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『グローバリゼーションの世界ハンドブック』ロラン・カルルエ(2022年)を読書。

様々な地理的レベルでグローバリゼーションを解説している。
分断/持続可能性などの問題も解説。
今の世界経済の全体像を知るには、最良の本。

しかし翻訳なので難解な文章が多々ある。
また各節に世界地図などがある(余り詳細に見なかった)。

お勧め度:☆☆(大変詳しいが、難解)
内容:☆☆☆

キーワード:<はじめに>グローバリゼーション、バラ栽培、<グローバリゼーション>人間化/人類化、大航海時代、産業革命、大英帝国、主権国家、冷戦、金融グローバリゼーショ、多極化、中国、<新たな世界の生産システム>不平等、国際分業、資源、超工業化、イノベーション、金融、多国籍企業、海外直接投資、輸送、国際観光、<グローバリゼーションの中の地域>大都市/シンガポール、周縁部/グリーンランド/サハラ・サヘル、麻薬、米国、仏国、英国、中国、インド、アラブ首長国連邦、<将来の争点>人口、食料、開発、移住、危機・戦争・紛争、海洋進出、環境問題、世界的ガバナンス、<土地・世界・人間>有限性、非全世界、構築

はじめに グローバリゼーション-誰にでも理解できる地理学

・本書は本当の世界一周を提供する。それはあらゆる大陸・空間・国・地域を取り上げ、様々な指標を用い、地理学・歴史地理学の視点から解説するからだ。本書の目的は3つある。
 ①学術的目的-現代社会を地理学のツール・方法論・概念で解説する。
 ②市民的目的-日常生活での選択を容易にする情報を提供する。
 ③教育的目的-教鞭をとる人などが子供に教える際の手助けになる。

○道具箱
・1990年代よりグローバリゼーションが政治・経済・社会・文化で幅を利かせ、オールマイティのデウスのように機能している。これは喜ばしい事だが、この過大評価・誇大表示は解体し、評価すべきだ。

○グローバリゼーションは世界的な尺度だけではない
・大英帝国でも米国でも巨大企業でも、世界を支配した事はない。それは世界は広く、変化に富んでいるからだ。世界は、地方・国・大陸などの入れ子になっている。そしてそれぞれが、その役割を果たし、これは複数の地理的レベルの相互作用の結果なのだ。

○グローバリゼーションは必然的結果でも無意識の結果でもない
・世界には帝国の興亡/脱植民地/イデオロギー的・政治的対立などがあり、動的で不安定である。今の「脱グローバリゼーション」は、南(開発途上国)に対する西側の主導権低下にある。米国ではワシントンとトランプが対立しているが、国際決定機関では中国が新しい旗手になっている。

○グローバリゼーションは歴史も時間も記憶も消滅させない
・グローバリゼーションは古くから歴史地理学のプロセスである。仏国では教育において歴史と地理が結び付けられており、グローバリゼーションの理解が優れている(※地理を歴史的に見るのは難しいかな)。地球はパリンプセスト(文字の訂正が可能な羊皮紙)のように研究するのが望ましい。

○グローバリゼーションは空間も距離も消滅させない
・地球が時間帯に分割されいるため、人類は同じ時間を生きていない。また北半球と南半球では季節が逆転している。この様に地球は無限の変化がある。過去に中東戦争でスエズ運河が封鎖されたり、アイスランドの火山噴火で飛行機の運航が不可能になった。また世界の1/3の人は徒歩で移動している。この様に距離における束縛は消滅していない。

○グローバリゼーションは領土を消滅させない
・グローバリゼーションは大陸間・国家間・地域間の空間的・領土的差異を強調させた。石油市場は6つに分かれ、それぞれで取引される。地域の力学(?)はシティからシンガポールへ、ロッテルダムからアブダへ特有の軌道を描いている(※難解。金融と貿易の中心かな?)。グローバリゼーションへの取り込まれ方は、中心部/周辺部/周縁部で異なる(※この区分は頻出する。3つ目は縁辺部/外縁部があったが周縁部に統一した)。

○世界を理解するための地図
・本書は約90の地図を掲載している。そして深く理解してもらうために、歴史地理学・社会学・人口学・地政学・戦略地政学・文化地理学・環境地理学を採用した(※素人には区別が付けれない)。また適切な指標を選んだ。これによりグローバリゼーションの力のシステムの相互作用を視覚化し、プロセスの結果を視覚化している(※翻訳は難解)。

・本書の関心は以下。
 公的であろうと民間であろうと、行為主体のタイプ/目的/論理/行動様式/可能性を識別する(※5W1Hかな)。特に地図により空間・地域開発戦略の検討が容易になる。
 特定の機能を持つ地域(決定の中心地、海に面する、支配下にある、見捨てられたなど)を特定し、その特徴を説明する。
 世界の商品・資本・情報・人間のあらゆる流れを把握するため、その始点・終点と大きさを示し、その決定的役割/組織主体/地域的特色(極地、分岐点、空路、海路など)を明らかにする。※事象を「流れ」として見るのかな。
 視点を西欧からずらし、異なる視点・投影法・焦点距離で検討する。
 グローバリゼーションに結び付く以下を議論する。不平等/二元性/力への依存/経済成長方式の持続性/公平性/管理/普遍性。

○4つの入り口
・本書は4章で構成する。第1章は、グローバリゼーションを長期に亘る歴史・地理におけるプロセスとする。世界システムが出現し、3つのグローバリゼーションが見て取れるが、これを経済地理学・地政学・戦略地政学のシステムと定義する。
・第2章は、現代のグローバリゼーションを世界生産システムの概念の社会学的・経済地理学的構成要素として提示する。このアプローチは富・経済成長・開発の地理学を扱い、労働の国際分業で生まれた関係と相互作用を分析する。多様なアプローチを通して、関与者の役割・機能を分析する。※難解。要するに現代のグローバリゼーションを様々な視点から分析するのかな。

・第3章は、2つの視点から地域へのグローバリゼーションへの統合を分析する。1つ目の視点は、グローバリゼーションが中心部・周辺部・周縁部からなる強固なシステムの地域に及ぼす影響である。2つ目の視点は、地域の反応で、それぞれの地域はグローバリゼーションへの統合による再構成のために独自の戦略を実施している(※難解なので簡略化)。グローバリゼーションは国家の価値を低めるため、その政治的要素を否定する。しかしこの地理学的アプローチは、グローバリゼーションが政治的・地政学的なプロセスであり。人類に将来の集団的選択をさせている事を喚起する(※ここも難解なので簡略化)。
・第4章は、将来の重要な問題を明らかにする。これが重要なのは、テーマが人権の開発/持続可能性/連帯した開発に基づき、普遍的・包括的・民主的なプロジェクトの定義に関わるからだ。

<グローバリゼーションと複数のレベルの入れ子構造>

・ケニアのバラ栽培は、ある特化した地域(※バラを栽培している地域?)がグローバリゼーションに組み込まれるプロセスと、異なる地域レベルの入れ子構造の好例である。※この「異なる地域レベル」とはケニアの事かな。

○地域的バラ栽培の集団
・1980年代ケニアでバラ栽培集団が創設される(※ケニアの園芸農業の地図あり。)。農家2150軒が数ヘクタールから5千ヘクタールの温室を備え、年6~7回の開花を可能にし、バラを大量生産している。この集団には3つの長所がある。赤道直下の高所で、温暖で水がある。また人口増加で働き手に恵まれ、労働力は安価で月50ユーロで雇える。さらにポスト・コロニアルで放置され、税金が掛からない農地が豊富にある。
・このバラ栽培は社会・経済構造と都市の人口・住居・商業・サービスを根底から変えた。過剰な開発に市民社会・NGOが闘い、真の進歩を実現した(※近代化かな)。

○ケニア-政策断行主義戦略
・この花卉栽培ブームは国家とケニア・エリートによる多様性志向(コーヒー、茶、観光)の戦略による。この戦略によりオランダ/南アフリカ/インドの外国資本を引き寄せ、直接雇用10万人を生んだ。輸出額は6万ドル近くで、輸出品の第2位である。そのためケニア南西部は電化・道路・空港などのインフラが充実した。花卉は冷凍トラックで空港に運ばれ、専用機に積まれる。

○世界市場
・1970年代に花の消費ブームが起き、生産地は米国からメキシコ/コロンビア/エクアドルへ、オランダからエクアドル/ケニア/エチオピアに移った。ここでの生産物は「ジャスト・イン・タイム」で欧州/ロシア/日本に送られている。※以前、日本が花卉をコロンビアから輸入していると聞いて驚いたが、これだな。
・ケニアの花の半分はオランダに送られているが、近年は英国のテスコ/マークス・アンド・スペンサーズや仏国のカルフールなどの購買大企業(※流通大手かな)が購入している。これは南の国の農業の監督(?)に繋がっている。

第1章 グローバリゼーション-歴史地理学・経済地理学・地政学・戦略地政学的システム

・グローバリゼーションは非歴史的・非領土的・非政治的な抽象概念どころか(※否定の否定か)、長い時間の中に根を下ろしている。そして世界的システムの段階的な出現であり、世界規模の考え方に重要な役割を与えている。※「世界を考える上で、重要な概念である」かな。
・この発展は、加速の時期と安定の時期がある。構造的や景気による後退もあった。過去に3つのグローバリゼーションがあり、それぞれの特有の性格が世界空間に上書きされてきた。それぞれのグローバリゼーションが経済地理学・地政学・戦略地政学的なシステムである(※これらの言葉が頻出するが、意味不明瞭で止めて欲しい)。そして変化力/原動力/行為者(国家、経済主体など)/引き継がれたもの/厄介なものを含み、現代社会の問題の理解を可能にする。

<世界の人間化、最初の繋がり>

・人は地球を人間化する。これは発展的なプロセスである。まずホモ・エレクトゥスからホモ・サピエンスが登場する。次に新石器革命が起き、農耕・牧畜を始め、定住するようになる。しかし距離の克服はできず、グローバリゼーションとは云えない。※人間化とは「人間による支配の強化」かな。

○世界の人間化
・旧石器時代(170万年前)人類と類人猿が個別化し、2足歩行/道具・火の利用/埋葬をするホモ・エレクトゥスが出現する。彼らはアフリカから中東・ユーラシアに広がる。約32万年前ホモ・エレクトゥスからホモ・サピエンスが誕生する。彼らもアフリカから地球全体に広がる(※ホモ・サピエンス拡散の世界地図あり)。
・この地球の人間化は氷河期と関係し、限られたものだった。最後の氷河期が終わると米大陸は孤立し、以後1492年までユーラシア大陸と繋がらなかった。アジア太平洋では、オーストロネシア人が航海術により台湾/フィリピン/マレー諸島/ミクロネシア/メラネシア/ポリネシアに移り住む。

○新石器革命と人類化
・1万~5千年前「新石器革命」が起き、狩猟・採取から、定住し動物の家畜化/植物の栽培化を始める。これは中国/中東/アンデス/中央アメリカ/ニューギニア/アフリカなどで同時に始まる。これにより人口は急増し、居住領域は拡大するが、疫病(結核、天然痘、麻疹、ペストなど)が出現する。これが人類化である。これにより富を集積するプロセスが始まる。文字、都市文明、国家建設、仕事の専門化、不平等、好戦的な社会、交易などである。

○初期の相互連結
・この人口・経済・政治における「連鎖的な変動」により、「文明の発祥地」(中近東、インド、中国、地中海沿岸、西欧)が発展する。中央アメリカ/アンデスは孤立するが、中国(漢)/ローマ帝国/インド亜大陸は相互に連結する。シルクロードはブハラ/サマルカンド(※共にウズベキスタンだな)などの集散地を繋ぐ陸路で、ソグド人/パルティアなどが交易を行った(※古代シルクロードの地図あり)。並行しインドの季節風を利用し、地中海/東アフリカ/ペルシャ湾/アジアを繋ぐ海路で交易が行われた。

・贅沢品(絹、真珠、金、磁器、香辛料、毛皮、金属、動物など)の交易だけでなく、政治・文化・芸術・科学・宗教が交流した。一方伝染病(1346年黒死病など)が大流行した。中国の漢・唐・宋・明はユーラシア・システムを推進した。632年以降イスラムが拡大し、オスマン帝国(1281~1922年)が出現し、欧州はインドに到達するために新しい道が必要になった。

<最初のグローバリゼーション(15~16世紀)>

・最初のグローバリゼーションは大航海時代に始まる。米大陸が繋がり、植民地帝国はライバル関係になり、4世紀に亘る西洋の覇権が始まる(※大航海時代の世界地図あり)。※世界が1つになった大航海時代をグローバリゼーションの始まりとしている。

○欧州列強の始動
・1453年東ローマ帝国の首都コンスタンティノープルが陥落する。スペイン/ポルトガルは、インドへの航路を大西洋に求める。1498年ヴァスコ・ダ・ガマが喜望峰経由でインドに到達する。ポルトガルは、ブラジル/モザンビーク/ザンジバル/ガーナ/西アフリカ/ギニア湾/オマーン/ゴア/マラッカ/マカオなどを拠点にする。一方中国は1405~33年、鄭和がインド/ペルシャ/アフリカに到達していたが、記録を消失させ、中国によるグローバル化は起きなかった。
・スペインは1521年アステカ帝国の首都テノチティトラン(メキシコシティ)を征服し、1533年インカ帝国の首都クスコを征服し、メキシコ/リマ副王領を建設する。1550年バリャドリッドで米大陸の先住民の扱いが問題になる(※これは知らなかった)。その後スペインは太平洋に向かい、ガレオン船がフィリピンのマニラとメキシコのアカプルコを結ぶ。

・スペインとポルトガルが対立し、教皇の仲裁で1494年トルデシリャス条約(※インド到達前だ)/1529年サラゴサ条約が結ばれる。ロシアはシベリアを征服し、16世紀には英国/仏国/オランダの新しいライバルが出現する。彼らも戦争・征服・貿易のために専門の会社(インド会社など)を設立する。

○最初のグローバリゼーション
・この最初のグローバリゼーションは専門化・補完性の理論から、自然と人間の空間における国際分業をデザインした(※難解)。植民地は宗主国が必要とする農業・鉱業に徹した。1545年スペインはポトシ銀山を開山し、大量の金銀により欧州/中国が潤った。新しい植物(サトウキビ、トマト、トウモロコシ、バニラ、バナナ、ジャガイモ、藍、カカオ、コーヒー、茶、タバコ、綿、ゴムなど)は原産地から地理的に広がり、順化した。

・その先駆になったのが砂糖である。サトウキビはニューギニアが原産地だが、紀元前1世紀には中東に伝わる。16世紀、西欧はこれを奴隷制によるプランテーション・システムで生産するようになる。この奴隷制は当初はインディオ、その後アフリカ人で行われる。それは西欧人が持ち込んだ病原菌でインディオの80~90%が亡くなったからだ。逆に梅毒は、最初のコロンブスの航海で欧州に持ち込まれた。

・ブラジルでの奴隷制は1888年まで存続した。サハラ砂漠以南(※サブサハラかな)・米大陸・欧州の三角貿易で1千万人の捕虜(※奴隷?)が運ばれた。7世紀に発達したアラブ人による奴隷貿易は、1.3~1.7千万人に及ぶ(※これは知らなかった。こちらの方が多い)。16世紀米大陸での砂糖システムは最も収益性が高い国際取引になるが、綿花システムでさらに発展する。

<第2次グローバリゼーション-植民地帝国の時代(1830~1970年)>

・第2次グローバリゼーションは、1911年南極に到達したように、地球全体に広がった。新しい植民地帝国が陸地の3/4を支配した。20世紀に第1次世界大戦(1914~18年)/第2次世界大戦(1939~45年)を起こす。アフリカのポルトガル植民地は1975年に崩壊した(※独立だな)。
※第1次グローバリゼーションと第2次グローバリゼーションは明確に区分できるのかな。ナポレオン後?大英帝国の時代?植民地の確定後?

