『ストップ! 国政の私物化』上脇博之/坂口徳雄/前川喜平/小野寺義象/石戸谷豊/岡田正則/松宮孝明(2021年4月)を読書。
安倍・菅政権における加計学園/森友学園/桜を見る会/学術会議などの問題を解説。
これを国政の私物化と解説している。
文書管理/情報公開/検察/訴訟/憲法・法律などの勉強にもなる。
お勧め度:☆☆
内容;☆☆☆(各問題の当事者が書いているので大変詳しい)
キーワード:<国政私物化>加計学園、森友学園、桜を見る会、情報隠蔽、集団的自衛権、答弁拒否・虚偽答弁、官邸主導、内閣人事局、明文改憲、菅政権、日本学術会議、<森友事件>情報公開請求、真相解明の会、忖度、検察審査会、小学校設置趣意書、アベノマスク、<加計学園問題>萩生田光一、和泉洋人、国家戦略特区、官邸官僚、今井尚哉、補欠選挙、明治産業遺産、内閣法制局、日本学術会議、菅政権、<桜を見る会問題>地元後援会、前夜祭、告発、晋和会、不起訴処分、検察審査会、<ジャパンライフ会長招待問題>山口隆祥、マルチ商法/預託商法、破産手続、謝罪、<学術会議問題>声明、任命拒否、内閣府内部文書、破壊・暴走、<学術会議問題>専門家軽視、軍事研究、日本学術会議法、学問の自由、公務員の選定罷免権
まえがき
・本書は「桜を見る会」を追及する会が開催した市民集会「国政私物化をやめさせよう! 森友・加計・桜の徹底追及を」の報告が基になっている。この集会で、森友学園/加計学園/桜を見る会/学術会議会員任命拒否と続く安倍・菅政権の国政私物化と、官邸支配を報告した。そして自民党長期政権による腐敗・腐朽した政治を問うた。
・本書の構成は以下になっている(※第1~7章の概要を説明しているが省略)。
・本書の編集中にも、菅首相の長男が総務省幹部と会食し、国家公務員倫理規程違反の疑いが生じている(※総理大臣の表記もあるが、首相で統一)。また河井案里・克行議員の大型買収事件も起きている。その1.2億円は政党助成金で賄われた事が明らかになっている。
・内閣支持率は急落し、出版時には菅政権は退陣しているかもしれないが、自民党政権が続く限り、真相究明・責任追及を問い続けなければいけない。
第1章 政権の国政私物化と政治的・法的病理現象 上脇博之
はじめに
・安倍首相の下で国政の私物化や違法行為が横行した。そこで日本の政治的・法的状況を分析する。
1.安倍政権の私物化事件と情報隠蔽
<安倍自民党政権の私物化事件>
○「腹心の友」のための国家戦略特区 加計学園
・学校法人・加計学園の理事長・加計孝太郎と安倍首相は40年来の付き合いがある。文科省は獣医学部の新設を認めていなかったが、2016年国家戦略特区諮問会議は、52年振りに加計学園の岡山理科大学に新設を認める。この話は「加計ありき」だった。
・同大学は今治市のキャンパス用地を無償で譲り受け、施設整備費用192億円の半分を今治市/愛媛県が助成した。(※千葉科学大学の話は省略)。「総理のご意向」により国家戦略特区での新設が認められる。
○財政法に違反して国有地を売払った財務相 森友学園
・1947年教育基本法は施行され、衆議院は教育勅語の排除を決議すう。2006年第1次安倍政権は教育基本法の改正を強行します。森友学園が経営する塚本幼稚園では教育勅語が素読される。そしてその園児の受け皿となる小学校の新設に動きます。
・2017年財務省が国有地(鑑定価格9.6億円)を1.3億円で森友学園に売払った事が発覚する。その開校予定の小学校の名誉校長は首相夫人だった。森友学園が近畿財務局に提出した「小学校設置趣意書」は、「子供権利・男女共同参画・雇用均等法などは日本の品性を貶めた」と批判し、富国強兵・教育勅語を高く評価し、「塚本幼稚園の受け皿が必要」としていた。
・2017年この国有地売払に、会計検査院は「根拠が不十分で適切でない」と報告します(※詳細省略)。この国有地売払は財政法に違反します。※普段なら会計検査院の報告で終わってしまう仕組みなのかな。
○総理主催を悪用した「桜を見る会」
・2019年安倍首相によると、「桜を見る会」は功労者を慰労するための内閣の公的行事で、参加費・入園料などは公金から拠出されてきた。招待範囲は、皇族/各国大使/両院議長/最高裁長官/国務大臣/官僚幹部/都道府県知事・議長/各界代表者などとなっている。2012年第2次安倍政権になり支出は増え続けた。予算額1.8千万円に対し、2014年3千万円、2018年5.2千万円、2019年5.5千万円、2020年5.7千万円(概算要求)と増え続けた。そして国民の批判で中止になる。
・想定招待者数は約1万人だったが、2019年には1.5万人(実際は1.8万人)に増えた(※想定の1万人も凄いな)。閣僚/自民党幹部/首相夫人の推薦枠もあり、雪崩を打ったよう膨張した。中でも「安倍晋三後援会」の推薦者は850人に達した。招待者数/予算額は決まっているのに、与党議員の「推薦枠」が事実上「招待枠」になっていた(※無条件招待かな)。2018年自民党総裁選/2019年参議院選があり、通常招待されない地方議員も招待された。これは財政法違反である。
<私物化事件での情報隠蔽>
○国家戦略特区 加計学園
・文科省は「内閣府の最高レベルの意向」と文書(2016年10月)に記録する。2017年5月菅内閣官房長官(※以下官房長官)は「怪文書」として存在を否定する。また松野文科相も文書の存在を否定する。しかし前川前文科事務次官や現役職員は存在していたと証言する。翌月再調査され、存在が確認される。
○財務省 森友学園
・佐川理財局長は「応接録は廃棄された」と虚偽の答弁をする。近畿財務局は売払の決裁文書を改竄する。
○総理主催 桜を見る会
・内閣府が作成した「招待者名簿」は廃棄され、各省庁が作成した「推薦者名簿」も一部廃棄される。
2.情報隠蔽・立憲主義蹂躙・国会軽視
<情報の隠蔽と重要政策の強行>
○裁量労働制に関するデータ捏造
・「情報の隠蔽」は私物化事件だけでなく重要政策でも行われる。経済界が要求する裁量労働制の労働時間データの捏造です。2018年安倍内閣は、裁量労働制法案を含む働き方改革関連法案を通常国会に提出します。「裁量労働制の労働者の方が、一般労働者より労働時間が短い」としたのです。ところが実際は一般労働者の労働時間は算出されていなかったのです。これにより法案から裁量労働制が削除されます。※要約されているので分かりやすい。
○南スーダンでのPKO日報の不開示
・2015年いわゆる戦争法が成立し、「駆け付け警護」が自衛隊の任務になる。2016年10月安倍内閣は「国連南スーダン共和国ミッション」(UNMISS)での自衛隊派遣の5ヵ月延長を閣議決定する。稲田防衛相は「8月に現地に入り、状況が安定している事を確認しました」(※要約)と説明する。11月PKOとして安全保障関連法に基づく「駆け付け警護」を付与した自衛隊の派遣を閣議決定する(同月実施)。
・一方2016年9月ジャーナリスト布施祐仁が、2016年7月の現地隊員の日報の情報公開請求をします。これに10月防衛相は「開示決定期限延長」をし、12月「文書は廃棄されている」とし、不開示とします。しかし再調査で電子データが存続しており、2017年2月公表されます。
・日報には「戦闘」の文字が多数あり、戦闘地域に自衛隊を派遣するのはPKO法にも憲法にも違反するため、「駆け付け警護」を付与した自衛隊を派遣できなくなるのです。
<立憲主義と民意の蹂躙>
・2014年7月安倍内閣は、「集団的自衛権の行使」を閣議で強行決定します。これは「解釈改憲」です。2015年9月安全保障関連法案(戦争法)が成立しますが、これは「立法改憲」です。安倍政権は「専守防衛」を放棄し「戦争できる国」にする「明文改憲」を望んでいます。しかしそれができないため「解釈改憲」「立法改憲」を行っています(※この説明は分かり易い)。これは立憲主義の蹂躙です。
・また2014年3月世論調査で「集団的自衛権の行使は合憲」に賛成30%/反対60%で、これは民意の蹂躙でもあります。しかし2015年9月安全保障関連法案は強行採決されます。
<答弁拒否・虚偽答弁と議会制民主主義の否定>
○安倍政権の答弁拒否・虚偽答弁
・安倍政権は、議会制民主主義を軽視します。国会での健全な野党の質問に、論点をはぐらかし、無関係の答弁をします。フリージャーナリスト日下部知海が、国会会議録を「控え」で検索しました。すると「答弁を控える」「回答は控えさせて頂きたい」などが6532件ありました。また虚偽答弁も繰り返されています。「桜を見る会」事件では、安倍首相は118回の虚偽答弁をしています。また「森友学園」事件で安倍政権は139回の虚偽答弁をしています。
・これらから安倍政権は説明責任の能力が欠けている事に加え、違法行為を強行し、保身のためにその事実を隠蔽しています。そして国民の代表である国会を軽視・否定しています。
○無責任体質と議院内閣制の機能不全
・安倍政権では違法行為した大臣が辞任しておらず、無責任体質になっています。憲法では「内閣は行政権の行使について、国会に連帯責任を負う」としています、そのため財政法違反の国有地売払や記録の廃棄・改竄は例え職員が独断で行ったとしても、行政権の行使のため内閣は責任を負わなくてはいけません。この様に議院内閣制が機能不全に陥っています。
3.私物化や立憲主義蹂躙を可能にした官邸主導政治
<官邸主導政治と違憲の諸制度>
○官邸主導政治
・安倍政権が立憲主義を蹂躙し、重要政策を強行した主観的要因に遵守精神の欠如があります。客観的政治的要因には、官僚政治から官邸主導政治への移行があります。これにより政治の私物化が起きたのです。
○1994年政治改革と違憲の制度
・官邸主導を行うには、国政選挙で圧勝する事です。これを可能にしたのが1994年の政治改革です。衆議院議員の選挙制度が中選挙区制から小選挙区制に改定されます(※2大政党制を目指したが、全く成らなかった)。また政治腐敗の温床である企業献金は温存されたまま、公金300億円による政党助成金が新設されます。
・憲法は民意の正確な国会反映を要請していますが、選挙区の定数が余りにも少ないため、それに応えていません。そのため半数未満の得票で議席の2/3を獲得し、「過剰代表による底上げ政権」を生んでいます。これは憲法違反です。
・企業献金も株主の政治的思想を侵害し、違憲です。政党助成金も国政選挙の結果を流用しており、有権者の政治的自己決定権を侵害し、違憲です。
<自民党本部と官邸の使途不明金>
○バブルな政治資金とその使途不明金
・自民党は企業献金を受け取り、さらに過剰代表により過剰な交付を受け取り、政治資金が有り余っていいます。そのため党幹事長など20人に「政策活動費」が与えられていますが、その使途は不明です。例えば第2次安倍政権が誕生した2012年は政策活動費が9.6億円で、石原伸晃(幹事長)2億円/石破茂2.6億円/安倍晋三2.5億円が支出されています。2017年は19.2億円に増え、二階堂俊博(幹事長)13.8億円が支出されています。※公金が入っているとは言え、党のお金かな。まあ強いものが勝ち続ける仕組みだな。
○内閣官房機密費における政策推進費の使途不明金
・また官邸の公金にも使途不明金があります。「内閣官房報酬費」(※以下官邸機密費)で、会計検査で使途を明かす必要はありません。特にその中の「政策推進費」は官房長官に渡った時点で「完了」になります。
・官邸機密費は毎年12億円で、その9割が政策推進費です。1998年小淵内閣で官房長官を務めた野中広務は、「総理に毎月1千万円、衆議院国会対策委員長/参議院幹事長に毎月500万円を持って行った」と述べています。「桜を見る会」の前夜祭の赤字もこれで補填された様です。公職選挙法違反で逮捕された河井克之・案里議員には党本部から1.5億円が交付されており、これに官邸機密費が含まれていると思われ、官邸主導選挙だったのです。※機密費は各省にもあったはず。
・これらの疑惑の根本原因は、会計検査院の検査を受けない事にあります。私達原告・弁護団は官邸機密費について、①政治家・公務員・マスコミ・評論家に支出しない、②非公開の期間を定め、その後は公開するを要求しました。この要求に法改正は必要なく、官房長官の判断で可能です。最高裁で敗訴しても無視しています。これは公金の私物化が安倍政権の体質になっているからです。
