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『中国発の金融恐慌に備えよ!』宮崎正弘/田村秀男(2019年1月)を読書。

2年前の出版で18年後半を中心に書いている。状況は幾らか変わったが、米中関係は悪化の一途である。

人民元の暴落について書いているが、どうなるのか。中国の崩壊を予想しているが、今の中国はそれを感じさせない。

両者の意見が一致しているので、対談と余り感じさせない。しかし最終章などの金融に関する部分は、少し難しい。

お勧め度:☆☆
内容:☆☆(中国の裏事情が分かった)

キーワード:<まえがき>ファーウェイ、ソフトバンク、AI、<米中貿易戦争は120%米国の勝ち>貿易赤字、百年戦争、ウォール街、GAFA、キッシンジャー、ペンス演説、国防権限法、<人民元帝国の崩壊が始まった>金融引締め、一帯一路、不良債権、地方政府、資本流出、ハイテク、<中国の覇権主義を世界は許さない>一帯一路、カンボジア、ブルネイ、モルジブ、ベネズエラ、タイ、ミャンマー、ジブチ、マダガスカル、ウガンダ、<中国の夢は消えつつある>習近平、若者/軍人、インフレ、農民工、台湾/南シナ海、<中国経済の崩壊に巻き込まれるな>通貨スワップ、AIIB、中国投資、議会、中国バブル、<あとがき>デジタル帝国主義、反中

<まえがき> 宮崎正弘
○国際政治経済の地殻変動が始まった
・トランプはTPP離脱/メキシコ国境の壁/パリ協定離脱/イラン核合意破棄/INF条約破棄などの政策転換をした。また台湾を明確に擁護し、中国からの輸入に高関税を課し、スパイを摘発し、ファーウェイ/ZTEを締め出すなど、米中関係の緊張を高めた。18年10月ペンス副大統領の演説は宣戦布告に近かった。習近平は狼狽し、四中全会を開けなかった。18年12月各紙は、ファーウェイ/ZTEの部品の使用を禁止する大統領命令を発動するだろうと報じた。
・この激変に日本は対応できていない。この問題について田村秀男と議論できた。我々2人は、世間の認識と異なる情勢判断・未来予測をしている。

○ファーウェイ孟晩舟の逮捕は謎だらけ
・18年12月1日ファーウェイのCFO・副社長の孟晩舟が、バンクーバーで拘束された。彼女は中国/香港/カナダのパスポートの他に、偽名の中国パスポートを4つ持っている。バンクーバーに3軒の豪邸を持っている。4人の子供がいるが、それぞれ香港/深圳/バンクーバー/マサチューセッツに住んでいる。

・12月19日ソフトバンクが株式公開(IPO)となったが、目標値を15%下回った。孫正義はアリババの筆頭株主で、基地局にはファーウェイの製品を使用している。またソフトバンクは有利子負債が13兆円あり、海航集団/万達集団/案邦生命と同様に借金体質である。チャイナリスクがソフトバンクの株価に大きく影響した。

○天才中国人学者の自殺
・12月1日スタンフォード大学教授(物理学)張首晟が謎の自殺をした。彼はノーベル賞に近い人物だった。彼はファンド「丹華資本」を立ち上げ、AIの技術者を集めていた。そのバックに上海科技大学があった。通商代表部はこのファンドを「スーパー301条」のリストに載せ、FBIは内偵していた。

・12月12日孟晩舟は8億円の保釈金で保釈された。この事件は米中貿易戦争に深く関わる。彼女の裁判は19年2月6日に始まる。スパイ防止法では最長30年の懲役になる。これに対し中国はカナダ人13人を拘束した。

○シリアからの撤退で、政権が混乱
・12月26日トランプはイラクを突然訪れ、米兵を激励し、シリアからの撤退を表明した。これはペンタゴンを慌てさせた。これにクルド人は「米国の裏切り」と反発した。一方アサドを支えるプーチンは「米国は正しい判断をした」と述べた。米軍は主にシリア北西部に2千名が駐屯する。

・力の空白ができると、中国が150社/20億ドルの再建プロジェクトを立ち上げた。中国は石油を中東に依存し、これは一帯一路の一環である。これは中東からインド太平洋に重点を移す米国と対照的である。シリア内戦時に中国はISに武器を供給したとされる。※こんな話あったかな。

○GAFA vs BATのハイテク冷戦
・米国のGAFAに対抗するのが、中国のBAT(バイドゥ、アリババ、テンセント)である。プーチンは「AIを支配する者が、世界を支配する」と述べた。チャイナウォッチャーの福島香織が北京空港で入国審査を受けた時、パスポート照合/顔認証/指紋照合/声紋検査、全てデジタル化されていたそうだ。BATはビッグデータを貯め込んだが、中国共産党に従わざるを得ない。もはや米国は中国にAI/IT技術を供給しなくなった。世界は「ソフトウェア・カーテン」で仕切られた。

・中国は海上封鎖され石油が自給できなくなると、対外戦争ではなく国内で地域軍閥戦争を始める。そこでビッグデータ/利権/将来の覇権の争奪が行われる。※こんな説は初めて聞いた。
・半導体/AIにおいて中国は半熟である。しかし中国は米国と伍する事ができるだろう。それは「固定電話から、いきなり携帯電話に突入した」「現金からカードを超えて、スマホ決済に突入した」「米国から設計図とソフトを盗み、ファーウェイが世界を席捲した」などからも分かる。これに米国は「新ココム」で制裁を加え、AI世界分割戦争が始まる。

・これらの問題意識を持ち、田村氏と対談した。本書はチャイナ・リスクに備えるための本である。※これが「まえがき」か。先が思いやられる。

<第1章 米中貿易戦争は120%米国の勝ち>
○米国の制裁関税に、中国はベタ降り
・18年3月米国はアルミ・鉄鋼の関税を引き上げます。第1弾として7月に中国からの輸入340億ドル分に、第2弾として8月に160億ドル分に25%の関税を掛けます。中国もこれに対抗し500億ドル分の輸入に関税を掛けます。さらに9月第3弾として2000億ドル分に10%の関税を掛けます。米中貿易戦争が始まったのです。※中間選挙前かな。

・11月アルゼンチンでG20サミットが開かれ、米中首脳が会談します。米国の交渉担当は、ムニューシン財務長官から、ライトハイザー通商代表に代わります。米中貿易戦争は90日間の休戦になり、1月に予定されていた2000億ドル分の25%への関税引き上げは中止されます。ただし中国は農産品/工業製品の輸入拡大を約束します。中国の交渉担当は国務院副総理の劉鶴です。メディアは王岐山を期待していましたが、彼が関係する海航集団の有利子負債は12兆円で、国有化されます。

・この貿易戦争は将来的に技術覇権/経済覇権を脅かすため、米国は妥協できません。トランプは「対中貿易赤字を半分の2000億ドルにする」と言っています。2年後に大統領選があり、引く事ができません。

○米中新冷戦ではなく、米中百年戦争
・18年10月ペンス副大統領がハドソン研究所で演説しましたが、これは宣戦布告です。先般東京でシーパック(CPAC)が開かれました。そこで私(※著者)は行政管理予算局(OMB)のミック・マルバニー局長と話をしました。彼は首席補佐官代行に就く予定で、米国第一主義や規制緩和/減税の司令塔です。彼は「中国が変わらなければ、貿易戦争は終わらない」と言っていました。※米国は対貿易赤字国を徹底的に叩くな。ドル安にすれば製造業も復活するんだろうが。
・ハドソン研究所でのペンスの演説も不退転の決意を表しています。ハドソン研究所の所長はマイケル・ピルズベリーです。彼はパンダハガー(親中派)でしたが、チャイナバッシングに転じました。米中貿易戦争は、技術覇権や安全保障も含めた覇権闘争です。

