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『地図とデータで見る SDGsの世界ハンドブック』イヴェット・ヴェレ/ポール・アルヌーを読書。

SDGsが主題だが、環境に関する様々な事を解説し、環境大全と云える。
SDGsは17の目標から成るが、それらに全く触れていない。

3部で構成され、第1部で環境全般、第2部で国際的な取り組み、第3部で仏国の取り組みを解説している。
特に第3部が詳しく、仏国の環境政策を解説している本と云える。

お勧め度:☆(専門的かつ翻訳で難解。余り読みたくない本)
内容:☆☆(俯瞰的だが詳しい)

キーワード:<持続可能性を持続する>持続可能な開発、自然、公平性、<新しい持続可能な開発のための目標>2030アジェンダ、<増加と老齢化で揺れる世界の人口>人口ピラミッド、<人間開発指数-様々な不平等>人間貧困指数/多次元貧困指数、<保健衛生における不平等>水・食糧、エイズ、<食糧事情における不平等>、<温室効果ガスと気候変動>温暖化、<水資源利用の不平等>淡水、トイレ、河川、<土壌-劣化と砂漠化>炭素、汚染物資、<生物多様性の危機>ホットスポット、大量絶滅、<鉱山・エネルギー資源>化石燃料、電力消費、レアアース、<資源としての海洋とその汚染>海洋プラスチック、<世界における廃棄物>リサイクル、<リスクと公害>自然災害、放射能事故、騒音公害、<気候移住>紛争、難民・移民、海面上昇、<大規模会議>地球サミット、締約国会議(COP)、<気候変動の緩和-温室効果ガスの管理>京都議定書(COP3)、パリ協定(COP21)、カーボン・プライシング、<気候変動への対応-エネルギー転換>再生可能エネルギー、エネルギー強度、<森林保護とREDD+>、<保護>生物多様性、<海洋保護>国連海洋法条約、海洋保護区、南極、<フェアトレード>マックス・ハーフェラール、FINE、<世界の持続可能な観光>世界観光機関、<欧州と仏国の規制>EU、<大気の質>大気汚染、<気候温暖化とエネルギー転換>温室効果ガス、再生可能エネルギー、<モビリティと輸送>炭素税、<持続可能な都市>エコシティ、スマート・シティ、<品質改善のための水管理>水法、<海の沿岸部>排他的経済水域、<新しい農業、バイオ、都市農業>合理的農業、有機農業、都市農業、<持続可能な森林>国有林・公有林/民有林、特例森林、<緑と青の枠組みと生物多様性の管理>、<廃棄物と循環経済>、<社会連帯経済>社会経済、連帯経済、共有経済、<自然/テクノロジー/核のリスク>リスク管理、<健康問題>、<観光>エコラベル、<開発への公的支援>政府開発援助(ODA)、開発・国際連帯法

はじめに

<1.持続可能性を持続する>
・「持続可能な開発」を「将来世代が自分達のニーズを満たす能力を損なう事なく、現在のニーズを満たす開発」と定義すれば、コンセンサスを得られるだろう。しかしその生態的・経済的・社会的な要素を吟味すると、多様である事が分かる。※先が思いやられる。
・この「持続可能な開発」は、G・パーキンス・マーシュの『人間と自然』(1864年)に始まる(※産業革命後かな)。彼は多くのエコロジストの指導者になった。※多くのエコロジストを紹介しているが省略。
・こうして1872年世界初の国立公園「イエローストーン」が生まれ、1892年J・ミューアにより自然保護団体「シェラ・クラブ」が創設された。この対照的な姿勢は、トマス・マルサス(1795年『人口論』)の考えを引き継いでいる(※どう対照的なのか)。この付けが「栄光の30年」(1945~75年)で表面化する。レイチェル・カーソンが『沈黙の春』(1962年)で世界に衝撃を与える。

○生態学的側面
・自然と人間の関係には様々な考え方がある。自然には岩・地面・水・空気・動植物などが含まれる。自然に対する人間の立場も様々な考え方があり、神聖化するものや環境の再生と生物多様性の維持とするものなどがある。
・哲学者ハンス・ヨナスは「自然の最大のリスクは、人間(科学)を誕生させた事」としている。化学者パウク・クルッツェンは、人間が地球環境を改変する時代を「アントロポセン」(人新世)とした。古来からの「アントロピザシオン」(人間が自然環境を改変するプロセス)は、これらの立場を受け入れ難くしている。さらに言えば、自然の構成要素(大気、岩石、生物、水)に復元の指標となるゼロポイントは存在しない。※難解。読みたくない本だ。

○経済的側面
・「持続可能な開発」は、西欧で脱工業化/金融化が唱えられた時期に現れる。この「持続可能な開発」は自由経済と両立できるのか。「強力な持続性」の主張は、生態系を脅かす「持続不可能なシステム」と対立する。これを推し進めれば、脱成長(デクロワサンス)に行き着く。
・1992年リオデジャネイロで「消費と生活スタイル憲章」が提唱される。これは6つのRで総括される。再評価/再編/再分配/削減/再利用/再生利用である(※仏語省略)。

○社会的側面
・公平性は「持続可能な開発目標」(SDGs)の1つである。社会的に「持続可能な開発」は、現在と未来の世代や世代間の公平を求め、誰もが安心できる開発である。これは米国での貧しい人の闘いに起源がある。※本書は「闘い」の翻訳が多い。
・しかし彼らは「持続可能な開発目標」(2015年国連サミットで採択された『持続可能な開発のための2030アジェンダ』。※これがSDGsだな)の不平等ではなく、環境被害の告発/保護策の提案を優先させている。豊かな人は、『リオ宣言』/『アジェンダ21』の原則に従って、政治に貢献しなくてはいけない。誰もが共有財にアクセスできるようにしなければいけない。

・本書はまず世界の現状を概観し、次に仏国の事例を紹介する。ただし「持続可能な開発」の法規制は新しいため、持続性からの評価は難しい。

<2.新しい持続可能な開発のための目標>
・1992年『アジェンダ21』(21世紀に向けての環境保全行動プロジェクト)/2000年『国連ミレニアム宣言』(21世紀の国際社会の共通目標を表明した宣言)は不十分であった。そのため2015年『2030アジェンダ』(我々の世界を変革する、持続可能な開発のための2030アジェンダ)を定めた。これは全ての国が対象で、途上国向けの『ミレニアム開発目標』(MDGs)と異なる。2016年さらに169の下位目標を定め、「ハイレベル政治フォーラム」がフォローしている。※一杯あるな。これらが柱かな。
・『2030アジェンダ』は気候変動/環境破壊を制御し、貧困/不平等を撲滅する事を目的とする。これは17の目標/169の下位目標で、人口/繁栄/地球/平和/パートナーシップの全テーマをカバーする。

○持続可能な開発目標(SDGs)の実現を目指して
・『2030アジェンダ』は、国家/市民社会/NGO/民間セクターが協働するシステムで、国連の国際会議である「持続可能な開発のためのハイレベル政治フォーラム」(HLPF)が毎年チェックする。2018年は「水と下水設備」(目標6)/「クリーンエネルギー」(目標7)/「持続可能な都市」(目標11)/「持続可能な消費・生産形態」(目標12)/「陸域の生物多様性」(目標15)がチェックされた。
・このフォーラムは国連の6つの機関の1つである(※6つしかない?)。ある部門の政策が、他の部門にネガティブな影響がないか監視する。国連統計委員会は進展を判断するための232の指標を提案した。

○不平等と持続可能な開発
・「持続可能な開発目標」の10番目は「不平等の低減」である。世界の富裕層上位10%が富の82%を有するが、世界の下位半数は財産をほとんど有していない。西欧諸国でも1980年代以降の超自由主義で悪化した(※新自由主義かな)。これは経済問題であるが、政治/社会/文化/環境/空間(※?)/知識にも関わる。

第1部 持続可能な開発から程遠い不平等な世界

・四半世紀前、最富裕層(10%)の可処分所得は最貧困層(10%)の7倍だったが、今は9.5倍に拡大した。極度の貧困者は30年で10億人減じ、栄養失調者もここ10年で10億人から8千万人に減じた。しかし環境問題は山積し、「持続可能な開発」から程遠い。最貧困層はこの障害を真っ向から受け、「貧困の削減・根絶」は「持続可能な開発」の核心である。

<1.増加と老齢化で揺れる世界の人口>
・世界人口は76億で史上最多である。1970年代「人口爆発」が危惧されたが、合計特殊出生率は下がり始めた。しかし人口は不均衡に増加している。
・人口76億は、2050年97億、2100年112億になるとされる。しかし人口増加率は1970年代2%から1.1%に低下している。平均出生数も、1950年5人から、2.4人に低下している。経済発展と人口減少は対だったが、出産数の低下は近代化の原動力になるかもしれない。※こんな考え方あったかな。

○不平等な分配と不均衡な人口増加
・欧州/北米の人口比重は低下し、アフリカ/中南米/アジア(日韓を除く)が増加している。2022年インドが「一人っ子政策」を取った中国を抜くとされる(※来年だ。コロナの影響はどうだろう)。2050年には、インド/中国/パキスタンの比重が高まる(※パキスタンは砂漠のイメージがあるが)。世界人口の1/6を占めるサハラ以南も増加を続け、2030年16億、2050年24億に増え、「未来の大陸」と呼ばれる。

○際立つ老齢化
・人口ピラミッドは横軸が人口、縦軸が年齢である。1970年の人口ピラミッドは末広がりだった。しかし2015年は下部が縮小し、上部が広がった。この傾向は今後も強まる。高齢者(60歳以上)の割合は1950年8%だったが、2060年には22%に上昇する。中央値も現在は30歳だが、2050年には36歳になる。アジア/アフリカの人口は増え、人口バランスは変化する。

<2.人間開発指数-様々な不平等>
・「人間開発指数」(HDI)は創造的な人生を送れるかの指数で、健康/教育/生活水準から算出される。不平等は国家間だけでなく、国内にも存在する。開発途上国の貧困度合を表す指数は、「人間貧困指数」(HPI)から、「多次元貧困指数」(MPI)に替わった。これは所得・消費水準/教育/保健などから算出される。

○人間開発指数(HDI)
・貧困国は人口の80%を占めるが、富は20%しか有していない。一方富裕国は人口の20%しか占めないが、富は80%を有す(※2分割か)。1990年国連開発計画が平均寿命/教育水準/所得から人間開発指数を算出した。これは0が最も厳しく、1が最高の状態で、人間開発の段階を「非常に高い」「高い」「中程度」「低い」に分類する。2010年「非常に高い」46ヵ国/「低い」49ヵ国が、2017年「非常に高い」59ヵ国/「低い」39ヵ国に改善された。さらに不平等を重視した「不平等調整済み人間開発指数」(IHDI)も算出している。

○世界における貧困
・1996年国連開発計画は健康・衛生/教育/生活水準から算出する「人間貧困指数」(HPI)を考案した。これは途上国と先進国で算出方法が異なり、途上国では、40歳前に死亡する確率/非識字率/飲料水を利用できる割合/子供の栄養状態などから算出する。先進国では、60歳前に死亡する確率/読解力障害/貧困ラインで生活する人の割合/長期の失業などから算出する。

・「多次元貧困指数」(MPI)は、2010年人間貧困指数に替わるものとして提唱される。これは教育/保健衛生/生活水準から算出され、就学年数/就学率/栄養不良/乳幼児死亡率/住居・衛生設備/飲料水・電力/燃料/交通・コミュニケーションなどから算出される。
・「多次元貧困指数」は104ヵ国(52億人)を対象に算出し、17億人が貧困となった。その51%が南アジア、28%がアフリカにいる。新旧の指数を比較すると、エチオピアは39%から90%に、パキスタンは23%から51%が貧困となった。※随分変わるもんだ。まあ人口の1/3が貧困になったからな。

○欧州における不平等
・欧州でもルクセンブルクとブルガリアで、国民1人当たりGDPは7倍も違う。各国の平均所得の60%を貧困ラインにすると、欧州の17%の人が貧困ライン以下で生活している。

<3.保健衛生における不平等>
・保健衛生における不平等は、国家間だけでなく、国内においても見られる。これはサービスへのアクセスの差や、保健衛生に関する知識の差による。
・『2030アジェンダ』は保健衛生においては「全ての人の健康を保障し、福祉を促進する」を目標とするが、これは「健康と福祉」(目標3)に限定される。しかしターゲット167(※169?)の半数以上が保健衛生に関する。※これは覚えておかないと。