<自民党総裁らの政治資金配分権と公認権の掌握>
・政治改革以降、自民党総裁が政治資金の配分権や公認権を掌握し、強大の権限を行使できるようになります。これを内外に示したのが、2005年小泉内閣による郵政民営化を争点にした衆議院選挙です。派閥のチェック機能は効かなくなり、総裁に逆らえなくなったのです。自民党は米国に従属する様になり、財界政党になり、新自由主義を強行します。第1次安倍内閣では「戦後レジームからの脱却」のため教育基本法を改悪します。
<首相・官邸主導の政治、行政官僚支配>
・安倍首相は高級官僚の人事に介入し、「戦後レジームからの脱却」を強行し、情報を隠蔽する様になります。
○解釈改憲のための内閣法制局長官の差し替え
・2014年安倍内閣は集団的自衛権(他衛権)の行使を違憲から合憲に「解釈改憲」します。そして翌年、戦争法を強行採決します。その前の2013年内閣法制局長官に、集団的自衛権行使の積極的容認派である小松一郎を抜擢していました。
○内閣人事局の設立
・2014年5月安倍政権は国家公務員の人事を所管する内閣人事局を設立します。首相による適格性審査を経ないと、幹部候補者名簿に掲載されず、府省の幹部に任命されません。この権限は官房長官に委任できます。この仕組みにより、歴史修正主義/政府の違法行為/証拠・文書の隠蔽/交渉記録の改竄/公文書の廃棄が可能になります。
○「官邸の守護神」黒川検事長の定年延長
・私は「森友学園」事件を背任罪/公文書変造罪/公用文書等棄損罪で刑事告発しますが、安倍政権は大阪地方検察庁に立件を断念させます(※詳細省略)。
・この成功体験から、安倍政権は東京高等検察庁検事長・黒川弘樹の定年を、閣議決定で違法に延長します。これを法的に追認させるため検察庁法を改正しようとしますが、国民の反対で断念します。
4.立憲主義蹂躙と首相らの違法行為の背景
<明文改憲の先取り>
○自民党の明文改憲案作り
・安倍政権による立憲主義・民意の蹂躙は、「戦争できる国」にするための明文改憲のためです。自民党の「日本国憲法改正草案」(2012年)は憲法の全面改正を目指しています。2017年衆議院選挙で自民党は、「改憲は、自衛隊の明記、教育の無償化・充実強化、緊急事態対応、衆議院合区解消の4項目に絞る」を公約にします。2018年3月党憲法改正推進本部(※以下改憲本部)は、これらを条文化します。
○「戦争できる国」のための改憲
・安倍政権は明文改憲を目論んでいます。改憲本部の「第9条の2」は「わが国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとる事を妨げず」とし、これを基本とすべきと述べています。この「自衛の措置」は自衛権の合意となります。
・これが「第9条の2」の戦力の不保持の削除で、「自衛権の発動」の明記です。この自衛権には集団的自衛権も含まれます。この明文改憲を先取りしたのが、南スーダンでの「日報隠蔽」事件です。
○「教育への政府介入」のための改憲
・前述の「教育の無償化・充実強化」は、高校以上の無償化ですが、これは今でも憲法違反ではありません。この本音は「教育への国家の介入」の合憲です。「第26条の3」を加憲し、「教育現場の整備に努めなければいけない」の前に「国は未来を切り拓く上で極めて重要な役割を担う」を入れているからです。これは2012年「日本国憲法改正草案」でも同じで、「国の未来を切り拓き、教育環境を整備する」を口実に、学校教育に国を介入させようとしています。これは、学問の自由/教育の自由/教育を受ける権利を否定する改悪です。これは教育勅語を素読させる幼稚園の受け皿となる小学校を支援したり、加計学園事件/日本学術会議事件(後述)などからも明らかです。
5.菅政権でも続く安倍路線
・安倍政権での国政の私物化・違法行為は、民主主義に反する病理現象です。これは小選挙区制が議会制民主主義を実現できないからです。
<菅政権は安倍政権の政治的体質を継承>
○安倍政権の路線を継承
・2020年9月菅義偉が首相に就きます。彼は第1次安倍政権では総務大臣、第2次安倍政権では官房長官として安倍首相を支えます。安倍首相の辞任表明後、細田派・細田博/竹下派・青木幹雄と会談し、路線の継承を伝えます。また記者会見でもそれを表明します。
○学術会議会員人選への介入
・菅首相は日本学術会議(※以下学術会議)が推薦した会員候補105名の内6名の任命を拒否します。日本学術会議法には「内閣総理大臣が任命する」となっていますが、これは違憲です。
・戦前、滝川幸辰の刑事法理論/美濃部達吉の天皇機関説などが弾圧され、科学者が人体実験・兵器製造に動員されました。この反省から1949年日本学術会議法が制定され、学術会議が新設されたのです。これにより国家から独立して職務を果たせるようになり、一方で費用は国が賄う様になります。当初は科学者による選挙で会員を決めていましたが、1983年中曽根首相は首相の任命制に変更します。
・学術会議は1950年「戦争を目的とする研究はしない」/1967年「軍事目的の研究はしない」を声明し、2017年「両声明を継承する」と発表しています。菅政権は「戦争できる国」を目指すため、学術会議が邪魔になったのです。
<徹底した真相解明・責任追及が必要>
○財務省「森友学園」事件
・安倍首相夫妻の森友学園への関与に、財務省は廃棄できるものについては「廃棄した」と虚偽答弁し、廃棄できない決裁文書は改竄した。会計検査院の検査が完了していないので、資料提出しなければ行政処分される。そのため虚偽答弁・改竄は官邸(首相補佐官など)からの指示があったと思われます。
・2017年3月財務省近畿財務局の職員の自殺が報じられます。国税庁長官に栄転していた佐川氏は辞任し、14の決裁文書の改竄を認めます。2018年5月森友学園の交渉記録217件を公表し、翌月廃棄・改竄の内部調査結果を公表します。2017年2月安倍首相は「私や妻が関与していたら、首相を辞める」と国会答弁しており、それ以降に改竄が行われています。ただし佐川理財局長の関与は解明されていません。
・自殺した職員は「手記」を残しています。これを大阪日日新聞の記者が入手し、『週刊文春』2020年3月号で公表しました。これには「全て佐川理財局長の指示」「並近近畿財務局長に報告したと承知している」などの詳細が綴られている。「手記」によると応接記録(※交渉記録?)は存在したが、安倍首相/理財局長に都合が悪いため、国会/会計検査院/情報公開請求者に開示していません。※理財局は国有財産を管理する部署で、財務局は財務省の地方出先機関で、様々な業務がありそうだ。
・2020年3月遺族が「文書改竄を強制され自殺した」として国/佐川氏を相手に訴訟を起こします。応接記録217件は公表されますが、大阪第1検査審議会の「不起訴不当」の議決書には「応接記録24通は廃棄された」と明記されます。「文書管理規則」では1年未満ですが、応接記録24通は保管されているはずです。
・また財務省は「森友学園に係る決裁文書の改竄等」について調査報告していますが、その原因である国有地売買契約などの調査は行っていません。売買契約時(2016年6月)の理財局長は佐川氏ですが、賃貸借契約時(2015年7月)は迫田英典であり、その前の賃貸借契約時(2014年7月)は中原広です。近畿財務局の統括交遊財産管理官・池田靖は「学校の場合は購入のみ」と説明していますが、なぜ賃貸借になったかも不明です。
○首相主催「桜を見る会」
・「桜を見る会」については、私が情報公開請求しました。内閣府で推薦された名簿(推薦者名簿)は存在し、部分開示されました。しかし各省庁からの推薦による招待者の名簿(招待者名簿)は存在が確認できないため、開示されていません。ただし「廃棄した」とは書いてありません。内閣官房の推薦者名簿では、「既に廃棄した」として内閣総務官室/内閣広報室が開示していません。内閣総務官室の名簿は安倍首相などの最も重要な名簿です。これがなくなると官僚は仕事ができないので、まだ存在していると考えられます。
最後に-衆議院選挙と政権交代の重要性
・安倍政権の国政私物化を振り返りました。問題は安倍・菅政権の「戦争できる国」を進める政治的体質にあります。同政権下では真相解明が進みませんでした。真相解明のためには次の国政選挙が重要になります。
・2020年9月総裁に立候補した菅官房長官は「自助・共助・公助」が重要と掲げました(※詳細省略)。これは「自助」を最優先する新自由主義の再表明です。安倍・菅政権は新型コロナ対策を怠る一方、GOTOキャンペーンを強行し、新型コロナを蔓延させました。新自由主義は財界政治で庶民には有害であり、菅政権の支持率は40%を切ります。第2次安倍政権以降、与党の得票は伸び悩んでいますが、選挙は勝ち続けています。これは棄権者が5千万人いるからです。政権交代には、新自由主義/軍事大国化を否定する野党が共闘する必要があります。政権交代すれば真相解明も可能になります。
第2章 森友事件をウヤムヤにするな 坂口徳雄
1.安倍政権の政治私物化の端緒
・森友問題は教育勅語を暗記させる幼稚園の受け皿となる「パイオニア小学校」を設置するため極右勢力が支援し、安倍首相夫妻もこれを支援し、国政を私物化した事件です。9億円の国有地が「ゴミが埋設されている」とされ1.3億円で譲渡されました。そしてその経過を記録した公文書が改竄・廃棄されたのです。安倍政権は憲政史上最長の政権になりましたが、自己保身のため政治が私物化されたのです。
2.一議員の情報公開請求が暴露へ
・この事件は豊中市会議員・木村真の情報公開請求が端緒です。彼は国有地が売却された際は価格が公表されるのに、当件は公表されていなかったため不思議に思い、情報公開請求したのです。普段から国政・自治体を監視していた彼だからこそ、できたのです(※オンブズマン制度とかもあるが、この辺詳しくないな)。国民が国政に参加できるのは、選挙権と情報公開請求しかないのです(※訴訟もあるのでは)。
3.「真相解明の会」の発足
<国有地低額譲渡の真相解明を求める会>
・2016年6月近畿財務局は森友学園に国有地を売却します。鑑定価格は9.56億円ですが、ゴミの撤去費8.19億円を差し引き、1.34億円で売却します。ゴミの撤去費や交渉の記録は欠如・廃棄により不明のままです。また国会では虚偽答弁や答弁拒否が行われています。このままでは全容がうやむやにされてしまうため、専門家が「国有地低額譲渡の真相解明を求める弁護士・研究者の会」(※以下同会)を結成しました。
<真っ先に捜査すべきは近畿財務局>
・2017年6月同会は大阪地検特捜部(※以下特捜部)を「森友問題は、真っ先に近畿財務局を捜査すべき」と批判します(※簡略化)。同会のホームページにその内容を掲載しています(※大変長文なので省略)。
<近畿財務局幹部を告発>
・2017年以降、同会は財務局幹部を背任罪・公文書変造罪・公用文書毀棄罪などで大阪地検に告発します。
○背任罪・証拠隠滅罪で告発(2017年7月)
・森友問題は、実在するか怪しい地下埋設物の撤去費用で国有地が値引きされ、これに安倍首相夫妻が関与し、近畿財務局などの背任が疑われます。特捜部は、この解明が期待されます。木村市議が告発したにも拘わらず、捜査は進展していません。特捜部は国民から、政治家/高級官僚/自治体などの不正・腐敗を追及する事を期待されています。かつて生駒市での事件では特捜部は期待に応えました(※詳細省略)。私達は森友問題を疑惑で終わらせないため告発しました。
○公文書変造罪で告発(2018年4月)
・公文書を変更する際は、変更者/変更日時/変更箇所を明示します。真正文書の作成者/作成日時をそのままにして改竄する事はできません。特捜部に、この改竄者の特定を求めています。佐川理財局長と共謀し、安倍首相夫人が関与した全ての部分を削除した者を告発しました。これには首相秘書官なども含まれます。
○公用文書毀棄罪で告発(2018年5月)
