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『迫り来る日本経済の崩壊』藤巻健史(2014年)を読書。

本書は2月に購入していたが、丁度長期金利が問題になり始めた。
日銀による国債の大量購入が限界に達した時、長期金利が上昇し、トリプル安(国債、株、為替)になるとしている。

「量的緩和に出口はない」「ハイパーインフレは大増税に等しい」「ハイパーインフレで生き延びる方法」などが書かれている。
基本的な話なので、知っておいた方が良さそう。

アベノミクスが始まって1年後(2014年6月)の出版なので少し古い。

お勧め度:☆☆☆(読み易い)
内容:☆☆

キーワード:<財政破綻のリスクは、日に日に高まっている>長期金利、国の借金、資金繰り倒産、ヘッジファンド、イールドカーブ、量的緩和、<アベノミクスで景気は良くなるか>3本の矢、量的緩和、インフレ、資産効果、円安、財政破綻、国債、<ハイパーインフレまっしぐら>国債引き受け、逆進性、マネタリーベース/マネーストック、<量的緩和に出口はあるか>国債売却、金利引き上げ、<なぜこんなに借金がある>消費税、プライマリーバランス、累積赤字、<財政再建の道はあるのか>消費税、社会保障費、<黒田総裁、大丈夫か>量的緩和の縮小、円安、米国債の購入、マイナス金利、<財政破綻はいつ起きる>ねずみ講、消費増税、経常収支、国債未達、社会主義国家、<日本は必ず甦る>円安、<資産を防御する方法>外貨資産、MMF、<おわりに>真の資本主義

<第1章 財政破綻のリスクは、日に日に高まっている>
○金利が上昇すれば、全てがお終い
・日本経済の最大のリスクは長期金利の上昇です。長期金利が上昇すると、日本経済は一巻の終わりです。長期金利を抑え込めるかが命運を握っています。ただし円安になるので、経済は回復します。

・長期金利が日本を揺るがす原因は、「国の借金」が1025兆円(2014年3月)もあるからです。毎年10兆円返しても、100年掛かります。今「税収+税外収入」で55兆円なので、歳出を45兆円に押さえねばなりません。ところが今年度予算は96兆円です。これでは累積赤字は解消できません。
・東日本大震災で11.6兆円の復興債が発行されました。その時の財源案が、所得税・法人税を5年間10%上乗せする案でした。これを見ても1025兆円の借金が、いかに巨額か分かります。因みに、復興債は財源を明示しなければいけませんが、国の借金は財源を明示する義務はありません。

○国にどんな資産があっても、財政は破綻する
・「国は巨大な資産を持つので、純負債額は大きくない」と言う人がいます。反論は幾つかありますが、1つだけ挙げると、会社が倒産するのは「資金繰り倒産」なのです。金利が上昇すると、支払金利額が急増し、財政を圧迫します。

・「名目金利=実質金利+期待インフレ率+倒産リスク」です。アベノミクスでインフレ率が上昇すれば、名目金利も上昇します。ただし日銀が金利を1%上げても、直ぐに支払金利額が10兆円増える訳ではありません。それは国債は5年物/10年物などで、固定金利だからです。
・金利が5%になると支払金利額だけで50兆円になり、「税収+税外収入」が全て飛んでしまいます。「その時は景気も良く、税収も増える」と言う人もいますが、過去最大の税収は1990年度の60兆円です。当時は消費税率が3%でしたが、5%だったとしても、税収は70兆円位にしか増えません。

○今の異常な低金利は続かない
・今の長期金利は0.6%で、政策金利は0.0~0.1%です。金利が5%になる話をしましたが、あり得ない話ではありません。私(※著者)がトレーダーをしていた1980年代、有担保オーバーナイト・コールレート(※政策金利に相当かな)は12.75%でした。1972年は未曾有の低金利と言われていましたが、公定歩合は4.25%でした。
・アベノミクスが成功すると、長期金利が0.6%から6%になる事は十分考えられます。1985年国債先物市場ができましたが、その時のクーポンは6%でした。これが妥当なレベルと考えられていたのです。※バブル崩壊後は低金利かな。

○日本は資金繰り倒産寸前
・財政が崩壊しないのは超低金利だからです。金利が急騰すると、「資金繰り倒産」します。繰り返しますが、企業が倒産するのは、バランスシートでの債務超過ではなく、給料が払えない/資金が調達できないなどの「資金繰り倒産」なのです。国で云えば、公務員に給料が払えない、自衛艦の燃料代が払えないなどです。米国では国立公園や自由の女神が一時的に閉鎖されました。
・「米国で起き、日本で起きないのは、米国の財政が日本より厳しから」ではありません。米国は国債発行の上限が決まっているので、それ以上国債を発行できないからです。

・その米国は財政が改善しています。2009年財政赤字は対GDP比10.1%ありましたが、2014年は3.7%にまで縮小しています。米国の回復力は凄いものです。
・しかしそんな米国でもEUに加盟できません。マーストリヒト条約の収斂基準は「単年度赤字額がGDPの3%以内」「累積赤字額がGDPの60%以内」で、単年度赤字額が3.7%では加盟できません。因みに日本はGDP478兆円で、累積赤字1018兆円/単年度赤字額51兆円なので、単年度赤字額はGDPの10.7%、累積赤字額はGDPの213%で、何れも3倍以上です。
・米国/EUと違って日本には自主ルールがないので、公務員に給料が払えなくなると国債を増発すれば良いのです。この様に幾らでも国債を増発できるのは、低金利のためです。

○なぜ金利が上がらない
・予算委員会で麻生大臣に「財政は破綻しませんか」と訊ねると、「国債は信用され、金利が低位安定している。心配していない」と答えました。しかしこれは日銀が大量に国債を買っているからです。しかし日銀が、未来永劫買い続ける事はできません。

○国債を買う人がいないと、財政は破綻する
・某教授は「どの金融機関も国債を持っている。持っている国債を売ると、保有国債の価値を下げ、自分の首を占める。そのため売る事はない」と述べました。これには幾つか反論があります。第1の反論は、国債先物市場があるので、誰でも売りから入る事ができます。これを行うのがヘッジファンドです。ヘッジファンドは教職員組合や公務員組合の年金ファンドです。彼らはいびつなマーケットを狙って、年金を増やそうとします。彼らはいびつなマーケットを作らないための必要悪なのです。
・第2の反論は、実際に国債市場が大きく崩れた事が何度もあります。機関投資家が株主への責任から、我先にと売っています。1987年日本国債の金利が4ヶ月で2.55%から6%に上昇しています。1998年「資金運用部ショック」では、1ヶ月で0.6%から2.4%に上昇しています。
・第3の反論は、「国債は売る人がいないので下がらない」は間違いです。毎年40兆円国債が発行されています。これを買い増してくれる人がいるから下がらないのです(※これは重要だな)。買い増してくれる人がいなくなれば、値段は暴落します(金利が暴騰する)。そうなると日銀が発行している紙幣は信用を失い、円も暴落します。当然株も大暴落し、トリプル安になります。