・レーガン大統領は「ソ連は潰さないといけない」と言っていました。米中貿易戦争は経済がメーンです。しかし対立が軍事に及ぶ可能性もあります。軍事を考えるとハイテクは重要です。経済戦争ゆえに長期化します。
・トランプは「航行の自由作戦」など強硬しています。また対中貿易赤字が、中国をのさばらせた主因とし、これを貫き通すでしょう。「共産党体制を崩壊させる」とは言っていませんが、不公正な貿易慣行/技術の剽窃は許しません。しかしこの原因が共産党体制にあるので、百年戦争になります。
・米国が本当に怒っているのはハイテクの問題です。特許を盗んだり、中国に進出する企業に合弁会社を作らせ、技術供与を強制しています。米国の安全保障会議は、今では技術系スタッフばかりです。それはどの会社が何の技術を盗んだかを精査しているからです。技術盗用には2つの問題があり、米国のハイテク企業の買収と技術スパイの摘発です。

・オバマ政権でも中国企業が北朝鮮を支援する問題があり、それを調べましたが、公表しませんでした。トランプはオバマ政策の否定から始まっています。オバマは最初は「アジア・ピボット」と言っていましたが、「リバランス」と言い換えました。※違いが分からない。
・オバマ政権もその前のブッシュ政権も中国寄りでした。その原因はウォール街です(※金融だな)。クリントン政権以降、ホワイトハウスはウォール街が要職を占めています。※ピーター・ナヴァロ通商産業政策局長が、ゴールドマン・サックスの元CEOで中国派のヘンリー・ポールソンを批判する話が書かれているが省略。
・トランプ政権ではゴールドマン・サックス(GS)は排除されています。ゲーリー・コーン国家経済会議(CEA)委員長はいなくなりました。ムニューシン財務長官はGSですが、映画を作っていた傍流です。

○中国は外資と技術の窃盗で大国になった
・ウォール街は中国を使って儲けました。またこれからも儲けようと考えています。中国は外資で発展したのです。初期は華僑/日本/香港/台湾からの投資で、その後は欧米からも入っています。外国人の株主資本が50%を超えない合弁企業を作らせました。そして低賃金の労働力で儲け、そのドルで人民元を発行したのです。そしてこの投資は今も続いており、年間1300億ドルもあるのです。※金融業が産業の中心になった米国は、これを続けるしかない。
・中国発展のもう1つの理由は、技術の窃盗です。中国は外国企業の技術を強制的に供出させました。これは米中貿易戦争の根底です。

・中国は通商交渉で142項目の改善案を出しました。この利権の小出しは中国の伝統ですが、日本から学んだものです。中国はプラザ合意以降の日本を大変研究しています。1994年人民元を切り下げますが、これも日本から学んだのです。

○GAFAは中国で儲け、これからも儲けようとしている
・ニューヨーク株式市場のダウ平均株価の半分をGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン。※アップルとアマゾンは逆の気がするが)が占めます。このGAFAは、中国14億人の市場で儲けようとしています。しかし中国に進出するためには、共産党の統制に従う必要があります。※GAFAは中国で儲けた?中国にはBATH(バイドゥ、アリババ、テンセント、ファーウェイ)があって、米中は分断していると思うけど。

・18年10月トランプは万国郵便連合(UPU)からの脱退を発表しました。これは中国のアリババなどから送られた小口郵便を無料で配達しないといけないからです。※中国が途上国に分類されているからかな。
・GM/ボーイングも中国に未練を持っています。中国は貿易不均衡を是正するため、2800億ドルを輸入する必要があります。これにアラスカの石油/シェールガス/ボーイングの航空機/農産物/大豆などがありますが、実行されているのはボーイングだけです。18年5月ムニューシン財務長官が訪中し、この内容を持ち帰ったのですが、現実不可能なものや時間が掛かるものがあり、トランプが怒ったのです。それでムニューシンは対中交渉から外されたのです。トランプ政権に反対しているのが、ウォール街とGAFAです。

・ピーター・ナヴァロ通商産業政策局長が力を得たのは、18年3月国家経済会議(NEC)委員長ゲーリー・コーンが辞任してからです。レックス・ティラーソン国務長官もキッシンジャー路線で中国に厳しく対応できませんでした。ウィルバー・ロス商務長官/ムニューシン財務長官も中国強硬派ではありません。ジェームズ・マティス国防長官も師走には辞任します。大統領首席補佐官にジョン・ボルトンが就いた事で、対中強硬路線が固まります。※トランプ政権は入れ替えが多かったな。

○ペンス演説は対中宣戦布告
・ペンス副大統領がハドソン研究所で行った演説は、マイケル・ピルズベリー所長の路線に従うものです(※国防面の話でハドソン研究所が時々出てくる。これに無知だな)。彼は中国べったりだったのですが、反中に変わり、『Chaina 2049』を出版しています。
・これはエスタブリッシュメントも反中に転換した証です。ビジネス界も技術供与の強制/知財侵害から反中に転換しています。共和党は農業団体などを気にして腰が引けていますが、民主党は強固な反中です。総じて米国の政界・経済界は反中です。言論界・メディアも反中で、パンダハガーはキッシンジャーだけです。

○中国のスキャンダル
・ペンスの演説で一番「おやっ」と思ったのは民主主義の崩壊です。米国の選挙に中国が折込広告で介入した問題があります。経済の問題より民主主義の根底を揺るがす方が重要なのです。トランプはこれに相当怒っています。
・江沢民時代(89~02年)中国は民主党対策のロビーイングを盛んに行い、中国マネーが動きます(※これでかつては親中だったのかな。しかしこの頃は、中国は弱小では)。これを動かしたのが先日当局に拘束されたインターポール総裁・孟宏偉とアリババのジャック・マーです。習近平は彼らから民主党のスキャンダルを聞き、トランプと交渉できます。

・不動産王の郭文貴が米国に亡命しました。彼は王岐山のスキャンダルを握っていると思われます。薄熙来が失脚した時、王立軍が米総領事館に逃げ込み、情報を渡しています。令計劃が失脚した時は、弟の令完成が米国に亡命しています。バイデン副大統領やヒラリーに中国マネーが入っているかは、郭文貴を調べれば分かります。※米国のスキャンダルと中国のスキャンダルが書かれて、ゴチャゴチャになる。

・18年11月習近平はキッシンジャーを北京に呼んでいます。キッシンジャーは「米中は仲良くしよう」(※詳細省略)と述べ、中国はこれを宣伝します(※米中対立で中国はキッシンジャーを利用しようとしたんだ)。9月彼は「中国は世界秩序の潜在的パートナーである。米中対立において、米国と行動を共にする同盟国がいない」と奇妙な発言をしています。これはトランプに「米国はロシアと組み、中国を封じ込めるべきだ」と語った事の中国への釈明らしい。
・これまで米中はウィンウィンの関係でしたが、米国は一方的にやられている事に気が付いたのです。※米国は産業の中心が金融に移ったので、中国と連携するしかなかったかな。

○米国が中国の悪辣に気付いた
・米国の学界もシンクタンクも汚染されていました。親中派だったジョージ・ワシントン大学教授ディビッド・シャンボーやマイケル・ピンズベリーが反中に転じると、米国エンタープライズ公共政策研究所(AEI)/ヘリテージ財団なども一挙に中国強硬派に転じます。ヘリテージ財団はオバマ政権で資金力を失い、AEI/ハドソン研究所に人材を取られます。今はハドソン研究所が反中の先頭に立っています。※この辺り勉強不足だ。
・ペンス演説は宣戦布告に相当し、ハドソン研究所が作ったのでしょう。技術の窃盗/貿易の不公正/知財問題/一帯一路による軍事基地化/ITによる市民監視/ウイグル問題などを非難しています。
・米議会は「チベット旅行法」を可決しました。これは米国人の外交官/公務員/ジャーナリストのチベット入境を認めないなら、チベット官憲の米国入国も認めないとする法律です(※チベットでさえ入国させないのか)。これはチベット系米国人やインドのダライラマ政府の働き掛けによります。世界に散らばった多くのチベット人が本国と連絡が取れないのです。