・森友問題がうやむやにされ、不起訴とした法務省・検察上層部からのリーク情報がマスコミに無批判に跋扈している状況は残念です(※マスコミは不起訴を妥当としている?)。戦後最大の組織的重大犯罪をうやむやにするとは信じられません。検察が官邸/財務省の意向を忖度するかもしれない事に国民は不安を抱いています。そのため財務省を公用文書毀棄罪で告発しました。
<大阪地検特捜部が全員を不起訴>
・2018年5月特捜部は森友問題の告発の全てを不起訴にします。その理由は建議不十分でした。森友問題は安倍首相夫人を「安倍晋三小学校」の名誉校長に据え、ゴミが2万トンもないのに、その撤去費用を値引きし、国有地を低額で譲渡した事案です。財務省は公文書を廃棄・改竄し、国会で虚偽答弁を繰り返しました。これは全て安倍首相を守るためです。これを検察までもが安倍一強に忖度し、無罪放免にしたのです。検察も官邸に人事権を握られ、「腐敗」したのです。
・検察の不起訴は官僚の無法を拡大させます。検察は少なくとも公文書変造罪・公用文書毀棄罪で立件すべきでした。改竄された決裁記録から、安倍首相や国会議員の名前は全部削除されました。その「余事記載事項」が削除されたため、国有地が森友学園に低額譲渡された過程が不明になりました。後日、交渉録217件が開示されましたが、24件は廃棄されたままです。この中には籠池氏が首相夫人との写真を見せ、交渉した交渉録が含まれています。
・検察は理財局長の「交渉録の保存期間は1年未満で、事案終了により廃棄した」との発言を鵜呑みにしたのです。しかし国会で議論になっている場合、廃棄すべきでない事例があるのです。この不起訴処分により、官僚による公文書の改竄・廃棄が合法化され、「桜を見る会」に繋がったのです。森友問題での不起訴に、検事総長/検事長の人事が関係しています。これは黒川検事長問題で後述します。
・私が大阪地検を訪ねた際、「森友事件は不起訴事案ですか」と尋ねると、「誰がそんな事を言っているのか」と返されました。不起訴は上層部で決定されたと思われますが、それを現場検事が跳ね返す力はなかったのでしょう。私は生駒市の元市長/元議長の背任事件を告発しました。その時は「よくぞ特捜事件を持ち込んでくれた」と感謝されました。しかし今回はその様な気迫は感じられませんでした。※被告相手が違う。大阪地検には「フロッピーディスク改竄事件」もあったな。
<検察審査会への申立と検察審査会の議決>
○検察審査会への申立
・私達は検察審査会に審査請求しました(※小沢一郎でもあったな)。元検事などから検察審査会の実態を聞き、平易な請求書を書きました。しかし検察に不利な供述調書が提出されなかったり、たとえ提出されても審査員が読みこなせない可能性があります。
○議決の要旨
・議決の要旨は、①背任罪は、三好泰介/池田靖は不起訴不当、それ以外は不起訴相当、②公文書変造罪・公用文書毀棄罪は佐川宜寿/中村稔/田村喜啓は不起訴不当、それ以外は不起訴相当、③公用文書毀棄罪は、佐川宜寿/中村稔/田村喜啓は不起訴不当、それ以外は不起訴相当となります。
○議決の理由
・議決の理由は以下です(※大幅に簡略化)。
(1)背任罪
ア.損害は利害関係のない者が客観的に試算すべき。
イ.生活ゴミは契約の範囲外なのに、それを考慮している。
ウ.交渉において、池田/三好は1.3億円に近付けるように指示している。
エ.池田/三好には、自己保身の図利加害目的が認められる。
(2)公文書変造罪・公用文書毀棄罪
ア.検察官は被疑者の作成権限を曖昧に判断している。
イ.文書修正の方法が常識から逸脱している。また大幅な削除は変造と断定できる。
ウ.佐川は「部下に指示していない」と弁明するが、信用できない。また中村/田村には深い関与が認められる。
エ.松本/三好は実行者だが、命令に逆らえないので不起訴相当。
(3)公用文書毀棄罪
ア.応接記録は売買契約締結により事案終了と言えない。
イ.応接記録24通の廃棄が認められる。
ウ.佐川は「部下に指示していない」と弁明するが、信用できない。また中村/田村には深い関与が認められる。
エ.前西/三好/池田は実行者だが、命令に逆らえないので不起訴相当。
○議決への評価
・起訴議決とならなかったのは残念だが、不起訴相当は起訴議決と言える。また検察の不起訴理由はことごとく退けられた。
<検察審査会の審査における運用の改革・改善>
・本件のように政権が関与する場合、①不起訴裁定書以外に、「検察の判断と矛盾する証拠目録とその要旨」を提出させる、②告発罪名が多数の場合、補助弁護士は1名ではなく、最低2名とする事を検察審査会の事務局に要請すべきと学んだ。
4.情報公開訴訟と国家賠償請求の勝訴判決
○情報公開請求1と国家賠償請求
・2017年5月近畿財務局に対し森友学園の「小学校設置趣意書」の情報公開請求をします。7月情報公開されますが、小学校名/本文など大半が黒塗りでした。不開示の理由は、「経営上のノウハウが書かれているため」でした。この理由を不適当と判断し、不開示の取消を大阪地検に提訴しました。
・11月第1回弁論の前に、近畿財務局は「開成小学校設置趣意書」を全面開示します。その設置趣意書には経営上のノウハウは書かれておらず、誤字・空欄も多くありました。「子供権利条約・男女共同参画・雇用均等法などは日本人の品性を貶め、世界一流の教育を低下させた」とあり、「教育勅語」を高く評価していました。また「塚本幼稚園の受け皿が必要」とも書かれていました。財務省はこの下書きの様な設置趣意書で国有地を売却した事を国民に知らせたくなかったので不開示にしたのでしょう。
・2019年3月この開示2ヵ月遅延に対し、大阪地検に国家賠償請求をします。判決は不開示は情報公開法/国家賠償法の違反として、勝訴します。これは森友事件での初めての常識的な判決となり、国は控訴を断念します。
○情報公開請求(その2)と国家賠償請求
・2017年3月近畿財務局に「森友学園と近畿財務局の交渉記録」の情報公開請求をしますが、財務省は公開しませんでした。ところが2018年6月交渉記録217件があった事を公表し、2019年4月その交渉記録を開示します(※請求の2年後か)。7月この開示遅延の真相解明を求め、国家賠償請求を起こします。2020年6月「情報公開請求に対し意図的に不開示にしたのは違法で、国家賠償を認容する」との判決が下ります。
・しかし当時の理財局長・佐川/総務課長・中村への尋問がなかったため大阪高裁に控訴し、現在も係属中です。2018年6月財務省は「森友学園に係る改竄に関する調査報告書」を公表しますが、高裁は「改竄前の文書がどの様に存在したのか」「誰でも改竄可能だったのか」などの釈明を求めています。赤木氏の手記が公表された後も、安倍・菅政権はこの報告書で調査は終了したと答弁しています。
5.公文書の在り方を法的に追及する
<政府の公文書の在り方を考える会>
・2019年11月安倍・菅政権の公文書の作成・管理・情報公開が杜撰である事から、弁護士・原告で「政府の公文書の在り方を考える弁護士・研究者の会」(※以下同会)を発足します。情報公開請求を国民に広めるため、ホームページを開設します(※url省略)。ここで情報公開のイロハ、公文書管理法による規則、情報公開の体験などを掲載しています。
・政府は公文書管理法のガイドライン、各省の「公文書管理規則」を掲載しています。ただし各省の「文書取扱規則」「管理規則」「要領」などは公開していません。官僚は憲法・法律は守りませんが、自らが定めた規則・細則・要領は守ります(※何か変な話だな。公務員は法律に従っていると思うが)。そのため情報公開請求において、各省の規則・細則・要領が重要になるので、それを同会のHPに掲載しています。
<情報公開請求と国家賠償請求による追及>
○黒川検事長の閣議決定情報公開訴訟
・2020年1月「官邸ベッタリ」の東京高検検事長・黒川の任期延長が閣議決定されます。6月これに関し、法務省・人事院・内閣法制局に情報公開請求します。法務省は「勤務延長制度の検察官への適用について」を開示します。しかしこれは何時・誰が作ったかも分からない2枚の文書(資料1)でした。人事院からは、資料1に異論がないとのメモ程度の1枚の文書が開示されました(資料2)。内閣法制局からは、資料1に「意見がない旨を回答した」とのメモの様な1枚の文書が開示されました(資料3)。検事長の人事権は内閣人事局にあり、この違法な禁じ手を法務省が容認した事を示す文書は開示されませんでした。
・2020年6月この真相究明のため、大阪地検に情報公開請求訴訟を提訴します(※情報開示と提訴の日が同一⦅6月1日⦆なのは本当かな)。11月第1回弁論期日で以下の釈明を求めます(※長文なので大幅に省略)。
ア.資料1を法務省は人事院/内閣法制局との協議に利用したとある。法務省行政文書取扱規則は厳格な対処(※省略)を要求しているのに、その形跡がない。
イ.資料2/資料3は法務省が人事院/内閣法制局から接受した文書である。取扱規則の第8条・第10条によると厳格な対処(※省略)を要求しているのに、その形跡がない。
○アベノマスク情報公開訴訟
・アベノマスクの単価について情報公開請求します。ところが単価は黒塗りされていました。そのため2020年9月この不開示に対し取消訴訟を提訴します。
○内閣官房に対する「細則」などの情報公開請求と国家賠償請求
・内閣官房に文書管理規則などの情報公開請求をしたにも拘らず、法律に定められた30日以内に開示せず、さらに30日延長しました。これに対し、2020年10月行政訴訟を提訴しました。60日後に開示されたので、訴えの内容を変更しました。赤木氏の手記にあった「できる限り引き延ばす」は内閣官房でも行われたのです。
6.今後の目標と課題
・安倍政権での文書管理を、菅政権でも引き継ごうとしています。これでは意思決定過程が不透明になります。第1に、公文書を作成する義務があるのに、作成しない実態があります。これは『公文書危機 闇に葬られた記録』(毎日新聞社、2020年)に詳しく書かれています。これは記者クラブに属さない記者が、情報公開請求により書いたものです。私達はこの公文書未作成に対し訴訟を起こし、その実態の解明しようとしています。時には国家賠償請求も活用します。※メディアにはメディアなりの、弁護士には弁護士なりの訴える手段がある。
・第2に、意思決定の過程を隠蔽するため、「組織共有性がない」とし、個人のパソコンに情報を保存する方法が取られています。これに対しても情報公開訴訟/国家賠償請求で応じています。
・第3に、保存期間が1年未満として、事案終了と同時に廃棄しています。このケースに対しても訴訟で説明を求めています。
・これらの問題を国会で質問しても、官邸・官僚はお茶を濁すだけです。そのため私達は法廷にて批判し、是正を求めています。これが弁護士・研究者の役割です。
資料 赤木雅子さんの陳述書全文
・森友学園問題で改竄に加担させられた赤木敏夫さんの妻・雅子さんが、公務災害認定の情報公開を求め提訴します。その大阪地裁での第1回口頭弁論の陳述を掲載します(※大幅に簡略化)。
1・夫は改竄を悔み、2018年3月7日自死します。夫が命を絶った原因・経緯を明らかにし、また同じ様な事象が起きないよう、事実を公的に説明して欲しく、国及び佐川氏を訴えます。
2.2017年2月夫と私は公園にいて、近畿財務局の上司・池田氏に呼び出され、決裁文書の改竄をしました。夫は国民のために仕事ができる国家公務員を誇りに思っていました。それなのに改竄に加担されたのです。夫は改竄に反対しました。池田氏もそう述べています。
手記・遺書には「抵抗したが改竄してしまった。今の健康状態・体力では、この方法でしか責任を償えない」と書いています。夫は死んでお詫びしたのです。
3.国は真相が知りたい私の思いを裏切り続けています。
(1)夫が亡くなった5日後、国は改竄を認め、その3ヵ月後に調査報告書を発表します。しかしそれには誰の指示で改竄したかも記されていません。夫の自死についても触れておらず、夫の手記も要求されませんでした。池田氏は「赤木さんは几帳面で、改竄の経緯を正確にメモしています」と言っています。それなのに手記を要求されていません。