○国債が暴落しないのは、銀行が大量買いしているから
・1997年橋本内閣で「財政構造改革法案」が成立します。ところが山一證券/三洋証券/北海道拓殖銀行の倒産で、それどころではなくなり、その後廃案になります。この法案には「財政は危機的」と書かれていました。この時累積赤字は369兆円で、今は1025兆円です。しかもGDPは逆に523兆円から483兆円に下がっています。
・それなのに財政が破綻しないのは、民間の金融機関が国債を買っているからです。景気が悪いので融資が伸びず、金融機関は国債を買うしかないのです。さらに政府は長期国債の発行を減額し(※減額したかな?)、日銀はその購入を増額したのです。それで長期金利が抑え込まれているのです。

・ここで留意して欲しいのが金融機関の収益構造です。銀行は定期預金と融資の利ザヤで稼いではいないのです。当座預金/普通預金などの短期でお金を集め、長期の融資や長期国債で利ザヤを稼いでいます。期間による金利のミスマッチで稼いでいるのです。※これも需要だな。
・今は長短の金利が近付きましたが、かつては金利差がありました。横軸に期間/縦軸に金利のグラフは「イールドカーブ」(利回り曲線)と云います。これが立っていると銀行は儲かるのです。1998年「資金運用部ショック」で長期金利が急騰しましたが、政府・日銀により抑え込まれました。以降イールドカーブは寝たままになっています。
・1970年代米国はイールドカーブを立てる事で金融危機を乗り越えました。逆に日本では金融庁が「儲けないと会長・頭取はクビだ」と脅しました。それでも銀行は国債を買い続けたのです。※規制当局に逆らえないのか、それとも集団カエル体制か。

・日本が真の株主資本主義であれば、超低金利の国債は買いません。株主にクビにされるからです。私が勤めていたJPモルガンは積極的に海外投資を行い、数兆円の利益を上げていました。一方日本の銀行は史上最高益でも数千億円でした。日本の会社に、株主からのプレッシャーはないのです。
・さらに日本には、政府的なゆうちょ銀行/かんぽ生命保険があり、国債を大量に買っています。一時ゆうちょ銀行の資産は88%が国債でした。
※何で金融機関は海外投資しないのか。円高なので利益が出ないのかな。それとも今は十分海外投資しているのかな。なぜ超低金利の国債にしがみ付くのか。

○大手銀行が国債を減らし始めた
・民間の金融機関は国債の保有高を減らし始めました。銀行の保有高は、3013年3月167兆円だったのが、2014年2月には132兆円に減りました。ゆうちょ銀行でさえも、138.1兆円から131.6兆円に減らします。また長期国債を短期国債に買い替え、残存期間を7年から3年に短縮しました。※金融庁の「買えプレッシャー」はあったんだろうが。金融緩和で日銀が長期国債を中心に買い漁るので、銀行の保有高が減少したのかな。因みに2016年三菱UFJ銀行が特別参加資格を返上している。
・地方銀行も国債の保有残高を減らしています。横浜銀行/山陰合同銀行は外国証券の保有高を倍増しています。

・皆が国債を売り始めたのに、国債が暴落しないのは、日銀が買っているからです。毎月発行される長期国債の7割を日銀が買っています。※毎月の保有額のグラフがある。2013年1月は120兆円(短期30兆円、長期90兆円)が2014年4月は210兆円(短期50兆円、長期160兆円)で、90兆円増(75%増)だな。1年3ヵ月の間に、2年分以上買ってる。
・これがお金をジャブジャブにする「異次元の量的緩和」です。日銀はマネタリーベース(銀行券の発行高+通貨流通量+日銀当座預金)を、昨年3月末135兆円から本年末270兆円にするとコミットしています。※2年弱で倍増!

○国債買いを止める12月に注意
・日銀は1年9ヵ月で長期国債を100兆円購入するのです。ここで重要なのは「お金をジャブジャブにする」事ではなく、「日銀が国債を大量に購入している」事です。日銀が国債を買わなくなると、毎年40兆円の国債を誰が買い増すのか。これに注意しなければいけません。国債・株・円のトリプル安になります。またハイパーインフレになり、生活は苦しくなります。「日銀が買わなければ外国人が買う」と言う人がいますが、0.6%の超低金利の国債を買う人はいません。

○日銀が国債を買い続けるのは、ねずみ講と同じ
・日銀はマネタリーベースを270兆円にする事を約束しています。政府が毎年発行する国債40兆円を誰が買うのでしょうか。日銀がマネタリーベースを300兆円にするしかないのです。その次はどうするのでしょうか。日銀が増額するしかないのです。この「ねずみ講」は必ず破綻します。
・日銀は「マネタイゼーション」をやっているのです。円が信用されなくなり、暴落すると、ハイパーインフレになります。当然国債を大量保有する日銀は倒産します。ブレトンウッズ体制では円はドルと固定レートでリンクしていました。そのためドルに替えれば金との交換も可能で、間接的に金本位制でした。しかし今は国債本位制と云えます。その国債が暴落し、価値がないとなると、円は大暴落します。

○国債が暴落すると
・円が暴落すると、インフレになります。それは円安になると、直ぐにガソリンが高くなるので分かります。インフレが加速すると長期金利はさらに上昇し、円もさらに下落し、スパイラル的な暴落になります。市場は「さらなる量的緩和」を要求していますが、そんな次元の話ではないのです。国債市場でマネタイゼーションだと認識されると、日本経済はお終いなのです。
・繰り返しますが重要なのは「お金をジャブジャブにする」事ではなく、「日銀が国債を大量に購入している」事です。いつかは購入を止めなければいけません。遅く成れば成るほど、衝撃は大きくなります。※恐ろしい話だな。

○なぜヘッジファンドは国債の売り仕掛けをしないか
・国債には先物市場があります。なぜヘッジファンドは国債の売り仕掛けをしないのでしょうか。実はヘッジファンドは何度か売り仕掛けをしているのでが、その度に失敗しています。それはヘッジファンドに誤解があり、一団にならなかったからです。第1の誤解は、「日銀は、いつまでも国債を買い続ける」です。しかしこの終わりは意外と早くやってくるでしょう。
・第2の誤解は、「日本政府には徴税権があり、いざとなれば増税する」です。「日本の消費税率は8%で、いざとなれば20%に上げる」との考えです。しかし日本は長らく消費税率が低かったので、30~40%にしないと解決できません。そんな税率を国民は認めないし、そうなると景気は落ち込みます。

<第2章 アベノミクスで景気は良くなるか>
○アベノミクスとは
・アベノミクスは、金融政策/財政政策/成長戦略の3本の矢です。実質は「異次元の量的緩和政策」の一本槍です。2本目の財政政策は、369兆円(1997年)だった借金を1025兆円にまで増やしたのですが、名目GDPは下がっています。その間米英は名目GDPを2.4倍、中国は16倍にしています。それなのに日本だけが縮小しています。※デフレだからな。
・3本目の成長戦略は、1986年内需振興策の「前川レポート」が発表されます。それ以来、規制緩和などの何千本もの成長戦略が射られたのですが、GDPは縮小しました。

○日銀が世界で初めて量的緩和を行った
・リーマン・ショック後、連邦準備制度理事会(FRB)が量的緩和を行いましたが、これは日銀の7年後です。この時「日銀のバランスシートの拡大が遅い」と批判する人がいましたが、その時までに十分に拡大していたのです。
・量的緩和は日本が初めて行ったのです。戦争中に行った国もありますが、その後はハイパーインフレになり、暴力的な資金回収を行っています。2006年白川前日銀総裁は量的緩和を止めますが、バランスシートを縮めるには満期を待つしかないと悟ったのです。そのため安倍首相の要請に抵抗したのです。

