『課長・部長のための知っておきたいビジネス常識と教養』フレアビジネス研究会(2017年)を読書。
広範囲(世界情勢、経済、政治、法律、業界、文化・教育)の常識を解説。
文章は簡潔で理解しやすく、各項目に図表がある。
直近(2016年頃)に起きた事象を多く解説。
最終章の文化・教育は知らない事が多かった。
お勧め度:☆☆☆
内容:☆☆
キーワード:<世界情勢>インバウンド/イスラム、EU、国連/安保理、PKO、TPP/パリ協定、G7/G20、<経済>デフレ、アベノミクス、日銀/金融緩和、TPP/自由貿易、イノベーション、経済格差/21世紀の資本、貧困・格差、経済思想/新古典派総合/マネタリズム、行動経済学/ヒューリスティック、ノーベル経済学賞、<政治>55年体制/二大政党制、衆議院選挙/参議院選挙、国会議員/三権分立、首長・地方議会/地方分権、世襲、利益団体・圧力団体、米国大統領選挙、<法律>取締役、部課長、知的財産、談合・下請いじめ/独禁法/下請法、製造物責任法、マイナンバー/個人情報、倒産、<業界>ビッグデータ、エシカル消費、ロボット、健康食品、仮想通貨、フィンテック、AR/VR、IoT、物流、サブスクリプション/マネタイズ、再生医療/iPS細胞、エネルギー、<文化・教育>伝統芸能/無形文化遺産、美術、オリンピック、江戸の芸術/浮世絵、大学入試、大学地図、就職、専門職大学院
はじめに
・世界はインターネットとグローバリゼーションで大きく変化した。新入社員は最新の情報を身に付けているが、課長・部長はその暇がない。本書は最新の動向/キーワード/キーパーソンを簡潔に纏めた。本書は6章(第1章:世界情勢、第2章:経済、第3章:政治、第4章:法律、第5章:業界、第6章:文化・教育)で、50項目からなる(※詳細省略)。
第1章 世界情勢の常識
<1.ハラールで知るイスラム>
○観光立国になるための国際化
・この国際化はグローバリゼーションではない。日本のビジネス/商業/教育・文化を海外に開く事だ。2006年「観光立国推進基本法」が成立し(※第1次安倍内閣で、結構前だな)、2008年国交省に観光庁が設立された。その頃は外国人観光客は800万人だったが、今は2千万人を超える。2020年4千万人、2030年6千万人を目標にしている。
○世界の人への対応
・インバウンドは仏国は8千万人、米国は7千万人に達している。2003年より訪日旅行促進事業(ビジット・ジャパン事業)を始めるが、全重点地域の20市場の半分がアジアだ(※海外でPR活動するみたいだ)。そのインドネシア/インド/マレーシアはムスリムが多い。彼らが日本に来て困るのが、礼拝所と食事だ(※城跡で礼拝している人を見たが、それかな)。
・イスラムでは神が認めた物(ハラール)しか食べれない(非合法はハラーム)。観光立国を進めるため、企業・自治体はハラールに対応しなければならない。
○「おもてなし」が必要
・観光庁は『ムスリムおもてなしガイドブック』を作成している。日本に15以上のハラール認証する団体ある。また国・地域/宗派で厳格さに差があるので注意だ(※ヒジャブの着用でも違いがあるな)。
・食事は野菜・果物・魚・卵・牛乳は問題ないが、鶏肉・牛肉は食肉処理で規制がある。
<2.ブレグジットから読み解くEU>
○EU離脱の決め手は移民問題
・2016年英国でEU離脱の国民投票が行われ、僅差で離脱が決まる。当時は保守党のキャメロン首相/野党労働党の大半/スコットランド国民党が残留派で、離脱派は保守党のボリス・ジョンソンなどだった。国民を離脱に向けさせたのは移民問題で、ジョンソンは「英国は独自の移民管理をすべき」と主張した。英国は2017年より離脱交渉を始める。
○ドイツの強大化を拒む
・1989年ベルリンの壁が崩壊し、欧州統一の機運が高まるが、ドイツの強大化が警戒される。1992年マーストリヒト条約によりEU(欧州連合)が誕生し、今は英国を含め28ヵ国が加盟している。統一通貨ユーロはEU19ヵ国/その他6ヵ国の共通通貨になっている。これによりドイツの強大化を抑制している(※ドイツはユーロにより輸出で有利になった)。
・EUの前身は独仏伊などによる「欧州石炭鉄鋼共同体設立条約」(1951年)に始まる(※ECSC/EEC/EC/EUの流れかな)。当初は関税撤廃などが目的だった。70年代にドルが変動相場制になり、統一通貨ユーロが浮上する。
○EUと英国の未来
・EUの「欧州連合理事会」(議長は6ヵ月交替の輪番制)は立法府で、最も強い権限を持つ。「欧州議会」は751人の議員からなり、欧州人民党グループ(EPP)が第1会派、社会民主進歩同盟(S&D)が第2会派となっている。
・EUの将来を握っているのがメルケルが首相のドイツだ。彼女は3期目(任期4年)を務めているが、2017年秋に総選挙がある。「キリスト教民主同盟」(CDU)/「社会民主党」(SPD)が2大政党だが、「ドイツのための選択肢」(AfD)が台頭している。※結局メルケルは4期務めた(2005年~2021年)。
・EUでは「欧州理事会」と「欧州連合理事会」を注視したい。欧州理事会は加盟国の首相・大統領で構成される(※行政のトップかな)。欧州議会にも立法権がある。欧州理事会の常任議長と欧州委員会委員長がEUを代表する。※立法は欧州連合理事会の下に欧州議会があり、行政は欧州理事会の下に欧州委員会があると考えれば良いかな。
<3.国連は形骸化?>
○名称と安保理に戦後が残る
・国際連合は国際連盟で平和が維持されなかったため設立された。主体的に権限を発揮できるのは15ヵ国の「安全保障理事会」(安保理)で、国連の加盟国に義務付けできる。一方その他の機関は勧告しかできない。安保理の中心が、常任理事国の中・仏・露・英・米だ(※順番は国名順かな)。なお世界196ヵ国中、193ヵ国が国連に加盟している。
※国連の機構/分担金の図表あり。
○日本は常任理事国入りできる?
