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『これだけ! 放射性物質』夏緑(2015年)を読書。

放射能について知りたかったので選択。
大気中に存在するラドンや、原発事故で飛散したセシウムなどを解説。

「これだけ」なのに、知らない事だらけで驚いた。
核分裂と放射性崩壊の違いさえ区別できていなかった。

福島原発事故を強く意識しており、解説が偏っている気がする。

お勧め度:☆☆
内容:☆☆(それ程科学的でない)

キーワード:<はじめに>東日本大震災、<身の回りの放射線>福島原発事故、アルファ線/ベータ線、空間線量/シーベルト、ホットスポット、除染、自然放射線/宇宙線、放射性崩壊/ウラン/ラドン、地下室、温泉、<食品と健康の安全性>ラドン/セシウム/ストロンチウム、飲料水、雨、食品、ジャガイモ、放射化、海洋放射能汚染/水産物、甲状腺/ヨウ素、X線/ガンマ線/中性子線/重粒子線、原子力発電、<放射線から身を守る>アルファ線/ベータ線/ガンマ線/中性子線/宇宙線、ニュートリノ/ミューオン、ラジカル、ポロニウム、原子爆弾/急性被曝、放射線の遮断、放射能の除染、放射能ゴミの処分、帰還、超新星爆発/磁場/DNA、キューり夫人

はじめに

・東日本大震災が起きました。これは阪神淡路大震災と異なり、原発事故で放射性物資が播き散らされ、復興の大きな支障になっています。放射能が怖がれるのは、核戦争への脅威やノストラダムスの大予言(※放射能に関する予言があった?)があったからです。放射線はガンの原因にもなります。しかし曖昧の知識では困ります。そこで本書は本当のところを解説します。

※著者は名前が変わっている。また小説家/漫画家で、学者ではないみたい。これを読み終えて知った。先に知っていれば、感想は違っていた。

第1章 身の回りの放射線

<目で見て調べる放射能汚染>
○放射能の灰
・2011年3月福島原発事故により放射能汚染が起きました。プルトニウム(※原子番号94)は原子炉に残りましたが、軽い金属のセシウム(※原子番号55)は飛散しました。

○タッパーで放射線を見る
・タッパー/フェルト/エタノール/ドライアイスがあれば、放射線を見る事ができます。白い線の現れ方で、その強さも分かります。※霧箱の作り方は省略。

○数秒に一度なら汚染なし
・霧箱に現れる白い線が数秒に1個なら、心配いりません。※霧箱の大きさによると思うが。

○霧箱で見分ける放射能
・太く短い白い線は、空気中のラドンが出すアルファ線(※陽子2+中性子2)です(※ラドンは原子番号86で気体。こんなのが空気中にあるのか)。プルトニウムもアルファ線を出し、そうなると1秒で2個以上になります。
・クルクルと巻くのはベータ線(※電子)です。これは放射性セシウム/放射性ヨウ素/放射性ストロンチウムが出します。汚染があると、1秒で2個以上になります。

○放射能汚染を疑う量
・霧箱で1分で20~30個であれば問題ありません。1分で100~300個だと、近くに放射性物質があります。

<放射線測定器の選び方>
○放射能が気になったら
・霧箱はしばらくすると使えなくなります。放射線測定器であれば簡単に測定できます。2012年より中学校・高校で使い方を習います。

○放射線測定器の種類
・1つはサーベイメーターで、これにガイガー・カウンター/シンチレーション・カウンターが含まれます。これは空間線量を測るもので、普通地面から1mの高さで測定します。

○水や食物の線量を調べる
・アルファ線/ベータ線は物質の外に出ないため、物質をドロドロにして特別な測定器で測る必要があります。モニタリングセンターには、これが置いてあります。

○個人線量計
・間違って買ってしまうのが個人線量計です。これは被曝量を測る物で、放射線技師/原発作業員が使う物です。

<測定値は0じゃない>
○線量の単位シーベルト
・放射線測定器で測定されるが「被曝の影響」で、単位はマイクロシーベルト毎時(μSv/h)です(※面積は関係ないのかな)。1年で浴びる自然放射線は世界平均で2.4mSvで、1時間にすると0.27μSvになります。

○測定値が0でない
・測定器で測ると、0.15μSv程度の値が出ます。自然放射線があるので、これが普通です。日本では年間1.5mSv(毎時0.17μSv)の線量を受けます。この内食物が年間0.2mSvで、自然環境からは年間1.3mSv(毎時0.15μSv)です。

○自然放射線VS自然治癒力
・放射線はDNAの鎖を切り、放射線ヤケド/ガンを引き起こします。しかし人間にもDNAを修復する仕組みがあり、またガンになっても免疫がそれを排除しようとします。そのため年間100mSvの線量を受けても問題ないとされます。※原発作業員の上限が、年間100mSvから年間200mSvに引き上げられたかな。

○安心の目安は毎時0.15μSv
・自然放射線の毎時0.15μSvであれば問題ありません。毎時0.23μSvを超えると問題です。ベータ線は数m飛びます(※全然飛ばないな。宇宙からとかのレベルではない)。汚染源(ホットスポット)には立札を立て、人が近付かないようにしましょう。

○ホットスポット
・ホットスポットは毎時0.23μSvを超える場所で、「放射能の灰」が雨によって溜まる場所に作られます。

<ホットスポットを見付けたら>
○見付けても焦らない
・福島原発事故により、「除染指定地域」(8県102町村、※結構バラバラ)の除染費用は国が負担します。それ以外は自治体が負担します。「放射能の灰」に下手に近寄るとベータ線を吸い込みます。

○汚染場所の掃除
・個人で除染する場合、内部被曝を防ぐためマスクをしましょう。終わると服は外で払い、洗濯しましょう。風呂で髪をしっかり洗いましょう。

○除染作業
・基本は庭掃除と一緒です。水洗いする時は飛散を防ぐため、ゴーグルを付けましょう。※詳細省略。

○放射能ゴミの捨て方
・大学・研究所から出る放射能ゴミ(放射性廃棄物)は産廃業者に引き渡されます。除染指定地域以外では決まりがなく、普通のゴミとして捨てて下さい。焼却炉には高性能のフィルターが付いているので問題ありません。排水もそのまま流して問題ありません。

○東京で除染は必要?
・東京は除染指定地域でないため、除染の必要はありません。東京での空間線量は毎時0.2~0.3μSvで問題ありません。区が公園・公共施設などを測定し、必要であれば除染しています。

