『「日本バイアス」を外せ』パトリック・ハーラン(2018年)を読書。
日本の15課題(少子高齢化、教育、安全保障、差別、地方創生、地球温暖化など)を解説。
結論ありきではなく、複数の解決策を掲示している。
日本人とは別の視点を持ち、参考にすべき情報である。
お勧め度:☆☆☆(読み易い)
内容:☆☆(多角的)
キーワード:<はじめに>先送り、危機感、共通意識、バイアス、<少子化問題>先進国/途上国・新興国、移民、AI・ロボット、子育て支援、養子、社会資本、<移民>犯罪、財政、再配分、グローバル人材、技能実習制度、難民、<AI革命>医療、自動運転、ベーシックインカム、労働力不足、<教育制度>創造力・コミュニケーション力、アクティブ・ラーニング、自信、<国際人>英語、価値観、コミュニケーション、発信力、<選挙>投票率、<年金>世代間格差、財源、当事者意識、選挙、<沖縄基地問題>在日米軍、防衛費、憲法、<北方領土>修辞学、売買取引、仲介役、<差別>人種差別、多様性(ダイバーシティ)、LGBTQ、女性の社会進出、<地方創生>地方存続、補助金、ふるさと納税、都会税、移住、サテライトシティ、<原発>地球温暖化、温暖化対策、カーボン税、原子力発電、再生可能エネルギー、<テロ対策>ハード対策/ソフト対策、災害救助、平和憲法、<日本の国力>GDP、ビジョン/発信力、<日本の役割>世界と戦う国/世界を助ける国、集団的自衛権、少子高齢化、ソフトパワー、宗教、地政学
はじめに 世界を変えていくのは日本人
・日本は、人口減少/少子高齢化/先行き不安/年金/縮小する地域経済/地方の過疎化/エネルギー問題/安全保障など問題が山積しています。私(※著者)は楽観的ですが、「こんな考え方もある」「こんな解決策がある」などを提案していきます。
・私は米国の大学を出て、日本に来て、その素晴らしさに惹かれ住み着きました。お笑い芸人になり、日本人と結婚し、父親になりました。そして100%日本に骨を埋めるつもりです(※この辺りは知らなかった)。そのため日本の将来は、自分の将来でもあります。
<危機感を先送りする日本>
・日本が抱える問題は「タイムリミット付き」です。第1章の課題の出生率1.43もそうです。このままでは2100年に人口が半分になります。これは急に起きた問題ではなく、1973年から出生率は下がり続けています(※丁度半世紀か)。しかし当時はオイルショックなどがあり、少子化は問題になりませんでした。ところが1987年(丙午)に出生率が1.57になり、問題視されるようになります。しかしこれは「茹でがえる現象」です。
<平和ガエル>
・日本は「失われた20年」と言われ、不景気が続いています。しかし日本の失業率は3.4%で188ヵ国中159位と低水準です。これはEU/米国からすると夢の様な数字です。この間、治安も金融も安定し、就学率・識字率なども高く、インフラ(道路、電気、ガス、水道、交通など)も安定しています。これらから日本人の92%が、自分の生活を「中程度」と思っています。そのため日本人は「平和ボケ」「平和ガエル」になったのです。
・また日本人はこれらの問題を認識していますが、それを政府に任せています。しかしその政治家は、「日本は力強いので問題ない」「増税は必要ない」「君たちの権利は守る」と現実を無視しています。よって政治家は国民のフォロワーになり、世論の風に合わせて帆を張っています。そのため国民の危機意識が最も重要です。国民一人ひとりが国の将来を考えなくてはいけません。
<世界のお手本になれるか>
・日本がこのままでいられるか分かりません。しかし日本人は、やり遂げる力があります。大災害でも略奪は起きませんでした。災害復興には「不屈の精神」が見られます。日本人は共通意識を持てば、高い技術力/互助精神/忍耐力を発揮します。従って様々な問題に対し、共通意識を持てるかが重要になります。
・日本は経済が発展し、インフラが整い、教育・道徳・文化・マナーが高いレベルの国です。欧米より日本を参考にする国は多くあります。米国は保護主義になり、世界のリーダー国でなくなりました。日本にその役割が回ってきたのです。先進国はいずれ少子高齢化します。日本はその「正しい道」を示す事ができます。これらの解決方法を、風向き任せの政治家に任せてはいけません。
・そこでまず「バイアス」について話をします。バイアスとは偏った考え方に繋がる思い込み・先入観・固定観念などです(※「日本は貿易立国」とかだな)。まずは自分のバイアスを考えてみましょう。「とんかつにはソース」などの好みがあります。「あの人は優しい」などのイメージもそうです。「米国人は自由」などのステレオタイプもそうです。そしてこれらの考え方は行動に影響します。このバイアスはサングラスにも例えられます。
・バイアスにより「少子化はダメ」「日本の国力は低下している」「GDPが国力を計る基準」となっていますが、これを疑って見ましょう。「地方創生!」「脱原発!」「北方領土全島返還!」などの目標・解決策を見直してはどうでしょうか。「世界はどう見ているのか」「相手はどう考えているのか」「本当にできないのか」など、視点を変えて見ましょう。
・私も日本に長く住み、平和ボケ・治安ボケになっています。これもバイアスです。これらのバイアスは問題解決を遅らせます。本書は「正解」を断定しません。皆が考え議論し、「正解」に導ければと思っています。
第1章 少子化問題
<電車でベビーカーが使えない>
・この少子化問題は日本の将来を揺るがします。アンケート調査では、日本人の2割が「電車にベビーカーを持ち込んで欲しくない」と思っています。実際、電車内でベビーカーが邪魔者扱いされています。私は子供ができると、ベビーカーの乗り降りを手伝うようになりました。「電車・バスでベビーカーを使えない」「託児所が足りない」「子供がうるさいので、託児所が立てられない」「子供ができると、仕事ができない」などが原因で、日本は少子化が進んでいます(※「女性は家庭で」も原因かな)。東南アジアでも欧州でも、街中で子供が遊ぶ姿をよく見ます。しかし日本は見なくなりました。習い事が増え、家でゲームしているのでしょう。
・人口減少も進んでいます。今は1.2億人ですが、2050年9千万人、2105年4.5千万人になります。65歳未満の割合も減っています。1970年65歳以上が人口の7%を超え、「高齢化社会」になります。2021年に21%になり、「超高齢化社会」になり、今は28%に上昇しています。少子高齢化により、国の労働力が下がり、社会保障・財政に影響します。今の年金制度では、若い世代の負担が増えます。
<子供は労働力から贅沢な趣味に>
・農耕社会では子供は労働力でした。そのため女性は多くの子供を生みました。しかし医学が発達すると「多産多死」から「多産少死」になり、人口が爆発します。さらに農場での労働力は不要になり、女性が社会進出すると「小産少死」になります。これは日本だけでなく、大半の先進国で見られる現象です。かつては子供は労働力でしたが、今は大人の「贅沢な趣味」になっています。保険会社AIUの調査では、22歳まで育てるのに1600万円必要だそうです。
・先進国は人口が減っていますが、世界全体では増えています。今は73億人ですが、2050年98億人、2100年112億人になると予想されています。この人口増加は先進国の所為でもあります。先進国のNGOが途上国・新興国に対し、栄養・衛生・治安などで支援しましたが、避妊方法を広めなかったのです。それには理由があり、カトリックでは「避妊は罪」だからです。人口の急増に比べ食糧・雇用の伸びは低くなります。そのため貧しい国から豊かな国への移民が急増しています。
<少子高齢化は日本のチャンス>
・日本の少子高齢化・人口減少に戻ります。解決法の1つ目は移民です。この場合問題になるのは、日本人の文化的・感情的な抵抗感です(これについては第2章で述べます)。2つ目は人工知能改革(AI改革)です。今の仕事の3~5割がAI・ロボットに置き換わるそうです。日本はこれで労働人口の減少に対処できます。一方人口が急増している国は、失業者を増大させる事になります。AI・ロボットの導入で、様々な摩擦が起きるでしょう。
<仏国の子育て支援>
・次に出生率を上げる方法を考えます。仏国は子育て支援政策で2010年出生率が2.0を超えました。これは「産めば産むほど有利なシステム」なのです。例えば「2人以上の子供を扶養する家庭は、家族手当を支給」「3人以上の子供を扶養する家庭は、さらに家族補足手当を支給」「子育て世帯は所得減税。子供が多いほど、減税率が高い」などです(※色々列挙されているが省略)。高校・公立大学の学費も、ほぼ無料です。また仏国は「週35時間以上働いてはいけない」のです。
・日本はどうでしょうか。国立大学の授業料は年54万円ですが、2031年に93万円に上げる予定です。労働時間でも、過労死ライン(残業が月80時間超)の企業が2割を超えています。日本の家庭はお金も時間もなく、子育てどころではありません。
<どのコースを選ぶ?>
・日本でも「子育て家庭の家賃補助」「ファミリーカーの購入補助」「子連れ専用車両」「奨学金制度の改善」など、様々考えられます。また労働基準法でも「罰則を強化する」「休暇を消化しないと出世できない」などが考えられます。既に基準はあるのですが、守られていません。
・最も効果的なのは今の「子ども手当て」レベルではなく、子供1人当たり年100万円の「子育て報酬制度」です。しかし今の日本の財源では不可能です。仏国の消費税は20%で、所得税・住民税・社会保険料も高くなっています。北欧諸国も収入の半分は税金で取られますが、幸福度は高くなっています。
・福祉政策にバイアスが掛かっているのです。米国は「低税金、低サービス」、北欧は「高税金、高サービス」ですが、日本は「低税金、中サービス」になっています。GDPに占める税収は、米国25%、デンマーク49%、日本31%となっています。私は「日本は子育てのために税金を増やすべき」と考えています。働き方改革・子育て支援は4.6兆円、防衛費は5兆円です。少子化が進む確率と外国が攻めて来る確率はどちらが高いでしょうか。明らかに少子化は起こり、「存亡の危機」になります。
・人口減少を受け入れる事も考えられます。この場合は「AI・ロボットの導入」「75歳までの就労」「保育園の増設」などが対策になります。1人当たりの国土が増えますが、日本は小国になってしまいます(※日本パッシングが進むな)。しかしGDPが高くなくても、1人当たりGDPが高く、福祉精度が充実している国はあります。結局は日本人が「低税金、低サービス」「高税金、高サービス」のどれを選ぶかです。
<子供は必要不可欠の社会資本>
・日本は養子が少ない国です。海外では珍しくありません。要保護児童は4万人いて、その内17%が養子縁組やファミリーホームに引き取られています。子供が欲しい人がいるので、養子縁組/里親制度などが遂行されれば(※整備されているが遂行されていない?)、双方が幸せになれます。夫婦の6組に1組が不妊と云われています。
・子供は「必要不可欠な資本」です。親の投資より子供が返す利益の方がずっと大きいのです。日本は物事を成し遂げる力があります。国民全員がこの認識を持てば、解決できます。東南アジアの人々は子供を温かく見守ります。日本もかつてはそうでした。子供の声は騒音ではありません。子供の声は明るい将来の響きです。※この認識が必要かな。
第2章 移民の受け入れ
<混乱を招いたトランプの入国禁止令>
・日本は少子高齢化し、人材が不足します。AI・ロボットで一部は補えるでしょうが、生身の人間も必要です。私も移民ですが、外国人の受け入れに賛成です。しかし日本人の多くは移民に反対です。また海外では移民・難民のトラブルが多く発生しています。
・2017年トランプ大統領は一部の国からの移民・難民の入国を禁止します。理由は「テロリストの入国を阻止する」です。これにグテーレス国連事務総長は「賢いテロ組織は疑われる国のパスポートで入国しない。あるいは既に入国している者が実行犯になる」と批判します。
