の品質は多様なのでは。それにこんな詳細な内容を市場で決めるのは困難では。これは市場と云うより、個別契約だな。
・原油の先物取引には、価格変動の影響を受け易い石油製品を扱う業者や、運用・リスクヘッジを目的とした投資家などが活発に取引しています。
※WTI原油/北海ブラント原油は先物みたいだな、ドバイ原油はどうなんだろう。先物については別途勉強が必要。

○オイル・マネー
・オイル・マネーの正確な定義はありません。原油は年間300億バレル消費されています。1バレルで10ドル値上がりすると、3000億ドル(33兆円)の増収になります。原油は40ドル/バレルから80ドル/バレルになったので、1.2兆ドル(130兆円)の増収になっています。これは日本のGDPの3割で、世界第8位のスペインのGDPに相当します。※リーマンショック前の出版なので原油高の話ばかりだが、先日新型コロナウイルスの影響で原油価格がマイナスになった。
※1年で300億バレル≒5兆リットル=50億㎥=5K㎥。サウジだけだと0.6K㎥(10Km×10Km×6m)だな、100年も採掘すると、やはり陥没が気になる。

・この130兆円は、どの様に分配されているのでしょうか。OPEC諸国が52兆円/非OPEC諸国が78兆円となります。OPEC諸国は国営なので、国家の収入になります。5大メジャーが1/8を生産しているので、16兆円の増収になります。残りの62兆円がメジャー以外の石油会社や、ロシア/メキシコ/中国/ブラジルの増収になります。多くの国が、原油価格に連動する天然ガスも扱っているので、その分も加算されます。※ピンと来ないけど、マズマズの増収だな。

○ドル安は原油高要因か
・原油市場では「ドル安は原油高の原因」、同様に為替市場では「原油高はドル安による」と言われます。原油は国際商品なので、ドルが下落しても原油の価値が変わらなければ、ドル建ての原油価格は上昇します。※何か当たり前。
・中東などの産油国の為替制度は、固定相場制です。しかし原油高になると、産油国の通貨(カナダのドル、ノルウェーのクローネなど)は上昇します。
・米国はかつての原油の自給率が高かった頃は、原油高になるとドルも上昇していました。しかし今の自給率は1/3なので、それはありません(※今はシェールオイルにより純輸出国)。欧州/日本は脱石油/省エネルギーが進んでいるので、原油高の影響は受けていません。

○投資家の拡大
・石油は売買取引の成立から商品受け渡しまでに日数が掛かるため、先物市場が発達しました。※現物市場より先物市場が主なのかな。報道される原油価格は先物市場の価格なのかな。先日のマイナスを解説する記事があったので、探して読もう。

・先物市場には、産油業者/製油業者/仲介業者/金融機関/商品ファンドなどが参加しています。さらにヘッジファンド/年金ファンドも参加しています。
・米国の「先物市場取引委員会」(CFTC)の統計によれば、先物取引の「建玉」(※取引残みたい)には「非当業者」「非報告者」もいて、それが投機筋です。「当業者」とは、石油会社/石油仲介業者/精製業者などで、石油ビジネスを行っています。非当業者とは、銀行/証券会社/年金/投資信託などです。非報告者とはCFTCに報告の義務がない、小さな会社/個人投資家です。建玉の3~4割は投機筋で、原油価格に幾らか影響を与えています。

○コラム-原油とドルの相乗効果
・近年は原油高/ドル安の状況にありますが、ドルに対し上昇を続けているユーロに投資するより、原油に投資した方が利益が出ると思います。新興国の需要を見込んでいなかった原油価格が、是正されているのかもしれません。この原油高/ドル安は、「米国経済が減速しても、新興国を中心とした世界経済は拡大する」との観測、つまり米国景気と世界景気のデカップリング(非連動)が前提にあります。※この章は専門的かな。

<第15章 未来への対応>
○環境意識
・資源の利用において、環境意識が高まっています。現世代が資源を使い果たし、後世代に劣悪な環境を残して良いのかと云う意識です。日本には明治時代に足尾銅山の鉱毒被害があり、戦後はイタイイタイ病/水俣病/喘息などの公害問題がありました。
・しかし川の汚染の原因は、工場排水/生活排水/下水処理/農薬・肥料など様々で、特定できません。温暖化/オゾン層の破壊/動植物の絶滅/砂漠化/熱帯雨林の消滅/酸性雨/海洋汚染/化学物質・有害物質の廃棄など、様々な問題がありますが、誰が加害者で、誰が被害者か特定できません。※本当に沢山あるな。でも大半は科学的に解明されているのでは。

