『政策至上主義』石破茂(2018年)を読書。
政治家本人の著書を読む事は少ないが、特質な政治家なので選択。
本人の政治姿勢/実績/政策(安全保障、憲法改正、地方創生など)を述べている。
現時点石破内閣で色は出せていないが、これからどうなるのか。
お勧め度:☆☆(読み易い)
内容:☆☆
キーワード:<誠実・謙虚・正直>政権交代、政策、綱領、議論、<信じる政策>政権復帰、集団的自衛権、憲法改正、基地問題、沖縄、党内議論、<国民の理解>敗戦、地方創生、退位、森友・加計、丁寧な説明、<国民の命>Jアラート、防災省、核、<本質的な議論>与党・野党、<幸せの実現>不利益の分配、アベノミクス/経済構造改革、地方創生、東京、<選挙体制>田中派/渡辺派、選挙、<政策>水月会、財政健全化、社会保障、地方創生、<おわりに>民主主義、<憲法問題>憲法改正草案、第9条、軍
はじめに
・2018年は明治維新から150年になる。これからの日本をどうするかが頭から離れない。日本を「自立精神旺盛で持続的発展を続けられる国」にしたい。それには地方の創造性・多様性を軸とし、多様な価値観・ライフスタイルを実現し、イノベーションや生産性向上を加速させ、幸福度・GDPを最大化する必要がある。私も大臣や幹事長として取り組んできたが、足らない所があった。これには課題解決のためのプラン・政策を練り上げ、実行するしかない。
・渡辺美智雄は「政治家は勇気と真心を持ち、真実を語るべき」と言っている。私はこれを原点にしています。1986年初当選し30年以上経ち、この言葉の難しさを痛感している。政策集団「水月会」には志を同じくする仲間がおり、本書の執筆にも助言を頂いた。
第1章 誠実さ、謙虚さ、正直さを忘れるな
○もう政権に戻れないと
・2012年自民党が政権復帰したが、永遠に続くとは考えていない。それは2009年の転落が忘れられないからです。その時多くの幹部は「これで10年は政権に戻れない」と思っていました。まずは自民党を分裂させない事です。自民党を支えているのは権力です。権力を失ってはいけないのです。かつては村山富市を総理に担ぎました。しかし自民党の核たる政策を枉げてはいけません。
○自民党、感じ悪いよね
・民主党政権は喝采を浴びて始動しました。「年金/子ども手当/高速道路無料化などの財源を事業仕分けで捻出する」としていましたが、実現できませんでした。そして東日本大震災が起き、「政治は自民党に任せるしかない」となったのです。
・自民党が下野したのは政策が間違っていたからではなく、党の在り方が非難されたからです。「自民党だけは嫌」と思われたからです。それは失策・失言/不祥事/頻繁の総理交代のためです。私が議員になり32年経ちますが、14人の総理が誕生しています。総理はまだましで、大臣はそれ以上に交代しています(※農水相などを説明しているが省略)。
○国民の共感
・政策のネーミングも問題でした。福田内閣(※2007年9月~2008年8月)が「後期高齢者医療制度」を導入します。これは医療負担の格差を是正し、1割負担を原則とする画期的な制度です。それなのに国民に理解してもらえませんでした。ネーミングの悪さも致命的でした。これらの積み重ねが、「感じ悪いよね」となったのです。選挙目当ての政策ではなく、正しい政策を用意し、それを国民に丁寧に説明する必要があります。
○谷垣総裁の下での立て直し
・野党となり総裁に就いたのが谷垣禎一で(※2009年9月~2012年9月)、その下で私は政調会長を務めます。特に力を入れたのが党の方向性を示す綱領の制定です。
①日本の姿を示し、世界に貢献できる新憲法を制定する。
②日本の主権は自らの努力で護る。国際社会で現実に即した責務を果たす。一国平和主義を排す。
③自助自立する個人を尊重するとともに、共助・公助の仕組みを充実する。
④自律/秩序ある市場経済を確立する。
⑤地域社会と家族の絆・温かさを再生する。
⑥全ての人に公平な政策や条件作りに努める。
⑦納税者の使用選択権を奪わぬよう、財政の効率化と税制改正で財政を再建する。
・政党である以上、綱領は持つべきです。民主党は持っていなかったためバラバラになり、未だ混乱しています。政党は政党助成金をもらえます。これに綱領の有無や意思決定・会計処理の手続きが定まっているなどの要件を加え、「政党法」として制定すべきです。※自民党は裏金問題で激震となったが。
○政策集団
・また政調会長として自民党を「実力のある真の政策集団」にしようと考えました。その方策の1つが、年功序列類似の人事の廃止です。「当選1回はヒラ、2回で政務官、3回で部会長、4回で常任委員長、5回で大臣」の相場がありました(※政務官は低いんだ)。これを「手挙げ方式」に変えるのです(※詳細省略)。しかしこれは見送られましたが、谷垣総裁/大島理森幹事長の許しで、当選回数と関係なく人事できました(※詳細省略)。これは国会での与党の大臣との論戦を意識したからです。これらを積み重ね、実力を蓄え、次の出番に備えたのです。
○論戦に強くなる
・私は予算委員会の筆頭理事を1年間務めました。その時も政策論争に主眼を置きました。民主党の政策を党内で徹底的に議論しました。またディベート学の権威・北岡俊明に講座を依頼しました(※詳細省略)。最も印象に残ったのは「ディベートの最大の効用は読書」です。「引き出し」を多く持つため可能な限り本・論説を読むべきです。最近は買うより頂く事が多くなっています。そのため「本ばかり読んでないで、付き合いを増やせ」と指摘されます(※読書好きは引き出しを増やすためか。後キリスト教についても知りたい)。
・ディベートの技術は答弁でも必要になります。その場を切り抜けるだけではダメで、国民が納得する議論にしなければいけません。政府・与党こそ必要なのです。国民の信頼を取り戻すため、3年間一生懸命働きました。この経験は貴重です。
第2章 信じる政策を正面から問う
○野党よりマシだけでは
・2012末民主党が政権を降ります。この年の秋、私は総裁選に出馬します。地方票では勝利しますが、議員票で逆転され安倍晋三に敗れます。政治改革を巡って内閣不信任案に賛成した過去があり、「あいつにやらせると革命を起こす」と思われたのかもしれません。その後の人事で自民党幹事長に就き、野党時代に考えた政策・改革の実行を目指します。
・安倍政権になり、日本経済は飛躍的に回復します。雇用情勢は良くなり、株価も倍以上になり、企業業績も未曾有の回復をします。ただ有権者の信頼が取り戻せているかは心もとない。今の自民党は当時の民主党や今の野党より実力はあるが、謙虚さ・正直さ・誠実さが物足りないと思われています(※森友問題などを連発したからな)。
○平和安全法制の進め方
・平和安全法制の進め方には気を遣いました。担当の中谷元防衛相は誠実に説明したが、納得してもらえませんでした。全国で反対の集会が開かれ、「戦争法案」と批判されました。もっと丁寧に説明し、誤解を説く必要がありました。
・実は私と安倍総理は「集団的自衛権」で考え方が異なります。共に集団的自衛権の行使は認めていますが、総理は「現行憲法でどこまで認められるかのラインを定める」との考え方です。一方私は「日本は国連憲章が定める自衛権を有する」との考え方です。そして「それを無制限に行使するのではなく、国会で判断する」との考え方で、これは自民党の「国家安全保障基本法」と一致します(※戦争の放棄にはならないな)。