・この様に米国の対中政策は劇的に変わりました。しかしGAFAだけは、未だに中国で商売しようと考えています。バイドゥ(百度)はグーグルの分派です。アップルのiPhoneは鴻海が作っているので、中国はマーケットだけです。
・フェイスブックの金庫番はゴールドマン・サックス出身のディベッシュ・マカンです。彼はアイコニック・キャピタルを経営しています。この会社はシリコンバレーの人脈や最先端技術を一手に把握しています。そしてこの会社に中国解放軍が投資しているのです。そのため中国はシリコンバレーの新手のベンチャー企業を買収できるのです。中国はシリコンバレーの優秀なエンジニアに「報酬を数倍にする」と誘っています。※近年深圳がシリコンバレーを抜いたとされるのは、これかな。

○米国は国防権限法でファーウェイ/ZTEを排除
・米企業に対する投資は、対米外国投資委員会(CFIUS)が審査しています。18年3月シンガポールの半導体大手ブロードコムによるクアルコム買収は差し止められました。8月からは審査を厳しくしています。
・米国の国防予算は国防権限法(マケイン法)によって毎年決まります。19年度分は18年8月にトランプが署名しました。これに項目「特定のサービスや機器の禁止」があり、ファーウェイ/ZTEのサービス/機器を禁止しています。
・18年9月解放軍がロシアから戦闘機を購入します。これを「ロシア制裁に違反する」として、解放軍に制裁を掛けました。さらに解放軍関係者の入国を禁止したり、ドル資産を凍結しています。

・米国は別件逮捕でも何でもやります。ファーウェイの孟晩舟の拘束は、米中貿易戦争の開戦です。
・トランプ政権は半導体を特に焦点にしています。製造装置などの技術が中国に一切渡らないようにしています。晋華集成電路がマイクロン・テクノロジーの特許権を侵害したとして起訴しました。米国は今後、これらをドンドン調べ上げるでしょう(※商務省のエンティティ・リストかな)。ZTEは10億ドルの罰金を払い、制裁を解除されました。※中国は新幹線だけでなく、無数の技術を盗んだのだろうな。

○ファーウェイを徹底的に潰す
・ファーウェイの問題は10年以上前からの問題です。12年情報委員会のメンバーがファーウェイ本社に乗り込み、共産党・軍・政府との関係について質問するが、非協力的だったのです。これにより米国はファーウェイを通信市場から締め出したのです。英国/オーストラリアでもファーウェイ製品を排除するように変わりました。
・半導体の基幹技術を持つのは米国/日本です。そのためファーウェイ/ZTEが必要な半導体を中国で製造するのは難しいでしょう。抜け道になりそうなのが韓国ですが、そうなれば米国は韓国企業を制裁するでしょう。

○米国は中国のハイテク覇権を許さない
・この米中対立は貿易のアンバランスが原因ですが、技術覇権の問題もあります。「中国製造2025」は、AI/ロボット/新素材/宇宙航空/次世代通信を対象にしており、これは軍事に直結します。
・ペンタゴンは中国の軍事的脅威に関して毎年報告書を作成しています。しかしこれは脅威を過度に煽っています。ただし中国はキラー衛星に成功しており、本当に脅威です。半導体は中国は1割しか自給できていません。半分を供給できるようになると、脅威になります。※予算を取るためかな。米国が台湾戦争で負けるとかもこの報告書かな。
・中国は「一帯一路」を行っていますが、ほとんどのプロジェクトが挫折し、負債になっています。これは国内の過剰資本/過剰設備を解決するための古典的な帝国主義です。

<第2章 人民元帝国の崩壊が始まった>
○実態がつかめない中国バブルの膨張
・中国の統計は信用できないので、バブルの規模が把握できません。GDPは3割は水増しされているでしょう。銀行の不良債権率1.4%も、国有企業の債務1400兆円も信用できません。上海総合指数の崩壊が始まっていますが、当局が空売り規制しているので、何とか持ち堪えています。一番大きいのは不動産バブルで、住宅ローン債務が4700兆円あるらしい。※1億人とすると4700万円だな。
・中国のGDPは1500兆円ですが、あり得ません。李克強首相はGDPがデタラメなので、電力消費量/銀行融資残高/鉄道輸送力を使っていました。しかし電力消費量/鉄道輸送力は減少気味です。中央政府が発表するGDPと、地方政府が発表するGDPの合計も一致せず、中央政府が発表するGDPが52兆円少なくなっています。地方政府に修正を指示すると、遼寧省/吉林省/黒竜江省は3割も下げたのです。
・リーマンショック後10年間の人民元の発行額と対米貿易黒字額は共に28.9兆ドルで一致しています。※グラフは2.85兆ドルになっている?

○外貨準備の減少で、人民元は紙切れ化
・中国は対米貿易黒字で外貨を稼ぎ、金融を膨らませてきました。人民元の9割に外貨の裏付けがあったのですが、外貨が3割減っています。しかし人民元を買い支えているので、人民元は下落していません(※元安の方が貿易には有利と思うが)。中国経済は米中貿易戦争前から減速しています。
・本来なら金融緩和しなければいけませんが、引締めを行っています。融資平台経由のシャドウバンキングなどのノンバンク系を引締めています。16年ノンバンクの融資は172兆円あったのですが、今は40兆円しかありません。これはリーマンショック時に4兆元(57兆円)、さらに翌年に120兆円を財政出動しており、これを引締めているのです。この金融パニックに、さらに米中貿易戦争が加わったのです。

・外貨準備不足と人民元安が同時並行で起こっているのです。人民元資金を確保するには、外貨建ての借金をして、それを人民元に替えるしかありません。しかしこれができるのは信用度が高い国有企業だけです。中小零細企業は理財商品を発行するか、ノンバンクから融資を受けるしかありません。
・対外債務は外貨建て債券か外国からの融資になりますが、その外貨は商業銀行により人民元に交換されます。景気が良い時は問題になりませんが、景気不振/人民元安になると問題になります。※具体的に説明が欲しい。

・中国がGDPで米国を抜く話がありますが、それは夢です(※28年には抜くとの説があるが)。中国の経済膨張モデルは既に破綻しています。問題は人民元が国際通貨になるかですが、東南アジアの中国国境付近にカジノ特区を作るのが精一杯でしょう。金融市場の自由化、為替の変動相場制がなされていない以上無理です。人民元の海外への持ち出しは禁止されています(※海外に持ち出す?これも説明が欲しい)。人民元はIMFのSDR(特別引出権)に入れられましたが、決済通貨として使用されていません。
・注意しないといけないのが一帯一路です。例えばパキスタン/スリランカなどへの債務は外貨で押し付け、外貨を入手しているのです。プロジェクトは中国企業が独占し、資機材も労働者も中国から送ります。これらは中国の銀行が人民元で決済します。一方プロジェクト自体はドル建てで、現地政府が返済できなければ、インフラや土地を頂くのです(債務の罠)。

・1つ目の例は、中国企業がサイパンでホテルを新築しました。ところが中国人労働者が賃金不払いとして訴訟を起こしたのです。工事は中断しています。2つ目の例は、中国がラオスの国境近くに沢山のマンションを作っています。そして人民元で売り出しています(※スリランカの港を奪った例が出ると思ったが、よく分からない例だ)。こうやって使われた人民元は中国工商銀行/中国銀行に回収されます。中国国外に人民元の為替市場が成立すると困るからです。※政府が人民元を完全に管理するため、海外で流通させないのか。でもこれでは国際通貨になれないけど。

・国際金融にはトリレンマがあります。自由な資本取引/為替の固定相場/金融政策は同時に成立しないのです。中国が資本取引を自由にし、固定相場にすると(※これが現状?)、金融政策(金融緩和)が効かないのです。これは「ドルの足枷」と云われています。※何でドルなんだ。
・中国は人民元相場を管理し、資本規制をがんじがらめに行っています(※資本規制の具体例が欲しい)。しかし当局の監視をかいくぐり、巨額の資本逃避が起きています。その中継点が香港ですが、習近平一族自体がこれを利用しています。※パナマ文書に習近平の姉の名前があったかな。