・安保理は9票で決議されるが、常任理事国には拒否権がある。非常任理事国は10ヵ国で、任期は2年で、地域の選挙で選ばれる。日本は1957年以降、1978年を除き毎回当選している。※日本はアジア太平洋枠の2ヵ国から選出されている。なんか1ヵ国を独占して悪いな。
・日本は常任理事国入りを目指し、常任理事国を11ヵ国、非常任理事国を15ヵ国に拡大する案を推している。これには国連憲章の改正が必要で、加盟国の2/3の賛成が必要になる。
・EUはシリア難民で揺れている。「国連高等弁務官事務所」(UNHCR)は世界に事務所109ヵ所、現場事務所341ヵ所を有する。世界に1240万人の難民が存在し、対応している。※国内難民も問題だが、それも人数に含まれるのかな。
○改革は進んでいる
・国連トップはグテーレス事務総長だ(※任2017年1月~。任期5年の2期目なので2026年12月まで)。彼はポルトガル首相を務めた後、UNHCRで活躍した(※この辺は知らなかった)。彼は初めての選出方法で選ばれた。これまでは安保理が勧告し、それを総会が任命していた。そのため安保理に対立しない人物が選ばれていた。今回は立候補者12人の経歴が公表され、演説会も公開された。安保理は彼を勧告し、総会で満場一致で決まった。彼は演説で難民問題/社会的弱者・ジェンダーの平等を述べ、それが期待される。※今はウクライナ/ガザが大きな課題かな。
<4.PKOで知る国際平和>
○駆け付け警護とPKO
・「駆け付け警護」の言葉は国際的には存在しない。これは危険に曝されている邦人を自衛隊などが保護する活動だ。さらに共に活動する米軍などを防護する活動も含まれる(※集団的自衛権だな)。これは2015年安全保障関連法案で認められた。
・「国連平和維持活動」(PKO)は、国連による紛争地域での平和維持活動で、当事者間の仲裁などを行う。ところが1991年湾岸戦争で多国籍軍は強硬な活動を行った(※ソ連崩壊直後で米国の独壇場かな)。
※PKOの予算分担率/平和安全法制の構成の図表あり。多くの法が改正されている。
○PKOは軍隊・警察・民間人が参加
・PKOの歴史は60年以上に及ぶ。1948年アラブとイスラエルの戦争を停止させるため「国連休戦監視機構」(UNSTO)が設置され、今も活動を続けている。※イスラエルはヨルダン川西岸でも強硬な行動をしているが、機能しているのか。「国連パレスチナ難民救済事業機関」(UNRWA)は知っていたが、UNSTOは知らなかった。名前から役割は違いそうだな。
・PKOは国連からの派遣された人や軍隊/警察などからなり、治安回復/選挙監視なども行う。これまでに71オペレーションが実施され、16が継続中だ。
・1992年「国際平和協力法」が成立し、自衛隊はカンボジア/南スーダンなどの14オペレーションに参加している(※結構参加しているな。アデン湾もそうかな)。また自衛隊は「国際緊急援助法」(※1987年成立?)により国際緊急援助活動、「旧テロ対策措置法」(※2001年成立?)により協力支援活動、「補給支援措置法」(※2008年成立?)により補給支援活動、「イラク人道復興支援措置法」(※2003年成立?)により海賊対処・警備を行っている(※これらもPKOで、上記の14オペレーションに含まれるのかな)。
○多国籍軍/有志連合による活動
・自衛隊は戦争に加担しないため、多国籍軍/有志連合への参加は議論になる。イラクへの空爆は有志連合が行っている(※2003年イラク戦争かな。これには問題が多く残った)。1990年イラクがクウェートに侵攻し、多国籍軍が派遣された(湾岸戦争)。14ヵ国が戦闘に参加し、18ヵ国が非戦闘支援をした。日本とドイツは資金援助のみだった。
・2001年9月同時多発テロにより、国連で189ヵ国がテロ非難決議に賛同する。米国はアフガニスタンで活動を始め、NATOも国際治安支援部隊として参加する(※対アルカイダのアフガニスタン紛争だな)。2014年ISILに対し「生来の決意作戦」が開始される。有志連合がイラクのISIL拠点を空爆し、シリアにも拡大する。ロシア/トルコも独自にシリアで空爆を行う(※シリアは強大国が利害で戦場になった)。
<5.パリ協定、TPP>
○国益-構造改革と安全保障
・2016年「環太平洋パートナーシップ協定」(TPP)が国会の争点になる。前年安倍首相は米上下両院合同会議でTPPの利益を述べた。ところがトランプ大統領になり、TPPが揺れている。条約は、署名/国会承認/批准書・受諾書・加入書交付により発効する。TPPは2015年12ヵ国が合意し、翌年2月署名が行われ、今は各国が発効手続きを行っている。
○米国が慎重に
・TPPが効力を持つには2つの条件がある。①署名から2年以内に12ヵ国が国内手続きを終える。②条件①を満たさなくても、12ヵ国のGDPの85%以上かつ6ヵ国以上が国内手続きを終える(※米国が抜けたのに条件②のGDPを満足した?)。TPPはシンガポール/ニュージーランド/チリ/ブルネイから始まり拡大し、最後に日本が加わった。
・条約を承認すると、条約は国内法に優先する(※条約間の優先順位はどうなるのか。例えばTPPとAPEC)。TPPは2国間協定以上に取り決め分野が広いため、著作権法・特許法/医薬品/独禁法/農業などに影響が及ぶ。※思い出した。結構農業で揉めたな。
○グローバル化の中での条約・協定
・2016年11月政府は「パリ協定」を受諾する。これは「気候変動枠組み条約締結国会議」(COP21)で締結された協定で、197ヵ国が参加している。この協定により2030年度に温室効果ガスを26%削減する。条約・協定は国内法に優先するが、国内事情によって合意内容が受け入れられないケースもある。
<6.国際会議から見る力関係>
○サミットで何が決まるか
・2016年5月「G7伊勢志摩サミット」で世界経済/移民・難民/インフラ/保健/女性/サイバー/腐敗/気候/エネルギーなどが話し合われ、コミットメント(公約)が表明された。わずか7ヵ国だが、課題を確認し、方向性を示す(※具体的な内容を説明しているが省略)。
※G7サミットの内容の図表あり。
○個別会議が重要
・全体(※サミット?)の話し合いの前後に大臣級の会合があり、そこで具体的な検討がされる。そのためサミットはセレモニー的だが、2国間の首脳会談も行われ、それがその後を見る上で重要になる。
・近年はG20も注目される。これは1999年財務相・中央銀行総裁会議に始まる。金融危機により2008年より首脳会議も開かれる。この20ヵ国で世界GDPの9割を占める。2016年9月中国・杭州でのG20は、立ち話さえ話題になった。G20に先立ち財務相・中央銀行総裁会議が開かれ、資源/環境/貧困などについて検討され、それがG20に反映される(※このG20は何をさすのか。G20各国なのか。G20も様々な大臣会合があり、それかな)。G20のテーマは「国際経済協力」で、G7と位置付けが異なる。
第2章 経済の常識
<1.経済停滞20年、デフレ15年>
○教科書にもなかったデフレ
・物価が持続的に下落するのがデフレーション(デフレ)だ。日本はこれまでにデフレになった事がなかった。岩田規久男『デフレの経済』によれば、教科書(?)にもデフレの記述は少ない。米国で標準の『マクロ経済学』(ドーンブッシュ、フィッシャー)にもデフレの記述は一切ない。中央銀行の仕事はインフレ退治だけだった(インフレ・ファイター)。
○GDP(デフレ)ギャップ