○量的緩和はどの様に始まったのか
・量的緩和とは、日銀の当座預金を増やす、あるいは発行銀行券を増やす事です。昔は公定歩合で調整していましたが、金利がゼロになったので、量的緩和を始めたのです。お金の量を増やすと経済が活発になると考えたからです。

・2001年量的緩和を始めた時、日銀の当座預金には4兆円ありました。これは準備預金額とほぼ同額です。2011年これにゆうちょ銀行も加わり、準備預金額は6兆円になります。2011年9月量的緩和を始めると、この当座預金が一気に増え、12月には15.6兆円になります。量的緩和前、日銀は当座預金に準備預金額以上置くのを許しませんでした。「これでは金融緩和の意味がない」との疑問が湧くでしょうが、当座預金にも市中にも、お金はジャブジャブです。

○インフレになっても景気は良くならない
・安倍首相はインフレターゲットを目標にしています。ところが景気が良くなるとインフレになります。しかしインフレになっても景気は良くなりません。インフレにしたいのであれば、授業料/電気代/ガス代/交通費などの公共料金を上げれば良いのです。しかしそれでは景気は良くなりません。イタリアの消費者物価指数(CPI)は2.8%、スペインは3.2%です。しかし両国とも景気は低迷しています。

・インフレには2種類あって、食料/日用品/給料などが上がるのが「フローのインフレ」です。CPI/GDPデフレクターがこれに該当します。一方株・不動産などの資産価格が上がるのが「資産インフレ」です。この両者は全く別物です。※これは留意しておこう。
・私は「資産価格の上昇こそが、景気回復の原動力」と主張してきました。そのため「円安になると資産インフレが起き、景気は回復する」(円安論)を推してきたのです。株・不動産が上がると、お金持ちは消費を増やし、これが景気の好循環を生むのです(資産効果)。リーマン・ショック前、米国人エコノミストが「米国の株・不動産はバブルだ。バブルがはじけると、景気は悪化する」と主張していたが、正にそうなりました(資産効果)。アベノミクスは「インフレ率2%」ではなく、「資産インフレ」を目標にすべきです。※今はそんな状況かな。バブルは、いずれ崩壊するので危険だけど。財政破綻するとトリプル安(国債、株、円)になるとあり、これに円安が含まれているので、景気回復の要因になる。

○デフレから脱却しつつある
・株価も上がり、不動産価格も上がり、景気は上向いています。この原因は円安です。円安になれば、日本の多くの問題は解決します。それなのに政府・日銀は「低い物価上昇(ディスインフレ)の主犯は円高である」と発言しません。「賃金低下がデフレの原因」と主張する人がいますが、これは結果で、原因ではありません。
・円安政策を採らなかったのは、国民が外貨資産を買うようになると、円預金が減少し、国債を買う資金が減るからです。政府・日銀は円安政策を採っていれば、財政再建できました。※円安になると国債が下落するのに財政再建できる。矛盾する気がする。

○日本人は通貨の重要性を理解していない
・日本人の給与が20万円、外国人の給与が2000ドルだとします。為替が1ドル=100円だと両者は同額です。ところが円高(1ドル=50円)になると、外国人は10万円で雇えます。そうなると企業は拠点を海外に移し、日本は空洞化します。
・新聞に「日産、国内生産100万台割れ」とありました。私は日産は外国企業と考えています。社長はゴーンだし、株主の70%は外国人です(※グローバル企業だな)。記事には国内生産100万台、海外生産408万台とあります。この原因は円高です。

・「円安になると輸出は有利だが、輸入は不利になる」と言う人がいますが、これは間違いです。小麦・大豆・肉などは輸入に依存し、輸入産業と呼ばれます。例えば日本産の砂糖10Kgが10万円、外国産の砂糖10Kgが1000ドルだとします。為替が1ドル=100円だと両者は同額です。ところが円高(1ドル=50円)になると、外国産の砂糖は5万円で買えます。そうなると日本のサトウキビ農家は大打撃です。※円高は国内産業を縮小させ、円安は国内産業を拡大させる。
・私が学生の頃は360円/ドルでしたが、2011年には75円/ドルになります。日本のモノ・サービス・賃金は5倍になったのです。それでは誰も日本のモノを買いません。円安にすれば、日本の産業は復活します。

・アベノミクスは成功していますが、賃金は上がっていません。それは1ドル=102円位では、全然円安ではないのです。1ドル=108円位になると、日本に工場が戻ってきます。為替は値段そのものです。日本人は通貨の重要性を理解していません。

○量的緩和で円安になったのでは
・円安により資産価格が上がり、デフレから脱却したのは事実です。しかし「量的緩和が円安に導いた」は疑問です。量的緩和を始めた昨年4月は95円/ドルで、それから10円円安になりました。しかしマネタリーベースは135兆円から209兆円になり、74兆円も増えたのです。
・量的緩和で74兆円も費やしたのに、10円しか円安になっていません。1990年マネタリーベースは44兆円で、135円/ドルでした。2011年マネタリーベースは118兆円に3倍に増やしますが、為替は78円/ドルで、逆に円は2倍高くなったのです。量的緩和と円安は無関係です。

○量的緩和は百害あって一利なし
・量的緩和にはハイパーインフレのリスクがあります。私が現役の頃は、マネタリーベースは40兆円でした。それを7倍の270兆円にするのです。ビットコインの問題点は、発行者に責任がないので、発行量の制御が効かないのです。今の日銀がそうです。
・昨年景気が良かったのは、102円/ドルと円安になったからです。今年は消費増税の駆け込み需要があったのに景気が上向かないのは、円安が止まったからです。「円安→資産価値上昇→景気回復」は真ですが、「量的緩和→円安→資産価値上昇→景気回復」は真ではありません。安倍首相は首相になる前から「円高が悪い」と叫んでいました。これにより昨年は円安になったのです。

○量的緩和が通用しない訳
・私はイエール大学の浜田宏一教授と話をした事があります。彼が私の『なぜ日本は破綻寸前なのに円高なのか』を読み、「私と話をしたい」となったのです。そこで「景気低迷の原因は円高」の共通認識を持っているのが分かりました。その解決方法が、浜田先生の場合は量的緩和なのです。

・ところが日本は真の資本主義でないので、量的緩和しても円安にならないのです。真の資本主義であれば、お金がジャブキャブになれば海外に資金が流れ、円安になります。ところが日本は社会主義国家なのです。例えばゆうちょ銀行のように預金が集まっても、海外に投資する事はなく、日本国債を買うのです。ゆうちょ銀行は預金の65%で国債を購入しています(以前は88%)。
・私はモルガン銀行に勤めていましたが、利回りが0.6%の国債に投資していたら、クビになっていました。日本は社会主義国家なので、量的緩和と円安が直結しないのです。

○財政破綻が延びると、ダメージは大きくなる
・それではアベノミクスの本質は何でしょうか。それは何度も言っていますが、「日銀が大量に国債を買っている」事です。しかし財政破綻が延びれば延びるほと、ダメージは大きくなります。つまり「景気対策」ではなく、「財政破綻回避策」なのです。※財政破綻延命・拡大策だな。