(2)私は公務災害認定の理由を知るため人事院に対し情報公開請求しました。70ページ程の文書が開示されますが、多くが黒塗りで、知りたい事は分かりませんでした。そこで2020年4月、今度は近畿財務局に情報公開請求しました。しかし開示されたのは、年金の金額・支払日などが書かれた、10ページ程の文書でした。残りの文書は、2021年5月までに開示を決定するそうです。
(3)真相解明のために第3者委員会による調査を求める電子署名を集めました。35万人を超えたので、2020年6月安倍首相・麻生財務相に提出しました。しかし「検察の捜査が終了したので調査しない」とされました。しかし検察の捜査は刑事処分のためであり、真相解明のための調査は別です。
4.2017年2月安倍首相は「森友学園への国有地払い下げに私や夫人が関わっていたら、国会議員を辞める」と発言しました。財務省秘書課長・伊藤は「この発言により野党から理財局に資料請求があったが、改竄前の文書を出せなかった。その意味で、首相の発言と改竄が関係しているかもしれない」と述べています。この事からも安倍首相には真相解明に協力してほしいです。
池田氏も前任者の備前氏も、「裁判では本当の事を話す」と言っています。安倍夫人と籠池夫妻とのスリーショットや、国有地の値引きや、決裁文書の改竄について話してもらいたいです。また理財局/近畿財務局の幹部にも、事実を話してもらいたいです。
5.夫は自死する日の朝「ありがとう」と言いました。その時の顔は絶望に満ち、泣いていた様に思えます。夫が真面目に働いたからこそ、真実を知りたいです。
6.訴訟の目的を3つ挙げていますが、最も重視するのは夫が命を絶った原因と経緯です。夫が作成した資料や、沢山の人に尋問して、事実を明らかにして下さい。そして公平な判決をお願いします。
第3章 加計学園問題と安倍・菅政権の国政私物化 前川喜平 ※本章も元文科省事務次官が書いているので詳しい。
<加計学園問題を風化させない>
・森友・加計・桜・学術会議と国政の私物化が止まりません。また加計問題は風化しています。加計問題は事実関係が一番明確です。2017年に文科省内から様々な文書がリークされます。菅官房長官は調査後、「文書はなかった」として「怪文書」とします。しかし5月、私は「あったものをなかったとできない」と記者会見で発言します(※2016年6月~2017年1月前川氏は文科省事務次官)。再度の調査で文書の存在が確認されます。文科省は他の府省と異なり正直な組織で、嘘は付けないのです。
・これらの文書には加計学園と安倍首相の関わりが書かれていました。獣医学部の新設が「総理の意向」であると書いてあったのです。国家戦略特区担当の審議官・藤原豊が文科省の専門教育課長に伝えています。当時官房副長官であった萩生田光一も新設を進めていました。彼と安倍首相と加計孝太郎理事長がバーベキューしている写真があったり、彼は落選中(※2009~12年)に加計学園の大学の客員教授をしています。
・私に獣医学部の新設を強く勧めたのは首相補佐官・和泉洋人でした。彼は菅氏の横浜時代からの側近です。国土交通省の出身で特区に詳しい人です(※菅氏の横浜市議は1987~1995年。和泉氏は1976年建設省入省。接点はよく分からない)。
<歪められた行政>
・獣医学部の新設は、加計学園/今治市が構造改革特区を利用した試みですが、15回提案し、全て却下されていました。これは農水省の「獣医学部は充分足りている」との判断からです(※家畜だけでなく、ペットブームなども関係しそうだが)。そこで加計学園は構造改革特区から、アベノミクスの3つ目の矢「成長戦略」の国家戦略特区に切り替えたのです(※特区にも色々ありそうだな)。
・加計問題には3つの不正があります。①不公正-正当なプロセスで審査されていない。②不公平-より強力な京都産業大学の新設は認めなかった。③不透明-「加計ありき」で進められたのに、それが隠された。国家戦略特区制度は、元々その様な不正が許させる制度なのです。
・「国家戦略特区域法」の規制緩和の要件は「国際的な競争力」「国際経済拠点」です。この審査をするのが安倍首相が議長の「国家戦略特区諮問会議」です。今治市がペーパーに「世界に冠たる獣医学部を作る」と書き、適合となったのです(※詳細省略)。
・2015年国家戦略特区担当の石破茂が「石破4条件」を決めています。そこに「既存の大学でできない獣医師を養成する場合は新設を認める」とあり、きちんと審査していれば通らない案件です。今治市の新設趣意書には「人獣共通感染症(※新型コロナなど)の先端ライフサイクル研究を行う」と書いています。しかし実際は「世界に冠たる研究」はなされていない様です。
<キーパーソンだった和泉補佐官>
・国家戦略特区制度を利用した新設に前例があります。国際医療福祉大学の医学部新設です。国際医療福祉大学に附属病院はあったのですが、医学部がなかったのです。入学定員に留学生枠を設ける事で「国際経済拠点」となり、新設が認められたのです。加計学園の獣医学部新設は大きな問題になりますが、この医学部新設は問題になっていません。それは当件には日本医師会/政治家などの賛同があったからです。一方加計学園の場合は日本獣医師会は反対しており、安倍首相しかおらず、それを補佐したのが和泉氏です。
<安倍側近官邸官僚と菅側近官邸官僚>
・安倍・菅政権では主席秘書官・今井尚哉を始めとする「官邸官僚」が政権中枢で知恵を絞っています。今井氏が原発輸出、秘書官・佐伯耕三がアベノマスク、補佐官・長谷川榮一が対ロ外交、内閣府統括官・新原浩郎が一億総活躍などを担当しています。これらの安倍側近官邸官僚は全て経産省出身で、安倍内閣は「経産省内閣」と呼ばれます。
・一方菅官房長官に近い官邸官僚は、内閣官房副長官・杉田和博、内閣調査室安全保障室長・北村滋などの警察官僚です。菅政権になると安倍側近の官邸官僚は一掃され、菅側近の官邸官僚に一元化されます。その中で和泉氏は特に知恵が働きます。
<動かぬ証拠「愛媛県文書」>
・加計問題は文書が豊富に存在します。「総理のご意向」などだけでなく、京都産業大学を排除するために「広域的に獣医学部が存在しない地域に限り新設を認める」との条件を加えたのが当時の内閣官房副長官・萩生田です。
・また決定的な文書が、2018年愛媛県が国会に提出した文書です。私は2016年から加計問題に関与していますが、2015年頃からあったようです。加計学園事務局長・渡辺良人が県庁を何度も訪れ、構造改革特区での進捗を報告しています。県庁の役人が東京を訪れた記録もあります。これを見ると、2015年2月加計理事長と安倍首相が面談し、2017年1月新設が認められます。
・3月加計理事長が安倍首相に「地元の動きが鈍い」と言っています。これは50億円の補助金と思われます。その後加計理事長と今治市・愛媛県の担当課長が首相秘書官・柳瀬唯夫を訪ねます。柳瀬氏は「首相案件」「死ぬほど実現したい意識が最低条件」などを伝えます。これにより補助金は96億円に跳ね上がります。また今治市の37億円の市有地は無償貸与から無償譲渡に切り替わります。※今治市民などから損害賠償請求は起きていないのかな。
・愛媛県文書から、柳瀬氏などが国家戦略特区制度で新設する方法を手取り足取り指南した事が分かります。特区担当大臣が石破氏だったので進まなかったのですが、2013年8月山本幸三に代わると一気何成に進みます。※特区と補正予算は似ているかな。
<安倍首相の偽造答弁>
・愛媛県の文書を見ると明らかなのに、安倍首相は「獣医学部新設で加計理事長と面談した事はない」と国会で答弁します。「加計学園の事務局長が愛媛県に嘘の報告をした」としています。これに事務局長は「ふと(そのストーリーを)思った」と言い、減給処分を受けています。
・加計問題の真相究明は終わっており、次は責任追及です。これが森友問題と異なる点です。ただ加計問題は刑事・民事、何れも裁判にするのが難しいのです。
<政治家同士の確執>
・獣医学部新設は閣内でも自民党内でも賛否両論がありました。石破大臣は慎重派でしたし、日本獣医師会の圧力下にある麻生太郎財務相は反対していました。麻生氏の地元福岡の自民党県連会長の蔵内勇夫は麻生氏に近い人物で、日本獣医師会の会長でした。
・2016年10月福岡6区の衆議院補欠選挙が行われます。県連は蔵内氏の息子を公認しますが、別に亡くなった鳩山邦夫の息子・二郎も立候補します。蔵内候補を麻生氏が、鳩山候補を菅幹事長/二階俊博・自民党幹事長が応援する形になります。自民党はどちらも公認しませんでした。
・この選挙結果が獣医学部新設に大きく影響します。松野文科相/萩生田官房副長官が「選挙結果を見る必要がある」との発言をしています。選挙で鳩山候補が圧勝し、翌月の国家戦略特区諮問会議で獣医学部新設の推進が決まります。
<勇気ある現職官僚>
・加計学園では現職官僚が多くの文書を提供しています。その中には職員のパソコンにしかない文書やメールもあります。退職した私と違い、現職の彼らは勇気ある行動をしています。多くの職員が「この仕事は酷い」と思っていたのです。文科省は霞が関の三流官庁と言われ、それゆえ多くの文書が出てきたのです。※権力に擦り寄らない省かな。
<官邸による官僚人事>
・しかし文科省の人事も、官邸による締め付けが厳しくなっています。今の文科省事務次官・藤原誠は私の3年後輩ですが、2年以上務めています。彼は事務次官になるとは思えなかった人です。彼は大臣官房の時に定年を迎えたのですが、延長され、事務次官になったのです(※黒川検事長と同じパターンかな)。ナンバー2だった審議官は退官させられ、藤原氏が2階級特進したのです(※他の人事も解説しているが省略)。官邸はお眼鏡にかなった人物を幹部にしているのです。これで失敗したのが黒川弘務を検事総長にしようとした件です。
・菅首相は官房長官時代から人事に介入しています。総務省の事務次官候補だった平嶋彰英を左遷した話があります。平嶋氏は「ふるさと納税には逆進性がある」とし、拡大に反対したのです。そのため自治大学長に左遷されます(※詳細省略)。
・私も第2次安倍政権で事務次官に任命されますが、これは官邸の失敗です。官邸のチェックが甘かったのです。私は事務次官に任命される前年、安全保障関連法に反対するデモに参加しています。この法案を憲法違反と考えていたからです。法案成立の前夜、国会正門前でシールズ達と一緒に声を挙げていました。内閣情報調査室/公安警察は、これを知る事ができなかったのでしょう。
<明治産業遺産というお友達案件>
・文科省で安倍官邸から覚えめでたかったのが、私の3年先輩の木曽功です。局長級の国際統括官を務め、ユネスコ大使になります。帰国後は内閣官房参与と加計学園理事/千葉科学大学学長を兼務しています。その時事務次官だった私に、獣医学部新設を催促しています。これが天下りの弊害です。
・彼が覚えめでたかったのは、「明治産業遺産」の世界文化遺産への登録に尽力したからです。この運動を、加藤六月の娘・康子が行っていました。加藤六月は安倍晋太郎の側近で、彼女と安倍首相は幼馴染みです。彼女の運動を安倍首相が支援したのです。
・この案件は筋が悪いものでした。多数の自治体が参入したため、構成資産は松下村塾から八幡製鉄所まで膨大でした。しかもその中心である富岡製糸場は既に世界遺産になっていました。また軍艦島などは保全措置が取られていません。さらに世界文化遺産に推薦できるのは、年1件だけです。その選定を文化庁の文化審議会の世界文化遺産特別委員会がやっていました。
・2013年特別委員会は「長崎の教会群とキリスト教関連遺産」を選定します。これは2015年が「信徒発見」150周年だったからです(※詳細省略)。これに割り込んできたのが明治産業遺産です。官邸は内閣官房に「産業遺産の世界遺産登録推進室」を作ります。「明治産業遺産に八幡製鉄所/長崎造船所などの稼働中の資産が含まれるため、文化庁で審査できない」が理由です。
・この組織が作られたのは2017年で、まだ民主党政権の時です。実はこの時の地域活性化統合事務局長が和泉氏です。和泉氏がこの案件を推し進めたのは、次期首相と思われる安倍氏の歓心を買いたかったからでしょう。2013年8月第3回会合で、明治産業遺産をユネスコに推薦する事が決まります。この数日前に文化庁は「長崎キリスト教遺産」を選定していましたが、政治判断となり、明治産業遺産が推薦される事になります。※今も続く薩長閥のゴリ押しだな。