○世界の保健衛生統計
・統計では2016年、妊娠・出産の合併症で30万人/5歳未満で590万人/HIVで200万人が亡くなり、結核に960万人が感染し、マラリア患者2.1億人/熱帯病患者17億人がいる。さらに心血管疾患・癌で70歳未満の1千万人、炊事燃料による空気汚染で430万人、大気汚染で300万人が亡くなっている。しかしアフリカでの健康寿命は2012年50.9歳から、2015年53.8歳に伸びた。
・保健衛生の格差・不平等は富裕国でも見られ、肥満となる食事や、反対に栄養不足・栄養失調が見られる。米国の子供の死亡率は高く、特に両親がアフリカ系の子供の死亡率は、両親が白人の場合の2倍ある。

○保健衛生サービス
・保健衛の格差は医師数で分かる。オーストラリアは人口1万人当たり52人だが、ウガンダは1人だ。世界で医療専門家が720万人不足しているが、2035年には1200万人に拡大する。サハラ以南47ヵ国に医学部は168しかなく、11ヵ国はゼロで、24ヵ国は1学部しかない。
・多くの国で医療制度/医療品・医療技術/医療スタッフが十分でない。世界の8億人(12%)が生活費の10%以上を医療費に充てている(※日本でも、そんなもんでは)。これが「持続可能な開発目標」の達成を妨げている。

○その他の不平等要因
・保健衛生における格差・不平等は、衛生知識を得る機会/質の高い栄養の摂取などにも見られる。特に水の質は大きな要因である。マラリアによる死者は年間40万人いるが、その90%はサハラ以南である。水は多くの疾病の誘因になっている。また死亡した5歳未満児の45%が食糧不足・栄養不足による。南スーダンでは人口の半分が食糧不足にある。

○アフリカにおける疾病/エイズ
・今なおエイズ(AIDS)により多数の死者が出ている。これまでに3千万人が亡くなったが、内2千万人はアフリカの人だ。2017年3700万人がHIVに感染し、内2200万人が抗レトロウイルス剤の治療を受けている。感染者の内2600万人がアフリカにいる。感染者が唯一増加しているのが若年層(15~19歳)で、その61%が女性である。教育/食生活/生活環境の実状は「持続可能な開発目標」から程遠い。これは地球温暖化によりさらに悪化する。※「地球温暖化により悪化する」と所々に書かれているが、決まり文句で、その説明はない。

<4.食糧事情における不平等>
・過去に多くの飢餓があったが、それは戦争に起因した(※日本は異常気候かな)。現在は76億人分の食糧は生産されているが、8.2億人が栄養不足・欠乏状態にある。これは政治・経済的な理由による。

○飢餓の終焉
・大量の死者を出す飢餓(目に見える飢え)と、栄養不足・カロリー不足などの食糧難がある。20世紀には、ロシア(1921~22年)/中国(1959~61年)/ビアフラ(1960年代)で飢餓が起きている。※他にもありそうだけど。

○世界における飢え
・栄養不良の人は、2007年10億人から2017年8.2億人に減じた。サハラ以南には1日2千カロリーを摂取できない「目に見える飢え」の人がいる。栄養不足の5歳未満児は1.6億人おり、内5千万人が生存の危機にある。彼らには富裕国からの食糧援助が必要である。

○栄養不良と貧困
・栄養不良の原因は貧困と分配にある。ブラジルは国内向けの農作物を犠牲にして、輸出用作物を栽培している。2008年大企業の投資策により食料が高騰し、食糧危機になった。飢えは社会・政治問題なのだ。また農業は降水量・天候に左右され、地球温暖化の影響も受ける。

<5.温室効果ガスと気候変動>
・2018年「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)が「工業化前に比べ、気温が1℃上昇している」と報告した。温暖化ガスの大半を先進国・新興国が排出しているが、温暖化の影響を最も受けているのは貧困国である。
・2015年パリでの「気候変動枠組条約締結国会議」(COP21)で、「2100年工業化前に比べ気温上昇を2℃以下、できれば1.5℃以下に抑える」と決めた。

○気候変動に関する政府間パネル(IPCC)
・1988年これは世界気象機関(WMO)と国連環境プロジェクト(UNEP)により設立され、気候変動に関する協議を行っている。

○温暖化の現状
・今なおCO₂を排出し続け、中国30%/米国15%/EU10%などである。1990年から2014年で、CO₂排出量は58%増えた。温室効果ガスは、交通・運輸・暖房・発電などでの化石燃料の燃焼による。

○地球の温暖化
・温暖化は生態系や種に影響を及ぼす。コナラ属・マツ属は生息地を移す。温暖化は水資源/生態系だけでなく、人間の健康/インフラストラクチャー(?)/居住環境にも悪影響を与える。この対応は国によって差があり、先進国・新興国と途上国の格差がさらに拡大する。

<6.水資源利用の不平等>
・淡水(400億Km³)の分布は不均衡である。この格差は資源の不足より、政治的・経済的な状況に負う。またトイレなど汚水・廃水の処理は各国マチマチで、これも人に悪影響を与えている。

○不平等に分配された資源
・淡水は水全体の2.8%しかない。しかもその6割はブラジル/ロシア/インドネシア/カナダ/米国/コロンビア/ペルー/インドは9水大国が占める(※8ヵ国だけど。もう1つは中国かコンゴかな)。クウェート/バーレーン/アラブ首長国連邦などは、わずかな水資源しかない。1人当たりの水資源は、ノルウェー/ガボン/カナダの8万m³に対し、マルタ/イスラエルなどは500m³しかない。
・「世界保健機構」(WHO)は、1人当たり年間使用可能量が1700m³以下を「水ストレス」、1000m³以下を「水不足」と定義している。「水貧困指数」(WPI)は身体的/社会経済的/生態学的の5つの指標から成る。

○資源不足によらない供給不足
・資源があっても政治的・社会的状況により水が行き渡っていない。2010年国連総会は「飲料水と衛生に対する権利」を基本的人権に加えた。

○水の質における不平等
・2015年世界の71%が安全な水を利用する事ができ、89%が30分以内に安全な水を確保できる状態にある。しかし8.4億人は水のサービスを受けていない。さらに水が殺菌剤や化学物質で汚染されている場合もある。
・11月19日が「トイレの日」になったが、世界の23億人が、この衛生設備を欠いている(※3割かな)。これは病気を蔓延させ、排泄物は下痢/ポリオ/コレラ/腸チフス/肝炎などを媒介する。

○緊張関係を生む水資源
・国際河川(ナイル川、ティグリス川、ユーフラテス川、コロラド川など)は、流域国に緊張をもたらしている。メコン川の上流は中国だが、下流はラオス/ミャンマー/タイ/カンボジア/ベトナムだ。中国によるダム建設で、水量の減少が懸念される。そのためメコン川委員会を設立し、調整している。同様の紛争はティグリス川・ユーフラテス川(イラン、イラク、シリア)やドナウ川(ハンガリー、チェコスロヴァキア)でも見られる。

<7.土壌-劣化と砂漠化>
・土壌は鉱物と有機物から成り、気候条件や植物相により、非常に多様である。土壌は農業の基礎で重要な資源であるが、多くの地域で荒廃している。

○資源としての土壌
・土壌は数センチから数メートルあり、気圏/生物圏/岩石圏/水圏のインターフェースに位置する(※表層と考えれば良いのか)。一般的に熱帯地方では厚く、高緯度地域/山岳地帯で薄い(※植物と地形に依存するかな)。土壌は植物を成長させる資源だが、再生不可能なので保護する必要がある。※「エジプトはナイルの賜物」とかかある。
・土壌は多孔質で、交換機能/濾過機能がある。これは土壌に有機化合物の主要な要素である炭素が蓄積されているからだ。その量は自然植生/代替植生の3倍に及ぶ(※自然によらない炭素の蓄積?)。その炭素はCO₂として大気に排出され、温暖化を増幅している。
※こんな話し有ったかな。植物は光合成でCO₂を吸収し酸素を排出しているが、動物や微生物が呼吸によりCO₂を排出している事かな。

○人間の活動
・土壌は、人間による植物の除去や大型機械の通過により不浸透化する。表土の孔隙がふさがれ、土壌クラスト(地表の緻密化)が起きている(※多孔質が重要なのかな)。一方表層は侵食され、下流に流され湿地や谷を塞ぎ、洪水を起こす。※表層の流出には善悪があると思うが、平地を肥沃にしているのでは。先程の「エジプトはナイルの賜物」の様に。
・欧州では「共通農業政策」(CAP)が実施されているが、農地・農法の変化で浸食が顕著になった。サヘル(サハラ砂漠南部の半乾燥地帯)/ブラジル北東部では砂漠化が進行している。

○砂漠化
・乾燥地帯/半乾燥地帯/乾燥半湿潤地帯で砂漠化が起きている。砂漠化は生物多様性/水資源に悪影響を与えるが、これが人間により助長されている。1930年代米国のオクラホマ州/カンザス州/テキサス州などで「ダストボウル」が発生し、350万人の農民が移住した。これに「土壌保護局」を設置し、対応した。「サハラ・サヘル観測機構」は環境変化をモニタリングするネットワークである。

○その他の劣化
・他に塩分を制御できないケースや、汚染物資(農薬、殺虫剤、重金属、窒素、リン)による科学的な劣化もある。下水汚泥/糞尿・液肥/産業廃棄物/採掘の残滓も土壌を劣化させる。産業跡地の化学物資(ダイオキシン、ポリ塩化ビフェニル、重金属)も土壌を劣化させる。※豊洲市場の移転時に問題になった。
・産業施設の汚染は局所的だが、酸性雨による大気汚染や放射能汚染は広範囲に及ぶ。また都市開発/インフラ整備により、米国では毎年50万ha、中国では80万haの農地が失われている。
・土壌は生物多様性と農業の基盤で、「持続可能な開発」に不可欠である。しかしアフリカ/ラテンアメリカでは森林が伐採され、農地が拡大されている。

<8.生物多様性の危機>
・生物多様性は生態系の構成要素の1つです。しかし人間により破壊されており、6回目の大量絶滅が危惧される。

○生物多様性
・生物多様性は、動植物群を主とする「バイオーム」(生物群系)で構成され、優勢な植生を対象とし、有機的な組織体が気候区分と深く関係する環境への適応が特徴である。※簡略化したが意味不明。「生物多様性は、生物と気候が密接に関係している」かな。もう少し説明が続くが省略。
・生態系は森林/沼沢/沿岸/草原/生垣/樹木/海などの空間に存在し、それぞれの生物は異なった機能(生産、消費、分解など)を担っている。これにより炭素循環/窒素循環/リン循環/酸素循環が行われている。人間は温室効果ガスの排出で、これを棄損している。※各章の初めに決まり文句として、必ず「温暖化により悪化する」と付言している。

○今の生物多様性
・今地球に存在する種は、これまでに存在した種の1%に過ぎない。これまで1500~1800万種が発見されているが、その半分が昆虫である。種の半分は地球の7%に集中する。熱帯には「ホットスポット」(地球の1.4%)があり、そこに維菅束植物類(シダ植物、種子植物)の44%、魚類を除く脊椎動物の35%が生息している。「ホットスポット」は、カリフォルニア州/ブラジル南部/地中海周辺/ギニア湾周辺/南アフリカ/マダガスカル/インド洋に存在する。

○生物多様性の現状
・生物圏はあらゆる時間・空間で進化してきた。生命の起源は30億年前とされ、海洋での生命の誕生は4.5億年前とされる。その後5回の大量絶滅が起きている(オルドビス紀、デポン紀、ベルム紀、三畳紀、白亜紀。※その内容が記されているが省略)。この原因は噴火/氷河形成/惑星衝突などである。そして今、人間による大量絶滅が危惧される。
・人間による生物圏への影響は、当初はわずかだったが、火の発見で顕著になってきた。既に10種の大型哺乳類が消滅している。最近では鳥類のドードー/巨大ペンギンが消滅し、アフリカゾウ/マウンテンゴリラも危惧される。
・「国際自然保護連合」(IUCN)は絶滅危惧種のレッドリストを作成している。絶滅の原因は、生息地の破壊・縮小・汚染、資源の過度の利用(乱獲など)、気候変動などである。

<9.鉱山・エネルギー資源>
・地球の70億人の1/3が全エネルギーの2/3を消費している。しかし2050年には90億人になり、エネルギー需要も増える。鉱山資源も需要が増え、緊張の原因になるだろう。