○平成26年度予算は大衆迎合予算
・本年度予算は史上最大です。これは消費税引き上げの悪影響を避けるため、ばら撒いているからです。前年度の補正予算も。筋の悪いものが入っていました。財政が苦しい時に、なぜこの様な事をするのか。私は決算委員会で「これは大衆迎合予算ではないか」と訊きましたが、否定されました。

○「国債の取引が成立しない」事が起こり始めた
・日銀が国債を買いまくっているため、国債市場が脆弱になっています。4月15日新発10年物国債の取引が成立しなかったのです。これは2000年以来で、一番恐れる長期金利の上昇が起こり易くなっている事を示します。日銀が大量に購入するので、売買が細り、流動性が低下しているのです。※先日長期金利の変動幅を広げたのは、国債の流動性を高めるためかな。
・市場が細り流動性が低下すると、売りたい時に売れなくなり、その商品は見向きもされなくなります。これも長期金利上昇のリスクです。

<第3章 ハイパーインフレまっしぐら>
○赤字国債を山のように発行
・政治家はハイパーインフレを避ける先人の知恵を無視しています。財政法にそれが書かれています。第4条1項には、「国の歳入は税金と税外収入で賄え。やむを得ない場合は建設国債を発行して良い」とある(※条項がそのまま記されているが簡略化)。赤字国債の発行はとんでもないのです。本年度の予算は96兆円で、建設国債6兆円/赤字国債35兆円です。赤字国債が歳入の4割を占めています。

○日銀は国債の引き受けをしている
・財政法第5条にもその知恵が書かれています。そこには日銀が国債を財務省から直接買う「国債引き受け」を禁止しています。そのため日銀は市場で買っているのです(国債買いオペ)。日銀が10年物国債の7割を買っていますが、これは「国債引き受け」に等しい。
・私が三井住友銀行ロンドン支店で債権トレーディングしていた時、「邦銀はユーロ円債(海外で発行される円建て債)を発行日に買ってはいけない」との規制がありました。しかし実際は外国の銀行に「3日後に買うから」と口約束して買っていました。これは日銀の国債購入と一緒です。

○特例公債法案を無視
・赤字国債は発行できないので、毎年「特例公債法案」を制定し、赤字国債を発行しています。これは1965年に始まります。さらに2012年自民・公明・民主が合意し、3年間の赤字国債の発行を認めます。本来なら赤字国債を発行しないよう、大衆迎合政治にならないように努めるべきです。

○量的緩和は国民の犠牲の上に成り立っている
・この様な状況なので、何かの契機で一気にハイパーインフレになるでしょう。しかしハイパーインフレになると、政府は助かるのです。例えば過激な話ですが、タクシーの初乗りが1兆円になったとします。そうなると借金1025兆円は簡単に返せます。
・ハイパーインフレは実際に起こっています。1923年1月ドイツではパン1個が250マルクでした。ところが12月には3990億マルクになったのです(※16億倍のインフレだな。タクシー初乗りが700円なら、1.1兆円になる)。ハイパーインフレになると政府は助かります。一方国民の生活は悲惨です。給料は上がりますが、物価の上昇に追い付きません。

・日本では1927年/1946年にハイパーインフレになり、預金封鎖/新券発行の暴力的な方法で対処します。既存紙幣を使えなくして新券を発行し、銀行で既存100万円札を新1万円札に交換させるのです。ただし今は私有財産権が認められているので、この方法が採れるかは疑問です。しかしハイパーインフレを抑える穏やかな方法がないのは確実です。
・ハイパーインフレは大増税と同じです。債権者(国民)から債務者(国)への富の移行です(※借金のチャラだな)。ハイパーインフレは、国民を犠牲にして財政が助かる究極の手段です。
※この手段を選択されると恐ろしい事になる。世界各国が財政赤字で、インフレ傾向にあると思うが、どうなるんだろう。

○「ハイパーインフレは戦後しか起きない」は大間違い
・ハイパーインフレの話をすると、「ハイパーインフレは戦後しか起きない」と反論されます。しかし戦後でも起きた国と、起きなかった国があります。要は軍備拡張のために、お金をばら撒いた国で起きたのです。
・ハイパーインフレの勉強のため『ハイパーインフレの悪夢 ドイツ「国家破綻の歴史」は警告する』(アダム・ファーガソン、1923年)を読みました(※本文が引用されているが省略)。このドイツの状況は、今の日本と同じです。日銀は世界で初めて、平和時なのにお金をバラマキ始めたのです。この額は実務家の私には考えられないレベルです。

○ハイパーインフレの恐怖
・前書にハイパーインフレの悲惨さが書かれてます(※引用されているが省略)。ここにハイパーインフレの被害を逃れるには、海外に資産を逃がすしかないと書かれています。※近年ビットコインの話があったな。

○ハイパーインフレ下のロシア
・2005年『週刊エコノミスト』にロシアのハイパーインフレの事が書かれていました(※引用されているが省略)。ロシアでは軍事費を使い過ぎ、ハイパーインフレを起こしたのです。今の日本は社会保障費の使い過ぎです。繰り返しますが、ハイパーインフレになるのは「戦争したから」ではなく、「お金をジャブジャブにしたから」です。

○ハイパーインフレは低所得者層を苦しめる
・「消費税は逆進性がある」と云われますが、ハイパーインフレに比べると可愛いものです。ハイパーインフレになると、資産家は現金預金を、外貨資産/株/不動産に移すでしょう。一方100万円しか貯められなかった人は、タクシー初乗りが100万円になると、1回乗っただけでパアになります。財政破綻すると、低所得者層に消費税どころでない過激なコストが課されます。
・前書『ハイパーインフレの悪夢』にあるように、バラマキは財政破綻を早め、ハイパーインフレを起こし、過激な貧困・不平等を生じます。社会主義の博愛精神や大盤振る舞いは、地獄を呼び寄せます。

○なぜインフレが加速しないのか
・私が現役の頃、マネタリーベースは40兆円、今は209兆円もあります。なぜインフレが加速しないのでしょうか。お金の世界は二重構造になっています。金融機関だけの世界と実需の世界です。マネタリーベースは日本銀行券・通貨と日銀当座預金の合計で、「銀行間の世界」です(※企業も個人も日本銀行券を持っているが)。皆様の銀行預金は、融資/国債購入/現金/日銀当座預金のいずれかになります。現金は払い出しに使うだけで、少額です。

・一方マネーストックは「実需の世界」に出回っているお金です。「銀行間の世界」と「実需の世界」を繋いでいるのが貸出です。貸出が増えると信用創造により「実需の世界」のお金が何倍(?)にも増えます(マネーストックの増大)。
・量的緩和の目的はこれですが、不況のため「実需の世界」にお金が染み出していないのです。もしアベノミクスで景気が良くなると、数倍のお金が流れ、ハイパーインフレになります。※数倍の意味が分からない。マネーストックが数倍になるかな。具体的に数字で説明して欲しい。
※実需の世界には実体経済と不動産・金融資産の2種類あり、後者にはお金が流れているのでは。

・私は東京五輪の建設ラッシュによりハイパーインフレが起こると考えています。そして財政破綻の復興後に東京五輪が開催されると考えています(※6年の間に財政破綻と復興が起こるのか。規模が小さいので、外れたかな)。※アベノミクスの目的が分からなくなってきた。経済再生のためでなく、ハイパーインフレを起こし、財政問題を解決するため。