・この違いから「内閣に協力しろ」「総理を後ろから撃つ卑怯者」「もっと良いポストが欲しいのか」と批判されました。しかしこれは「国会議員は何か」と直結する問題です。
○国会議員を続ける理由
・父・石破二郎は内務省の官僚から鳥取県知事/参議院議員になりました。官僚としては建設事務次官(※戦後建設省に異動)、議員では自治大臣を務めています。やりがいがあったのは、「1番事務次官、2番県知事、3番大臣」だそうです。私から見ると県知事の時が最も活き活きしていました。父は「小さく貧しくても、我が故郷」と言っていました。知事・市長はやりがいのある仕事で、人の生活に直結する仕事と考えています。
・ではなぜ国会議員をやっているのか。それは「日本を自立精神旺盛で持続的に発展する国にする」ためです。そしてこれには憲法改正が必要で、それができるのが国会議員だからです。
○離党の理由も憲法
・自民党を離党したのも、このためです。1993年8月細川政権が発足し、自民党は野党になります。(※1994年1月「改革の会」が結成される)。河野洋平総裁は憲法改正を棚上げします。一方小沢一郎などの新生党は集団的自衛権の行使を容認し、真の保守政党と思ったのです。参加した新生党は新進党になり1996年10月総選挙に望みますが、その直前新進党は「集団的自衛権は行使しない」「消費税は3%のまま」を公約とします。そのため新進党を離党し無所属で当選し、1997年3月自民党に復党します。
○政策が行動の基準
・自民党/新進党を離党した事で批判されます。しかしその理由は自民党/新進党の政策が自分の考えと異なったからです。私の「行動の基準」は政策です。永田町は人間関係を行動の基準にしている人もいますが、疑問です。自分の掲げる政策に突き進んだのが小泉純一郎です(※詳細省略)。また政策を軸としない政党の離合集散は共感を集めません。
○憲法改正は国会議員の存在意義
・自民党の綱領に「日本の姿を示し、世界に貢献できる新憲法を制定する」「日本の主権は自らの努力で護る。国際社会で現実に即した責務を果たす。一国平和主義を排す」とあります。「憲法を世界遺産に」と思っている人がいますが、憲法が国民の幸せの役に立っていないなら、改正すべきです。東アジアは安全保障の脅威に直面しています。今の憲法が国民の幸せに資しているとは思えません。国会議員は憲法改正案を発議し、国民投票に掛けるべきです。
○集団的自衛権
・集団的自衛権の政府解釈は「日本は国際法上は集団的自衛権を有するが、憲法が行使を認めていない」で、「必要最小限の行使」しか認めていません。今回の平和安全法制は「必要最小限の行使」を踏襲し、「その中に集団的自衛権が生起した」と解釈を変えました。そもそも憲法に「集団的自衛権を認めない」と書いてないし、自衛権は憲法以前に国家の自然権です。
・政府解釈は変遷しています(※詳細省略)。私は「集団的自衛権は憲法で認められている。ただし行使は法律で制約する」と考えており、これが自民党の「国家安全保障基本法」でもあります。2012年「日本国憲法改正草案」は以下です(※要約)。
第2章 安全保障
(平和主義)
第9条 国際平和を誠実に希求し、戦争を放棄し、武力を国際紛争を解決する手段に用いない。
2 前項の規定は自衛権の発動を妨げない。
・第2項を変更する事で、個別的・集団的の不毛の議論を終わらせます。「国家安全保障基本法」を憲法改正以前に成立させ、集団的自衛権の行使の態様を限定し、最終的に憲法改正で疑義を払拭します。※国家安全保障基本法の説明が欲しい。
・「日本国憲法改正草案」を眺めると防衛庁長官時代(2002~2004年)を思い出します。当時「文民統制」が散々議論になり、背広組が制服組を統制する「文官統制」から、政治が統制する真の「文民統制」への改革を行いました。
・「国家安全保障基本法」「日本国憲法改正草案」は野党時代に党議決定され、その後選挙の公約になっています。しかし共に議論されていないのは残念です。
○閣内不一致を避ける
・安倍政権での平和安全法制は党が決めた「国家安全保障基本法」「日本国憲法改正草案」と別の論理になっています。「必要最小限の行使に集団的自衛権を含める」とし、その事態を「重要影響事態」としたのです。しかしこれは私の考え方や党の決定と異なります。もし私が国会で答弁すると「総理とは考え方が異なります」となり閣内不一致となります。小泉内閣で防衛庁長官を拝命する時、「内閣の方針に異を唱えない」(郵政民営化)が条件になりましたが、異論はないので受ける事ができました。
○基地問題
・「集団的自衛権を限定的に認める」とした安倍政権でさえ猛烈な批判を受けました。そのため「憲法上は全面的に認められる」とする私は相当強い批判を受けるでしょう。この問題と「沖縄基地問題」は深く関係しています。「集団的自衛権は危険」とする人と、「沖縄から米軍基地をなくせ」とする人は重なっています。
・1952年日本は独立し、日米安全保障条約を結びます。この条約は「米国は日本を守る義務があるが、日本は米国を守る義務はない。その代わり日本に米軍基地を置く」とするものです。日本の集団的自衛権を認めなかったため、非対称双務条約になったのです。1955年重光葵外相は米国に「日本の集団的自衛権を認め、米軍基地を撤退させて欲しい」と提案しますが、ダレス国務長官に一蹴されます。ダレスは「日本の領土・領海・領空を自由に使えるのが米国の国益」と考えたのです。※安保条約(地位協定?)は「米軍は自由に基地を作れ、自由に行動できる」みたいな内容だったかな。
・問題はこの状態が70年続いている事です。私は「対米従属はけしからん。日米安保を破棄せよ」と考えている訳ではありません。集団的自衛権が憲法で認められず、自由に米国に基地を置かせている事に異を唱えるのです。「そこまでは自力で守り、そこから先は米国に頼る」と考えています。日本はこの問題を放置してきました。主権国家なのに、大規模な外国の軍隊が駐留しています。私は「自立精神旺盛な国にする」と考えています。※今の日本にどれだけの軍隊が作れるのか。石破内閣には防衛関係者が多いな。
○独立国
・最近沖縄の小学校に米軍ヘリの備品が落下するなど、問題が起きています。政府は米国に「申し入れ」をしていますが、何もできないのが現状です(※詳細省略)。米軍基地に反対する人は「日米地位協定」を問題視します。これは日米安全保障条約と一体なので、集団的自衛権/憲法の問題です。※安保条約・地位協定は10年毎に改定してきたと思うが。
・「米軍基地反対」と「集団的自衛権は認めない」は矛盾します。集団的自衛権を認めない限り非対称であり、米軍基地を撤退させる事はできません(※基地撤退と集団的自衛権容認は一体か)。この根本は日本が安全保障のあるべき姿を考えてこなかったからです。「憲法9条があるから」で思考停止しています。
○リアリスト
・安倍政権の平和安全法制は自民党の考え方と異なり、国会で通らないでしょう。2017年安倍総理は第9条の第3項に自衛隊を明記する憲法改正案を出しましたが、これも自民党の憲法改正案と異なります。私が反対しても「理想を追わなくても、安倍さんの方が現実的でしょう」と言われるでしょう。彼らは本当にリアリストでしょうか。誠心誠意理想を述べれば、国民も納得してくれるはずです。
○向き合うべき現実