○中国バブルはどこまで膨らむ
・資産バブルが崩壊し、金融機関が経営破綻すると、中国経済は崩壊します。資産価格が暴落すると、銀行が不良債権を抱え込み、信用不安からお金が回らなくなります。これは日本のバブルと同じです。リーマンショックも同じですが、量的緩和でクラッシュを逃れました。
・中国バブルがどこまで膨らむかは想定できません。それは金融当局が不動産にお金を回るようにしてきたからです。※共産党員を儲けさせるため、不動産価格を上昇させ続けていると聞いた。
・不良債権が積み上がるのに時間が掛かります。日本でも不良債権が問題になったのは、株価暴落から7年後です。日本長期信用銀行が潰れたのは、ジャパン・プレミアムを払ってもドルを取れなくなったからです(※借りれなく?)。北海道拓殖銀行/日本債券信用銀行/山一證券も同様に潰れます。バブルが崩壊すると資産価格が下がり、不良債権が処理しきれなくなると銀行が潰れるのです。※コロナによる不良債権はどの程度なのか。
・リーマンショックから10年経ちますが、中国銀行/中国建設銀行/中国工商銀行はメガバンクになりました。国有銀行は不良債権を増やさないよう、貸出を株式に転換しています。これは禁じ手です。

○融資平台の融資が120兆円縮小し、パニックに
・ノンバンク向けの融資は120兆円も信用収縮しています。一方銀行融資はなだらかに増えています。中小企業はお金を借りれないのでパニックになっています。地方政府も融資平台から借りれなくなっています。
・外貨が入らないので、人民銀行はマネタリーベースを増やす事ができず、金融引締めを行うしかないのです。人民銀行が量的拡大するには、国債や地方政府/企業の債務を買い上げるしかありません。しかし後者は禁じ手で、これをすると人民元は信用を失い、資本逃避と人民元暴落が起こるでしょう。これは蒋介石の国民党政権が崩壊したパターンです。※共産党が勝ったのは軍事ではなく、経済が原因なのかな。

・地方政府が公債を発行しても、誰も買いません。そのため高利の理財商品で回すしかないのです。地方政府の過剰債務の元凶は、リーマンショック後の4兆元(57兆円)の財政出動です。これは地方政府が捻出したのです。正規のルートでは足らないため、融資平台と呼ばれるダミー会社を作り、地域の開発資金を調達したのです。これで工業団地/大学/病院/保育所/団地などのあらゆる都市インフラを作ったのです。その結果が鬼城(ゴーストタウン)です。
・土地は国有なので、農民から土地を取り上げ、開発業者に土地使用権を払い下げ、財政資金を作ったのです。都市インフラはゴーストタウン化したので、今はITセンター(※何だ?データセンター?)を作っています。120兆円も資金が減少しているのにITセンターを作っているので、過剰債務が増々問題になるでしょう。中国では政府に法制度/政策を変更させ、利益を得る「レントシーキング」が盛んです。人口100万人の副都心「雄安新区」を造成中ですが、これもゴーストタウンになるでしょう。資本流出と対中貿易黒字の減少で、バブルのネタがなくなっています。

○一帯一路とAIIBは窮余の一策
・そこで習近平が打ち出したのが一帯一路です。これで国有企業が過剰生産した商品が輸出できます。外貨も得られます。労働者も送れます。相手を政治的に縛り付け、軍事施設を作る事もできます。中国はこれでジブチ(※紅海の入口)に軍事基地を作ったのです。
・これにトランプ政権/軍・ペンタゴン/共和党・民主党が警戒しています。それで米国はインド太平洋地域でのインフラ整備を打ち出したのです。米国が600億ドル、日本が100億ドルを拠出し、これにインド/オーストラリア/ニュージーランドが相乗りする計画です。※こんなのあったかな。クワッドに近いな。

・中国はアフリカにも投資しています。マダガスカルには14フィートの漁船を330隻持っていきました(※14フィートは5m位だけど)。米軍が基地を置いているディエゴガルシアも繋ぐでしょう(※米軍がいるのに?)。パキスタンのグアダルにも基地を作っています。
・一帯一路は元は「ワン・ベルト・ワン・ロード」(OBOR)でしたが、18年「ベルト・アンド・ロード・イニシアティブ」(BRI)に名前を替えました。「ワン・ロード」では覇権主義と警戒されるからです。

○中国からの資本流出に歯止めが掛からない
・米国の最優先課題は、2000億ドルの貿易赤字の削減です。しかし対中貿易赤字が減少しても、その分他国との貿易赤字が増えるだけです。マクロ経済には、貯蓄投資(IS)バランスの理論があります。投資が貯蓄より少ない場合、対外貿易赤字がある事になり、どこかの国の貿易赤字になっているのです。※どこかではなく、自国なのでは?投資=貯蓄+貿易収支かな。

・貿易収支は関税だけでなく、為替でも調整できます。1985年プラザ合意では、日本/ドイツの対米黒字を、ドルの切り下げで強制的に調整したのです。米国の半導体は潰れそうになっていました。そこでダンピングの容疑を掛け、日本企業を叩いたのです。これはトランプがファーウェイ/ZTEを叩いた方法と同じです。レーガンはトランプと違い、自主規制/保護措置/輸入制限/補助金を嫌っていました。そのためベーカー財務長官はプラザ合意を行ったのです。
・プラザ合意後、彼は「まだ円高だ」と発言を繰り返しています(※ドル安が行き過ぎたので、ドル高に戻そうとしたのかな)。インフレが怖いが、景気を冷やしたくない。そのため日米協調利下げを行ったのです。1987年ドルの下落を防ぐためルーブル合意しますが、ドル安/金利上昇は続き、10月「ブラックマンデー」が起きます。ドイツは協調利下げから抜けますが、日本は協調利下げを続け、株価/不動産価格は上昇し、バブルになったのです。

・人民元は売られ続けているため、外貨準備を取り崩し人民元の暴落を食い止めています。外貨が足らないので、ドンドン借り入れています。トランプは人民元が切り下がる事を警戒しています。

○中国のハイテクは見掛け倒し
・中国は外貨だけでなく技術も欲しています。半導体の国産化率は極めて低くなっています。中国は海外から入れた工作機械で、部品や製品を作る事ができるレベルです。例えばパナソニックように、一から最後まで作れる垂直統合の会社は稀です。中国が特許件数で日本を抜きましたが、これは出願件数で、成立件数ではありません。※出願と成立で差が大きいのかな。
・米国は通信規格5Gでファーウェイ/ZTEを使わないように日本に圧力を掛けました。そのためサイバーセキュリティ対策推進会議で、悪意のある機器は導入しないとなりました。5GはIoTや軍事で利用されるため、米国は警戒しています。

・しかし中国は先進的な半導体を作る技術はありません。鉄鋼にしても、特殊鋼/自動車用鋼板を作る技術はありません。宝山製鉄所の周りに、「カナコ」「夕子」などのバーがあるのは、日本人技術者を招いているからです。
・中国の鉄鋼生産能力は12億トンありますが、8億トンしか生産していません。経済が萎めば、4億トンで十分でしょう。これは中国が社会主義経済だからです。中国経済は資本主義ではなく、人治や派閥が絡んでいるのです。この様な状況なので、中国は「中所得国の罠」に嵌まるでしょう。中国は教育レベルも低いので、先進国になれません。ノーベル賞も受賞できないでしょう。
・中国は海外企業に技術を供出させたり、技術者を一本釣りしてきました。日本人技術者を年収5千万円で雇ったり、優秀な学生の初任給が40万円だったりします。深圳では最先端の事をやっているように見えますが、産業の裾野はいびつです。手っ取り早く真似られるのがITで、それでITセンターを作っています。