<第4章 量的緩和に出口はあるか>
○量的緩和に反対するECBは正しい
・私にはハイパーインフレを抑える手段が浮かびません。日本も含め、かつてのハイパーインフレは暴力的な手段でしか解決していません。白川前総裁は量的緩和に抵抗し、職を追われました。米国共和党も激しく反対しています。ECBも量的緩和に躊躇しています。ECBが量的緩和に反対するのは、出口が見出せないからです。
・量的緩和は間違った政策です。どうしても金融政策に頼りたいなら、マイナス金利政策を採るべきです(※これは伝統的政策に近いかな)。それと日本を社会主義国家から真の資本主義国家に改めるべきです。

○黒田総裁は出口について語らない
・2月FRBイエレン議長は「金融引締めについて”develop”している」と述べています。私は3月の決算委員会で黒田総裁に出口について質問しましたが、「時期尚早」としかお答えになりません。かつては日銀口座預金の「預金準備率」を上げれば、金融引締めができました。

○ハイパーインフレになれば政府は万々歳、国民は地獄
・出口戦略がないのはルビコン川(長期国債の購入)を渡ってしまったからです。ハイパーインフレになれば財政破綻は回避され、政府は万々歳ですが、国民は地獄です。頭の良い人が、「国民を喜ばせておいて、ハイパーインフレを起こし、借金をチャラにしよう」と考えたのです。

・1990年代はまだ伝統的な金融政策が通じた時代でした。当時日銀は経済成長に見合った分だけ長期国債を買っていました。2001年量的緩和が始まり、国債を買うようになりますが、それは2年債まででした。ところが「異次元の量的緩和」で、10年債/20年債/30年債/40年債を買うようになったのです。10年債は発行額の7割を買っています。※長期国債の大量発行は、将来世代からの搾取だな。
・これだとインフレになっても、40年後でないとブレーキが効きません。量的緩和は正式には「量的・質的緩和」です。この質的は長期国債を買う事を意味し、とんでもない事です。※質的は国債以外の債権を買う事と思っていた。

・「インフレになれば国債を売れば」とお考えでしょうが、それは不可能です。日銀が国債を売ろうとしても、買う人はおらず、値段が下がります。従って国債の満期を待つしかありません。それが10~40年なので、インフレのブレーキにはなりません。※これも重要なポイントだな。
・2006年日銀は量的緩和を止めますが、この時は外国人が国債を買いました。それは日本国債(イールドカーブが立つ)を危険視したからです。※国債を持っていないのに暴落を恐れた?

○インフレが加速しても止められない
・国債の売却以外の金融引締め手段を考えます。日銀当座預金の金利を引き上げる方法があります。これはFRBなら実施できます。FRBが保有している米国債の金利は2.7%で、他の不動産担保証券(MBS)はもっと高い金利です。そのため負債サイドの当座預金の金利を多少高めても問題ありません。
・一方日銀が保有する10年国債の金利は0.6%しかありません。日銀は引当金・準備金を6.2兆円しか持っておらず、これもスズメの涙です。従って金利を上げる手段も不可能です。

・他に「日銀が保有する国債を長期から短期に交換する」「当座預金を日銀の株式に交換する(デッド・エクイティ・スワップ)」などがありますが、問題があります。
・中央銀行が発行する銀行券は、その保有資産が健全であるため信用されるのです。日銀の信用は、日本国債の信用次第です。

<第5章 なぜこんなに借金がある>
○累積赤字が凄まじい勢い増えている
・毎年の巨額赤字で、累積赤字は膨大になりました。繰り返しますが、「税収+税外収入」55兆円に対し、歳出が96兆円あり、41兆円もの赤字です。それを国債発行で賄っていますが、その35兆円が「とんでもない」とされる赤字国債です。

・40兆円の赤字について説明します。黒字化のために法人税を倍にしたとします。日本の法人税率は41%なので、82%になります。そうすると日本の企業は、皆海外に逃げるでしょう。また法人税収は10兆円なので、10兆円しか黒字化できません。
・次に所得税を倍にするとどうでしょう。年間所得が1800万円を超える場合、地方税・所得税率は50%です。税率が100%になると、1800万円を超える所得は全て税として徴収されます。それでも14.8兆円しか黒字化できません。
・次に消費税を倍(5%から10%)にするとどうでしょう。これで10.6兆円が黒字化できます。※税率20%だと31.8兆円か。これが一番あり得る。

・いかに40兆円の赤字が巨額かお分かりでしょう。先日麻生財務相は「財政に危機感はあるが、絶望感はない」と発言しました。財政は危機的な状況なのです。
※委員会「国民生活のためのデフレ脱却及び財政再建に関する調査」の話が記されているが、よく分からないので省略。

○消費税率が低いのに高福祉
・4月から消費税率は8%になりました。日本は国民皆保険を持ちながら、低い消費税率です。所得税でも課税最低額が高く、所得税を払っている人は多くいません(※そうだった?)。それなのに国民皆保険を実行しているのです。
・先日デンマークの社会福祉委員長が来日しました。デンマークの消費税率は25%ですが、それでも社会保障費の上昇を懸念しています。消費税率21%のオランダも同様です。

○2020年度黒字化のウソ
・財政再建問題で必ず話題になるのがプライマリーバランス(基礎的財政収支、PB)です。政府は2020年度にPBを黒字化すると国際公約しました。しかしこれは「まやかし」です。PBの黒字化を目標にするなど、聞いた事がありません。PBが黒字化されると、財政再建される訳ではありません。「PBの黒字化」ではなく、「累積赤字の縮小」を目標にしなければいけません。

・経費(※歳出から国債費を除いたもの)が「税収+税外収入」を18兆円オーバーし、さらに国債費が23兆円あります。金利が上がると、この利払い(国債費)が巨額になります。安倍首相は本年度予算を「景気回復と財政再建を両立させる予算」と豪語しますが、国債発行額が昨年より小さくなっただけで、累積赤字は増え続けています。PBの黒字化は気休めにもなりませんが、それさえできないのです。

○政府の予算は粉飾?
・国債費は元本償還額と支払い利息の合計です。本年度予算では23兆円です。元本償還額は国債発行残高の1/60となっています。そこで決算委員会で麻生財務相に「なぜ発行が許されない赤字国債を60年も掛けて償却するのか」と訊きました。すると「本来は国債の満期で償却すべきだが、それではその時の負担が大きい。そのため60年償還ルールを適用している」と答えました。これは粉飾決算だと思います。

○ドーマーの定理のインチキ
・PB黒字化の拠り所は「ドーマーの定理」です。これは「経済成長率>長期金利」であれば、国債発行できるとの定理です。この状態でPBが黒字化していれば、国は破綻しないとの考え方です。しかし1995年以降でこの状態だったのは、2011年しかないのです(※経済成長率と長期金利の表がある)。それなのに破綻しなかったのは、日銀が国債を買い続けたからです。日銀が買わなくなると、一巻の終わりです。

○累積赤字は対GDP比で200%の前提条件
・財政再建の論議で、「累積赤字は対GDP比で200%をキープ」がよく出てきます。日本は213%で、これは異常な数字です。ギリシャでさえ174%です。ユーロに加盟するには60%以下が条件です。
・アトランタ連銀の政策顧問は「日本の消費税率は53%にする必要がある」と述べています。しかもこれは累積赤字を減らすためではなく、「対GDP比2倍で安定させるため」と述べています。この状態でも破綻しなかったのは、日銀が国債を買い入れ、ゼロ金利だからです。さらに彼は「消費税率8%&は正しい方向の第一歩だ。将来の繁栄を考えるのなら、遥かに野心的な財政政策が急務である」と述べています。

