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『経済ニュースがよくわかる本 日本経済編』細野真宏を読書。

基本的な事が書かれているので、基礎固めに良いと思います。
中学生辺りが対象の本かもしれません。

2003年初版/2011年改訂で古く、バブルを中心に解説しています。
景気を改善するための日銀・銀行の対応や、国債について解説しています。
今後予想されるコロナ不況での、国債の大量発行への対応などで参考になると思います。

本書以外に、『世界経済編』『銀行・郵貯・生命保険編』があるみたい。

お勧め度:☆☆☆(基礎固め)
内容:☆☆

キーワード:<まえがき>借金、政治・経済、<円高と円安と景気>外国為替、外国為替市場、産業の空洞化、景気、国内総生産(GDP)、付加価値、個人金融資産、ファンダメンタルズ、<日銀の仕事>中央銀行、政府の銀行/最後の貸し手/銀行の銀行、公定歩合、公開市場操作/マネーサプライ、インフレーション/ハイパーインフレ、デフレーション/デフレスパイラル、<バブル経済>プラザ合意、実物経済/マネー経済、バブル/資産インフレ、不良債権/リストラ、住専、バブル崩壊、<バブル崩壊後の日本と景気対策>不良債権の処理、貸し渋り/回収、自己資本/他人資本、BIS規制、資本注入、減税/公共事業、マーケット・メカニズム、ケインズ理論、<借金大国日本>国債、大きな政府/小さな政府、少子高齢化、公的年金、調整インフレ/インフレ・ターゲット、円安誘導/量的緩和、<財政政策と金融政策>国債の利回り、短期金融市場/ゼロ金利政策/量的緩和、<最新の金融政策>ロンバート型貸出制度

<まえがき>
・日本は大変な状況にある。国の借金は700兆円もある。これでは年金をもらえなくなる。本来ならこの状況に無関心でいられないはずだが、そうなっていない。しかし新聞やニュースを見ても、その状況が分からない。この問題を解消するために本書を書いた。そのため初歩的な本になっている。

・有名大学の学生に以下の言葉を知っているか聞き、理解度は以下であった。「デフレ」28.2%、「デフレスパイラル」9.4%、「インフラ」7.5%、「モラルハザード」3.4%。昔の若者は政治・経済に接点があった。しかし今の若者は豊かになり過ぎて、無関心である。投票率は下がり続けるだろう。

<第1章 円高と円安と景気> ※Sectionを章に変更。
○円高・円安
・一般的に「円高」とは「ドルに対し円が高くなっている」事で、「円安」とは「ドルに対し円が安くなっている」事です。ドルを「基軸通貨」と云います。
・外国通貨との交換を「外国為替」と云います。その取引が行われているのが「外国為替市場」です。為替相場(為替レート)が変動するのが「変動相場制」で、固定なのが「固定相場制」です。

○為替相場の決まり方
・為替レートは、円とドルの欲しい人の交渉で決まります。※図解で説明されているが省略。

○どんな時に円高・円安になる?
・要因は様々ありますが、1つに貿易があります。「輸出が増えると円高」になります。貿易はドルで行われますが、それを日本企業が円に交換するからです。※何か貿易に拘るけど、国際収支にはサービス収支/所得収支などもあり、これらも考慮しないと実態が掴めないと思う。

○レッスン-外国為替市場
・「外国為替市場」には、「対顧客市場」「銀行間(インターバンク)市場」があります。対顧客市場は、銀行が企業と取引している場所です。銀行間市場は、銀行同士が取引している場所です。
・銀行内で為替の取引をしている人が「為替ディーラー」で、銀行間で為替の取引をしている人が「為替ブローカー」です。「トウフォレ上田」(トウキョウフォレックス上田ハロー)が為替ブローカーです。しかし近年は電子化され、銀行間でも行われています。

○円高・円安になると、何が起こる?
・例えば、1ドル=120円が1ドル=100円の円高になったとします。そうすると100万ドルの日本車は、120万ドルになります。円高になると日本車が売れ難くなったり、安くするしかなくなります。あるいは工場を海外に移したり、社員の給料を減らす事になります。国内の産業が縮小する事を「産業の空洞化」と云います。反対に円高になると、輸入企業は得をします。
※為替には世界レベルでの産業の平準化機能があるな。輸出企業が輸出を増やせば円高になって不利になる。従って自分の首を自分で絞める。