<ホットスポットと間違えるもの>
○銀座は?
・土にはウラン/放射性カリウムなどの放射性物質が含まれ、線量は毎時0.04μSvあります。ところがコンクリート・ビル内だと、毎時0.08μSvになります(銀座は毎時0.1μSv)。

○犯人は花崗岩
・石畳は花崗岩で作られますが、花崗岩にはウラン/トリウムなどの放射性物質が含まれます。国会議事堂の外壁は花崗岩なので、線量は毎時0.29μSvあります。ただし放射性物質は外に出ないため、内部被曝はしません。※岩の上に寝転がるのは良くないかな。

○花崗岩の影響
・トンネル内や墓地では、花崗岩により線量が倍になります。

○鉄筋コンクリート
・コンクリートはウランなどを含み、線量は毎時0.04μSv増えます。ウランはアルファ線だけでなく、ベータ線/ガンマ線(※電磁波で、波長はX線に含まれる)も出します。ただしコンクリートは宇宙線を毎時0.03μSv減らします。

<大地からの自然放射線>
○大地からの放射線
・飛行機だと、大地からの放射線は毎時0.01μSvまで減ります。その代わり宇宙線を受け、それは地上の100倍になります。地上では毎時0.03μSvですが、国際便で毎時1.6μSv/国内便で毎時0.8μSvになります。※国際便でも50倍位だけど。

○飛行機で宇宙線は大丈夫?
・飛行機の搭乗員は高高度の国際便で年間3mSv、低高度の国内便で年間1.5mSvを受けますが、この程度であれば問題ありません(※宇宙飛行士は高いだろうな。特に船外活動すると)。日本で受ける自然放射線の内、宇宙線は年間0.3mSvです(※1/5が宇宙線だな)。一般の人の許容線量は1mSvで、これは国際便600時間に相当します。

○宇宙線の大量被曝
・飛行機より宇宙線を浴びるのが、国際宇宙ステーションです。1日1mSvで、5ヵ月滞在すると150mSvになり、普通の人の100年分になります。宇宙に長く滞在できない原因が、この被曝です。※当然宇宙船に鉛とかは貼ってあるだろうな。月に地下基地を作る構想があったな。

○富士山は大丈夫?
・富士山の山頂では5倍の宇宙線を受け、年間1.5mSvになります。実際は夏季(3ヵ月)しか住めないので、その1/4になります。

○宇宙線も大地からの放射線も防ぐ
・これを満たすのが海上です。海上では大地からの放射線を受けません。そのため日本は自然放射線が少ないのです。※海水が遮断しているのか。

○どこが安全?
・宇宙線と大地から受ける線量は、ビル街-毎時0.12μSv/鉄筋コンクリート内-毎時0.1μSv/木造住宅-毎時0.06μSv/海上-毎時0.03μSvです。これに空気中のラドンの毎時0.07μSvを加えます(※さらに食物の年間0.2mSvを加え、年間1.5mSvかな)。従って線量より治安/交通事故/利便性など重視した方が良さそうです。※普通の人はそう思っている。

<空気中の自然放射線>
○放射線崩壊
・ニュースでセシウム134/セシウム137(※セシウムの原子番号は55)などを聞きます。この番号は原子量で、「同位体」を表します。「放射性崩壊」を起こし放射線を出す同位体は、「放射性同位体」と呼ばれます。放射性崩壊を起こすと、別の同位体や別の元素に変わります。因みに安定した同位体は、「安定同位体」と呼ばれます。

○ウランからラドンに
・ウランは豊富な物質で、「ウラン235」は核分裂を起こします(※ウランの原子番号は92。ウラン濃縮で作るのが、このウラン235)。普通に存在するのは「ウラン238」で、核分裂は起こさず、放射性崩壊します。※放射性崩壊(ウラン238→トリウム234→プロトアクチニウム234→ウラン234→トリウム230→ラジウム226→ラドン222)の図があるが説明はない。こんなに複雑に変遷するんだ。
・ウラン238は放射性崩壊し、ラドンに変わります(※ラドンは原子番号86で気体)。ラドンは水に溶け、ラドン温泉になります。なお「地熱」は、放射性崩壊による熱です。※地熱は自重によると思っていた。

○ラドンも放射性物質
・ラドンは安定同位体を持たず、放射性崩壊します。ラドンの半減期は3.8日です(※ラドンは原子番号86。4種類の放射性同位体があり、ラドン222の半減期が最も長そう)。ラドンは放射性崩壊すると、放射性のポロニウムに変わります。※ポロニウムは原子番号84。
※半減期はウラン234が24.6万年、トリウム230が7.5万年、ラジウム226が1600年と様々。ラドンは半減期が短いのに、名前をよく聞くのは何故だ。

○半減期の話
・半減期は「毒が消えるまで」と勘違いされています。それはノストラダムスの大予言が「プルトニウムの半減期は2.4万年で、核戦争が起こると、その間人が住めなくなる」としているからです。
・ウラン238の半減期は45億年で、地球の年齢と一緒です。それに比べると、プルトニウムの半減期は長くありません。地球が誕生した45億年前、ウラン238が今の倍あって、地球をガンガン温めていたのです。

○呼吸で体内に入るラドン
・ラドンは気体なのでマスクで防げません。日本で受ける自然放射線の約半分(年間0.5mSv)がラドンです。

<地下室が危ない>
○ラドンの危険性
・人間は1日5千リットル(20Kg)の空気を呼吸します。その中にはラドンが含まれ、数秒に1回アルファ線を出しています。肺には肺胞があり、これを広げると面積は100㎡になります。

○肺胞を傷付けるアルファ線
・アルファ線の飛距離が短いのは、分子にぶつかるからです(※陽子2+中性子2だからな)。細胞に当たると、2~3層しか進めません。皮膚表面の角質細胞は死んだ細胞で、ガンになりません。ところが肺胞は生きた細胞なのでガンになります。そのためラドンは肺ガンの原因になります。※皮膚は丈夫なんだ。

○危険な地下室
・ウランは放射性崩壊すると気体のラドンに変わります。ラドンは二酸化炭素より重く、低い位置に溜まります。そのため地下室はラドンが多くなっています(※地表のラドン濃度はドンドン高まるのかな)。ただしラドンは海水に溶けるため、日本でのラドン濃度は世界平均の1/3なのです。