・トランプの息子が「ボウル一杯のキャンディの中に、3粒だけ死ぬのが混ざっている」とシリア難民を批判します。ワシントンポストがこれを調査しますが、難民が起こしたテロで殺される確率は、36億分の1でした。一方国内の殺人事件で殺される確率は、10万人当たり4.5人でした。米国の治安を向上させたいなら、米国人を追い出し、移民を入れた方が良いのです。
・欧州でも、移民が大量に流入した地域で盗難・破壊行為などの犯罪が減少しています。ただ元々犯罪率が低い日本では事情が異なります。しかし外国人による犯罪は、2004年4.7万件だったのが、2016年1.4万件に減少しています。しかもこの間に外国人労働者は増えています。
<移民が増えると社会保障費が増える?>
・「移民は失業手当などで、財政を悪化させる」との説があります。2014年英国の大学が調査したところ、2001~11年に英国に来た移民は、社会保障などの支出を除き、200億ポンド(約3兆円)の財政貢献をしていました(※所得税・住民税・消費税などかな。消費税は間接税だが)。ドイツには6600万人の移民がいますが、220億ユーロ(約2.9兆円)の財政貢献をしていました。教育費などが掛る幼少期を母国で過ごし、生産力がある大人になって入国したので、当然かもしれません。
・では難民はどうでしょうか。米国での調査では、10年間で難民の納税額から公的サービスの出資額を引くと、630億ドル(約7兆円)の黒字でした。それなのにトランプは出資額だけにスポットを当て、難民を非難しています。
・移民・難民のメリットは他にもあります。彼らにより母国の情報を知る事ができ、グローバル企業に重宝されたり、新商品開発に繋がったりします。
<移民が増えると、失業率が上がる?>
・移民には職を増やす効果があります。国内需要が増え、雇用は拡大し、経済は成長します。スペインは1990年代から移民が流入しましたが、失業率は上がりませんでした。日本でもコンビニ・飲食店などで外国人従業員が増え、労働力不足を補っています。既に日本に外国人が入り、経済成長を支えています。
・米国も移民が経済成長を支えています。移民は高学歴・高度技術の者だけではありません。米国の農業の8割は外国人労働者です。これにより溢れた米国人が本を執筆していたりします。彼らのお陰で、米国は高成長できているのです。テキサス州のGDPは豪州に相当しますが、人口の17%が移民です。また労働者の9%が不法移民です。彼らを追い出すと、建設業・農業は破綻し、経済は縮小します。
・米国の人口の13%が移民で、親が移民の人を含めると27%になります(※4人に1人か。と言うより先住民以外は皆移民と云える)。因みにトランプは母が移民で、父方の祖父、妻、元妻も移民です。
<大事なのは再配分とサポート>
・移民はメリットだけではありません。移民・難民が大量に流入すると国は混乱し、若者の雇用が圧迫されます。これを避けるには、どの国から、どんな能力を持った人を、どの程度受け入れるかを事前に決める必要があります(※移民計画だな)。難民は無条件に受け入れる義務がありますが、移民は条件を付けられます。日本は医療・介護・建設業・漁業など5つの枠を設置しています。
・しかし移民により職を奪われる人は出てくるでしょう。そこで重要なのが職を奪われた人(負け組)への「再配分」です。移民により安く良好なサービス・商品が提供できるようになると、経営者・株主が利益を得ます。一方単純労働者は職を奪われたり、賃金が下がります。彼らのために職業訓練/補助金扶助などの制度が必要になります。あるいは複雑な制度ではなく「ベーシック・インカム」の方が、経済発展に繋がるかもしれません。
・また移民が安心して住めるインフラ(医療、日本語教育など)も必要になります。移民が不満を鬱積する様だと、日本人との間に軋轢が生じます。欧州では「ホームグロウン・テロ」が目立っています。それは移民の子供達が、その国に溶け込めないためです。これには日本の言語・文化・生活スタイル・マナーを教えたり、相談窓口を作るべきです。これらの課題に対し、日本人全員が議論すべきです。
<日本は魅力的な市場?>
・果たして高度人材が日本に来るのか。安倍政権は経済特区を設け、外国企業を誘致しようとしています。この場合、外国人社員/海外の取引先/外国人学者/世界の消費者などとやり取りするため、語学力・交渉力・判断力・プレゼン力などが必要になります。しかしそんなグローバル人材はいません。そのため、そんな人材を外資系企業が取り合っています。日本は政府も企業もグローバル人材を育てようとしていません。移民の受け入れは、このグローバル人材の育成に繋がります。そのためにも外国人が住み易い環境にすべきです。
<外国人技能実習制度>
・日本人は外国人に対し、「日本に来てもらう」ではなく、「日本に来させてやる」のバイアスがあるようです。「外国人技能実習制度」がそれを表しています。農業・漁業・建設業で外国人を「技能実習生」として3年間滞在させる制度です。希望すれば2年間の延長が認められます。これは期間を限定しているため、移民になりません。名目は「習う」ですが、実際は「働く」になっています(※真の目的は低賃金労働者かな)。そのため過酷な労働で過労死したフィリピン人もいます。この男性は月100時間、時間外労働していました。
※この制度が多くの問題を起こしているのを知っている。東南アジアでは日本渡航のために莫大な費用を要求する悪徳業者がいる。また日本では「技能を教える」としているが、低賃金・過重労働させている企業がある。
・この制度は外国人を「実習生」とし、「国際貢献の一環」としています。それなのに働く場所は慈善活動するNPOではなく、営利目的の企業です。名ばかりの「実習生」で、低賃金で肉体労働させています。そのため国連/国際労働機関(ILO)が批判しています。この様な状況なので、実習生が職場を抜け出し、不法移民になるケースが見られます。この制度は日本も外国人も得しない制度です。※留置所(?)での事件もあったかな。
<外国人は安い賃金で働かせるだけ?>
・優秀で国立大学を出たような人材を数年で帰すのは、もったいない話です。技能実習制度を改正する話があり、移民制度に近づける様です。新制度では永住権なども認められる様です。2017年末の改正では、実習生の権利や企業への監視が強化されています。何れにしても「外国人を安い賃金で働かせる」は見直すべきです(※色々提案しているが省略)。移民政策はゼロサムゲームではなく、Win-Winの関係にすべきです。日本人は「外国人に来てもらっている」との考えに変わるべきです。※最近は円安で、日本に行かないとの話もある。
<移民パワー、それを受け入れる米国>
・アップルCEOはトランプの入国禁止令に対し、「私達の成功・革新は移民なしでは考えられない」と言っています。米国の繁栄に多くの移民が関係しています。米国企業上位500社の内4割を移民かその子供が設立しています。アップルのスティーブ・ジョブズ(シリア系移民2世)、グーグルのセルゲイ・ブリン(ロシア系移民)、アマゾンのジェフ・ペゾス(キューバ系移民2世)などです。
・移民に成功者が多いのは、向上心・独立心・ハングリー精神が強いからでしょう。また米国に移民を受け入れる姿勢があるからです。欧州だと難民は「この国で安心して暮らして下さい。で何時帰国するんですか」と言われます。一方米国だと「米国へようこそ。で何時国籍を取るんですか」と言われます。
・島国の日本は事情は異なり、異文化の人に根源的な警戒心があり、外国人の流入に抵抗があります。これは法律・条例では簡単に変えられません。そのため冷静な議論が必要です。
<日本の文化はどうなる>
・このまま少子高齢化社会になると、労働世代の負担は大きくなります。「移民により犯罪が増える」「移民により失業者が増える」は偏見です。移民を受け入れるかは、国民の判断です。国民は移民の本当を知り、目を逸らさず、議論して欲しいです。
・「移民により日本文化がなくなる」と考える人がいます。しかし日本文化は世界に影響を与えています。また日本人は椅子に座り、洋服を着て、パソコンを使い、サンドイッチ/パスタ/ラーメンを食べ、野球やサッカーを楽しんでいます。既に多くの外来文化を取り入れています。日本に来た移民は日本文化に染まると思います。その日本文化に魅了され、来日する外国人も多くいます。私もそうです。
<日本の役割>
・国際法上は辿り着いた難民は救済しなければいけません。天災・戦禍・迫害などにより、難民は世界に6千万人います。米国は17万人、ドイツは44万人を受け入れています。しかし日本は難民申請者7586人に対し、27人しか受け入れていません。これだとラグビーの試合もできません。
・この先アフリカ/アジアの人口は増大します。食料不足は深刻化し、難民も増えます。海外で災害が起こると、日本は救助隊を出します。これは素晴らしい活動です。しかし災害の時だけでなく、日頃から難民を受け入れるべきです。
第3章 AI革命
<AIが人間を救う>
・少子高齢化により労働力が不足するので、AI・ロボットの活用が重要になります。実は世界の産業用ロボットの1/5が日本で稼働しており、日本は「ロボット大国」です。ディープラーニング(深層学習)の技術が発達し、AIも飛躍しました。IBMの「ワトソン」は医療診断に使われています(※詳細省略。ワトソンは昔からあった)。このAIは2億ページのテキストを3秒で読み切ってしまいます。ワトソンが有名になったのは、クイズ番組で楽勝したからです。
・車の自動運転技術も進化しています。「運転手なし」はまだですが、自動ブレーキや車間距離を保つ機能は普及しています。完全自動運転が実現すると、居眠り運転/飲酒運転/踏み間違い/わき見運転などがなくなり、交通事故は減ります。また必要な時に呼び出し、降りたい所で降りる事が可能になり、マイカーは不要になります(※カーシェアリングだな)。そうなると車は減り、駐車スペースも不要になります(※各家庭や市街の駐車スペースが不要になる。ただ待機スペースは必要だな)。また正確に運行するので、歩道・自転車レーンを確保できます。安全で環境面でもプラスです。
<機械は人の仕事を奪う?>
・そうなるとタクシー/トラックなどの運転手は仕事を奪われます。AIが人事考課や財務分析を行っている企業が既にあります。ゴールドマン・サックスは金融取引を自動化し、トレーダーを600人から2人に削減しました。野村総研は「職業600種の内、半分はAI・ロボットが代替できる」としました。米国の小売業者は1千万ドルを平均47人の社員で売り上げています。これに対し自動化したアマゾンは14人で売り上げています(※イーストマン・コダック/インスタグラムの話は省略)。
・失われる仕事もあれば、新しく生まれる仕事もあります。18世紀英国で産業革命が起きると、農業従事者は農村を離れ、工業労働者になりました。これにより経済は大きく発展しました。オートメーション革命/IT革命でも転職が発生しましたが、経済は発展しました。人類は、こうした創造的破壊を繰り返しています。
<AI時代にどう生きるか>
・AI時代を悲観する人もいれば、楽観する人もいます。私は悲観論者です。AI化が進めば人件費は下がり、企業はリストラを行うでしょう(※人口増もあり、人が安くなるな)。労働者の所得は減り、企業の儲けは増えるので、格差が拡大します。これを避けるには、第2章で解説した「再分配」が重要になります。最近「ベーシックインカム」が議論されていますが、こんな大胆な政策もありかもしれません。生活保障があれば、やりたい仕事ができ、起業が促進され、より経済が成長するかもしれません。
・AI時代になると子供の教育も重要になります。柔軟な思想/読解力/想像力/解決力/対人スキル/リーダーシップなどが重要になります。大人は自分の仕事がどうなるのか、考えておく必要があります。政府も「税収がどれ位増えるのか」「それを職業訓練などに充てるのか」などを考えておく必要があります。
・悲観的な話ばかりではありません。日本は少子化で労働力不足になるので、AIでそれを補う事ができます。また日本は長時間労働なので、それも解消できるかもしれません。
第4章 教育制度
<日本の教育の長所>
・日本の学校教育は「詰め込み型」でした。そのため能動的に学ぶ「アクティブ・ラーニング」が推奨されるようになり、大学入試も面接・ディスカッションなどが導入されました。この日本の教育について述べます。