・政治家が向き合うべき現実は国会のスムーズな運営でしょうか。安全保障では北朝鮮は高い軍事技術を持つ様になり、中国も留まる事を知りません(※詳細省略)。そのため米軍との協調も重要ですが、それにもリスクがあります。米軍機が民家に墜落するかもしれません。そうなれば反発が高まり、東アジアにおける米軍の抑止力に影響が出ます。
・沖縄の人が米軍基地に反対する理由を真摯に聞く必要があります。先の戦争で沖縄県民の1/4が亡くなりました。この甚大さを理解しなければいけません(※もし中国と有事になれば、また沖縄が標的になるかな)。沖縄に基地が集中しているのは、1960年代に安保闘争が起き、本土の基地が復帰していない沖縄に移転されたのです(※1972年5月復帰)。自衛隊の海兵隊を強化する事で、沖縄の負担は軽減できるでしょう(※詳細省略)。
○スタンプ集め
・安全保障で本質的に議論されるべきは、「何が脅威か」「その抑止力をどうするか」「領土主権が侵された場合、どう対応するか」などの具体論です。しかし国会は憲法解釈の議論しかしていません(※両方ともされていない感じかな)。「安倍一強」となっても状況は変わりません。私は「ポスト安倍」とされます。大臣を務め、波風を立てずこなし、スタンプカードを埋めていくのも良いでしょう。しかしそれでは政治家になった意味がありません。
○党内議論を軽視するな
・最近党内議論を踏まえず、政府決定される政策が増えました。そのため「政高党低」と言われます(※安倍官邸が強過ぎかな)。小泉政権での郵政民営化は党内でのプロセスを踏んでいます。しかし最近の農協改革/消費税の使途変更/裁量労働制などは党を経ていません。
・党内議論は「自民党の都合」ではなく、国民を代表する国会議員の議論の積み重ねです。党内議論は国防部会/水産部会/経済産業部会などの分野別の「部会」で行われます。部会には詳しい議員だけによる「インナー」「幹部会」と誰もが参加できる「平場」があります。議論の結果、提言/法案/予算案が作成されます。
・かつては政府案でも部会で修正されました。ところが最近は党内議論を経ず政府が決める事があります。これを「新しいリーダーシップ」と言う人がいますが間違いです。かつて政府案が提出できず、「族議員の暗躍」と言われました(※石破内閣も結構弱いのでは)。しかし党内議論は必要で、そうでないと議院内閣制での与党の意味がなくなります。
○強い論理が道を拓く
・党内議論を経ると論理的説得力が強まります。党内議論は国会での論戦の先取りにもなります。党内議論を経ない政策は頓挫する可能性が高まります。また公明党との折衝も行われます。また国会に提出されれば、国民も評価します。これらに耐えうるには党内議論が必要です。これが民主主義におけるプロセスです。
第3章 丁寧に説明し、国民の理解を得る
○3つの衝撃
・1986年私は政治家になりますが、その後驚いた事が3つあります。1991年ソ連崩壊、2001年9.11(米国同時多発テロ)、2011年3.11(東日本大震災)です(※丁度10年毎だな)。1991年湾岸戦争が起きます。この時自民党の部会が開かれますが、どう対応すべきか、誰も分かりませんでした。政府・外務省・国民も同様です。日本は自動的に西側に組み込まれ、世界平和・秩序に関与する事がなかったからです。
○何となく回っていた
・安全保障だけでなく、経済も好調でバブル期を迎えていました。そのため憲法/安全保障/外交/財政などを議論するのはタブーで、「まあ良いじゃないか」となっていました。ところがバブルがはじけ、時代が変わります。第1章で綱領について述べましたが、20年を経て(2010年)ようやく綱領を制定し、「自助・共助・公助」「経済成長と財政再建」「憲法改正」を記したのです。
・『昭和16年夏の敗戦』(猪瀬直樹)にある様に、当時の政府に「日本に勝ち目はない」と思っている人はいました。「総力戦研究所」のシミュレーションでも敗戦と判断されていました。ところが「やってみなければ分からない」となり、開戦したのです。満州を諦めて、台湾・朝鮮だけで我慢しておけばと思います(※満州は侵略戦争で得たかな)。何かを知り得る立場、考えるべき立場の人(政治家)が正しい道を示すべきだったのです。
○地方創生担当大臣
・2014年私は地方創生担当大臣に就きます。私は「防衛オタク」と呼ばれますが、農水族の出身です。生まれは東京ですが、1~15歳を鳥取で生活し、出身には鳥取と書いています。地方のポテンシャルは高いのに、衰退する様を見ており、やりがいのある仕事でした。詳しくは『日本列島創生論』を読んで下さい。
・安倍内閣で大臣を2年間務めた後、閣外に出ます。人間にはインプットとアウトプットが必要で、大臣を務めているとアウトプットだけが多くなるからです。
○天皇陛下
・その後思うところを発信しましたが、反発を買う事が多くありました。しかし自民党は国民政党であり、活発な議論ができるのが利点です。天皇の退位についても自分の意見を述べました。この時も「石破は反対ばかり」「総理を後ろから撃つ」と批判されました。天皇は「国民統合の象徴」であり、真剣な議論が必要です。私は福井県での植樹祭で陛下のお供をしました。陛下は現地の様々な人とじっくり話をされました。
・民主党政権時、小沢一郎が習近平副主席を陛下に謁見させよとゴリ押ししますが、宮内庁は断ります。これは公平性から正しかったと思います(※詳細省略)。退位の話に戻りますが、「1代限り」の話ではありません。一部の識者・政治家が決めるのではなく、国民の理解が必要です。
○2つの学園問題
・森友学園・加計学園の2つの学園問題があり、行政の公平性が問われました。これについても国民への丁寧な説明が必要だったのです。それなのに森友学園問題で、官僚は「書類がない」「記憶がない」を繰り返しました。加計学園も条件をクリアしていたので、それを繰り返し説明すれば良かったのです。
・加計学園問題では、私の名前も報道されました。地方創生担当大臣の時、獣医学部の新設を認める「石破4条件」を定めていたからです。しかし正確には「日本再興戦略 改訂2015」で、閣議決定されたものです。それは以下です(※要約)。
①既存の獣医師養成でない構想が具体化し、②対応すべき新たな需要が明らかになり、③かつ既存の大学・学部で対応が困難で、④近年の獣医師の動向を考慮し、全国的見地から本年度に検討する。
・これに基づき、厚労省・文科省・農水省が当事者の主張を聞き、国家戦略特区の権限を持つ内閣府が判断したのです。この判断が適正に行われた事を説明すれば良いだけです。
・迷惑だったのが、「石破が4条件を決め、獣医学部の新設を認めない様、日本獣医師会に説明した」との論説が広まったのです(※条件を定めたが、阻止する様に図った?)。「獣医師会から多額の献金をもらった」との指摘もありましたが、自民党幹事長の時にもらっただけで、これは慣例です。私は農水相の時から産業用動物(※主に家畜で、動物園のも含むかな)の獣医師が不足している事を知っており、新設を望んでいました。「岩盤規制」の見直しは、政府の重要な役割です。
○丁寧な説明
・これらの学園問題も丁寧な説明をすべきでした。当然安倍総理からの働き掛けはなかったと考えています。野党が決めつける働き掛けは、公職選挙法/政治資金規正法で不可能です。やってしまうと公民権を失います。確かに議員には様々な陳情があります。これを総体的に検討するのが仕事で、個別の要望には対応しません。佐川宣寿・国税庁長官が「後ろめたい事は一切ない」と記者会見すれば良かったのです(※国会?)。
○論理的な説明