○地下室での被曝を防ぐ
・換気されない地下室は危険です。そのため地下鉄でもデパートの地下でも盛んに換気しているのです。地下の倉庫は換気されないので危険です。

<ラドン温泉と除染>
○放射能泉の線量
・天然ウランは地熱を生むため、地下水が温泉になります。そして放射性崩壊したラジウム/ラドンなどが含まれると「放射能泉」になります。そうなると自然放射線は100倍になります。
・インドのケララ州の地盤はトリウムが多く、自然放射線が年間4mSvもあります。ところが赤ちゃんの出生率/死亡率/先天性異常/生殖能力などを調べても異常はありません。100倍の線量がある温泉に、1日1時間で6日間入ると(※簡単に言えば6時間)、日本の基準に達します。しかし問題ありません。

○温泉の効能
・日本の温泉の湧出量は多く、世界一は米国のイエローストーン国立公園ですが、2番目は別府温泉です(※断層のお陰かな)。日本は古事記にある様に、湯治の風習があります。

○低線量被曝とホルミシス
・「低線量被曝は健康に良い」との説があります(放射線ホルミシス)。解毒力が付き、体の活性が高まるとしています。ブラジルの保養地ガラパリの砂浜はトリウムを多く含み、自然放射線が年間10mSvもあり、リウマチに効くとされています。

○低線量被曝の善悪
・低線量被曝の影響は善悪不明です。

○温泉に妊婦が入って大丈夫?
・胎児は放射線の影響を強く受けますが、年間100mSv以下であれば影響ない様です(※安全基準の年間1mSvの100倍?)。温泉には「妊婦さんお断り」もあります。

○温泉掃除
・ラドン222は放射線崩壊で鉛210に落ち着きます。そのため温泉の浴室に鉛が付着し、掃除が毎日必要になります。※温泉の汚れの多くは鉛なのかな。

第2章 食品と健康の安全性

<呼吸で吸い込む放射性物資>
○居座らないラドン
・ラドンはダメージの大きいアルファ線を出し、線量は年間0.6mSvもあります。しかも地下室では濃度が高くなります。それなのに警戒されていません。それはラドンは放射線を出すだけで、他の元素と反応しないからです。また肺に入りますが、残る事はなく、吐き出されます。※私達は放射性物質ラドンの中で生きている。

○居座る放射能の灰
・酸素も吸気されますが、様々な元素と反応します。水(H₂O)/二酸化炭素(CO₂)/炭水化物(C₆H₁₂O₆)などです。また酸素は錆びさせますし、体内で活性酸素になり、毒と云えます(※酸素や水は生物に最も必要のイメージがある)。生物にはカリウム/カルシウムも多く含まれます。カリウムは神経や筋肉に必要で、カルシウムは骨になります。他に甲状腺にはヨウ素が存在します。
・「放射能の灰」には放射性セシウム/放射性ヨウ素/放射性ストロンチウムが含まれ、どれもベータ線を出します。放射性ヨウ素は人体に入ると、甲状腺に取り込まれます。セシウムはカリウム(※共に第1属元素)、ストロンチウムはカルシウム(※共に第2属元素)に性質が似ており、セシウムは筋肉、ストロンチウムは骨に取り込まれ、放射線を出し続けます。
※核燃料には核分裂を起こすウラン235が使われ、放射性崩壊(ウラン238→ラドン222)とは中間生成物が異なるようだ。放射能の灰の詳しい説明はない。

○結局どっちが危険
・自然放射線以外の被曝許容線量は1mSvです(※これは重要)。これは国際放射線防護委員会(ICRP)が定めた基準です。

<水道水の「不検出」は大丈夫?>
○飲料水の安全基準は年間0.1mSv
・放射能汚染は今に始まった事ではありません。ネバタ砂漠では928回の核実験が行われ、1986年チェルノブイリでは原発事故を起こしています。そこで世界保健機関(WHO)が飲料水の安全基準を年間0.1mSvとしました。

○水道水の「不検出」
・福島原発事故後、水道局が公表する水道水の放射線量を確認すると「不検出」となっていました。これは検出限界である1Kg当たり0.5ベクレルを下回っているからです(ベクレルは1秒で放射性崩壊する個数)。

○水道水の放射線量は
・原発事故後、東京の浄水場で数ヵ月に1度、2~3ベクレルを測定しています。これは大雨により「放射能の灰」が川に流入したからと思われます。

○「不検出」の水は安全
・「不検出」(1Kg当たり0.5ベクレル)の水を飲むと、0.008μSvの線量を受けます。この水を125t飲むと、安全基準値の年間0.1mSvに達します。しかし人間は年間0.7tしか水を飲まないので、遥かに安全です。

<放射性下降物の雨>
○雨に当たると禿げる?
・子供の頃「雨に当たると禿げる」と言われました。核実験/原発事故で発生した「放射能の灰」は、「放射性下降物」として降り注ぎます。

○原発事故後の雨水の線量
・原発事故後、福島県では1㎡当たり20ベクレルの放射性下降物がありましたが、3ヵ月後に0ベクレルになりました。福島県以外では、当初から0ベクレルでした。※線量としては幾らになるのか。

○マンションの水
・かつてマンションでは屋上の貯水槽から給水されており、蓋が空いて、ゴミが入ったりしていました。しかし最近は直接給水するタイプになっています。

<食品の汚染>
○食品の中の自然放射線
・日本人は食品から年間0.2mSvの自然放射線を受けます。人間を含め動植物は、炭素を持つ有機物です。炭素にも放射性同位体(炭素14)があります(※放射性同位体は一杯ある)。人間はこれを食料とし、呼吸で吐き出します。※当然、血肉にとして残るかな。

○食品の放射能基準
・食品で大きな影響を与えるのが放射性セシウムです(ヨウ素は半減期が短いので、影響は小さい)。セシウムの安全基準は、「1Kg当たり100ベクレル」です。これを超えると流通できません。これは許容線量の年間1mSvから飲料水の0.1mSvを引いた0.9mSvを食品に割り当てています。ただし乳幼児食品は、1Kg当たり50ベクレルに厳しくしています。
※許容線量の大半を食品だけに割り当てて良いのかな。さらにセシウム以外は問題ないのかな。

○実際の食物の線量
・セシウムの安全基準「1Kg当たり100ベクレル」は高い気がします。国立医療品食品衛生研究所が調べたところ、食品中のセシウムの線量は年間1μSvで、安全基準の年間1mSvの1/1000でした。