・日本の学校教育の優れている点は以下の4点です。
①知能は世界トップクラス-PISA(学力調査)の上位はシンガポール/香港/日本/韓国などです。この中で大国は日本です。日本人は基礎的な学力を持っています。
②全国均一-日本が上位なのは、国民が公平に教育を受けているからです。100%の人が新聞を読めます。米国の14%は字が読めません(※移民かな)。
③良い方向に変えている-ゆとり教育の迷走はあったが、文科省は常に改善に取り組んでいます。そのため英語教育が導入され、入試制度が見直されてきました。
④生徒が掃除する-日本の生徒は学校で掃除をします。一方米国は掃除しないため、ゴミをポイ捨てし、清掃員を見下します。また米国は道徳がないため自分中心になりがちです(※多くの外国は、宗教=道徳かな)。
<正解は1つでない>
・一方弱い部分もあります。竹中平蔵は教育では「CCE」が重要と述べていました。最初のCは「クリティカル・シンキング」で、批判的な思考を持ち、本質に迫る力です。次のCは「クリエイティブ・シンキング」で、創造力です。最後のEは「エフェクティブ・コミュニケーション」で、伝える力です。これからの日本に必要なのは知識ではなく、自ら学び、自由に発想し、問題を見付け、人に伝える力です。「経済の自然淘汰」の中では、応用力がある人が生き残ります。
・大学入試でスマホの持ち込みを許可し、例えば「本能寺の変は、どの様な背景で起きたのか」などの問題を出せばと思います。起きた年を選択させる問題に意味はありません。ある課題について1時間で調べ、1時間で論文を書き、1時間ディスカッションする。そんな試験であれば総合力を確かめられると思います。※ゼムクリップの話があるが省略。
<ポテンシャルを活かした教育>
・米国のトップクラスの大学にもマークシート形式の試験「SAT」があります。しかしこれは審査の1/4しか反映されません。残りの3/4は、高校の成績、課外活動の内容、面接・論文です。これが最良とは言えませんが、世界トップ大学20校の半分が米国の大学です。
・しかし米国の教育にも問題はあります。教育格差があり、基礎的学力は均一ではありません。一方日本はPISAが優秀な様に、平均値が高くなっています。後は発想力・コミュニケーション力を身に付けるだけです。
・そんな時間はないと言われますが、例えば古文・漢文の時間が週2時間必要でしょうか。センター試験では古文・漢文がそれぞれ1/4の配点になっています。日本語の変化も知る必要があるでしょうが、2時間も必要でしょうか。これには議論の余地があると思います。※自分は理系で、1年間古文・漢文を放置し、痛い目に遭った。
・授業形式も教師が一方的に教えるのではなく、「引き出し型」「参加型」などのやり取り形式(アクティブ・ラーニング)にすれば思考力が身に付きます。米国の幼稚園・保育園には「Show and Tell」の時間があります。子供に玩具などを持ってこさせ、これが何で、どんな意味があるのかを説明させるのです(※面白そう)。20歳までは脳が発達します。この時期に伝える力、人との接し方、自分を信じる力、発想力、ユーモアなどを身に付けさせるべきです。
<完璧主義はやめ、先生も楽しむ>
・アクティブ・ラーニングは進められていますが、先生から「どう教えたら良いのか分からない」との声があります。完璧主義はやめ、一緒に学び、楽しむ気持ちで良いと思います。英語も同じです。英語はフィリピン人もインド人も話し、それぞれバラバラです。ネイティブに話す必要はありません。
・教育が変われば、親も変わる必要があります。入試にディスカッションが出るなら、家庭でも準備が必要になります。そうなると食卓でパパが論破されるかもしれません。会社では会議の意義を上司が部下に説明しなくてはいけなくなるでしょう。
<子供の利点を伸ばし、自信を付けさせる>
・子供の自信を育てるのも重要です。私は子供に「今はできないけど、練習すればできる」「君は何でもできる」と伝えています。また子供が好きな事を尊重し、それを伸ばそうとします。そこには「皆と同じでなくて良い」の思いがあります(※この辺りは日本と少し違うな。日本は均質性・同調性を求められる)。日本は「変わり者」を嫌いますが、「変わり者」が多いと社会も変わり、個性が尊重され、失敗は許され、再出発が可能な社会になります。日本の教育は均一的・画一的で、個性を潰しています(※日本は単一民族のため均質性を求めたが、多様性を尊重する社会に変わらないとだめかな)。しかし最近はクラスを習熟度別に分ける学校も見られます。
・日本人は高い知識・モラルを持っていますが、世界をリードしていません。日本は教育を改善しているので、近い将来、スーパー人材が生まれると期待します。
第5章 国際人
<価値観はコンタクトレンズ>
・国際人育成のため、英語教育の強化が進められています。2011年度から英語の授業が小学5年からになり、20年度には小学3年からになります。しかし「日本人は英語が話せない」は思い込みだと思います。日本人は簡単な英語を話す事ができます(※詳細省略)。
・英語をもっと話せるようにするには、毎日1時間ほど英語を話す事です。中学校で文法・語彙を学んでいれば、これで話せるようになります(※数年前英語の夢を見た)。方法は会話でも、音楽を歌うのでも、映画のシーンを演じるのでも良いです。ネイティブでなくても、自分が思っている事を表現できれば良いのです。
・ただし「英語力=国際人」ではありません。国際人になるには、知識/発信力/価値観が必要になります。初代神聖ローマ皇帝カール大帝は「2つ目の言語を得る事は、2つ目の魂を得る事」と言っています。つまりその国の価値観・文化を身に付ける事が必要です。例えばその国の新聞の社説を読むのです(※中学生頃に海外の新聞を読む話があったな)。これによりその国の価値観を知るこ事ができます。
・私は大学で国際関係論を教えています。そこでは、まず学生と共に価値観について話し合います。価値観は透明のコンタクトレンズみたいなもので、それに気づいていないからです。誰もが先入観・偏見・固定概念を持っています(※バイアスもこれに含まれるかな)。
<8歳からライフルを撃っていた>
・米国の銃規制が問題にされます。日本は明治になり武器が取り上げられますが、それまでは武士は佩刀が許されていました。武器は管理されていたのです。米国は憲法で「銃の所有権」が保証されています。それは闘いによって自由・独立を得たからです。また開拓時代は、野生動物・山賊・先住民などから身を守る必要がありました。米国人にとって、銃は身近な物です。
・私は8歳の時からライフルを撃っていました(※詳細省略)。日本と米国では価値観が異なるのです。米国にも銃規制賛成派がいます。しかし銃規制反対派を変人扱いできません。歴史的背景を知らないと、賛否は語れません。
・同様に日本にも問題があります。例えば「子供の宿題の面倒は母の仕事」があります。先進国は共働きになっているのに、「育児は母が担当」になっています。これは女性の社会進出が進まないバイアスです。他の国の制度・考え方・価値観を知り、議論すべきです。
<意見の対立を避けない>
・前章で「Show and Tell」の話をしました。これは米国がコミュニケーション能力を重視しているからです。小学校では質疑応答の授業があり、中学・高校では議論・交渉を練習します。これらにより対話マナー・交渉力などを身に付けます(※修辞学について知りたいのだが)。一方日本は「和」を大切にするため、対立を避けます。交渉の基本は「WinーWin」です。黙って引き下がるのではなく、互いに話し合い、納得した上で譲り合うのです。※米国は裁判社会でもあるな。日本は単一民族で価値観が単一、一方米国は多民族で価値観が多様。この歴史的経緯が違いの根本原因かな。
<日本人はコミュニケーターになれる?>
・交渉力・プレゼンテーション力を身に付けるには場数が必要です。互いに「WinーWin」となった経験を、子供の時に積ませるのです。授業でそんな機会を増やすのです。
・これは家庭でもできます。子供と会話する機会を増やすのです。話題は学校・友達・テレビ・食べ物・習い事、何でもかまいません。そこでは子供の言葉を否定してはいけません。米国では「THE only stupid question is the one not asked」(唯一愚かな質問は聞かなかった質問)と教え、どんな質問でも褒めます。
・日本では空気を読む事が重視され、表情などからそれを読むのが上手です。日本人はこの受信力に加え、英語力・コミュニケーション力を身に付け、発信力も高めるべきです。
第6章 選挙に行かない
<どうせ投票しても>
・2017年10月衆院選で自民党が圧勝しました。選挙で常に問題になるのが投票率の低さです。特に問題なのが若者の投票率の低さです。20~24歳33%/25~29歳38%/30~34歳42%がワースト3で、65~69歳72%/70~74歳74%/75~79歳70%がベスト3です(※投票数にすると、さらに減るのかな)。これでは高齢者向けの政策になります。※まあ政策を作成するのは官僚かな。
・より多くの国民が満足するためには投票率が重要です。しかし「どうせ自分の1票なんて」となっています。彼らには2つのタイプがあります。1つは、政治に期待しない人です。米国には「政治家は自己利益でしか動かない」と蔑む人がいます。日本にも「政権交代はないし」と期待しない人がいます。
・もう1つは、現状に満足している人です。日本は治安は良いし、教育レベルも高く、保険制度も整い、平均寿命は高く、中間層が厚くなっています。しかし問題が大きくなってからでは遅いかもしれません。選挙には予防治療の役割もあります。このままでは格差は広がり、若者の貧困も多くなるでしょう。
<投票率を上げるには>
・投票率を上げる方法も沢山あります。鉛筆での記入もどうでしょうか。海外ではオンラインでできたり、不在者投票を郵便でできます。日本でもコンビニ・郵便局・学校・託児所でできると、投票率は上がるでしょう。オーストラリアでは投票しないと罰金を課せられます。子供への教育も効果があります。デンマークでは親が投票する子供の投票率が71%でしたが、行かない子供の投票率は15%でした(※顕著だな)。
・選挙と同時に拘束力のない国民投票を行う事も考えられます。教育の無償化/憲法改正/年金問題などの優先して欲しい政策をマークシートにするのです。新聞社の世論調査より、こちらの方が訴求力があるでしょう。
<選挙制度改革>
・日本では選挙改革が進みません。それは選挙制度を変えるのも政治家だからです。特に日本の場合、投票率が低い方が与党に有利になります。
・米国の大統領選は「選挙人制度」で、多く得票しても当選するとは限りません。それでトランプはクリントンに勝ちました。また2000年のブッシュVSゴアも同様でした。共和党に有利な選挙制度になっています。日本の2017年衆院選で自民党は48%の得票で75%の議席を獲得しました。与党に有利な選挙制度のため、政治家が選挙制度改革を進める事はありません。国民から動かなくてはいけません。
第7章 年金問題
<人口ピラミッド逆転で財源不足>
・多くの日本人が老後を心配しています。日本は「国民皆年金」なので、20~60歳の住民は年金加入が義務化されています。しかしこの年金がピンチになっています。まずこの制度は現役世代が受給世代を扶養する「世代間扶養」です。そのため受給者より負担者の方が多いのが前提ですが、それが少子高齢化で揺らいでいます。1960年総人口で65歳以上が占める割合は5.7%でしたが、2017年は27.7%に増えています。当時の平均寿命は65歳でしたが、2015年は男性81歳/女性87歳に伸びています。受給者も受給年数も増え、この傾向は今後も続きそうです。
・負担者が減り、受給者が増えるので、当然年金額が減ります。国民年金の場合、70歳の人は負担額の3.8倍の年金額を受け取れますが、40歳の人は1.5倍の年金額しか受け取れません。厚生年金も同様で、70歳の人は負担額の5.2倍の年金額を受け取れますが、30歳の人は2.3倍しか受け取れません。