○十分な化石燃料
・エネルギー消費の2/3を、石油/天然ガス/石炭/褐炭などの化石燃料が占める。石炭は豊富で安く、中国/インド/インドネシア/南アフリカで多量に消費されている。石油/天然ガスの海洋掘削は深い海域での掘削が主流になった。また水圧破砕/水平掘削によりシェールガス/シェールオイルも開発されている。
・石油/天然ガス/石炭の埋蔵量は、2016年産出量の51倍/53倍/114倍しかない。またエネルギー需要は年1.7%上昇している。※開発が進まなければ50年以内に枯渇する。しかし枯渇に近付くと価格が高騰し、枯渇はしないらしい(実質的な枯渇)。

○電力消費
・電力消費は発展度の指標になるが、「持続可能な開発」の争点でもある。2016年消費電力は前年比2.9%増となり、2.3万TWhとなった。その7割を10ヵ国(中国5900TWh、米国4100TWh、インド1200TWhなど)が占める(※米中で半分近い)。1人当たりの消費量は、米国1.3万kWh/中国4千kWhに対し、アフリカ566kWhと不均衡である。
・今後も消費電力は増える。電力構成は石炭39%/天然ガス23%/水力16%/原子力11%になっているが、再生可能エネルギーが毎年1.9%増える。

○鉱物のニーズ
・露天掘りにより金・銀・銅が掘られているが、掘り出された土は自然に悪影響を与えている。またそこでの化学的処理は、水・大気を汚染している。
・レアアース(希土類)17元素は重要性を増している。埋蔵量は1.15億トンあり、年間15~20万トン消費されている。埋蔵量の44%が中国で、市場を支配し、地政学的リスクになっていいる。

<10.資源としての海洋とその汚染>
・海洋は地球の7割り占め、地球のエネルギー収支/天候/温室効果ガスの収支で重要な役割を担っている。また多様な生物が生息し、鉱物資源も豊富にある。よって「持続可能な開発」で重要である。

○海洋
・海洋は気候を調整しているが、これは水塊の慣性(?)や海流による(※海流も慣性によるのかな)。また海水は大気の5倍のCO₂を吸収し、気候変動を抑制している。しかしここ100年で海面温度は1℃上昇し、水位は1年で3mm上昇している。また溶け込む炭素の増加で酸性化し、生物多様性に悪影響を与えている。※海洋酸化の問題があるのか。これは継続的に監視されているのかな。

○豊富な資源
・海底には多金属塊/水酸化鉄/マンガン粒が存在する。また海洋で風力・風水力を得られる(※風水力?波力・潮力などもある)。しかし乱獲/汚染/海水の温暖化・酸化により魚資源は減少している。沿岸部の動植物も悪影響を受けている。植物プランクトンが高緯度地方では増加し、熱帯地方・中緯度地方では減少しているが、その影響を推測するのは難しい。

○海洋汚染
・1970年代海洋プラスチックが研究され始める。北太平洋還流ではプラスチック廃棄物が集まり、波と紫外線で砕かれた数ミリの粒子がスープ状になっている(※最近はマイクロプラスチックが話題になる)。海洋プラスチックは1Km²当たり、5Kg存在する。海洋プラスチックの8割は陸地に由来し、河川から運ばれたプラスチックである。
・殺虫剤/医薬品/重金属/炭化水素なども食物連鎖を介して生態系のリスクになっている。水銀化合物は食物連鎖の上位者(海鳥、巨大魚、海洋哺乳類)により多く含有される(※クジラ/イルカなどの異常行動は水銀によるらしい)。化学汚染により酸素が減少し、デッドゾーンも生まれている。他に温暖化/酸化の問題もある。
※海洋は巨大なので緩やかに悪化しているかな。逆に言えば改善も緩やかにしかできない。酸化の問題は特に意識していなかった。

<11.世界における廃棄物>
・世界で膨大な廃棄物が排出されているが、その量はマチマチである。廃棄物の管理はその性質によるが、「持続可能な開発」のためにリサイクルされるようになった。リサイクル方法の共有やリサイクルの促進が課題になっている。
・廃棄物は不要になった資材・物質・製品だが、価値のある部分や汚染リスクを取り除いた最終的なゴミである(※廃棄物にリサイクル物資は含めない?)。2016年廃棄物が40億トンあったが、その大半は世界人口の16%の国から排出されている。今後はサハラ以南/アジアからの排出が増え、2050年には今の2~3倍になると予想される。
・廃棄物には微生物により分解される植物性廃棄物/食物廃棄物と、分解されない建築廃棄物/公共事業廃棄物がある。リサイクル可能な廃棄物(ガラス、金属、紙)は分別収集が必要だ。また危険廃棄物(爆発性、引火性、感染性、突然変異誘発性、放射性、電池、廃油、溶剤、炭化水素、汚泥など)は特殊な処理が必要になる。

○EUの廃棄物
・2014年EUは25億トンの廃棄物があった(世界で40億トンとあったが)。その割合は、建築35%/採掘28%/製造10%/廃棄物処理・上下水道9%/家庭8%などである(※家庭は回数は多いが、少量かな)。この内3.8%が危険廃棄物だった。全体の51%が再利用された。※これは焼却と思うが、そんなにあるかな。

○リサイクルと合法的な取引
・二次原材料(リサイクルされた資材)は備蓄の枯渇に不可欠である(※備蓄かな)。パルプ/鉛は大半が二次原材料から作られ、鉄・非鉄金属も1/4~1/3がそれから作られる。「国際リサイクリング協会」は、収集・加工/営利化を請け負っている。

・年間6億トンがリサイクルされているが、その1/3が国際交易されている。中国は世界最大の廃棄物輸入国(古紙2700万トン、プラスティック7800万トンなど)で、63%を占める。2018年中国は一部の廃棄物(紙、プラスティックなど)の輸入を禁止したが、他のアジア諸国がそれに代わるだろう。※最近は輸入禁止の流れにあるはず。
・「バーゼル条約」(1992年発効)は、有害廃棄物の国家間の移動や処分を規定している(※危険廃棄物と有害廃棄物は別かな)。OECDは加盟国から非加盟国への有害廃棄物の輸出を禁じている。※アビジャンで毒性廃棄物が投棄された事件を説明しているが省略。
・廃棄物の合法・非合法の輸出が続いている。廃棄物の管理は「持続可能な開発」の最前線である。

<12.リスクと公害>
・多くの人(特に最貧困層)が自然/科学技術/核のリスクに脅かされている。気候変動による天災は深刻さを増している。騒音公害も人々の安寧・健康に悪影響を与えている。

○自然災害
・自然災害には地質学的災害(地震、地形変動、火山活動など)と気候的災害(暴風、洪水、サイクロン、旱魃)がある。これらは気候変動で悪化している。2017年は自然災害(ハリケーン・イルマ、ハリケーン・マリア、カリフォルニア洪水・火災など)が多かった。今後も増えると予想される。自然災害は貧困を悪化させる。そのため貧困層は居住環境だけでなく、知識が必要になる。※何の知識か?本書は結論ありきが多過ぎる。
・2011年日本の沖合でマグニチュード9の地震が起き、さらに福島原発事故が起きた。福島第1原発の6基の沸騰水型原子炉は自動停止したが、津波により電力供給が損なわれ、炉心溶融を起こし、水素爆発で建屋が吹き飛んだ。

○世界規模の原子力災害
・世界で437基の原子炉が、人口が稠密な30ヵ国で稼働し、人々にリスクを与えている。事故は放射性元素が放出される事によって起こる。これは放射性物資の輸送、放射性元素による医療、軍事、工業などでも起こる。これにより広範囲の土壌・水・大気が汚染される。この危険度は放射性核種により固有である。※放射性物資/放射性元素/放射性核種と区別している。

○リスクから公害へ
・都会には臭覚・聴覚の公害がある。これらはストレスになり、睡眠不調/生活態度の変化(※食欲不振などかな)を引き起こす。空港建設では騒音が問題になる(※建設?運航では)。米国では50以上の紛争(※訴訟?)が起きている。EUでも5千万人が騒音に悩まされ、2千万人に健康問題が起きている。

<13.気候移住>
・紛争は犠牲者だけでなく、環境の劣化・破壊/伝染病/飢餓/栄養失調を生み出す。また住民の国内外への移動・移住も余儀なくされる。これは気候変動でさらに深刻化する。※常に気候変動を付言する。

○不安定さと紛争の要因としての環境
・紛争は経済的・民族的・政治的な問題から起こるが、環境・気候のストレスが不安・不安定さを強める。例えば旱魃・洪水により資源が減少し、緊張が高まる。紛争を避けるには、資源の効果的な吸収・管理が欠かせない。逆に資源が豊富な事も、紛争の原因になる。湾岸戦争など化石エネルギー/鉱物エネルギーに関連する紛争は多い。
・紛争は移住を引き起こす。移住先は資源/環境/健康/食糧/教育で悪影響を受ける。

○環境難民/エコ難民/気候難民
・難民の試算は地球温暖化の分析に重要である。2008~14年に直接的な脅威(※殺害などかな)/洪水/地滑り/暴風雨/火災/猛暑により2250万人が避難した。これは気候変動によるものと断定できないが、サヘル/ブラジル北東部では、かつてから砂漠化で人口移動が見られる。

○海面上昇
・21世紀になり沿岸部で0.2~1m海面上昇している。海抜が低い太平洋諸島(フィジー諸島、ツヴァル、トンガ王国、キリバスなど)やインド洋の島嶼部(モルディヴなど)が被害を受け、10~200万人が移住している。これは必ずしも気候によらず、ツヴァルではかつてから経済的な理由から移住していた。
・これらの小国は、この状況を利用し、基金/援助の恩恵に浴している。ドイツは非常任理事国になるため、これらの国を支援した(※非常任理事国になるのは難しかったかな。日本は常任国入りを目指していると思うが)。
・海面上昇とサイクロンの強大化は東南アジアのデルタ地帯にも被害を与えている。環境問題は経済・政治・社会の包括的状況と関係が深い。これらの状況が貧困を助長し、移住を生じさせている。

第2部 持続可能な開発のためのグローバルな対応

・国連は平和・安全保障を重視しているが、「持続可能な発展」も重視している。特に1972年以降多くの会議が開かれ、生物多様性/砂漠化/大気・土壌汚染/気候温暖化に対処している。多くのプロジェクト/協定がなされているが、相互の調整は行われず、また法的強制力も持たないため、「持続可能な開発」の目標を達成できていない。

<1.大規模会議>
・1972年大規模な会議がストックホルムで開かれ、以降10年毎に開かれている。さらに気候/水/人口/住居/観光などの会議も開かれている。100ヵ国以上が参加し、注目を受ける時もあるが、成果は明確でない。

・国連主導の「地球サミット」は10年毎に開かれる。1972年ストックホルムで「第1回国連人間環境会議」が開かれ、以降ナイロビ(1982年)/リオデジャネイロ(1992年)/ヨハネスブルグ(2002年)/リオ+20(2012年)が開かれた。これに気候変動/生物多様性/人口/水に関する締約国会議(COP)が加わった。これらの会議には、企業/若者/農業従事者/先住民/科学コミュニティ/女性/労働組合/地方団体/NGOなどの9つのグループが関わっている。
・しかし大規模な会議の成果は希薄で、決議の内容変更を余儀なくされたり、反サミット運動/アルテルモンディアリスム運動(※反新自由主義みたい)などが起きている。※これも「総論賛成、各論反対」かな。