○食品の線量を測る
・アルファ線/ベータ線は食物から出れないので、食物はミキサーでドロドロにしてから線量を測ります。また測定器も専用の物を使います。※空間線量とは別だな。

○なぜ全量検査をしない?
・食品は一部を抜き出して検査するので、標本抽出と云われます。これは統計学によります。

○牛肉の全頭検査
・ただし牛肉だけは全頭検査が行われています。基準値を超えると、その牛は出荷されません。

○食品工場
・原発事故後、東日本の食品工場は自社の製品や工場の線量をチェックしました。工場付近のホットスポットは直ぐに除染されるので、問題はありません。

<より安全な食品を育てる>
○ストロンチウムとカルシウム
・ストロンチウムとカルシウムは似ています。植物も動物も同様に扱うので、動物はストロンチウムを骨に取り込み、骨髄や血液のガンになります。ただしストロンチウムはカルシウムの1/400程度しか存在しません。さらに放射性ストロンチウムは、ストロンチウムの2割程度です。土壌の放射性ストロンチウムを除染すれば、線量を減らせます。

○肥料で安全な作物作り
・地表に降下した放射性物質は地中に沁み込み、そうなると空間線量は下がります。しかし植物はそれらをミネラルとして吸収します。肥料の三要素は窒素/リン酸/カリウムですが、セシウムも吸収されます。これを避けるためには、カリウム肥料を十分与えれば良いのです。

○ジビエに用心
・除染指定地域の作物は線量が高くなります。キノコなどは安全基準を超える場合があります。基準値を超えた食品は出荷されないので、安心です。
・問題は除染されない森林のイノシシなどの動物です。イノシシはドングリや根を食べるので、1Kg当たり数万ベクレルの放射性セシウムを検出する時があります。イノシシの行動範囲は広いので、避難区域外で捕獲される場合があり、危険です。※これは検査して欲しいな。

○野菜用洗剤で洗う
・既に雨には放射性物質は含まれていないようです。私(※著者)は田舎から野菜をもらう事がありますが、表面の「放射能の灰」を野菜用洗剤で洗い流すようにしています。※吸収されている分はダメだな。

○ヒマワリの除染能力
・「ヒマワリはセシウムを多く吸収する」との説がありましたが、実験では確認できませんでした。

<放射線を当てたジャガイモ>
○緑色のジャガイモ
・収穫したジャガイモを日に当てておくと、緑色になります。これはソラニンと云う毒です。ジャガイモを日陰で保管すると芽が出ますが、これにもソラニンが含まれます。

○ポテトの収穫後処理
・ジャガイモに芽が出ると、芽がイモから養分を吸収し、イモはスカスカになります。これを避けるため、収穫後にガンマ線を当て、「芽止め」をします。※そんな大層な事をしていたのか。

○ガンマ線を当てても、放射化されない
・原爆の被爆地に放射能が残ったのは、核分裂で発生した中性子線が他の物質に当たり、放射化したからです。ただし今は安定同位体に変わっています。※半減期が短いのかな。
・話をジャガイモに戻します。「芽止め」でジャガイモに照射するのは電磁波(ガンマ線)です。ガンマ線は紫外線よりエネルギーが高く、芽のDNAを破壊します。しかしイモは放射化されません。これは病院でX線撮影しても、人体が放射化れないのと一緒です。ガンマ線照射は残留物がないので、農薬・薬品より安全です。

○DNAを壊した食物は安全?
・DNAが壊れるとガンになりますが、そのジャガイモを食べてもガンにはなりません。それらを食べると、胃が消化し、タンパク質はアミノ酸、DNAはヌクレオチドに分解され吸収されます。※逆に発ガン性物質は何でで、それがどう作用してガンになるのか知りたい。

○ガンマフィールドと品種改良
・ジャガイモの芽止めはDNAを破壊しますが、少しだと「突然変異」を起こします。※遺伝子操作で常に疑問に思うが、遺伝子操作は生物の1つの細胞では意味がなくて、全細胞の遺伝子を同じように操作しないと意味がないのでは。細胞分裂前の胚への遺伝子操作であれば、有効と思うが。
・農林水産省の放射線育種場にガンマフィールドがあります。中心にコバルト60の放射線源があり、半径100mに様々な作物を植え、突然変異による品種改良を行っています(※これは既に中止になったのでは)。ここで低アレルゲンの米、病気に強い梨、倒れにくい稲、早く実る大豆などが作られました。※生物の進化も、同じ原理なのかも。

<海の汚染>
○海洋の放射能汚染はなぜ起こる
・福島原発の地下水により海が汚染されています。その地下水は1日400tあり、貯蔵タンクに貯められています。この水を浄化する研究が進められています。

○海水浴は大丈夫?
・海水1リットルに10ベクレルの放射性セシウムが含まれている場合、年に310時間海水浴すると、外部被曝・内部被曝は11μSvになります(※半端な時間だな。62日×5時間かな)。これに放射性ストロンチウムを加えると、年間16μSvになります。飲料水が年間0.1mSvなので、その1/6です。

○海水浴場の線量
・事故があった年の海水浴場の線量は「不検出」(1リットル当たり1ベクレル以下)でした。ただし福島県の海水浴場1ヵ所で13ベクレルを記録しています。翌年は1ヵ所だけ1ベクレルでした。

○海水浴場に汚染水は流れてくるのか
・福島県沖には北から親潮(千島海流)、南から黒潮(日本海流)が流れています。親潮は消滅しますが、黒潮は米大陸に向かい、さらに循環して戻ってきます(亜寒帯循環)。従って汚染水は海水浴場に来ません。

○カナダ沖の汚染
・汚染水は亜寒帯循環に乗って流れますが、重い「放射能の灰」は海底に沈殿します。東西冷戦中は日本近海で、1000リットル当たり10~20ベクレルありました。福島原発事故後の2014年、カナダ沖で1000リットル当たり2ベクレルが検出されています。これは影響ない数値です。

<水産物の汚染>
○水産物の基準値は1Kg当たり100ベクレル
・カリウム40は1Kg当たり100ベクレルの自然放射線を出します(※放射性崩壊の初期と末期では、線量は大幅に異なるのでは)。カリウムを含むワカメは200ベクレル、乾燥ワカメは1500ベクレルになります(※何で元素より高くなるのか)。放射性物質のメインである放射性セシウム(セシウム134、セシウム137)の基準値は、普通の食品と同じ1Kg当たり100ベクレルです。※安全基準が1Kg当たり100ベクレルなら、ワカメ/乾燥ワカメは流通できない事になる。