<保険料は累進課税にすべき>
・納付率の低さも問題です。厚生年金は天引きなので問題ないですが、国民年金の納付率は60~70%と低迷しています。また保険料が一律なのも問題です。富裕層と貧困層で保険料を変えるべきです(※一応国民年金基金はある)。分厚い中間層は重要で、累進性を高めるべきです。
・財源を増やすため、消費税を引き上げる案があります。しかしこれは貧困層の負担が増します(※詳細省略)。非累進性の消費税を引き上げるのではなく、累進性の相続税/所得税/投資に掛る税/法人税などを引き上げるべきです。
<年金は困った時の保険?>
・今後年金をどうすべきでしょうか。人事コンサルティング会社マーサーが各国の年金制度を評価しましたが、日本は30ヵ国中29位でした。「少子高齢化に対応できていない」「政府債務残高が大きい」などが理由です。そのため国民も年金に対する意識を変える必要があります(※自助かな)。日本人は「老後は年金で保証される」と考えていますが、多くの国では「社会保険」と考えています。米国にも公的年金はありますが、多くの人は職域年金/個人年金/貯蓄などに頼っています(※医療保険も同様だな)。
・日本も「年金は本当に困窮している人のため」に変えないといけません。どうしても年金に頼りたいなら、制度改革が必要です。「保険料を多く納めた人の受給額は増える」「保険料の半分は生活保護に回す」「国民一律のベーシックインカムに移行する」などです。政府が改革を進める前に、国民の議論が必要です。
<変化を待っていても、変化は来ない>
・制度改革だけでなく国民の意識改革も必要です。日本人は老後に対し危機感が薄いようです。日本/米国/ドイツ/スウェーデンで調査すると、老後に対し準備していない人は日本以外では2割台ですが、日本は4割を超えます。その対策も日本以外だと多様です(※著者の母のケースを紹介しているが省略)。
・年金を積立制にしている国も多くあります。米国には「401k」制度があり、日本はそれを模倣した「確定拠出年金」があります。しかしその利用者は780万人しかいません(※日本人は運用に消極的かな)。
・もう保険料が何倍にもなって返って来る時代ではありません。「昭和バイアス」をなくさないといけません。これからは自分から何かしないといけません(当事者意識)。
・現状を変えたければ選挙に行くべきです。政治家は非を認めず、改革もしません。選挙期間中は立派な事を言いますが、当選すると何もしません。選挙で評価しないと、真の政治家は現れません。日本は少子高齢化の先進国です。
第8章 沖縄基地問題
<なぜ沖縄だけ>
・次は米軍の基地問題です。基地問題と言えば沖縄です。1972年沖縄は日本に帰属します。しかし面積の20%は米軍基地として使用され、日本の米軍基地の75%が沖縄にあります。そして騒音問題やヘリの炎上・不時着・部品落下などの問題を起こしています。さらに米軍関係者による暴行事件・殺人事件が起きています。
・実は警察官による犯罪が米軍関係者と同程度起きています(※詳細省略)。また自衛隊による航空機事故も米軍と同様に起きています(※詳細省略)。しかし「警察はいらない」「自衛隊は出て行け」などの声はありません。それはその必要性を認めているからです。
・米軍は必要なのでしょうか。日本人には「米軍に守られている」との意識はなく、「米軍に支配されている」との意識がある気がします。そのため「米軍出て行け」となるのです。特に沖縄の人はそうなっています。第2次世界大戦で各地が被害を受けましたが、特に沖縄は戦場になり民間人10万人が亡くなりました。そしてその後27年間、米国の支配下にあったのです。東京にいると感じませんが、沖縄の多くの人は怒り・不満を持っています。
・普天間基地は「世界一危険な基地」と云われます。県外移設の話がありますが、どの自治体も引き受けていません。これは英語の「Not in My Back Yard」(NIMBY)です。代替エネルギーには賛成するのに、近くに風力発電所が作られるのに反対するのと同じです(※原発、ゴミ処理場なども同様かな)。
・こんな案もあります。近年過疎化が問題になっています。例えば過疎地に自衛隊の基地があった場合、その基地の閉鎖を表明するのです。そうすると閉鎖反対の声が出て、米軍の基地を入れるのです(※今でも日米が共同利用している基地はあるかな。岩国とか。佐賀はどうだったか)。これにより地域の活性化が可能です。いずれにしても他人事にしない事が重要です。
<在日米軍が必要な理由>
・そもそも在日米軍が必要なのでしょうか。米軍が撤退したケースを考えてみましょう。防衛大学の教授は、同等の防衛力を持つには23兆円の費用が必要と試算しています。空母/ミサイル/戦闘機/爆撃機/スパイ衛星/レーダー施設/核などが必要になります。その開発費・維持費も必要になります(※途方もない軍事費になるな)。
・日本の防衛費(GDP比)はOECD諸国の半分位です。駐留米軍は5万人(家族などを含めると10万人)いて、日本は「おもいやり予算」を出しています。もし日本だけで防衛するととなると、人不足になり、大きな経済損失になります。米国の若者が日本を守っている事で、日本は経済に集中できています。
・トランプは「日本は駐留軍の費用を100%負担すべき」と発言しました。しかし「日米地位協定」では「基地提供の経費は日本が負担するが、その維持や作戦の経費は米国が負担する」となっています。ところが米国の財政悪化で、日本が「おもいやり予算」を出す様になったのです。また日本は駐留経費の75%を負担していますが、韓国/イタリアは40%、ドイツは30%しか負担していません。もし沖縄からグアムに撤退すると、当然100%米国の負担になります。またこの場合中国/北朝鮮から遠ざかるため、作戦的にも不利になります。
・基地問題は沖縄以外の人には忘れられがちです。基地問題/日米同盟なども議論が必要です。
<国際社会の一員として>
・日米同盟の再交渉が行われると、米国は後方支援だけでなく、自衛隊の参戦も要求して来るでしょう(※実際に集団安全保障は容認され、防衛費は増額された)。
・日本は憲法で「武器を持たず、戦争しない」としています。これは世界でも珍しい憲法です。しかしこれが揺らいでいます。その切っ掛けが1991年湾岸戦争です。戦後クウェートが感謝の言葉を米国紙に掲載します。日本は1.7兆円を提供したのに、そこに日本はありませんでした。これを機に、1992年「国連平和維持活動協力法」(PKO協力法)を成立させ、PKOに参加する様になります。
・日本には平和憲法があるので、これに基づいてブランディングすべきです。例えばレスキュー隊・医療隊を被災地・紛争地に派遣するのです。戦争に命を掛けるのではなく、救済に命を掛けるのです。赤十字の様に、双方を助けるのです。
・基地問題は沖縄だけでなく、地域の一員としてどうするかです。沖縄の基地問題、県外移設、集団的自衛権、憲法改正、米軍撤退など様々な論点があります。私は今の日米のバランスは悪くないと思います。ただし基地を沖縄だけに押し付けるのは、どうかと思います。これについても皆で議論しましょう。
第9章 北方領土
<正当性だけでは解決しない>
・2月7日は「北方領土の日」です。これは1855年日露和親条約が結ばれた日です。しかし居酒屋などで北方領土について話しているのを聞いた事がありません。メディアでは「北方領土は日本固有の領土なので、ロシアは返還すべき」との主張を聞きます。
・北方領土は択捉島・国後島・色丹島・歯舞群島の事です。先の日露和親条約、1875年樺太千島交換条約で領土が決まります(※日露戦争後、日本は南樺太を領土にしている)。1945年8月18日ソ連が日ソ中立条約を無視し、北方領土を占領したのです(※日本が武装放棄した後に侵攻した。ロシアらしい)。1951年サンフランシスコ平和条約で日本は、樺太・千島列島を放棄します。しかしこれに北方4島は含まれていません。1956年日ソ共同宣言で歯舞群島・色丹島の返還が決まりますが、その後の進展はありません。
・日本人は「日本に正当性があり、ロシアは不当に占有している」と考えています。しかしロシア人は「降伏文書に調印した1945年9月2日が終戦日で、ソ連は侵略戦争を始めた日独伊と戦い、北方4島を勝ち取った。北海道を占領しなかっただけでも有難く思え」と考えているかもしれません。
・修辞学に「目的に応じた話し方」があります(※リベラルアーツにあったな。これも宿題だが)。①法廷弁論(誰が悪いか)、②儀式弁論(何が大事か)、③議会弁論(どうするのが良いか)の3つです。①は過去を追及する話し方です。②は教会での説教や演説で現状を述べるもので、現在形になります。③は、これからの解決案を掲示する話し方です。それぞれが過去・現在・未来に焦点を置いています。北方領土に関しては、日本人は「平和条約を破ったソ連が悪い」「北方領土は日本固有の領土」などの①②に固執しています。
・90年代にソ連が崩壊した時が、2島返還の最大のチャンスでした。もっと遡れば、朝鮮併合/傀儡政権の満州建国/日露戦争が問われます。しかし未来志向で解決策を探る必要があります。
<なぜロシアは固執するか>
・交渉では相手の立場・価値観を把握する必要があります。なぜ広大なロシアが小さな4島に固執するのか。それは不凍港を確保するためです。それと漁業権・資源などの経済価値もあります。4島にロシア人が既に1.7万人いて、ロシア政府はインフラ整備などに予算をつぎ込んでいます。2016年プーチンは訪日し「北方4島を返すと、米軍基地になるかもしれない」と述べています。ロシアが簡単に返すとは考えられません。
・日本が「北方領土に米軍基地は作らない」と約束しても、ロシアは納得しないでしょう。2014年ロシアはウクライナのクリミア半島を占領しますが、両国は和平条約を結んでいました(※詳細省略)。ロシアは1990年代に結んだ条約さえ破るので、それ以前の約束ならなおさらです。日本もそうですし、今の米国も同じです(※詳細省略)。
<日本のカード>
・「4島返還」「2島優先返還」などの案がありますが、以下の5つを考えます。①武力行使(憲法改正が必要)、②経済的・外交的圧力(経済制裁など)、③経済的・外交的協力(天然ガスの長期輸入などで相互依存を高める)、④売買取引、⑤その他(ロシアの国際復帰に協力する。ロシアとの軍事同盟など)。
・①は現実的ではありません。②は北朝鮮に対し行っていますが、効力はありません。ウクライナ問題で欧米がロシアに行っていますが、態度を変えていません(※今はさらに侵略戦争に発展している)。
・2016年日露首脳会談では③が中心になり、政府間で12件、民間で40件の経済協力事業が決まります。領土問題の進展はなかったが、相互依存を高めるのは悪い事ではありません。しかし棚上げし続けると尖閣問題の様に衝突する恐れがあるし、実効支配しているロシアに有利になります。しかし島に住むロシア人が減っていくかもしれません。今ロシアは原油安で経済が疲弊しており、トップダウンが効くプーチンなので返還の好機かもしれません(※直近は原油高かな)。
・④売買取引は米国がロシアからアラスカを買った様に、あり得ます。ここでの問題は、日本人が幾ら払うかです。1人10万円払えば、10兆円になります。1人100万円だと100兆円で、4島の面積が5千k㎡なので、2万円/㎡と割安です(※200億円/K㎡=2万円/㎡。100万円出すかな)。その10倍だとロシアも動くでしょう。これはあり得る話で、議論すべきでしょう。
・⑤はロシアの国際復帰への協力です。2016年首脳会談は、良い機会でした。国際社会からブーイングを受けたかもしれませんが、領土を取り戻せたのです。安倍首相は親プーチンのトランプが大統領になる前に、このカードを切ったのです(※ロシアが国際社会に復帰したかな。首脳会談=国際復帰?)。それなのに領土問題の進展はありませんでした。
・これら以外にもう1つ選択肢あります。「放棄」です。経済協力/金銭取引/和平条約などのために放棄する事も考えられます。
<日本は地域の仲介役が求められている?>