○日本はどちらが得か
・日本は「貿易黒字国」(輸出額>輸入額)なので、円安が得です。ただし円高になると、海外のモノが安くなるので、消費者は得をします。

○円高と物価
・円高になると海外の安いモノが流入し、国内のモノも安くせざるを得なくなります。そのため物価は下がります。※日本でデフレが続いているのは、貿易黒字(円高)を続けているからかな。
・そのため日本企業は厳しくなり、給料を減らしたりします。これにより「景気」は悪化します。※変な話だな。日本が頑張れば頑張るほど、景気が悪化する。

○景気と国内総生産(GDP)
・「景気」とは「カネ回り」です。これを示す指標が「国内総生産(GDP)」です。これは個人の消費や、会社の機械購入や工場建設などの総和です。このGDPの前年比が「経済成長率」です。GDPで、その国の生活水準が分かります。※景気=カネ回り=GDPは分かり易い。

○レッスン-GDP
・GDPは「国内で生み出された付加価値の合計」が定義です。例えば農家が小麦を作ると、それが付加価値になります。次に粉屋が小麦から小麦粉を作ると、その差額が付加価値になります。さらにパン屋が小麦粉からパンを作り、それを売ると、その差額が付加価値になります。この付加価値の合計がGDPです。※最終消費(この場合パン)だな。
・GDPは「国民全体の所得(収入)」でもあります。先の例の付加価値は、それぞれの所得になります。
・GDPは中間生産物を除いた「最終生産物の合計」でもあります。先の例では、小麦/小麦粉は中間生産物で、パンが最終生産物です。※小麦には種や農機が含まれるが、これらは最終生産物かな。

・また国内で生み出されたモノは誰かが買っています。従って、GDP=個人消費+民間投資+政府支出+純輸出+在庫品となり、GDPは「国内で使われたお金の合計」です。GDP500兆円の6割が個人消費で、政府支出は2割です。※生産・所得・支出の三面等価だな。

○日本の経済成長率
・日本の経済成長率は1997年までは「プラス成長」でしたが、1997年に消費増税があり、銀行や証券会社の破綻があり、1998年に「マイナス成長」になります。その後回復しますが、2001年にはマイナス成長になっています。
・しかし日本は教育水準が高く、「潜在成長率」は2%あるとされます(※潜在成長率はどうやって算出するんだろう)。日本が2%成長すると、35年後にはGDP(所得)は2倍になります。

○コーヒーブレイク-国民所得倍増計画
・1961年「国民所得倍増計画」が打ち出されます。当時は道路・鉄道・ダムなど作るモノも沢山あり、国民が欲しいモノも沢山ありました。日本の経済成長率は10%を越え、7年でGDPが2倍になります。

○コーヒーブレイク-GDPとGNP
・「国民総生産(GNP)」は「国民が使ったお金の合計」です。GNPには日本人の海外での支出は含まれますが、日本にいる外国人の支出は含まれません。これでは日本の実情が掴めないので、GDPを使用するようになりました。

○レッスン-複利計算
・経済成長率2%を何年続ければGDPは2倍になるでしょうか。答えは(1.02)³⁵=1.999・・≒2で、35年です。

○コーヒーブレイク-経済成長率と物価
・物価の変動で、お金の価値も変わります。実はGDPには2種類あって、「名目GDP」「実質GDP」があります。通常GDPと云ったら、物価の変動を考えた実質GDPで、経済成長率も実質経済成長率の事です。

○貿易黒字なのに、なぜ景気が悪い
・日本は貿易黒字なのに、なぜ景気が悪いのでしょうか。国民の「個人金融資産」は1400兆円で、1人当たり1100万円です。しかしこれには個人事業主も含まれます。ただしこれには土地・家は含まれません(※個人金融資産は、個人流動資産に近いかな)。日本は「バブル崩壊」などにより、この個人金融資産の回りが良くないのです。

○景気が悪いのに、なぜ貿易黒字
・これは間違っていません。景気が悪いとモノが買われず、輸入は減少します。また景気が悪いと一般的に円安になり、輸出が増え、輸入は減少します。また企業は不景気の国内より、海外での販売に力を入れるようになります。

○レッスン-円高・円安は何で決まる
・為替の決定要因が、経済の基礎的な条件の「ファンダメンタルズ」です。これは具体的には、「経済成長率」「国際収支」「物価上昇率」「失業率」です。景気(経済成長率)が良いと、通貨は上がり、株も上がります。
・他に「政治情勢」「マネー経済」「投機」「金利差」なども為替の決定要因です。

○コーヒーブレイク-貿易黒字が増えても、円高にならない
・1996~98年日本は貿易黒字を増やしましたが、円高になりませんでした。外国為替市場で貿易が占める割合は1割なので、貿易だけで決まりません。この時は日本の景気が悪く、米国の景気が良かったからです。