・私は防衛庁長官の時(※2002年9月~2004年9月)、有事法制に携わりました。この時もその必要性を繰り返し丁寧に説明しました。結局野党も国民も納得し、法案が可決しました(※2003年6月成立)。自衛隊のイラク派遣の時も同様でした。これは国連の方針に従ったもので、国際社会での責務です。私は多くのメディアに出演し、必要性を訴えました。これによりイラク特措法(※2003年7月成立)を通す事ができました。
○消費税賛成
・1990年2期目の総選挙で当選します。この時は消費税が争点でした。私は消費税は必要と考えており、後援会幹部は反対しましたが公約に掲げます。私は憲法改正を訴えており、「石破は危険だ」と思われています。私は集団的自衛権を認めない人に「集団的自衛権は日本以外の国は行使できる。問題はこれではない。問題は自衛隊が戦争を始めるかであり、これをコントロールできるかだ」と丁寧に説明します。
○マスコミのせい
・これを『国難-政治に幻想はいらない』(2012年)でも書いています。理解してもらえないと、「マスコミが悪い」と思いがちです。私も何度も腹立たしい思いをしました。マスコミも様々で、厳しいマスコミもあれば応援してくれるマスコミもあります。マスコミは「読者・視聴率拡大」「騒ぎの拡大」が目的なので、それを覚悟して付き合えば良いのです。当然マスコミに対しても丁寧に説明しなくてはいけません。
○勇気と真心
・この行動原理を渡辺美智雄から教わりました。彼は「何のため政治家になるのか。勲一等か、先生と呼ばれたいか、お金か、女か。そんな奴は俺の前から去れ」と言いました。「勇気と真心を持って、真実を語る」。これを政治家の原点にしています。
第4章 本気で国民の命を守る
○Jアラートの向上
・2017年9月政府は「全国瞬時警報システム」(Jアラート)で12道県に警報を伝えました。この件でも説明不足を感じました。まず「北朝鮮からミサイルが発射されました。建物/地下に避難して下さい」を流し、危険がある場合はさらに「直ちに避難、直ちに避難。建物/地下に避難して下さい」を流します。最初の警報の時点で、落下地点は把握できているはずで、それならば、もっと詳しい警報にすべきです。そのため様々な批判を受けました。議員会館でも避難訓練をした事がありません。日本は核シェルターも普及率は0.02%です。スイス/イスラエルは100%を超え、シンガポールは54%、韓国はソウルで100%を超えています。日本は世界で最も危険なのに、突出して低くなっています。
○防災省
・この様な避難体制を防衛用語で「拒否的抑止」と呼びます。防衛体制を整え、相手に攻撃を留まらせます。一方ミサイルに対しミサイルで対応する事は「懲罰的抑止」と呼びます。拒否的抑止は防災にも通じます。日本は有数の災害国で、このノウハウを持っています。そのため防災省を作り、そのノウハウを世界に輸出すべきです。専門家の育成/防災文化の継承/効果的な避難訓練などを考えれば、専任大臣を置くべきです。また防災の技術開発を促せば、産業育成にもなります。しかしこれらについて(Jアラートを含む)、十分議論されていません。
○核についての議論
・2017年北朝鮮の核開発が進み、日本でも核抑止が議論されました。しかし直ぐに消えてしまいました。平時にこそ冷静に議論すべきです。1964年中国が最初の核実験をします。この年東京オリンピックが開かれましたが、参加したのは中華民国(台湾)でした。毛沢東は「パンツを履かなくても、核を保有する」と述べたとされます(正しくは外相が「ズボンを質に入れても、核を保有する」と述べた)。フランスは米国が反対しても核を保有しました。インドも米ソを当てにせず、核を保有します。北朝鮮も朝鮮統一を念頭に、核開発しています。
・「核不拡散条約」(NPT)は核不拡散を目指しますが、不公平なものです。米露英仏中(国連常任理事国)だけが核を保有できるとしています。インド/パキスタンは加盟せず、核開発したのです。なお日本は加盟しています(※191ヵ国が加盟)。
・日本の核武装論が危機の度に提起されます。しかし日本が核武装するメリットはありません。もし核武装すると原子力発電に関連する協定が破棄され、日本はウランの輸入ができなくなります。大体日本には核実験する場所がありません。そのため真逆の議論として、世界的な核保有禁止を目指す方向もあります。しかしこれも困難で、当面は拒否的抑止(核を使用しても効果がない)を高めるしかありません。この拒否的抑止の方策が幾つかあります。弾道ミサイル防衛システムのアップグレードもその1つです。最近はブースト段階での迎撃も可能になっています。
○非核三原則とニュークリア・シェアリング
・脅威は「能力」と「意図」の掛け算です。民主主義体制だとプロセスの公平性が担保されますが、それ以外の体制では意思決定が迅速に行われます。この状況を踏まえると、「持たず、作らず、持ち込ませず」(非核三原則)の「持ち込ませず」を不変とすべきではなく、「ニュークリア・シェアリング」を検討すべきです。北大西洋条約機構(NATO)では、核の使用・不使用、非核保有国の関与などを常に議論しています。国民を守るため抑止力をどう働かせるかは政治の責任です。米国の「核の傘」に守られながら、核を持ち込ませないのでは抑止力が下がります。非核三原則に「議論せず」が加わり四原則になっています。これでは平和は保てません。安全保障の議論が現実離れしているのは危険です。
○現実的な対策
・私は「憲法改正は不可欠」と考えていますが、憲法改正されても、全ての課題が解決する訳ではありません。安全保障でも様々な課題があり、優先順位があります。南西諸島防衛は喫緊の課題です。南西諸島防衛は「個別的自衛権」の発動であり、現行憲法で対応できます。様々なケースを想定し、対処法を準備する必要があります。人民解放軍が侵攻するケースも考えられますが、漁船が遭難したとして魚釣島に上陸し、中国海警局に救助を求め、そのまま居座るケースも考えられます。
・北朝鮮のICBM/核兵器に目を奪われますが、日本が射程のミサイルを200~300基保有しています。また日本に住む北朝鮮の特殊工作員が一斉に破壊工作を始めるかもしれません。これらについても議論が必要です。国会でこの様な具体的な議論はされず、憲法解釈だけになっています。
第5章 本質的な議論には与党の努力
○異論と足を引っ張るは違う
・私は正しいと思う事を自由に述べてきました。そうでないと政治家になった意味がありません。また自民党は多様な意見により強くなれるのです。ところがこの態度を快く思わない人がいます。しかし自民党は上位下達の会社とは異なり、独立性・自立性が高い組織です。それは議員を選んだのが有権者だからです。安倍政権に異論を唱えるのは、足を引っ張るためではありません。また野党の議員も有権者に選ばれた事を忘れてはいけません。
○野党は与党が、与党は野党が作る
・これが前提なので、政府・与党は謙虚に誠実に正直に向き合い、国会での質問に真剣に対応する必要があります。自民党は野党時代、「責任野党」を目指しました。その結果、民主党に政策遂行能力がない事を国民に示せたと思います。2011年9月私(※政調会長)は予算委員会で野田総理に質問します。(※その冒頭を引用しているが省略)感情的にならず、敬意を持って論理で詰めていきました(※1ヶ月前、両者がほぼ逆の立場で党首討論した)。しかし最近の野党の質問は鋭さが欠けています。
○与党は隙を見せるな