○産業革命と世界支配
・19世紀、西洋は原料・市場を求め、政治的・経済的・社会的・言語的・文化的に世界を抑圧する。それは直接的(植民地、租界、ドミニオン、保護領、属領)や間接的(米国のモンロー主義)や歴史的(ユーラシアに対するロシア)に行われた。
・これは第1次グローバリゼーションとは根本的に異なり、輸送革命(蒸気船、冷蔵、鉄道、電信)が費用を下げ、人・商品・情報の循環がスピードアップした。これにより国際銀行/多国籍企業が発達する。※金融のロスチャイルド、保険のロイズなどかな。
・欧州の人口は1.23億人(1800年)から2億人(1910年)に増えるが、4千万人が欧州から植民地(カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなど)に移住した。※確かに第2次グローバリゼーションは第1次から変容したかな。

○大英帝国の絶頂期
・アヘン戦争(1839年、1856年)により、中国は開国する。日本は、明治維新により近代化を強行し、1905年ロシアに勝ち、台湾・朝鮮・満州を植民地にする。1884年ベルリン会議でアフリカ分割の原則が定まる(※どんな内容なのか)。1898年米国はスペインに勝ち、プエルトリコ/フィリピンなどを掌握し、太平洋を「米国の湖」にする。
・1815年「ワーテルローの戦い」で大英帝国が勝ち、英仏の争いに終止符が打たれる。ヴィクトリア女王(位1837~1901年)の下で最強国になる。商業・産業の生産は世界の23%に達し、シティが金融の中心になり、帝国の人口・領土が世界の1/4を占めた。領土はインド帝国/ドミニオン/植民地/保護領/信託統治領など様々な形態だが、それらは海運で結ばれ、それを英海軍が守った。

○対抗関係、20世紀初めの戦争と危機
・20世紀初、欧州諸国の対抗関係が激化し、ドイツ帝国(1871年建国)はアフリカ/欧州/中東での取り分を要求する。これが第1次世界大戦を起こし、1千万人の死者を出す。欧州は荒廃し、ドイツ/オーストリア=ハンガリー/オスマン/ロシアの帝国は崩壊する。1917年革命により、ロシアは共産主義ソヴィエト連邦となり、世界最強国になる。1920~30年代は脱グローバリゼーションの時代になる。

・1929年世界経済・金融システムが崩壊し、国家主義と帝国主義の緊張が高まる。その背景にドイツのナチズム、イタリアのファシズム、日本の軍国主義があった。結果、第2次世界大戦で6200万人が亡くなる。
・戦略地政学上、原爆が使われ、核時代になり、新しい軍備戦争が始まる。核大国間の戦争は阻止されるが、冷戦になる。一方、国際連合/世界通貨基金/世界銀行などの国際機関や「関税及び貿易に関する一般協定」(GATT)などが発足する。

<第3次グローバリゼーションと2極の世界(1970~91年)>

・1945~75年、米ソ対立/脱植民地/第3世界誕生により西欧の優越は揺らぐ。1970・80年代、英米は新保守主義・新自由主義で新たなグローバリゼーションを開始する。この攻勢により、1989~91年ソ連・共産圏は崩壊する。

○脱植民地/第3世界
・1945~75年、反植民地主義・反帝国主義によりアフリカ/中近東/アジアの植民地は一掃される。1949年中国では毛沢東が政権に就く。各国家(インド/パキスタン、ベトナム、アルジェリア、アンゴラ/モザンビーク)は独立するが、激しい対立で分離する。これらのアフリカ/アジアの28ヵ国は、バンドン会議で東西に属さない第3世界を表明する。

・しかし政治的主権が経済的主権を意味する事は稀だった。1970年代の「世界的新経済秩序」建設の要求や自律化(1960年OPEC創設など)にもかかわらず、新しい国家は新植民地主義に組み込まれたままだった(※難解。新植民地主義の説明がない)。
・この造山運動は加速し、キリバス(1979年)/ヴァヌアツ(1980年)/サモア(1997年)/ソヴィエト連邦/ユーゴスラヴィア/チェコスロヴァキアが分離独立した。2017年世界は200以上の主権国家になり、内193ヵ国が国連に加盟している。

○二極化した緊張下の世界
・1945~91年米ソが政治的・イデオロギー的・経済地理学的・戦略地政学的な対立で、1つにならなかった。1945~48年ソ連は何百万人の死者を出し、中東欧に支配を広げた(ワルシャワ条約機構、東欧経済相互援助会議)。一方米国は、北大西洋条約機構(NATO)/東南アジア条約機構(SEATO)/中央条約機構(CENTO)/米州機構(OAS)で変則的に支配を広げた。核兵器により直接の対決は阻止されたが、周辺地域での間接的な紛争が増大した(1950~53年朝鮮戦争、1945~73年ベトナム戦争、1956年スエズ危機、1962年キューバ危機など)。

・米ソは直接的影響下の秩序維持を図った。ソ連は、1948年チェコスロヴァキア政変、1968年プラハの春、1948年ベルリン封鎖、1953年ベルリン暴動、1956年ハンガリー動乱、1948年ポーランド一党独裁体制、1956年ポーランド反ソ暴動に関与した。米国は、1953年グアテマラ内政干渉、1973年チリ・クーデタ、1979年ニカラグア内戦、1983年グレナダ侵攻に関与した。仏国もアフリカで軍事的介入/政治的干渉を行った。

・1970年代は緊張緩和(デタント)となるが、1980年代は米国が軍拡競争を仕掛け、「新冷戦」になる。ソ連は防衛政策の失敗(1979年アフガニスタン侵攻)で枯渇する。ゴルバチョフ書記長が改革を試みるが、1991年12月ソ連は消滅する。ソ連・欧州の共産党システムの崩壊で、世界は唯一の超大国である米国の単極構造になる。米国はユーゴスラヴィアとコソヴォ(1995年、1999年)、湾岸戦争(1991年、2003年)、ソマリア(1992年)、アフガニスタン(1992年)などに軍事介入する。

○第3の金融グローバリゼーショ
・英国サッチャー(在任1979~1990年)/米国レーガン(在任1981~1989年)により、新保守主義的・超自由主義的・金融的な政策が始まる。これは規制緩和/民営化などの変革で、世界の再支配を目指した。これは「ワシントン・コンセンサス」と呼ばれ、国際通貨基金(IMF)/世界貿易機構(WTO)/経済協力開発機構(OECD)/世界銀行などにより、市場原理主義・新自由主義的な政策が実行された。
・これにより直接海外投資/生産活動の海外移動/金融資本の移動を優先する多国間経済に移行した(※これこそグローバリゼーショかな)。しかしこのシステムは不安定で、2007年金融・経済危機(世界金融危機)を起こし、1929年以来の経済的・社会的危機に至った。

<多極化した世界>

・21世紀に入ると、世界は多極化する。この多層化した地政学は、西側大国の脆弱化と世界規模・大陸規模の強国の出現による(※中国だな)。世界は混沌としており、その複合性を再考せざるを得ない。

○大開放
・欧米の覇権主義的支配力の相対的な低下により、世界は多極化する。これを地理学者ミシェル・フーシェは「大開放」と呼ぶ。これは流動的・革新的なシステム(BRICSなど)に組み込まれた大国の対抗関係で構成される。
・南(開発途上国)は国内に問題があるのに、その強みを明確にしている(※説明が欲しい)。世界規模の国は中国/インド/ブラジル/ロシアであり、大陸規模の国は南アフリカ/エチオピア/サウジアラビア/トルコ/イラン/メキシコ/ナイジェリア/インドネシア/タイ/ベトナム/パキスタンである。イラク/シリアが崩壊した事で、サウジアラビア/イラン/トルコ/アラブ首長国連邦/カタールの対抗関係が解放された(※対抗関係から解放された?)。これらの国は民族・宗教を自律的に用い、西側大国/ロシアの介入に加わった(※増々難解)。

・7つの空間的システムが戦略地政学的な関心を集めている。5つの海(南シナ海、地中海、カリブ海、ペルシャ湾、北極海)の緊張が増し、2つの大陸システム(中近東、サハラ・サヘル)が危機の発祥地になっている。また48の後発開発途上国(LDC)は支配・除外され、開発の問題が残り、大きな駆け引き(例えば中国)が無視できない(※債務の罠かな)。

○根本的な再編成
・先進国の外貨準備高は、78%(1990年)から30%(2018年)に下落した。一方東アジアは36%、中東は13%に伸ばした。これらの国はこの貯蓄により、ソブリン・ウェルス・ファンド(SWF)を持つようになる(1953年クウェート、1974年シンガポールなど)。これらのファンドは、金融市場(公債、株)や事業(不動産、エネルギー、原料、インフラ、空港、海運、鉄道など)に長期投資した(※日本は世界最大の海外純資産国かな。ただこれは民間かな)。SWFの数も、1990年19から、現在は約100になった。このSWFの総資産の42%がアジア、26%が中東になっている。

・このファンドは注目されていないが、世界で重要な地政学的・経済地理学的役割を演じている(※金融ではなく?)。例えば中国政府の金融部門である中国投資有限責任公司(CIC)は、中国のエネルギー・原料に関連する国営企業への参加を増やしている。これに対し米国は、財務相/国防総省/国家安全保障の代表者で構成される「対米外国投資委員会」(CFIUS)がコントロールを強化し、取引を規制している(※対中規制かな)。一方南の国同士は取引を増やしている。

<世界の戦略地政学システム-秩序と大国>

・グローバリゼーションは、地域規模・世界規模・大陸規模で展開する大国の対抗関係により組織される国際的な枠組み上に成立する(※国際機関の必要性かな)。その対抗関係が戦略地政学システムを生み出す。そこでは政治的・技術的・経済的・イデオロギー的要素と連携し、軍事的要素も重要になる。※何時もの抽象語の羅列。

○過剰軍備の世界
・世界の軍備支出は1.8兆ドルで、GDPの2.2%を占める。しかし僅か10ヵ国が75%を占め、米国36.5%/中国14%/サウジアラビア3.8%/英国3.5%/仏国3.5%/ロシア3.5%となっている(※世界各国の軍事支出の地図あり)。10年間で20%増加したが、これは東アジア/中近東/南アジアの再軍備が影響している。核兵器は大幅に削減されたが、9ヵ国が保有し、特別な地位を得ている。

・軍備支出は武器産業を活性化させている。上位100社の売上は4千億ドルを超え、雇用者数も450万人を超える。特に米国は、47企業で58%を売り上げている。また中国が軍事・テクノロジーで主要な大国になった。武器輸出も関心事で、米国が1/3を占める(※ロシアも多そう)。

○米国の戦略地政学システム
・米国は世界唯一の軍事大国である。その戦力投射能力で、世界のどこにでも介入できる。世界を6つの総合司令本部でカバーする。本国に110万人おり、さらに150ヵ国(?)と海外領土にネットワークを張っている。海外40ヵ国の800の基地に24万人がいる。それに諜報機関/ペンタゴンと契約している民間軍事会社の数十万人が加わる。

・このシステムは、同盟のネットワーク(NATOなど)と国家安全保障局(NSA)が操作するエシュロン・システムに支えられる。エシュロンは英国/カナダ/オーストラリア/ニュージーランドと共同運営する通信傍受システムである(※ファイブ・アイズかな)。これは中ロによる支配の確立の阻止、不安定な地域(カリブ海、サハラ・サヘル、中近東、アフガニスタン/パキスタン、東アジア、東南アジア)とサイバーベースのコントロールが目的である。

○パクス・アメリカーナの失敗
・米国は、奢り/単独行動主義/軍事介入主義により国際社会を無秩序にした。2000~18年で軍事に10.5兆ドルを使い、連邦政府債を増大させた。また国際刑事裁判所/対人地雷禁止条約/気候変動に関するパリ協定/UNESCOなどからも距離を置いている。数々の失敗と国内外の抵抗は、パクス・アメリカーナの失敗を表している。