<第2章 日銀の仕事>
○銀行の仕事
・銀行は預金に対し利子(利息、金利)を払います。一方で貸出を行い、利息を受け取り、その差額で儲けています。

○日銀の仕事
・日銀は「中央銀行」です。また「認可法人」で、政府と民間の中間的な機関です。日銀は日本で唯一、お札(日本銀行券)を発行できます。

○政府の銀行
・日銀は「政府の銀行」で、税金/国債などを管理しています。

・また日銀は「最後の貸し手」です。例えば、ある銀行が破綻すると噂が立つと、多くの人が引き出しに殺到します。この時日銀はその銀行に貸出します。ただし銀行に貸さない場合もあります。この場合銀行は破綻しますが、預金の一部(1千万円)は保護されます(後述)。これを「ペイオフ」と云います。日銀は銀行に対し、貸出・預金を行うので「銀行の銀行」です。

○公定歩合
・日銀の銀行に対する利子が「公定歩合」です。この公定歩合を動かす事で、景気を操作しています。
・景気を良くする場合は、公定歩合を下げます。これにより銀行はお金を多く借りるようになり、会社・個人もお金を多く借りるようになり、事業を拡大します。また金利が低いので、預金もしないため、カネ回り(景気)が良くなります。

○コーヒーブレイク-景気が悪すぎると、金利を下げても効果がない
・日本は1995年より公定歩合が0.5%です。それでも景気は良くなりません。それは金利を下げても、不動産会社・建設会社などが「バブル崩壊」(第3章で後述)で借金を抱えているため、お金を借りません。また金利が低くいのに、将来不安から、個人も会社も預金しています。

○公開市場操作
・日銀は「公開市場操作」でも景気を操作しています。これは「マネーサプライ」(通貨供給量)を調節する方法です。マネーサプライは、金融機関を除く会社・個人が持つお金の合計です。

・具体的には、銀行が保有する国債などを買って、銀行のお金を増やし、貸出を促進します。これを「買いオペレーション」(買いオペ)と云います。逆に景気を抑制する場合は、銀行に国債を売り、銀行のお金を減らします。これを「売りオペレーション」(売りオペ)と云います。※無理やり買わすのかな。でも国債が調整役になっているんだ。

○不景気だったら、お金を刷れば?
・日銀がお札を大量に刷ると、その分お金の価値が下がり、物価が上昇します。これを「インフレーション」(インフレ)と云います。

○インフレ
・インフレになると年金や預金で暮らしている人は、生活が苦しくなります。「ハイパーインフレ」になると大金持ちしか生活できなくなります。

○レッスン-インフレの原因
・インフレの原因は2種類あります。1つ目は商品を買いたい欲望から起こる「ディマンド・プル・インフレ」(需要インフレ)です。これは公共事業を行うなどして、世の中のお金が増えると起きます。
・2つ目は生産コストの上昇により起こる「コスト・プッシュ・インフレ」です。例えば円安により輸入品が高くなると、生産コストが上昇し、商品価格も上昇します。この場合「輸入インフレ」とも云われます。

○デフレ
・一方物価が下がる事を「デフレーション」(デフレ)と云います。こちらも問題です。会社が商品の値段を下げ、売上を減少させると、社員の給料を減らしたり、解雇せざるを得なくなります。そうすると家計の消費は減少し、益々商品の値段を下げる事になります。このスパイラルを「デフレスパイラル」と云います。※日本はこれに近いのでは。

○レッスン-なぜデフレになる
・給料が下がっても物価が下がれば問題ないと思われますが、問題は社員を減らしたり、倒産して失業者を増やす事です。※詳しく図解されているが省略。

○デフレはあらゆるものを破産に導く
・またデフレは、利子が付く借金の返済を難しくします。これは会社・個人だけでなく、国も破綻に導きます(第5章で後述)。

○コーヒーブレイク-日本とデフレスパイラル
・日本は1999年から物価が下がり続けています。そのため2001年、政府はデフレと認定しました。

・日本は4年連続で物価が下落していますが、デフレスパイラルには陥らないと考えられます。1930年代は解雇規制が緩く、大量の失業者を出しました。しかも失業保険もありませんでした。そのため大不況になりました。
・今は「バブル崩壊」(第3章で後述)の後遺症で「リストラクチャリング」(リストラ、再構築、立て直し)を行っています。しかし労働者の権利は守られ、失業保険も整っています。また政府は公共事業なども行っています。※ケインズ主義だな。