・日本はバブル崩壊後にデフレに陥る。バブル時代は地価・株価も上がった。企業は借金し、設備投資し、土地を買った。バブルが崩壊すると、資産デフレが始まる。そして商品・サービスの価格も下がり始めた。1998年からデフレに陥る(正式には2001年)。
・デフレの要因は消費の落ち込みで、供給過剰の状態が続いている(供給>需要)。非正規雇用の増大が消費の伸びを抑えている。他に円高と新興国からの低価格の輸入品による。
○アベノミクス
・ケインズは「インフレは不公正で、デフレは不都合」とした。インフレは貨幣保有者に不公正で、デフレは失業者を増やすからだ。デフレになると企業の利益は減り、給料を下げたり、リストラを行う。これにより消費が減る。この悪循環をデフレ・スパイラルと言う。デフレになると財政も悪化する。企業の利益や個人の所得が減り、税収が目減りする。1990年度は60兆円だったが、2009年度は39兆円まで落ち込んだ(※2023年度は72兆円に回復かな)。この対応として登場したのがアベノミクスだ。
<2.アベノミクス>
○金融緩和
・2012年末安倍首相に政権交代する。彼は懇話会で経済政策「アベノミクス」を講演する。これは「三本の矢」と呼ばれ、①大胆な金融政策、②機動的な財政政策、③企業の投資を促す成長戦略からなる。最も力を入れたのが①の日銀による金融政策だ。消費者物価上昇率の目標を決め、これが達成されるまで金融緩和を続けるとした。これは2000年代に論争になったリフレ派の「インフレ目標政策」そのものだ。
※各国のインフレ目標の図表あり。
○インフレ目標政策
・「インフレ目標政策」(インフレターゲット論)は中央銀行が物価上昇率の目標を設定し、その達成を優先させる金融政策だ。1988年ニュージーランドが初めて採用し、その後20数ヵ国が採用している。元々はインフレを抑えるためで、デフレから抜け出す政策ではない。2000年代日本でも論争が起きた。デフレをインフレにする政策がリフレーション政策で、岩田規久男/浜田宏一/伊藤隆敏などのリフレ派が唱える。2013年3月リフレ派の黒田東彦が日銀総裁に就く。
○マクロ・ミクロの政策を実施
・安倍首相はアベノミクスを実現するため組織を工夫する。彼は「経済財政諮問会議」「日本経済再生本部」のトップに就く。前者は小泉政権時に「改革のエンジン」になった。この中心に竹中平蔵(経済財政政策担当相)がいた。これは財政政策などのマクロ経済を受け持ち、経済財政に関係する大臣/財界人/学者/日銀総裁が議員で、「骨太の方針」を決める。
・後者は企業の支援策などのミクロ経済を受け持つ。全ての閣僚が参加し、下に産業競争力会議を置き、具体的な成長戦略を策定する。特定の地域で規制緩和する「経済戦略特区」は、ここから生まれた。
<3.日本銀行と異次元緩和>
○中央銀行
・各国の中央銀行は経済情勢に対応する形で進化した。最古の中央銀行は1668年設立のスウェーデンリクスバンクだ。日本銀行(日銀)は1882年設立、米国の連邦準備制度理事会(FRB)は1913年設立だ(※米国は遅いな)。日銀は西南戦争後のインフレを収束させるために設立し、1881~84年「松方デフレ」になっている。
○日銀の役割
・日銀の役割は、「物価の安定」と「信用秩序の維持」だ。後者は銀行の銀行として、民間銀行の資金決済サービスの中核になり、紙幣を発行する事だ。日銀の機能は、①発券銀行(日銀券の発行)、②銀行の銀行、③政府の銀行だ。②は政策金利操作/公開市場操作/支払準備率操作でお金の流通量を調節し、物価を安定させる。③は国庫金の出納業務(年金など)/国債業務/国際業務(為替介入)だ。
・日銀は独立性が担保されている。金融政策は政策委員9人(総裁1、副総裁2、審議委員6)の合議による。
○異次元緩和
・日銀は伝統的にインフレには積極的に行動するが、デフレには消極的だ(※バブル崩壊は日銀のインフレ抑制が遅れたためでは)。各国がインフレ目標政策を採っても日銀は採らず、各国が量的緩和政策を強化しても日銀は小出しだった。※日銀がデフレを容認した理由をAIに聞くと、「デフレの過小評価」「金融政策の限界」「インフレへの警戒」「不良債権処理」などの回答があった。
・2013年黒田総裁になると、2%のインフレ目標を設定し、「量的・質的緩和政策」(異次元緩和)を始める。マネタリーベースは2012年末138兆円が、2016年11月420兆円まで膨張している。岩田規久男が『リフレが日本経済を復活させる』(2013年)で自説を展開している(※詳細省略)。
<4.TPPの行方>
○リカード・モデル
・国境を越えた取引が貿易だ。リカード(1772~1823年)が自由貿易の利点(比較優位の原則)を説いた(※詳細説明しているが省略)。
○TPPも成長戦略
・比較優位の原則に従えば、自国に比較優位な品目の生産に特化すれば豊かになる。リカードはこの生産性を労働生産性に求めた。さらに生産性を生産要素(土地、資本など)に拡大したのが、「ヘクシャー・オリーンの定理」だ。
・日本の輸出1位は機械・輸送用機器(60%)で、輸入1位は鉱物性燃料(34%)だ。日本は工業製品が比較優位で、農産物が弱い。そのため経産省は「環太平洋パートナーシップ協定」(TPP)を推進し、農水省は抵抗する。安倍政権は成長戦略としてTPPを推進している。
○貿易協定の歴史
・リカードの理論に従えば自由貿易は双方の利益になるが、大恐慌時は保護貿易になった。1948年「関税及び貿易に関する一般協定」(GATT)が生まれ、1995年「世界貿易機関」(WTO)がこれを引き継ぐ。しかしここでの合意は難しく、「自由貿易協定」(FTA)/「経済連携協定」(EPA)に動いている。FTAは貿易障壁の撤廃を目的とする。EPAはそれに、投資規制の撤廃や人的交流の拡大を加える。TPPはEPAに該当する。
<5.イノベーション>
○イノベーションの定義
・アベノミクスの第3の矢は成長戦略で、規制緩和や減税だ。これまでにも同様の政策を試みてきたが、成果を上げていない。それは起業家が起こすイノベーションと関係する(※イノベーションは起業家でなくても起こせると思うが)。資本主義の原動力をイノベーションとしたのがシュンペーター(1883~1950年)だ。彼は『経済発展の理論』で次の5つをイノベーションとした。①新しい商品・サービス、②新しい生産方法、③新しい市場、④新しい原材料の供給源、⑤新しい組織。
○起業のしやすさ
・彼は「イノベーションは非連続な変化で、従来の方法からは起こらない」とした。実際、移動手段は馬車-鉄道-自動車-飛行機と移り変わり、連続性はない(馬車を幾ら並べても、汽車にならない)。イノベーションに必要なのは起業家の育成で、教育でもある。これに重要なのが環境だ。ところが日本は「ビジネスを展開しやすい国」で34位、「企業のしやすさ」で89位と低い。
○次世代のイノベーション
・2014年水野和夫『資本主義の終焉と歴史の危機』がベストセラーになる。そこでの最大のキーワードが利子率革命だった。この利子とは投資に対するリターンで、リターン>金利であれば資本家は投資する。利子率(※これは金利かな)が0%でも促進されないので、資本主義は終焉するとした。逆にロバート・ゴーンは「多くの分野でイノベーションが育っており、これからも成長する」とした(※イノベーションは常時起こっているかな)。具体例として、3Dプリンター/AI/自動運転/ビッグデータ/IOT/シェアリングエコノミーなどを挙げた。シェアリングエコノミーにはエアビーアンドビー(空き部屋の利用)/ラクスル(他社印刷工場の利用)があり、旧い経済が新しい経済に置き換わっている。