○持続可能な開発のためのグローバルな対応
 1972年-「国連人間環境会議」(ストックホルム)
 1976年-「国連人間居住会議」(ヴァンクーヴァー)
 1992年-「アジェンダ21」(地球サミット、リオデジャネイロ)
 1994年-「欧州持続可能都市会議」(オールボー憲章)
 1995年-「気候変動枠組条約締約国会議」(COP1、ベルリン)、「世界持続可能な観光協議会」(スペイン)、「世界開発サミット」(コペンハーゲン)、「世界女性会議」(北京)
 1996年-「第2回気候変動枠組条約締約国会議」(COP2、ジュネーヴ)、「第2回国連人間居住会議」(イスタンブール)
 1997年-「第3回気候変動枠組条約締約国会議」(COP3、京都)、「世界水フォーラム」(モロッコ)
 2000年-「国連ミレニアムサミット」(ニューヨーク)、「第2回世界水フォーラム」(ハーグ)
 2002年-「持続可能な開発に関する世界サミット」(ヨハネスブルグ)、「世界都市フォーラム」(ナイロビ)
 2003年-「第3回世界水フォーラム」(琵琶湖・淀川)
 2006年-「第4回世界水フォーラム」(メキシコシティ)
 2007年-「持続可能な欧州都市」(ライプツィヒ憲章)
 2009年-「第5回世界水フォーラム」(イスタンブール)、「第15回気候変動枠組条約締約国会議」(COP15、コペンハーゲン)
 2010年-「第10回生物多様性条約締約国会議」(COP10、名古屋) ※COPは「Conference of Parties」で、一般的な略語。
 2011年-「第17回気候変動枠組条約締約国会議」(COP17、南アフリカ)
 2012年-「第6回世界水フォーラム」(マルセイユ)、「国連持続可能開発会議」(リオ+20)、「第10回世界森林フォーラム」(UNFF、イスタンブール)
 2014年-「世界先住民会議」(WCIP、ニューヨーク)
 2015年-「第7回世界水フォーラム」(大邱)、「第21回気候変動枠組条約締約国会議」(COP21、パリ)
 2016年-「国連難民・移民に関する国連サミット」(ニューヨーク)、「持続可能な交通に関する国際会議」(トルクメニスタン)
 2017年-「国連海洋会議」(ニューヨーク)、「第2回持続可能な観光に関する会議」(オマーン)
 2018年-「第8回世界水フォーラム」(ブラジリア)、「第24回気候変動枠組条約締約国会議」(COP24、ポーランド)
※各会議・フォーラムを説明しているが、その内容は省略。

<2.気候変動の緩和-温室効果ガスの管理>
・京都議定書(1997年)やCOP21(パリ、2015年)を契機とし、炭素クレジット(認証排出削減量)の取引により温室効果ガスが削減される。排出量の価格決定は温室効果ガスの削減に繋がる。

○京都議定書からCOP21まで
・1992年リオデジャネイロでの「気候変動枠組条約」の延長が、「京都議定書」(COP3、1997年)である。2005年55ヵ国以上の締結で発効し、批准国は196ヵ国になった。「京都議定書」は第1約束期間(2008~12年)に温室効果ガスの排出量を1990年比で5%削減する目標だった。ところが2012年条約締約国会議(COP18、カタール)で改正され、第2約束期間(2013~20年)での新たな目標が設定された。
・2015年パリでの条約締約国会議(COP21)で全ての締約国と協定を結び、「2100年の気温を、産業革命時代(1861~80年)の+2℃未満に抑える」となった。また「先進国は、資金の提供/技術の移転/脱炭素に転換する」となった。ただし強制力はない。

○柔軟性メカニズム
・京都議定書は3点を定めた。①先進国で温室効果ガスの排出権を売買する(排出量取引)、②クリーン開発メカニズム(CDM)、③共同実施(JI)である。③は排出量を削減するプロジェクトに資金援助するメカニズムで、ロシア/中東欧の工業・林業プロジェクトに関わる(※なぜ地域限定なのか)。②はエネルギー/廃棄物処理/農工業/林業を対象とし、先進国/途上国の排出量削減を目的とする。先進国は途上国に削減技術を提供する事で、炭素クレジットを得られる。
・2001年シカゴに炭素市場「クライメート・エクスチェンジ」(CCE)が開設され、7700のプロジェクトが実施され、2千億ドルが投入されている(※グリーンボンドかな)。ただプロジェクトはアジア太平洋地域(82%)に偏っている(※この地域の発展が著しいからな)。そのため「パリ協定」(COP21、2015年)で、②③を中央集権的に変更した。

○炭素の価格付け(カーボン・プライシング)
・EUには「排出割当量取引システム」(EU-ETS)があり、排出量の上限設定と取引を行っている。この排出量の上限は総排出量を減らすため、徐々に引き下げられている。この上限を超えた施設・企業は取引市場で排出権を購入するか、世界で行われてる国際クレジットを購入しなければならない。※上限設定で公平性は保たれるのか。
・このEUの「排出割当量取引システム」は大規模で、世界の取引量の2/3を占める。このシステムは効果を発揮しており、2020年には2005年より排出量を21%減らせるだろう。ただ炭素価格が高いとインセンティブになるが、炭素価格が低いと機能しない。
・2016年世界的エコノミスト13人が「炭素価格化ハイレベル委員会」を創設し、炭素価格を設定している(※こんな委員会があるんだ)。削減を完全にするために導入された炭素税(※詳細の説明がない)は、エネルギーを大量に消費する営為に不利益を課すだろう。※難解な翻訳。エネルギー革命が起きるかな。

<3.気候変動への対応-エネルギー転換>
・エネルギー転換とは化石燃料から再生可能エネルギーへの移行と、エネルギーの生産・分配・消費の効率化である。これはCOP21(パリ、2015年)の達成に不可欠である。

○転換の遅延要因
・鉱脈から消費者までのエネルギー・システムは複雑で伝統的である。現在は石油31%/石炭29%/天然ガス22%となっており、21世紀後半も化石燃料は重要だろう。そのためCO₂の回収・封じ込めが研究対象になる。

○再生可能エネルギー
・再生可能エネルギー(REN)は、COP21達成のために不可欠である。2015年再生可能エネルギーは世界のエネルギーの19.3%だったが、2050年には66%に達するだろう。先進国は温室効果ガスの2050年排出量を1990年の1/4にする目標を立てている。一方途上国は排出量を増加させるため、世界では1/2に減ると予想される。
・「国際再生可能エネルギー機関」(IRENA)は、2050年再生可能エネルギーの割合が67%になると予想している。2006年以降風力発電/太陽光発電への投資は増え続けたが、2016年は減少した(※一時的な現象では)。これらに問題がない訳ではなく、発電が間欠的なため、補完策が必要になる。また風力発電はその建設に大量のエネルギーを必要とする。またソーラーパネルもレアアースを大量に使用する。

○排出制限
・エネルギー効率の向上は消費減少(?)と浪費削減に掛かる。エネルギー強度(最終エネルギー消費を生産額あるいは国内総生産で割った値)は、2050年に2/3に減少するだろう。このエネルギー強度は分野毎に算出でき、国内総生産1千ドル当たりの石油換算トンで表せる。※エネルギー強度ね。ほとんど意識しなかった指標だ。
・住宅/輸送/都市プロジェクト/農業ではエネルギーを節約する努力が必要になる。建築では、生物多様性/環境性能評価/低炭素建築などの革新的技術が導入されている。またスマートグリッドは電力の需給を最適化する。また高度なオートノミー車(FCV、EV)の開発と、高速充電ステーションの普及により、モビリティ分野でも再生可能エネルギーが占めるだろう。

<4.森林保護とREDD+>
・1992年リオデジャネイロ会議以来、森林の課題は「気候変動に関する国際連合枠組条約」(UNFCCC)の締約国会議に取り組まれた。「途上国における森林減少・劣化からの温室効果ガス排出の削減施策」(REDD)は、REDD+に進化している。※大幅に省略。

○森林による炭素の隔離
・樹木は植物性物資を作りCO₂を吸収するため、「炭素の井戸」と呼ばれる。炭素は落葉・枯れ枝となり地上に堆積し、地上の40%をストックする(※微生物が分解すると、CO₂に戻るかな)。近年南半球で森林が減少し、温室効果ガスの削減に悪影響を及ぼしている。1990年世界の森林面積は41.3億haあったが、2015年40億haに減少した。

○REDDとREDD+
・気候変動の中心課題は「森林の破壊・衰退に対する施策」で、REDDは森林資源の保全/森林経営の向上を目的にしている。REDD+の「+」は持続性を意味する。「森林炭素パートナーシップ基金」(FCPF)/世界銀行の「森林投資プロジェクト」(FIP)/国連REDDプログラムの支援を受け、アフリカ/南米/アジアの49ヵ国で実施されている。
・このプロジェクトにより、気候変動の抑制/生物多様性の保護/生態学的サービス(※後述の補償メカニズムみたい)が行われている。このエココンディショナリティ(環境融資付帯条件)は温室効果ガスの削減に寄与している。
・2001年このメカニズムは京都議定書(COP3)から削除されるが、2005年COP11(モントリオール)で再登場し、2009年COP15(コペンハーゲン)で採択される。

○実施の難しさ
・しかしこのREDD+メカニズムの実施は容易でない。森林の変移を制御し、確認できるのか。途上国にとって森林保護とアブラヤシ栽培のどちらが儲かるのか。そのため途上国では国際機関の代表者とアグリビジネス企業との対決が起きている。※ブラジルでの森林伐採が時々報道される。
・プロジェクトに炭素投資家/NGOが関り、「炭素削減証明書」が発行されるが、「認証排出取引市場」では使用できず、ただ生態学的な善行になるだけだ。途上国に補償金が支払われるが、当事者に届いているのか。REDD+は目標を達成できないだろう。そのため政治改革による社会的再配分の実現が必要である。
※こんなメカニズムがあったのか。この温室効果ガス削減の中心的対策が不調ではいけないな。そのため途上国での対策(森林保護)から、先進国での対策(排出削減)に向かっているのかな。

<5.生物多様性の管理>
・生物多様性は人間により破壊されている。それを管理・保護すべきなのか。生息域外/生息域内でどの様に対応すべきなのか。

○保護
・1906年最初にゾウが保護され、その後サイ(1908年)/ウミガメ(1927年)/クジラ(1946年)が保護された。1973年175ヵ国が「ワシントン条約」(CITES)を採択し、動物5千種/植物2.8万種が保護される。
・自然公園/国立公園などの保護空間は10.2万ヵ所ある。1969年「国際自然保護連合」(IUCN)が保護空間を定義し、現在は保護地域(Ⅰa)/原生自然地域(Ⅰb)/国立公園(Ⅱ)/自然記念物(Ⅲ)/種・生息地管理地域(Ⅳ)/景観保護地域(Ⅴ)/資源保護地域(Ⅵ)の6カテゴリーがある。※各保護空間の説明はない。

・1913年「アフリカの森林・動植物相保護会議」は国立公園を「無住の国有資産」とし、狩猟・採取を禁止した。1872年イエローストーン国立公園が誕生し、1900年40ヵ所、1920年140ヵ所、1970年1.3万ヵ所に激増した。1958年「国際自然保護連合」内に途上国に保護区域を設ける「世界保護地域委員会」が設立され、「世界自然保護基金」(WWF)に支援されている。
・2014年自然保護区域は21万ヵ所になり。大陸の15.4%/海洋の3.4%を占める。1992年「国連環境開発会議」(UNCED、リオデジャネイロ)で承認された「生物多様性条約」(CBD)は、大陸の17%/海洋の10%の設定を目標に定めた。
・しかし「どの程度保護すべきか」の答えはない。急進的なエコロジストは「住民を移転させても保護すべき」と主張するが、ケニア/セネガル/チャド/カナダ/中国は「絶滅危惧種のいるホットスポットに限定すべき」と主張する。ホットスポットの相互依存性を考えると、保護区のネットワーク化だろう。この主張はEUが提唱する「緑と青の枠組」(陸地と水域のネットワーク)と一致する。※難解な文章が連続しており、簡略化。

○生物多様性の管理
・生物多様性の管理は多くの関係者を必要とする。生態系サービスへの支払い(PES、例えばREDD+メカニズム)は生物多様性の保全が目的である。開発しなかった事への補償が、国/事業者/住民に支払われる。
・2010年「名古屋議定書」で、2011~20年における戦略的プロジェクト「愛知目標」が策定される。その5大目標は、①生物多様性の損失の根本原因に対処する、②生物多様性への圧力を減少させる、③生態系/種/遺伝子の多様性を守る、④生物多様性/生態系サービスから得られる恩恵を強化する(※補償の強化?)、⑤知識管理の参加型プロジェクト(?)の実施である。

・2012年「生物多様性および生態系サービスに関する政府間科学・政策プラットフォーム」(IPBES)は、「愛知目標」の実施を検討している。だが「地球規模生物多様性概況」の最新版(2014年)は「目標を達成できないだろう」と指摘している。「第13回生物多様性締約国会議」(COP13、メキシコ)でも、「内水域での指定を17%まで増やす目標が遅れている」と強調している。また海洋での指定を10%に増やす目標についても、「大幅に遅れている」と指摘している。
・多くの国が生物多様性の保全のため課税している。例えばコスタリカでは燃料に、メキシコでは水に課税している。保全には活動家/農業従事者/森林管理者/国土整備専門家の努力が必要である。