○中国から人民元が逃げ出している
・トランプの貿易赤字2000億ドル削減の要求を呑むと、中国は益々ドルの裏付けのない通貨を発行する事になります。人民銀行は金融資産を買い上げ、通貨を発行するでしょう。しかしその資産の価値が下がると債務超過になり、人民元は紙切れになります。そのため中国人は人民元資産を海外に持ち出しているのです(※そうではなく、人民元資産を別の外貨の資産に交換しているのでは)。今中国では人民元の持ち出しが厳しくなり、1年で5万ドルに制限されています。そのため中国人による爆買いもなくなりました。
・女優ファン・ビンビンが米国に不動産を持っていましたが、国税当局が脱税容疑を掛け、8.8億元(146億円)の支払いを命じています。ワンド・グループはホテル76/テーマパーク13(1兆円)を売却しています。

○中国人だけでやっていた花見酒経済はお終い
・実は中国にお金を入れているのは中国人です。利権を持った官僚の不正蓄財は租税回避地を経由して、中国に還流しているのです(熱銭)。彼らはケイマンにペーパーカンパニーを作り、中国の経済が上向くと中国市場に資金を投入します。バブルが膨らみ、経済が下向きになると資金を引き上げるのです。彼らはゴーンの何倍もの事をやっています。中国GDPの2割はこの闇の資金によります。英領バージン諸島には中国系企業が2.5万社も登録されています。この知恵を授けたのが、香港の香港上海銀行(HSBC)などです。

・中国人はお金が好きです。中国で売買できるのは土地の使用権です。価値がゼロだったものが、建設計画を立てる事で、無から有が生まれるのです。これはモノ作りの日本と違う価値観です。中国人には不動産取引が合っています。
・上海株は16年暴落し、サーキットブレーカーが働きます。株は「半値、八掛け、二割引き」なので1800まで下がるべきでしたが、2529までしか下がりませんでした。これは当局が空売りを監視しているからです。

○庶民が金を買い始めたら人民元は崩落
・これらの話はインターポール総裁・孟宏偉の逮捕に繋がります。彼は共産党幹部の海外の隠し口座を知っているはずです(※彼が知っているのではなく、インターポールに記録があるのでは。在任中に逮捕されたのかな)。スイスで怪死した海航集団・王建会長の真相も知っているでしょう。彼は江沢民派で周永康と近く、香港経由のお金を把握しているでしょう。習近平は彼から色々吐かせるでしょう。トランプが在米資産を凍結する話があります。世界銀行のキム総裁が辞任したのは、これに対応できなかったからでしょう。※彼は韓国系米国人。
・そこで次に考えられるのが、中国人による耐久消費財(レクサス、ロレックスなど)や金の購入です。そうなると人民元は崩落します。

<第3章 中国の覇権主義を世界は許さない>
○綻び始めた中国の世界戦略
・中国は一帯一路で領域を拡大させていますが、反発も強く受けています。工事は中国企業が請け負うので人民元ベースになります。負債は現地政府がドルベースで負います。これが6%の高利で、払えなくなると利権を奪うのです。これが「債務の罠」です。さらに建設機械/建設資材などは中国からの輸入で、輸入超過になります。

・フンセン首相が独裁するカンボジアは、チャイナマネーが経済を支えています。タイとの国境付近はコーン州(※ココン州?)です。南西部ではシアヌークビル以外は未開発です。シアヌークビルには深海港があります。カンボジアへの支援は日本が最大で、有償資金協力1168億円/無償資金協力1972億円/技術協力871億円を拠出しています。日本はカンボジア和平会議を主導し、PKOにも派遣しています。
・ところが近年は中国が進出し、大規模にインフラを建設しています。特にフンセンが関心が高いのがコーン州の開発です。既に4.5万ヘクタールが中国に租借されています。第1期工事は1万ヘクタールで、リゾート/病院/学校/ビル/ショッピング・モール/国際空港/港湾などが作られています(※中国の特異な分野かな)。最終的には軍事基地にするでしょう。

○ブルネイのベネズエラ化
・石油を産出するブルネイも中国に傾斜しています。同国は人口43万人で敬虔なイスラム教徒の国です。豊かなので、電気・水道・ガスは配給されています(※他にも詳しく説明があるが省略)。中国が34億ドルを投資し、原油精製工場を建設しました。これはブルネイ史上最大です。第2期工事は120億ドルが予定されています。他に水力ダムも建設しています。ブルネイがベネズエラ化するか心配です。※①小国を相手にする。②資源が絡む。③地理的な要地。これは中国進出の特徴かな。

○死屍累々の中国投資プロジェクト
・東南アジア諸国は、いずれも対中貿易で赤字です。そのため中国は債権国になり、いずれ「土地をよこせ」となります。スリランカはハンバントタ港(99年間租借)、モルジブは岩礁、ミャンマーはラカイン州、バングラデシュはチッタゴン、パキスタンはグアダル(43年間租借)を取られています。これらをつ挙げると「真珠の首飾り」になります。

・先日モルジブの大統領選があり、中国寄りの候補がインド寄りの候補に敗れます。同国は中国から3億ドル借りていると公表されていますが、実際は30億ドルらしい。これは同国のGDPに匹敵します。
・マレーシアの新幹線もインドの新幹線も中断しています。中国のインフラ投資の挫折の象徴がニカラグア運河です。ベネズエラの新幹線も中止になりました。ベネズエラは中国に420億ドルを借りていましたが、今はそれを原油で返しています。

○「借金の罠」に嵌まるアジア諸国
・中国の躓きの始まりはリビアです。同国に10プロジェクト/3.6万人を派遣していました。しかしトリポリ政権/ベンガジ政権/砂漠の政権に分裂し、全てのプロジェクトが頓挫します。一方契約を守り、「借金の罠」(※債務の罠?)に嵌まったのがスリランカ/モルジブで、嵌まりそうなのがミャンマー/バングラデシュです。
・マレーシアはマハティールが首相に復帰します。同国は新幹線で200億ドル、ボルネオからのパイプラインで30億ドル借りていたようです。これを起債したのがゴールドマン・サックスで、手数料6億ドルを得ていたようです。同国はこれを米国最高裁に訴えています。アブダビ(※UAEの首都)も同様に、ゴールドマン・サックスをニューヨーク最高裁判所に訴えています。※これらは中国とGSが組んだ話かな。

・中国はタイのクラ運河の建設を狙っています。ラーマ10世も前向きで、中国は政財界に根回ししています。クラ運河はマラッカ海峡を代替するので、中国の碑益になります。マラッカ海峡の通過量は、スエズ運河の3倍、パナマ運河の1.5倍もあり、しかも中国船の通過量が一番多くなっています。※クラ運河/グアテマラ運河など、代替ルートを確保したいみたいだな。
・ミャンマーではロヒンギャ問題が深刻なラカイン州のチャウピューには中国の経済特区があります。ここも深海港で、工業団地/ビル/学校/病院などを建てる計画です。同国と中国の間でミッソンダム水力発電所の計画があります。しかし電力の90%が中国に送電されるので揉めています。
・バングラデシュはインドの保護国ですが、中国様様になっています。ネパールも同様です。南インドでインドと友好的なのはブータンだけになりました。

○一帯一路はアフリカも食い物にする
・18年12月ジョン・ボルトンン大統領補佐官(安保担当)は、ヘリテージ財団で一帯一路を批判しています。「中国とアフリカの貿易は1700億ドルで、米国の330億ドルを上回る」「中国はアフリカに一帯一路で3年間で600億ドルを投じ、武器/エネルギーを交易する」と述べています。彼が特に問題視するのがジブチで、米軍基地の隣に基地を建設しています。

・中国はマダガスカルにも進出しています。中国は漁船330隻を投入しました。同国で注目されるのは、コバルトや観光です。16の主要部族が存在し、公用語は仏語・英語です。中国と27億ドルの漁業協定を結びましたが、その相手が大統領の息子が社長の民間企業です。そして署名式の2日後に大統領は辞任しています。中国の近代漁船が入ってくれば、沿岸漁業は衰退するでしょう。中国は年間250万トンの魚介類を水揚げしています。マダガスカルのEEZは広大ですが、生態系は変わるでしょう。