・原発事故後、全国の主要港で標本抽出検査をしています。福島県の港では、事故3ヵ月後で53%が基準値(1Kg当たり100ベクレル)を超えていました。翌年は22%、2年後は5%、3年後は1%台に下がり、現在は0.3%です。福島県以外では、事故3ヵ月後で6.5%、翌年は1%台に下がり、現在は0%です。
・基準値を超えた水産物は出荷制限されるため、私達が口にする事はありません。※太平洋で検出されると、日本海産もダメか。

○水銀の基準
・話は変わりますが、大型魚/深海魚は水銀を多く含みます。そのため厚生労働省は、これらの摂取を週2回/200gまでとしています。そのためマグロ寿司10個(100g)を週に2度食べると制限に達します。
・この量のマグロを摂取すると、放射性セシウムから最大で10ベクレルの線量を受けます。60Kgの人間は4000ベクレルのカリウム40を含んでいます(※カリウムは1Kg当たり100ベクレルなので、体内に40Kgのカリウムがある事になる)。摂取するセシウムの線量は、体内にあるカリウムの1/400なので問題ありません。

○痛風の基準
・魚を食べ過ぎると痛風になります。そのため水産物の摂取は1日50~100gとされています。特に小魚/エビ/イカは大敵です。この摂取量だと、最大で5~10ベクレルの線量を受けます。食べ物から取る線量は、カリウム40で1日100ベクレル、それ以外も合わせて180ベクレルです。そのため5~10ベクレルであれば、問題ないでしょう。

○放射性セシウムは生物濃縮されない
・水銀は生態系で生物濃縮され、頂点の鳥などが水銀中毒を起こします。セシウム/カリウムは生物濃縮されませんが、頻繁に摂取/排出されます。そのため土を食べるミミズや海底の泥を食べる魚は線量が特に高くなります。

○淡水魚の汚染
・原発事故による「放射能の灰」は雨水に流され、川底などに沈殿します。そのため川底の苔などを食べる淡水魚は線量を強く受けます。また淡水魚はミネラルを排出し難く、放射性セシウムを保持しがちです。原発事故後、警戒区の川魚/カエルを調べると、1年後で1Kg当たり数千~数万ベクレル、2年後で数百~数千ベクレルの線量が測定されました。
・現実的な話として、群馬県の赤城大沼の話があります。ここで釣れるワカサギが1Kg当たり80~120ベクレルで、持ち帰りの自粛要請が出たり出なかったりしました。

<甲状腺ガン>
○ヨウ素と甲状腺
・海藻はミネラルを多く含み、体調を整えます。またヨウ素を多く含み、甲状腺ホルモンを活性化し、新陳代謝が活発になります。ヨウ素は甲状腺ホルモンの材料で、甲状腺に集まります。放射性ヨウ素が吸収されると、ベータ線により甲状腺ガンになります。

○甲状腺ガンの危険性
・甲状腺ガンは危険性が低いガンです。進行は遅く、9割は転移しません。ただし声が出なくなったり、息が苦しくなったりします。また1割はリンパ節に転移するので治療が必要です。※決して安全とは言えないな。

○原発事故とヨウ素剤
・原発5Km以内ではヨウ素剤が配布されます。これは原発事故が起きた際、これを飲み、放射性ヨウ素が甲状腺に入るのを防ぐのです。※ヨウ素剤を摂取する理由を初めて知った。

○ヨウ素の副作用
・ただしヨウ素はアレルギーなどの副作用があり、重篤の場合はショック死します。

○ワカメは被曝予防になる?
・日本人はワカメなどの海藻をよく食べます。コンビニにより、消費量はさらに増えました。推奨量は1日130μgなのに、1500μg摂取しています。逆に1日2200μg以上摂取すると甲状腺の機能は低下します。

○ヨードチンキ
・ヨードチンキは劇薬なので飲んではいけません。うがい薬のポビドンヨードも使いすぎると甲状腺障害になります。※用途に合った使い方をしましょう。

<放射線の利用>
○悪い事ばかりではない
・レントゲンがX線が発明しました。さらにキューリー夫人によるX線撮影で、負傷者に残った銃弾を探す事ができました。

○X線
・X線は医療に欠かせません。歯科のX線撮影は1回0.01mSvで、胸・胃のX線撮影は0.1mSvです。これは自然放射線以外で被曝して良い許容線量(年間1mSv)を下回ります。一方放射線技師は年間2~3mSvを浴びます。これは放射線従業者の許容線量(年間20mSv)を下回ります。
・CTスキャンは浴びる時間が長いので1回10mSvになります(※許容線量の10倍!)。線量は多いですが、私はこれで胆管結石を見付け、完治したので、感謝しています。
・X線は人間だけでなく、物体にも使われます。空港の手荷物チェック、建物/飛行機などの非破壊検査に使われます。

○ガンマ線
・ガンマ線はX線よりエネルギーが強く、ガン治療などに使われます。「ガンマナイフ」を多方向から集中させ、ガン細胞だけを殺すのです。また殺菌力も強く、医療器具の殺菌に使われています。
・またバラバラの分子にガンマ線を当て、重合・架橋させ、高分子を作ることもできます。ゴムタイヤにガンマ線を当てると架橋し、硬くなります。※ガンマ線も様々に利用されているんだ。

○中性子線
・中性子線も様々に利用されます。中性子線は当たった物を放射化します。中性子は中性子用の原子炉で放出されます。ただし核分裂はゆっくりで、熱は出ません。※原発用の原子炉とは別に、中性子線を作るための原子炉があるみたい。原子炉の解説も欲しい。
・原子炉の傍の手術室で、中性子捕捉療法が行われています。中性子はホウ素(※原子番号5)に捉えられ易いため、ガン細胞にヨウ素をくっつけ、中性子線を当て治療します。皮膚ガン(メラノーマ)の治療法として期待されています。
・また中性子線はガンマ線よりエネルギーが強く、無色のトパーズに中性子線を当てると、ブルートパーズに変わります。

○重粒子線
・重粒子線はガンマ線より強力です。加速器で加速された重粒子線による重粒子線治療が行われています。

○原子力発電
・原子力発電は核分裂で発生する熱で、蒸気タービンを回し発電します。現在原発は停止しており、それを火力発電で補っています。しかし火力発電はオイルショックがあったようにリスクがあります。一方原子力発電のウラン燃料は4年間燃え続け、電力を安定供給できます。※原子力発電の説明はこれだけ?