<6.海洋保護>
・「国連海洋法条約」(1982年)は、海洋保護の義務と責任を規定している。また海洋保護や海洋資源に関する合意・協定は多くあるが、効果は十分でない。南極大陸とその海域を対象とする「南極条約」(1959年)は国際的なモデルに成り得るだろうか。

○国連海洋法条約(UNCLOS)
・1982年「国連海洋法条約」は拘束力がある枠組みで、海洋の管理と天然資源利用の基盤である。1992年「アジェンダ21」でも同様の行動プログラムを定めている(※随分長いので省略)。国連海洋法条約は、漁業資源の持続可能性も目的にしている。これにより、「漁業資源協定」(1995年)、海洋生物資源の保全・管理のための「FAO協定」(1993年)が結ばれた。
・また海洋環境の保全・管理については、2008年「生物多様性条約」(COP14)にも盛り込まれ、生態学的・生物学的に重要な海域・地域が策定された。これは法的規制外にあるが、海洋保護区(MPA)のような保護ツールの実施と、環境インパクトの調査・研究の出発点になる。

・1960年最初の海洋保護区がグレート・バリア・リーフに設定された。今日、大西洋東北岸の公海上にも、6ヵ所の公海海洋保護区が設定されている。2017年第4回「海洋保護区会議」にて、海洋保護区の面積が前回(2013年)の3%から6.35%に倍加した事が確認された。
・NGOなどの活動家は、「ノン・テイク・ゾーン」(全ての天然資源の開発を禁止)が2030年までに海洋の30%に拡大するのを目標にしている。これにより海洋保護区は1.5万ヵ所を越え、面積は2130万Km²となった。これに南極のパパハナウモクアケア海洋保護区(米国、151万Km²)/サンゴ海自然公園(ニューカレドニア、130万Km²)/イースター島周海の海洋保護区(チリ、72万Km²)などが含まれる。
・しかし海洋保護区が有効なのは生態学的な観点だけで、集権的な管理システム(?)は埒外である。それは設定した国家が海洋の主権を主張できるためだ。2006年国連総会で「脆弱な海洋生態系」が決議され、底引き漁業/マグロ延縄漁業の問題が指摘された。

○南極は海洋保護のモデルになるか
・南極は「南極条約」(1959年締結、1961年批准)で規制されている。1964年南極の動植物相の保全が講じられる。1970年代末から生物多様性のため、漁業活動が盛んになる。これは南極条約協議国が国際科学会議の南極研究科学委員会に魚種資源の見積もりを指示している事を正当化している(※理解不能。資源調査?)。1982年「キャンベラ条約」により「生物種間の均衡の維持」が推奨される。
・さらに1998年南極を平和/科学に貢献する自然保護地域とする「マドリード議定書」が発効する。これに「協議国が環境の包括的な対策を明確にする」「環境保護委員会を創設する」が明記されている。

・1959年制定された様々な規制(※南極条約かな)は効果を発揮してきた。違法漁業はなくなり、漁業を取り締まる国際的・法的な枠組みも作られた。しかし南極観光は均衡を脅かす。

<7.フェアトレード>
・南の生産者と北の消費者との認証交易も「持続可能な開発」の枠組みに加えられた。南の生産者166万人(73ヵ国、1411団体)は、フェアトレード/マックス・ハーフェラールの認定を受けている。当初は社会的な性質だったが、「持続可能な開発」の枠組みに加えられ、環境的な性質を帯びた。

○出発点
・フェアトレード(公正取引)は、1940年代米国のキリスト教組織と貧しい国との取引に始まる。1957年オランダで貧しい国からの輸入に特化した「世界商店」が創設される。1964年第1回「国連貿易開発会議」(UNCTAD)で、「トレード・ノット・エイド」(支援ではなく交易)の思想が生まれ、普及する。1988年オランダで「マックス・ハーフェラール財団」が組織される。この組織は反資本主義の政治色が強かったが、自由主義システムの改善に変わる。

○ラベル
・フェアトレードには2つの特徴がある。「世界フェアトレード機構」(WFTO)の認証ラベルを持つボランティア活動団体がある。これは生産者/流通業者/輸出入業者/卸売・小売業者のネットワークで、フェアトレードに100%コミットしている。彼らは10原則を実行し、生産者を支援し、労働条件の管理/正当な報酬を行い、年少者の労働を廃止し、環境保護を保証している。また「世界フェアトレード機構」には、市場の開発/関心喚起行動/信頼の醸成の3つの目標がある。

・もう1つの特徴は、「マックス・ハーフェラール」のラベルの下で輸入業者と流通業者を取り込み、より多くの消費者に届けている。1997年「国際フェアトレード・ラベル機構」(FLO)は20の非営利組織、3つの生産者ネットワーク(フェアトレード・アフリカ、ラテンアメリカ・カリブ海フェアトレード・コーディネーター、アジア・太平洋ネットワーク)、19の国別フェアトレード組織を傘下に置いた。「国際フェアトレード・ラベル機構」は生産者に認証ラベルを付与し、第3者機関のFLOCERTが生産者と輸入業者の契約条件をチェックしている。

・「農民生産者シンボル」(2006年)は生産者が管理するラベルである。また「国際オルタナティヴ・トレード連盟」(IFAT、1989年)とこれに続く「国際フェアトレード連盟」(IFAT、2003年)は、生産者と「オルタナティヴ・トレード機構」(1967年)が1つになった機関である。
・「FINE」は、「国際フェアトレード・ラベル機構」(FLO)/「国際フェアトレード連盟」(IFAT)/「欧州ワールドショップネットワーク」(NEWS、1994年)/「欧州自由貿易連合」(EFTA、1960年)が集まった団体で、その頭文字に由来する。フェアトレード/マックス・ハーフェラールのラベルは、フェアトレードの産物である事を保証するラベルである。

○持続可能な開発とフェアトレード
・「持続可能な開発」とフェアトレードは、別の文脈で生まれた。フェアトレードは不公平・不平等の削減に寄与しない(※フェアトレードは経済的な不公平・不平等の解消が目的では)。フェアトレードの基準に生態学的な性質が加えられたのは、かなり後である。具体的には、殺虫剤の使用禁止/土壌の持続的管理/バイオ製品の生産(※有機農業かな)などである。
・生産物は船舶・航空機により輸送されるが、フェアトレードではコストと経費のバランスを取る。そのため国家・民間の補助金や無償ボランティアに依存している点や、流通業者との過度の近さを批判される。

<8.世界の持続可能な観光>
・「持続可能な観光」は、地域の経済的な発展/遺産資源の尊重と活用/環境の維持/富の公平な共有などを意味する。これはニッチな活動なのか、グローバルな観光の実現なのか。

○世界観光機関(UNWTO)
・「世界観光機関」(UNWTO、1975年)はマドリードに本部を置く民間機関だったが、2003年国連の専門機関になる。159ヵ国/9地域と、500を超える賛助加盟員(民間、教育機関、観光協会、地方関観光当局など)が加盟している。観光は豊かな国の経済活動だったが、途上国も利益を得られるようになり、豊かな国と貧しい国の絆になっている。「持続可能な観光」は国連のミレニアム目標にも取り込まれている。
・1995年ユネスコ/UNWTO/「国連環境プロジェクト」(UNEP)がカナリア諸島で「世界持続可能な観光会議」を共催し、「世界持続可能な観光憲章」を採択した。これに18の原則が盛り込まれた。

○持続可能な観光
・「持続可能な観光」は、観光の主体/NGO/住民の発展に寄与する。利益・費用は公正に分配・分担される。人々の交流が促され、文化・生活の多様性も認識される。環境も配慮される。
・1995年第13回UNWTO総会で「世界観光倫理憲章」が採択される。これには一般的なルールが明記された。※10ヵ条から成るが省略。

○持続可能な観光の形態
・2018年観光客数は14億人とされ、ツーリスト・フロー(※送り元みたい)の48%が欧州、26%がアジア太平洋、17%が米大陸である。観光の一部は「エコ観光」で、現地のコミュニティに物質的安定(?)の持続性を約束する。これには教育的・文化的な要素も含まれる。
・1960年代以降大規模な観光が行われるようになった。これは地元の一部の集団・活動家によって行われたが、地元の産物に対する評価を高めた(※難解)。ツーリスト・フローは地域にどの様な影響を与えるのか。
・観光は持続可能でなければならない。各観光要素が持続可能な実践と符合する必要がある。ラベルを有する分野(ユネスコ登録地、国立公園、文化的・歴史的・自然的遺産など)では、50年前より「持続可能な発展」(?)が脆弱な文化的・自然的な観光地に圧力を掛けてきた(※難解な文章が続く)。その大量の観光客は地域の環境・遺産を劣化させ、地元民はオーバー・ツーリズムを批判する。

第3部 地域的レベル-仏国と持続可能な開発

・国際的な協議の目的は、行動のダイナミズムを刺激する事にある。そのためにテーマを検討し、コミットメントを設定し、実施方法を選び、資金を提供する必要がある。仏国はEUの様々な決定に関与している。気候関連/生物多様性/モビリティ/都市問題/観光/森林/自然管理に関して、整備/持続可能な開発/地域間の平等を地域圏スキーム(SRADDET)に組み込んでいる。

<1.欧州と仏国の規制>
・EUは早くから「持続可能な開発」に気付き、水の保護/生物多様性などにアプローチしてきた。このEUの指令を仏国は国内法に反映させている。

○欧州の対策
・EUは環境/持続可能な開発で成果を残してきた。1986年「単一欧州議定書」は環境に関する共通政策を定めている。1992年「マーストリヒト条約」には「環境を重視した物価上昇を伴わない持続可能な成長」を明記した。1994年「オールボー憲章」に持続可能な都市を記した。2009年「リスボン条約」では、気候変動などの環境問題への対応を検討した。こうしたアプローチにより欧州委員会に環境問題・気候問題を扱う気候行動総局が設けられた。2016年「持続可能な開発目標」(SDGs)を盛り込んだ行動プログラムを実施するための戦略的アプローチを策定している。
・EUは部門別の活動を発展させ、容器包装・容器包装廃棄物指令/電気・電子機器廃棄物指令/鉱業廃棄物管理指令/廃棄物指令などを出してきた。生物多様性については、1992年「自然保護区域のネットワーク」を設立した。2007年「化学物資の登録・評価・認可・制限に関する規則」(REACH)を施行した。重大なリスクを起こす可能性のある工場設置を特定(※制限?)する「セヴェソ指令」を命じた。遺伝子組み換え作物(GMO)に関する指令もある。「持続可能な開発」の進捗状況を測定する統計システムも利用している。2005年温室効果ガス排出量の取引制度も具体化した。
・しかしこれらの進歩的な措置は「持続可能な開発」と連動していない。それはEUが巨大な国際機関(OECD、IMF、国連)と同様に、財政的・市場的な手段を別に有しているからだ。※難解。

○仏国のレベル
・仏国の環境問題への取り組みは、1971年自然・環境保護省の創設に始まる。国内法の7~8割は、EUの域内法に一致する。それは域内法が優位性を持つためで、全ての加盟国で同様である。
・仏国の環境法典は7部で構成される(※詳細説明はない)。その原則は、2005年憲法の環境憲章に再録された。それは汚染者負担/予防/予防・修正行動/参加の原則である。

<2.大気の質>
・良質の空気を呼吸する権利が認められている。大気の問題はエネルギー政策の中に明記され、都市/輸送/農業に関わる。

○大気の質
・大気汚染の損害は年間700~1千億ユーロに及び、年間4.8万人が早死にしている。汚染物資(CO、ベンゼン、SO₂)が改善されても、微粒子(PM10、PM2.5)は過剰に存在する。極めて高い汚染度が高いセクター(?)は、地形が重要な意味を持つ。微粒子/窒素酸化物(NOx)/オゾン(O₃)は夏場の高気圧時に増大する。