<6.トマ・ピケティ『21世紀の資本』>
○なぜ『21世紀の資本』が売れたか
・2013年『21世紀の資本』が世界的に売れる。200年以上に亘る租税資料を基に書き上げ、700ページに及ぶ。資本主義は所得分配の格差を拡大させるとした。(※著者の経歴は省略)。2011年ウォール街占拠事件が起き、大衆は「我々は99%だ」と叫んだ。これに応え売れたのが当書だ。
○R>Gが原因
・彼は格差拡大の原因を「R(資本収益率)>G(経済成長率)」とした。Rは株・不動産などの資本による収益率、Gは経済成長率(国民所得の伸び)だ。サイモン・クズネッツが1913~48年の所得格差の推移を研究し、「格差は縮まっている」とした(トリクルダウン理論)。ところがピケティが調査範囲を200年間に広げ、この期間が例外だった事を示した(※戦争は格差を縮小させる)。
○富裕層に累進課税、教育に投資へ
・『21世紀の資本』はマルクス『資本論』を連想させる。共に資本主義の問題を炙り出す。マルクスは資本主義は崩壊し、社会主義に移行するとした。ソ連の崩壊で予言は外れたが、2008年リーマン・ショックで見直す動きもある。
・ピケティは米国の主流派経済学の中にいたが、パリに戻る。それは格差の歴史的研究に専念したかったからだ。彼は「今の経済学者は複雑な経済理論を作っているが、社会の役に立っていない」と批判している。経済の語源は「経世済民」だ(※これは東洋の理論だが)。彼は格差是正のため「富裕層の資産に累進課税し、教育への投資を増やすべき」とした。
<7.下流老人>
○ジニ係数の上昇
・「ワーキングプア」の言葉が広まったが、2015年は「下流老人」の言葉が出てきた。これは年金受給額が生活保護水準を下回る人を指す。1970年代は「1億総中流」の言葉があったのに、今はワーキングプア/下流老人だ。格差を計る指標に「ジニ係数」がある。完全に平等だと0で、完全に不平等だと1になる。日本は1985年0.304、2011年0.34と悪化している。OECDの調査で日本は10番目に高い(※加盟国38ヵ国中かな)。
※各国のジニ係数の図表あり。
○絶対的貧困、相対的貧困
・日本の貧困を見る。「絶対的貧困」は、これ以下の所得では生活できない家計で、日本では150万円とかになる。「相対的貧困」は可処分所得が平均の半分以下の人を指す。厚労省のデータでは112万円で、16%の世帯が該当する(※6世帯に1世帯だな)。1980年代は11%だった。先進国では米国に次いで悪い(※GDPが大きい国ほど格差が激しそう)。
○なぜ格差が広がったか
・格差が広がった理由として、長引く不景気とデフレ経済がある。これにより企業は労働コストを抑えた。さらに小泉政権の新自由主義政策で非正規雇用が増えた。正規労働者/非正規労働者の人数は1995年3800万人/1千万人から、2005年3400万人/1600万人になった(※たった10年で非正規労働者が全体の1/5から1/3に増えた)。非正規労働者の賃金は正規労働者の6~7割で、社会保険に入らない人もいて、企業は負担を減らせる。解雇も簡単にできる。
<8.主流派は時代で変わる>
○新古典派総合
・ポール・サミュエルソンはケネディ/ジョンソン時代(※1961~69年)の経済顧問になる。著書『経済学』は41ヵ国で翻訳され、ベストセラーになった。彼が唱えたのが「新古典派総合」で、新古典派経済学とケインズ経済学の折衷案だ。新古典派経済学はアダム・スミスから限界革命を経て、脈々と続いたミクロ経済学だ。ケインズ経済学は資本主義の欠点を政府の介入で補うマクロ経済学だ。
※経済思想の流れの図表あり。
○ケインズ主義から新古典派へ
・ケネディ/ジョンソン時代、新古典派総合は「ニュー・エコノミクス」として花開く。しかし1960年代後半になるとインフレ率が上昇が、状況が悪化する。反ケインズ主義のミルトン・フリードマン(シカゴ学派のマネタリスト)らが反撃に出る。彼らはインフレの対処法はマネーサプライのコントロール(K%ルール)によるとし、ケイジアンの総需要管理政策を否定した。これは政府の干渉を極力排する思想で、レッセ・フェール(自由放任)だ。この「マネタリズム」は後のレーガン政権(※1981~89年)にも影響を与える。※ケインズ経済学/ケインズ主義/ケイジアンは同義かな。
○保守派VSリベラル派
・1985年サミュエルソンは『経済学』(第12版)で新古典派総合を主流派と言い換え、主流派とマネタリズムの対立点を解説する。主流派はサプライサイド・エコノミクス/合理的期待形成仮説(ロバート・ルーカス)の登場により、古典派経済学に回帰する。ルーカスによりミクロ的基礎を重視したマクロ経済学が確立する。
・レッセ・フェールを信奉する政治経済思想が保守派(より自由度が高いとリバタリアン)で、政府による弱者救済を支持する側がリベラル派だ。米国はこれが対立軸になっている。日本の若者は「勝者は優遇される」(新自由主義)だが、社会の役に立ちたい(リベラル)と考えている。
<9.『エウレカの確率』と行動経済学>
○経済心理学から行動経済学へ
・警察小説『エウレカの確率』がうけている。これは経済学者が事件解決に加わる小説だ。これに行動経済学(経済心理学)が利用される。「エウレカ」はアルキメデスが浮力を発見した時に発した言葉だ。行動経済学では、これを「ヒューリスティック」と言い、精度は100%ではないが、ある程度の正解を導ける方法論だ(※経験則かな)。
○種々のヒューリスティック
・ヒューリスティックには、①代表性ヒューリスティック、②想起しやすさヒューリスティック、③係留ヒューリスティックがある。①は判断する際、どれだけ典型的かを基準にする(※長嶋選手で解説)。②は判断する際、類例に過度に依存する(※交通手段とバイアスを解説)。③は判断する際、特定の数字・情報に過度に依存する(※くじで解説)。
○アンカリング効果
・③で、くじで引いた数字に影響される例を解説したが、これを「アンカリング」と言う。『エウレカの確率』で「通常価格8万円の商品を2万円で」との会話がある。この場合8万円がアンカーで、実際は商品に2万円の価値があるかだ(※これでアポなし訪問した理由を説明している)。経済学は人を合理的とするが、実際はそうでなく、行動経済学は実践的だ。
<10.ノーベル経済学賞>
○経済学賞だけ日本人が受賞してない
・2016年清滝信宏は「ノーベル経済学賞」の受賞を逃した。経済学賞だけ日本人がいない。この理由に、①日本はマルクス経済学の影響が強く、主流派で遅れている、②言語のハンディがある。2000年雨宮健、2008年藤田昌久、2009年青木昌彦が候補になるが、何れも外国で活動している。
※ノーベル経済学賞の受賞者の図表あり。
○米国の一人勝ち
・1969年第1回ノーベル経済学賞は北欧の2人が受賞し、第2回は米国のポール・サミュエルソンが受賞した(※他に10名を挙げているが省略)。2011年までを見ると、70名中46名が米国人だ。これは戦後経済学の覇権が欧州から米国に移ったからだ。依田高典は「1980年代までは英雄経済学者が受賞していたが、以降は分野(金融工学、ゲーム理論など)に与える賞になった」とした。
第3章 政治の常識
<1.戦後の日本政治>
○ずっと自民党?