・近年は風力発電/太陽光発電などの再生可能エネルギーの意識が高まっています。しかしこれらは天候に左右されるなど、不安定な電源です。温泉熱発電により温泉の枯渇も問題になっています(※地熱発電とは異なるのかな)。エネルギーは原子力発電から次のステップに移る時期かもしれません。そこで石油を合成する藻類を休耕田で培養するなど、研究が進められています。

第3章 放射線から身を守る

<放射線のパラメータ>
○アルファ線は
・アルファ線は重く、空気にぶつかって、余り飛べません。紙でさえ貫通できません(※陽子2+中性子2だからな)。人間の皮膚表面は角質層が10層前後ありますが、細胞2~3個にぶつかって止まります。角質層は死んだ細胞なので、放射線障害は起きません。怖いのは外部被曝ではなく、内部被曝です。

○ベータ線
・ベータ線は霧箱でクルクル曲がります。それはベータ線が軽く、空気中の分子に当たって、方向を変えるからです(※ベータ線は電子かな)。飛距離は数mで、皮膚なら数mm貫通します。内部被曝で放射線障害を起こします。原発事故の「放射能の灰」の大半は、ベータ線を出します。

○ガンマ線
・ガンマ線は「電磁波」で、X線より強力です。貫通力は強大で、厚さ50mのコンクリートも貫通します。ガンマ線を霧箱で見る事はできませんが、分子にガンマ線が当たるとベータ線を出すので、それを確認できます。※電磁波は、質量ゼロで光速の波かな。

○粒子線
・アルファ線/ベータ線は「粒子波」で、ガンマ線/X線は「電磁波」です。素粒子には、陽子/中性子/電子があります。陽子/中性子は核力で結び付き、原子核になります。

○イオンビーム
・アルファ線は陽子2個と中性子2個からなり、ヘリウムの原子核と同じです。ベータ線は電子で、重さは陽子の1/1800しかありません。電子を失った原子はプラスイオンになります。イオンは電場/磁場で加速できます。これがイオンビーム/重粒子線で、ガン治療に使われます。

○中性子線
・中性子線は原子核から弾き飛ばされた中性子です。電気を帯びていないので、霧箱で見られません。小さいため、貫通力は高くなります。

○宇宙線
・宇宙線は粒子線で、主に陽子です。中性子線と同じで、貫通力は高くなります。大気にぶつかると、ニュートリノ/ミューオンに変わります。※軽粒子「レプトン」は6種類あり、ニュートリノ/ミューオンはその一種。電子もその一種かな。

○ニュートリノ/ミューオン
・ニュートリノは大変小さく、大半の物を通過する謎の粒子です。これを検出するのがスーパーカミオカンデです。ニュートリノは電子の200倍の重さで、霧箱で確認でき、短い直線になります。※貫通力は高いのに、短い直線?ミューオンの説明はない。

<電磁波による放射線障害>
○七色の虹
・虹は七色で、外側が赤、内側が紫になります。しかし可視光以外に赤外線/紫外線があります。紫外線はエネルギーが高く、当たるとヤケドします。

○放射線障害の原因はラジカル
・X線/ガンマ線は、紫外線よりエネルギーが高くなります。※エネルギーが低い赤外線が熱になるのは不思議だな。赤外線は分子を揺らし熱になるが、紫外線などは分子を破壊し、その中間が身に見える可視光かな。
・電子は2個1セットでバランスしています。原子にガンマ線が当たると、電子をはじき出し、ラジカルになります(※陽イオンだな)。ラジカルは化学反応し易いので、体に害を及ぼします。特に「酸素ラジカル」は反応性が高く、DNAを壊し、老化やガンの原因になります。

○紫外線/X線/ガンマ線
・紫外線/X線もラジカルを作ります。紫外線に当たると、皮膚のDNAが傷付き、それがメラニンの合成を促します。X線は体を通過しますが、その際にラジカルを作ります。そのため被曝のリスクがあります。

○放射能は内部被曝を起こす
・X線/ガンマ線は放射線に含めますが、紫外線は含めません。それは紫外線は皮膚ガンなどを起こしますが、内部被曝を起こさないからです。X線/ガンマ線を浴びると体内のDNAが傷付きガンになります。酷い時は細胞が破壊され、多臓器不全になります。

<粒子線による放射線障害>
○アルファ線による放射線障害
・アルファ線を出す代表的な物質がポロニウムです(※原子番号84。ラドンが放射線崩壊するとポロニウムになる)。これは殺人に使われるほど強力なアルファ線を出します(※半減期が短いって事かな)。人体には40ベクレルのポロニウムがありますが、この程度なら自然治癒力で修復できます。

○ベータ線による放射線障害
・ベータ線の破壊力は弱いが、皮膚を数mm貫通し、ガンなどの原因になります。また「放射能の灰」(放射性セシウム、放射性ヨウ素、放射性ストロンチウム)はベータ線を出します。

○中性子線による放射線障害
・中性子線は核燃料の核分裂で出ます。貫通力は高く数百m飛び、人体/コンクリートを貫通します。時にはラジカルになったり、他の原子を放射化させます。
・1999年東海村で濃縮されたウランが核分裂を起こします。核分裂を起こしたのは1mgのウランでしたが、発生した中性子線で667名が被曝し、2名が亡くなりました。

○宇宙線による放射線障害
・宇宙線の大半は陽子で、エネルギーも貫通力も高い放射線です。宇宙では健康に影響がありますが、大気圏だと影響はありません(国際便で年間3mSv)。

○イオンビームによる放射線障害
・イオンビームは人間が作った物で、自然界には存在しません。他の粒子線とは比べ物にならない重さ(重粒子)で、光速の8割の速度を持ち、破壊力は絶大です。そのため重粒子線治療に利用されます。

<原子爆弾による放射線障害>
○被曝と被爆
・広島・長崎は被爆と云います。原子爆弾の爆撃を受けたからです。当然放射線による被曝も受けています。

○原爆で何が起きたか
・原爆による熱線で人は焼き殺されました。空気の膨張で爆風も起こました。中性子線も放出され、「放射能の灰」を降らせました。中性子線は建物などを放射化したが、翌日には20%まで下がり、1週間でほぼ消えました。ただし放射線を受けた人は0.1グレイ(100mSv)前後を被曝し、ガンで亡くなりました。
・グレイは物体に吸収される線量で、シーベルト(Sv)は生物に吸収される線量です。従ってベータ線/ガンマ線/X線は、1グレイ=1Svです。アルファ線は影響が大きいので、1グレイ=20Svです。中間の中性子線は1グレイ=5~20Svです。
・短期間で集中的に被曝する事を「急性被曝」と云います。そうなるとDNAは破壊され、免疫細胞(白血球)も作れなくなります。