○大気汚染が特に注意すべき対象
・1961年大気・臭気に関する「大気汚染防止法」が制定される。1996年「大気汚染とエネルギーの合理的な利用についての法律」(LAURE法、大気法)が制定される。これはEU指令を取り入れたもので、大気の質の監視/目標の明確化/広報を義務化した。
・2015年「グリーン成長のためのエネルギー転換法」(LTECV法、エネルギー転換法)には、原子力発電の削減/企業の気候変動関連情報の開示が盛り込まれる。これは2017年「大気汚染排出削減国家プロジェクト」(PREPA)の基になる。「健康・環境国家プロジェクト」(PNSE)は地域レベル(PRSE)にも適用される。PREPAは、部門別規制/財政措置/インセンティヴ/関心の喚起/ステークスホルダーの動員などから成る。※具体的な規制が記されているが省略。国家レベルのプロジェクトがPN・・で、地域レベルのプロジェクトがPR・・だな。

・これに対し「大気汚染地域プロジェクト」(PRQA)は国家プロジェクト目標を地域レベルにしたものだ。「大気保護プロジェクト」(PPA)は、人口25万人以上の都市と汚染が進んだ部門(工場、交通、木材燃焼)に適用される。これは36のプロジェクトがあり、人口の47%が対象になっている。これは「整備/持続可能な開発/地域間の平等に関する地域圏スキーム」(SRADDET)にも盛り込まれ、「気候・大気・エネルギー地方スキーム」(SRCAE)とも両立している。※地域レベルのスキームはSR・・だな。PPAの説明がされているが、難解なので省略。日本での地域的な取り組みはあるのかな。

○相互乗り入れ的な政策
・1990年代から大気=気候=エネルギーの相互乗り入れ的な政策が行われてきた。温室効果ガスの排出を制限するため木材による暖房を勧めているが、これは大気を汚染する。2011年「全国気候変動適応プロジェクト」(PNACC)が発表されるが、この第2版(2018~22年)はパリ協定(2015年、COP21)の目標と一致している。
・2007年「環境と持続可能な開発のための懇談会」(環境グルネル)が始まる(※グルネルは協議の意味)。これにより「気候・大気・エネルギー地方スキーム」(SRCAE)が策定され、「地域行政改革法」(NOTRe法、2015年)により自治体(※地方自治体。以下同様)の計画が修正されている。また自治体は「整備/持続可能な開発/地域間の平等に関する地域圏スキーム」(SRADDET)により、地域整備事業に気候・大気・エネルギーに対する取り組みを組み入れなくてはならない。そのためこれらのスキームは、グローバルで将来を見通したヴィジョンに基づいている。
・地方レベルでは「気候=大気=地域エネルギー・プロジェクト」(PCAET、2016年)で気候変動/大気汚染の問題に取り組んでいる。これは6年毎に改定される。これまでは気候/大気/エネルギーの政策が別々に実施されてきたが、今日は統合されている。

<3.気候温暖化とエネルギー転換>
・仏国は10年毎に気温が0.3℃上昇した(1959~2009年)。仏国は原子力発電の比率が高いが、温室効果ガス(GHG)の削減に再生可能エネルギーが寄与するだろう。気候温暖化は「山間部の積雪減少」「高地で野菜が栽培できるようになった」「秋の大量降雨」などに見られる。

・仏国の純GHG排出量は464メガトン(CO₂換算、2014年)で、1990年から15%減少した。部門別では、輸送42%/住宅16%/産業16%となっている。気候への影響は、国の調査リストとカーボン・フットプリントから検討される。後者は国民の生活/国内生産(輸出分は除く)/輸入品から算出される。※輸入品の追跡は難しそう。
・電力における排出は、ドイツは石炭を利用するため多いが、仏国は原子力発電/水力発電のため少ない。住宅/サービス業の排出は気候に左右される。農業はメタン(家畜由来)/亜酸化窒素(N₂O、肥料由来)を排出する。

○再生可能エネルギーの生産
・仏国の大都市圏で23メガトン(石油換算、2015年)の再生可能エネルギーを生産した(※単位は電力でなく、石油換算なんだ)。燃料は、木材40%/水力21%/バイオ燃料11%/ヒートポンプ8%/風力8%となっている(※なぜ太陽光がない)。これは大都市圏のエネルギーの11%を占める(※今は3割を超えているのでは)。一方海外県(レユニオン島、グアドループ島、仏領ギアナなど)では、454キロトンの再生可能エネルギーを生産した。

○国家レベルのプロジェクト
・2009年EU指令に呼応し、「国家再生可能エネルギー行動プロジェクト」(NREAP)を策定した。これは2020年までに再生可能エネルギーを23%にする対策である。しかし2016年の目標は達成できなかった。
・2015年「グリーン成長のためのエネルギー転換法」(LTECV)を制定した。これは2030年までに再生可能エネルギーを32%にする法律である。2019年この法律に基づき、「エネルギー多年度プロジェクト」が発表された。国家は再生可能エネルギーの研究・開発を支援し、生産者にはプレミアムが支払われている(※FITなどかな)。しかし様々な障害があり、転換は遅れている。

<4.モビリティと輸送>
・輸送は温室効果ガス/汚染物資の排出源で、エネルギー転換の恩恵を受ける。車両が改善され、利用者は車両税/燃料税でモビリティ手段を考慮する。

○輸送分野でのエネルギー消費
・輸送でのエネルギー消費は、45.4メガトン(石油換算、2015年)だった。燃料は大半が石油系(ガソリン、軽油、液化石油ガス)で、バイオ燃料は6%に過ぎない。貨物列車による輸送は減少し、道路による輸送は増加している。
・輸送分野は温室効果ガスの29%を排出している。また都市部は粒子状物資(PM)/窒素酸化物(NOx)/揮発性有機化合物(VOC)/オゾン(O₃)などの汚染物資を排出している。

○技術的問題
・2017年1Km当たり111gのCO₂を排出した。これは2008年から38g減少した。EUは一酸化炭素(CO)/二酸化硫黄(SO₂)/窒素酸化物/粒子状物資の排出を規制している。ディーゼル・エンジンの粒子状物資の排出は「EURO5」により削減された。2040年温室効果ガスを排出する車両の販売は禁止される。

○エネルギー転換のための課税
・2008年ボーナス/ペナルティ制度が始まった。「大型トラック・エコタックス」は道路輸送を削減し、河川・鉄道輸送に資金を援助する制度である。しかし運送業者/労働組合の反対で導入は見送られた。
・2014年天然ガス税/石油製品内国消費税/石炭税に気候エネルギー税が上乗せされた。これらは炭素税と呼ばれるが、強い反発を受けている。※炭素税も多種類だな。

○クリーンなモビリティ戦略
・これは「グリーン成長のためのエネルギー転換法」(LTECV)に関わる。2019年「モビリティ指針法」(LOM、MaaS法)により、モビリティ組織局の非管轄地が廃止され、2030年までにCO₂の排出量を5%削減し、2040年までに化石燃料車の販売を終了し、自動車への依存を下げる。また持続可能なモビリティ・サービスのため、新しい権限が自治体に付与された。
・汚染度の高い車両の侵入を禁止する「低排出ゾーン」(※レーンかな)が、2015年パリに設けられた。

・自治体は管轄地域での都市輸送を組織(※管理?)する権限を付与された。「地域行政改革法」(NOTRe法)により地方が公共交通機関を組織する所管機関になった。「整備/持続可能な開発/地域間の平等に関する地域圏スキーム」(SRADDET)は、輸送方式と気候変動・大気汚染を対象とする。「国内交通の方向付けに関する法律」(国内交通基本法)により策定された「都市圏交通プロジェクト」(PDU)は、1996年人口10万人以上の都市に義務化された。これは人口25万人以上の都市と汚染セクターで実施される「大気保護プロジェクト」(PPA)と共存する。

<5.持続可能な都市>
・都市は「持続可能な開発」と関わる。21世紀になり仏国で多くのエコカルティエ(環境配慮型地区、※カルティエは地区の意味)が作られた。これは環境/社会的な結び付き/生活の質を維持する。スマートシティ(知的都市)は、情報通信技術(ICT)により持続可能性を志向する。

○持続可能な都市
・「持続可能な都市」(サスティナブル・シティ、エコシティ)は、1994年第1回「欧州持続可能都市会議」で生まれた概念である。これは、社会的平等/持続可能な経済/持続性のある環境を志向する。2005年持続可能な地区/良質な生活の場が規定された。2007年「ライプツィヒ憲章」が採択され、そのための戦略が策定された。同年「環境グルネル」で「持続可能な都市」が仏国の都市政策の柱とされた。
・2008年「持続可能都市行動プロジェクト」が実施され、52のエコカルティエ/13のエコシティが認証された。2015年「ヴィヴァポリス」が創設され、「持続可能な都市」の知識・指導・促進・活動・評価の拠点になる。これは仏国の「持続可能な都市」の公共政策の中心であり、この概念を世界に普及させている。

○エコシティ・アプローチ
・国は大都市圏を対象にエコシティ・アプローチを実施している。これは、環境/社会的結び付き/生活の質の維持を目的とする。2010年より地域の銀行が管理する「明日の都市基金」により、都市プロジェクトが実施されている。第1段階(2010~14年)では、大都市の31のプロジェクトが選ばれた。第2段階(2015~20年)では31の地域が選ばれたが、内13がイル=ド=フランス(※パリ周辺地域)である。※他にナント・サン=ナゼール/クレルモン・メトロポルのプロジェクトを紹介しているが省略。

・今日多くの都市は「持続可能な開発」を重視し、これにより生産・消費にイノヴェーションがもたらされるだろう。国連の「2030アジェンダ」の「持続可能な開発目標」(SDGs)には「学習都市」の考えを持ち、目標4「全ての人に包括的で公正で質の高い教育を確保し、生涯教育の機会を促進する」、目標11「包摂的・安全・強靭で持続可能な都市、および人間居住を実現する」が規定されている。2017年クレルモン=フェラン(※こちらは都市名)は、仏国で最初のユネスコ学習都市になった。

○スマート・シティ
・2000年代になり「スマート・シティ」(知的都市)の概念が始まった。他にデジタル都市/接続都市(コネクテッド・シティ)/グリーン・シティ/エコシティなどがあるが、全てが同じコンテンツではない。スマート・シティは社会的・文化的・環境的な柱を調和させ、参加型ガヴァナンス/資源の管理/様々な機関・企業・市民のニーズに応えるものである。
・スマート・シティはサービスの消費者だけでなく、開発のパートナーやステークスホルダー、すなわち「スマート市民」(知的市民)のニーズを満たす。新しいテクノロジー/データを採り入れ、資源を有効に使い、エネルギーを節約し、安全性を強化し、地域をより良く管理・運営する。建物のエネルギー消費は少なく、輸送の汚染レベルは低く、温室効果ガスの排出は少なく、交通渋滞は回避される。※サン=テテイエンヌ/メトロポル・ニース=コート・ダジュールの事例を紹介しているが省略。

・スマート・シティはICTを用いるだけでは不十分で、市民の長期的なニーズに応える必要がある。自治体の75%がプレゼンス検知器を備えたLED照明を導入し、誤操作(?)が検出されるとリモートで介入操作を行っている(※これは高齢者向けセンサーかな)。国民の73%がスマートフォンを持っているため、2022年までに全ての行政アプローチがオンラインで可能になる。自治体では公的な決定に市民が参加し、住民のニーズに対応できるようになる。ただし個人データが共有される事に警戒があり、EUの「一般データ保護規則」(GDPR)は役に立つだろう。スマート・シティはデジタル・デバイドを強調する問題があり、また収集された膨大なデータのセキュリティも問題である。

<6.品質改善のための水管理>
・仏国の水資源は豊富で、多様な用途に応えている。水管理は「持続可能な開発」の基盤である。2013年淡水量は335億m³あり、110億m³が取水され、飲料水/農業に27億m³、工業用水に27億m³が利用された。残りの210億m³が発電に利用された。

○水関連政策は法律2例に規制される
・1964年「水配分および汚染防止体制に関する法律」(水法)が制定され、国内6河川の水管理を組織化した。1992年水を「国民共通の遺産」(※資産かな)とし、自然環境を尊重し、家庭排水の処理を義務付けた。同法は飲料水の取水地に保護区域を設け、利用者と関係者の協調を強めた。また関連施設の整備のため、自治体の権限を拡張した。「水生環境に関する法律」(2006年)/「水の供給と浄化・衛生に関する法律」(2011年)が同法を補完している。