○ウガンダでは中国人が強盗団におびえている
・ウガンダでは中国企業への襲撃事件が頻発しています。水力発電所の事務所が襲われ、9400ドルやパソコンが盗まれています。数ヵ月の間に12件発生しています。同国は比較的治安は良いのですが、行政の腐敗で政治不信が高まっています。中国は道路・発電所を建設していますが、ガードマン自体が強盗団を手引きしているようです。

<第4章 中国の夢は消えつつある>
○習近平の部下は無能
・12年習近平は総書記になり、18年3月全人代で「終身皇帝」になります。彼は「中華民族の偉大なる復興」「中国の夢」などを掲げていますが、実際行ってきたのは権力闘争です。また鄧小平の功績を排除し、遺訓「韜光養晦」(能力を隠し、実力を蓄える)を捨て、南シナ海などに進攻しています。

・彼は強権政治を行っており、これが社会不安になっていますが、米中貿易戦争でさらに強化しています。第1に彼の部下は能力が高くありません。中央委員会政治局で彼に尽くす人はいません(※彼は福建省長/浙江省党委書記/上海市党委書記などを務め、当時の部下を重用している。中央では中国共産主義青年団/太子党などからも孤立しているらしい)。副首相・劉鶴/王滬寧などがいるが学者なので政治力はない。王滬寧は米中貿易戦争で吊るし上げられ、報じられなくなった。
・北戴河会議で長老達が彼を批判すると思われたが、江沢民が高齢化し欠席するなど、それはなかった。江沢民派は、インターポール総裁・孟宏偉の逮捕など、ボロボロになっている。女優ファン・ビンビンの蓄財を助けたのが、曽慶紅の弟・曽慶淮です。彼は芸能界のドンで、江沢民の威光を利用し、資金を集めたのです。

・権力を習近平に集中させ、全ての情報を彼一人に集めています。彼は4つの経済小組を作ったが、機能していません。7大軍区を5大戦区に変えるなど軍改革もしましたが、これも機能していません。経済小組を作ったのは李克強を貶めるためですが、機能していないので、李克強はメルケルや安倍と堂々と会談しています。因みに彼は無名時代、日本に長期滞在し、小沢一郎の世話になっています。

○習近平は解任を恐れ、四中全会を開かない
・通常であれば中央委員会全体会議(四中全会)が開かれるのですが、開かれていません。これは異例です。米中貿易戦争の先行きが分からず、習近平が解任されるかも知れないからです。18年11月ASEAN/APECの後、政変が怖いので、フィリピン/ブルネイ/スペインを歴訪しています(※外遊の方が危ないと思うけど)。四中全会は205人が集まり、19年3月の全人代に掛ける経済政策などを決める重要な会議です。

・鄧小平の長男・鄧撲方が「中国は身の程を知らねば」と習近平を批判しています。鄧撲方は「韜光養晦」に戻れと言っているのです。18年10月安倍訪中の日程が変わりますが、これは習近平が南巡講話を行ったからです。この時鄧小平の肖像を外させ、毛沢東と自身のものだけにしています。※今の中国の国力は鄧小平時代を超えているが、その基礎を作ったのは鄧小平と思うが。

○独裁体制への反感が高まりつつある
・中国のデジタル帝国主義は凄い速さで進んでいます。アリペイで個人資金の流れは把握され、完全な監視社会です。中国人は「自由はなくても生活水準が守られれば」と考えていましたが、少し変わってきています。SNSに自由に書き込めないのは不満です。習近平が終身皇帝になった時、若者がバックする動画が流行りましたが、それへの風刺です。次は「くまのプーさん」でした。人民解放軍も削減が続いているため、不満が溜まっています。監視社会ですが、現役軍人の不穏な動きは止められていません。

○退役軍人の反乱
・中国には退役軍人が5700万人います。恩給をもらっていますが、物価上昇で生活が苦しくなっています。彼らはガードマン会社/民間警備会社/白タク・白トラックなどに就いていますが、若くても仕事がない人が多くいます。

○500万人に膨張する「戦争の犬達」
・米国のブラックウォーターは、7千エーカーの土地で射撃訓練・戦闘訓練を行い、世界各地に派遣されています。彼らはプライベート・アーミーです。イラク戦争にも派遣され、大活躍しました。
・人民解放軍は235万人でしたが、習近平が30万人を解雇しました。中国にもブラックウォーターのような「戦争の犬達」があり、軍事請負企業で500万人が働いています。彼らは、スーダン/パキスタン/トルコ/モザンビーク/カンボジア/マレーシア/タイなどに派遣されています。パキスタンではパイプライン/高速道路/鉄道敷設などの工事が行われており、それを警備しています。これも一帯一路の影響です。

・習近平は弁護士の一斉検挙も行いました。また香港の銅鑼湾書店の店長を一時拘束しました。中国で暴動が起きるとしたら、不動産価格の下落が切っ掛けになるかもしれませんが、政府は上手く調整するでしょう。しかし実際に公表されている価格とは別に、裏ではリベートが取引されています。

・私が一番注目するのは人民元で、3割はドルの裏付けがありません。お金を絞ると融資平台によるシャドウバンキングが縮小し、中小企業がドンドン潰れます。そのため人民元の発行を続けざるを得ず、いずれかの段階でインフレになります。そうなると大衆の生活は圧迫されます。天安門事件の原因の1つが、高インフレなのです。インフレで一番打撃を受けるのは中産階級で、農民/就職できない若者/年金生活者/退役軍人です。
・大豆の報復関税は25%で、これは効いています(※米国からの輸入かな)。しかし中国の統計は不透明で、インフレが起きているかは分かりません。豚肉は補助金を出しているのに40%も値上がりしています(※豚熱とかは何時かな)。石油は50ドル台で一時の100ドルから下がりましたが、人民元が安くなると、ガソリンも高騰するでしょう。私は人民元安がインフレが切っ掛けになると考えます。

・中国経済は固定資産投資の拡大で成り立っています(※説明がないと分からない)。そのため資産格差は拡大してきました。当局が発表するジニ係数は0.34ですが、西安大学の調査では0.62でした。※ジニ係数は1に近いと格差は大きい。

○農民工の不満が爆発する
・中国は階級社会で、農村戸籍と都市戸籍で大きく異なります。農村部は産業がないので、上海などで農民工として働いています。しかしその仕事も減っています。地元にニュータウンが作られていますが、農民工には買えません。またニュータウンには建物があるだけで、水道/ガスが来ているとは限りません。あるいはバスが1日数本だったり、スーパーがなかったりします。

○台湾の政治的なリスクが高まっている
・これまでは国民の不満を反日問題にすり替えてきました。しかし今は日本との関係をこじらせる訳にはいきません(※十分こじらせているけど)。そこで選ばれたのが韓国です。※内容の説明は全くない。
・トランプは台湾との関係を強化しています。しかし蔡英文政権は低迷しています。そこで中国は経済的な揺さぶりを掛けています。彼女は中国に対し凛とした態度を取らず、台湾独立を不鮮明にしました(※反撃が怖いかな)。これにより国民党に票が流れています。しかし中国が台湾を占領するのは容易ではありません。人民解放軍は205万人に減らされました。その内180万人は国内の治安に当たっています。
・今中国が狙っているのは朝鮮の統一でしょう。文在寅は北朝鮮主導で統一しようとしています。そうなれば中国に有利です。

・安倍首相はロシアを抱き込もうとしています。しかし二島返還論なので評判は良くありません。これは日ロ関係の維持のためでしょう。米国も日本もロシアを抱き込もうとしています。

○習近平の野望
・習近平は「中国の夢」「中華民族の復興」を掲げていますが、最終的には毛沢東になる事でしょう。一帯一路は「米国中心の国際金融秩序への挑戦」とされます。モンゴル帝国は史上初の紙幣「交鈔」を発行した世界通貨大国です。次の明は鄭和が大船団で7回航海しています。しかしこれは各地を訪れただけで、植民地にしてはいません。フィリピンが南シナ海の領有権を主張し、国際司法裁判所に訴え、認められますが、中国はそれを「紙切れ」として無視しています。