○10Sv
・この線量で急性被曝すると、即死です。ただしガンの放射線治療は10Svです。

○6Sv
・この線量で急性被曝すると、数日後に吐き気/だるさ/下血/抜け毛になります。DNAが破壊されるため、細胞分裂/新陳代謝が活発な毛根/胃腸などに症状が出ます。骨髄が破壊されると助かりません。

○1~3Sv
・この線量で急性被曝すると、骨髄が破壊され、赤血球/白血球/血小板を作れなくなります。赤血球が不足すると再生不良性貧血、白血球が不足すると感染症、血小板が不足すると出血が止まらなくなります。原爆で撒き散らされたウランが肺に入り、内部被曝を引き起こしました。

○生殖能力
・卵巣は3Sv被曝すると永久不妊になります。それは卵細胞は胎児の頃に完成するからです。一方精細胞は毎日作られます。ただし6Sv被曝すると永久不妊になります。そのため女性は、被曝量が多い場所での作業が禁止されています。

○近年の被曝事故
・東海村の事故は、1~4.5Svの被曝でした。一時白血球が0になったが、骨髄移植/造血幹細胞の移植で回復しました。
※放射性崩壊/原発/原発事故/原子爆弾を化学的に解説して欲しかったが、なかった。ただしウラン238の放射性崩壊だけが図示されていた。

<放射線の遮断>
○アルファ線の遮断
・最大の放射線対策は遮断です。アルファ線を出すポロニウムは暗殺に使われますが、貫通力は弱いので、紙・アルミホイルで包めば遮断できます(※金正男の暗殺はVX、ウクライナ大統領候補の暗殺未遂はダイオキシン)。アルファ線は測定器の筐体を貫通できないため、測定できません。福島原発事故では、アルファ線を出すプルトニウムが原子炉の底に残っています。

○ベータ線の遮断
・ベータ線の飛距離はエネルギーによって異なります。数mの場合は離れた場所に置いておけば大丈夫です。距離を置けない場合は、トタン板などの金属板で遮蔽すれば大丈夫です。プラスチック/アクリル板だと1Cm以上の厚みが必要です。
・鉛板で囲ってはいけません(※放射線を遮断するのは鉛板が最良と聞いた気がするが)。鉛にベータ線を当てると、X線を出します。これを「制動放射線」と云います(※中性子による放射化とは違うな)。ベータ線の遮断は水素などの柔らかいものが良く、水やコンクリート・アクリルが適してます。※コンクリート・アクリルって何だろう。

○ガンマ線の遮断
・ガンマ線は貫通力が強いので、鉛板だと10Cm、コンクリートだと50Cm必要になります。

○X線の遮断
・X線はガンマ線より貫通力が弱く、筋肉は貫通しますが、骨は貫通できません。レントゲン室はX線が漏れないよう、金属板が貼られています。放射線技師は鉛のエプロンを付けます。

○中性子線の遮断
・中性子線の破壊力は強大です。貫通力も高く、空気中で数Km飛びます。水素原子で遮断できるので、水で止める事ができます(※ベータ線と一緒で、軽い元素の方が遮断力があるのかな)。原子炉のコンクリート壁の厚さは、数mになっています。中性子捕捉療法で使われるホウ素(※原子番号5)も、中性子を止める事ができます。※ホウ素は中性子を受け、ホウ素11になるのかな。

○プールで眠る核燃料
・核燃料のウラン235は核分裂し、熱を出します。ウラン分子が核分裂すると中性子を出し、それが他のウラン分子を不安定にし、連鎖反応で「臨界」に達します。この連鎖反応を止めるのが、ウラン238とホウ素の「制御棒」です。
・「燃料棒」は4年使うと交換します。使い終わった燃料棒は、水の入った貯蔵プールに5年位置き、反応が収まるとコンクリートで固めて破棄します。水は冷却だけでなく、中性子を止める役割もします。※使い終わった燃料棒は放射性はないのに、原発事故で放出された物質は放射性があるのか。しつこいようだが、この辺りの化学的解説が欲しい。

<放射能の除染>
○除染が必要な線量
・「放射能の灰」で重要なのが放射性セシウムです。セシウム134の半減期は2年ですが、セシウム137は30年なので線量は直ぐには落ちません。そのため線量が毎時0.23μSv以上の場所は除染されます。

○毎時0.23μSvの根拠
・日本は自然放射以外で許容できる線量を、年間1mSv(毎時0.11μSv)にしています。これが毎時0.23μSvに引き上がっている理由は以下です。自然放射線が毎時0.04μSvあり、これを引くと毎時0.19μSvです(※自然放射線を二重に引いている)。1日8時間を屋外にいて、16時間を屋内にいるとします。そうすると「0.19×8+0.19×16×0.4(遮蔽率)=1.22μSv/日」です。これに365をかけると、年間1mSvになります。

○年間1mSvは厳しい?
・世界の自然放射線の平均は年間2.4mSvで、日本は年間1.4mSvです。1mSvの差があり、「年間1mSvの基準は厳しく、復興を遅らせる」との意見もあります。しかし自然放射線の1mSvと、セシウム/ストロンチウムの1mSvが同等とは断言できません。現時点では1mSvが妥当と思われます。※曖昧な基準なんだ。

<除染特別地域とその他の除染地域>
・福島原発事故により周辺11市町村に避難指示が出ました(避難指示区域)。この区域は国が除染する「除染特別地域」に指定されています。福島県以外の7県では、毎時0.23μSvを基準に市町村が除染を行っています。

○住宅の除染
・線量が毎時0.23μSv以上の場所は除染します。樋の落ち葉を除いたり、建物を水や洗剤で洗い流します(※下流に蓄積されるのでは)。生活圏を優先するため、森の奥などは除染しません(※除染しても森からの水で、再び汚染されるかな)。セシウムが出すベータ線は飛距離が5~10mなので、生活圏から20mまでは除染します。ただし木は切らず、表層の落ち葉や枝を除きます。