○累積赤字はいつ減り始めるか
・財政健全化とは累積赤字の減少です。しかしその道筋は見出せません。私は過激と批判されますが、この現状が過激なのです。決算委員会で甘利大臣に「累積赤字は、いつから減り始めるのですか」と訊ねましたが、回答はありませんでした。

<第6章 財政再建の道はあるのか>
○増税で景気はどこまで良くなる
・財政再建のためには累積赤字を減らすしかありません。それには単年度の決算を黒字にしなくてはいけません。今年度は「税収+税外収入」(55兆円)<歳出(96兆円)で、この不等号を逆転させる必要があります。

・税収を増やす方法(上げ潮政策)ですが、1990年度でさえ60兆円しかありませんでした。所得税を引き上げるのは、国民が受け入れないでしょう。
・考えられるのが消費税の増税です。税率5%で10.5兆円の税収がありました。41兆円の不足をカバーするには、19%の増税(消費税24%)が必要です。さらに累積赤字1025兆円を100年で返すには、さらに5%の増税(消費税29%)が必要です。決算委員会で原田泰教授は「消費税で社会保障を維持するためには、24%の消費増税が必要」と述べています。

・また財政制度等審議会は「日本の財政は危機的状況に陥りかねない」としましたが、メディアは取り上げませんでした。この財政制度等審議会は、経済成長率3%を前提にしています。さらに「2020年までにプライマリーバランス(PB)が黒字化した」を前提にしています。そのため公的債務残高を2060年で8157兆円としています(※PBが黒字化なのに、こんなに増える?)。そして「消費税だけに頼るのであれば、税率を30%まで引き上げる必要がある」としています。

○税金で50兆円を集め、社会保障で40兆円を再分配。これでは破綻
・税収を増やすのが難しければ、歳出を減らすのは可能でしょうか。公務員・議員の給料・人数を減らすのも大事ですが、桁が違います。社会保障の額が大きいので、この削減が不可欠です。
・歳出96兆円の内、40兆円が社会保障費です。税金を50兆円集め、40兆円を社会保障費として再分配しています。他に防衛費/教育費/公共施設の維持費などがあります。これらは将来世代から借りているのです。歳出を減らすには、国民皆保険を止めるとか、年金支給額を1/4にするとかしかないのですが、国民は納得しないでしょう。

○ドラスティックな改革
・以上のように常識的な改革では無理です。そこでドラスティックな改革を考えてみました。1つは、年金の支給年齢を85歳/90歳などに引き上げるのです。ただし給付は手厚くします。
・年金は正式には「年金保険」と云います。保険なので万一のためのものです。受け取る人もいれば、受け取らない人もいるのです。火災保険/家財保険/旅行保険/生命保険/損害保険など、皆そうです。昔は寿命が短かったので、もらえない人がいましたが、今は全員がもらえるようになったのです。
・高齢者がお金を使わないのは、いつまで生きれるか分からないからです。85歳/90歳以上になれば国が生活を保障すれば、高齢者もお金を使うようになります。

・日本は資本主義社会です。子孫に財産を残すのは不公平です。死後は財産を国に返すべきです。非人道的と思われるかも知れませんが、社会保障費を子孫が返す方が非人道的です。私達の社会保障費は、私達の世代が負担すべきです。

<第7章 黒田総裁、大丈夫か>
○FRBの量的緩和縮小は参考にならない
・米国は量的緩和を縮小させています。債券購入額は月額550億ドルでしたが、450億ドルに減額しました。誤解しないで欲しいのは、量的緩和は続いており、緩和量の縮小(テーパリング)なのです。当然FRBのバランスシートの拡大も続いています。

・「奴雁」と云う言葉がります。群れの安全を見守る1羽の雁です。中央銀行は、これでなければいけません。ところが今の日銀は先頭に立って、はやし立てています。1987年ブラックマンデーの後、「日本アンカー論」があり、日銀は「金融緩和の最終走者」を豪語しました。これによりバブルを起こしたのです。今回も二の舞を踏みそうです。今回も日本が「尻拭い役」になり、新興国から非難されるでしょう。※まだ各国が金融緩和をやっている。

○財政破綻を深刻にする日銀
・2011年末日銀の資産は143兆円、2014年4月は246兆円で2年数ヵ月で2倍になりました。国債の保有高は90兆円から204兆円になっています。今は日銀発行券(87兆円)<国債(204兆円)になっており、「日銀発行券への信用=国債の価値」になっています。1923年ドイツでは大量に公債が発行され、民間の富と交換されました。敗戦によりその公債は価値がなくなりました。日本国債の価値がなくなれば、日銀発行券の価値もなくなります。※日銀は国債を満期まで持つしかない。
・日銀が最後の砦だった頃は、国が破綻しても日銀は生き残れました。しかし日銀が国債本位制になったので、日銀も潰れます。政府・日銀が破綻すれば、そのダメージは膨大になります。

○景気対策に効果的なのはマル外
・日本には1645兆円の金融資産があります。こんなに金利が低いのに、ほとんどが国内に滞留しています。そこで私は財政金融委員会で「マル外」を提案しました。1987年まで300万円までの預貯金を非課税にする「マル優」がありました。「マル外」も同様で、300万円までの外貨預金の為替で儲けても、非課税にする制度です(※NISAは作ったな)。ドル預金すれば、円安・ドル高も進みます。チマチマした課税より、円安にして税収を増やすのです。

・私は決算委員会で為替を中心に質問しました。麻生大臣は「為替についてはコメントできない」と答えられました。米国の財務長官は、堂々と「強いドルを望む」と発言しています。日本は「円安を望む」と明言すべきです。
・1974年以降、世界144通貨で最も値上がりしたのがスイスフランで、次が円です。これだけ日本のモノ・サービス・労働力が値上がりすれば、日本経済は後退します。日本が円安政策をとると、他国から「近隣窮乏化政策」と批判されます。日本は「自国窮乏化政策」を続けたため、20年間もGDPが伸びなかったのです。これを世界に説明するのが政治家の役目です。
・円安に導く方法は幾らでもあります。本質は日本を真の資本主義国家にする事です。世界最大の銀行である「ゆうちょ銀行/かんぽ生命」には、退場してもらわなくてはいけません。

○米国債の購入は景気対策になるか
・日銀は量的緩和で金利を下げ、十分責任を果たしました。今回の異次元の量的緩和は悪あがきです。金融政策に頼るなら、「米国債の購入」か「マイナス金利」であるべきでした。

・日銀は財務省の意向で、ドル買い介入します。財務省は買ったドルで、米国債を買ったり、ドル預金しています。私の提案は、「日銀が米国債を買え」と云うものです。私は20数年前から、この論やマイナス金利論/インフレ導入論を主張していますが、無視され続けています。ドイツ/香港/スコットランドの中銀も外国債を買って、資産の健全性を担保しています。
・外債購入による量的緩和は、日銀の健全性を高めます。また最大のメリットは円安・ドル高です。出口では、米国債を売却すれば良いのです。ドル資産を売れば円高になり、金融引締め効果は倍増します。ただし米国債の大量売却は米国が抵抗する可能性があります。※日銀の大株主は米国の銀行だったかな。
※金融緩和の手段が乏しくなったと思っていたが、外貨資産を買う手段があったか。しかしこれは円安の効果はあっても、量的緩和の効果はないのでは。新札を発行して外貨資産を買うなら、量的緩和の効果があるか。