<中国-新しい世界的大国>

・中国はこの25年間至上主義経済を適用し、毛沢東主義の孤立と後進性から抜け出した。この回帰は、世界の地政学的・経済地理的・戦略地政学を揺るがしている。

○中国の変容
・1978年中国は改革開放政策、1992年社会主義市場経済を開始する。これらには、共産党政権の維持、近代化、自国の利益を守る(香港・マカオの回復、南シナ海進出)の3つの目的がある。この政策により、中国は世界最大の輸出国、第2の経済大国、最大の工業国、最多の特許国、最大のエネルギー消費国になった。ザ・バンカー誌の銀行ランキングでは、上位4社が中国の銀行になっている。外貨準備も最大で、世界の40%を占める。不平等・不安定ではあるが、都市部中産階級の増加で経済成長し、生活水準を高めている。

○中国の台頭
・世界的多国籍企業500社中、中国企業が60社あり、日本より多く、英国と並ぶ。そこには銀行/エネルギー・鉱業/製造業/通信・サービスなどの会社が含まれる(※社名は省略)。
・13年間で123ヵ国/1.2兆ドルを直接投資している。これは全方位で行われ、先進国向けが60%で、シンジェンタ(アグリビジネス)/ボルボ/ピレリ/クラブメッド(バカンス)に投資している。これによりテクノロジーやノウハウを得ている。残る40%は南向けで、エネルギーを中心に、不動産・金融・流通・観光に投資している。※中国の対外直接投資の世界地図あり。投資額は米国/オーストラリア/英国/ブラジル/カナダの順かな。

○大陸と世界の大国
・2013年中国は「一帯一路構想」に着手する(※一帯一路の地図あり)。これは60ヵ国に跨る陸上・海上の流通路の近代化である。目的は3つある。
 ①東南アジア/中央アジア/南アジア/ペルシャ湾/ロシア/西欧/東アフリカに自国の流通路を確保し、米国の海上封鎖に対抗する。
 ②自国の経済成長を促進する流通路の確保。
 ③恩恵を受ける国との政治的・経済的関係を強化する。
・またこの構想には、自国が大陸規模・世界規模の大国である事を示す意図もある。中国には非西欧世界の指導国になり、世界秩序を変える目標もある。そのため地政学的・経済地理学的・財政的・文化的な様々な方法を動員している。

・2001年ロシアと「上海協力機構」(SCO)を設立した。これにアジア8ヵ国が参加している(※ロシア/中国/インドに挟まれる国々)。アジア開発銀行/IMF/世界銀行に対抗するため、2014年「アジア・インフラ投資銀行」(AIIB)を創設した。これには100ヵ国以上が加盟している(※英国の加盟が話題になった)。2016年ジプチに軍事基地を開設した(※紅海の入口で、米軍基地に隣接していたかな)。

第2章 新たな世界の生産システム

・グローバリゼーションは「デウス・エクス・マキナ」(機械仕掛けの神)として分析される。商品・資本・人間・情報の錯綜した束を単純化させる。しかしこれは一部を全部、水泡を海と錯覚させる事になる。有効な分析をするには、生産システムの概念を3つのテーマから分析する必要がある。
 1つ目のテーマは、富・経済成長・開発である。グローバリゼーションは二元的で偏り、緊張・危機を生じさせる。世界を持続させるには、連帯しかない。
 2つ目のテーマは、関係・相互作用・システムである。世界は急激に発展し、人や土地が関係を結んでいる。中長距離に広がり、関係・相互作用はシステムを作る。これが国際分業である(※難解)。
 3つ目のテーマは、行為者の役割と活動である。空間・地域の研究のない地理学はない(※地理学は空間・地域が大前提)。行為者・戦略・行為者の活動のない空間・地域はない。地理学者がこれらを研究する事で、より世界を理解できる。

<二元的な世界-富と不平等>

・富を作る事は文明の関心事である。それは文明が、人間の社会的・経済的・文化的な要求に応える必要があるからだ。今の世界はかつてない程豊かだが、かつてない程異なる要求が並存し、偏りが存在する。不平等は規模を測れない程で、持続性・連帯がないこの経済成長モデルは、緊張・危機の要因になっている。

○世界の富
・世界は豊かになり、この25年間で人口は38%増加し、GDPは160%増えた。世界はバランスを取り戻しており、GDPの割合で南の国は25%から40%に増やし、北の国は75%から60%に減らした。しかしそれでもノルウェー人はブルンジ人の470倍も富を生んでいる。
・作られた富はGDPで測れ、金融資産・不動産資産として残る。世界の富の69%を北が持ち、蓄積・発展・支配のトリプティック(三連祭壇画)を成し、優位に立っている。米国単独でもアフリカ全体の27倍もある。

○不平等の急激な拡大
・グローバリゼーションを享受しているのは、裕福な階級である。4億人(人口の8%)が世界の富の86%を持ち、その中の超エリート(人口の0.7%)が富の45.6%を持つ。一方下位73%は富の2.4%しか持たない(※存在しないようなものだな)。新興国の中産階級(9億人)が増加しているが、彼らは富の11.4%しか持たない。

・この不平等は1980年からの新金融体制による。2016年金融資産は128.5兆円に達するが、上位10%が79%を持ち、下位50%は1%しか持たない。これはアンシャン・レジームの時代の構造と云える(※「2世紀前と変わらない」かな)。これは社会的・移動性・政治的緊張を見れば、驚く事ではない。これは倫理的・経済的・社会的に非効率である。国連は2030年までに貧困(8.5億人)を撲滅するのを目標にしているが、難しい。

○地域の二元性
・この不平等はどんな地理レベルでも地域・社会を構成する要因になっている(※「不平等はどんな地域・社会でも存在する」かな)。13の都市に富豪の1/4がいて、50の都市に半数がいる(※英国の富の偏在を示す地図あり)。彼らは巨大都市の空間再構成の中心になっている(※難解)。

・彼らは北だけでなく南の大都市(メキシコシティ、リオデジャネイロ、サンパウロ、ラゴス、上海など)でも、民間の兵士に警備された「ゲーテッド・コミュニティ」に住んでいる。大ロンドンには、ウェストミンスター公爵/インドの資産家/新興の億万長者など、裕福な100人の内56人が住む。タックスヘイブン(マン島、ジャージー島、ガーンジー島、アイルランド)を除き、古くからの工業地帯(ミッドランド、ヨークシャー、北西部など)は格下げされた(※格下げ?住んでいない?)。これはここ1世紀の構造変化を証明している。ブラジルにおいても、サンパウロ/リオデジャネイロが、ブラジリアなどより遥かに重要になっている。この社会・空間の二元性は、南で一層顕著である。

<北と南の区切れ目-投資と開発>

・1960・70年代に現れた開発の問題と決定要因(投資、国策、人材養成)は、地理を読み解く鍵になる。社会の進歩と民主主義は、人類が挑戦するために無視できない武器である。しかし道筋は多様化し、南北の断絶は鮮明になった。

○生産のための設備投資
・長期の開発のためには最低限の設備が必要である。国・公共団体/企業/世帯による設備投資は、様々なレベル(固定資産、機械、設備、エネルギー、インフラ、学校、病院、住居など)の地理的指標になる。

・世界における投資はGDPの25%を占める(※世界各国の設備投資の地図あり)。南アジア33%/東アジア31%/東南アジア28%と高いが、西アフリカ/南部アフリカ/カリブ海は18%と低い。直接投資の65%を北が占め、新興国/湾岸諸国による。残り35%が南である。これは。カタール/アラブ首長国連邦/フィンランドなどは炭化水素の利益で、国民1人当たり2.5万ドルを運用している。一方ブルンジ/ジンバブエなどは20ドル程度である。これは低開発国における、深刻な遅れ、社会的・地域的亀裂(都市と地方、内陸と沿岸など)を物語る。幾つかの国では首都でさえ、電力/飲料水が供給されない。

・この地理は政治的で、公共・民間/国内・国際の主体の戦略によるからだ。エリートの怠慢で、国は縁故採用や汚職の中で利益を管理(?)する争いになっている(※利権争いかな)。少数の支配階級/特権階級/一部の民族の短期的利益に奉仕している。開発の経済地理学的問題は、民主主義の機能などの地政学の最重要問題により解決される。※難解。

○社会の発展と貧困
・1990年国連開発計画(UNDP)が「人間開発指数」(HDI)を考案する。これは社会・経済・人口から、人間開発を評価する総合指数である。これはインド人学者アマルティア・センの研究を基にしており、開発/民主主義/人の使命/女性の地位/社会の進歩を連結している。アジアではあらゆる縮尺で不平等・開発の地理学が存在する(※アジアの地域別の人間開発指数の地図あり)。インド/中国などの大国は国内に亀裂があり、グローバリゼーションに組み込まれた地域(沿岸部、主要都市)と辺境で対立がある。中国では北京とチベットで45%の差があり、インドではケーララとオリッサで30%の差がある。

・生産設備の脆弱さと、それが土地に与える影響に重点を置いた指標が「多次元貧困指数」(MPI)である(※色々な指標があるな)。これは社会人口学的指数(子供の死亡率、栄養、就学率)と設備レベル(電気、飲料水、保健衛生、住居の床、燃料、不動産の所有など)を考慮し、貧困を評価する指数である。
・MPIにより世界の25%(14.5億人)が貧困である事が分かった。また3つの極、南アジア(48%)/サハラ以南(36%)/東アジア(10%)も見えてきた(※東アジアは北朝鮮?)。また中心部と辺境部で偏差も見られる。アフガニスタンではカブールは25%だが、カンダハルは72%である。

<国際分業-統合とヒエラルキー>

・グローバリゼーションと共に生まれた国際分業は、増々世界に広がっている。資本の可動性/通信の発達により、多国籍企業は国際分業の構築が可能になっている。この統合(?)は地理的に顕著で、機能的に巧妙で、歴史的に柔軟なヒエラルキーの論理の上に成立している(※難解)。そして当事者が自分のパートを演じている。

○マークス・アンド・スペンサー
・英国の大手流通会社マークス・アンド・スペンサー(M&S)は、世界59ヵ国に進出している。その中心は英国で、ロンドンの仕入センターが世界のサプライチェーンを管理運営している。そして2つの部門があるが、それぞれ別の論理で国際分業している。

・農業加工品部門は35ヵ国/579工場で18.4万人を雇用している。従業員の63%が英国関連産業で、文化が近く、地理的な理由から中心的な役割を担う。それを欧州19ヵ国(従業員の23%)が補充する。そして第3サークル15ヵ国(中国、南アフリカ、タイ、ケニア、ブラジルなど)が、熱帯の生産物(茶、コーヒー、米、果物など)を供給する。

・繊維・衣料部門は28ヵ国/616工場で59.5万人を動員(=雇用?)している。工場管理法「テーラー・システム」を導入しているため人件費は決定的で、そのため従業員の92%に当たる第3サークル(バングラデシュ、中国、インド、カンボジア、スリランカ、ベトナムなど)が重要になる。
・繊維産業は投資も技術も要求されないため、地理的に流動的である。中国沿岸部の賃金が上がったため、ベトナム/カンボジアに移転した。しかしバングラデシュには及ばず、そこには強権的な地方エリートがいて、2013年8階建商業ビルが崩壊した事件が起きている。ここでは労働者の権利が踏みにじられている。

○インドの情報科学サービス
・インドにおける情報科学サービスの専門化は、国家・地域の自律性の余地(?)を証明する。これは世界における技術・社会の細分化、通信における信頼できるネットワーク、豊かな労働力と国・地域の自発的な戦略で成り立っている。※難解。
・しかし全ての地域が同様ではなく、カルターナカ州など南部4州がサービス/ソフトウェアの83%を輸出し、ベンガロールなどの主要都市に集中している(※インドの情報処理サービスの地図あり)。これは偶然ではなく、歴史や州の戦略(計画、教育、インフラ、予算、労働法など)、多国籍企業のメリットなどに由来(※依拠?)する。

・インドのIT産業はGDPの10%、輸出の25%、400万人を雇用する(※人口は14億人だが)。タタ・コンサルタンシー・サービシズは39万人、インフォシスは20万人、HCLテクノロジーズは12万人を雇用する大企業である。これらの企業は、欧米巨大企業のオフショアや人員削減のための海外委託の需要を享受している(※アウトソーシングだな)。インフォシスの売上は、米国62%/欧州22.5%に対し、インド3.2%である。
・欧米の企業は、業務そのものもインドに移転している。BNPパリバ/ソシエテ・ジェネラルはムンバイ/チェンナイで6500人を雇用し、キャップ・ジェミニは2.7万人を雇用している。オフショアリング/賃金競争が、北のエンジニア/特殊技術専門者を脅かしている。

<農産資源、鉱業資源>

・古代から農業・鉱業・エネルギーの地理学は、経済地理学的・地政学的対立の中で本質的な役割を担った。国家・多国籍企業の戦略・市場価格に、何十億人もの生活が掛かっている。資源には限りがあるため、持続可能な管理が重要である。

○大輸出国
・農産物・鉱物の価値は25年間で2倍になった。北の供給は53%から40%に落ち、南に依存している。これは中国の飛躍や開発による。穀物(トウモロコシ、小麦など)/木材/水産物/工芸作物(サトウキビ、綿、コーヒー、カカオ、落花生、カシューナッツ、花卉など)は鉱物と同様にグローバル化された(※世界各国のコーヒーの輸出入量の地図あり)。

・各国の原料(?)の輸出は、その国の資源と開発に掛かり、その国の経済の多様性を決定する。2000年からの20年間で工芸作物の価格は2.5倍になった。しかし2013~19年で30%下落する。南の国は原料に大きく依存している。中国はこれを確保するためアフリカ/ラテンアメリカ/ロシア/中央アジアに投資し、世界市場に大きく関与している。