・2016年7月参院選で自民・公明の連立与党は衆参両院で議席が2/3を超え、憲法改正の発議が可能になった。この自民党が強い「一強多弱」は稀である。
○55年体制の終焉
・1955年秋の総選挙で、自由民主党(自民党)と日本社会党(社会党)が統一される。これにより二大政党制になり、この保守政党と革新政党が議席の8割を占める様になる。他に1960年に社会党から分離した民主社会党(民社党)、1961年に発足した公明党、戦前から存在した日本共産党があった。
・自民党政権が続くが、1993年7月第40回総選挙でミニ政党が乱立する(※翌年選挙制度が改正され、これが中選挙区制の最後の選挙)。自民党は下野し、8政党(日本新党など)による細川連立内閣が成立する。
○新党ブームと野党の迷走
・「新党ブーム」も長く続かなかった。細川内閣は8ヵ月で退陣し、次の羽田連立内閣も2ヵ月で退陣する。1994年6月に発足した村山内閣は、自民党・社会党・新党さきがけの連立となった。社会党の退潮は著しくなる。同年12月日本新党・民社党・新生党など6党が合併し、新進党が発足するが、1997年6党に分裂する。
・1996年9月民主党が結成される。2009年8月第45回総選挙で民主党は地滑り的に勝利し、国民新党・社民党との連立内閣を発足させる。しかし2012年12月第46回総選挙で大敗し、自民・公明の連立内閣となる。二大政党制の道は遠い。
<2.国政選挙>
○現行の選挙制度
・1950年に公職選挙法が施行され、その後数度改正されている。今の衆議院議員選挙は「小選挙区比例代表並立制」だ。全ての議員が改選されるため、総選挙と呼ばれる。任期は4年だが、任期満了になったのは第34回総選挙(1976年)だけだ。参議院議員選挙は任期6年で、3年毎に半分が改選される。
○中選挙区制と小選挙区制
・第40回総選挙(1993年)までは中選挙区制で、以降は小選挙区比例代表並立制だ。中選挙区制では複数人が当選する(※群馬県の上州戦争を紹介しているが省略)。そのため自党にもライバルがおり、派閥の力学が働いた。小選挙区制になると「死票」が増える。同時に「地滑り的勝利・敗北」が起きる。2009年第45回総選挙で、自民党は300→119議席、民主党は115→308議席となった。逆にその3年後の第46回総選挙は、自民党は118→294議席、民主党は230→57議席となった。
○参議院は全国区制から比例代表制
・参議院議員選挙は、かつては「全国区」と都道府県毎の「地方区」だった。そのため全国区は知名度のあるタレントや大組織の候補が当選していた。1982年公職選挙法が改正され、翌年第13回参議院議員選挙で全国区が「拘束名簿式比例代表制」になり、政党に投票する様になる。さらに2001年第19回参議院議員選挙で「拘束名簿式比例代表制」になり、政党名でも候補者名でも投票できる様になる。
<3.国会議員の歳費>
○東日本大震災による減額
・東日本大震災により、2012年5月国会議員の月額歳費が12.88%削減され、さらに12月20%削減されるが、2014年元に戻る。歳費は国会議員の給与で、2005年の法改正で130.1万円になっている。他に期末手当(ボーナス)が600万円超、文書通信交通滞在費が毎月100万円支払われる(※合計すると年4千万円を超え、凡人10人分位だな。他に新幹線は乗り放題だったかな)。役員・委員長には6千円/日などが支払われる。
※歳費と政党交付金の図表あり。
○三権分立と議員
・首相・大臣の給与は201万円で、20%の地域手当が加算され、年間約4千万円になる。また公設秘書は国が負担する。衆議院議員は475人、参議院議員は242人いる。
・立法権・行政権・司法権は相互に抑制されるが、これが成立しているのか(三権分立)。法律は国会で審議されるが、法案の多くは行政(首相)が提出する。首相は与党から選出されるので、立法と行政が明確に分離していると言えない。司法のトップの最高裁判所の長官は内閣が指名し、判事14人は内閣が任命する。
○議員数と委員会
・結局、三権は国会議員の影響を大きく受け、「一票の格差」は大きな問題だ。もっとも国会は委員会主導のため、法案は委員会で審議され、国会で採決される。委員会は17あり、延べ640人が所属する。例えば第192回国会(※臨時国会、2016年9月26日~12月17日)では100を超える法案が審議されたが、委員会が開催されない/審議時間が短いなどの問題があった。国会が最高意思決定機関のため、議員数や歳費の適正化がおざなりにされている。
<4.知事と議会>
○知事と地方議員の給与
・東京都は予算規模が13兆円で、スウェーデン/インドネシアに匹敵する。舛添要一が都知事を辞職し、小池百合子が新都知事になった。この時問題になったのが、①首長と議会の対立、②議会での首長支持派と反対派の対立、③政党と首長と議員の対立だ(※政党とは都道府県連?政党本部?)。これらの対立に職員も絡む。この構図は東京都に限らない。※今兵庫県でも起きている。
※国と地方の関係の図表あり。
○地方自治の仕組み
・地方政治は「二元代表制」で首長も議員も選挙で選ばれる。行政の在り方を議会がチェックする。首長と議会が対立すると、首長は孤立する。対立が続くと行政がストップする。首長・議員は選挙で代わるが、職員は長年勤務し、実務パワーを有す。これをコントロールするのが首長の人事権だ。
○地方制度と国の関係
・緊急事態だと首長の専決処分が認められる。首長に対し不信任決議されると、議会を解散できる。しかし不信任案が出されないと、解散はできない。
・地方の役割は「地方自治法」で規定されている。国と地方の役割の切り分けは課題だ。2000年「地方分権一括法」が施行され、地方で「法定受託事務」と「自治事務」を行う事になった。1996年地方分権改革が始まる(※時が戻った)。2009年民主党政権が内閣府に「地域主権戦略会議」を設置する。2012年安倍内閣は、地方創生の推進/国家戦略特区/まち・ひと・しごと創生本部の設立など、地方分権から経済活性化が主になった。オリンピック招致など、政府との関係も深くなっている(※少し説明が欲しい。大阪万博もかな)。同時に地方議員の能力も問題になっている。
<5.議員の世襲と政党公募制>
○世襲の構造
・現行憲法で就任した首相31人中9人が世襲議員で、1991年(宮澤内閣)以降では、14人中9人が世襲だ(※宮澤以前は0人)。地方でも世襲は多くいる。上杉隆は『世襲議員のからくり』で「世襲は日本独特」とし、その理由を、①政治資金管理団体を非課税で相続できる、②後援会が世襲を望む、③政治論争より看板(名前)としている。選挙で重要なのが、地盤(後援会)/カバン(資金)/看板(知名度)だ。