○コーヒーブレイク-不況は悪い事ばかりではない
・不況は長い目で見ると、重要な役割を果たしています。景気が良いと、人は余り努力をしません。しかし不況になると効率が問われ、努力するようになり、その後の成長を生みます。※敗戦国の日本/ドイツは発展した。

<第3章 バブル経済>
○日米貿易
・日本は貿易黒字国で、米国は貿易赤字国です。これは日本人は「消費より貯蓄」、米国人は「貯蓄より消費」だからです。1980年代この貿易不均衡が問題になります。

○プラザ合意
・そのため1985年「G5」(先進5ヵ国財務相・中央銀行総裁会議)でドル安へ誘導する「プラザ合意」が合意されます。これにより「協調介入」が行われます。

○コーヒーブレイク-実物経済とマネー経済
・モノを買ったり、サービスを受けるのは「実物経済」です。一方株の売買や、お金を商品として売買するのは「マネー経済」です。実物経済とマネー経済の比率は、1980年代までは9:1だったのですが、今は逆転して1:9になっています。
※これは驚いた。今はもっと進んでいるんだろうな。金融が経済を完全に乗っ取った。リーマンショックもあったし、金融緩和はバブルの温床を作るだけ。

○円高不況
・プラザ合意により、予想を上回る速度で「円高ドル安」が進み、輸出企業に打撃を与えます(円高不況)。そのため日銀は固定歩合を5%から2.5%に引下げます。しかしこれにより融資が盛んに行われ、「バブル」になります。※ジャパン・アズ・ナンバーワンの時代かな。会社は不況なのに、円高で会社の資産価値は上がる。何か変だな。

○バブル経済
・銀行からお金を借りるには「担保」が必要です。公定歩合が下がったので、多くの会社がお金を借ります。しかも「土地神話」(土地の価格は上がり続ける)がありました。実際、土地も株も上がり続けます。そのため多くの会社が本来の仕事より、土地・株の売買に注力しました。

○適正価格
・モノには適正価格があります。土地でも株でも適正価格があります。しかし神話により、土地・株・豪邸・絵画などが暴騰します。これが「バブル」です。これは土地・株などに限定されたインフレなので「資産インフレ」と云われます。一方円高で海外のモノが安く入り、インフレにはなりませんでした。

・しかしこの過熱が警戒され、日銀は公定歩合を引き上げ、政府は「不動産融資総量規制」を実施します。これにより、土地も株も一気に下落します。これが「バブル崩壊」です。

○バブラー(※勝手に命名)の人生
・バブラーは土地・株が暴落した事で、借金を返せなくなります。そのため銀行は、これらの返せなくなった貸出(不良債権)を多く持つようになります。銀行は倒産しそうになったり、「貸し渋り」するようになります。

○バブル崩壊と景気
・バブル崩壊により、借金を返せなくなった会社が倒産し、失業者が増えます。失業しなかった人も、不安から消費を減らします。会社の設備投資も抑制されます。会社は、余剰な設備・社員が負担になり、「リストラ」を始めます。

○レッスン-株
・株式会社は資金調達のため「株」を発行します。会社の所有者である株主には配当を払います。会社は株主総会を開き、株主は議決権を持ちます。
・株は証券会社を通し、証券取引所で売買します。会社の価値が上がると、株の価格も上がります。会社の価値が下がれば、価格は下がります。実は株式会社で株を公開しているのは、全体の0.3%に過ぎません。

○レッスン-バブルの背景
・「住専」について説明します。1970年代前半までは日本は「高度経済成長期」でした。庶民は家を建てたいけど、纏まったお金がありません。そこで「住宅ローン」が登場します。
・ところが住宅ローンは、会社への融資と比べ少額で、しかも返済期間が長くなります。そのため銀行は扱いません。そこで住宅ローンを専門にする「住宅金融専門会社」(住専)が作られます。住専は預金を受け付けないので、銀行からお金を借りて運営される「ノンバンク」です。

・ところが大企業が「社債」を発行するようになると、銀行の貸出先が少なくなり、住宅ローンも扱うようになります。ちなみに社債は銀行を介さないので、会社にも購入者にも利子でメリットがあります。※間接金融より直接金融だな。

○コーヒーブレイク-株と社債
・株と社債は似ています。しかし株は経営に関与できますが、社債は単にお金を貸しているだけです。

○住専とバブル
・住専は銀行に住宅ローンを取られたため、銀行が嫌っていた不動産関係への融資を始めます。ところが「マイホームブーム」「土地神話」で、不動産関係の会社も住専も大儲けします。住専にお金を貸していた銀行も大儲けします。不動産関係の会社は事業を拡大し、マンション/ホテル/ゴルフ場などを作り、「バブル」を起こしたのです。