○アメリカの支配力
・農産物の輸出で、欧州が40%、北米が16%を占める。これらは、潜在能力/農業関連産業・科学・テクノロジー(遺伝子組換え)/支援・補助で支えられている。これは南の脅威になっている。米国は生産額を25年間で倍にし、中国/インドに次ぐ市場の主要なアクターである。
・米国のアイオワ/イリノイ/インディアナなどは条件に恵まれている(※米国の大平原の地図あり)。その平原で小麦・トウモロコシ・大豆が作られ、一部では牛・豚が飼育される。近年はダコタ/ミネソタに広げられている。しかし西側周縁部(ネブラスカ、カンザス、テキサス北部)でのオガララ帯水層の過剰開発で、持続性が問題になっている(※砂嵐の問題もあるかな)。農業関連産業コンプレックス(※複合体)の利益は、そのロビー活動で擁護され、世界戦略に大きな影響を与えている(※仏国も意外と農業国)。

<超工業化した世界の製造業>

・歴史的に見て、生産システムが数億人の労働者を雇い、価格的・量的にこれ程の工業製品を生産する時代はない。仏国の学者が「超工業化」と称したが、国際分業により新興国に広がっている。

○世界の製造業
・10年で工業生産額は46%増加した(※世界各国の工業生産額の地図あり)。先進国が危殆に瀕している間に、アジアが経済成長の82%を集中させた。2013年中国は米国を抜き、世界一の工業大国になった。世界の生産額には偏りがあり、10ヵ国が世界の70%、20ヵ国が83%を占める。
・世界の生産活動はオフショアリングしており、欧州周辺(ポーランド、スロヴァキア、ルーマニア、トルコ、モロッコなど)/東南アジア(ベトナム、フィリピン、タイなど)/南アジア(インド、バングラデシュ、パキスタン)/中央アジアに拡散している。
・2000~17年で世界の工業従事者は40%増加した。北米・欧州は9700万人から8200万人に減り、高付加価値の分野と戦略機能(本社、研究開発など)に特化した。一方南は3.7億人から5.8億人になり、2.1億人増やした(※5割以上の増加だな)。

○世界の自動車生産
・自動車は20世紀初頭に始まり、世界に広がったが、南にはまだ巨大な需要がある。市場は巨大多国籍企業(トヨタ、フォルクスワーゲン、現代、ゼネラルモーターズ、フォード、フィアット、ルノー、プジョー、タタなど)で組織される。
・グローバル化されているが、10ヵ国で78%、15ヵ国で87%が生産される(※世界各国の自動車生産台数の地図あり)。2000~18年で生産台数は4100万台から7100万台に73%増えたが、欧州は40%から23%、NAFTAは20%から7%に減らした。アジアは1/3から62%に増やしたが、中国が33%で、日本11.7%/ドイツ7%を大きく引き離している。

・生産システムの技術・テクノロジー(信頼性、汚染対策、自動車制御装置、電気自動車など)は重要で、格付けの要素になる。そのため中国の東風汽車/吉利汽車やインドのタタ・モーターズは西欧の自動車メーカー/備品製造会社を買収している。また共同企業(上汽通用汽車、一汽大衆など)を増やし、主要都市の特定産業クラスター(企業、研究機関、公共機関、専門機関などの産業集積地)の発展を後押ししている(※例が欲しい)。

<イノベーション-力の独占>

・研究・革新(イノベーション)・科学技術は、国家・企業の強さの核心である。希少で戦略的な機能(?)は局地化しており、世界の大都市の特別な地域(クラスター、テクノポリス)に存在する。しかしこのパワーが地球の構造を変化させる。

○世界の研究開発
・希少で戦略的な機能である研究は局地化している(※これは非グローバル化だな)。上位5ヵ国で73%、15ヵ国で85%を占める(※世界各国の研究開発費の地図あり)。米国28%、中国25.6%で接近している。そのため監視活動/非公開/産業スパイ/特許戦争などの激しい競争が起きている。イノベーションは、普及・専有/競争・協力の対立にあり、その克服のため大都市局地化し、高い能力で流動的に連携する労働市場に相応しい(※難解)。

○米国、世界一の拠点
・科学・イノベーションは米国支配の柱の1つである。研究開発費の1/4をカリフォルニア州が占めるなど、10州に64%が集中する。そこはアイビーリーグ8校/シリコンヴァレー/ロサンゼルス/ニューヨーク/ボストンなどに支えられ、GAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)などの世界的な企業を生んだ。

○システムとネットワーク
・イノベーションは直ぐに消えず、戦略的役割の支えになる。例えば情報科学/インターネット/クラウド・コンピューティングは、サーバー/データセンターの飛躍に支えられる。大企業は自社サイトを持つが、世界的な下請企業(グーグル、アマゾン、IBMなど)が銀行/情報科学/通信/メディアなどの外部委託に応じている。

・データセンターは3600あるが、米国に42%、西欧に33%ある。この分布は、根深いヒエラルキーと地域の断絶の反映である。ヒエラルキーの上層のメトロポリスはデータセンターを特権的に受け入れている(※日本でも東京・千葉が多いらしい)。
・データ・音・画像の急増は、大容量のネットワークに支えられる。中でも海底光ファイバーが90%を担う。インターネットのガバナンス(組織、運用、制御、管理)の米国による歴史的な支配は、欧州・新興国から問題視されている(※そんな話あったかな)。

<世界の金融システム-資金供給、それとも投機>

・経済・社会・地域に資金を供給してきた金融システムは肥大化し、投機的になっている。1980・90年代の少数の市場支配集団の利益のための規制緩和・規制撤廃は、2007年1929年以来の金融危機を起こした。

○金融惑星
・金融市場(株式、債券、通貨、原料など)は土壌を持たないが、政治的・法的・技術的・社会的に地域に根を下ろしている(※原料とは商品取引だな)。例えば公社債と消費者債務の総量は250兆ドルでGDPの320%ある。債務者の支払能力が疑われると、山は崩壊する。この市場に公共(国家、規制・監督機関、中央銀行など)と民間(銀行、保険会社、年金基金、ヘッジファンドなど)が参入しており、その影響は何十億人にも及ぶ。

・世界には80の証券市場があるが、10の取引所で時価総額の75%を占める。ニューヨークのNYSE/NASDAQで世界の40%を占める。南の金融センター(※取引所?)も40%を占め、華々しく成長した。
・農作物・石油・鉱物原料では、クアラルンプール/シンガポール/シドニー/ウィニペグなどの1大陸・1原料に特化したセンターが増加した。しかし欧米の金融センター(ロンドン、ニューヨーク、シカゴ、パリ、ロッテルダム)が依然優位にある。

・市場ではトレーダーが相互依存し、取引時間に儲ける事になる。そこでインターコンチネンタル取引所のロンドンICE(※ブレンド原油の取引所)は、100μ秒の時間を特定・追跡する原子時計に接続した。※高速取引は時々聞く。
・外国為替では、欧米の10の銀行(シティグループ、JPモルガンなど)が63%を占める。一方米国はドルの力で域外管轄権のある連邦海外腐敗行為防止法(FCPA)/国際緊急経済権限法(IEEPA)を押し付け、利益を確保している。そのためドルを用いる全ての商取引が、米国の条約や訴訟・罰金の対象になる。

○ロンドンのシティ
・ロンドンのシティに、大英帝国時代からの金融センターが置かれている。そこにはインフラ(イングランド銀行、証券取引所、クリアリングハウス、調整局)、金融機関、格付け機関、会計監査事務所、法律事務所、専門職協会がある。そこで45.5万人が働くが、彼らの60%が20・30代で、1/3が外国人で高収入である(※稼いだら引退かな)。情報交換し、戦略的決定をしている。
・また地理的に機能による専門化が見られ、金融サービスが中央、企業法務が西、保険・年金基金が東に集積している。しかし飽和し、不動産価格が高騰したため、一部の金融グループは東のドックランズのカナリー・ワーフに移転した。※ブレグジットでどうなるのか。

<多国籍企業-グローバリゼーションの主要な推進者>

・本当の多国籍企業は第2次グローバリゼーションで生まれた。彼らは経済・資本だけでなく、文化でも中心的な推進者になっている。しかし真のワールドカンパニーは存在せず、世界の支配は向こう見ずな行為であり、西(※北?中国を意識し西にしたのか?)の支配は揺らいでいる。

○多国籍企業500社
・多国籍企業上位500社は33ヵ国が独占し、売上は32.7兆ドルで、7千万人を雇用し、国際貿易/海外直接投資の大半を動かしている(※多国籍企業500社の世界地図あり)。北が319社で、米国(125社)/日本/ドイツ/仏国/英国と続く。南の企業は181社で、中国(122社)/ブラジル(8社)/インド(7社)/ロシア(4社)などとなっている。上位20社は、米国8社/中国3社で、両国は競争相手で、これは数十年続くだろう。

○立役者達の活動と国土
・彼らは国家の枠組みから少しもズレていない。それは国家が国際化のスプリングボードだからだ。出身国は、最初の市場で、投資・生産・研究の最初の中心地である。どの国も経済地理学・地政学の点から、彼らに無関心でいられない。政治・経済の指導者は彼らと共生関係を築き、外交政策・戦略に彼らの利益の保護・促進を含める。
・そして多国籍企業は、戦略に市場の規模/政治文化・法律文化/経済構造/労働に関する慣習/消費者の好み/利用可能な手段・能力/インフラなどの価値を持たせようとする(※難解。例が欲し)。市民社会(組合、非営利団体など)が明白な脱線・悪癖に対し、民主的な対抗勢力になっている(※これも例が欲しい)。

・多国籍企業の国際化は決定的・最終的ではない。なぜなら市場からの撤退が見られ、、不安定だからだ(※基本的に自由競争)。2007年危機の後、西の銀行は完全あるいは部分的に脱グローバル化した。

○アラブ首長国連邦のエティサラート
・1971年英国が退去し、7つの首長国からなるアラブ首長国連邦(UAE)になる。炭化水素(※日本だと石油・天然ガスだな)を基礎に、港・空港/基幹産業/金融/不動産/観光は多様化した(※近代化かな)。

・1976年に誕生したエティサラート(エミレーツ・テレコミュニケーションズ・コーポレーション)は電子通信ブームをもたらした。国内市場が飽和したため国際化し、17ヵ国/1.6億人の利用者を持つようになった。しかし同社もカントリーリスクから、スーダン/タンザニアから撤退した。今は3つの拠点、中東(サウジアラビア、エジプト)/南アジア(パキスタン、アフガニスタン、スリランカ)/アフリカ(ナイジェリア、モロッコ)の周辺に展開している。
・特にモロッコのモロッコテレコムの株を取得し、サハラ砂漠以南への繋がりを確保した(※サブサハラ直接ではないんだ)。モロッコテレコムは9ヵ国(モーリタニア、マリ、ニジェール、ブルキナファソ、コートジヴォワール、トーゴ、ペナン、中央アフリカ、ガボン)に進出している。これはモロッコ一帯の地域大国の新戦略(技術・商業協定、移動の管理)の一環である。この例は、私達の視線を逸らしてくれる。南と南と云う、これからの多極主義の新戦略を証言している。

<海外直接投資(FDI)>

・海外直接投資は多国籍企業により、海外企業の買収や会社の設立として行われ、グローバリゼーションのバロメーターになる。彼らの地勢図は、開放度/土地の魅力/時宜の選択などの要因dに左右され、あらゆるレベルで統合・排除の論理を反映する。※最初の紹介文は常に意味不明。

○世界の直接投資(FDI)
・世界の直接投資額は、1990年2.2兆ドルから、2018年33.6兆ドルの15倍になった。工業が1/4を占め、金融/サービス/商取引も成長した、。出資国は少なく、10ヵ国で71%、20ヵ国で88%を占める。米国20%/オランダ7.5%/英国5%などである。中国と香港を合算すると12%になる。

・一方受入国は分散し、10ヵ国で62%、20ヵ国で78%である。米国が21%で、英国/ドイツ/シンガポール/スイス/仏国などとなる(※受入国の世界地図あり。日本が余りに小さいので驚く)。巨大市場であり再輸出(?)の生産能力を持つ中国は11%で2位である。多国籍企業が資本を置くタックスヘイブン(ケイマン諸島、ヴァージン諸島、キプロス、ルクセンブルク、シンガポールなど)を除けば、国の経済に大きな影響を及ぼしている。

○ベトナムのケース
・1450億ドルを受け入れたベトナムは、地理的・経済的・社会的影響の好例である。直接投資の70%がホーチミン/ハノイに行われた(※ベトナムの地域別直接投資の地図あり。日本も本社は東京に集中しているが)。これにより空間の差異が強められた。内陸の山岳地帯や中央部沿岸は置き去りにされている。タイにおいても、資源・エネルギーを大量消費するバンコクに直接投資が行われた。
・ベトナムは直接投資により、農業人口は15年間で65%から42%に落ち、工業は12%から24%に増えた。輸出の82%が加工製品(電機、電子機器・部品、繊維、自動車部品など)になった。中国/韓国/日本/台湾から部品を輸入し組み立て、米国/欧州に再輸出している。

・ベトナムへの直接投資は、1986年からの刷新政策(ドイモイ)で可能になり、1992年中国/1994年米国との関係正常化で実現した。1995年ASEAN、2006年WTOに加盟している。ベトナムの人口は9600万人だが、41%が25歳以下だ。そのため毎年100万人の雇用を創設しなければならない。※人口が増えれば、自然に需要が増え、雇用も増えると思っていたが。意図的に雇用を増やさないといけないのか。想像と違った。

<輸送-結節点と網のシステム>

・人・商品・資本・情報の移動も重要である。これらは交通密度/相互連結/効率/輸送費の制約を受ける。世界の網・結節点は不均等で、足並みは揃っていない。

○移動の急激な増加
・物流の増加により交通・通信は30年間で175%増加した。しかし物資補給システムは海底ケーブルの切断/嵐/火山爆発/紛争などで簡単に麻痺する。人間の距離=時間を制御する能力は、選択的で序列化されている(※「様々な輸送手段がある」かな)。国・地域でムラがあり、過統合と過除外が見られる。北米/東アジア/西欧の3地域が物流の74%を占める。輸送サービスは、10ヵ国で65%、20ヵ国で80%を占める。一方シンガポール/香港/アラブ首長国連邦が再輸送の拠点になっている。