○池・河川の除染
・池・河川では底に放射性の泥が溜まりますが、水が遮蔽するため線量は高くなりません。そのため池・河川の除染は、基本的にしません。※最終的に海に流れ出るのを期待しているのかな。

<放射能ゴミ>
○仮置き場
・除染ゴミは土嚢などに入れられ、仮置き場に積まれます。残りの除染ゴミは庭などに積まれ、近付かないようにします。※風が吹けば落葉は舞い散るけど。

○大量の土嚢
・除染特別地域で保管されている汚染土は244万㎥、それ以外の福島県内で306万㎥あります(※大体同量だな。これは汚染土だけで、除染ゴミ全てではないかな)。そこで2015年より「中間貯蔵施設」への搬入が始まりました(※中性子線は数Km飛ぶのに大丈夫か。ベータ線は大量に出るが、中性子線は余り出ないかな)。しかし管理が大変なので、1Kg当たり8000ベクレル以下になると、自治体が処分する検討がなされています。

○中間貯蔵施設
・福島原発近くに2つの中間貯蔵施設があり、福島県内の放射能ゴミを集めています。ここで線量に応じ、処分します。最終的に2千万㎥になると推計されています。

○放射能ゴミを燃やす
・放射能ゴミには可燃物が含まれます。これを焼却し、容量を減らします(減容化)。発生した二酸化炭素は森林の栄養素になります(ヒートリサイクル、※可燃物には石油由来などもあり、全てが再生可能物とは限らないと思う。脱炭素からすると違和感がある)。また焼却場の煙突にはフィルターが付いており、放射能を帯びたチリは放出されず、焼却灰として残ります。

○廃棄物貯蔵施設
・焼却灰に、1Kg当たり10万ベクレル以上のセシウムが残ります。焼却により、放射能ゴミを160万㎥まで減らせると推計されます(※1/10以下だな)。焼却灰を放射性廃棄物専用の金属タンクに封印し、貯蔵します。※放射線マークの付いたタンクかな。ところで焼却は、既にどこかで行われ、ブラック施設として問題になっていないのかな。

○中間貯蔵施設から最終処分場へ
・中間貯蔵施設に集められた放射能ゴミは、30年以内に「最終処分場」に移し、永久に埋める予定です。福島県外に5つの候補地がありますが、確定していません。しかし反対があるため、「長期間保管し、最終的に埋める」のではなく、「再処理し、土地も元に戻す」(長期間保管施設)案があります。※これも簡単ではなさそう。

<帰還と復興>
○避難指示区域
・福島原発周辺は「避難指示区域」に指定され、国により除染が行われる「除染特別地域」に指定されました。その避難指示区域は、今は「帰還困難区域」「居住制限区域」「避難指示解除準備区域」に分けられています。

○帰還困難区域
・この区域は年間50mSv以上で、立ち入る場合は申請が必要です。防護服などを付けても、短時間しか入れません。この区域を年間20mSv以下にするのは困難と思われていました。ところが試験的な除染で、除染前の20~50%まで線量を下げられる事が分かってきました。そこで住民との話し合いが始まっています。

○居住制限区域
・この区域は年間20mSv以上ですが、数年後には帰還できると考えられる区域です。この区域は宿泊はできませんが、出入りは可能です。

○避難指示解除準備区域
・この区域は年間20mSv以下で、帰還可能な区域です。セシウムの半減期は30年なので、今は年間20mSvでも、120年後には年間1mSvになります(※気が遠くなる)。また居住するようになれば、除染もさらに進むでしょう。

<自然治癒力の進化>
・自然放射線は一定ではありません。恒星が超新星爆発を起こすと、大量のガンマ線を放出します(ガンマ線バースト)。5光年以内の生物は絶滅し、50光年以内の生物も放射化された世界で死滅します。
・藤原定家の『明月記』に超新星爆発の記述があります。これは7200光年離れた「おうし座」のものでしたが、地球への影響はありませんでした。4.5億年前に三葉虫が絶滅しましたが、これはガンマ線バーストが原因とされています。※生物絶滅は4度あったが、様々な原因による。

○想定される危機
・640光年離れたオリオン座のペテルギウスは太陽の8倍の重さで、超新星爆発が想定されています。しかしガンマ線バーストは自転方向に放出されるので、地球への影響はないと考えられています。

○超新星爆発とポールシフト
・銀河系では100年に1度位、超新星爆発が起きます(※そんな頻繁に)。そのため生物は年間100mSv位の放射線に対する自然治癒力を身に付けました。
・地球内にある放射性物質の地熱で鉄・ニッケルが溶け、磁場を生んでいます。そのおかげで放射線が曲げられ、地上に届きません(※これはイオンと電子の太陽風かな。太陽風の説明はない)。ただ磁場は数十万年毎に反転(ポールシフト)しており、そうなると宇宙線は地上に届きます。また大気も宇宙線を遮断しています。

○DNAの進化
・40億年以前はRNAワールドと呼ばれ、遺伝子は一本鎖のRNAでした。今は二本鎖のDNAで、自動修復できるように進化しました。太陽や超新星爆発による放射線で一本鎖の生物は絶滅し、二本鎖の生物が生き残ったと考えられます。また免疫細胞がガン細胞を破壊する機能も身に付けました。

<放射線耐性>
○キューり夫人
・マリー・キューり(キューり夫人)はラジウム/ポロニウムを発見しました。これらを含んだ鉱石をすり潰し、精製したのです。彼女は放射線障害を受けなかったのでしょうか。

○キューり夫人は長生き
・彼女は再生不良性貧血で亡くなります。ラジウムはガンマ線を出すので、これで骨髄がダメージを受けたのかもしれません。しかし彼女は66歳で亡くなっており、当時の女性の寿命は62歳で、彼女は長生きしたと云えます。

○キューり夫人の生活
・彼女は鉱石の粉にまみれて生活しています。遺品の多くにラジウムが付着していました。ただ彼女はマスクをし、料理・食事の時は着替え、手も洗っていたようです。彼女の長女はノーベル賞を受賞し、次女は芸術家で彼女のアシスタントでしたが、彼女達に被曝の影響はなかったと思われます。

○効果に個人差
・彼女の家系はDNAの修復力が強かったのかもしれません。長女はノーベル賞を受賞しますが、骨髄の被曝で58歳で白血病で亡くなっています(※影響あったのでは)。次女は102歳まで生きています。ガンになり易い家系がありますが、彼女の家系は放射線への耐性が高く、長期の研究が可能だったのかもしれません。

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