※歴代首相の親の職業と政治団体の図表あり。
○地盤・カバンはプロ政治家の財産
・NHK「データなび」が戦後の衆参議員1.8万人のデータを分析した。戦後直後世襲議員は5%だったが、2014年は23%に増える(※党で大分異なるかな)。地方で資金を得るのは難しいが、中央で大臣などになると資金は積み上がる。看板(名前)も太郎・二郎など書きやすい方が有利だ。政治家も築き上げた地盤・看板を他人に渡す事はできない(※看板ではなくカバンでは)。
○政治が変わる時
・御厨貴は「21世紀に入り、政治は大きく変わった」とした。安倍内閣になり大統領制に似た意思決定システムになった。また政党助成金により派閥は無力になった。また国民がSNSで意見を言う時代になった。「保育園落ちた日本死ね」は2016年新語・流行語大賞に入り、政治を動かした。
・英国では世襲は評価されず、政治的な主張・活動・討論で選別される。日本でもそんな時代になるかもしれない。東京都知事・小池百合子は「希望の塾」を立ち上げ、大阪維新の会は「維新政治塾」を立ち上げた。他に「TOKYO自民党政治塾」「小沢一郎政治塾」「松下政経塾」などがある(※詳しくないが松下政経塾出身の政治家は多くいるのでは)。
<6.政党と圧力団体>
○政治献金は企業の社会貢献?
・2016年「日本経済団体連合会」(経団連)は『政治との連携強化に関する見解』を表明する。これに「民主政治を維持するためには相応のコストが不可欠で、企業の政治寄付は社会貢献の一環である」「日本再興のための政策を進める政党への政治寄付を呼び掛ける」とある。これは第2次安倍政権時、3年連続で表明された。また経団連は『GDP100兆円経済の実現に向けて』との2016年事業方針を打ち出し、「主要政党の政策評価」も公表する。この様に利益を同じくする者の団体があり、政治に働き掛けている。こうした団体は利益団体・圧力団体と呼ばれる。※政治団体/政治連盟などもあるが、よく理解していない。
※利益団体・圧力団体とサードセクターの図表あり。
○族議員と政党と政府
・2016年農協はJA全中会長の談話を公表し、政府・与党に「TPPに対し不安が根強くあり、2015年閣議決定された『食料・農業・農村基本計画』の実現に尽力して欲しい」と主張する。農業の生産性向上/農家の所得向上/自由貿易に耐えられる農業などが求められる。与党は農協改革を求めるが、農協自体も圧力団体だ。自民党内の農林系議員(族議員)が政党に働き掛け、自民党案が修正される。この修正案を政府が認めれば、農協のパワーが働いた事になる。
・政策は経団連/農協などの大きなパワーに左右される。政府が利益団体と利害調整し、政策を決定する方式を「ネオ・コーポラティズム」と言う(※この言葉は知らなかった)。
○注目されるサードセクター
・政策は官僚・政治家・議会が決めるが、政策を実行する人(利害関係者)の意欲も重要になる。力を持つ団体は自ら調査し、政策を立案し、議員に働き掛ける(ロビー活動、ロビイング)。しかし利益団体・圧力団体は政治活動をしないし、政策の成功・失敗に責任を持たない。
・近年「サードセクター」が注目される(※これも初耳)。これは官民が出資して運営する第3セクターと無関係で、政府行政セクター(※第1セクター)/営利企業セクター(※第2セクター)と並ぶ市民社会だ(※非営利団体かな)。これにNPO/NGO/福祉団体/自治会などが含まれる。これは「地域おこし」などで政策立案の主役になる可能性がある。
<7.米国大統領選挙は特別?>
○社会主義、反グローバリズム
・2016年米国の大統領選で共和党のトランプが当選する。さらに驚いたのが民主党のバーニー・サンダースだ。彼は社会主義者で、歴史上初めて大統領候補者になった(※予備選でヒラリーに敗れたが)。二大政党は英国などでも見られる。ただ米国民は多様で、経済格差があり、少数政党が政治力を持つ可能性がある(※共和党はトランプに乗っ取られた)。保守的な人でさえ内向きになり、パクス・アメリカーナが転換しつつある(※2024年大統領選でトランプが再選)。
○大統領選の仕組み
・米国大統領は任期4年/最長2期のため、定期的に交代する。そして各党の候補者を選ぶ予備選があり、2年に及ぶ長期戦になる。予備選は代議員の争奪戦で、代議員は民主党4800人/共和党2500人いる。本選は538人の選挙人を選ぶ選挙で、その選挙人が12月に投票し、翌年1月連邦議会で開票され、大統領が決まる。
・この選挙方法は憲法で規定されている。大統領候補者は全国を回る必要がある(※激戦州を除いて、ほぼ決まっているのでは)。草の根運動も必要なので民主的で、多くの人が関心を持つ。その代わり費用は莫大になり、2016年大統領選は66億ドル(6900億円)を要した。
第4章 法律の常識
<1.ガバナンスとコンプライアンス>
○ステークホルダーに配慮した経営
・旧商法をベースに「会社法」が作られ10年になる。会社法に、設立・株式・機関(組織)・計算(会計)・清算などのルールが規定されている。会社運営ではコーポレート・ガバナンス/コンプライアンスが重要になる。これは不祥事の防止だけでなく、ステークホルダー(株主、顧客、取引先、消費者、地域住民、従業員など)に配慮した経営のためだ。機関設計も重要だが、本項では経営陣の姿勢について述べる。
○善管注意義務、忠実義務
・「取締役」は会社に雇用されている者と異なり、経営を委任されている者だ。そのため民法644条の「善良な管理者の注意をもって事務を処理する義務」(善管注意義務)を負う。そのため取締役は従業員と異なる専門家としての能力や通常期待される注意義務が求められる。そのため履行遅滞・不完全履行・履行不能に至れば、損害賠償・契約解除となる。
・会社法355条で「忠実義務」が定められている。取締役は会社に有利になる様、忠実に職務を遂行しなければならない。この義務を具体化すると、利益相反取引回避義務・競業避止義務・他の取締役の監視義務・秘密保持義務などだ。大半の企業で出世のゴールは取締役だが、部長・本部長から取締役になる事は、雇用から委任への身分の変更であり、重い責任を負う。
○自らを厳しく律する
・利益相反取引とは会社と取締役の利益が対立する取引の事で、会社の財産を譲り受ける、自分の財産を会社に譲り渡す、会社から金銭の貸付を受けるなどだ。競業とは会社と同じ事業を営む事で、この場合株主総会で承認される必要がある(会社法356条。※社外取締役はどうなのか)。また取締役は他の取締役の業務執行を監視しなければならない。利益相反取引が行われていないか、法令違反が行われていないかなどをチェックする。