・しかし何れのカードも望ましいものではなく、現状維持がベターなのかもしれません。国民の議論がないまま、安倍首相が功績を急いでいると感じます。これを機に同盟関係を考えたいものです。中国の脅威に備え、米国から離れ、ロシアとの同盟もあるかもしれません(お勧めはしません)。
・「八方美人」になるのも手かもしれません。トラブルを起こしそうな北朝鮮・中国・ロシアに近いので、仲介役が求められているかもしれません(※どことどこの仲介?)。日本は対立する国が少なく、憲法上は平和的で、世界に文化を発信し、ODA/インフラ投資/技術移転で貢献しています。「世界平和のファシリテーター」になれます。
第10章 消えない差別
<ペット可・ピアノ可・外国人不可>
・2017年浜田雅功が「ガキの使いやあらへんで」で顔を黒く塗り、人種差別と批判されます。本章では、差別・偏見・マイノリティへの配慮について考えます。差別感情は、人種/障碍者/性的マイノリティ/居住地/女性などに見られます。まずは人種・外国人に対して考えます。日本は人口の2%が在留外国人です。国籍は、中国3割、韓国2割、ベトナム1割などです。近年増えてきた感じはありますが、まだ人種的な多様性(ダイバーシティ)に慣れていない気がします。
・外国人にはアパートやマンションが借り難くなっています。私も断られた事があります。また「ペット可・ピアノ可・外国人不可」を見て、「外国人はペットより下か」と感じた事があります(※著者の様々な経験を紹介しているが省略)。日本では「ハーフ」と言いますが、多民族国家の米国では「ジャパニーズ・アメリカン」と表現します。日本では純粋な日本人以外は、ハーフ/クォーター/外国人となるのです。
・欧米にも人種差別があります。宗教/性別に関してもあります。リンチや暴行が行なわれ、これらは日本より激しいかもしれません。無視やネットでの誹謗中傷もあります。
<見えない差別>
・日本は「見えない差別」が多い気がします。日本の差別は軽微なので、双方に差別意識が低いのかもしれません。前述の番組でも、製作者に差別意識がなかったのでしょう。コントでもゲイの男性を笑いものにしたり、中国人の話し方を真似したりしています。ブスネタ/デブネタなどの身体ネタもあります。日本人は他人に気を遣いますが、この辺りは鈍感です。
・この原因は日本に多様性が少なく、日本文化が「ハイコンテクスト・カルチャー」だからです。日本は文化背景(コンテクスト)の共有性が高く、無理に言葉にしなくても通じます。日本は単一民族で、日本語だけを話し、同じ教育を受け、同じテレビ番組を見て育ちます。そのため「何も言わなくても通じる社会」になったのです。一方米国は多民族社会で「ローコンテクスト・カルチャー」です。価値観・知識などの共有性は低く、言葉で明確に表現しないと伝わりません。皆がこれを認識しているため、幼い頃からコミュニケーション能力を鍛えられます。日本は「同じで当たり前」ですが、米国では「違うのが当たり前」なのです。
・日本は「言わなくても通じる社会」のため、少数派/マイノリティは過ごし難くなります。当然と思われている事をやらなかったり/できなかったりすると、人間関係が崩れ、いじめやバッシングに繋がります。
・日本は人口が減るため、政府は受け入れる外国人を徐々に増やしています。多様性も徐々に受け入れられるでしょう。とにかく自分達と価値観が異なる人への潜在的な抵抗を自覚する事が重要です。
<閉め出すのではなく、互いを守る制度>
・私は差別撲滅を訴えますが、外国人に部屋を貸したくない大家の気持ちも理解できます。貸した部屋を汚されたり、家賃を払わず帰国されたら困ります。外国人にお金を貸したくない銀行も、外国人に就労ビザを出したくない企業の立場も理解できます。これらに対しては外国人の保険があればどうでしょうか。毎月1千円の保険料を払い、問題が発生すると、それを利用するのです。外国人を閉め出すのではなく、外国人を受け入れるための制度です。※損保が作るかだな。加入者は大家や銀行になるのかな。
・外国人のマナーが問題になった事もあります。小樽市の公衆浴場が外国人の利用を断り、裁判になり、経営者が敗訴します。日本はマナーに厳しいのに、体を洗わず浴槽に入ったり、石鹸を持って入る人がいるのです。日本はマナーに厳しいのに、それが明文化されていません。玄関で靴を脱ぎ、スリッパに履き替えます。畳部屋に入る時は、それを脱ぎます。トイレに入る時は、別のスリッパに履き替えます。バルコニーに出る時は、また別のスリッパに履き替えます(※こんな事があったか)。
<なぜ中国人・韓国人をバッシングするのか>
・日本はハイコンテクスト・カルチャーのため、アジア人でさえ不寛容です。一時中国人をバッシングする番組が頻繁に流れていました。池上彰はこれを「外見が同じなのに価値観・倫理観が異なるのを日本人が許してない」と説明され、納得しました。白人・黒人は外見が異なるので、価値観・倫理観が異なっても許せるのです。また欧米への憧れや、ここ数世紀の歴史問題や、相手国の反日政策も理由でしょう。
・しかし外見は同じでも、文化・知識・マナー・価値観が異なる事を認識すべきです。そうしないと少し考え方が異なるだけで、偏見・差別感情を抱き、仲間外れやバッシングをして、議論しなくなります。「十人十色」の言葉があります、異なる価値観の存在を認識すると、偏見のない社会が実現できます。
<性的マイノリティ>
・ここからはLGBTQ(レズピアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、クエスチョニング)について述べます。これに対する偏見をなくすのは、外国人に対するより難しいかもしれません。それはカミングアウトしている人が非常に少ないからです。しかし調査では7.6%(13人に1人)がLGBTとなっています。カミングアウトしている人が少ないため、偏見を持っている事さえ気づかないのです。
・不思議な事に、テレビにはオネエタレントが沢山出ています。一方ゲイ/レズピアンはいません。米国も保守的でしたが、ここ25年位でカミングアウトが一般的になりました。同性婚が法律で認められ、カミングアウトした司会者・芸人・俳優・スポーツ選手・政治家が現れる様になりました。オネエは受け入れられるのに、ゲイ/レズピアンが受け入れられないのは、オネエが明らかに外見が異なるため、容認されるのでしょう。
・仏教は同性愛を禁じていません(※戦国時代は同性愛の方が高貴とされたかな)。それなのになぜ性的マイノリティに偏見があるのでしょうか。日本が長く閉鎖的だったからでしょうか(※明治維新による男性社会化があるかな)。
<理性で偏見に打ち勝つ>
・米国はカミングアウトする人が増え、世の中が変わりました。日本はまだまだです。この偏見に打ち勝つには、「理性の力」が必要です。異性愛だけが正しいのでしょうか。同性愛が誰かに害を与えているでしょうか。杉田議員が「生産性がない」と述べましたが、生涯独身の人はどうなるのか。
・私は先輩がカミングアウトした事で、この偏見を克服できました。彼は10歳上で、私の両親が離婚した時、私を支えてくれました。彼から「自分はゲイだ」と告白された時、私はショックを受けました。それは教会が許していない事です。私は様々な事を考えました。性的指向で人を判断して良いのか。イエスも結婚しなかった。結果、ゲイを否定する理由はなかったのです。また彼の道徳も否定する事ができませんでした。
・この偏見を解決しない人がいます。そこで力になるのが著名人(政治家、セレブ、芸能人など)です。彼らの言動で、国民の意識は変わります。あるいは法律・制度が整えられると、社会は変化するでしょう(※今国会でLGBT法が成立した)。似た例が飲酒運転禁止/歩きタバコ禁止/分煙/セクハラなどです。
・日本も多様な人が住み易い社会になって欲しいです。そのためには法律・制度の整備も必要ですし、マジョリティが「マイノリティを受け入れる勇気」も必要です。子供への教育も重要です。そのため私は、我が子に多様性を理解してもらう様にしています。英語の先生はフィリピン人・ドイツ人・アフリカ系米国人などにお願いしています(※本人がやれば)。またホームパーティに同性愛者を招き、LGBTQの人と接触する機会を設けています。
・ただ我が子にはマイノリティとなり、苦労して欲しくはありません。性的マイノリティの男性は、そうでない男性の6倍の自殺リスクがあるそうです。我が子が性的マイノリティになっても、支えてあげたいと思っています。我が家以外でも苦労して欲しくないので、人種差別/LGBTの差別解消を呼びかけたいと思います。
<言葉には固定概念が表れる>
・差別・偏見をなくすには、各自がその先入観に気づく必要があります。例えば、あるクイズがあります。親子が乗っていた自動車が事故を起こし、父は即死し、子供は病院に運ばれます。しかし外科医は「この子は我が子なのでオペできない」と言ったのです。この答え分かるでしょうか。答えは外科医が母親だったのです。間違った人は「外科医は男性」の固定概念あるのでしょう。
・日本語の教科書に「ご主人」の言葉がありました。これだと男性に所有権・支配権があると感じられ、私には違和感があります。あるいは「待機児童問題で困っているお母さん」「育児に困っているお母さん」の表現もあります。これらも無意識で使っている人がいますが、おかしな表現です。言葉には固定概念が表れるので、慎重になるべきです。「子供は産まないの」とか、男性に「仕事は何をされていますか」なども問題のある質問です。※他にも色々紹介しているが省略。
・一方で制度・組織・経済構造の変換も重要です。「女性の社会進出」には制度の変換が必要です。日本は学歴が高い女性が多いのに、男女格差はOECDで韓国/エストニアに次いでワースト3位です。これは保育施設が少ないのも原因でしょう。この問題に企業が取り組むのは難しいので、自治体が積極的に取り組むべきです。少子高齢化による労働力不足の解消に、この問題も関係します。
・安倍首相は「女性の社会進出」を目標に挙げましたが、まだまだです。LGBT/女性の社会進出に保守政権が取り組む事が重要です。政府が取り組まなくても、私達が心の中/コミュニケーション/社会・経済活動/組織などを変える事で、マイノリティが暮らし易くなり、公平な社会になり、経済が活発化します。
第11章 地方創生
<地方の現状は深刻>
・首都圏一極集中が進み、地方が衰退したため、2014年安倍政権は「地方創生」を掲げます。日本の人口は減少していますが、東京圏(東京、埼玉、千葉、神奈川)/愛知/大阪/福岡は転入超過になっています。また高齢化により限界集落(人口の50%以上が65歳以上)が増え、2007年約8千ヵ所から2015年1.6万ヵ所に増えています。これにより地方の財政も悪化しています。
<地方の存続は必要か>
・この地方の消滅を「自然の摂理」と諦めるのも選択肢です。かつては100%の人が田舎で暮らしていましたが、今は半数が都市に住んでいます。特に先進国では70~80%の人が都市に住んでいます。現代は都市の方が効率的です。車を運転する人は減り、環境的でもあります。マンションに住むので暖房・冷房費も抑えられます(※田舎の方が自然がコントロールしてくれそう)。公共施設(学校、病院など)も効率的に使用できます。起業密度・労働密度・消費密度も高くなり経済的です。アイディア/イノベーションも起き易くなります。
・地方存続の理由を考えてみましょう。まず「リスク分散」です。首都圏で大地震が起こったら大変です。その時元気な地方があれば救済できます。戦争が起き、東京が攻撃されても大変です。
・また地方存続はリスク回避のためだけではありません。地方には風習・伝統文化があります。祭り(阿波踊り、ねぶた、よさこい)/民芸(漆器、陶芸、竹細工)/食文化(牡丹鍋、ちゃんぽん、ミミガー)などです。人口が都市に集中すると、これらが廃れます。これらは外国人観光客にも魅力的です。農業・漁業体験/文化体験はリピーターが多くいます。
・3つ目の理由は「コスト分散」です。「地産地消」の言葉がありますが、生産地と消費地が近い方が運搬コストが削減できます。東京の地価はどんどん上がり、バブル期を超えました。そんな東京に工場・農地を設ける事はできません。都市化も度を越すと効率が悪くなります。宮崎県の通勤時間は30分ですが、東京圏はその3倍になります。さらに東京の住居は狭くなります。