・竹下内閣・橋本内閣・小渕内閣では政界スキャンダルがありました。しかし総理・大臣が真摯に答弁し、国民の信頼を得たと思います。野党の質問にはレベルが低いものがありますが、馬鹿にしてはいけません。野党は内閣を総辞職させ、総選挙に持ち込ませるのが目的です。そのため野党時代の自民党も不適格な大臣を辞任に追い込み、法案を廃案させたのです。
○良い質問
・野党は質問力が問われます。2017年総選挙後、党内から「質問時間は議席数で配分するか、せめて与野党で半々にして欲しい」との要望が出ます。当時は与党2:野党8の配分だったので、野党は反発しますが、結局与党の配分が幾らか増えます。せっかく増えたのに「良い質問」をしないと意味がありません。例えば「裁量労働制を拡大しようとしているが、その人の労働時間は減ったのか、逆に増えてはいないのか」などで、野党の質問に先んじて問題を明確にしたり、論点を整理したりして、政府をサポートするのです。大臣だった時、原口一博/逢坂誠二さんの質問には「さすが」と感じました。そう言った人は選挙でも強い人です。
○大臣は多忙
・2001年より国会での答弁は官僚ではなく政務三役(大臣、副大臣、政務官)が行う制度になります。すると大臣に質問が集中する様になりました。ところが「素人大臣」もおり、この場合は官僚が大臣に教え込む手間が発生します(※素人大臣は論外かな)。与野党の質問が出揃うのは前日の夜遅くで、官僚が徹夜で答弁資料を作成し、早朝に大臣と官僚が打合せします。これは非人間的で、説得力ある答弁になりません。これに関するルールはあるのに、守られていません(※質問は数日前の提出だったのでは)。これでは実りある議論になりません。
第6章 不利益の分配を脱し、幸せを実現
○果実の分配が仕事だった
・経済が成長し、人口が増えていた時は「果実の分配」が政治の仕事でした。米国により安全保障に予算を費やす必要はありませんでした。戦後は生活レベルが低かったので、モノを作れば売れました。企業は設備投資・人件費にお金を投じました。政府の税収も右肩上がりで、インフラ(新幹線、高速道路など)を整備し、貧富の格差が生じれば社会保障制度を充実させました。ところがバブルが崩壊すると経済成長は止まり、少子高齢化も進みます。
・今は中長期の国家ビジョンが必要です。池田内閣は「所得倍増計画」、田中内閣は「日本列島改造論」、大平内閣は「田園都市国家構想」を掲げました。ところが安全保障に関しては、岸内閣以降は封印しています。それは岸内閣での安全保障条約の改善に大きな政治コストが掛ったからです。
○竹下総理の功績
・短期的な利益より長期的な国益を優先したのが竹下総理です。彼は「果実の分配」ではなく「不利益の分配」(消費税導入)を実行したのです。これからの政治家は「不利益の分配」に正面から向き合わなくてはいけません。
○地方政治家の疲弊
・「地方自治は民主主義の学校」と言われます。ところが地方選挙の投票率は下がっています。千葉県市川市の市長選では全ての候補者が法定得票数に達せず、再選挙が行われました。連続当選したある町長は「次はもういい」と言っています。成り手がおらず、無投票当選も増えています。これが国政にも広がるのではと心配しています。
・国会議員の年収は2千万円余りですが、それで平均10人のスタッフを雇うの困難です。しかも激務で、世間の厳しい目に曝され、落選すると無職です。これからは有権者に「苦い現実」を語らなければならず、「大向こう受け」を期待できません(※こんな言葉があるんだ)。
○アベノミクスの先
・安倍政権での「アベノミクス」により、慢性化・長期化したデフレを脱し、株価/為替/雇用が改善しました。しかし「経済構造改革」は進んでいません。「三本の矢」の「金融緩和」「財政出動」は短期的なカンフル剤のため、「経済構造改革」で中長期的な成長を点火させる必要があります。
○根本的な問題
・1960年と2015年を比較します。GDPは16.7兆円から532兆円(32倍)、人口は9.4千万人から1.3億人(1.35倍)、高齢者(65歳以上)の割合は5.7%から26.3%になりました(※高齢化の詳述は省略)。国家予算は1.6兆円から96.3兆円(60倍)になり、社会保障費は0.7兆円から114.9兆円(164倍)になりました(※地方分を含むかな)。このまま少子化が進めば、2100年の人口は5千万人余りになります。
○大切なのは国民の幸せ
・この状況は放置できません。国家予算は60倍なのに社会保障費は164倍です。持続可能なプランが必要です。アベノミクスによる好景気を継続させる必要があります。実は円安により輸出企業の収益は伸びたのですが、売上は伸びていません(※これは注目だな)。賃金が上がっていないので、国民は実感がありません。
○賃金が上がらない
・就業構造を見ると、製造業からサービス業、男性から女性、正規から非正規、若者から高齢者の流れがあります。これらは何れも賃金を押し下げます。先程の「売上は伸びていないが、収益は伸びた」のは人件費が下がったからです。人口減少する日本に設備投資しないでしょう。一方海外で生産拠点/市場開拓/研究開発まで行っています。問題は構造的なものなので、企業に賃金上昇/設備投資を要請しても全体的な改善になりません。
・金融緩和により流通するお金が増え、起業しやすくなるはずですが、そうなっていません。企業は研究開発費を増やしていますが、人的資源への投資は伸びていません。経済学は人口減少を想定していませんでした(※これは無責任だな)。今は常識が通用しない社会になったのです。
○地方創生も経済政策
・ではどうすれば良いのか。私には方向性が見えています。地方の力を伸ばすのです。日本企業も世界で切磋琢磨するグローバル企業になっています。そこで勝ち抜けば傘下の中小零細企業も潤うと考えられてきました(トリクルダウン)。ところがそれは起きていません。政治家は大企業に目を向けますが、GDPの7割/雇用の8割はローカルの中小零細企業です。これらにダイレクトに効く政策が必要です。
・「地方創生」を東京VS地方と捉える人がいますが、東京は既にグローバル競争に曝されており、さらなる向上が求められます(※詳細省略)。日本には地方都市・住宅地があり、そこでの農林水産業・サービス業(観光業など)・建設業などに新産業・ニッチ産業のシーズがあるります。これからの日本は、このローカル産業が重要です。地方での雇用・所得が増えれば、東京への人口流出がなくなり、日本の人口は増えます。
・地方での成功事例は多くあります。働き方の見直しや新しい技術により生産性を向上させています。これにより東京から地方に人材・企業を移動させるのです。これを促すシステムを作れば良いのです。
○官僚も企業も地方へ
・文化庁の様に、官僚も地方に移転すれば良いのです。大臣の時「地方創生人材支援制度」を創設しました。これにより若手官僚が自治体に派遣され、地域が活性化しました(※詳細省略)。企業が本社機能を地方に移転させると減税するインセンティブも用意しました(※パソナの移転があったかな。コマツの例を紹介しているが省略)。
○住めば都
・人材が東京に集中するのは不幸です。東京には40代・50代でくすぶっている人がいます。こういう人が地方に行けば、活躍の場があります。大企業は所得が高いため人材を集められますが、地方はそれができません。政治がこれをサポートすれば良いのです(※最低賃金上げだけでは効果がないな)。また東京での中古住宅の流通が活性化されていないため、東京に居続けています。中古住宅の流通が促進されれば、地方に人材が移動します。