○ECBがマイナス金利を導入
・1997年『時事解説』に、私のマイナス金利論が紹介されている(※本文が引用されているが省略)。1983年スイス国立銀行がマイナス金利を導入し、私はその印象が強烈に残っていたのです。金利は連続しており、ゼロで途切れる訳ではありません。住宅減税や所得税還付など「負の所得税」があり、「負の金利」があっても不思議ではありません。

・銀行は個人の預金に対し、5%の保管料を取るのです。これに対し日銀口座預金に-3%の金利を掛けるのです。これにより銀行は融資や国債購入などの運用を増やします。住宅ローンに対し1%の金利を付与すれば、家を建てる人も増え、経済は活性化します。※今はこれに近い状況かな。ただし個人の預金にマイナス金利を掛ければ、預金が集まらなくなる。
・また円預金にはマイナス金利、ドル預金にはプラス金利を掛ければ、ドル預金が増え、円安・ドル高になり、日本の国際競争力も高まります。※円安政策は良さそうだが、国内外で抵抗があるのかな。ところで金融機関は外貨資産を購入しているのだろうか。

・「藤巻は頭がおかしい」と言われますが、5月日経新聞に「ドラギはマイナス金利の奇策を考えている」との記事がありました。そして6月ECBはマイナス金利政策を導入します。ECBは大規模な量的緩和を見送りました。ECBは日銀/FRBと違い、良識があるのです。日銀には「量的緩和」と「マイナス金利」で、どちらが効果/副作用で優れているかを真剣に考えてもらいたい。
・因みに「量的緩和」は日銀口座預金を最大化させる政策ですが、「マイナス金利」は逆に最小化させる政策です。※今は両方が導入されているが、日銀口座預金はどちらに向かっているのか。

<第8章 財政破綻はいつ起きる>
○バブルは必ず破裂する
・ここまで借金が増えると、日本の財政破綻は避けられません。ただし財政破綻の契機は分かりません。1989年12月日経平均株価は史上最高値を付け、その後大幅下落します。その契機も分かりません。もしかすると「土地に関する赤字の損益通算中止」だったかもしれません。あえて言えば、バブル自体が崩壊の原因です。今の国債バブルも、破裂させるのは簡単でしょう。
・ヘッジファンドには、ジョージ・ソロスになろうとしている人が大勢います。彼は1992年英国中央銀行に勝った男です。日本銀行に勝とうとしている人は大勢いるのです。これまでは国債売りをバラバラに仕掛けて来たので、崩壊しなかったのです。

○日銀以外に買い手がいないと意識されると危険
・国際バブルを崩壊させる一番の契機は、「日銀はもう国債を買わない」とのニュースです。繰り返しますが、国債が暴落しないのは、毎年発行される40兆円の国債を日銀が買い増しているからです。日銀が買い増しを止めれると、こんな危険の国債を買う人はいません。この「ねずみ講」の限界は、必ず来るのです。※ロシアの事例が紹介されているが省略。
・日銀のマネタイゼーションが意識されるのも危険です。そうなればヘッジファンドは一致団結して国債を売るでしょう。円の価値がなくなれば、円も売られます。長期金利は急騰し、インフレになります。株も暴落し、トリプル安になります。※恐ろしい話だが、起きてもおかしくないな。

○来年消費税を10%にしないと、どうなるか
・第1章で、ヘッジファンドの売り仕掛けを防いでいる2つの誤解を述べました。①日銀は国債を買い続ける、②政府に徴税権があるです。しかし②は、来年消費税を10%に上げられないと、ヘッジファンドが売り仕掛けする可能性があります。

○経常赤字が予想されると危険
・2013年の経常収支は、過去最少の3.3兆円の黒字でした。経済学では、経常赤字になると、通貨の下落か長期金利の上昇をもたらします。経常収支の赤字化も、契機になります。

○米国の出口戦略も危険
・米国は「量的緩和の追加緩和量の縮小」をやっています。これは「量的緩和の解消」ではありません。これが終わると「マネー残高の適正規模への縮小」(金融引締め)が始まります。これも日本の国債バブル崩壊の契機になります。

○日本人が国債を売り始めると危険
・「日本人が国債を保有しているので、売られる事はない」と言う識者がいます。しかし大手銀行が1年間で31兆円も売り越したのです。逃げた人は生き残れるので、皆が後に続きます。
・実際国債の暴落は起きています。1987年4ヵ月間で長期金利が2.55%から6%に上昇しました。1989年12月は0.6%から2.4%に急騰しています。
・年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は厚生年金・国民年金の積立金129兆円を運用しています。GPIFが国債を売り出せば、国債村の住人も競って売るでしょう。

○国債入札の未達も危険
・国債には銀行・証券会社・生損保などが入札します。入札で応札額が募集額に達しない状況を「国債未達」と云います。要するに国債が売れ残るのです。この入札には日銀の買入れを見越したものも含まれます。また日銀が大量に買うので、マーケットが薄くなっていると云われています。もし日銀が買い控えると、未達が出てくるでしょう。そうなる前に政府は、入札資格のある金融機関が一定量を買い入れる仕組みにするでしょう。そうなると金融機関は購入額と同額の先物売りを入れるでしょう。※2016年三菱UFJ銀行が入札資格を返上したが、今は復帰しているみたいだな。
・国債未達が報道されると、国債先物市場はストップ安になり、国債現物市場も大暴落し、株・円も暴落するトリプル安になります。このシナリオは幸田真音『日本国債』に書かれています。

○財務破綻はなぜ起きる
・日本の財務破綻の根本原因は、日本が社会主義国家だからです。日本は市場原理が働かず、マーケットが微調整されないのです。世界最大のゆうちょ銀行は、資産の65%が国債で、日銀も83%が国債なのです。そのため政治家に長期金利上昇の恐怖はなく、バラマキを止めないのです。日銀がチェック機能を無効にしたのです。
・日本経済の低迷から「資本主義はお終いだ」と言う人がいますが、「日本は社会主義なのでお終い」なのです。

○なぜ若者は将来に希望を持てないか
・今の若者に希望はなく、私達がため込んだ借金があるだけです。いずれ所得税50%/消費税50%になるでしょう。しかし財政破綻でこれは解消されます。年金制度は確定拠出年金に替わるでしょう。一方高齢者は、年金を失い、貯金を失います。しかしこれはバラマキを要求し、消費増税に反対し、累積赤字をため込んだ自業自得です。これにより世代間格差は是正されます。

<第9章 日本は必ず甦る>
○市場は偉大
・日本は財政破綻しますが、「市場は偉大」なので、日本は必ず甦ります。1997年韓国ウォンは1/3になり、ガソリンは高騰します。しかし2年後にはウォン安により経済は回復します。日本も円安で回復するのです。
・例えばレクサスを5万ドル(500万円)で売っていたとします。円が暴落し1ドル=1千円になると、レクサスは5千ドル(500万円)になり、バカ売れします。円安になると経済は回復するのです。
・中国が凄まじい勢いで経済成長しています。それは1980年1人民元=160円だったのが、1人民元=16円に元安になったからです。中国が通貨切り上げの要求を退けるのは、そのためです。