・これらの義務の前提に遵法義務(会社法355条)があり、コンプライアンスなしで経営できない。経営者は私利私欲を捨て、経営をチェックしなければならない。今は「企業の社会的責任」(CSR)が求められている。
<2.部課長の常識>
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○労働時間、休日・休暇
・部課長に求められる知識に「労働法」がある(※労働法には、労働基準法/労働組合法/労働関係調整法/労働契約法がある)。労働基準法に労働時間/休日・休暇の規定があり、把握しておく必要がある。※その規定を簡単に説明しているが省略。
○ブラック企業
・政府が「働き方改革」を進めているが、過重労働/パワハラを起こす「ブラック企業」が存在する。政府は「働き方改革」を、「一億総活躍社会への挑戦。多様な働き方を可能にし、中間層を厚くし、成長と分配の好循環を実現し、働く人の視点で取り組む」としている。長時間労働の是正、生産性の向上、ワーク・ライフ・バランスの実現が目的だ。
・時間外労働協定(36協定)を結んでも、時間外労働は1ヵ月45時間/年間360時間と定められている。これを超えるとペナルティを受けるし、従業員にも良くない。現場の管理者は規制を遵守し、業績を上げる必要がある。これが「ホワイト企業」への道だ。
○ダイバーシティ
・近年は雇用形態が多様化し、正社員/契約社員/派遣社員/パートタイマー/アルバイトなどが同じ職場で働いている。男女雇用機会均等法(1986年)などにより、性別による差別が許されなくなった。現場の管理者(部課長)はこの多様性を理解し、労務管理する必要がある。また産前産後休業/育児休業/介護休業などの制度も整備された。
<3.知財の保護>
○自由な競争と権利の保護
・「知的財産」(知財)が重視され様になった。グローバル競争の時代になり、企業は攻めと守りの両面での対応が必要になり、国も知財を強化している(※国の強化とは何。以下にある法律・制度かな)。21世紀になり米独との差が広がっている(※今は中国にも越されたかな)。2016年世界経済フォーラム(WEF)は日本の国際競争力を6位から8位に下げた。IT/ゲノム/医薬品などで競争力を高めるには、高度な知財への対応が不可欠だ。
※知的財産権の図表あり。
○法律と制度で守れるか
・知財を守る法律には、特許権/実用新案権/育成者権/意匠権/著作権/商標権を守る法律と「知的財産基本法」がある(※育成者権は、2022年種苗法で認められたのか)。知的財産基本法は2003年に施行され、国際競争力の強化が目的だ。以前は特許庁/文化庁/経産省/農水省/法務省などが所轄していたが、この法律で首相官邸に「知的財産戦略本部」が置かれ、2005年「知的財産高等裁判所」(知財高裁)が設置される(※東京高裁の支部だな)。知的財産基本法は国際的な対応や人材育成にも触れている。日本は暗黙知が優れているが、これを知財にする対応が遅れている。
○問題が起きた際の対処
・知財で問題が起きると、2つのルートを辿る。特許庁の審決を不服とする場合は、一審として知財高裁で争う。それでも不服の場合は最高裁となる。地裁で起こされた特許権・実用新案権・著作権などの控訴審は知財高裁に集約される(※特許庁に訴える場合と地裁に訴える場合があるのかな)。知財高裁には非常勤の専門委員がおり、詳細な審理が可能だ。
・EUは加盟国の特許裁判を集約するため、「統一特許裁判所」を設置した。国連の機関に「世界知的所有権機関」(WIPO)があり、産業財産権(特許、商標など)・著作権などの知財を管轄している。
<4.談合、下請いじめ>
○談合
・談合事件は後を絶たない。公務員と業者による官製談合も多く、疑惑で終わるケースも多い。違反すると「公正取引委員会」から排除措置命令/課徴金/刑事罰などを受ける。2005年「独占禁止法」(独禁法)が改正され、課徴金減免制度が生まれる(※詳細説明しているが省略)。
○公正な競争
・競争が激しくなると、企業の利益が圧迫される。それを避けるため企業同士が密約するのが「カルテル」だ。入札時にあらかじめ入札金額を決めるのが談合だ。入札には一般入札と指名競争入札がある。これらにより消費者が高く買わされたり、税金がムダ遣いされたり、業界への新規参入が難しくなる。
○下請いじめ
・公正取引委員会は「下請いじめ」の摘発にも力を入れている。「下請代金支払遅延等防止法」(下請法)は親事業者の優先的地位の乱用を防ぎ、下請の利益の確保を目的とする。日本の大企業は請負業者を使ってコストを削減している。これにより請負業者が立ち行かなくなるケースがある。
・下請法は親事業者の義務と禁止事項を規定している。2015年は下請法違反が6千件を超えた。仕事を出す見返りに自社商品の購入を迫ったり、協賛金を出させたりする行為は独禁法で禁止されている(※下請法ではないのか)。商品が売れないため納品を拒否したり、支払いを遅らせたり、減額するのも違反になる。完成品を見て、何度も変更を要求するのは慎むべきだ。請負業者には瑕疵担保責任があるが、それは瑕疵があった時の話だ。
<5.製造物責任法>
○損害賠償
・製品が使えなくなったり、壊れる場合や、製品の欠陥で火災になったり、傷害を負う場合がある。前者の場合、民法の瑕疵担保責任/債務不履行により損害賠償を求められる。後者の場合、製品の欠陥の有無が問われる。「製造物責任法」(PL法)では被害者が製品の欠陥を証明しなければいけない(※欠陥の証明が必要だったかな)。この責任の所在は、製造業者・輸入業者などで、販売した人ではない(※欠陥を知って販売するとどうなるのか)。
○消費者を守る
・消費者を守るには、製品により被害を受けた事を証明すれば良い。それには使用期間/使用状況を明らかにして、欠陥を推定できれば良い(※先程は欠陥の証明が必要としていたが)。裁判は時間・費用が掛かるので、裁判所以外での紛争処理が可能になっている。各製造業者の業界に「PLセンター」が設置され、紛争の調整・斡旋・相談を行っている。
・一般消費者団体連絡会は製品安全専門委員会(PLオンブズ会議)を設置し、PL法に関わる提言をしている。被害者の立証負担の軽減/訴訟の長期化などについて消費者庁に要望を出している(※詳細省略)。
○国際化する企業責任
・米国では大型訴訟が起きている。米国で難しいのは、法律が州で異なり、裁判が判例主義でない点だ。自由貿易により輸出する企業が多いが、相手国の状況を知っておく必要がある。「中小企業PL保険制度」があるが支払限度がある(※詳細省略)。商工会議所/保険会社が「海外PL保険」を扱っており、損害賠償金/弁護士費用/裁判費用が保険の対象になる(※様々なセーフティーネットがあるな)。