・人口分布はバランスが重要です。毛沢東の大躍進政策、レーニンの新経済政策などは強制し、大失敗しています(※製鉄の話は知っているが、詳細が欲しい)。今ある自治体を全て存続させるのは不可能で、ある程度絞る必要があります。私の考えでは、県庁所在地と幾つかの街を守るべきでしょう。これであれば、リスク分散/文化継承/効率化/生活向上も実現できるでしょう。実際に「どの集落を存続させるか」は議論が必要です。そこで重要なのは透明性と全員参加です(※詳しく解説しているが省略)。
<箱モノ行政、商品券、ふるさと納税>
・地方創生の対策に「補助金」があります。国からの補助金で体育館・図書館・美術館などを建てる話です。しかし人が入らず、閑散としているケースが多くあります。青森市では商業施設を作ったのに経営破綻し、市長が辞任しています。
・この様に「箱モノ」を作ったり、補助金で供給力を高める政策を「サプライサイド・エコノミクス」と言います。これは時代遅れの政策ですが、政治家が仕事をしている事を見せるため、未だに行われています。本当に重要なのは、需要を増やす事です。消費者がお金を使うのであれば、供給は後からついてきます。
・この需要を増やすために行われたのが「プレミアム商品券」です。自治体の97%でこれが発行されました。しかしこれは有効期限内に買物し、その分期限後に買物が減ります(※詳細省略)。
・「ふるさと納税」も問題があります。ある自治体に寄付すると、2千円は自己負担になりますが、残りの寄付金が住民税・所得税から控除されます。そして寄付した自治体から返礼品(食品、宿泊券、商品券、電化製品など)がもらえます。1万円を超える家電もあり、それを2千円で入手できるので、これは「合法横領」です。また寄付を受けた自治体は、返礼品送付の費用が発生します。
・「プレミアム商品券」も「ふるさと納税」も一時的な効果しかなく、地方存続には繋がらないでしょう。そして確実に損をするのが、寄付した人が住む自治体です。「ふるさと納税」による減収は、首都圏(1都3県)で846億円(2017年)あったそうです。また「税金を払えばモノがもらえる」の誤認も生まれます。税金は公的サービスのために払うのです。
<都会税>
・「都会税」は良いかもしれません。都会に住む人に課税し、それを地方に回すのです。「これは、ふるさと納税と同じでは」と思われるかもしれませんが、「ふるさと納税」では税収の半分が返礼品で消えます。また都会税の納税先を納税者が選べたら良いと思います。
・国民が地方存続の必要性を感じないといけません。都会は通勤時間が長く、住居が狭く、税金が高いとなると、都会に住むメリットは幾らか減少します。政府が地方創生に公金を掛ければ、それが事実上の都会税になります(※既に地方交付税があるが)。しかしこれには透明性が重要です。いずれにしても国民による議論が必要です。
<世代毎のニーズ>
・世代別の政策も重要です。例えば、「若い頃は都会で働き、子育ては地方でしたい」などの要望があります(※都会に住むのは短い期間になり、地方に勤務先が必要になる)。そのため地方は子育て政策を充実させるべきです。例えば、「地方大学の無償化」「空き家を格安のシェアハウスにする」などです。自治体が教育費を出しても、成人すると都会に住むと元は取れません(※結局、一生住んでもらうための政策かな)。
・結局は「本当のふるさと納税」が必要です。これは所得税を教育を受けた出身地に一生納める制度です。子供が高所得者になると、地方の税収も増えるため、地方は教育に力を入れるようになります(※しかし進学校は地方になく、都市に集中しているかな)。
・地方に老人ホームなどを作るのも1つの案です。欧米には「老後コミュニティ」があり、住宅/医療施設/スーパー/公民館などが揃っています。米国のフロリダなどがそうですが、日本なら宮崎などでしょうか(※それ程長い期間ではないので、子供の居住地に近い方が良いかな)。
・若者に移住してもらいたいなら、それ向けの対策が必要になります。福井県鯖江市は「ゆるい移住」制度で、シェアハウスに半年間無料で住んでもらいました。そして15人中、6人がそのまま住み続けています。
・職業訓練/人材教育などの移住支援制度なども考えられます。「大学卒業後に、そのまま5年間住めば学費を免除」なども良いでしょう。しかし何れも魅力的な町でないとダメです。
<サテライトシティ>
・地方に人を集めたいなら、企業の移転が最良です。しかしこの政策は既に行われており、本社を地方に移転した場合、税が優遇されます(※これは法人税の収入になるが、人の移動は不確実かな。工場の移転などの方がメリットがあるかな)。しかしこの成果ははかばかしくなく、東京圏への本社の転出入は、転入が転出を上回っています。東京圏にはスピード感やマーケットがあり、取引先も集中しており、離れられないのです。
・地方と都会の格差は短期で解消できません。長期的に「分散型社会」に変えていく必要があります。例えば東京以外の首都圏(埼玉、千葉、神奈川、茨城、栃木、山梨)に「分散型特区」を作る政策もあります。金融は千葉、製造業は筑波、メディアは鹿島などに集中させ、サテライトシティを作るのです。
・世界でこのモデルが見られます。米国の経済の中心はニューヨークですが、アマゾン/マイクロソフト/スターバックスの本社はシアトル、アップル/グーグル/ヒューレットパッカードはシリコンバレー、GM/フォードはデトロイト、ボーイング/モトローラはシカゴと分散しています(※米国は広いので)。
・首都に本社が集中する割合は、東京51%/ロンドン40%/パリ27%と東京が高くなっています。企業の地方移転には、地方での職業訓練/人材教育の場、そして起業のし易さが重要になります。
<働き方の見直し>
・地方存続は難しい問題です。「文化的魅力があれば若者は引っ越してくる」は甘い考えと思います。若者は文化より仕事で、また「東京に出れば何とかなる」と考えています。これからの地方経済・日本経済を支えるのは彼らです。この問題を学校でも議論して欲しいです。
・しかし地方の存在意義が分かっていれば解決できる問題ではありません。これは財政赤字を解決できないのと一緒です。自分を犠牲にして、地方に移住する人はいません。しかし皆が高い家賃、狭い住宅、満員電車を好んでいる訳ではなく、ゆとりのある生活を望んでいます。今働き方・暮らし方の見直しが行われており、地方存続はそれと連携し、取り組むべきです。
第12章 原子力発電
<地球温暖化は陰謀?>
・2017年トランプは気候変動抑制を目的とする「パリ協定」から離脱します。これは石炭業界などに配慮したからです。また共和党議員には「地球温暖化はリベラル派の陰謀」と主張する人がいます。またキリスト教福音派には「地球は神が造った物で、人がどうこうできるも物ではない」と考える人もいます(※この考えは知らなかった)。しかし平均気温などの様々な指標が地球温暖化を示しており、私は地球温暖化が起きていると思っています。2007年「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の報告書も、「地球温暖化は疑う余地はない」としています。
・実際、ソロモン諸島では5つの無人島が消滅しています。ソロモン諸島では年間8~10mm海面が上昇しています。ツバル/キリバスは水没すると考えられています(※沖ノ鳥島はどうなるのか)。タイ/インド/モルディブ/バングラデシュ/ベトナム/中国にも水没する地域があります。世界人口の4割が海から100Km以内に住んでおり、2050年までに1.4億人が移住する必要があります。
・科学者も間違うかもしれませんが、実際は「予想よりも悪化しいた」の報告が多くなっています。人は避難勧告が出ても「平常バイアス」から逃げない人が多くいます。温暖化が深刻化しないと行動しない傾向にあります。しかし温暖化対策については議論が必要です。
<コストと損害額>
・まず温暖化対策のコストを考えます。世界銀行の元チーフ・エコノミストが地球温暖化に関する報告書『スターン・レビュー』を発表しています。彼は地球温暖化対策のコストをGDPの1%としています。世界GDPが8880兆円なので、89兆円になります。しかし温暖化は深刻化しており、コストは増えるでしょう。また脱炭素対策/カーボン税などで経済は減速するでしょう。
・一方対策を講じなかった場合の損害額はどうでしょうか。海水面の上昇で、数億人が水不足になります。異常気象(洪水、暴風雨)による被害も拡大し、熱波・寒波により感染症が流行し、熱中症・凍死・病死も多くなります。干ばつ・水害で農地が減り、海洋の魚も減り、食糧難になります。3割の生物が絶滅します。※直近の話では、干ばつでオリーブが不作になっている。魚も取れなくなっている。最悪のケースは灼熱地獄になり、人類が滅亡するかな。
・『スターン・レビュー』は温暖化が進んだ場合、GDPの5%(444兆円)、最悪の場合、20%(1776兆円)が失われると指摘しています。因みに東日本大震災の被害額(原発事故を除く)は17兆円で、温暖化が最悪の場合はその100倍(1776兆円)では済まないでしょう。そして残った土地/水源/食糧の奪い合いになるでしょう。※全人類がシベリアと南極に移住かな。
・2017年『ネイチャー』の論文は、「温暖化は予測より15%速い速度で進んでいる」としています。温暖化対策は保険と同じです。効果の有無は不明ですが、取り組むべきです。この対策費は誰かの給料になります。あるいは研究費になり、新しい技術/イノベーションが生まれます。国民は政府に温暖化対策を迫るべきです。
<脱炭素>
・ここからが本題です。日本は電力の9割を化石燃料(石炭、石油、天然ガス)から得ています。そしてその94%を輸入しています。船舶産業(※海運かな)に対する燃費規制は緩くなっており、大量の化学物資を排出しています。巨大コンテナ船は1年間で自動車5千万台分の有害な化学物資を排出しています(※本当かな。自動車1台の年間走行時間はどれ位かな。またタンカーではなくコンテナ船だな)。世界には12.6億台の自動車がありますが、巨大タンカー25隻分でしかありません。温室効果ガスの排出を減らすのに、船の運行が大きく影響します。※飛び恥は聞くが。
・化石燃料による発電を減らすには、「外的コスト」を「内的コスト」に変える必要があります。これを例で説明します。海辺の屋台が焼きそばを売っています。主人はゴミ箱を用意していますが、お客がゴミを放置するため、住民がゴミ拾いしています。この場合、屋台の材料費・人件費が内的コスト、住民のゴミ拾いが外的コストです(※経済では外部性がよく云われる)。ゴミが海に流れると、漁獲などにも影響します。この住民のゴミ拾いをなくすためには、主人はゴミを回収するアルバイトを雇わなくてはいけません。これが外的コストから内的コストへの転換です。
・本来は恩恵を受ける人がコストを払うべきです。エネルギー市場も同様の現象になっています。私達は冷暖房を使い、車に乗っています。それなのに温暖化で生じた災害(干ばつ、洪水)などのコストを払っていません。
・そこで出て来るのが「カーボン税」(炭素税、CO₂税)です。化石燃料を使った人が、追加料金を払うのです。例えばバナナの場合、農地や輸送で燃料として化石燃料を使います。スーパーでは電気も使います。これらからバナナにカーボン税を掛けるのです。※正しくは燃料にカーボン税、電気料金にカーボン税が掛けられ、その分バナナが高くなるのかな。
・カーボン税が掛けられると価格は高くなります。そのため生産者はより美味しいバナナを作ろうとします。家庭は節電を心がける様になります。企業も環境に優しい製造法に誘導されます。そして税収は温暖化の被害を受けた人に代償されます。
・農家が森林を畑にすると、お金を払うルールも考えられます。逆に木を植えると、お金をもらえるルールも考えられます(※これはカーボン・クレジット/排出権取引として既にあるかな)。しかし日本だけがカーボン税を導入すると競争力が下がります。そのためTPPなどでカーボン税を導入すべきです(※EUは「炭素国境調整措置」を導入した)。カーボン税を導入すると運送費が上昇します。しかしこれにより地産地消が促進され、地方活性化に繋がります。