・河川・湖沼・湿地帯の水質は住民だけでなく、生物多様性にも影響する。仏国の2万を超える汚水処理場は、7700万EH(住民相当)の処理能力を持つ。しかし2018年欧州議会は373の自治体が飽和状態にあるか、「敏感ゾーン」(高度の廃水処理を義務付けた区域)が目標期限を守れないと指摘した。
・富栄養化はリン酸塩にもよるが、リン酸塩を多く含む洗剤への課税(2000年)や、リン酸塩含有洗剤の禁止(2007年)により低減された。しかし農業での硝酸塩系肥料による汚染は存続する。1991年EU指令で硝酸塩濃度が50mg/lを超える地域が「脆弱ゾーン」に設定された。仏国の農地の55%がこれに該当し、2.3万の自治体がこれに含まれる。※EUの規制はどの分野でも厳しそう。日本の自治体は1700余り。

・今日、極微量汚染物資が問題になっている。これらは工場排水/廃棄物/農産物などから検出される。家庭の廃棄物(医薬品、化粧品、洗剤、殺虫剤、溶剤、界面活性剤、可塑剤、難燃剤)にも含まれる。「極微量汚染物資対策国家プロジェクト」(2016~21年)は、化学農薬の使用の半減を目的とする「エコアンティビオⅡプロジェクト」(2008年)などと共存する。

・環境連帯移行省は水政策を所管し、1964年水法により創設された諮問機関「全国水問題委員会」の助言を受ける。仏国は6つの流域に分けられ、それぞれに「流域委員会」あるいは「水管理庁」が設置されている。そこでは利用者や関係団体の代表が集まり、水政策を検討している。同組織は「流域管理計画」/「水整備管理基本計画」(SDAGE)を監督する。SDAGEの小流域版の「水整備管理計画」(SAGE)は水の用途(飲料水、工業・農業用水など)と水環境の調整が目的だが、地元関係者の自発的な協議による。※もっと詳しく説明されているが省略。

<7.海の沿岸部>
・仏国の海および沿岸部(排他的経済水域、※200海里)は、世界/欧州/仏国の規則に従う必要がある。

○世界第2の海上空間
・仏国の排他的経済水域は1100万Km²で、米国に次ぐ。この海域で漁業/貝養殖(※カキがあるな)/海上輸送/港湾事業/造船/再生可能エネルギー生産/資源開発などの経済活動が行われている。しかし様々な圧力により、生物多様性の衰退/汚染/侵入種の増殖/資源の乱開発などが見られる。また沿岸部の25%で、気候温暖化による浸食が見られる。
・仏国には「海洋保護区」に属する「海洋自然公園」(9ヵ所)などがある。※他にもあるが省略。

○協調政策
・欧州は「包括的な海事政策」(2009年、2012年)で、各国に海・沿岸での「持続可能な開発」の目的を明示するよう求めた。2009年仏国は「海洋グルネル」(環境グルネルの1会議体)で、この方針を支持した。さらに2014年「海洋・沿岸国家評議会」で作業が強化された。同評議会の目的は、持続可能な開発/生物多様性などを前提とする公共政策の策定にある。

・2017年環境連帯移行者(?)は、保護と経済発展を両立させる「海洋・沿岸国家戦略」を採択した。仏国は海域を拡大させ、かなりの海洋自然遺産を有するようになった。
・この国家戦略は4つの目標を掲げている。①生態学的移行(?)、②ブルー経済(資源、海運・港湾、観光、バイオテクノロジー、再生可能エネルギーなど)の持続可能な開発、③良好な生態学的状態、④沿岸部の保全である。この目標のため、4つの方針が立てられた。①認識とイノヴェーション、②持続可能かつ弾力性のある開発、③イニシアティヴの支援・活用、④国際・EU交渉における仏国のヴィジョンの促進である。
・2019年「主要沿岸部および海盆に対する戦略」が作成される予定である。これに応じ自治体はプロジェクトを独自に策定する。「沿岸域保全整備機構」は、750ヵ所(20万ha、1450Km)の海岸線を管理・保全している。

○アキテーヌ地方の事例
・アキテーヌ地方は「持続可能な開発のプロジェクト」の枠組みで、観光の発展を促進する公益団体(GIP)を立ち上げている。これは沿岸域の整備・管理を検討・調整する機関で、「持続可能な開発のための共同プロジェクト」を策定した。生態系に対する脅威(自然環境の保全、気候変動の影響、海水浴場の水質、汚染)と闘い、経済的な試練(活動の多様化、雇用の拡大、イノヴェーション支援)に立ち向かい、社会的な問題(地域住民のニーズ、観光活動)に対応している。

<8.新しい農業、バイオ、都市農業> ※バイオ(ビオ)=有機農業みたい。
・仏国では農業は重要な産業で、景観/環境にも影響を与える。農業は生産至上主義に変質し、汚染問題を起こしている。大都市圏の面積は3500万haで、内2800万haが農地で、農業従事者は85万人余りである。化学肥料/合成薬品/殺虫剤を使用する「工業型農業」は収入を飛躍的に伸ばしたが、環境/生物多様性/景観に悪影響を及ぼしている。

○合理的農業
・「合理的農業」は、規則を超えて農業の環境に対するプラスの影響を強化し、農家の収益を悪化させる事なくマイナスの影響を減らす経営アプローチである。これは認証制度で、「合理的農業国家基準」に加入し、公認保証機関による監査で認められた生産者に出される。これは作物栽培に必要な物(水、肥料)だけを用いる。これは農薬削減を目指す「エコフィット・プロジェクトⅠ・Ⅱ」の主要な要素である。

○他の持続可能な農業
q・放牧地・牧草地を重視する農場では自然度・保全性が高い農業が行われ、生物多様性が保たれる。これらの農場ではアグロエコロジー(生態系を配慮した農業)や耕作・牧畜の補完的な農業が営まれる。「バイオダイナミック農法」は有機農法・自然農法で、環境や人間の健康を保証し、天体(※地球?)や一部の植物に活力を与えるエネルギー特性を考慮する。国際認証機関「デメター」の品質保証に、仏国の750の農業分野(※団体?)と企業が関わっている(※認証されたって事かな)。「パーマカルチャー」(持続型農業)は、土壌が肥沃さを保つ事を可能にする文化的な方法を明示する。※文化的とは伝統的とか慣習的かな。

○有機農業
・有機農業は最も知られた生産様式で、「AB」(農務省の認証ロゴ)や「ユーロリーフ」(欧州の認証ロゴ)で見分けられる。これは自然のバランスを尊重した耕作・牧畜である。そのため合成化学剤/遺伝子組み換え作物(GMO)を排除し、農薬も制限する。これにより土壌・水・大気・生物多様性は保護される。認証を受けるためには、厳格な仕様に準拠する必要がある。
・有機農業により仏国の農業は発展し、2016年生産者は3.2万人になり、1年で10%増えた。これが実践されている農地は150万haで全体の5%である。乾燥野菜の28%、樹木栽培の16%、香料植物の15%、ブドウ園の9%がビオ(有機農業)による。

○都市農業
・家庭菜園/市民菜園/ジャルダン・ダンセルシオン(社会復帰農園)は都市部にあり、生産機能と云うより、社会的な召命である。パリの「首都を緑化するための憲章」には、2020年までに100haを緑化すると明記している。これにより33haを都市農園にする。またヒートアイランド現象との闘い、生物多様性のための環境作り、超近接農業の発展・促進などを行っている。2013年「都市非営利社団農園および持続的都市プロジェクト」が発表された。この目的は、都市農業の専門性を明確にし、厳しい土地状況の中で都市農園の生産性を定量化する事にある。

<9.持続可能な森林>
・森林の持続性は古くから意識されていたが、アンシャン・レジーム以降に用途が多様化(一般用材・工業用材、薪、放牧、狩猟)し、資源が損なわれた。しかし1960年代より「持続可能な管理」へ転じている。

○今日的でない関心
・林業者は「持続可能な開発」を自分達の造語と主張する。1346年ヴァロア朝初代のフィリップ6世は、森林をサスティナブルに維持する林野令を出している(※森林は王が領有し、様々な課税をしていたからな)。その後フランソワ1世(位1494~1547年)/アンリ4世(位1589~1610年)/ルイ14世(位1643~1715年)も、森林における紛争を調整する王令を出している。しかしフランス革命で、森林の所有者が貴族・聖職者から民間人に替わった。※日本は国有林3割/公有林1割/民有林6割みたいだな。
・森林の所有者は400万人おり、管理を難しくしている。全体の2/3を民間が、残りを「全国森林自治体連合」が所有している。これらの森林(?)は林業公社によって経営されている。

○拡張と整備
・19世紀初頭以降、針葉樹の植林により、森林は800万ha増えた(ランド・ド・ガスコーニュ、ソローニュ、シャンパーニュ)。シャンパーニュの森林は農業のため撤去された。ソローニュの森林は狩猟の場になった。ランドの森林は大災害(火災、凍結、旱魃、虫害、暴風)に見舞われてきたが、生物多様性/観光のモデルになっている。

・国有林・公有林は「持続可能な経営」が行われているが、高い生産性が求められ、厳しい批判が向けられている。これに対し民有林は、「持続可能な経営」が不安視される。
・森林に対し余暇機能や生態学的な機能が求められている。全国森林自治体連合が後押しする「地域の森林憲章」(140件)は主要な森林に適用されている。「持続可能な経営」のための認証制度が2つあり、「世界自然保護基金」(WWF)と欧州の森林経営者による。

○特例森林
・近年成果を上げたのが、大規模な国有林の国家指針委員会による認証制度「特例森林」である。これは全ての関係者を結ぶ地域の経営委員会に託され、地域プロジェクトを策定する。2012年フォンテーヌブローの森が認証され、その後ヴェルダン/グランド・シャルトルーズ/ルーアンなどが認証されている。これは革新的なプロジェクトだが、公有林・民有林に広げる事が課題である。

<10.緑と青の枠組みと生物多様性の管理>
・生物多様性条約にコミットメントしたのが「生物多様性国家戦略」(SNB)である。第2フェーズである「SNB2011-2020」は公園/保護区だけでなく、「緑と青の枠組み」(TVB)にまで関わっている。これは持続可能で公平な利用を保証する。

○大都市圏と海外領土
・生物多様性は、乱開発/化学物資/工業事故/インフラ開発/住宅化/気候変動などによって劣化・破壊されている。「環境グルネル」は、「緑と青の枠組み」(TVB。緑は自然環境、青は水域を意味する)の策定や主要な軸を定めた。TVBは、河川/植林/荒れ地/公園/庭園などを対象にし、都市プロジェクト/地域都市プロジェクトに盛り込む必要がある。これにより生物が移動したり、薪を提供したり(※生物多様性?)、受粉を促したり、水質を改善できる。
・TVBは、国と地方が共同で策定した地域圏生態系一環スキーム(SRCE)に基づき実施される。2016年SRCEは「整備/持続可能な開発/地域間の平等に関する地域圏スキーム」(SRADDET)に組み込まれた。国立公園10ヵ所(6.7万Km²)/自然保護区3167ヵ所(6768万ha、※国土面積55万Km²=5515万haを超える?)/地域自然保護区174ヵ所(4万ha)は、生物多様性を保全すべき典型的な空間である。※この辺り難解なので省略。

・1976年自然保護法、1993年景観法、さらに2016年生物多様性・自然・景観回復法が制定される。2016年「生物多様性プロジェクト」が発表され、これは生物多様性の回復/汚染のない経済の構築/自然の全要素の保護・再生/生物多様性ロードマップの策定/理解・教育・訓練/生物多様性政策の有効性向上の6分野から成る。
・生物多様性の保全は、生物多様性庁が進めている。これに水・水生環境庁/海洋保護区庁/国立公園/自然地域に関する技術ワークショップ/自然保護審議会/全国生物多様性委員会が関わっている。

<11.廃棄物と循環経済>
・2014年仏国は3.2億トンの廃棄物を出した。この収集・分別・処理に、自治体/公施設法人/生産者/企業/国などが動員された。仏国の規則はEU指令に従っている。

○廃棄物の管理
・有機廃棄物は4600万トンあり、2000万トンは公共サービスで収集された。危険廃棄物は1100万トンあり、無害な廃棄物1400万トンは焼却され、1800万トンは埋め立てられた(※処分された廃棄物が3200万トンで、収集された廃棄物2000万トンを超えている)。核廃棄物は放射性廃棄物管理機関が管理している。

○廃棄物対策
・19世紀になると廃棄物の収集が組織化される。今日はEU指令(1975年、91年)に基づいている。国内法や規制は、人間の健康/環境の保護/廃棄物の削減を要求している。
・「グリーン成長のためのエネルギー転換法」(2015年)は、無害な廃棄物の55%/建設廃棄物(BTP)の70%の価値化、廃棄物の削減(2020年に2010年比30%減、2025年に2010年比50%減)を定めている。※半減できる?