○ロッテルダムの変貌 ※この話は面白かった。
・ロッテルダムは海運業の変貌の影響を受けた。ロッテルダムは北欧州レンジ(仏ル・アーヴルから独ハンブルク)にあり、世界有数のライン川の河口港である(※ロッテルダムの地図あり)。19世紀以降、エームハーフェン/ワールハーフェンが建設され、港は下流に移行する。目的は物流・工業の拡大、用地の入手、大型船の入港だった(※日本も臨海工業地帯が建設された)。さらに1950年以降、ボトレック/ユーロポート/マースフラクテ1・3と建設が進む。今はマースフラクテ2が計画されている。※この話は知らなかった。

<国際観光システム-楽しむための移動>

・国際観光は19世紀西欧で生まれ、大衆化し飛躍的に発展している。この要因に、交通手段の革新、生活水準の向上、余暇時間の増加がある。国際観光は遠距離になり、多様化が進んでいる。

○国際観光
・25年間で国際観光者は2.6倍(2018年14億人)、観光収入は3.5倍(1.7兆ドル)になった(※国際観光の世界地図あり)。受入地は、欧州・地中海/アジア・太平洋/北米・カリブ海/大都市/海辺・山岳のリゾート地である。しかし多様化し、オーストラリアの砂漠/アマゾン/ヒマラヤ/極地なども目的地になっている。

・観光は地域の経済(建造物、公共土木工事、交通、宿泊施設、レストラン、工芸など)を刺激する。一方で空間・土壌・水などの環境問題や国土整備(※乱開発?)の問題を引き起こす。この分野(※国際観光?)は国家/地域団体/私企業の後押しで、競争が激化している(※誘致?)。ホテルの客室は上位5社が45%を占める。また観光は経済/地政学(テロなど)の影響を受け、不安定であり(※新型コロナもあった)、買春ツアーなどの正道を外れるものもある。

○バリ島、天国か蜃気楼か
・バリ島はジャワ島の東にある小さな火山島である。1970年代からのマスツーリズム(大衆による国際観光)により変貌した。価格/農耕風景/熱帯気候/独自文化(建物、寺院、棚田など)の魅力をアピールする。観光客は、2008年190万人から2017年520万人に増加した。アジアが44%、オーストラリアが1/4、欧米が21%である。島全体の収入の40~50%を観光が占め、豊かな地域になった。
・海水浴/サーフィン/ヨット/ダイビングは局地化している(※バリ島の地図あり)。州都デンパサールは国際空港により、バリ島と世界を繋ぐ。歴史的な南部と東部の海水浴場は評価されている。しかし近年は新しいアクティビティ(トレッキング、カヌーなど)を中央部/北部に広げている。しかしマスツーリズムによる遺跡の劣化、緊張の拡大(窃盗、麻薬など)が懸念される。実際2002年/2005年にイスラムテロが起き、来訪者が減少している。

第3章 グローバリゼーションの中の地域

・グローバリゼーションは世界を画一化させるが、一方で地域格差を生じさせている。それには2つの理由がある。1つは、グローバリゼーションが地域毎の自然・社会・経済・文化の少しの違い(資源への近さ、人件費、社会保障、設備レベル、安定性など)を最大限に利用し競争するプロセスだからだ。これにより中心地/周辺部/周縁部のヒエラルキーが形成される。
・もう1つは、地域は政治的・経済的・社会的に自立し、自分達の軌道(※針路・方向かな)を決定する当事者である。彼らはグローバリゼーションへの統合の仕方を、常に練り直している。そのため中国/アラブ首長国連邦に見られるように、論理は不安定で変わりやすく、多極的で対立が見られる。グローバリゼーションは政治的・地政学的プロセスで、私達を集団的選択に立たせる。

<大都市化-メガロポリス(超巨大都市)、メトロポリス(大都市)>

・都市化により空間・地域・社会は根本から変化している(※近代化かな)。中でもメトロポリス(大都市)はグローバリゼーションを指揮・推進する中核になっている。その大都市は世界的な力と輝きを持ち、周囲の影響圏を組織し、活性化している。

○世界の大都市
・都市化・大都市化は注目されている。30年間で都市人口は23億人から43億人になり、人類の56%が都市に住んでいる。人口が100万人を超えるは579都市、500万人を超えるのは85、1千万人を超えるのは34である(※世界の大都市の地図あり)。東京3800万人(※首都圏だな)、デリー3000万人、上海2700万人、メキシコシティ2200万人となっている。

・しかし都市は同質でない。グローバリゼーションは、世界的大都市により支配され、序列化された都市システムの上に成り立っている(※大都市が支配しているとは思わないが)。その大都市は地政学的・政治地理学的な影響力や文化により、その組織・推進・調整の役割が地球規模で決定的である。
・ニューヨーク/ロンドン/上海/東京/パリ/ドバイ/シンガポールは際立っている。その格付けは、広い影響圏を惹き付けるキャパシティーを持つ。これらの都市は多国籍企業の本社が集中している。そのため9.11テロの対象は、ニューヨークのワールドトレードセンターになった。

○シンガポール-大都市の開発と戦略
・都市国家は発展と戦略における国土の整備・改造を象徴する(※難解。「都市国家は戦略を持って国土を整備・改造する」かな)。シンガポールは1819~1959年英国領で、世界の主要なマラッカ海峡を統制している。数十年間で人民行動党により繁栄する国になった(※独立以前から重要拠点だったと思う)。一党制で、大半が中国系である(※華僑かな)。強制的・専制的ではあるが、効率的・権威的・自由主義的な資本主義モデルを取り入れている。
・シンガポールは集中的土地計画により、長期的・発展的な戦略を取っている。国土は59の島から成り、面積は719Km²と限られる(※シンガポールの地図あり)。そのため南西部は埋立で面積を24%増やし、空港・港・工業団地を建設した。これらが同国を世界拠点の1つにしている。経済活動を郊外に移したため、歴史地区とその周辺の住宅地の変貌が容易になった。

・同国の脱皮は、土地をかき集めた事による。亜大陸のレベルでは、隣接するマレーシア/インドネシアの生産的な後背地の創設を促進した(※かき集めたと云うより、「後背地のリーダーになった」かな)。これは1989年からの「共同開発拠点」として制度化された(※説明が欲しい)。大陸レベルでは、同国はフィリピンからインドに広がる移民流入圏にあり、そこから労働者を受け入れ、国民の30%になっている(※高度人材の受け入れが有名かな)。

<埒外に置かれた周縁部-統合と過除外の間>

・埒外の世界(周縁部)は、2つのグループに分類できる。第1は、人間が暮らせる限界の地域である。しかしそこは将来価値が出るかもしれない。第2は、困難・欠乏状態にあり、発展に無縁の地域である。この地域はグローバリゼーションに、不法に取り込まれている事が多い。

○グリーンランド-渇望される極地
・グリーンランドは面積210万Km²の島で、最高峰は3733mで、80%を氷床に覆われ、人口は5.6万人である(※ミニ南極だな)。住民の多くは「東」(西海岸)に住む(※暖流が当たるかな)。首都ヌークに1/3(1.8万人)が住む。10世紀ヴァイキングが住み着くが、15世紀に放棄される。今は13世紀に北西から移動してきたイヌイット(※カナダ先住民)が大半である。1814年デンマーク領になるが、2009年自治権が強化され、デンマークの自治領になる(※詳細省略)。

・経済は本土からの補助金と漁業による。そのため1982年漁業水域を守るため住民投票でEEC脱退が決まる(※同様に英国も部分脱退が可能だったかな)。しかし近年の鉱産物ブームと地球温暖化で、資源(石油、天然ガス、ウラニウム、レアアース、金、ダイヤモンド、鉄、亜鉛、鉛。※何でもありだな)が注目される(※米国/中国によるグリーンランド買収の話があった)。欧米/中国が採掘権を得ているが、生産費用が負担になっている。

○サハラ・サヘル-圧力下の辺境
・サハラ・サヘルは南北3千Km/東西5.5千Kmの辺境の地で、15ヵ国が含まれる(※サハラは西サハラ/モロッコ/アルジェリア/リビア/エジプトの5ヵ国、サヘルはセネガル/モーリタニア/マリ/ブルキナファソ/ニジェール/ナイジェリア/チャド/スーダン/南スーダン/エリトリアの10ヵ国かな)。地中海沿岸とサハラ砂漠以南に挟まれるが、古代からグローバリゼーションに組み込まれている(※グローバリゼーションは大航海時代以降では?)。この地域は砂漠化が進んでおり、緊張下に置かれやすい。人口爆発/平均年齢の低さから、経済成長が望まれる。人口飽和/農地開拓(灌漑の拡大、土地囲い込み)/土地買占めにより人口の広がりが妨げられている(※局地集中か)。また遊牧民と定着民の土地紛争も見られる。爆発的移動(都市への人口移動、移民、国内難民)の問題があり、農業と鉱業のレント収入に依存し、不安定である。

・これらの要因は、国家の脆弱性/伝統的背景/民族・宗教の政治利用/列強による干渉によって悪化する。強権的政府の腐敗は、発展を妨げている。地域システムは属地細分化に向かっている。公的財源/土地/水/鉱物資源/輸送のコントロール/国際援助が渇望される。そのため利益団体/カルテル(企業連合)/私兵/犯罪集団の対立が火種になっている。この地域が爆発寸前でも、属地性の分析では、入れ子となった異なる縮尺を援用すべきだ(※難解)。スーダン/中央アフリカ/リビア/マリ/ナイジェリアの危機が国際的規模であっても、内部・局地・地方・国内の地政学で説明される。※難解な文章が続くが、こんな内容と思う。

<麻薬-グローバル化したシステム>

・麻薬の生産・不正取引は、経済地理・地政学・公衆衛生において注目される。これは全くグローバリゼーションに組み込まれている。取引は犯罪組織の手中にあるが、その規模により経済活動や行政の世界にも浸透している。

○世界的組織
・ここ30年間で麻薬の生産量は急増している。麻薬(アヘン、モルヒネ、ヘロイン、コカイン、大麻、マリファナ、カートなど。※一杯ある)は、モロッコ/コロンビア/三角地帯(タイ、ミャンマー、ラオス)/クルディスタン/レバノンの農民が生産している。彼らは他に経済手段を持たない。近年はアンフェタミン/エクスタシィなどの合成麻薬も作られている。麻薬の使用者は3億人で、北にも南にもいる。

・取引は三合会(中国)/カルテル(ラテンアメリカ)/やくざ(日本)/マフィア(米国、イタリア、ロシア、アルバニア)などの国際犯罪組織が行っている。各国は表向きは防止対策を取っているが、幾つかの国(特にメキシコ)では税関・警察・軍隊などが不正を行っている。ギニア・ビサウ/リビアなどは「麻薬国家」と呼ばれている。マネーロンダリング対策では、金融システムの不透明さとタックスヘイブンの問題がある。

○コカイン
・コカイン(コカノキ)はアンデス山脈が原産で、1800万人が使用している(※アヘン/コカインの輸送ルートの世界地図あり)。コロンビア(17万ha)/ペルー(4万ha)/ボリビア(2.5万ha)が3大生産地である。この価値は、輸送段階で跳ね上がる。生産地では1Kg当たり2700ドルだが、サヘル中心都市で1.6万ドル、マグレブ(※北西アフリカ)で2.5万ドル、欧州で5万ドルと168倍になる(※生産地はアフリカ?)。南米から米国へのルートには、陸路と海路(カリブ海の島国)がある。コロンビアのカルテルは解体され、メキシコのカルテルに自由(?)が残った。欧州には、西アフリカ→サヘル→サハラ→地中海のルートが増えている。麻薬の密売は、カリブ海地域/サハラ・サヘル地域を経済地理・地政学的に不安定にしている。

○アフガニスタン-低開発、戦争、アヘン
・ケシ(アヘンの原料)はアジア(ミャンマー、ラオス、パキスタン)や米大陸(メキシコ、コロンビア、グアテマラ)など49ヵ国で栽培され、生産量は7800トンだった。栽培面積はアフガニスタンが3/4(32.8万ha)を占める。この栽培には、土地/労働力などが条件になる。大土地所有者が土地の賃貸料を、ヘロイン(※アヘンを合成したもの)の価格で変動させるため、農民の収入は僅かだ。3州(ヘルマンド、カンダハル、バードギース)で60%、10州で90%が栽培される(※アフガニスタンの地図あり)。
・国連薬物犯罪事務所(UNODC)は、アヘンの市場価格(※末端価格かな)を14億ドル(GDPの3%)と見積もっている。アフガニスタンは1979年以降、紛争が絶えない。これによる富を経済的エリート/武装民兵が享受している。

<米国-議論に付される大国>

・米国が最強国である事に変わりないが、指導力は低下し、同国のエリートには見過ごせなくなった。多くの人はメード・イン・アメリカで利益を出せない事に気付いた。これは米国が世界的ダイナミズムにより不平等に変化させられ、統合されたからだ(※グローバリゼーションへの統合だな)。

○再構成と国土の危機
・米国は広大な国土と資源に恵まれ、その生産・社会・国土構造を絶えず立て直し続けた。この資本・住民の可動性による可逆性は、危機的状況の地域(ラストべルト、アパラチア、オールドサウスなど)と活況のある地域(大都市、カリフォルニア、フロリダ、テキサスなど)の象徴的な場所で見られる(※テキサスはタックスヘイブンみたいだな)。
・不平等・貧困・暴力・人種差別に苦しむ人がいる。1980年代から白人中産階級がオフショアリングや実質賃金の停滞に直面している。2016年「アメリカ・ファースト」(単独主義、孤立主義、アイデンティティ危機)を掲げるトランプが大統領に当選する。

○地域とグローバリゼーション
・この米国の多様性は、パスポートの交付から分かる(※米国の州別のパスポート交付率の地図あり。色々な着眼点があるな)。北東部のニュージャージー/マサチューセッツ/ニューヨークは40%を超えるが、オールドサウス(アラバマ、ウェストヴァージニア、ミシシッピ)は14%を切る。これから外国への開放度が分かる。
・アジア人の定着やアジア向け輸出からも分かる(※米国の州別のアジア人比率の地図あり)。アジア人の比率は、西海岸(カリフォルニア、ワシントン、アラスカ、ネヴァダ)と東海岸のメガロポリスで高くなっている。アジア向け輸入(※輸出?)に関わる120万人の雇用は、生産構造・分野が多様で、経済地理的ショックへの感受性は一様でない。雇用の56%が10州、76%が20州に集中している。※当然、輸出にも適切・不適切がある。