・集められたカーボン税は研究/温暖化対策に充てます。ODA/国連のクリーン・エネルギー開発に回すのも良策です。温室効果ガスの排出量は先進国が多いので、途上国に回すのは筋が通ります。しかし日本は発電に多くの化石燃料を使っているので打撃になります。しかしこれにより代替エネルギーへの移行に拍車が掛かります。
・脱炭素は世界的な動きになっています。2017年世界銀行は石油・天然ガス開発に融資しない方針を表明します。欧米の225の機関投資家/金融機関は、排出量が多い企業に気候変動関連の開示を求めています。※本章にCOPの説明がないのは不思議だ。
<原発は夢のエネルギー?>
・19世紀ウランが発見され、「夢の物質」とされました。「ウラン/ラジウムは体に良い」とされ、歯磨き粉/化粧品/飲料水などに加えられました。本当は有害です。原子力発電も、使用済み核燃料の問題が解決されないまま普及しました。原子力発電は温室効果ガスを排出せず、エネルギー自給率も向上させるため期待されています。
・発電コストも、石油43~31円、太陽光24円、風力22円、天然ガス14円、石炭12円、原発10円と割安です。また天候などの影響を受けず、安定しています。最大の心配は事故で、「環境に優しい」と言えません。世論調査では再稼働に賛成26%/反対55%で、再稼働は難しくなっています。
<再生可能エネルギー>
・これらから再生可能エネルギー(太陽光発電、風力発電、地熱発電など)が求められます。問題はコストでしたが、中国が太陽光パネルを製造するようになり、コストは下がっています。また化石燃料の場合は海外にお金が流れますが、再生可能エネルギーだと国内で還流するので、日本経済を刺激します(※パネルは中国と言っているのに。また風力も同様かな)。カーボン税が導入されるとコスト面でも代替エネルギーが有利になります(※代替エネルギーと再生可能エネルギーの違いは?)。
・日本は原発技術に優れ、輸出していますが、代替エネルギーでも同じ事ができると思っています。オランダは国土の25%が干拓地です。そのため「世界は神が作ったが、オランダはオランダ人が作った」と言われます。そしてオランダは干拓技術を輸出したのです。日本も代替エネルギーに早期に取り組み、輸出商品にすべきです(※既に太陽光も風力も中国みたいだが)。
・私は具体的な案を東京都に提案しています。太陽光発電で原発1基分の発電量を得るには58K㎡が必要です。これは山手線の内側と同じ位の面積です。実は福島原発事故による帰宅困難区域が369K㎡あるのです。被災者からこの土地をリースし、太陽光発電するのです。リースなので、被災者は収入を得られます。福島-東京間には、既に高圧送電線は設置されています。実はこの計画は2年前に決定し、既に発電が行なわれています。
・再生可能エネルギーの拡大/CO₂排出量の削減を行っても、温暖化は避けられないでしょう。そのため気候変動/難民増加の対策が必須になります。日本だと、住居を内陸に移す/サンゴ礁の再生/絶滅危惧種の保全/気候変動に強い種の開発など様々な対策が必要になります。
・気候・地球環境を人為的に変える「ジオ・エンジニアリング」が注目されています(※初耳。人工降雨は聞いた事がある)。これに成層圏にエアロゾルを散布し、太陽光を反射させ、地球に到達する太陽エネルギーを減少させる方法があります。これは火山噴火と同じ原理です。毎日飛行機が飛んでいるので、可能です。降雨量などにも影響するため、本格的な議論は始まっていません。でも年間数十億ドルで可能だそうです。ただし数ヵ国の合意でできるものではありません。※貴重な太陽エネルギーだし、様々な分野への影響が考えられるので、止めた方が良いかな。
・人は快適さ・利便性を得たが、地球温暖化・環境破壊の宿題を背負ったのです。しかし最近は地球温暖化の話が減った気がします。直近の危機は意識できても、遠い先の危機は意識できないのかもしれません。これもバイアスでしょうが、頭脳で対処すべきです。集中豪雨・大雪などの自然災害は報道されても、その原因である地球温暖化は議論されていません。政府は火力発電・原子力発電に予算を掛けてきたので反転できないのかもしれません。しかし地球温暖化は、種の存続/国の繁栄/国民の生活に深く関わる問題です。※近年は地球温暖化対策(太陽光発電、風力発電、CO₂排出削減、水素活用など)が重要政策になっていると思う。
第13章 テロ対策
<テロ対策>
・テロにより毎年2.5万人以上が亡くなっています。テロは古代ギリシャ・ローマからあり、人間は戦争を繰り返しています。テロの予防策にはハード対策とソフト対策があります。ハード対策は警察行為/軍事行動などで、「テロとの戦争」と言われます。私はこれは戦争には該当しないと思います(※詳細省略)。この「テロとの戦争」により、空爆などでテロ組織の数十倍の一般市民が殺害されています。また「テロとの戦争」を行う国も「非常事態」が宣言され、国民の監視/人権法の停止/経済活動の監視などが行われます(※アフガニスタン戦争かな)。「テロとの戦争」は危険な傾向です。※「テロとの戦争」は「米国同時多発テロ」以降の米国に限定されるのでは。
・一方、過去の実行犯・共謀犯の取締り/資金ルート凍結/マネーロンダリング対策/武器交易の規制/入国審査の強化など、「テロをし難くする対策」には大賛成です(※これらがソフト対策?)。2017年サウジアラビア/エジプト/UAEなどがカタールと断交しました。これはカタールがアルカイダ/イスラム国(ISIS)などのテロ組織に資金援助していたからです。
・軍事力・警察力・外的圧力を行使するのがハード対策です。一方、教育・外交・経済などで「テロが生まれる要素を減らす対策」がソフト対策です。まずはその思想が生まれた原因を分析します。経済環境なのか、為政者によるのか、宗教によるのか、ビジネステロなのか。この原因を把握し、その要因を減らしていくのです。※ソフト対策も簡単ではないな。ソフト対策は事前対策、ハード対策は事後対策で両方必要な気もする。
・テロリストには若者が多く含まれます。そのため若い内に社会活動ができる環境を整える事が重要になります。「戦う事が正義」との過激思想にのめり込まないための教育の徹底や産業の育成が必要です。テロリストは生まれた時からテロリストではなく。環境・思想・憎しみがテロリストにするのです。※これらは貧困国支援かな。
・サウジアラビアの王室サウジ家は原理主義の「ワハビ」を支援しています。それを広める「マドラッサ」と云う学校をイスラム圏各地に作っています。米国同時多発テロの犯人19人中15人がサウジアラビア人でした。しかし最近はハード・ソフト両面で宗教法を緩和しています。また海外に留学生8万人を送り、海外の知識・価値観を取り入れようとしています。しかし最も有効的なのは個人間の交流です。
<テロリストを根絶する戦争で、テロリストが増えた>
・2014年ISISは支配エリアを拡大させました。「西洋から解放し、イスラムの国を作る」とし、世界から同志を集めます。しかし2017年イラク軍がISISの最大拠点モスルを制圧し、シリア軍がISISの首都ラッカを制圧します。これによりイラクからISISが一掃されます。これらはハード対策です。
・2017年日本は「共謀罪法」(改正組織犯罪処罰法)を施行します。この成立過程は強引でしたが、法律には賛成です。日本には治安維持法の失敗があり、権力の乱用などを避ける仕組みが求められます。2014年「特定機密保護法」が成立しますが、これは米国との情報共有に欠かせない法律です。
・悲惨なテロ被害を見る度に、ハード対策の必要性を痛感しますが、行き過ぎると大変な事になります。2001年同時多発テロで3千人以上が亡くなり、3千人以上が負傷します。米国民は恐怖心を感じる様になり、人種問題に過剰になります。ブッシュ大統領は「米国存亡の危機」「テロとの戦争」を言葉にする様になります。ブッシュの支持率は40%も上がり、アフガニスタン侵攻が支持されます。それで始まったのがアフガニスタン戦争/イラク戦争です。
・前者の目的は、同時多発テロの首謀者が率いるアルカイダの取締りです。しかし同時多発テロと無関係の後者は何だったのか。同時多発テロが本当に「米国存亡の危機」だったのか。米国では毎年、交通事故で4万人が亡くなっています。同時多発テロにより米国は膨大な軍事費を使いましたが、これもテロリストの狙いです。「テロが米国を変えた」のではなく、米国民の過剰反応が国際法に反する侵略戦争を起こし、大幅な財政赤字をもたらしたのです。※米国は軍産複合体なので、戦争を定期的にしないといけない。
・イラク戦争で米兵4千人が亡くなりました。一方イラクの民間人も10~22万人が亡くなっています。2011年米軍が撤退しますが、それまでに50万人が亡くなったとされています。この戦争により米国に復讐心を抱いた人は少なくないでしょう。テロによる犠牲者は、2000年405人でしたが、この戦争以降は増え、2014年は3万人を超えます。
・一方オバマ大統領は「イスラム系テロリスト」「イスラム過激派」などの言葉を使わないようにし、「イスラム教徒が米国の発展に貢献してきた」と強調します。トランプ大統領はこれを「弱腰」と批判します。私は「イスラム過激派」などの言葉は、「イスラム教=過激派」となり、軋轢を深めるだけと思います。※詳しく解説しているが省略。この流れでイスラム過激派などを使わなくなったのかな。
・西洋の国がイラク/シリア/アフガニスタンで空爆をしていますが、この無差別殺人への怒りから、「ホームグラウンド・テロリスト」が生まれています。また社会に適応できない若者が過激派の主張に賛同する動きも見られます。最近は計画的なテロではなく、車で人込みに突っ込むなどの単純なテロが増えています。これらを防ぐためには、社会・経済環境を改善し、格差・不平等・恨み・無力感などをなくす必要があります。
<日本は何に貢献すべき>
・日本はどうすべきでしょうか。日本はソフト対策で良い立場にあります。日本は有色人種で最初に先進国入りしました。米国との戦争で負けましたが、経済で成功しました。アジア/アフリカ/中東の人は、そんな日本に憧れ、親近感を持っています。また日本は宗教の存在が弱い国です。また日本文化は注目されています。私の姪も日本の漫画・コスプレが好きで、タトゥーには「女神」を入れています。
・また日本はODA・技術協力・人材派遣を通し、農業・医療・衛生・インフラなどの分野で国際貢献しています。また日本は「平和憲法」を持ち、戦後70年間、戦争していません。これは国連加盟国で8ヵ国だけです(アイスランド、フィンランド、スウェーデン、ノルウェー、デンマーク、スイス、ブータン。※フィンランドはしているのでは)。
・これらから日本は災害救助で貢献すべきです。日本は既に自衛隊/JICA(国際協力機構)と調整し、救助チーム・医療チーム・専門家チームを送り、高い評価を得ています。これをパワーアップすべきです。さらに重機を持ち込み、道路・病院・避難所・学校を建設しても良いでしょう。
<日本は悪循環に捉われるな>
・これらの貢献で日本はテロの標的になり難くなっています。日本は「集団的自衛権で米国と共に戦う」のではなく「海外の人を助ける」べきです。日本は米国から「平和憲法」を押し付けられましたが、今は「一緒に戦え」とのプレッシャーを受けています。集団的自衛権を行使し米国と共に戦うと、日本も標的になります。
・日本はテロなどに対し警戒心がない国です。日本では席を取る時、荷物を置きますが、これは考えられません。他人を無条件に信用し、無防備です。日本人は平和ボケ・治安ボケです。しかし私はこれが好きです。世界もこうなって欲しいです。米国は世界に軍隊を派遣し警護しています。しかしこれで住民を殺し、憎まれる「悪の循環」に陥っています。
・日本が世界にどう貢献するかは、国民が決める事です。私は野党の政治家に会うと、「与党と違う政策を示して欲しい」とお願いします。そうすれば野党の存在感は高まり、投票率も上がるでしょう。日本はエネルギーを中東に頼っています。日本は戦争に加担し、人を殺すのではなく、海外で人を助ける国になって欲しいです。
第14章 日本の国力は回復する?