<第5章 中国経済の崩壊に巻き込まれるな>
○人民元と円の通貨スワップが決まった
・18年安倍訪中で日中間の通貨スワップ協定が調印されます。02年に締結されていたのですが、漁船衝突事件で失効していました。当初の規模は3300億円でしたが、今回は3.4兆円に拡大しています。これは中国企業が日本企業を買収したり、日本の不動産を購入する時に使います。その際中国企業は円建て債(※サムライ債?)を発行しますが、信用が問題になります。しかし日銀と人民銀行が通貨スワップする事で、これが容易になります。※通貨スワップは経済活動の相互促進でウィンウィンが目的かな。日韓の通貨スワップは関係悪化で止まった。

○日中間の通貨スワップは中国を救う
・この様に通貨スワップは棄損した債券の救済になりますが、人民元が信用度の高い円で裏打ちされる事になります。これは人民元国際化の手助けになります。また日銀が人民元を引き取ると資産になりますが、人民元が切り下がると資産が棄損し、政府納付金が減ります。※日銀は法人税以外に国庫納付金を収めているみたい。

・私は産経新聞に人民元通貨スワップを批判する記事を書きました。この件で財務省の高官と会って話をしました。日本のメガバンクがパンダ債を発行し、それを日本企業が買うのです。日本企業が人民元の債券を持ち、信用不安が起きると日銀が保証するのです。これは日中経済の一体化です。
・日本企業が中国に投資する理由は一帯一路です。例えばタイにスマートシティを作るとなると、メインコントラクトは中国企業となります。それに日本企業がAI/ネットなどで協力するため、人民元が必要になるのです(※日本は売る方なのに人民元が必要?)。政府はそのために通貨スワップが必要と言っています。この辺りを追求しても、財務省高官は口を濁しました。

○通貨スワップは「日本買い」に使われる
・逆に通貨スワップは中国企業が日本に投資するのに使われます。日本企業や日本の不動産を買収するのに使われます(※普通に外為で円を取得できないのかな。これなら手数料が掛からない)。この人民元通貨スワップについては、財務省内でも賛否があるようです。問題が起きた時に供え、中央銀行間の契約になっているのでしょう。

○中国は世界一の借金大国
・中国は一帯一路で新興国を「債務の罠」に落とし込めています。そして稼いだドルに見合った分だけ人民元を発行しているのです。ところが近年、外貨資産と人民元発行量が乖離するようになりました。

・日本の異次元緩和により1兆ドルを超えるお金(※円?)が海外に流出しています。国際金融市場があるとしたら、その99%は邦銀の融資です。6年間(12年6月~18年6月)で邦銀は1.1兆ドルを融資しています。そして中国の対外債務も同額なのです。従って日本が中国に丸々貸しているのです。中国は日本の異次元緩和により低金利でお金を借りているのです。
・中国の民間債務残高は、08年6兆ドルから18年29兆ドルに増大しています。これは世界の6割です。ただしこの全てが対外債務ではありません。
・中国が何を外貨準備としているのか不透明です。中国の外貨準備は3兆ドルありますが、その分をドルで借り入れています。一帯一路もアジア開発銀行(ADB)を通じて日本の資金でやっているのです。

○AIIBの起債は日本でもできる
・AIIBの起債は日本でもできます。17年金融庁がAIIBの格付けをトリプルAにしたため、リスクゼロなのです(※官庁が格付けしているの?)。焦げ付いても日中通貨スワップにより、日銀が助けるのです。邦銀はマイナス金利のため、お金を日銀口座預金に置けないので、ドンドン海外に融資し、中国を助けているのです。※米中の分断は進んでいるけど、金融だけは別だな。

○ADBまでがAIIBを後押しする
・ADBの中尾総裁が頻繁に訪中しています。彼も日銀総裁の黒田氏も親中派です。AIIBは13年に中国が提唱した国際開発金融機関で、15年に日本加盟の議論が活発になります。米国/日本は透明性がないとして参加していません。
・14年私はADBの記者会見に参加しました。そこで彼は「アジアにはインフラ資金が絶対的に不足している」と述べます。そこで私は「中国はADBから借金をしている。それを返してからAIIBを立ち上げるべきだ」と異論します。しかし彼は「よくある話で、問題ない」と答えました。※又貸しなんだ。

・彼はAIIB総裁・金立群と度々会っているようです。脱線しますが日本国債暴落論があります。これは財務省と正確に咀嚼できないメディアの情報操作で、消費増税のためです。財務省はIMFにも工作員を送っています。日本の財政は健全なので、消費増税の必要はありません。日本の家計・企業の金融資産はGDPの3倍あり、また日本は純債権国なのです。私は産経新聞などで、消費増税反対をずっと書き続けています。

・サウジアラビアのアラムコが上場できませんでした。これは米国が不透明と疑義を掛けたからです。三菱UFJ銀行/みずほ銀行は中国でパンダ債を発行しています。トリプルAに格付けされたAIIBも日本でサムライ債を発行する事になります。※政治と違い、日中経済は相当緊密な気がする。トヨタが中国でFCVを生産する話もあった。まさしく政冷経熱の気がする。

○日本は第3次中国投資ブーム
・18年安倍首相は財界人500名を連れて訪中しました。第1次安倍内閣の時は200名でした。今は第3次中国投資ブームなのです。対中投資に積極的なのが日立です。日立トップの中西氏は経団連会長で、18年だけでも3~4回訪中しています。9月には日中経済協会/経団連/日本商工会議所など200名で訪れています。
・伊藤忠も親中志願組です(※駐中国大使が伊藤忠出身だったような)。日立は英国での原発建設が頓挫したため、中国で補填しようとしています。トヨタは中国に全体の15%しか投資していないので、大丈夫でしょう。25%以上投資している企業は危険です。
・証券では野村證券です。これまで中国は外資には中国企業との合弁だけを認め、しかも株式の過半数の保有を認めていませんでした。ところが米国の圧力でヘルスケアなど、一部の産業で過半数の保有を認めています。※中EU投資協定は、この辺りを決めているのかな。

・15年IMFは人民元の特別引出権(SDR)入りを認めます。しかし人民元は変動相場制になっていません。ラガルドも親中派なのです。財務省幹部に「IMFに縛りはないのか」と訊ねると「縛りはない」との事でした。日本はIMFに気前よく1千億ドルを提供し、発言力はあるのに、官僚主義で中国を甘やかしています。
・18年安倍首相は訪中し、「シルクロードに協力する」と言い出します。OMB局長ミック・マルバニーに訊ねると、「日本の判断で、それはよくある話だ」と述べます。しかし米軍幹部からは「安倍が一帯一路や通貨スワップに協力するとは驚いた」と述べています。

○米国の一部は中国と繋がっている
・米国も中国に対し強く要求していません。人民元はSDRに入ったのに、依然ドルにペッグしています。01年財務長官オニールが訪中します。その時中国の財務大臣が「人民元の自由化は難しい」と訴え、オニールは「自由化すると中国は崩壊するだろう」と述べています。この考え方が、米中間で今も続いているのです。
・ところがトランプは、これまでできなかった事もやろうとしています。これはナヴァロの路線です。ただしこれを最後まで徹し切れるかは分かりません。通貨マフィア(※具体的な説明が欲しい)は中国発の世界恐慌を恐れています。これはG7の共通認識でもあります。また通貨マフィアは国際金融資本と一体なので、日本も関係しています。※世界経済は中国が牽引しているイメージだったが、本書は中国がリスクの中心なんだ。

○日本は中国を救済している
・日本は中国を助けています。89年天安門事件がありましたが、92年天皇が訪中し、ODAを再開しています。しかしこれは米国との合意だったかもしれません。今回の中国金融危機もトランプは選挙で忙しいので、対応は「安倍に任せる」となっているでしょう。
・トランプは対中強硬を続けます。その米中間を安倍首相が調整する事になります。日本は中国にお金を流し、中国のクラッシュを防ぐのです。これは日本だけが世界経済を牽引したプラザ合意と同じ構造です。米国/EUが緩和を止めても、日本の異次元緩和は続けられ、そのお金が中国に流れます。それを見越して、トヨタ/日産は中国に投資するのです。