・これはグローバリゼーションに関する問題に対し、各地域で反応が異なる事を示す。当事者が自分達の利益を守るために、圧力団体を組織している事が多い。これは地域から起こるが、米国の技巧・通商政策に関与する。

○米国の多国籍企業
・米国の国力に、1450万人を雇用する多国籍企業も重要である(※米国多国籍企業の国別雇用者数の世界地図あり)。多国籍企業は、北の国で雇用の46%/投資の74%/売上の63%を占める(※対象は米国の多国籍企業がな)。
・米国の多国籍企業は3つの中心地を重視する。アジアは雇用の36%/売上の28%が集中している(※雇用重視で、生産地かな)。西欧は雇用の33%/売上の48%で戦略的位置で、売上は米国を上回る(※売上重視で、消費地かな)。NAFTA(2020年USMCAに置き換わる)のカナダ/メキシコは雇用18%/売上14%、ラテンアメリカは雇用10%/売上9%、アフリカ/東欧/中東は埒外である。そしてタックスヘイブン10ヵ所が、たった5.6万人で2070億ドルを売り上げている(※ここだけ単位が異なるので、比較できない)。

<変貌する仏国-切り札と亀裂>

・仏国は第6位の経済大国である。同国もグローバリゼーションに取り込まれ、社会・経済・国土的に変貌した。しかしあらゆるレベルで緊張が高まり、不平等の問題が発生している。しかし若者/高質なインフラ/社会保障システムなどの切り札を持つ(※少子化を制度で止めたかな)。

○国土の再構成
・仏国の変貌は、人口増加/生産力/人の移動・活動などに現れている。他の先進国とは逆に国家システムが一貫性を保っている。社会保障システム(年金、保健、社会保障給付金など)や公的・私的移動(通勤、季節労働、観光など)が、生産地域と住宅地域との間の大量な資金の流れの経路を確保している(※難解。国・企業から国民への資金の流れかな)。この連帯モデルが、社会の統合と国土の一貫性を保っている。
・仏国では大都市化が特徴的に起こっている(※仏国の都市別雇用者数の地図あり)。これは都市の格付け(※度々出てくるが、何だろう。首都/首府/県庁などかな)/雇用の分布/都市の機能・性格の分布/移動システム・交通網から成り立つ(※度々出て来る「成り立つ」も意味不明。「・・が証明している」「・・が表している」「・・が示している」かな)。

・パリ都市圏は、人口/雇用の1/4を持ち、その役割・機能は国土の1/3をカバーする(※首都圏が広過ぎる)。地方は11の大都市(メガロポリス。リヨン、グルノーブル、エクス、マルセイユ、モンペリエ、トゥールーズ、ボルドー、ナント、レンヌ、リール、ストラスブール)で構成される。

○外国における仏国人の共同体
・仏国が大国なのは、多くの要因による。地政学的には国連常任理事国/軍事機構/海外領土/海事領域があり、経済地理的には多国籍企業/生産とイノベーション・システム/国際観光があり、社会学的には移民に魅力的であり、文化的には仏語圏がある。
・仏国人の国際移動性は、著しく強化された(※著者は移動性に関心が高い。国外在住者数の世界地図あり)。国外の仏国人コミュニティに180万人がいて、半分が西欧にいる。次に北アメリカ(15%)、アフリカ(15%)となっている。マグレブとサハラ以南の仏語圏とは、歴史的・経済的・人的な繋がりがある。残りは中東(8%)、アジア太平洋(8%)、ラテンアメリカ(5%)にいる。

・仏国の多国籍企業は1千万人を雇用し、その55%は海外である。仏国人管理職とその家族が海外に送られている。

<英国-連合しない連合王国>

・英国はイングランドを中心に統合する論理で連合していた。しかしその定義を見直す必要が出てきた。イングランド/ウェールズ/スコットランド/アルスター(北アイルランド)の足並みが揃わなくなった。この地政学的困難に、EU離脱がオウム返しに答える(※「英国の分断を示した」かな)。これは自らを世界・欧州の前途に重ねるのが難しい事の現れである。※英国は老大国で、戦略が異なるかな?著者の自国仏国は称賛するが、英国は批判かな。

○国内再分裂の再演
・英国は世界一の大国だったが、2つの大戦で衰退する。脱植民地により、欧州に復帰する。1973年「欧州経済共同体」(EEC)に参加し、周辺に追いやられるのを避けた。1980年代サッチャーが新保守主義改革で英国資本主義を作り替えたが、社会的・地域的不平等は重大な地域的危機を起こした。これによりスコットランド/ウェールズなどで「地域ナショナリズム」が起きた。

・英国は社会的・経済的・政治的・民族的・文化的アイデンティティのの分裂により、統一性を失っている。世帯収入の57%はロンドン盆地に集中し、周辺部(ミッドランド、ヨークシャー、北部)は28%、自治区(スコットランド、北アイルランド、ウェールズ)は15%である(※英国の地域別の世帯収入の地図あり。仏国と同様だな)。エジンバラ/アバディーンだけがロンドンと互角である。

○深刻な不平等
・富裕層20%の富の蓄積は、貧困層20%の117倍ある。失業率が低いのは、労働力人口の減少とゼロ時間契約(雇用主が必要な場合のみ就労)の急増による。給与所得者の購買力低下は、消費レベルの保持や(※例が欲しい)、不動産バブルに対処するための負債で埋め合わされている。

・ロンドンは国の二重構造を象徴している(※ロンドンは別だったのでは)。子供の38%が貧困線以下で暮らしている(※首都の半数近くが貧困?)。ケンジントン(※ロンドン中心部)の平均収入が6.48万ポンドに対し、ルイシャムは1.86万ポンドしかない(※巨大都市はどこでも同じかな。ロンドンの地域別の年収の地図あり)。住民の38%が外国人のため、民族的緊張が高まり、イスラム・テロも起きている。

○ブレグジットの激震
・2016年6月国民投票でEU離脱に51.9%が賛成する(※地域別の投票結果の地図あり)。この投票結果は、イングランドのリージョン間の分断を明らかにした(ウェールズは賛成52.5%、北アイルランドは反対56%、スコットランドも反対62%。※イングランドの投票結果は不明)。イングランドは中心部(ロンドン)は離脱反対だが、周辺部(ミッドランド、ヨークシャー、ノースウェスト、イースト)は離脱賛成が圧倒した。ロンドンの周辺地区も離脱賛成がいた。

・その後、賛成派のボリス・ジョンソンが勝ち、2019年総選挙でも勝利した。アイデンティティの分裂は激化し、将来を共同設計すべきなのに、多国家連合国は不安定化している。2020年ブレグジットは発効するが、新たな不都合と構造的な障害を萌芽させた。

<中国-国土は際立った対照をなす>

・グローバリゼーション参入により、中国は大国になった。沿海部は利したが、社会的・地域的不平等が増加している(※沿海部/沿岸部が混用されているが、沿海部で統一)。国の纏まりを維持するのが地政学的に重要だが、北京は経済成長を維持し、持続可能な国土開発を促進させている。

○3つの中国の再連結
・1980年代から中国はグローバリゼーションに組み込まれるが、これは沿海部への人口集中と海上輸送への依存で構築された。具体的には経済特区の創設(1980年)や、沿海開放都市(1984年)による。その活力が内陸に伝播するのは2010年代になる。
・3つの中国の差は相当大きい。沿海地方は国土14%に、人口45%/GDP53%/直接海外投資82%/輸出84%が集中する。中央部(内陸地方)は国土30%に、人口44%/GDP30%/直接海外投資16%/輸出13%に過ぎない(※日本は四川省などに進出していると思うが)。人口が多いため、この地方の安定が重要になる。西部地域(内モンゴル、雲南、チベット、新疆ウイグル自治区など)は国土56%に、人口11%/GDP10.5%しかない。この地域は地政学的・戦略地理的に特殊な問題を抱えている。

・北京は2000年代より国土の大規模な開発戦略を開始した。それは沿海地方をくじけさせず、中国を連帯させる事だ。北京/上海/広東を中心とする大都市圏を建設する。一方で内陸部の中継都市を強化し、特急列車網/高速道路網で移動性を高め、国内市場と国際市場を統合する。

○不平等の急増
・中国は世界で最も不平等だが、もう1つの政治課題は、国民の欲求不満に答える事だ(※1つ目の課題が経済成長で、2つ目の課題がそれによる不平等の解消かな)。15年間で国富は4倍の23.4兆ドルを超えたのに、その73%を権力に結び付いた支配集団(国民の10%。※共産党関係者かな)が独占している。都市部と農村部の収入差も激しく、総支出で都市部が占める割合は、40年間で40%から78%に増えた。その都市部での収入差も激しく、上位20%と下位20%の差は、15年間で3.6倍から5倍に拡大した。
・地方での収入は、沿海部での農産物の需要と力強い地方産業が牽引する。この差が消費タイプと発展レベルに影響を与えている(※都市部と農村部の差かな)。チベットの農民は健康に71元/教育に64元を充てているが、上海の農民は健康に1991元/教育に964元を充てている。※まあ国土が広いので、同じ国とは思えない格差があるだろうな。

・不平等への対策は、年金/医療制度/一般社会保障制度に託される。社会分裂がマジョリティ(漢民族)とマイノリティ、都市部と農村部、改革で利益を得ている者と取り残された者などに存在する。2017年全国代表会議で習主席は2つの宿題を述べた。「国際舞台で中国が、より中心的な位置を占める」「2020年に貧困を撲滅し、小康社会/ゆとりのある社会にする」(※近年「共同富裕」を掲げた)。

<ムンバイ-二重構造のインドの大都市>

・ムンバイ(ボンベイ)は、人口2400万人で世界9位、経済・金融で世界7位の大都市だ。近代性を集中させたが、経済的・都市的・社会的・環境的な機能不全が足枷になっている。この二重性は「台頭」に疑問を持たせる。インドが大国を自認するには多くの国内問題がある。

○インド経済の中心
・1947年インドは英国から独立する。ムンバイはコルカタ(カルカッタ)を押しのけ、経済・金融の中心都市になる。ムンバイはGDPの5%、製造業の25%、海運の40%、金融の70%、インド多国籍企業(ICICI銀行、タタ、マヒンドラ、NPC、リライアンス・インダストリーズ)の60%、直接投資・文化活動(ボリウッド)の42%を占める。
・インドの大都市はグローバリゼーションの接点になった。生産性・近代性が限られるため、地理的に集中し鮮明である。大都市には、植民地時代の港湾都市(ムンバイ、コルカタ、チェンナイ)、政治の中心のデリー、テクノロジーで活性化されたハイデラバード/ベンガルールがある。

・ムンバイは北のアーメダバード/スーラトから南のパナジに至る沿海部の発展の軸になり、水利工事(※農業用水?運河?)と豊作で価値が高まった大陸の影響を吸い寄せている。2007年デイリー(人口2700万人)とムンバイを結ぶ貨物専用鉄道/自動車道路などが着工され、大都市圏の形成を後押ししている(※中国は日本の新幹線を盗んで、大展開した)。

○南の二元的大都市
・大ムンバイ市(人口1300万人)は、人口2400万人の大都市圏に含まれる(※ムンバイの地図あり)。ムンバイには発展を妨げる多くの不都合がある。15年間で600万人増加し、岬から北に60Km続く市街地は飽和した。中間給与所得者が出現し、社会的・経済的な不平等・格差が2つの異なる空間を作った。富裕層はアラビア海沿岸に住むが、スラムは都市の隙間を占め、サンジャイ・ガンディー国立公園の緑地などにまで広がっている。地下鉄が建設されても、交通システムは飽和状態にある。

・これらの問題を前に、ムンバイは都市/生産システムを北や東に広げた。これは8つの町(ヴァサイ・ヴィラール、ターネー、ビワンディー、ナヴィー・ムンバイ、パンヴェルなど)やインフラ(ナヴィー・ムンバイ国際空港など)の建設に支えられる。
・政治は20年前から極右/地域主義/超ナショナリスト/ヒンドゥー主義/外国人排斥の政党「シヴ・セーナー」が支配している。またマフィア/犯罪グループも幅を利かししている。※発展が望めそうにないが、政治と経済は別かな。

<アラブ首長国連邦-レント収入と持続性>

・アラブ首長国連邦(UAE)は国土の3/4が砂漠だ。石油レント(不労所得)により湾岸で最も豊かで、経済を多角化し、グローバリゼーションに参加し、埒外から脱出し、沿岸部は都市化された。しかし地政学的に緊張下にあり、脆弱で、投機的で、依存的であり、持続性が疑われる。

○新しいモデル
・英国はインド航路を守るため、この地域(海賊海岸)を攻撃するが、1820~53年に休戦協定が結ばれる。1892年には全ての首長国が英国の保護領になる。1971年独立し、近代化が進められる(※結構遅いな。オイルショック頃だ)。海洋掘削技術の発展で、50年間で産出量は6倍になる。GDP/公的支出/民間消費も3倍になる。しかし近年の原油価格の崩壊で経済の多角化にもかかわらず、脆弱化(補助金削減、新税導入など)している。

・彼らはイラン・イラク戦争(1979~88年)/湾岸戦争(1990~91年)/レバノン内戦(1975~91年)で、中東のエリートの財務管理と資本を引き寄せた。イランとの間には、トンプ島/アブー・ムーサ島の領土問題があるが、古くから経済的な繋がりがある。この戦略地理的な位置が、過剰軍備/米軍・仏軍の基地・施設を受け入れている(※ホルムズ海峡は世界の最重要地点かな)。