<文化審議会への人事介入>
・東京大学教授・西村幸夫は両案件に関わっていました。彼は「長崎キリスト教遺産」を望んでいたと思われます。2016年3月文化庁は彼を文化審議会委員に引き続き任命しようとしますが、和泉補佐官の圧力で外されています。
<明治産業遺産と徴用工問題>
・2015年6月ドイツでユネスコ世界遺産委員会が開かれ、明治産業遺産が審査されます。これに和泉補佐官/内閣官房参与・木曽/加藤氏などが出席します。これに軍艦島/三池炭鉱/長崎造船所/八幡製鉄所などが含まれ、韓国は反対します(徴用工問題)。議長国ドイツの斡旋で、情報センターに徴用工の歴史を掲示する事で決着します。この情報センターは2020年に新宿に開設されます。しかも「軍艦島で朝鮮人差別は聞かなかった」などの証言を展示したため、韓国から抗議されます。
・この明治産業遺産の世界文化遺産への登録も、安倍首相のお友達による国政の私物化だったのです。さらに木曽氏は加計学園に天下り、獣医学部新設に働いたのです。
<なんでも官邸団>
・菅官房長官と杉田官房副長官は、事務次官/局長の人事権をフル活用します。幹部ポストの任期は2年程度なので、安倍・菅政権で霞が関は官邸の言う事を何でも聞く「なんでも官邸団」になります(※これが行政改革の目的だったので仕方ない)。
・本来は政権から独立していたのに、それが失われたケースもあります。2013年内閣法制局長官の人事で、これまでは次長が任命されていましたが、外部の外交官が任命されます。これにより翌年「憲法9条で集団的自衛権の行使を認めている」との「解釈改憲」が閣議決定されます。
・内閣法制局の独立性が失われ、黒川・東京高検検事長の定年延長が試みられ、日本学術会議の会員の任命が拒否されたりします。官邸の言う通りの内閣法制局になったのです。黒川氏の定年延長問題で、人事院も官邸の支配下になったと痛感しました。松尾恵美子・給与局長は「検察官に国家公務員法の定年延長は適用されない」としていましたが、一宮なほみ・人事院総裁は国会で「解釈が変更されていた」と答弁します。
<文化功労者選考分科会人事と学術会議問題>
・官邸による人事介入は審議会委員にも及びます(※官僚ポスト以外もか)。2016年の文化功労者選考分科会(元文化功労者選考審議会)の委員人事です。この分科会は9月に委員が発令され、2ヵ月掛けて文化勲章受賞者/文化功労者を選出します。私は委員予定者の名簿を杉田官房副長官に提出しました。1週間後彼に呼ばれ、2名を外せと言われます。1人は「安保関連法案に反対する学者の会」のメンバーで、もう1人は以前政権批判した人でした。大臣の了解を得ていましたが、差し替えます(※彼も加担したのか)。
・日本学術会議の会員6名が任命を拒否された話を聞き、文化功労者選考分科会の人事を思い出しました。しかし審議会と学術会議の人事権は多少異なります。審議会の人事権は政府にあるため、介入しても違法ではありません。一方学術会議の人事権は学術会議にあり、首相は推薦に基づき任命するだけです。
・この6名は安保関連法案や共謀罪法を批判する言動があった人です。しかし菅首相はそれ以外を拒否の理由にしています。政権を批判する人に不利益を与えるのは言論弾圧であり、言論の自由/学問の自由などの侵害です。
・日本では人権として「差別反対」「生存権保障」などの平等権・社会権は注目されますが、自由権も大事です(※日本人は個人的主張をしない)。人権教育で「自由の価値」が軽視されています。自分には関係ないと思っていると、1930年代のドイツや日本の様になります。
・2020年の文化功労者の選考に政治の介入があったと疑われます。菅首相の後援者で、ぐるなび会長の滝久雄が、「パブリック・アートとペア碁を普及させた」として受賞しています。
<アベスガ政権からスガスガ政権へ>
・菅政権は官邸一強を継続したので、安倍政治を継承しています。しかし安倍政権には菅官房長官がいましたが、菅政権は菅官房長官はいません。安倍・菅政権は菅官房長官がいたので成り立っていたのです。今の菅政権の官房長官は加藤勝信です。菅氏が官房長官の時、3人の副長官がいて、衆議院から1人(加藤氏)、参議院から1人、官僚から1人(杉田氏)でした。加藤氏は答弁は上手ですが、官房長官の役割を菅首相自身がやっています(スガスガ政権)。
・スガスガ政権になって顕著なのが、官邸官僚の顔ぶれです。安倍政権では安倍側近の官邸官僚が闊歩・暗躍していましたが、菅政権で一掃され、菅側近の官邸官僚が権力を拡大しています。その中心が、杉田官房副長官/国家安全保障局長・北村滋/内閣情報官・瀧澤裕昭などの警察官僚です(※経済官僚から警察官僚の流れは全体主義みたいで恐いな)。杉田氏/北村氏は公安警察出身で内閣情報官の経験者です。菅政権が警察権力で国民の自由・権利を抑えるのではと心配されます。もう1人、菅政権で権力を拡大しているのが首相補佐官・和泉洋人です(※度々出て来る)。
・安倍政権では官邸の経済官僚が政策を作っていました。菅政権では首相と首相が選んだ事務次官・長官との間に太いパイプができると思われます。例えば財務省の次期事務次官は矢野康治・主計局長、警察庁の次期長官は中村格・次長と言われていますが、2人とも菅官房長官の秘書官でした。中村氏は安倍夫妻のお友達で、逮捕寸前だった山口敬之を助けた人です(※詳細省略)。これでは法治国家になりません。
・安倍政権では今井首席秘書官などが政策を作っていましたが、菅政権では本人が作る事になると思われます。菅首相は間違いを認めず、反省もしません(※出生率/ふるさと納税/GOTOキャンペーンなどを説明しているが省略)。安倍政権は「個別的私物化」でしたが、菅政権は「全体的私物化」になります。
<国家主義と新自由主義>
・1980年代の中曽根政権辺りから、政治が国家主義/新自由主義に変わります。何れも人を大切にしない思想です(※戦争の悲劇が薄まっていったかな)。国家主義では権力と富が結合されます。そのため強い者は増々強く、弱い者は増々弱くなります。これは市場原理を重視する新自由主義と共通です。新自由主義では人は自分の損得だけで動きます。そのため公共的分野が作られなくなり、市民は育たず、法・秩序も作られません。そうなると国家が秩序を押し付けるようになります。※さすが文科省事務次官の考え方だな。
・安倍政権は国家主義が色濃く出ていました。教育勅語を認め、自己抑制・自己犠牲・全体奉仕を求め、日本人の誇りを道徳教育に加え、歴史修正主義を教化し、教育に介入しました。一方菅政権は新自由主義が色濃く出ています(※これは経済官僚から警察官僚の流れと違う気がする)。竹中平蔵をブレーンとし、「中小企業を減らせ」と主張するデービッド・アトキンソンを重宝しています。貨幣価値だけで評価すると、社会的価値を見失います。
<憲法を裏から崩壊させる菅政権>
・安倍首相も菅首相も憲法を軽視しています。安倍首相は憲法改正を試み、安全保障関連法を成立させるなど、国民の目に見える行動をしました(解釈改憲)。これに対し菅政権は憲法を裏から崩壊させています。日本学術会議問題のように、憲法を骨抜きにしています。菅首相は自分の権力を拡大させる事が目的のように思えます。彼は父親に反抗して上京しました。その父親を見返すのが目標なのでしょう。
第4章 「桜を見る会」問題の追及 小野寺義象 ※本章も「『桜を見る会』を追及する法律家の会」の事務局長が書いているので詳しい。
<「桜を見る会・前夜祭」問題>
○「桜を見る会」問題
・「桜を見る会」は各界の功績・功労者を招く目的で首相が主催し、参加者は1万人程度、予算は1.8千万円で推移してきた。ところが第2次安倍内閣になると参加者・経費は増え続け、2019年は参加者1.8万人、支出は予算の3倍の5.5千万円に増加した。増加の原因は「首相枠」の急増で、2019年は全招待者1.5万人中、9千人が「首相枠」となった。これに安倍首相の地元後援会(※以下後援会)の人が約800人含まれ、彼らは功績・功労者とは思えない。しかも彼らは新宿御苑の開門前に入場し、首相夫妻と記念撮影している。さらに「昭恵枠」もあった。
・また大規模消費者被害を起こした者まで招待している。2015年マルチ商法「ジャパンライフ」の山口隆祥会長、2016年仮想通貨「48ホールディングス」の淡路明人社長を招待し、被害を拡大させた。これらが「桜を見る会」の実態で、安倍首相の私利私欲のために公的行事・税金が使われた。※旧統一教会とも協力していたな。
○前夜祭の問題
・「桜を見る会」と共に行われたのが、後援会の観光ツアーと「前夜祭」です。前夜祭は都内の高級ホテルで行われ、約800人の後援会員が参加した。「桜を見る会」は「政治の私物化」が問題だが、前夜祭は「政治とカネ」が問題である。ホテルでは最低でも1.1万円必要なのに、会費は5千円だった。この差額を後援会が負担した場合、選挙区有権者への寄付になり、公職選挙法違反になる。しかし後援会の収支報告書にこの記載はない。ホテルと後援会間の契約書/請求書/領収書などが提出されれば疑惑は解明するが、安倍首相は拒否した。
<「桜を見る会」を追及する法律家の会>
・「桜を見る会・前夜祭」問題に対し、野党は共同で「総理主催『桜を見る会』追及本部」を設置する。これは政治の場で政治的道義的責任を追及するものだ。しかし刑事責任(公職選挙法、政治資金規正法)を追及するため法律家も取り組みを始める。
・2020年1月20日国会が開会されます。1月23日弁護士が野党合同ヒアリングに招かれ、安倍首相が犯罪構成要件に該当しないように事実を作っている事を伝えます。全国の弁護士・法学者も連携し、2月13日「『桜を見る会』を追及する法律家の会」(※以下同会)が結成される。同会は「桜を見る会・前夜祭」問題が政治的・道義的問題であり、公職選挙法/政治資金規正法/公文書管理法に抵触する事を確認する。首相による違法行為を見過ごさず、法律家として真相究明/法的責任を追及する事を宣言する。
<通常国会での攻防>
・国会で「桜を見る会・前夜祭」問題が議論されます。内閣府が廃棄済みとされていた文書の一部を公開します。野党は名簿の開示を要求しますが、安倍首相は「不法侵入を助長する」として開示を拒否します。「桜を見る会」の私物化については、「長年の慣行」「招待基準は曖昧」「名簿は廃棄」「個人情報」などの弁明をします。前夜祭の収支も、「後援会に明細書・領収書はない」「ホテルには営業秘密がある」として書類の開示を拒否します。会費の差額については、「各自がホテルに払ったので、後援会は報告する必要はない」と弁明します。
・国会での追及は強まります(※詳細省略)。そんな中、ホテルは「明細書は必ず発行する」、後援会員は「ホテルと契約した覚えはない」と述べます。これらから安倍首相の虚偽答弁が明らかになります。しかし真相究明・責任追及がなされない中、新型コロナが流行し、「桜を見る会・前夜祭」問題は鎮静化します。同会は刑事告発のため、事実を抽出し、告発状の作成に取り組みます。
<第1次告発>
・2020年4月中旬、第1次告発の告発状が完成します。証拠が揃っている「2018年前夜祭」での、政治資金規正法違反(収支報告書不記載)と公職選挙法違反(後援会による寄付)に絞ります。
○政治資金規正法違反の犯罪
安倍後援会は前夜祭の主催者で、ホテルニューオータニとサービス契約を締結しました。ホテルへの支払や参加者からの参加費(収入)を収支報告書に記載しなかった事は、政治資金規正法に違反します。この犯罪主体は会計責任者ですが、安倍首相には共同正犯が成立します。
安倍首相は「参加者本人が参加費をホテルに払っているので、後援会は契約主体ではない」と述べていますが、ホテルは「主催者と契約した」と述べています。ANAインターコンチネンタルホテルは、①契約主体は主催者であり、参加者から料金を頂く事はない、②ホテルは必ず主催者に見積書・請求明細書を発行する、③宛先空欄の領収書を発行する事はないと述べています。これらから契約主体が後援会である事は明確です。
○公職選挙法違反の犯罪