○地方創生の成功例
・地方創生で成功した例は多くあります。『日本列島創生論』で、島根の隠岐島、鹿児島のやねだん、鳥取の「森のようちえん」、高知の「土佐の森・救援隊」などを紹介しています。
○東京が憧れの時代は終わった
・日本の将来は地方に掛っていると確信します。『日本列島創生論』では小さな積み重ねを書いており、冷笑されます。しかし地方創生は地方だけの話ではありません。東京での画一的な働き方を変え、多様な働き方を可能にする「働き方改革」が必須です。※全国レベルの対応が必要か。
・これからの政治家は大きな国家ビジョンを語る必要があります。しかしアバウトではいけません。地方の視点を無視してはいけません。竹下総理は「ふるさと創生」で全ての自治体に1億円を平等に支給しました。使い方はマチマチになりましたが、竹下総理は「これで自治体の力・知恵が分かる」と言っています。※この政策は米国からの内需拡大の圧力だったのでは。
○長期的ビジョン
・日本を支えているのは地方です。東京もグローバル都市と地方の顔があり、この両方を発展させる必要があります。東京は若者を集めてきましたが、高齢化により医療・介護体制が急務になっています。また人口集中で世界一危険な大都市になっています。ドイツの保険会社の調査で、1位東京、2位サンフランシスコ、3位ロサンゼルス、4位大阪となっています。東京には地震リスクがあり、木造住宅/地下鉄が多いからです。一極集中が解消されれば、東京の価値も高まります。この様に政治家は長期的な国家ビジョンを議論すべきです。不都合・不利益の議論が避けられている気がします。
第7章 長期ビジョンを支えるのは選挙で勝つ体制
○田中派からスタート
・私は派閥否定論者ではありません。田中派に育ててもらい、渡辺派で初当選したからです。1979年慶応大学法学部を卒業します。この時父は鳥取県知事を務めた後参議員になっていました。私は新聞記者になりたかったのに父に否定され、銀行に務めます。
○政治家になるべきだ
・日本橋本町店に配属されますが残業が多く、午後11時まで働いていました。毎晩終電まで焼き鳥屋で飲み、それが楽しみでした。1980年父は2回目の当選を果たしますが、翌年癌で亡くなります。鳥取では県民葬となります。しかし東京では父が田中角栄に葬儀委員長を依頼していたので、田中派葬になります。その数日後、田中に「君が衆議院に出るんだ」と断言されます(※詳細省略)。
○木曜クラブの選挙前
・田中は既に総理ではなかったが、絶大な力を持っていました。私は木曜クラブの事務局員になります。ここは田中派の選挙本部で、田中派の全員当選が目標です。1983年は選挙イヤーで、6月参院選挙、8月衆院補欠選挙、12月衆院選挙(ロッキード選挙)と続きます。「応援弁士リスト」の作成が事務局の重要な仕事になります。必ずしも有名な政治家を投入する訳ではなく、例えば候補者が農政に強い場合は、建設に強い政治家を投入するのです。また地元紙の情報を集めるのも事務局の仕事です。
・田中派が選挙に強いのは、これらの仕事がシステマティックになっているからです。またこれらの仕事は3月頃から始めます。事務局が作った資料を秘書会が議論し修正します。この秘書会のメンバーは当選回数ではなく実力本位で選ばれます。
○渡辺派に移籍
・またここで「選挙は候補者本人が行う」と教わりました。小さな会合など、地道な活動の積み重ねです。田中派の文化・伝統を学べました。1984年鳥取全県区の渡辺派の議員が急逝します。そのため翌々年の選挙に出るため、渡辺派に移籍します。渡辺派の選挙戦は田中派と全く異なりました。田中派は「総合病院」と呼ばれますが、渡辺派は「地鶏集団」と呼ばれていました(※鶏は地面の餌を突くかな)。ただし田中派が選挙だけに注力している訳ではなく、「新総合政策研究会」で毎月政策を勉強していました。
○自民党田中派計画
・2012年私は自民党幹事長になります。中選挙区時代は左右の派閥があり、自民党内で疑似政権交代していました。しかし小選挙区制になり、派閥の力は低下します。そこで自民党の選挙戦に田中派のアプローチを浸透させたいと考えました。
○風読みからの脱却
・小選挙区制は風で選挙結果が大きく変わります。しかし風に影響されない党にしたいと考えています。ロッキード選挙では選挙の2ヵ月前に田中に有罪判決が出て不利な状況でした。そんな中、彼は候補者に「俺は田中派だけど、田中は許せん」と言えと伝えたのです。その結果自民党は大きく議席を減らしたのに、田中派はほとんど減らしませんでした。この選挙で様々な教訓を得ました。今は小選挙区制になり、派閥の影響力が弱くなっています。しかし風に左右されない党にしたいのです。そのため受けが良かろうが悪かろうが、正しい政策を訴えるべきです。
○党本部の改革
・田中派化のためにまず考えたのが、各派閥の事務所を党本部内に置く事です。これにより派閥を超えた政治家の応援投入が可能になります(※詳細省略)。さらに党本部の1フロアを地方組織に開放する事も考えました。これで中央と地方組織の連携を高めるのです(※詳細省略)。しかしこれらは実現しませんでした。※ガラスの仕切りの話は省略。
○選挙必勝塾
・「選挙必勝塾」は実現しました。これは若手議員を対象とするセミナーで、議員の出自はバラバラなので、それに合った選挙必勝法を教えました。例えば官僚出身者は「上から目線」になりがちなので、発言に気を付けるなどです。これにより初当選者の多くが2回目の選挙で生き残りました(※2014年12月の選挙かな)。
○人材抜擢cv
・自民党幹事長の時、大臣未経験者全員にどの様な役職を希望するかを提出してもらいました。そしてその理由、相応しい理由なども記してもらいました。このやる気や能力を考慮した人事は正しかったと思います。当選回数で判断してはいけません。民間に「年功序列に拘るな」「有能な人材を適材適所で配置しろ」と言わなくてはいけない時代です。
第8章 磨くべきは政策
○水月会
・石破派と称されますが、正式名は「水月会」です。第2次安倍内閣が改造された際、水月会のメンバーに記者が「水月会だとポストがもらえないのでは」と訊きました。すると彼は「ポストが欲しいなら水月会に居ない」と答えました。これを聞いて嬉しくなりました。
・私は新進党から自民党に復党し、津島派に所属します。津島派の源流はあの木曜クラブです。2009年自民党は下野します。私は政調会長に就きますが、規約により派閥を離脱します。私は派閥を作ろうとは考えていませんでしたが、2015年状況が変わります。地方創生担当大臣を務めていましたが、中堅議員4人が訪ねて来て、「総裁選に出るつもりはあるか」と訊くのです。「大臣なので今回は出ない」と答えると、「3年後を見据え、政策グループを作りましょう」と提案されたのです。自民党が「安倍一強」に甘えず、次に備える政策集団を作る事になります。
・水月会の名付けは全生庵の住職です。水面に月が奇麗に映りますが、この調和を指しています(※詳細省略)。発足は2015年9月28日で、安倍総裁が無投票再選された数日後です。この日の記者会見で、3年後の総裁選に出馬する事を明言します。メンバーは20人で、新聞の見出しは「石破派、不安な船出」となっていました。
○ベンチャー政策集団
・自民党の各派閥は源流がありますが、水月会にはそれがなく、「ベンチャー政策集団」と言えます。しかしメンバーの能力は高いと確信しています。