・世界的なロジスティクス・ハブ/サービス拠点に変貌し、ペルシャ湾の入口にあり、高く評価される。1985年以降9つのフリーゾーンを創設し、海上・航空輸送/貿易/産業/金融サービスが発展した。このフリーゾーンでは、外国人投資家はローカル・スポンサー(カフィル、保障制度)を免除される(※中国は、合弁の強制/技術移転などがあったかな)。エミレーツ航空/新国際空港/ドバイ・ワールド・セントラルにより、ドバイは世界各国に通じている。5つの政府系ファンド(アブダビ投資庁、ドバイ政府投資会社、アブダビ投資委員会、アブダビ国際石油投資会社、アブダビムバダラ開発)が世界の金融市場/不動産市場で1.2兆ドルを運用している(※オイルマネーだな)。サッカー・ワールドカップ2021/ルーヴル・アブダビ美術館など、スポーツ・文化でもイニシアチブに挑戦している。

○ドバイ-砂漠の大都市
・沿岸にドバイ/シャールジャ/ウンム・アル=カイワインなどの都市が集中している。ドバイの人口は1950年から100倍になり、210万人になった(※ドバイの地図あり)。ドバイは3つの中核から成る。古くからあるがリノベーションした西部、不動産地区である中心部(ジュメイラなど)、そして産業・物流地区の東部(ジュベル・アリ[※西部にある]、フリーゾーン、ドバイ・ワールド・セントラル)である。国民の85%が外国出身で、何百万人もの技能を持たない移民労働者を隔てる分離政策が取られている。

・2008年金融危機で、ドバイはアブダビ首長国の石油に支えられた。その特徴の1つが、2001年に着工された人工島パーム・ジュメイラである。パーム・ジュベル・アリ/ザ・ワールド/パーム・ディラの計画は、金融危機で減速・断念している。

第4章 将来の争点

・長期展望を欠き、二元的な経済成長に対し、持続可能で連携した発展モデルが求められる。世界は不確実・無秩序・混沌としているが、地理学者は問題を分類し、力学を突き詰め、輪郭を明確にする責任がある。
・人口の問題は、仕事/不完全雇用/失業の相互作用であり、飢餓/食料供給/市場と需要の相互作用でもある。不揃いの発展は、不安定な状況を引き起こし、世界を亀裂させた(※資本主義は資本家/労働者が基礎で、根本的に分断の経済システム)。緊張した世界、移動の惑星は大混乱している。環境問題は土地システムの激変により起きた。海上交通の活発化/沿岸部の発展はニューフロンティアを開拓させた。世界のガバナンスも問題で、普遍的・包括的・民主的な設計が求められる。

<人口の推移-社会と発展>

・世界人口は2017~50年で、75億人から97億人になる。これは脅威だ。南の人口は64億人から86億人で、88%を占めるようになる。アフリカ55%/アジア35%で、南アジアだけで23%になる。
・出生率も死亡率も高い状況から、出生率も死亡率も低い状況に移行する(※世界各国の出生率/新生児数の地図あり)。合計特殊出生率は、ニジェール7.4人、シンガポール1.2人で、世界平均は2.5人である。出生率は低下しているが、中国が特に顕著で1.6人となった。これは医療の進歩で、子供を大勢産む必要がなくなったからで、就学率の向上などの社会・経済の変化も要因である。

・それでも人口構造が変わらないのは、大陸・国家に大きなずれがあるからだ(※人口構造の説明はない)。2000~20年で欧州は1.53億人を出生したが、南アジアは7.63億人、アフリカは7.56億人を出生した。15歳未満の子供は19億人いて、その91%が南にいる。そしてその人口比率は、北16%に対し、南28%となっている。寿命は50年間で20年伸ばし、欧州は81歳になったが、アフリカは59歳とまだ低い。

○仕事と雇用-重大な課題
・人口増加は社会・経済的な問題を起こしているが、過小評価されている。労働力比率(全人口に占める労働力人口)は64%である。1990~2010年で労働人口は23億人から35億人に50%増えた(※労働力人口と労働人口は異なる?)。これは10億以上のポストの創設が必要だった事を示すが、実際は程遠い。

・雇用の供給は、経済・社会・地域の発展に重要である。資本の移動でグローバル化された労働市場は、この社会的要求により、国際的分業を推進した。この国際分業は、北においても南においても、不完全雇用/失業を広げ、報酬を押し下げている。労働市場への人の提供は、南の国(インド、中国、インドネシア、パキスタン、根トナム、メキシコ、ブラジルなど)が多い(※世界各国の労働人口の地図あり)。人口排出(※移民?)の割合はアフリカ/中東/東南アジア/中央アメリカが高い。

・国が若者の要求に応えるのは困難で、社会構造・公共制度の信頼性や地域の社会経済的均衡に悪影響を与えている。雇用の不足は、社会の緊張や欲求不満を高める。それがアラブ革命/移民激増に見られる。雇用の不足は、違法・犯罪的な態様による統合・同化を増加させ、地政学上の破壊的な影響を与える。これがアフリカ/カリブ海域で実際に起きている。

<土地を養い、人を養う>

・農業生産は25年間で75%増えたが食料問題は深刻で、経済地理的・地政学的に重要になっている(武器としての食料)。この様な中、欧州/中国/韓国/インドなどが、アフリカ/南米/旧ソ連圏の農地を買い占めている(ランドグラビング。※この言葉は初耳かな)。

○飢餓と依存
・「国連食糧農業機関」(FAO)によると、十分に栄養が取れない人が8.22億人いる(※世界各国の栄養不良者の地図あり)。サブサハラ/東南アジア/西アジアの人々で、旱魃・洪水/紛争/貧困/農業・食料政策が原因である。市場では輸出入の著しい不均衡や生産物の特化が見られる(※世界各国の食料輸出入額の地図あり)。上位15ヵ国で輸出の80%を占める。交易は防疫リスク(口蹄疫、豚コレラ、リステリア菌、鳥インフルエンザなど)/環境リスク(外来種)を高める。生産性/品質/食料安全保障/衛生の均衡を保つ事は、農業の復権になり、論争の的になる。

○ランドグラビング-商品としての土地
・ここ10年間で急激に土地が求められるようになった。これはランドグラビングに現れている。ランドマトリックスによると、8万ha/2千件の取引が行われた。上位10ヵ国は、中国/米国/カナダ/英国/スイス/ロシア/マレーシア/日本/スペイン/韓国である(※投資国かな)。投資目的は、国内・国際需要(パームオイル、バイオ燃料など)への対応である。対象となる上位10ヵ国は、強権的政権が投資を保護する両コンゴ/両スーダンと、農業の可能性が高いペルー/ロシア/ウクライナ/ブラジル/マダガスカル/パプアニューギニアである(世界各国の買い占められた農地の地図あり)。
・取引では、家族経営や伝統的な土地所有権は顧みられない。そのため住民は追い立てられ、故郷を喪失し、無産化するため、プロジェクトは抵抗にあっている。農業は戦略的な利害関係の道具になり、従来と振興の大国を対決させている。一方で、食料の脆弱性が課題になっている(※近年、食料安全保障もうるさい)。

<開発の問題-北と南の鮮明な分断>

・世界は相互依存的なモザイク空間になっている。開発の問題は、社会学的・経済地理学的・地政学的な均衡分析の決定的な要因である。南北の分断も分析の鍵だが、カンボジア/ホンジュラスなどに見られる構造的な対立も存在する。

○保健衛生と教育
・第2次世界大戦後、世界人権宣言により普遍的な権利が認められた。しかしWHO/UNESCOなどの努力にもかかわらず、一部の地域では住居/水・エネルギー/年金/医療/教育において有効になっていない。
・医療支出の80%を北(米国39.5%、西欧26%)が占め、アフリカは1.7%、南アジアは1.8%しかない(※世界各国の保健衛生費の地図あり)。米国人は年間1.2万ドルを使うが、モザンビーク人は21ドルしか使っていない。新興国では基本的なケアも受けれない。
・トランプ政権は、米国の無保険者をカバーするオバマ政権の「国民皆保険制度計画」を撤廃できなかった(※「普遍的な医療保険制度が維持された」かな)。WTO(?)が推奨する国民皆健康保険は、まだ発展目標のままだ(※こちらは世界の話かな)。

・教育へのアクセスも格差がある。南の子供の80%は初等教育を受けているが、若い労働力は教育・訓練が不十分である。世界には読み書きできない人が7.73億人いるが、2億人はアフリカである。女性の識字率は、南アフリカ93%/ナイジェリア50%/中央アフリカ24%/ニジェール11%と格差がある。

○入れ子の不平等
・多くの国で発展の不均衡が見られる。これは子供の死亡率/栄養/就学/生活設備などから測定する「多次元貧困指数」で把握できる。中央アメリカのホンジュラスの貧困率は37%だが、サン・ペドロ・スーラ6%からレンピラ郡42%まで格差がある(※ホンジュラスの地域別の貧困率の地図あり)。周縁部は貧困に晒されており、世界で最も殺人発生率が高い。この「バナナ共和国」はユナイテッド・フルーツ・カンパニーの縄張りで、寡頭支配システム/軍部独裁/政治に蔓延する腐敗が暴力の根源である。1980年代ホンジュラスは近隣諸国の内戦で深刻な不況になり、マラス(麻薬カルテルで働くギャング)が登場し、犯罪が激しくなった。

・カンボジアはインドネシア戦争で荒廃し、クメール・ルージュの独裁が続いた。国の貧困率は55%だが、首都プノンペン7%、港湾都市シアヌークヴィル20%、東西の国境地帯62%と格差がある(※カンボジアの地域別の貧困率の地図あり)。

<爆発寸前の国際移住システム>

・グローバリゼーションには国際移住が伴う。規模は2.5億人(人口の3.4%)だが、さらに不法移民が2500~4000万人いる。そして活力/多様性/多核構造/地球規模の特徴を持つ。

○移住と国土
・雇用などの必要に迫られての移住は、魅力的な地域(北アメリカ、西欧、ペルシャ湾)とそうでない地域のヒエラルキーを反映する。この流れは1995年以降に激増する。移民の財産は25年間で7倍の7060億ドルになっている。その割合は、北-北(24%)/北-南(37%)/南-南(34%)となっている(※「北-南」が、南から北への移住だな。逆にしてほしい)。
・移民から本国への送金は、インド820億ドル/中国700億ドル/メキシコ386億ドル/フィリピン350億ドルなどである(※移民による送金の世界地図あり)。GDPに占める割合は、ハイチ38%/タジキスタン30%/ネパール30%/キルギスタン30%/ホンジュラス22%などとなっている(※中央アメリカ/中央アジアが多いな。アフリカは意外と少ないかな)。

・公式・非公式の人・情報・物・文化の流れは、資本の供給/井戸・学校・電化設備の建設/中小企業・工房・小売店の創設など、地域の経済・社会・土地の発展に貢献している。メキシコはこの移動が重要な役割を果たし、20年間で6倍に増えた。しかし米国の経済/移民政策に依存し、選択的移民管理に左右される(※高度人材みたいな話かな)。犯罪組織が運営する非合法のネットワークを利用しての移動による不法入国が増えている。

○ディアスポラ
・古くからディアスポラ(インド、中国、レバノン、アルメニアなど。※ユダヤは?)は、自分達のネットワーク/コミュニティによりグローバリゼーションの媒体だった。これまでは軽視されていたが、中国/インドなどは、この影響力を利用しようとしている。
・インドは3100万人の「国外インド人」がいるが、これは「在外(非居住)インド人」(NRI)と「インド系移民」(PIO)で構成される(※インド人の国別居住者の地図あり)。ヒンドゥー主義のモディ政権はディアスポラを再発見・再構成し、これを原動力に地政学・経済地理学の駆け引きにしている(例:ベンガルールの情報科学。※説明はない)。これはインド洋/大英帝国/グローバリゼーションの同心円の中で組織され、インド流のグローバリゼーションを上書きするパリンプセストである(※難解)。

<緊張下の世界-危機・戦争・紛争>

・世界は混乱し、混沌としている。しかしそれを理解し、発祥地を特定する事ができる。これらは人口的・社会的・経済地理的・地政学的に緊張した世界に組み込まれていて、国家の構造を動揺させている。

○不安定な世界
・多国籍企業は経済・金融のプレーヤーであるが、同時に地域のプロデューサーでもある。そのため多国籍企業には、カントリー・リスク勘定のマクロ経済的・地政学的な能力が必要になる。北の国は安定しているが、南の国は無限のバリエーションのリスクを見せる。ハイデルベルク国際紛争研究所は、374件の紛争があるとし、内214件を激烈とし、内41件は内戦や国際的な戦争とした(シリア、アフガニスタン、イエメン、リビア、パキスタン、ウクライナ、ナイジェリアなど)。

・国際システムは戦略地政学が何層にも重なり、ミルフィーユの様に機能する。これらは非対称紛争(交戦者間に差がある)/低強度紛争(小規模な紛争)/内戦など、発生・性格・質が異なる。これらは空間・局地・地域・国家・国際が入れ子となった空間の相互利害で機能する(※説明が欲しい)。アジア/アフリカ/中東は特にこの力学が錯綜している。イスラム過激派は、これを政治目的に利用している。

○危機・戦争・難民
・南スーダンは内部対立により政府・国が不安定になり、失敗国歌とされる。この様な国(ソマリア、中央アフリカ、コンゴ、マリ、アフガニスタンなど)では国家機能(司法、警察、治安、外交、防衛、通貨など)は保証されず、それは首都内部に限られる。スーダン内戦は北のアラブ人と南のアフリカ人の対立で、アフリカで最も長く(40年)、最も多くの人命を奪った紛争である。2011年南スーダンが独立する。
・独立の際、「アフリカ統一機構」(OAU)が制定した国境不可侵の原則は白紙に戻され、程なく南スーダンの内戦が始まり、ヌエル族とディンカ族が戦う(※「スーダン内戦は終結し、南スーダンが独立した。その後、南スーダンで新たな内戦が始まった」かな)。この内戦の目的は、1978年に発見された石油で、これに権力エリートの裏工作や民族・人種問題が加わった。。この内戦により220万人が国内外の難民となった(※南スーダンの難民の地図あり)。ウガンダ/エチオピアへの難民は同国の周辺地域を不安定にさせている。