公職選挙法は後援会が選挙区の者に寄付する事を禁じています(※選挙事務所でお茶を提供するは良いけど、お菓子はダメみたいな規則があったな)。前夜祭は最低でも1人当たり1.1万円なのに参加者からは5千円しか徴収していません。この差額は寄付になります。この犯罪主体は後援会の役員ですが、安倍首相には共同正犯が成立します。
・同会は告発状の作成と並行し、告発する方法も検討します。告発人は1千人規模の弁護士・法学者にする事に決めます。ところが安倍政権が検察庁法を「解釈変更」し、黒川弘務・東京高検検事長を定年延長し、検察幹部の定年などを政権が自由にできる様に検察庁法を改正しようとしていました。そのため5月14日告発人が500人を超え、21日に告発状を東京地検特捜部に提出する事にします。
・その直後事態は急変します。15日検察OBが改正法案に反対する意見書を提出し、18日政府は「今国会での法案成立を見送る」と発表します。さらに20日『週刊文春』が黒川氏の「賭けマージャン」をスクープし、21日黒川氏は検事長を辞職します。※政府は一歩引いたんだ。
・同会は告発に当たって、「本件は重大であり、政権に忖度せず、厳正公平・不偏不党の立場で法適用するため強制捜査も厭わず、真相究明・刑事責任追及をして欲しい」と声明します。
<安倍首相の退陣>
・告発後、検察に捜査状況を問い合わせますが、回答は全くありませんでした。6月22日「『桜を見る会』を追及する県民の会・宮城」(※以下県民の会)が、徹底捜査・刑事責任追及を求める署名5571筆を検事総長に提出します(※他の運動も紹介しているが省略)。
・この様な中、8月28日安倍首相は持病悪化を理由に首相辞任を発表します。辞任記者会見で「政治を私物化した覚えはない」と述べ、同会はこれを批判します。さらに「私物化を容認したのは自民党にも問題がある」と指摘します。
<菅政権下での取り組みと安倍再登場>
・自民党総裁選で菅義偉が当選し、2020年9月16日菅政権が発足します。菅首相は「『桜を見る会』は中止し、再調査はしない」と述べます。この様な動きに対し、10月30日同会は市民集会「国政私物化をやめさせよう! 森友・加計・桜の徹底追及を」を開催します。この集会はZOOMで配信されます(※コロナが最も警戒された時期だな)。この集会では菅政権による日本学術会議問題も取り上げられます。
・そんな中、安倍前首相は9月19日靖国神社に参拝するなど活動を再開します(※詳細省略)。ところが11月23日読売新聞が東京地検特捜部の捜査内容を報道します。
<捜査報道>
・これは「安倍前首相秘書ら聴取 東京地検『桜』前夜祭会費補填巡り」の見出しで、地検は公設秘書や後援者など20人以上から聴取していました。これを機にマスコミは「桜を見る会・前夜祭」の報道を始めます。「ホテル発行の明細書は存在する」、「差額を安倍側が補填した」などの事実が報道されます。さらに補填は後援会ではなく、安倍前首相の資金管理団体「晋和会」が行っていたのです。そして晋和会は、この支出を収支報告書に記載しておらず、政治資金規正法に違反していました。
・2013年安倍側はこの支出の取り扱いを総務省に問い合わせ、晋和会の収支報告書に記載しています。ところが2014年小渕優子が同様の問題で政治資金規正法違反となり、それ以降は晋和会は収支報告書への記載を止めます(※彼女の違反が影響したんだ)。
・この捜査報道により安倍前首相の威光は陰ります。これに対し安倍前首相は「晋和会の補填は報道された日に知った」と相変わらず他人に責任転嫁します。
・これらに対し12月1日、同会は東京地検に真相究明/刑事責任追及を要請します。また「国民が検察を動かした」「告発内容が正しかった」「犯罪内容が悪質」「安倍前首相が国会で真相を語り、政界からの引退を要求する」などを声明として発表します。さらに菅政権・自民党に対し、これらの事態の深刻さを自覚し、政治の私物化の解明を求めます(※詳細省略)。
<検察による幕引きと第2次告発>
・検察の捜査で「前夜祭」問題は一層の捜査が必要になります。ところが政治資金規正法違反では、後援会代表で公設秘書の配川博之だけを略式起訴し、安倍前首相は不起訴処分にする報道が流れます。これに同会は、「政治資金規正法だけでなく公職選挙法での立件も行う」「略式起訴でなく正式起訴する」「秘書だけでなく安倍前首相も処罰すべき」とし、検察に再要請書を提出します。さらに略式起訴された場合に備え、東京簡裁に「略式起訴された場合、刑事訴訟法に基づく審判をして頂きたい」と要請します。
・12月18日同会は第2次告発を決定します。第1次告発は「2018年前夜祭」での政治資金規正法違反/公職選挙法を対象にしていましたが、検察の捜査はそれに限定しておらず、安倍前首相が代表の晋和会も関係していたのです。不起訴処分を不当とし、検察審査会に審査請求するためには対象事件を告発している必要があり、告発対象の拡大が必要でした。
・第2次告発状の作成は休日返上で行われ、12月21日東京地検に提出します。2015~19年前夜祭での政治資金規正法違反/公職選挙法、および晋和会の政治資金規正法違反、安倍前首相の会計責任者に対する選任監督義務違反/重過失責任を告発します。この告発はスピードを要したため、約10名での告発になります。
<激動の5日間>
・12月21~25日「桜を見る会・前夜祭」問題が激動します。21日同会は第2次告発を行ないます。自由法曹団(?)も東京簡裁に正式裁判の要請書を提出します。
・22日東京地検特捜部が安倍前首相から事情聴取します。
・23日後援会の会計責任者・阿立豊彦が収支報告書を訂正し提出します。
・24日東京地検特捜部は公設秘書・配川を東京簡裁に略式起訴し、同日罰金100万円を命じ、配川氏は納付します。他の被告発人(※被告の正式名かな)は不起訴処分となります。安倍前首相は「事務所が補填した事は知らなかった。道義的責任からお詫びするが、議員辞職・離党はしない」と発言します。
・25日衆参両院の議院運営委員会で前夜祭に関する質疑が行われ、安倍前首相は虚偽答弁を謝罪しますが、責任を秘書などに転嫁し、明細書・領主書の提出を拒否し、原資の説明もしませんでした。
・東京地検特捜部は晋和会問題の捜査もせず、第2次告発からわずか3日後に安倍前首相を不起訴処分にしたのです。これは検察と安倍側が年内決着で手を打ったと考えられます。※これで「桜を見る会・前夜祭」問題は終結?
<不起訴処分への抗議>
・12月24日同会は「東京地検による処分は厳正公平でなく、政治的配慮の下で行われた」として、以下の問題などを指摘する。
安倍前首相の刑事責任を明かすには、共謀の事実を捜査せねばならず、それには強制捜査が必要である。任意での聴取は取り調べとは言えず、検察は安倍前首相の刑事責任逃れに加担したと言える。
公設秘書の略式請求は政治資金規正法の不記載罪が対象である。宴会費用を補填した事は明らかで、公職選挙法に違反する。検察は利益を享受した後援会員の認識を問題としているが、徹底的な捜査を行っていない。
本件は現役の首相が反復的に行った犯罪で、重大性・悪質性が高い。略式起訴で終わらせるような事案ではない。
同会は今回の検察の対応などを分析し、検察審査会への申立を検討する。
・同会はこの指摘に続き、「法の支配/民主主義を取り戻すまで活動を続ける」と宣言した。検察の不起訴処分や安倍前首相の開き直りに対し、県民の会は11.3万人の署名を集めた。マスコミの世論調査では、80%が納得できないと回答した。また「安倍前首相の虚偽答弁は118回だった」と報道された。
<検察審査会への不服申立と第3次告発>
・2021年に入り同会は検察審査会への不服申立の準備を始める。検察は秘書に責任を負わせ、安倍前首相をかばって幕引きした。この不当性を以下の3点に整理した。
有権者への違法の寄付を収支報告書に記載せず、これを不問にした。
晋和会が補填したのに、後援会の収支報告書の訂正で済ませている。※隠蔽・責任転嫁が続けられている感じだな。
安倍前首相は秘書に責任転嫁するが、収支報告書不記載の刑事責任を負うべき。
・12月23日後援会の収支報告書が訂正されたが、これは辻褄合わせに過ぎなかった事が判明する。事実からすると、後援会の収入は「参加者からの会費+晋和会からの補填金」となります。ところが「参加者からの会費+前年度からの繰越金」と訂正されていたのです(※詳細省略)。そしてこれは政治資金規正法の虚偽記載罪に該当します(※政治資金規正法は資金管理団体だけが対象では)。
・この訂正は「晋和会隠し」に過ぎず、安倍前首相が代表の晋和会に「政治とカネ」の問題が及ぶのを避けたのです。しかもこんな誤魔化しを東京地検特捜部が見抜けないはずはなく、これを容認したのです。政治資金規正法は政治資金の透明化が目的です。参加費を上回る補填金の原資を明らかにすべきです。
・2月2日同会は検察審査会に不服申立します。検察審査会は市民11人で構成されます(※一般市民なんだ。選挙人名簿からくじで選ぶらしいが、弁護士とかになるのかな)。「桜を見る会・前夜祭」問題に市民感覚が発揮され、「起訴相当」が議決される事を期待します。また後援会の収支報告書の訂正に対し、虚偽記載罪の第3次告発を検討しています。
第5章 桜を見る会へのジャパンライフ会長招待問題 石戸谷豊
<はじめに>
・本章はジャパンライフ代表・山口隆祥が2015年「桜を見る会」に招待され、それを預託商法に利用した問題を取り上げる。ちなみに政府は「桜を見る会」の目的を「各界の功績者・功労者を招き、慰労するため」としている。
<マルチ商法と預託商法>
・2015年当時彼はマルチ商法ではなく、預託商法を行っていた。2020年10月詐欺で起訴されます。マルチ商法は特定商取引法で規制されますが、禁止されていません。一方預託商法は犯罪です。彼は古くから悪徳商法で有名でした。1971年から30年間はマルチ商法、2003~18年までは預託商法を行っています。
<ジェッカーチェーンのマルチ商法>
・1975年彼は国会に登場します。マルチ商法の被害が拡大し、被害者は100万人いたとされます。そこでマルチ業者ジェッカーチェーン社長の彼が参考人質疑に呼ばれたのです。そこで彼は「自分がやっているのは、ダスキン/ヤクルトと同じフランチャイズ」と開き直っています。
・翌年、消費者を保護する初めての法律「訪問販売法」(今の特定商取引法)が成立します。マルチ商法は連鎖販売取引として規制されます。ジェッカーチェーンは倒産します。
<ジャパンライフのマルチ商法>
・彼はジェッカーチェーンが倒産する前の1975年、ジャパンライフを設立し(※以下当社)、1980年頃から健康布団などでマルチ商法を展開します。訪問販売法はマルチ加入者が商品を買い取り、それを下位の者に売るのを規制していました。そのためマルチ加入者に販売を依頼する方法に変え、すり抜けます(※詳細省略)。当社による自殺者も出ます。一方当社は大儲けし、1982年国税庁が税務調査に入ります。
<山口による政界対策>
・彼は政界と結びつくため「健康産業政治連盟」を立ち上げ、資金を集め、政治献金を始めます。1984年2.6億円の脱税で、懲役2年/執行猶予4年の判決を受けます。しかしマルチ商法は続けます。
・国会で当社が問題になり、1985年11月「ジャパンライフ被害者の会」の宮脇敬が、離婚/離散/自殺などの実態を述べます。東大教授・竹内昭夫は「訪問販売法で『マルチまがい商法』も対象にすべき」と述べます。1988年訪問販売法が改正されます。
・1986年2月予算委員会の質疑で、健康産業政治連盟が中曾根首相に1千万円の政治献金をしていた事が取り上げられます。中曾根首相は「甚だ遺憾」と答弁します。松浦利尚・衆議員の「こんな事を安易に行う事の国民への影響を、真剣に考えるべきだ」に対し、中曾根首相は「一部の人の利益のために、公の地位にある者が利用されるのは慎むべきだ」と答弁します。彼はこの頃から政治家を利用していたのです。
・1991年当社と韓国の合弁会社が韓国でマルチ商法となり、是正命令を受けます。これが国会で質疑されます。磁気治療器を「癌に効く」と販売し、薬事法違反との質問に、政府委員は「その宣伝は薬事法違反する」と答弁しています(※お咎めなし?)。この様に彼と当社はマルチ業者として有名でした。2017年国会質疑でも麻生大臣は「彼は結構有名ですよ」などと答弁しています。