○バブル崩壊
・余りに土地が高くなったので、庶民が不満を持つようになります。そのため政府は、不動産関係の会社への融資を規制します(不動産融資総量規制)。また日銀も公定歩合を2.5%から6.0%に引上げます。これらにより、カネ回りは急速に悪化し、バブルは崩壊します。
・ちなみに急いで行う対策が「ハード・ランディング」で、穏やかに行う対策が「ソフト・ランディング」です。

○住専の破綻
・バブル崩壊で、住専は大量の不良債権を抱えます。そのため住専8社の内、7社が倒産します。その7社の銀行への不良債権は6兆4100億円に達します。
※日本のバブルは不動産に限定されたバブルで、リーマンショックに比べると小規模とされる。しかしその後日本経済に与え続けている影響は甚大の気がする。それとも失われた30年の要因はグローバル化が大きいかな。

<第4章 バブル崩壊後の日本と景気対策>
○不良債権の処理
・バブル崩壊から10年以上経過しましたが、不況が続ています。その原因は「不良債権の処理」の遅れになります。不良債権の担保を売却し、貸出金の一部を回収する事を「不良債権の処理」と云います。
・しかし土地・株の値段が下がり続けているため、銀行はそれができませんでした。銀行は土地・株が少し上がると、それを売ろうとしますが、他の銀行も売ろうとするので、価格は下がり続けています。またデフレのため、新たな不良債権も発生しています。

○貸し渋り
・銀行は経営が苦しくなっているため、「貸し渋り」「回収」(貸し剥がし)を行うようになりました。これにより会社は倒産し、失業者を出し、景気を悪化させています。他にも「BIS規制」があり、銀行は貸出が難しくなっています。

○自己資本比率
・銀行が持っているお金(総資産)は、「自己資本」と借りている「他人資本」に分けられます。銀行は預金などの「他人資本」で運営されています。自己資本は、自社の株や「株の含み益」で、これは「純資産」です。自己資本比率=自己資本/総資産で、これが高いと経営基盤が堅固と云えます。

○BIS規制
・国際決済銀行が、「外国で仕事をするには、自己資本比率が8%以上」(BIS規制)と定めました。※これは国際的な業務なのでメガバンクに限られるのでは。

○貸し渋りや回収の理由
・銀行はバブル崩壊で、貸出金の回収が進まず、資金が不足しています。しかし預金を増やすと総資産が増える(自己資本比率が下がる)ため、これはできません。また「不良債権の処理」は自己資本で穴埋めするため、これもできません。そのため「貸し渋り」「回収」をせざるを得ないのです。※選択と集中/少数先鋭の貸出しかない。

・また銀行が保有する株の価格も下がったため、「株の含み益」も減少し、自己資本比率を下げています。
・しかし銀行の「貸し渋り」は、経済をさらに悪化させ、さらなる「貸し渋り」を生んでいます。※負のスパイラルだな。

○貸し渋りをなくす方法
・「不良債権の処理」が進まない限り「貸し渋り」はなくせません。そこで政府は、銀行の自己資本を増やすため、公的資金の注入を始めました(資本注入)。資本注入は「転換型優先株」で行われました。転換型なので、一定期間が過ぎると株への交換が可能になります。当然、株に交換すると経営に関与できます。※こんなのがあったかな。

・資本注入により、1999年「金融危機」を乗り切ります。また以前は日本の金融機関の信用が低く、海外で金利に「ジャパン・プレミアム」を上乗せされていましたが、それが解消されます。※原油にはアジア・プレミアムがあった。
・しかしその後も2000年「ITバブル」や、依然続くデフレなどで経営は厳しく、再度の資本注入が検討されています。

○コーヒーブレイク-1円円安になると、1兆円の貸し渋りが起こる
・日本の大手銀行は海外支店など、1兆ドルの「外貨建て資産」を持っています。そのため為替が1円円安(例えば1ドル120円が121円)になると総資産が1兆円増えるため、その分「貸し渋り」しなくてはいけません。※1円の円安は簡単だけど、貸し渋り1兆円の影響は多大では。

○景気対策
・政府の景気対策には「減税」「公共事業」があります。減税は「税金」を減らす事です。税金は道路・橋の建設、公務員への給料などに使われます。減税すると国民の手元に多くのお金が残り、それが消費に回り、景気の好循環が期待されます。国の税収は減税分減りますが、法人税・所得税・間接税(消費税など)の増収が望めます。しかし景気が悪すぎると、将来不安から貯蓄に回る可能性があります。※旨くできているな。貯蓄されなければだが。