○AI研究に中国は欠かせない
・安倍首相はインドとの協力関係も強めていますが、中国の比ではありません。ただし上海の滞在者は激減しています。これは上海の賃料が高く、地方都市へ拠点を移しているためです。中国は人民元を早く海外に出したい(※流出を止めたかったのでは)。一方で日本は中国に行きたいとなっています。日立はAI/IT/ネット関係/監視システムなどで中国をマーケットに考えています。
・中国ではAIの学習に必要なデータの入手が容易なのです。目の虹彩データの蒐集でも、日本は個人情報で無理ですが、中国ならできます。中国には沢山の特区があり、地方都市が競うようにハイテクセンター/ITセンターを作っています。日本企業もそこに拠点を作っています。

・しかし中国人と仲良くしていると抜けられなくなります。戦時中の陸軍には、軍閥の参謀になって彼らのために働いた人もいます。伊藤忠/ユニクロなら問題ありませんが、日立/トヨタになると技術が盗まれる恐れがあります。
・中国だとAIの学習に必要なデータを容易に入手できます。自動運転でも日本は規制が厳しいので実験できませんが、中国はその環境が整っています。中国は半導体の技術が欲しいので、これでも日本は取り込まれるでしょう。
・決然たる政治家がいないと、日本は中国に引き込まれます。財界は日本国内への投資ではなく、中国への投資を望んでいます。安倍首相の秘書官は経産省出身で、外務省は外されています。外国人労働者の受け入れの入国管理法の改正も、財界の意向です。米国は中国人へのビザの審査を強化しましたが、日本はその逆を行っています。土地に関しても、中国に野放図に買われています。

・米国は政府が動かなくても、議会が動きます。ファーウェイ問題でも、議会がきちんと調べ、禁止すべきと判断したのです。日本にはそれがありません。日米の議会を比較するとキリがありません。例えば日本は議員1人に秘書1人ですが、米国では外交委員会には60人位いて、委員長は彼らを自由に使え、政策の立案ができるのです。今の共和党の多くの実績は、マルコ・ルビオ上院議員に依ります。※「米国は2つの心臓で動く」だな。「地盤、看板、鞄」では、いつまで経っても政治家は成長しない。
・さらに米国には議会調査局があります(※詳細の説明が欲しい)。日本は国会図書館で資料のコピーができるだけです。また野党も官僚が作成した資料の間違いから、審議拒否する事しかできません。

○日本の財務省は中国のクラッシュを恐れる
・日本の議会で現実的な議論はできず、官僚頼みの政治になっています。先程の財務省高官に「中国経済が危ないので、自由化を要求すべきだ」と訊ねると、「中国経済の問題を表面化させると、信用不安になる」と答えました。
・ドイツ銀行の株価が下がっているのは、中国にどっぷり浸かっているからです。またドイツ銀行は政府により、フォルクスワーゲンの赤字を全部押し付けられました。フォルクスワーゲンを支えているのは中国工商銀行で、中国に乗っ取られるかもしれません。

・財務省幹部に「米中貿易戦争により中国崩壊は避けられないのでは」と訊ねると、「軟着陸させないと」と答えました。ウォール街/国際金融資本の利害を代表する通貨マフィアは、トランプと異なり、中国を崩壊させてはいけないと認識しています。※米国の一部は親中派なんだ。

○中国は自滅するプロセスに入った
・中国は外貨が入らなくなり、貿易黒字もなくなり、技術もなくなり、不動産投資が潰れて、融資平台が融資を引き揚げ、不良債権問題が始まると、中国バブルは崩壊します。※条件が一杯あるな。でもバブル崩壊は、1つ引き金が引かれると連鎖するからな。
・上海株の下落位では崩壊しませんが、リーマンショック時のように国際金融市場が不安定な時は崩壊する可能性があります。中国バブルが崩壊すれば、リーマンショックを超えるでしょう。経済は消費+投資+純輸出です。純輸出がダメでも消費/投資が良ければ問題ありません。ところが金融が狂ってしまうと消費/投資もダメになります。これがミンスキー・モーメントです。※初めて聞いた。
・日本のバブルがこれです。銀行は不良債権に追われ、貸し剥がしをやり、信用収縮が起きました。中国は党主導でこれをごまかしています。世界は怖くて何も言わないのです。

○中国を潰せない状況
・中国は大き過ぎて潰せなくなったのです。今中国に替わるフロンティはないのです。クリントン政権はドル高政策で世界からお金を集めました。そのためロシアで通貨危機が起こり、メキシコではテソボノ危機(?)が起きます。ドル基軸通貨体制はお金を集め、その再配分の上がりで儲けるのです。これには中国が必要で、これがグローバリズムの仕組みです。しかしこれにより米国は空洞化し、中西部の白人は没落しました。そこで中国を叩くために、トランプが生まれたのです。しかしウォール街/通貨マフィアは、中国が潰されると困るのです。オルタナティブとしてインドがありますが、まだまだです。そのため中国を潰す事はできません。

○中国の崩壊はどれ位のスピードで進むか
・胡錦涛時代は「保八」と云われ、経済成長率8%を保っていました。中国は6.5%と公表していますが、北京の国際通貨研究所は1.6%としています。中にはマイナスの報告書もあります。党官僚は、官営事業の収入の8%を自分たちの利権にしてきました。これも「保八」の根拠です。今でも党官僚は、8%の手数料を取っているはずです。「賢明な日本人よ、中国発の金融恐慌に備えよ」が結論です。

<あとがき> 田村秀男
○米国は中国のデジタル帝国主義を許さない
・米中貿易戦争はトランプと習近平の戦いですが、世界を巻き込む戦争です。しかしこの戦争は、これまでになかったデジタル帝国主義時代の戦争です。中国のデジタル帝国主義を支えているのが貿易なのです。トランプはこれを見抜き、高関税を掛け、中国のハイテク搾取・強要/知的財産権の侵害に対抗しているのです。

・情報技術(IT)/人工知能(AI)/情報通信(5G)が発達し、国家が膨大な個人情報を集め、監視・束縛する事が可能になりました。カネ・モノ・情報を統制下に置く中国はマネーパワーを駆使し、自国の全体システムを世界に広げようとしています。※中国は経済的繁栄を目論んでいるが、自国への内政干渉を嫌うように、他国への干渉はしていないと思うが。
・17年に施行された国家情報法には、「いかなる組織・個人も、国の情報活動に協力する」とあります。中国は総動員して世界を中国化しようとしています。

・一方米国も米国標準を押し付ける覇権国です。大統領は政治・経済・外交・軍事で強い権力持ちますが、民主主義ゆえに議会/裁判所/メディアのチェックを受けます。
・日本は米中貿易戦争で「中国からハイテクの受注を受ける」「対米輸出が増大する」などの「漁夫の利」を期待するような経済至上主義では、中国のデジタル全体主義に取り込まれます(※日本は強かなので、その道を歩んできた気がする。衝突を避け、常に中庸を選んできた)。日本の政官民/メディア/アカデミズムに、国家安全保障/個人の自由が脅かされる事を認識してもらいたい。

○トランプ発言では分からない米国の真意
・トランプの発言は不規則で、周囲を不安にさせます。彼は株価をさかんに気にしています(※年金のためかな)。米国の株価は景気と共に動き、相関係数は完全相関に近い。85~18年で相関係数は0.96です。彼は大統領再選を目指し、景気を維持しようとしています。
・18年秋ペンス副大統領は、ハドソン研究所で中国デジタル覇権の阻止を講演しました。ファーウェイの締め出しに、親中だった英国/豪州/日本も同調しようとしています。台湾も半導体提供を止めざるを得ない。対中協力国の韓国/ドイツも対応を迫られるでしょう。世界は反中に変わり、政治・経済・外交・安全保障・ビジネスで反中が渦巻く事になります。日本はその主導権を取るしかない。

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