<ジャパンライフの預託商法>
・被害者3万人/被害額2千億円を出した豊田商事の預託商法も有名です(※手法を解説しているが省略)。この再発防止のため、1986年預託法が制定されます。ただし営業の自由を保障するため、対象商品を政令指定にします(※政令指定だと穴だらけになりそう)。
・当社は磁気を埋め込んだ健康器具などを販売します。顧客(オーナー)に磁気ベストなどを販売し、同時に当社が商品販売の預託を受けます。預託期間、当社は年6%の賃料をオーナーに払うのです。預託期間が満了すれば販売代金が戻ります(※銀行預金みたいな仕組みだ)。
<預託商法の実態>
・当社は「商品を6%でレンタルし、それをオーナーに賃料として支払う」と説明しています。従って当社には利益が全く出ない仕組みです(※レンタルできなければ赤字だ)。つまり自転車操業(ポンジスキーム)なのです。2015年消費者庁が当社を調査しますが、商品は契約数の10%程度しかありませんでした。これは商法とは言えず、犯罪行為です(※役員報酬だけ貰って、倒産とかあるのかな)。
<ジャパンライフへの行政処分>
・2015年彼は「桜を見る会」に招待されます。2011年和牛預託商法業者「安愚楽牧場」が破綻します。これは被害者7.3万人/被害額4300億円の消費者被害になります。これらの事件から消費者庁は調査を行い、当社への苦情を確認していました(2010年137件、11年146件、12年165件、13年156件、14年165件、15年165件)。ところが当社が扱う家庭用治療器は対象商品に指定されていなかったため、2013年7月追加します。
・2014年7月当社への行政指導が決まります(これを決めた担当課長補佐はその後、当社に天下っている。※検察・警察が天下るパターンと同様かな)。その後の経緯は以下です。
2014年9月-行政指導。
2015年9月-立入調査(商品が契約の10%しかない事が判明)。
2016年12月-1回目の行政処分(信託取引の業務停止3ヵ月)。
2017年3月-2回目の行政処分(信託取引の業務停止9ヵ月)。
2017年11月-3回目の行政処分(業務提供誘因販売取引の業務停止12ヵ月)。※この業務提供誘因販売取引は、どんな取引なのか。
2017年12月-4回目の行政処分(信託取引の業務停止12ヵ月)。
・2015年3月期は266億円の債務超過(ただし粉飾決算のため正確でない)で、2016年3月期は338億円の債務超過です。
※当社は行政指導の半年後に「桜を見る会」に招待され、その半年後に立入調査か。また2016年12月以降はずっと業務停止だ。
<破産申立とその後>
・2017年11月当社はオーナーへの配当を停止します。こうなると被害者救済は不可能で、破産申立しかありません。翌年1月「全国一斉ジャパンライフ被害110番」を実施し、「全国ジャパンライフ被害弁護団連絡会」を発足します(※当会代表が本章の著者)。2月弁護団は東京地裁に破産申立します。この時彼は「全然債務超過じゃない」と言っています。
・2018年3月破産手続が決定します。当社は業務停止にもかかわらず、全国80店舗で営業を続け、税金/社会保険料、給与などが未払いのまま倒産しました。これらは一般債権(被害者債権など)より優先される財団債権になります。2020年12月時点、財団債権は7.4億円で、その内労働債権が4.6億円でした。管財人は当社が納付した消費税の還付請求をしました。弁護団はこれを労働債権ではなく、被害者への配当にすべきと主張しています(※数少ない残金の取り合いか)。なお彼に対しても、2019年1月破産手続が決定します。
<山口らの刑事事件>
・2019年4月刑事事件として、県警(秋田、福島、埼玉、愛知、岡山)が特定商法取引違反として強制捜査します。10月東京地検は彼を詐欺容疑で起訴し、山口ひろみ(※彼の娘で当社社長)らを出資法違反で起訴します。
<預託商法と山口の政治家利用>
・自転車操業だと会員を拡大し続けなければ破綻します。そのため元官僚/マスコミ関係者を顧問にし、政治家対策も行います。2019年11月国会質疑で行政指導か立入調査かの検討が行われた際、彼が政治家と関係を持っていた事から、担当課長補佐が「政務三役へのレクが必要」と書き残しています。
・彼は政治家との関係を宣伝に使っていました。例えばチラシに「自民党・二階堂幹事長を囲む会を山口会長主催で開催しました」と書き、大手マスコミの解説委員などの顔写真を羅列しています(※加藤勝信大臣の話も紹介しているが省略)。当然「桜を見る会」も利用されたのです。当社による被害者は7千人で被害額2100億円です。1人当たり3千万円で異常に高額です。「銀行では金利が付かない」と伝え、政治家も利用したのです。※旧統一教会と同じパターンだな。
<安倍前首相と山口>
・安倍前首相は彼との関係について、「招待された会合などで同席した可能性はあるが、個人的な関係はない」と述べています。1984年安倍晋太郎外務相が国連本部を訪問した際、彼と同様、安倍前首相は秘書官として同行しています。彼は安倍家2代と付き合っています。※何の理由で彼は同行したのか。
<事実を説明しない安倍前首相>
・安倍前首相は「桜を見る会」に招待しただけでなく、その後の対応にも問題があります。中曾根首相は献金を認め「甚だ遺憾」と述べています。加藤大臣は利用された事に「抗議している」と述べています。両者は事実を認めています。一方安倍前首相は、「推薦元/招待理由などは個人情報」として回答していません。しかし彼は堂々と宣伝に使っており、個人情報保護の根拠になりません。
<悪徳業者による政治家利用>
・中曽根首相は悪徳業者に利用される事に「公的立場の者が一部の人の利益に利用されるのは慎むべきだ」と述べています。一方安倍前首相は「桜の会が違法・不当な活動に利用されるのは容認できない」と述べています。中曽根首相は政治家の姿勢を問題にしていますが、安倍前首相は利用する側を非難し、招待する政治家の責任は回避しています。
<内閣官房と内閣府の責任>
・さらに安倍前首相は「私の事務所は内閣官房からの依頼に基づき、参加にふさわしい人を後援会を含め幅広く募り、推薦を行った。最終的には内閣官房/内閣府が取り纏めた」と答弁します。これによると内閣官房/内閣府は彼を功績・功労者と判断した事になります。そうなると日本は不法国家であり、この責任転嫁は日本の信頼を喪失させます。内閣官房/内閣府の責任者が首相なのは明確です。
<山口の功績・功労>
・1976年彼のマルチ商法により「訪問販売法」が制定されます。しかし彼のマルチまがい商法が深刻な被害を出したため、1988年法改正されます。預託商法を規制する「預託法」も当社による被害を契機に改正される予定です。この経緯は(※詳しいが簡略化)、2019年8月内閣府消費者委員会は「販売預託商法」の問題から、消費者庁に法改正を求めます。消費者庁は検討委員会を立ち上げ、2020年8月報告書を纏めます。これには「販売預託契約は原則禁止にすべき」とあり、この方向で改正案が作られます。
・これらから彼は、訪問販売法の制定・改正/預託法の改正に影響を与え、消費者を保護する法整備に功績・功労があります。これにより「桜を見る会」に招待されたのでしょうか。これに関する説明はありません。
<国家の機能不全>
・菅首相は著書『政治家の覚悟』の冒頭「李下に冠を正さず」で「政治家が指示した事の責任回避をすると、官僚がやる気をなくし、機能不全になる」と書いています。そうならないため、安倍・菅首相は責任回避せず、招待した責任を明確にし、謝罪すべきです。その招待状を信用した被害者、責任転嫁された内閣官房・内閣府の担当者、そして政治への信頼を失った国民に謝罪すべきです。
第6章 学術会議会員任命拒否の違憲・違法性 岡田正則
<はじめに>
・2020年10月菅政権は日本学術会議(※以下学術会議)が推薦した会員105名の内、6名の任命を拒否します。経緯は以下です。
1949年-学術会議(選挙制)を設置。
1950年-「戦争を目的とする科学研究には従わない」を声明。
1967年-「軍事目的のための科学研究を行わない」を声明。
1983年-学術会議法を改正し、選挙制から学協会推薦制に移行。※学協会(日本学術会議協力学術研究団体)は学術会議に協力する団体で約2千ある。要するに〇〇学会。
2004年-学術会議法を改正し、学協会推薦制から自己選考方式に移行(※説明が欲しい)。
2015年-9月安保関連法を制定。10月防衛装備庁を設置。安全保障技術研究推進制度を導入(※説明が欲しい)。
2017年-3月「軍事的安全保障に関する声明」を発表。学術会議長が105名+数名の名簿を説明(※相手は文科相?内閣官房長官?)。
2018年-9~11月内閣府内部文書を作成し、内閣法制局が了解。10月補充人事を拒否(※説明が欲しい。先行する問題があった?)。
2020年-10月第25期会員任命において、首相が6名の任命を拒否。
・経緯でのポイントは3つあります。1つ目は、学術会議の設置と3回に亘る声明です。日本は学術を政治に従属させ、戦争に突入しました。この反省から学術会議を設置し、3回の声明を出してきました。政府から独立するため機関の構成・運営を厳格に定めています。そして「科学に関する重要事項を審議し、その実現を図る」「科学に関する研究を連携し、能率を高める」を職務としています。
・2つ目は、会員選出方法の変化です。選挙制から推薦制に移行した際、資格確定の手続きが必要になります。これが首相による任命です。当然これは形式的なもので、「選考の余地のない任命」です。
・3つ目は、安全保障技術研究推進制度が導入され、大学・研究所が軍事研究に誘導・動員されかねない状況になりました(※これは記憶にない)。これに対し、2017年3月声明を出します。そのため政府は学術会議の人事に介入する様になったのです。
<明白な違憲・違法性>
・任命拒否の違憲・違法性が論じられていますが、私の専門分野・行政政治学から見ると以下の3点に纏められます。1つ目は、憲法23条と日本学術会議法1~3条(※以下学術会議法)に違反します。学術会議の決定を首相が覆すのは、政治的動機による学術活動の取り締まりであり、戦前の滝川事件/天皇機関説事件と同質です。この反省から憲法23条は学問の自由を保障し、学術会議法1~3条で学術会議の独立性・自律性を保障したのです。
・2つ目は、この拒否は学術会議法の任命基準・任命手続に反するため、同法7条・17条に違反します。また「首相の任命は形式的なもの」とするこれまで政府見解にも反し、この国会冒涜は憲法違反です。
・3つ目は、菅首相は「今回の任命において、名簿を見ていない」と述べています。そうすると学術会議からの推薦に基づいていない事になり、違反です(※ややこしいな。無条件任命だが、名簿は見ないといけない)。結局、拒否した者の名前も業績も知らず拒否しており、これは違法です(※これも「首相は知らなかった」かな)。
・これらから菅首相の任命拒否は違憲・違法です。これに対し菅首相は2018年の内閣府内部文書を根拠に、「学術会議の推薦通りに任命する義務はない」と主張しています。
<任命拒否の唯一の根拠>
・この内閣府内部文書は、2018年11月内閣府日本学術会議事務局が作成し、内閣法制局の了解を得たとされています。この文書は学術会議会長には知らされておらず、事務局長の決済もない怪しい文書です(※問題になった後、内閣官房と内閣法制局と組んで作成したのかな)。この文書でこれまで政府見解を覆すのは、違憲・違法です。これはさて措き、この文書自体の違憲・違法性を検討します(※文書全文が引用されているが省略)。
<首相に「人事を通じた監督権」は与えられていない>
・内部文書の①は「所轄機関は人事を通じて監督権を行使できる」としています。この所轄は「事務取扱い」に限定されたもので、監督権を導く類のものではありません。「首相が学術会議を所轄する」と「学術会議は人事を通じて監督権が行使される」は無関係です。