○勉強会での研鑽
・2018年水月会は『石破派と水月會の日本創生』を出版します。これは月2回開く勉強会の内容を記した本で、メンバーの研鑽の賜物です。勉強会の講師をメンバーが順番に務め、1時間弱、実現したい政策を発表します。政治家を商品に例えると、政治家の政策のクオリティが商品の品質で、スローガンや見た目は商品のパッケージになります。品質が悪いと、国民に見透かされます。
○共有すべき認識
・政党に関わらず、現状認識・議論の前提があります。日米安保は東アジアの公共財で、堅持する必要があります。安全保障において中国・北朝鮮・ロシアは警戒しなければいけません。内政では人口減少・少子化・超高齢化は国家的な危機です。財政では「借金ゼロ」は極端で、国は将来のためにある程度の先行投資をすべきです。ただし国債依存度は下げるべきです。
○国債発行も財政健全化も手段
・識者に「日本の借金は国内で消化されるので問題ない」とする人がいます。しかしお金が魔法の様に生まれる訳ではありません。企業・個人がお金を使ってくれないため、国がお金を借りて、使っているのです(※デフレが要因かな)。しかし公共事業などではなく、新しいビジネスを生むような使い方をしなければいけません。従って国債発行は手段に過ぎず、何に使うかが重要です。
・財政健全化も次世代の負担を軽減すると同時に、市場の信認や市場との対話などの経済運営の選択肢を拡げます(※詳細説明が欲しい)。これも財政健全化は手段で、経済を良くするのが目的です。
○社会保障
・アベノミクスの先を考えてみます。デフレ脱却は近付きましたが、個人消費は伸びていません。この理由に「長生きリスク」があります。人生百年時代になり、将来の金銭的不安があるのです。また財政支出の多くが社会保障関連費(年金、医療、介護)で、これが大きな課題です。
・「税と社会保障の一体改革」が行われましたが、私は2点見逃していました。1つは消費増税の政治的リスク、もう1つは社会保障給付の内容です。付加価値税は安定した財源で、欧州では認知されています。ところが日本では、消費増税が政権の存続を揺るがす政治的リスクになったのです(※これは認識されつつあるかな)。
・また「一体改革」では社会保障給付の見直しをしませんでした(※これも徐々に修正されているのでは)。しかしこれは技術の進歩で社会保障の内容を各自が選択する事が可能になるでしょう。例えば日頃から歩き、健診を受けている人は健康で医療費・介護費を使いません。その様な人には年金を増やすなど、社会保障サービスの効率化が可能になります(※これを技術で判別し、実現するのかな)。
・一方「診療報酬の外の世界で、正当な利益を確保できる新産業としての医療・介護」の視点も重要です。国民皆保険制度を「診療報酬の中の世界」で維持しながら、その周縁部分を「サービス産業」として顧客満足度と効率化を両立させるのです。※説明が欲しい。保険制度は国が保証しているが、実際の医療・介護サービスは民間が提供している事かな。
○地方創生の可能性
・地方創生は「小さな話」ではなく、「トップダウン・エコノミーからボトムアップ・エコノミーへの転換」です。「モノ消費からコト消費へ」に視点を変えると、観光・文化・スポーツによるコト作りで利益を生む「プロフィット・センター化」も地方創生の派生形です(※プロフィット・センターって何だ?)。また「地産地消」を有機的に統合し、お金が地域で循環する「地域経済好循環エコシステム」を構築できます(※「地域おこし協力隊」とかあったな)。また社会保障では、第2・第3の人生を地方で過ごす「生涯活躍のまち」(CCRC)や、生活圏を徒歩圏内とし健康寿命を実現するまちづくりなどの場を設けるのです(※過疎化が進んでいるので、集住させるのかな)。
・バイオマス/地熱/小水力発電などの再生可能エネルギーも地域の活力になります。少子化対策として、子育てしやす「子育て移住」も起きています。また婚活イベントなども行われています。地方と相性が良いのが、ロボット/ドローン/AI/機械化/顔認証などのローカル産業です(※中国には空中経済があったな)。この様に可能性は無限にあります。
○教育にも革命を
・私は左官・建築板金・鳶などの職人団体の議員連盟の会長を務めています。そこで「日本は職人文化が根付いているのに、彼らを育て、正当な金銭的評価を確保する体制の整備を怠っている」と感じました(※個人事業者の評価は難しいかな)。これは画一的な教育により、職業選択の幅が狭くなっているのが要因です。これらの才能は子供の頃から発揮されるので、実学重視の教育を設け、高収入を得られる道筋があっても良いと考えます。勉強ができれば受験校に進み、有名大学に入り、大企業・役所に勤める。そうでない道を準備するのです(※技術系の学校も十分あると思うが)。
・地域産業の担い手の育成も重要です。インバウンドが増え、地方でも英会話能力が必須になりました。この教育機会を増やすべきです(※今は小学校で英語を習うのでは)。女性・高齢者の活躍やテレワークの推進には「キャリア教育」が不可欠です。人生には、結婚/出産/育児/病気療養/介護/看取りなどのイベントがあります。これらのイベントをこなし、中断したキャリアを継続するための教育も不可欠です(※これがキャリア教育かな。もう少し説明が欲しい)。
○自立精神旺盛で持続的に発展する国
・2017年10月「国難突破総選挙」が行われました。私はこの国難を、外政では北東アジアの安全保障、内政では人口減少と考えます。アベノミクスの金融緩和/財政出動で時間的猶予が生まれました。この間に地方/女性/人生のベテランの潜在能力を引き出す構造転換をしなければいけません。私は「自立精神旺盛で持続的に発展する国」を目指しています。日本は食料/エネルギー/安全保障/人材を自国だけで賄えません。それでも他国に振り回されず、自国で決めなければいけません。そして自助を基本とし、助け合う共助と最後のセーフティーネットの公助を位置付けます。「今さえ良ければ」「自分達さえ良ければ」ではいけません。昨今世界で「SDGs」(持続可能な開発目標)/「ESG投資」(環境・社会・企業統治重視の投資)が言われ、共存共栄の道を進まなければいけません。
・この様な国家ビジョンは私一人では実現できません。私には水月会の同志がいるので心強い。この同志の政策力が必要になる時が来ると確信しています(※2024年10月石破内閣が発足)。私達は今も活発に議論しています。渡辺美智雄は「いい加減な奴が100人いるより、信念を持つ確信犯が20人いれば、世の中は変わる」と言っています。
おわりに
・地方創生担当大臣を辞めてからも全国から呼ばれ、週に3回位講演しています。自治体は1千700ありますが、350位回っています(※地方で人気が高いのも頷ける)。内容は地方創生が多いですが、憲法・安全保障もあります。秘書と共に地域の情報を調べ、それをネタにしています。大概一人で出向くため、驚かれます。一人の方がなんかあった時に臨機応変に対応できます。
・最近の自民党の政治家は街頭演説が少なく、危惧を覚えます。政治家の根本は演説です。自衛隊のイラク派遣/テロ特措法など世論が二分する時は夕方に街頭に出向きました。皆さん朝は忙しいが、夕方は立ち止まって聞いてくれます。大臣の時は質問する野党議員の著作・論文を事前に読んで、論戦に臨みました。多数決は与党に有利ですが、野党の意見にも参考になるものがあります。