○地球温暖化
・「温室効果ガス」は大気中の熱エネルギーを蓄えるので、必要なものです。温室効果ガスには、二酸化炭素/メタン/亜酸化窒素/フロン/水蒸気などがあります。しかし近年は石油・石炭などの化石燃料の消費や、二酸化炭素を吸収する森林の破壊により、温室効果ガスが増大しています。
・急な気温上昇は、海面上昇/異常気象/生態系破壊をもたらします。平均気温が2度上昇すると、生態系は南北に300Km移動するとされます(※そんなに小さいかな)。一方種子植物は1年で1Km(100年で100Km)しか移動できず、種子植物は絶滅するとされます。※日本だと高所(300m)へ移動するかな。国土が平坦だと追い付けないかも。
・地球温暖化は水産業・漁業に打撃を与え、食糧問題にも発展します。

○京都メカニズム
・「京都メカニズム」(京都議定書)は、3つの枠組からなります。①クリーン開発メカニズム-先進国が途上国の温室効果ガスの削減に投資した場合、その削減分を自国の削減分にできる。②共同実施-先進国が他の先進国の温室効果ガスの削減に投資した場合、その削減分を自国の削減分にできる。③排出量取引-先進国同士が温室効果ガスの排出量を売買できる。そのため各国で排出量取引市場が整備されています。
※先進国に限定されたメカニズムだな。投資の判断は難しいのでは。また排出量取引は実際行われているのかな。その後にも重要なCOPがあった気がするが。
・これにより温室効果ガスの排出が市場経済に取り込まれたのです。2007年日本はハンガリーから排出枠を買っています。京都メカニズムは資源高にも影響していると考えられます。

○代替エネルギー
・かつては石炭から石油へのエネルギー源の転換がありました。今日は石油の代替エネルギーとしてバイオ燃料/太陽光などの再生可能エネルギーや原子力がありますが、活用は限られています。
・天然ガスは輸送・保管の難しさから、普及していません。しかし環境負荷が小さいため、技術向上/ガス田開発は進められています。また天然ガスは、次世代エネルギーの水素電池の水素の原材料です。※どっちやねん、みたいな記述が多い。

○水素電池
・水素電池(燃料電池)は、水素と空気中の酸素を反応させ発電するシステムです。水素は化石燃料の炭化水素から取り出すのが実用的です。炭化水素からガソリンを取り出す事を「改質」と云いますが、これも改質です。水素電池は二酸化炭素を排出せず、窒素酸化物/硫黄酸化物も排出しません。水素の取り出しは、化石燃料以外ではバイオマス(炭化水素)からや、風力・水力・太陽光で得られた電力で水を電気分解する方法があります。
※いつも思うけど、変な名前だな。発電なのに電池。燃料と云えば、普通石油を思い浮かべるけど。

○家庭のエネルギー
・家庭での将来のエネルギーでまず考えられるのが、「コージェネレーション・システム」(※以下コージェネレーション)です。これは発電で発生する電気と熱を、共に利用するシステムです。送電ロスを少なくするため、使用する場所で発電し、排熱も給湯/暖房に利用する分散型システムです。現在、工場・ビルで利用されています。
・都市ガス/LPガスを利用したコージェネレーションが実用化されていますが、効率が良くありません。そのため水素電池を利用したコージェネレーションが注目されています。また自動車の水素電池への移行も期待されています。※ミライだな。
※エネファームと云うのもあるが、どう違うんだろう。コージェネレーションの家庭用がエネファームかな。商品名ではなく、複数社が製造しているみたいだ。
※欧州では水素の利用が進んでいて、都市ガスに水素を混入させているらしい。分離は容易なのかな?

○原油価格は暴落するか
・代替エネルギーにより原油価格は暴落するでしょうか。石炭から石油に移行した際、石炭価格は下落しませんでした(※そりゃ一気に移行できないからね)。それは採算性の低い炭鉱が閉鎖され、供給が抑制されたためです。原油は今後、深海油田/超重質油が中心になるため、開発・生産コストは上昇します。
※今回のコロナでは、油田での減産は難しいが、シェールオイルの減産は比較的容易らしい。

・石油は自動車・航空機の燃料に使われ、石油化学の原材料です。これに代わるものはありません。また今後、新興国の石油需要も伸びると予想されます。ただし環境問題やその貴重性から、消費は徐々に抑制されるでしょう。※どっちやねん。

○コラム-資源の枯渇
・資源には、金属/エネルギー/観光などがあります。他に資本/時間/研究成果/ソフトウェアなども含める事ができます(※土地、労働、水、食料などもかな)。これらの資源を再生可能/再生不能に分ける事ができます。森林・海・川・動植物は時間が経過すれば復元します。一方金属鉱物・エネルギーは復元が困難です。

・この再生可能資源と再生不能資源でどちらが枯渇するでしょうか。答えは再生可能資源です。人類による乱獲や環境破壊で絶滅した動植物は多くいます。一方石油資源・金属資源が枯渇する事はありません。埋蔵量が減少すると生産コストが高くなり、採算が取れなくなるからです。たとえ枯渇しても、人類は代替するエネルギー・素材を開発するでしょう。※何か変な問いと答え。採算が取れなくなったら、枯渇したと云えるのでは。動植物も代替するものがあったので、絶滅(枯渇)させられたのでは。

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