○廃棄物管理計画
・廃棄物を管理するためには、その種類と量、その処理方法を定める必要がある。1992年「廃棄物の処分および素材の再生に関する法律」により廃棄物の管理計画は強化・拡張された。2014年「廃棄物発生防止計画」(2014~20年)は、2020年家庭・生活廃棄物を2010年比で7%削減し、BTPを一定量で抑える目標である。
・2015年「地域行政機構改革法」(NOTRe法)は、廃棄物防止(?)および管理地域計画を策定している。これは有害廃棄物/無害廃棄物/BTPに対する県の計画に代わる。※詳しく説明されているが省略。

○製造者責任範囲拡大セクター
・2000年「環境法」に、経済的なステークスホルダー(製造業者、供給業者、輸入業者)が廃棄物管理を担う事が明記された。製造者責任範囲拡大セクター(パッケージ、乾電池、蓄電池、廃棄車両など。※セクターって変だな)は、欧州の義務を引き受けている。エコ・オルガニスムが製造者に代わって、処理を行っている。

○廃棄物処理と循環経済
・廃棄物はその性質に応じ処理(埋め立て、焼却、リサイクル)される。放射性廃棄物は保管されるが、高レベルの放射性廃棄物は、ビュールの深さ500mに保管される。
・一方廃棄物は3Rルール(削減、再利用、リサイクル)で循環経済に取り込まれる。これによりエネルギーの浪費を制限し、商品・サービスを生み出す。このように循環経済は、環境問題と経済問題を結び付ける。「リサイクル企業連盟」「汚染防止環境活動連盟」には、多数のリサイクル関係者が参集している。循環経済は「持続可能な開発」の重要な一翼である。

<12.社会連帯経済>
・社会的経済は、「持続可能な開発」の連帯/平等に基づいている。2014年「社会連帯経済(ESS)関連法」が制定され、社会経済/連帯経済が法律に明記される。当時この経済は、社会活動/金融・保険/教育/健康など、全雇用者の12%(238万人)を雇用していた。※社会経済/連帯経済、共に初めて聞いた。

○社会経済
・社会経済は、ESS企業の設立・維持・発展を支援する26の地方議会が基盤である。2004年ESS国家評議会が創設され、国家レベルの代表となる。社会経済は、集団の利益を追求する民間法人の経済活動と定義される。
・これとは別に公的機関でもなく民間組織でもない「第3セクター」によるものもある。これは「資本より人や社会的対象を優越する」「自発的でオープンな参入」「メンバーによる民主的な統制」「ユーザー/メンバー/一般の利益の結合」「自治管理と公的機関からの独立」などが特徴である。これにアソシエーション/協同組合/財団/共済組合/ESS企業などが含まれる。ESS企業は会社登録時に、特性・専門性を申告する必要がある。

○連携経済
・連帯経済は市民参加による経済の民主化である。これは1968年「国にいながら生き方と労働を変えよう運動」(5月革命)で生まれた。1995年「シャルル・レオポルド・メイエ財団」が連帯ファイナンスのアソシエーション「フィナンソル」を設立する。
・この連帯経済は「反グローバリゼーション運動」から生まれ、「もう1つのグローバリゼーション」や、世代間/男女間/地域間/南北間の連帯を強める「もう1つの経済」を探求している。これにフェアトレード/連帯ファイナンス/非通貨交換ネットワーク(?)/地域交換システム(?)などが含まれる。これは公共部門や市場の失敗・弱体化を克服する。※社会経済/連帯経済は民主主義を生んだ仏国ならではだな。

○共有経済
・共有経済(シェアリング・エコノミー)は連帯経済の延長で、Webの発展と密接で、「ピア・ツー・ピア交換」(P2P)を包括する。これは実際的・個人的な要請から生まれたもので、金銭的な節約が目的である。これにグループ共有/物々交換/相互レンタル/カーシェアリング/テレセンターなどが含まれる。※連携経済に比べ、共有経済は分かり易い。

○ファンクショナル・エコノミー
・共有経済の延長にあるのが「ファンクショナル・エコノミー」(機能経済)である。これは製品を販売するのではなく、使用を販売する(※サービスだな)。例えば車ではなくモビリティ、洗濯機ではなく清掃サービスを購入する。そのため節制的な経済となる。

<13.自然/テクノロジー/核のリスク>
・テクノロジーのリスク(工場事故、火災、爆発)は、自然災害(酷暑、旱魃、暴風、洪水、森林火災、雪崩、地震、火山噴火など)と同様に予防・情報提供政策の対象であり、地域・関係者は抵抗力・回復力を高める必要がある。

○技術災害と自然災害
・技術災害の対応として、特定危険施設の許可制が採られ、製造物の地下保管/危険物資の輸送が規制されている(※法律名が書かれていない)。自然災害(暴風、洪水、旱魃)は様々な被害を出す。2001~15年、自然災害は年平均92件あったが、毎年4%増えている。沿岸部のリスクは増大し、移動を余儀なくされる人もいる。

○リスク管理
・リスク管理は、リスクに対する知識と手段になる。リスクの監視ができれば、市民に情報・警戒を提供できる。これは自治体の「セーフガード・プロジェクト」で市町村長に委ねられている。
・都市化のコントロールが重要で、フィードバック(REX、RETEX)が過去の災害情報を提供してくれる。「自然リスク予防プロジェクト」「テクノロジー・リスク予防プロジェクト」は財の脆弱性の削減も目的にしている。これらは「地域都市プロジェクト」に結び付けられ、最優先される。

○核リスクの特殊ケース
・仏国には18ヵ所58基の原子炉があり、世界最大である。核リスクに、放射性物質の輸送/放射性物質の医学的・工業的使用/原子力施設での事故などがある。放射性物質が放出されると、施設の従業員や周辺住民が被曝する。
・原子力事故の尺度に「国際原子力事象評価尺度」があり、7段階に分けられる。レベル1-3(※1-2では)は重大な影響はないが、3は従業員に急性の障害を起こす。レベル6に「ウクライナ核事故」(1957年)、レベル7に「チェルノブイリ原発事故」(1986年)/「福島第一原発事故」(2011年)が含まれる。

・核リスクに予防策は存在せず、機器の設計や運用での監視に委ねられる。「内部非常時計画」は施設毎に策定されるが、これは「原子力安全局」(ASN)がコントロールし、施設長が発動する。一方「緊急時対応計画」「オフサイト緊急時計画」には3段階の管理が盛り込まれる。
・2005年ASNが事故後の対応のための「原子力事故後管理運営委員会」を創設した。これは2つの区域(住民防護区域、監視強化区域)に分類している。※詳しく説明しているが省略。福島の場合は複数の区域があった。

<14.健康問題>
・健康・衛生政策は健康管理の組織化にある。生活様式/食事/環境の質/介護へのアクセス/病院設備などの健康度は、「持続可能な開発」の1つである。
・政府は「健康のための国家戦略」(2018~22年)を策定した。これは健康状態の決定要因や公衆衛生高等評議会が分析した行動戦略(?)に基づく。これには予防の優先/検診の促進/慢性疾患支援などが盛り込まれ、社会的・地域的な不平等を減らすとしている。

・2004年世界保健機関(WHO)が「健康・環境関係省庁連絡会議」を開き、欧州委員会は「健康・環境戦略」を策定し、「健康・環境プロジェクト」(PNSE1:2004~08年、PNSE3:2015~19年)を採択した。これは公共政策(汚染物質の排出、汚染土壌の管理、ラドン被曝の低減)、ガン防止プロジェクト、労働健康・衛生プロジェクト、栄養と健康の国家プログラムと関わる。

・しかし健康における不平等は解消されていない。不平等は、社会的・経済的な背景/教育レベル/生活習慣/生物学的・遺伝的な要因/環境的な側面/衛生システムへのアクセスなどと結び付く。これは人口当たりの医師数などに現れる。イル=ド=フランスでも複数の区域に分けられる。※詳しく説明しているが省略。

<15.観光>
・仏国にも多くの自然・文化遺産がある。「持続可能な観光」は観光客の責任が大きいが、観光業者も戦略的な運営やオファーの点で当事者である。

○世界最大の観光目的国
・2015年仏国は8500万人の外国人観光客を受け入れた。受け入れ先も山岳部/沿岸部/都市と多様である。観光圧力は自治体の人口当たりの観光客収容能力(ベッド数)で測られ、5段階に分けられる。

○持続可能な観光
・「持続可能な観光」は、観光客/観光関連業者/環境/ホストコミュニティのニーズを満たし、経済的・社会的・環境的なインパクトを考慮する。観光は地域経済に貢献するが、環境に影響し、建物の高密度化/水資源/廃水・廃棄物などの問題がある。
・観光関連業者(宿泊業者、レストラン経営者、旅行代理店など)は、認証マークやラベル、証明書による「品質認証制度」に関わっている。これらは、水の消費削減/廃棄物管理/迷惑行為の削減などで発展してきた。※発展より進展かな。

・欧州のエコラベル「旅行者向けの宿泊サービス」の認証は、仏国が300以上で最も多い。1985年エコラベル「パヴィヨン・ブルー」(青旗)が始まる。2013年観光会議後、外務省は2020年までに1億人の受け入れを目標にする。これには「観光に優しい旅程」など5つの柱がある。これにより仏国はドイツに次ぐ自転車観光の目的地になった。

○魅力的な遺産
・今日、自然・文化遺産が魅力的になっている。「ユネスコ」(UNESCO)の世界遺産がそうである。2002年認証ラベル「仏国の主要景勝地」が始まった。2017年最も観光客が多かったのが北部のソンム湾200万人で、これは住民の80倍に相当する。
・これらの景勝地には車の乗り入れを制限している場所もある。例えば中央部のピュイ=ド=ドーム県では、「自動車の乗り入れ禁止自然歩道」やアプト式電車を用いている。※モン・サン・ミッシェルも乗り入れ禁止にならなかったかな。尾瀬も入山制限があったはず。

<16.開発への公的支援>
・「持続可能な開発目標」(SDGs)は政府開発援助(ODA)の再検討を必要としている。2014年「開発・国際連帯政策方針プログラム法」(開発・国際連帯法)は、ゼロカーボン/ゼロ貧困を目標にする。

○政府開発援助(ODA)
・仏国の政府開発援助(ODA)は約100億ドルで世界5位である。2014年「開発・国際連帯法」により、サハラ以南/インド洋の16優先貧困国(PPP。ベナン、ブルキナファソ、ブルンジ、ジプチ、コモロ、ガーナ、ギニア、マダガスカル、マリ、モーリタニア、ニジェール、中央アフリカ、コンゴ、チャド、トーゴ、セネガル)や地中海南部・東部への援助金が半分を占める。ガーナ以外のPPPは仏国の旧植民地で、仏語圏であり、フラン通貨圏である。追加グループ(※地中海南部・東部?)も「開発・国際連帯法」により特定された途上国である。

○ODAの方法
・1944年「フランス海外領土中央金庫」が創設され、1958年「経済協力中央金庫」になり、1998年「フランス開発庁」(AFD)になった。AFDは途上国に、技術支援/職業教育/研究活動/債務軽減/予算支援などを行っている。また留学生の受け入れ/人道・食糧援助/研究機関支援/NGO活動/難民の受け入れなども推進している。

○ODAの進展
・ODAの進展も「開発・国際連帯法」に明記している。仏国の開発と国際的な連帯を優先している(※自国経済に関係もするが)。具体的には基本的なニーズ(グリーン成長を重視する環境、食料、教育、健康・衛生、飲料水)、温暖化抑制、生物多様性、砂漠化抑制、環境保全などである。経済発展/民主的な統治/法治国家の確立がもう1つの柱である。「開発・国際連帯法」は、AFD/民間セクターに社会的・環境的な責任も求めている。
・当事者の自治体(?)は「家庭ごみ収集税」の1%を外部の活動に充てる。他に航空券税/金融取引税が充てられる。「開発・国際連帯政策機構」は、ODA政策の監視・評価を行っている。ODAは、「先進国が途上国を支配する道具」「先進国が途上国の資源を把握するため」「途上国の先進国への依存を強めた」「途上国の腐敗した指導者を支えている」などと批判されている。※ナイジェリアでの石油開発の本は読んだ事がある。

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