○レッスン-税金の種類
・税金には「直接税」「間接税」があります。「法人税」「所得税」は直接税です。一方「消費税」「酒税」「たばこ税」などが間接税です。

○公共事業
・公共事業は、国が道路・橋などの「インフラストラクチャー」(インフラ)を整備する事です。不景気の時は国民がお金を使わないので、国自らがお金を使い、確実に景気に影響を与えます。建設会社・土木会社・鉄鋼会社・電器会社など、特定の会社の儲けになります。また失業率を下げる事にも繋がります。
・日本のGDPは約500兆円なので、5兆円使えば、経済成長率を1%上昇できます。ただし「無駄遣い」が問題になっています。「1600億円で港を作ったが、釣り堀になった」「計画の1/100しか船が来ない港」「120億円で農道空港を作ったが、採算が合わないため使われていない」などが問題になっています。これは政治家が採算を度外視し、お金を地元に落させたからです。

○公共事業はやるべきか
・無駄な公共事業は止めるべきですが、光ファイバーなどの「情報・通信インフラ」は整備すべきでしょう(※これは国がやっているの?)。他に少子高齢化対策として、介護施設などの医療・福祉に関するインフラも整備すべきでしょう。

○レッスン-資本主義
・リンゴが豊作になると、価格は下がります。それは価格が、需要と供給のバランスで決まるからです。これは1776年アダム・スミスの『国富論』での「神の見えざる手」(市場)の考え方で、今は「マーケット・メカニズム」と呼ばれます。これが作用する社会が「市場経済」「資本主義社会」です。※多分これは市場原理主義なので、市場原理と表記します。

○米国で起こったバブル崩壊 ※世界大恐慌としていない。
・1929年ニューヨーク株式市場で株が大暴落し、失業者が増大し、失業率は25%に達します。しかし当時は市場原理が信じられていたので、楽観視されました。

○マーケット・メカニズムの欠点
・市場原理だと社員の給料が減らされるだけですが、実際は解雇となったのです。給料を減らすとヤル気のある社員は出て行き、ヤル気のない社員が残る事になリ、不況になっても給料を減らせないのです。1936年ケインズが、この市場原理の欠点を『一般理論』で指摘します。

○ケインズ革命
・不況になると失業者が発生し、消費は減少し、会社の仕事・利益は益々減少します。そこでケインズは、政府による公共事業で失業者を減らし、減税で景気を回復すべきと提言します。そこでルーズベルト大統領は「ニューディール政策」でダムを作るなどの公共事業を行います。
・「ケインズ理論」は「財政政策」だけでなく、「金融政策」にも触れています。そのためケインズ理論は「ケインズ革命」と云われました。※凄いな。

○マクロ経済とミクロ経済
・このケインズ理論から、マクロな視点で経済を考察する「マクロ経済学」が生まれます。マクロ経済学で国の経済状況を知る場合、物価上昇率/失業率/経済成長率/国際収支を見ます。一方ミクロな視点で経済を考察するのが「ミクロ経済学」です。

<第5章 借金大国日本>
○国債
・会社がお金を借りる時は「社債」を発行し、国がお金を借りる時は「国債」を発行します。国債には、税収不足を埋める「赤字国債」と、道路・橋などを作る「建設国債」があります。また期間により以下に分かれます。1年以内「短期国債」、2~4年「中期国債」、5~10年「長期国債」、10年超「超長期国債」。日本は10年物の長期国債が大半です。この「利回り」は銀行の貸出金利に影響を与えます。※国債の大半を金融機関が保有しているからな。

○なぜ国債がこんなに増えたか
・日本の借金は700兆円を越えています。1つ目の理由は、景気の悪化による税収減です。2つ目の理由は、「歳出」の増加です。

○歳出増加の原因
・「高齢化」により「年金」「医療費」などの社会保障費が増えています。また景気が悪いため、公共事業も行っています。※公共事業は増えていたかな?
・無駄に終わった景気対策も沢山あります。1997年減税を行いますが、国民はお金を貯蓄に回し、景気は良くなりませんでした。また無駄使いと思われる公共事業も多くあります。

○大きな政府/小さな政府
・ケインズ理論は政府が経済に介入するため、必然的に「大きな政府」になります。「大きな政府」だと効率が悪くなります。国鉄(JR)/電電公社(NTT)は民営化により黒字化し、サービスが良くなりました。
・国は競争相手がいないため、市場原理が働きません。借金を減らしたいのであれば、「小さな政府」にすべきです。