○法人税収が10倍になる
・日本企業の利益は米国の1/10~1/100です。2010年3月期トヨタ・グループの純利益は、たったの2090億円でした(※金融緩和前で為替は80円台かな)。2010年ペプシコーラの純利益は5200億円、コカ・コーラは9800億円です。当時トヨタは「1円円安になると350億円営業利益が増える」と言っていました。もし100円円安になると、営業利益は3.5兆円も増えます。
・円安になって、純利益が10倍になれば、法人税も10倍になります。今年度予算の法人税収は10兆円ですが、純利益が10倍になれば、法人税収は100兆円になります。赤字40兆円は簡単に解消します。※大雑把な計算だけど、やはり円安かな。しかし石油は高騰するが。また近年は貿易赤字なので、赤字額が増大するのでは。
・ただし円安政策は難しいのです。円安になると、円預金は外貨資産に移り、金融機関が日本国債を買えなくなるのです。また国債も換金されて仕舞います。円安政策は財政破綻の引き金になります。

○日本は財政破綻し、真の資本主義国家に変わる
・日本は財政破綻すると、市場機能・為替機能により再生します。日本は社会主義国家から、真の資本主義国家として再生するのです。このことを知っていれば、数年間の地獄に耐えられます。

○破綻を早めて膿を出し切った男
・安倍首相/黒田総裁は「破綻を早めて膿を出し切った男」として歴史に名を残すでしょう。アベノミクスがなかったら景気は低迷し、ゼロ金利は続きます。政府のバラマキは続きますが、金融機関は融資先がないので国債を買い続けます。この生殺しは続いたでしょう。しかしアベノミクスによって破綻が早められたのです。※確かに借金が借金を生む自転車操業になった。

<第10章 資産を防御する方法>
○資産を防御するには米ドルが良い
・日本は財政破綻するので備えが必要です。『ハイパーインフレの悪夢』にあるように、海外に資産を持つしかありません。外貨では米ドルが一番です。それは米国が政治・経済・軍事で最強だからです。分散させるなら、オーストラリア/ニュージーランド/カナダ/スイス/英国などの先進国通貨への投資も良いでしょう。流動性を考えると、新興国通貨への投資はお勧めしません。
・この外貨への投資は保険です。財政破綻/ハイパーインフレの可能性は20%はあると思うので、掛けるべきです。もし1ドル=100円が70円の円高になり、30円損をしても、保険料と思って下さい。逆に本書のストーリーが起こると、預金の価値はなくなり、年金も仕事も食べ物もなくなり、株も大暴落します。政府は最も頼りにならなくなります。そのために保険が必要なのです。

・私は一橋大学で13年間、早稲田大学で6年間教えてきました。そこで「皆様が会社に就職し、日本が財政破綻し、その時会社が生き残る方法を書けるようになるのが、この授業の目的だ」と言ってきました。この授業で使ったのが『藤巻健史の実践・金融マーケット集中講座』です。これはデリバティブの活用法で上級編です。

○投資家は米国経済が強いと見ている
・また米ドルは保険だけでなく、「金儲け」としても買うべきです。米ドルが強い第1の理由は、米国株が最高値圏にあります。ウクライナ問題/中国の減速/中国のシャドウバンキングなどを考慮すると、米国株を買うべきです。最高値圏にあるので、資産効果により、経済の好循環が始まっています。第2の理由は、米国の財政収支と経常収支が共に黒字になりそうなのです。

○シェールガス革命
・さらにシェールガス革命があります。米国は原油の輸出国になり、中近東に派遣した軍隊を縮小できます。財政赤字は着実に減っています。逆に日本が「双子の赤字」になります。ドル高・円安になるのは当然です。
・米国ではシェールガスが100万BTU3ドルで、2008年の1/4です。これを日本に持って来ると13ドルになります。シェールガス革命により、米国の製造業は国内に回帰します。イランやシリアへの弱腰は、これが要因なのです。

○ドル資産は何が良い
・ドル資産の中では米ドルのMMFがお勧めです。証券会社・銀行で買え、税制上も有利です。ドル預金での為替差益には、所得税・地方税が掛かります。ところがMMFは公社債投資信託なので、譲渡益に課税されません。
・ただし外貨預金は元本が保証されますが、MMFは保証されません。しかしドルのMMFは、格付けの高い米国債などで運用されているので、元本割れの可能性は低いです。

○ドルのMMFは2015年末まで
・ただしMMFの非課税扱いは2015年末までで、以降は20%の申告分離課税になります。この改正は個人の金融資産が海外に向くのを阻害し、円安を妨げます。
・真の資本主義では、お金が自由に流れる仕組みにすべきです。景気が悪くなれば資金は海外に流れ、円安になる。景気が回復すれば資金は還流し、円高になる。この市場原理は守られるべきです。預金利息への税率は国内外で同じにし、為替差益は無税にすべきです。

○米国株の選び方
・私は米国株をお勧めします。ニューヨーク・ダウは30社しかありません。為替のリスクはありますが、それは小さいです。

○海外に資産を移す必要はあるか
・海外に資産を移す必要はないと思います(※これは金融資産以外かな)。財政破綻しても、大銀行などの基幹産業は潰れません。大銀行は国債の保有高を減らし、残存年限も短くなっています。デフレからハイパーインフレになった時、外貨資産を持っていれば大丈夫と思います。
・ハイパーインフレは大増税と一緒ですが、これは憲法の私有財産権に抵触しないでしょう。1927年/1946年、政府は預金封鎖/新券発行の暴力的手段で資金を吸収しています。これが今日でも行われるかもしれません。そのため資産を物理的に移すのも考えられます。ただし20%の申告分離(利子所得は源泉分離)を受けられず、総合課税で税率が高くなります。

<おわりに>
・私は若い頃は短期のトレーディングをしていました。後半は「どの国の経済運営が良いか」を考え、良い国の株・通貨を買い、債権を売るトレーディングをしました。エコノミストと勝負師が合体した仕事でした。本書はその経験から書いた本です。

・「日本維新の会」の参議院議員になり、「財政破綻しないように献策しろ」と言われます。本質は「社会主義国家から真の資本主義国家へ」にあり、そのため円安論/マイナス金利論/資産効果などを主張してきました。日本を財政破綻から救う献策は、「消費税を40%にする」「年金支給額を1/4にする」などです。ところが国民はこれらに納得しません。今は終戦1ヶ月前(1945年7月)と同じ状況で、「戦争に勝つ方法を考えろ」と言われるのです。

・今考えないといけないのは、戦後の青写真です。日本が軍国主義国家から民主主義国家に変わったようにです。財政破綻しても、必ず日本は復活します。社会主義国家から真の資本主義国家に変えるのです。「競争社会」「機会の平等」「確定拠出年金」「小さな政府」「経済を微調整する市場」「労働市場の流動化」などを実現するのです。※英米の新自由主義だな。
・私は財政破綻した時、政策メンバーに加わりたいと願っています。再建はIMFなどの国際機関が主導するでしょう。そのメンバーに選ばれたいため政治家になったのです。

・本書を読まれて財政が厳しい事を認識されたと思います。政府は頼りに成らないので、自助努力しかありません。日本は財政破綻しても、大復活します。その時真の資本主義国家を作りましょう。

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