・この様に紛争による難民は、世界で7150万人いる(※世界各国の難民受け入れの地図あり)。難民は国内紛争(コロンビア、ナイジェリアなど)や列強の介入(※イラク?)が原因で、国際化した内戦(イエメンなど)や大規模国際紛争(シリア、イラクなど)が呼応(?)する。

<世界の海洋進出-ニューフロンティア>

・海洋は地球表面の71%を覆い、グローバリゼーションにおいても重要である(※誰かが地球ではなく、水球と言っていた)。陸は限界に達し、沿岸国は海洋に進出している。海洋掘削技術/北極海航路などにより、海洋はニューフロンティアになっている。

○海洋進出、戦略的賭け
・1609年オランダ人が『自由海論』で「海の自由」の原則を理論化した。1994年海洋法に関する国際連合条約が発効する。これは沿岸国に「海の権利」を認めた。領海は2240万㎢(海洋の11%)、排他的経済水域(EEZ)は1.2億㎢ある。168ヵ国が批准し、200以上の海洋の境界が確定した。
・現在、境界係争は70~80件ある(※海洋限定かな)。当事国が合意すれば、「国際海洋法裁判所」(ITLOS)で裁判できる。最後の手段として、ハーグの「国際司法裁判所」(ICJ)で裁判できる。「国際海底機構」(ISA)は、EEZ外を「人類共同の資産」として管轄している。

○支配力の新しい競合
・海洋における地理経済学的・地政学的・戦略地政学的の利害関係は、世界の様々なレベルの均衡を再構成し、支配力の新たな競合になっている。カリブ海での低強度の係争、地中海/ペルシャ湾/ギニア湾での炭化水素の地政学が重要になっている。しかし注目されるべきは、中国が支配力を強めようとしている東シナ海/南シナ海での緊張である(※世界各国の海軍力や紛争地の地図あり)。
・近年、海軍力増強による海洋の軍事化が見られる。軍艦の総トン数の80%を15ヵ国が占める。米国は32%を占め、海軍航空部隊の能力も世界一である。米国に次ぐのが中国/ロシア/日本/英国/インド/仏国である。

○北極海-ニューフロンティア
・2017年砕氷タンカーがノルウェーのガス液化工場を出航し、韓国のポリョン(保寧)に向かった。これはヤマル半島の液化天然ガスを輸出するための15隻の砕氷タンカーの最初のものだ。オビ川河口のサベッタでは、ノヴァテク(ロシア)/トタル(仏国)/中国石油天然集団の1.5万人が働いている。

・5~11月の間、商船は北極海航路を利用できる(※北極海航路の地図あり)。スエズ運河を利用すると30日だが、北極海航路だと半分の15日になる(※始点終点で大きく変わるが、ヤマル-ポリョン間かな)。砕氷タンカーの建造費が5割高くなっても、ロシアの砕氷船の費用(1回40万ドル)がなくなれば採算する。しかし極限の環境で、ロシアの軍事・調査・海難救助に頼る事になる(※ロシアの支援に頼るのはリスクかな)。
・北極海とその周縁部(グリーンランド、カナダ北部、アラスカ)の資源・航路の展望は開けたが、2016年に北極海航路を利用したのは19隻だけだった。

<環境問題-持続可能な世界>

・環境問題は地球システムの問題になった。19世紀から化石エネルギーの消費が急増し、気候温暖化が問題になっている。しかし国際協定は、状況分析や利害の不一致により守られていない。

○新しいグローバルな問題
・再生可能・再生不可能な資源への人間の基本的要求に応えるための影響が、環境問題(環境悪化、汚染、生物多様性・生態系への影響)を起こしている。これは地球全体に及んでいる。二酸化炭素排出の問題は、経済・社会・環境などで持続可能な開発に象徴的である。それは石炭・炭化水素の量に関係しているからだ(※日本だと炭化水素は石油・天然ガスだな)。カタールは1人当たり41トンのCO₂を排出しているが、ブラジルは2.5トン、インドは1.7トンである。排出量削減に関する国際協定は守られていない。中国は脱炭素戦略に取り組み始めたが、トランプは前任者の約束(パリ協定)から離脱した。

○ラテンアメリカの森林伐採
・「国連食糧農業機関」(FAO)によれば、30年間でラテンアメリカの森林面積は9800万ha(10%)減少した(※ラテンアメリカ各国の森林面積減少の地図あり)。これは特にアマゾニア(ブラジル/ペルー/コロンビアのアマゾン川流域)における粗放農業モデルが原因である。比率では、中央アメリカのホンジュラス44%/ニカラグア31%/エルサルバドル30%/グアテマラ25%と森林面積が減少している(※半分近くとは酷いな)。
・森林の消費は多国籍企業や土地の支配者によるが、輸出用大規模耕作の増加や貧困化した農民の不平等が象徴される(※原因は粗放農業だったのでは)。

○ボルネオの周辺部の変貌
・ボルネオ島(カリマンタン島)の面積は世界第3位で、インドネシア(73%)/マレーシア(36&)/ブルネイに属する(※ボルネオ島の土地利用の地図あり)。1970年代以降、同島を国家建設に統合する開拓が始まり、インドネシア人などが入り、農業・鉱業の開発が始まる。40年間で原生林は63%に後退した。島全体では76%から28%に減少し、高地を残すだけになった。※首都の移転計画もあったな。

・森林の機能は激変し、主に中国に輸出する原木を供給するための森林が、3360万ha(23%)をカバーする。そしてアクセスしやすい周辺部(※沿岸部かな)には、アブラヤシなどのプランテーションが1850万ha(12.5%)をカバーする。パーム油は大豆/菜種/ヒマワリと競合するが、生産コストが安く、質も高く(※農地が荒廃するらしいが)、爆発的に増加し、世界一の生産国になった(※大消費地の中国に近いし)。
・大規模プランテーションはインドネシアの経済を支配する一族が所有し、3~4千人を雇用している。このキャピタリズムで、労働者は土地を入手し、収入を得て、貯蓄が可能になった(※小作農ではなく自作農?)。これは社会的緊張を減じた。この様な状況のため、NGOが環境保護から経済成長モデルを告発しても、地元では聞き入れられない。

<世界的ガバナンスの挑戦>

・グローバル化され相互依存する国際システムでは、その管理運営が重要になる。地政学的・経済地理的性格/方針/活用で意見の一致はない。普遍的な計画の決定が不可能でも、前進が見えてきた。

○国際組織
・1945年国連システム(UN、WHO、UNESCO、FAO、ILO、UNODC、UNHCRなど)はパワーバランスを反映している。常任理事国(米国、ロシア、仏国、英国、中国)は拒否権を持つが、7ヵ国(ブラジル、メキシコ、ドイツ、ナイジェリア、エジプト、インド、日本)が、その特権を求めている。

・国連は無力を批判されるが、唯一の正統な枠組みとして国際法に留まっている。例えば2003年米軍のイラク侵攻は認められなかった。国連平和活動局は、11万人の国連警察軍・監視員を持ち、紛争地帯(西サハラ、中央アフリカ、マリ、ハイチ、コンゴ、スーダン/ダルフール、シリア、キプロス、レバノン、コソヴォ、リベリア、イスラエル、パキスタン/インド)で15の活動をしている。

・国連システムは、国際通貨基金(IMF)/経済協力開発機構(OECD)/世界貿易機関(WTO)などの経済に関する組織で補完される。しかしこれらは欧米が支配するため不安定である。新大国の主張を特色とする国際機構の多様性は(※説明が欲しい)、世界を管理運営する機構の建設要求になっている。

○列強による理事会
・列強の元首が集まるサミットのようなインフォーマルな枠組み(法的基盤がない)が多く設けられた(※G7/G20の世界地図あり)。1975年G6(仏国、ドイツ、日本、イタリア、英国、米国)が創設され、翌年カナダが加わり、1998年ロシアが加わった。
・1999年新興の大国(中国、インド、ロシア)、大陸規模あるいは潜在的な大国(南アフリカ、サウジアラビア、アルゼンチン、オーストラリア、韓国、インドネシア、トルコ、メキシコ)、欧州連合を加えたG20が創設される。G20は世界人口の2/3、GDPの90%、国際商取引の85%を担う。2007年金融危機で政策を調整したが、世界の執行機関にならなかった。この様に柔軟で、共通の利益を守るための単発的な組織は、「石油輸出国機構」(OPEC)などにも採用されている(※OPECは持続的と思うが)。

・最も目覚ましいのが、BRICS首脳会議(2011年。ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)、G77(アジア/アフリカ/ラテンアメリカの開発途上国77ヵ国と中国)、WTO交渉のためのG90閣僚会合である(※後者2組織は初耳)。1986年貧しい国の農業保護を主張するG33(インド、インドネシア、中国など)がケアンズに創設されるが、これに対抗するケアンズ・グループ(オーストラリア、ブラジル、ニュージーランド、タイなど農業輸出国19ヵ国)も創設される。
・この様にインフォーマルなシステム上に(※GATTとかはフォーマルなのでは)、大陸レベルで組織された地政学・経済地理学的な性質の機構が積み重なっている。北米自由貿易協定(NAFTA)、東南アジア諸国連合(ASEAN)、アジア太平洋経済協力(APEC)、アフリカ統一機構(OAU)などがある。ただ欧州連合は国家権限を上位機関に委譲しているため、例外的である。

○国際刑事裁判所
・国際法において「国際刑事裁判所」(ICC)の設立は大きな前進である。この裁判所は、集団殺害犯罪(ジェノサイド)/人道に対する犯罪/侵略犯罪/戦争犯罪を裁く。「常設国際司法裁判所」(PCIJ)を引き継いで1945年に設立された「国際司法裁判所」(ICJ)を補完する。ICCは国際条約(ローマ規定)により1998年に設立され、2002年60ヵ国が加盟し発効する(現在は193ヵ国が加盟)。しかしロシア/米国など32ヵ国は批准しておらず、訴追されない。また中国/インドは署名(※=加盟?)さえしていない。

・目下23ヵ国が捜査の対象になっている。アフリカ(ウガンダ、コンゴ、中央アフリカ、スーダン、ケニア、リビア、コートジヴォワールなど)、ラテンアメリカ(ベネズエラ、ホンジュラス)、中東(パレスチナ)、アジア(ジョージア、アフガニスタン、北朝鮮)、欧州(ウクライナ)である。2012年コンゴの武装組織の指導者トマス・ルバンガが、少年兵を徴兵した罪で有罪になる。ICCはダブルスタンダードの批判があるが、人権/国際人道法が尊重され、各国に協調が広がり、予防・抑止・鎮圧の役割を担っている。
※旧ユーゴスラヴィアのムラディッチ被告の裁判は、直接は関係していないみたいだ。

おわりに 土地、世界、人間

○システムとしてのグローバリゼーション
・グローバリゼーションは歴史地理学的プロセスで、世界システムを出現させ、その役割は増々増大している。ただグローバリゼーションは上書き用の羊皮紙(パリンプセスト)のように、3つのグローバリゼーションで組織される(※3段階で行われた事?それとも3つの観点?)。経済地理学的には、商品経済、次いで資本主義経済が世界に広がった。地政学・戦略地政学的には、異なるレベルでの強国同士の対決と読み解ける。

○「世界の有限性」と持続可能な開発
・歴史的には、グローバリゼーションは再生可能・再生不可能な資源の大量消費による増産型発展モデルで行われた(※これが3つ目の観点かな。以下を読むと1つ目だな)。これは人類の居留地を拡大する事で行われた。そのため残る場所は北極海/深海などしかなく、構造的拘束にぶつかる(世界の有限性)。※そのため最近、宇宙を話題にする事が多い。
・そのため様々な緊張を引き起こしている。海岸を持つ国は海の戦争へ向かい、陸地・水・希少資源のための紛争も起きている。その活動により地球温暖化問題なども起きた。人間は発展モデルに別れを告げ、持続可能な開発に立ち戻るべきだ。

○全世界でないグローバリゼーション
・このグローバリゼーションは全世界的でない。普遍的でなく、多くの国家・人が富の配分から除外されている。グローバリゼーションは二元的で、対立を生む不安定な社会・経済システムである。世界人口の8%が富の86%を持ち、排除された73%は2.4%しか持たない。この空間的不公平が、緊張・分断・無秩序・混沌を生んでいる。これはグローバリゼーションの統合・排除が行き過ぎた乱暴なプロセスが原因である。グローバリゼーションの二元性は、ロンドン/ベトナム/ホンジュラス/カンボジア/アフガニスタンの地図に表れている。

・序列化し、相互依存となったシステムは流動的で、領土での地位は可逆的である。英国はブレグジットを選択し、ペルシャ湾岸諸国/中国は周縁部から抜け出した。国民国家が革新的な案を出せるかは、今も重要な関心事である。

○世界の構築-3つの根本的な決裂
・21世紀になり、国際構造は3つの地政学的断絶で構成される。その特徴は、南の新大国が目覚め、その認識による「大解放」が、欧米列強の覇権的支配を揺るがしている。これが「大分岐」を起こさせ、世界を多極化させた。この「大変動」により、顕在・潜在にかかわらず、新大国の自律性による「強国の無力」が特徴になった戦略地政学的な新システムに行き着いた(※難解)。これはパクス・アメリカーナの異論のない失敗による。

・この3つの断絶(※大解放・大分岐・大変動?)が、グローバリゼーションの新段階を特徴付けている。世界の管理運営(ガバナンス)は、アクターによって再構成される。この状況において、様々な抵抗が展開され、重要な問題に対し徐々に世論が出現している(※脱炭素かな)。結局は、地理的には公平・均衡で、経済的には効率的で、社会学的には連帯し、環境的には持続可能な新秩序の定義・促進が文明の最大の関心事になる。
※結局、世界の有限性/全世界でないグローバリゼーション/世界の構築(3つの断絶)の3つかな?