○大きな政府/小さな政府、どちらに向かうべきか
・日本は「大きな政府」から「小さな政府」に向かうべきと思います。日本は「少子高齢化」し、経済は縮小するので、「小さな政府」に向かうべきです。※日本は米国に次ぐ、「小さな政府」と思うが。
・しかし「小さな政府」になると、「自己責任」が求められ、格差が激しくなります。そのため最低限の「セーフティーネット」は必要です。
・どちらが好ましいかは、個人毎に異なります。これを決するのが選挙で、選挙に勝った政党に委ねられます。

○コーヒーブレイク-セーフティーネットとモラルハザード
・「セーフティーネット」を最低限にする理由は、「モラルハザード」を生むためです。モラルハザードとは厚い社会保障で、ヤル気を失う事で、これは避けなければいけません。

○レッスン-少子高齢化
・女性の社会進出などで、子供の数が減っています。これが「少子化」です。一方平均寿命が延び、高齢者が増えています。これが「高齢化」です。

○公的年金
・老後の生活のために国が給付する年金が「公的年金」です。この中で、毎月13,300円払う事で得られる年金が「国民年金」です。
・今は年金をもらっている人と払っている人の割合は、1:4です。しかし2025年になると、1:2に変わります。そうなると国の負担がドンドン増えます。

○少子高齢化と税金
・税収を増やすには、どうしたら良いでしょうか。「所得税」などの「直接税」を増やすのは無理です。そのため「消費税」などの「間接税」を増やすしかありません。また消費税は高齢者からも徴収されるので、少子高齢化の影響は少ないのです。
※先日財政に関する大著を読んだ。それには「給付は一律均等にすべき」とあった。こちらは徴収の方だが、こちらも普遍化すべきだろうか。

○消費税は何%になるか
・年金・福祉・医療などへの歳出で、消費税は10%を超えるでしょう。北欧では20%を超える国もあります。

○コーヒーブレイク-公的年金は必要か
・民間にも年金があります。しかし公的年金は物価上昇を考慮しますが、民間年金は考慮しません。また公的年金は最低限の社会保障です。

○日本とインフレ
・日本でインフレは発生しないと思われていますが、「第1次オイルショック」(1973年)「第2次オイルショック」(1979年)が起きています。また今日、「調整インフレ」が注目されています。これは日銀が「マネーサプライ」(通貨供給量)を増やし、無理矢理インフレを起こさせる政策です。これで国の借金を大幅に縮小できます。※内容は知っていたが、名前があったのか。
・似た政策に「インフレ・ターゲット」があります。これは物価上昇率を2~3%で調整する政策です。

○国の借金とデフレ
・日本は1999年より「デフレ」になっています。そのため税収は減り、かつ借金は利子によって増え続けています。※「借金は利子によって増え続ける」と書かれているが、デフレでもインフレでも、利子も借金の総額も変わらないのでは。要は物価の下落によって、借金が相対的に増えるのでは。
・そのためデフレを食い止める必要があります。それにはお金(円)の価値を下げる政策が必要です。それには「円安誘導」「量的緩和」の2つがあります。

・まず「円安誘導」ですが、円安により輸入品が高くなり、物価が上がります。また日本経済を支えている輸出企業にも有利です。ただしアジア諸国にダメージを与えます。
・次の「量的緩和」は、日銀が「買いオペ」を続け「マネーサプライ」を増やす方法です。日銀は2001年より、これを行っています。しかし「不良債権の処理」が進まないと、会社への貸出は増えないと考えられます(詳しくは後述)。※それでマイナス金利まで導入したんだ。あと上からのプッシュ型ではダメかな。需要(下)からのプル型が起きないと無理かな。やはり将来不安の解消が、消費を拡大させるかな。

<第6章 財政政策と金融政策>
○国債を大量に発行すると、景気が悪くなる
・国債を大量に発行すると、国債の利回りは上がります。そうなると銀行の貸出金利も上がり、お金の流れは悪くなり、景気は悪化します。※金融機関はお金が余っているので、国債を買うのでは。

○国債を大量に発行すると、円高になる
・国債を大量に発行すると、国債の利回りは上がります。そうなると米国債を持っていた人が、日本の国債を買うようになります。これにより円高ドル安に向かいます。※海外の保有者は少ないと思うが。