・次に「憲法65条・72条より、首相は人事を通じて監督権を行使できる」としています。しかし監督権は法律レベルが定める事で、学術会議法がこの種の監督権を否定しています。また憲法65条・72条に従うのであれば、内閣法6条より首相は閣議決定に従わなければいけません。それが正しく1983年・2004年の学術会議法の改正です(首相の任命は形式的なもので、拒否できない)。付言すると、「学術会議に対する首相の権限は、予算/事務職員の人事/庁舎管理/会員・委員の海外派遣命令」に限定されています。
<首相に学術会議会員の選任権はない>
・内部文書の②は「公務員の任命権が国民にあるのが国民主権の原理」を根拠に、「学術会議会員の任命権者である首相は、国民・国会に対し任命の責任を負う」としています。しかし憲法の理念的規定から行政機関個別の責任を導く事はできません。公務員の選定は、公務の種類によって法律で個別に決定すべきです。そして学術会議法7条・17条で会員の選定は学術会議に付託され、また会員の罷免も同法26条で学術会議に付託されています。
・ここで、「会員の選考を首相に認めないのは学者の傲慢」との議論があります。しかし首相は選考基準を持っておらず、もしそれが行使されれば、恣意的・政治的で非学術的な選考になります。
<「総合的・俯瞰的な活動の確保」は排除の理由にならない>
・首相は任命拒否の理由を「総合的・俯瞰的な活動を確保するため」としてます。この文言は総合科学技術会議の『日本学術会議の在り方について』(2003年)から引用しています(※本文省略)。しかしここでの総合的とは、「人文・社会科学を含めた視点」を意味し、俯瞰的とは「科学者コミュニティの総体を代表する観点」を意味します。従って人文科学6名の任命を拒否する事は、総合的な活動の阻害になります。そして俯瞰的とは学術会議の活動に求められるもので、会員選考の基準ではありません。
・菅首相は臨時国会の答弁で、「多様性の確保のため、自分に選考の権限がある」と説明し始めました。しかし選考は学術会議で十分なされており、6名の排除は首相の権限濫用です。
※学術会議を官から民に移す計画があったが、どうなったのか。
<問題の背景>
・「魚は頭から腐る」と言い、政治も同じです。2013年以降、政権は権力維持のため、それを阻止する法的仕組みを破壊してきました。官僚人事の官邸支配、内閣法制局の破壊、森友・加計・桜などでの公文書管理の破壊、辺野古埋立での地方自治破壊(※これはまだ解説がない)、検察官人事支配による政権取締りの排除、学術会議会員人事への介入などです。今後は、大学・メディア・弁護士・一般市民などの活動への政治的介入が危惧されます。
・この政治権力の暴走が世界に広がっています。人間の基本である「人を生み、育て、尊重し、看取る」が利潤獲得の手段に組み込まれようとしています。人々がこれに抗議していますが、権力がこれを抑え込もうとしています。※「これらは別書で」だな。
第7章 学問の自由を侵害する学術会議会員任命拒否 松宮孝明
<コロナ禍対策の失敗と同根の問題>
・2021年1月菅政権の支持率が40%を切る。これはGOTOキャンベーンやオリンピックに拘り、コロナ禍対策(※以下コロナ対策)が後手に回っている事による。日本学術会議(※以下学術会議)問題は、何の理由も表明せず、会員候補6名の任命を拒否した問題です。しかしこの問題は、耳の痛い学者の話を聞かない点で、コロナ対策の失敗と同根です。そのため昨年10月任命拒否が明らかになると、法曹界・映画界・芸術界が批判の声を挙げます。
・コロナ対策でも専門家は第3波に備え、PCR検査の充実/GOTOキャンベーンの中止などを訴えますが、自らはステーキパーティーをするなど、緊張感を削ぐ態度でした。菅首相は自分の支持基盤・業界の利益のためだけに行動しています。専門家軽視の点で、任命拒否問題とコロナ対策の失敗は同根です。
・菅政権の支持率は当初の70%から、これらの失敗により40%に下がります。任命拒否問題以降、私は度々『貞観政要』を紹介しています(※初耳かな)。これは唐の太宗が自分の命を狙った者まで採用し、唐が繁栄した話です(※要約)。
<軍事研究への抵抗排除の布石>
・2020年9月私は学術会議の新体制が発足する2日前、事務局から任命拒否を聞かされます。「とうとう『学問の自由』に手を出したか」と驚きました。菅首相は就任時に「言う事を聞かない公務員には辞めてもらう」と述べていましたが、その通りの事が始まります。
・安倍前首相は辞任直前、「敵基地攻撃能力保持」を発表します。このバックに米国がいます。これは中国との緊張感を高めるため、大学などで軍事研究が必要になります。その際、反対する学者・研究者がいては邪魔になるため、学術会議の民営化を模索していると思われます(※民営化の目的は政府からの解放ではなく、逆の政府への従属か)。任命拒否は軍事研究のための布石です。そのため首相/官房長官は任命拒否について説明できないのです。日本学術会議法第7条には「推薦に基づいて」とあり、任命拒否は違法です(※詳細省略)。
・任命拒否の説明ができないため、様々なデマを流しています。甘利明議員は「学術会議は中国の『千人計画』と共同している」とSNSで述べています(※「中国人研究者を育てている」の意味かな)。また「嘘も100回言えば、真実になる」を使い、「任命権者が任命しないので、仕方ない」「学術会議にも問題がある」などをSNSで流しています。今の政権は、そんな恐ろしい事をやっているのです(※図書館での左右対決も激しい)。
<学術会議とは>
○学術会議の理念と役割
・まず学術会議が何かを説明します。日本学術会議法(※以下当法)の前文に理念が示されています(※少し長いので省略)。ここで憲法23条「学問の自由」との関係での誤解を説明します。当法には「学術の進歩に寄与する」とあり、「学問の自由を享受する全ての学術研究の進歩に寄与する」のが学術会議の目的です。この寄与とは裏方/下働きであり、学術会議は奉仕する組織です。
・当法第1条には「学術会議は首相が所轄する」「経費は国庫が負担する」と書かれ、そして第3条には「学術会議は独立して左の職務を行う」と書かれています。すなわち学術会議は首相が所轄するが、独立して職務を行うのです。そしてその職務は、第1項に「科学に関する重要事項を審議し、その実現を図る」(※重要事項の審議とは?)、第2項に「科学研究の連携を図り、能率を向上させる」とあります。また第2条には「学術会議は代表機関として科学の発展を図り、科学を行政・産業・国民生活に反映・浸透させる」と目的が示されています。※科学研究の総元締めかな。
・第4条には「政府は左について学術会議に諮問できる」とあります。そしてその対象が第1項で予算配分とされ、政府所管の研究所・試験所及び委託研究費の予算/重要施策/その他(※曖昧だな)となっています。第3条が学術会議の正業で、第4条が副業なのです。
・自民党から「2007年以降学術会議は何ら答申していない」との批判がありましたが、これは政府が諮問していないからです。政府は研究費の配分に関し意識的に諮問せず、それを政府が委員を任命する学術振興会議/総合科学政策会議でやっています。
・第5条には、「学術会議は政府に、科学振興・技術発展/研究成果の活用/科学研究者の養成を勧告できる」とあります。日本には、研究論文/研究者の減少、研究者の給料が安いなどの問題があり、これらに対する提言をするのも学術会議の仕事です。そしてそれを実行するのが政府です。
○法が規定する会員の選び方
・第7条には会員の任命について記されています。学術会議は210名で構成されます。第2項に「第17条に定める推薦に基づいて、首相が任命する」とあります。そしてその第17条には、「規則で定めたところにより、優れた研究・業績がある科学者から候補者を選考し、内閣府令の定めたところにより、首相に推薦する」とあります。首相が「優れた研究・業績がある」かを判断するのは不可能で、任命拒否権はありません。政府が拒否理由を発表できないのは、それが政治的なためです。また第3項には「会員210名の半分を3年毎に任命する」とあり、任命拒否による欠員は法律違反です。
・第26条には「会員に不適当な行為があった場合、学術会議の申出に基づき辞職できる」とあります。つまり首相が勝手に辞職させる事はできす、学術会議からの申出が必要です。また第25条には、「病気などで本人から辞職の申出があった場合、学術会議の同意が必要」とあります。論文の捏造などがあった場合、首相が任命を保留し、学術会議に推薦者名簿の再提出を求めるのは可能でしょうが、理由もなく任命拒否するのは法律違反です。
<学問の自由>
○戦争の反省から作られた
・学術会議は戦争の反省から作られた組織で、戦争反対が基盤です。また科学者が軍事研究に突っ込むと、悲劇になります。軍事研究で成果を挙げても、それを公表できません(※事例は省略)。そのために特定秘密保護法が作られたのです。研究結果を公表し、それを世界の幸福に役立てるのは「学問の自由」の1つです。また研究者養成のため、若手研究者に守秘義務を伴う研究をさせてはいけません。
・2017年学術会議は軍事研究に慎重である声明を出します。これがなくても防衛省の軍事研究への応募は少なくなっています。研究者は悲劇になるのを直感的に分かっているのです。これを週刊誌の記者に話すと、「それはドイツ軍の暗号機エニグマの話ですね」と言われました。数学者アラン・チューリングをモチーフにした映画「イミテーション・ゲーム」がありますが、彼は解読した事を公表できず、悲劇になったのです。
○なぜ独立しているのか
・安保法制は、米軍の要請に応じて自衛隊を派遣するための法律です。科学技術においても、米国に軍事技術を供与する協定が結ばれています(※そんな協定があるんだ)。政府は特定秘密保護法を定め、研究者を軍事研究に向かわせようとしていますが、そうなっていません。軍事研究でお金が付くのは麻薬・アヘンです。これに加わると、そこから抜け出せなくなります。
・過去の反省から日本学術会議法の前文に、「平和的復興/人類の福祉に貢献し、世界と連携し学術の進歩に寄与するのを使命とする」と記し、政府に科学技術政策を提言する任務を与えています。そして第3条に「独立して職務を行う」とあり、政治に左右されず、学問の論理で審議できる立場にあるのです。※学術会議は文科省ではなく、内閣府の下にあるな。
<本当に改善すべき事>
・政府・自民党は学術会議の改革を言っています。それは軍事研究を進めるためです。今回6名の会員が任命拒否されましたが、これを意思決定した官邸の不透明性こそ問題です。
・学術会議で本当に改革すべきは予算です。年間予算は10億円で、年度後半になると出張旅費が出ない事もあります。因みに東京五輪はバージョン4からバージョン5への移行で910億円増額され、7210億円になりました(※2021年延期のためかな)。
・米国/英国のアカデミーは民間ですが、独立して職務を行っています。そして全米アカデミーの運営費は210億円で、その8割は公的資金です(※170億円位か)。英国王立協会の収入は97億円で、その65億円が公的資金です。
<懸念される解釈の暴走と独裁>
・私が懸念しているのは、憲法15条1項の公務員の選定罷免権の議論です。この規定から官邸は「公務員の選定罷免権は首相にある」と言い出しています。しかしこの条文を正確に読めばは、「公務員の選定罷免権は国民にある」(国民主権)です。また憲法73条には、「内閣は他の一般行政事務の外、左の事務を行う」とあり、第1号(※「項」の下のレベルが「号」だな)に「法律を誠実に執行し、国務を総理する」とあります。日本学術会議法もその法律であり、学術会議の推薦者をそのまま任命するのが、国民の選定罷免権の尊重になります。
・菅政権が憲法15条が規定する「公務員の選定罷免権」を「一般条項」とし、意にそぐわない公務員を辞めさせる事が懸念されます。首相・内閣が形式的に任命する役職は学術会議だけでなく、裁判官/国立大学学長などもそうです。これらを「一般条項」で片付けてしまうと、ナチスの全権委任法になってしまいます。
・これらを放置してはいけません。侮れないのは、「政府の解釈は正しい」とのデマが、様々なルートに流されている事です。これは法治国家の危機です。専門家は正しい事を言い続け、この無茶苦茶を阻止しなければいけません。