<国力とは>
・日本の「国力回復」について考えます。これは国力を失ったのが前提になっています。確かに戦前は軍事力があり、高度成長期には世界2位の経済力を持ちました。今は軍事力は4位、経済力は3位で、「失った」とは言えないでしょう。問題はこれからで、人口が減少する日本は資源大国・人口増加大国に抜かれるでしょう。
・しかし国力はGDPで測るものでしょうか。歴史家ルトガー・ブレグマンは「GDPで測れない豊かさ」に言及しています。日本は犯罪率が低く、教育レベルが高く、格差が少ない国です。しかしこれらはGDPに反映されません。逆に社会問題はGDPに反映されます。例えば交通事故です。救急車の人件費・ガソリン代などはGDPに反映されます。病院での治療費、車の修理代などもGDPに反映されます。ギャンブル依存症/薬物乱用などもGDPに反映されます。逆に、読書/散歩/公園で遊ぶ/登山/歌を歌う/音楽を聴く/料理を作る/家族団らん/囲碁・将棋/哲学を考えるなどはGDPに反映されません(※多少の消費を伴うと思うが)。
・国力には、経済力・軍事力・外交力・幸福力・文化・アイデアなど様々あります。今の日本に、エコノミック・モンスター/ミリタリー・モンスターなどの批判はありません。一方で日本のソフトパワーは評価されています。日本のJ・POP/コミック/アニメ/ゲームは世界で受け入れられ、盆栽/相撲/座禅/忍者/和食は人気があります。日本は有色人種で最初に先進国入りし、憧れの国です。一方中国は多民族国家で、統率力に不安があり、人権問題・環境問題・言論の自由などの課題があります。「暮らしやすい都市」の3位は大阪、7位は東京です。
<足りないのは発信力>
・日本に足りないのは、ビジョンと発信力です。「日本は被爆国なので、核不拡散に注力する」「八百万の神がいるので、環境問題に注力する」「難民問題に注力する」「自由貿易の先進国を目指す」、何れも中途半端です(※説明省略)。
・米国のイメージは、軍事大国・経済大国であり、「自由の国」です。「ポップカルチャーの国」から「アメリカドリーム」をイメージさせます。しかしそれは過去の話で、今の米国は格差が固定しています。また「世界の警察」ですが、これは必ずしも世界を平和にしません。ドイツは難民を受け入れ、慈善大国のイメージがあります。またEUを牽引する経済大国です。英国も移民大国ですし、英語を武器に文化大国でもあります(※北欧諸国も解説しているが省略)。しかし日本が何を目指しているのか見えてきません。
・日本が「幸せ大国」を目指すのも手です。ブータンは「総合幸福度」(GHP)を指標にしています。日本から帰国する外国人にインタビューすると、多くの人が「日本人は明るく優しかった」と答えます(※他にも幾つか紹介しているが省略)。多くの日本人は自分達にマイナス・イメージを持っていますが、そうではありません。
<波紋を起こさないと、ボートは進まない>
・日本は「改善大国」です。海外から多くの物を取り入れ、改善してきました。改善は「KAIZEN」として世界で通用します。しかし日本には、発言し難い空気があります。日本人は自分の意見が否定されると、自分も否定されていると受け取ります。ここでは相手の言葉と人格を切り離し、フラットな気持ちで考える必要があります(※日本人は議論に感情が入り易いのかな)。「これについて自分はこう思うが、あなたはどう思う」などで、論点整理したら良いでしょう。
・価値観が全く異なるケースは少ないでしょう。日本人の倫理観・道徳観に差はなく、「日本の成功を願う」「弱者を守る」「公平な社会を作る」などは共有されています。しかし多様な価値観・見解が世の中を良くして行きます。皆と異なる提言・提案は必要なのです。「波紋を起こさないと、ボートは進まない」のです。「女性が会社で働く→家庭と仕事を両立させる環境が整う→男性のワークライフ・バランスが良くなる→会社が効率化する」などの流れができています。国民は日本丸の推進力であり、操縦士なのです。
第15章 日本の役割
<日本のサポート力>
・最終章は、日本はどうすべきか考えます。基本は「世界と戦う国」ではなく、「世界を助ける国」です。日本には「平和憲法」があり、有色人種の「希望の星」で(※これは余り出して欲しくない)、宗教に依存しない国です。
・日本の国際救助隊をパワーアップし、世界の被災地・戦地・貧困地に赴き、医療支援を行い、学校・病院を作って欲しい。この活動は、日本への好感を生み、テロ攻撃を防ぎます。日本への観光客を増やし、日本のソフトパワーが増します。これにより作られた人脈から世界のニーズ・価値観を知る事ができ、日本企業のグローバル化にもなります。これには資金・気力・人材が必要ですが(※気力?)、長期的視点で考えるべきです。※国際貢献の言葉はたまに聞く。
・逆に「世界と戦う国」を目指す選択肢もあります。小沢一郎が「普通の国になれ」と述べましたが、多くの国民が「軍を持ち、世界で戦える国になるべき」と考えています。しかし私は「普通の国」が成功しているとは思いません。米国は「世界の警察」を自負しますが、多くの国から恨まれ、憎まれ、敵視されています。大戦後20余りの戦争をし、膨大な費用と多くの命を失っています。
・日本は軍を持っても自立程度でしょう(※自立=防衛?)。ドイツ/英国/韓国も軍を持っていますが、米軍が駐留しています。NATO29ヵ国も米軍が頼りです。同盟関係を対等にするために日米地位協定を見直しても、同盟関係は解消できません。国を自分達で守るのは当たり前ですが、自衛さえ難しく、核保有の話になってしまいます。
<個別的自衛権、集団的自衛権>
・憲法の自衛の解釈も変移しています。警察予備隊/保安隊/自衛隊と拡大してきました。「集団的自衛権」は大きな転換点です。これにより密接な他国が攻撃され、それが日本の安全を危うくする場合、戦闘に加わるのです。これまで個別的自衛権は認めていましたが、2015年集団的自衛権も認めたのです。朝鮮半島/中東などで米国が戦闘に巻き込まれた場合、日本も参戦するのです。
・法律には「日本の存立が脅かされた場合」とあり、具体的ではありません。安倍首相は日本人が乗船している米国船が攻撃された場合で説明しましたが、これが「存立の危機」なのでしょうか。石油を依存する中東で事件が起こると、自衛隊が派遣される可能性があります。
<かっこ良いは、正しいと限らない>
・政府が集団的自衛権を認めましたが、これには米国の圧力があったでしょう。また中国/北朝鮮への危機意識もあったでしょう。しかし日本が戦闘に巻き込まれ、報復を受ける可能性も高くなりました。米国が明確なプレッシャーを掛けるまで、政府は待つべきだったと思います。そして憲法を盾にして交渉すべきでした。あっさり認めたのは、政府中枢に「日本を強い国にする」の思いがあったからです。安倍首相は以前から「戦後レジームからの脱却」を主張していました。これはトランプと似ています。かっこ良い事を言うと、人気が出るのです。でもそれが正しいと限りません(※ポピュリズムだな)。
・帝国時代は終わったので、他国に侵攻し、富や土地を奪おうとする国はなくなりました。ただし北朝鮮/ロシアなどの例外はあります。中国も海洋資源・軍事基地を求めて、海洋進出しています。これは周辺国・米国の課題になっています。
・実は世界は平和になっています。内戦・紛争などは年々減り、死者数も減っています。武力で解決する時代から、交渉で解決する時代に変わってきています。日本が軍事力を強化するのは虚栄に感じます。これからは経済関係を強化し、相互に発展し、国際援助隊で世界を助ける時代です。日本は「ポスト軍事」のお手本になるべきです。
<人口減少・少子高齢化>
・日本は世界より先に少子高齢化します。そのためこの解決策を世界に発信する役割があります。例えば郊外に高齢者が暮らせる施設を作り、元気な内にそこで働き、その分をそこで介護してもらうのです。老人の5人に1人が一人で暮らしており、希望者はいると思います。日本は品質管理/マニュアル作成が得意なので、システム化できます。
・日本は人口減少し、50年後は人口が3割減り、100年後は4300万人になります。そのため空き家は増え、鉄道は乗客がいなくなり、道路は車が通らなくなります。そこに移民が住んでもらうのが良いかもしれません(※色々な対策が記されているが省略)。労働力の減少も問題です。AI・ロボットの活用も手です。これにより消える職もあり、格差が拡大するかもしれません。AI・ロボット化で得られた利潤は子育て支援に使うべきでしょう。
・日本にドイツ村が7ヵ所あります(※初めて聞いた)。この様な村を増やし、本場の料理などで交流するのも良いでしょう。移民・難民を受け入れ、経済活動に参加してもらうのです。移民・難民の受け入れは枠組み・制度が重要になります。日本語や日本の制度などを教える事も重要になります(※先日、日本語教師の不足を問題とする記事を見た)。当然移民・難民を受け入れる日本人の心の準備も必要になります。
<ソフトパワーの発信>
・日本のソフトパワーは大きな魅力です。これを発信しましょう。日本は家電・車などの製品で世界を牽引しました(※日本は人件費が安かったのかな)。今は日本の組織力や丁寧なサービスが注目されています。これを発信しましょう(※丁寧なサービスは日本の生産性を下げているのでは)。
・日本の医療制度は優れ、医療の質は195ヵ国中11位です(※日本は医療への投資が多額かな)。人口5千万人以上の国ではトップです(ドイツ20位、英国30位、米国35位)。日本は重病になる前に診療を受けられ、長寿の国です。米国も医療先進国ですが、医療費が高く、なかなか受診できません。
・日本の精神性も特徴的です。「わび・さび」などもあります。今世界は「脱物欲」に向かっているので、先進国の消費者はこれを受け入れるでしょう。世界は消費より、精神の安定を求めています。欧米で「マインドフルネス」が流行っていますが、この根源は仏教の瞑想です。日本には他に、華道・書道・剣道・柔道などがあります(※茶道もある)。
・これらからすると東京五輪は残念です。日本のビジョンが示されていません。「競技場を再利用する」「クリーンエネルギーを利用する」などのビジョンを示して欲しかった(※ロンドン五輪がそうだったかな)。
・日本の宗教に頼らない価値観も特異です。日本人には「助け合う精神」「人の事を自分の事として受け入れる精神」が備わっています(※農耕民族なので、密集して定着するからかな)。これを世界に発信して欲しいです。しかし私は宗教が必要な事も理解できます。神社・教会・モスクに向かい、コミュニティを構築し、人の道を知り、死の恐怖を和らげるのです(※道徳を神から教わるか、祖先から教わるかの違いかな)。しかし宗教は過去に帝国主義の根底になり、今でも宗教戦争が起きています。日本の宗教に頼らない倫理を世界に発信すべきです。
<隣国との付き合い>
・最後に地政学から日本を見ます。日本は遠い国とは仲が良いのに、近い国とはそうでない様です。韓国/中国/北朝鮮/ロシアなどの隣国と上手く付き合えば、大きなチャンスになります。緊張が緩和し、経済交流が進めば国民の安心感は高まります。仲が悪くて得するのは、政治家だけです(※敵を作る手法だな)。
・「日本は何度も謝っているのに、中国・韓国が受け入れない」と思っている国民が多くいます。これも中国・韓国の政治家が、国内での怒りを海外に向けさせているのです。しかし歴史問題がない訳ではありません。日本はこれまでに、村山/中曽根/細川/小泉/安倍などの歴代首相が「お詫び」しています。しかしこれに反する言動をしている政治家がいます(※詳細省略)。また歴代の首相は「お詫び」する一方で、「War shrine」(靖国神社)に参拝しています。これを海外の人は「A級戦犯を祀り、戦争を美化し、侵略を正当化している」と解釈しています。2015年安倍首相が謝罪談話した翌日、国会議員67名が靖国神社に参拝しています。世界はこれを「Mixed message」と捉えています。
・さらに日本はドイツと比較されます。ドイツの教科書には、ナチスの非道徳な行いが書かれています。またドイツにはホロコースト収容所跡や歴史博物館でドイツ軍による被害を伝えています。ただし戦時中の政治体制も戦後の戦争責任の取り方も大きく異なり、単純に比較できません。しかし世界の人は日本をその様に見ています。
・第2次世界大戦の死者数を知っているでしょうか。インドネシアは300~400万人、ベトナムは100~150万人、フィリピンは50~100万人、中国は2千万人を超えると云われます。これらや戦争の原因などを認識する必要があります。
・「相手が反日感情を煽っている」「謝罪を繰り返しているのに、理解していない」「歴史問題が経済・外交の妨げになっている」などの悪循環は止めましょう。歴史問題は終わりにして、新しい協力関係を作りましょう。例えば2017年外国人旅行者の消費額は4.4兆円で、中国・韓国・台湾・香港で7割を超えます。友好関係が深まれば、もっと増えます。
・ピンチをチャンスに変えるのです。これは外交だけでなく、技術改革・経済・移民・教育・メディア・環境・安全保障など、全ての分野です(※これは本書の纏めかな)。それにはバイアスを認識し、それを外す事が重要になります。「個人の性格・役割を考える時は、性別・人種・年齢のバイアスを外す」「国力をを考える時は、GDPバイアスを外す」「安全保障を考える時は、軍事力バイアスを外す」「AI改革を考える時は、既存の仕事概念のバイアスを外す」などです。伝統・固定概念に囚われず、視野を広くし、選択肢を増やし、柔軟な議論をするのです。これにより唯一無二の存在感を世界に示すのです。
日本人の心を持った外部の目 池上彰
・パックンは日本語を母国語の様に話します。カラオケで演歌を聴いて、驚嘆しました。彼が民放ラジオ局のDJをしていて、それに呼ばれたのが最初の出会いです。私が東京工業大学の教授をしており、その時非常勤講師をお願いしました。その講義「国際情勢とコミュニケーション」は人気講義になり、そしてこの講義を受けた学生はコミュニケーション能力が向上しました。彼は教え上手です。
・彼は米国コロラド州の敬虔なクリスチャンの家に生まれます。ハーバード大学の比較宗教学部に進み、そこで宗教の造詣に深くなります。しかし宗教とは縁がない人生を送ります。彼は日本に来て、日本が好きになります。私達日本人は日本バイアスに気づきませんが、彼には色々な事が見えています。