○国債を大量に発行すると、株安になる
・国債を大量に発行し、円高ドル安になると、日本の輸出企業の経営は悪化します。そのため日本の輸出企業の株価は下落します。また国債と株はライバルで、株の魅力がなくなると、利回りが上がった国債を買うようになります。※国債が買われると利回りは下がる。国債の利回り≒株の配当≒貸出金利で、収束するかな。

○国債の利回りを下げる
・上記の問題は、国債の利回りを下げれば起きません。国債の利回りも供給と需要の関係で決まるので、需要を増やせば良いのです。1999年政府は2倍の国債を発行しましたが、日銀が「短期金融市場」の金利をゼロにする事で対応しました。

・「短期金融市場」は、日銀を含め金融機関が短期の貸し借りをする市場です。日銀がここに大量にお金を供給し、金利をゼロにしたのです(ゼロ金利政策)。そのため短期金融市場での貸出で儲けていた生命保険会社などは、国債・株を購入せざるを得なくなります。しかし「ゼロ金利政策」には金利をゼロ以下にできない欠点があります。※原油先物みたいにマイナスにならないか。デフレならマイナスになってもおかしくないが。

○ゼロ金利政策の解除
・2000年8月日銀は経済の改善が見られたため、短期金融市場でのゼロ金利政策を止め、金利を0.25%に上げます。しかし「ITバブル」により景気は悪化します。そこで新たに導入したのが「量的緩和」です。

○金融政策
・日銀は「買いオペ」「売りオペ」により金融機関のお金を変動させ、短期金融市場の金利を調節しています。

○ゼロ金利政策と量的緩和の違い
・「ゼロ金利政策」は金利をゼロにするのが目的なので、金利がゼロになる分だけ、金融機関にお金を供給します(※短期金融市場でかな)。一方「量的緩和」は、金融機関に供給するお金を設定し、その分だけ供給します。※これも短期金融市場で、実施条件が違うだけかな。量的緩和には政策が付かないんだ。

○量的緩和の効果
・量的緩和により金融機関は潤沢なお金を持つようになりましたが、会社はお金を借りようとしません。やはり「不良債権の処理」で自己資本が減少し、「貸し渋り」があるのです。よって銀行は潤沢なお金を活用できていません。※日銀に借りているのに、自己資本なのかな。※貸出しないで国債を買うしかないのかな。社債とかは買っていないのかな。
・会社は利益が出れば、通常はそれで事業を拡大します。しかし今は借金の返済に当てています。「不良債権の処理」が進むと、事業が拡大され、景気も改善されるでしょう。※大分前に不良債権の処理は完了したと聞いた記憶がある。あと今は会社に剰余金があっても、それを投資に使わないと聞いている。

○国債の大量発行が、世界恐慌を引き起こす
・実は1999年国債の大量発行は、世界恐慌を引き起こす可能性がありました。当時は米国以外は景気が悪く、米国はバブルで、米国が転ぶと世界恐慌になる状況だった。日本が国債を大量に発行すると利回りが上がり、米国債を売って日本国債を買うようになります。そうなると米国債の利回りが上がり、米国株を売って米国債を買うようになる可能性がありました(※米国株を売って、日本国債を買うではダメなのかな)。さらに1999年後半は米国で金融不安も起こっていました。
・しかし日銀が「ゼロ金利政策」を行ったため、利回りは上がらず、世界恐慌は避けられました。※日本の経済規模も捨てたもんじゃないな。

○世界経済は繋がっている
・世界経済は一気に「マネー経済」に移行し、「グローバル化」が進みます。日本は金融業界の「規制緩和」である「金融ビッグバン」を行います。「デリバティブ」「金融派生商品」が生まれ、「ヘッジファンド」はこれを活用し「新興市場国」(?)をメチャクチャにします(通貨危機)。日本の長期信用銀行の破綻も、これによります。※マレーシアの金融危機は国債だったと思うが。

<スペシャル・レッスン 最新の金融政策>
○現在は公定歩合を操作していない?
・1994年10月「銀行の金利」は自由化されます。また銀行は「短期金融市場」でお金を借りていたため、「公定歩合」は効力がなくなります。そこで日銀は短期金融市場の金利を操作するように変わります。
・短期金融市場の金利とは、「無担保コール翌日物金利」(オーバーナイト金利)の事です。日銀はこれを、「買いオペ」で操作しています。※買いオペ/売りオペは、どこでやっているのか。最後まで分からなかった。

○現在の公定歩合の役割
・実は2001年「ロンバート型貸出制度」により公定歩合は復活します。これは日銀が、金融機関に無制限に公定歩合で貸し出す制度です。この制度は金融不安を解消するのが目的ですが、公定歩合は短期金融市場での金利の上限になりました。

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