・先日、民主主義に関するディスカッションに参加しました。そこで「民主主義による意思決定は正しいとは限らないが、皆が参加できる事に意義がある」となりました(※チャーチルの言葉は省略)。また代議制のため、情報をできる限り公開する必要があります。全ての人の希望を叶えるのは不可能なので、その人に納得してもらう努力も必要です。
・田中総理/竹下総理の頃は色々な人が陳情に来ました。全ての人の希望を叶えるのは不可能ですが、彼らは「総理が聞いてくれた」と喜んでくれました(※竹下総理の対応を紹介しているが省略)。
付録 講演「憲法問題について」 水月会勉強会 ※大幅に簡略化
・私の思うところではなく、野党時代に自民党が党議決定した内容を解説します。自民党はこれを掲げ、国政選挙を4回戦っています。憲法改正草案は自民党だけでなく、読売新聞/産経新聞も発表しています(※以下改正法案)。これらの9条は自民党案とほとんど変わりません。「自民党 憲法改正草案 Q&A」も作成しています。ぜひ読んで下さい。
・「憲法は占領下で作られたため無効」と言う人がいますが、そこまでは考えていません。ただ「あらゆる国際法に即している」とは考えていません。「国体護持を飲まざるを得なかった」が事実としても(※これは日本の要求では)、「独立後に憲法改正を怠った」は納得できる論理です。
・独立していない時に作成されたため、独立の要件(軍の規定、緊急事態の規定)が含まれていません。軍と警察は全く違います。軍は独立を守るのが役割です。自衛隊法に「主たる任務」「従たる任務」があり、防衛出動だけが「主たる任務」で、災害派遣/治安出動などは「従たる任務」です。国の独立を守るのが軍で、国民の生命・財産・秩序を守るのが警察です。従って軍の作用は対外的なものになります。治安出動したとしても、それは警察権の範囲内です。一方警察の作用は対内的で、国民の基本的人権の尊重が義務になり、これが警察官職務執行法に記されています。一方軍が従うのは国際条約・国際慣習です。
・改正草案は前文から書き換えています。現行は「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、我々の安全と生存を保持しようと決意した」となっていますが問題です。集会で「決意したか」を訊ねても、誰も手を挙げません。これを受け第9条は「国民は正義と秩序を基調とする国際平和を希求し、国権の発動たる戦争、武力による威嚇・行使を国際紛争を解決する手段として放棄する」「国の交戦権を認めない」(※要約)となっています。しかしこれはよく分からない。「国権の発動たる戦争」とは、最後通牒/宣戦布告による正規の戦争かな。日中事変はこれらが行われなかったので、「武力による行使」なのだろう。「国際紛争」とは「領土などを巡る、国家間の武力を用いた争い」と思われます。因みに国家の3要件は、①領土を有する、②アイデンティティを共有する国民がいる、③統治の仕組みが存在するです。
・第9条第1項「・・国際紛争を解決する手段として放棄する」は不戦条約そのままで、国際的に珍しいものではありません。第2項「前項の目的を達するため・・」は芦田均が加えたもので、これには問題がある。吉田茂はこれを嫌い、その後の政府も芦田修正の立場を取っていません。第2項「陸海空軍その他の戦力を保持しない。国の交戦権を認めない」は、どこの国の憲法にもなく、問題です。この「戦力」は、今は「必要最小限の実力を超えるもの」と解釈されていますが、よく分かりません。「交戦権」は国に認められた権利で、これには義務も随伴します(※集団的自衛権?)。相手を殺戮したり物を破壊すると殺人罪・傷害罪・器物損壊罪になりますが、交戦権の場合は適用されません。さらに占領地の行政権/捕虜の権利なども交戦権に含まれます。日本だけ交戦権が異なるのは通用しません。第9条第2項には以上の問題があります。
・自衛隊は国の独立を守る組織で、権限は対外に及び、交戦権を有します。自民党の改正草案はそれを記述しています。第1項も議論になりました。それは「国際紛争」に拘っているからです。今はテロ集団による破壊行為が問題になっています。また南スーダンの様に内戦も起きています。問題の第2項は「前項の規定は、自衛隊の発動を妨げない」としました。これにより個別的・集団的の区別なく自衛権を持つのです。ただし集団的自衛権を無制限に発動できる訳ではなく、安全保障基本条約等で制限すべきです(※国内法ではなく日米安保条約?)。
・(※国際連盟から国際連合が生まれた経緯を詳しく解説しているが省略)。国連の常任理事国は拒否権を持ちます。その決定が下るまで個別的・集団的自衛権を認めたのが、国連憲章第51条です。国連は主権国家の集まりで、ユナイテッド・ネーションズです。国連は第2次世界大戦の戦勝国で、日本は後から入れてもらいました。
・改正草案の第9条は二を加え、「我が国と国民の平和/独立/安全を確保するため、内閣総理大臣を最高指揮官とする防衛軍を保持する」としています(※二「国防軍」を追加している)。二の第2項に「国防軍は第1項の任務遂行のため、国会その他の統制に服する」、第3項に「国防軍は第1項の任務の他、国際社会の平和・安全を確保するために協調して行われる活動及び、国民の生命・自由を守るための活動を行う」としています。これによりPKO任務/海上警備行動/治安出動に対応できます。第4項に「前2項の他、国防軍の組織・統制・機密保持に関する法律を定める」、第5項に「国防軍に属する軍人・公務員による罪を裁く裁判所を国防軍に置く。この場合、被告人が上訴する権利は保障される」(※これは軍事法廷以外への上訴?)としています。さらに第9条に三を加え、「国は主権・独立を守るため、国民と協力し、領土・領海・領空を保全し、資源を確保する」としています(※三「領土等の保全等」を追加している)。二の第5項は軍事法廷について書いています。自衛隊は警察・海上保安庁を大幅に超える実力を持つため規律が重要になります。規律が厳正のため、その栄誉も最も高くなります。
・以上が改正草案の第9条です。政府は「軍隊は国によって定義が異なる」としてきました。しかし私は軍隊も交戦権も明確に定義されていると考えます。専守防衛は憲法から導き出されたものかもしれませんが、専守防衛が戦略上どれだけ難しいか理解する必要があります。攻撃を受けてから反撃する様では、国土の被害が前提になります(※詳述されているが省略)。「第9条第1項/第2項をそのままにして、第3項に自衛隊の規定を追加すれば良い」との意見があります。しかしそうすると、第2項と第3項が矛盾するのです。
・自衛隊を軍隊とするのには拒否反応があるでしょう。しかし自衛隊は国の独立を守る組織で、国際条約/国際法/国際習慣に従う必要があります。またグレーゾーンの問題もあります。自衛隊が発動する3要件は、①急迫不正の武力攻撃があった、②他の手段がない、③反撃は必要最小限に留めるです。例えば尖閣諸島が某国の民間人に占拠されたると、警察権での対応になります。しかしこれは独立・主権・領土の侵害で、警察権での対応で良いのでしょうか。あるいは領空侵犯された時のスクランブルも警察権での対応になっています。憲法学者は「自衛隊は違憲」としており、教科書もそう書いてあります。この払拭も大事な課題です。自衛隊は国内的には軍でないのに、国際的には軍隊です。この様な根源的な問題もあります。