<6.個人・消費者・企業を巡る法律>
○マイナンバーの用途
・「マイナンバー」の目的は、行政の効率化/利便性向上/公平・公正な社会だ。マイナンバーは通称「マイナンバー法」で規定されている。個人・法人にマイナンバーが付与され、個人情報は第19条で規定された用途以外で使用できない。例えば事業者はマイナンバーを税と社会保障の手続きに使用できるが、それ以外での利用・提供はできない。
※マイナンバーの利用範囲/罰則の図表あり。
○個人情報
・新経済連盟(※ネットビジネスの経済団体)はマイナンバーに大きな期待を寄せている。一方でマイナンバーを含む個人情報の扱いが重要になり、会社に専門部署を作ったり、代行業者に業務を任せている。2005年「個人情報保護法」が施行されたが、その後のネット社会の発展は著しい。日本ネットワークセキュリティ協会(JNSA)は2015年の個人情報漏洩を、件数800件/人数500万人/損害賠償額2500億円とした。
○プライバシーマーク
・個人情報の扱いでプライバシーマークが知られる。日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)によれば、1.5万社が取得している。更新が2年毎でハードルは高い。これはJIS Q15001:2006に準拠した個人情報マネージメントシステムを策定・運用する事で取得できる。ここで重要なのが個人情報の取得・利用方法だ。これを全て洗い出し、リスクに対する対策を策定する必要がある(※詳細省略)。
<7.会社の終わりと再生>
○法的整理、私的整理
・会社も永遠に続く訳ではなく、倒産する。その倒産の仕方も様々だ。倒産は「法的整理」「私的整理」に大別される。前者は裁判所の下で、法律に則り手続きされる。これは破産/特別清算/民事再生/会社更生の何れかになる。後者は債権者と債務者の話し合いで処理される(※当然債務者は会社かな)。取引金融機関が債権者の代表になる事が多い。
※法的整理の種類と倒産件数の図表あり。
○清算型と再建型
・法的整理は清算型と再建型に分かれる。清算型の場合、「破産法」による「破産手続き」か、「会社法」による「特別清算手続き」になる。破産手続きは、破産管財人が債務者の財産を調査し、債権者に分配する(※最近の船井電機の倒産は破産手続きだな)。特別清算手続きは清算において著しい支障がある場合に行われ、破産手続きの特別なケースだ(※具体例が欲しい)。
・再建型の場合、「民事再生法」による「民事再生手続き」か、「会社更生法」による「会社更生手続き」になる。民事再生手続きは、監督委員の下で債務者が再生計画案を策定し、債権者・裁判所が同意すれば、それに基づいて再生が行われる。会社更生手続きは、更生管財人が更生計画案を策定し、債権者・裁判所が同意すれば、それに基づいて再建が行われる。民事再生手続きは経営陣の刷新は必須ではないが、会社更生手続きは経営陣の交代が必須になる。
第5章 業界の常識
<1.ビッグデータ>
○価値を生む3つのV
・21世紀になり注目されるのが「ビッグデータ」だ。ネットショッピング/ウェブページ閲覧/SNSへの書き込みなどにより膨大なデータが生み出されている。この特徴は、データ量が多い(Volume)、様々な形式(Variety)、速く生まれる(Velocity)、価値(Value)だ(※4つになった)。最近のIoT(Internet of Things)/AI(人工知能)も根は同じだ(※何れもビッグデータの活用だな)。コンピュータ技術の進展により、これからはエビデンス(証拠)をどう活かすかの時代だ。
○なぜ「お勧め商品」が分かる
・データから規則性が分かれば、できなかった事ができる様になる。例えば製造プロセスの最適化/マーケティング/マッチング/意思決定の迅速化などだ。マーケティングでよく知られた例が、アマゾンの「お勧め商品」だ(※詳細省略)。外国企業はビッグデータの重要性を評価するが、日本は遅れている。
○見える化
・日本が遅れている理由は、イノベーションへの理解不足だ。日本企業はリターン(売上、利益)を求め、ビッグデータの価値を認めていない。ビッグデータを活用する事で、予測していなかった事が可能になる。イノベーションは予測不可能なのだ。
・もう1つの問題は、イノベーションを技術思考で考えている。それは現状の延長の「改良型」に過ぎない(※日本は「改善」が得意かな)。ビックデータから得られるのは「発見型」で、見えなかったものの「見える化」だ。データから規則性を見出し、そこからイノベーションを起こせる(データ駆動型イノベーション。※詳細省略)。
<2.エシカル消費>
○消費して社会に貢献
・若者は社会に貢献したがっており、「エシカル」に関心が高い。エシカルは倫理的/道徳的の意味だ。これはエコな製品や製造において待遇改善(フェアトレード)した製品などの購入で、「エシカル消費」とも言われる。
・アダム・スミス(※1723~90年)は『諸国民の富』(※『国富論』、1776年)の前に『道徳感情論』(※1759年)を書いている。彼は「見えざる手」の前に道徳(共感)を唱えた。エシカルはこれへの回帰で、日本では2009年頃から流行り始めた。
<3.ロボットの未来>
○ロボットの定義
・技術開発の進展で多様化した「ロボット」を一言で定義するのは難しい。そしてIoT(Internet of Things)/AI(人工知能)の技術開発が加速し、先進企業がロボット開発に鎬を削っている。
○産業用ロボットとサービス・ロボット
・「産業用ロボット」は1980年代から実用化され、物作りに貢献している。例えば自動車工場で部品の組み付け/溶接などを行っている。利用分野の1位は自動車・自動車部品、2位は電子電気機械、3位は化学・非金属だ。
・今後は「サービス・ロボット」の需要が拡大する。今の大半は清掃(家庭)と医療で、前者は掃除ロボット、後者は手術支援ロボットだ。他にグーグルの自動運転のロボットカー、アマゾンのドローンによる配達などがある。
○介護ロボットが救世主に
・少子高齢化により介護ロボットの需要が増大している。介護ロボットには、①移乗・入浴・排泄などの介護支援型、②歩行・リハビリ・食事などの介護自立型、③癒し・見守りなどをするコミュニケーション・見守り型がある。①にロボットスーツ/トランスファー・ロボットなどがある(※詳細省略)。
・人型ロボットにソフトバンクの感情認識ロボット「Pepper」がある。ハウステンボスの「変なホテル」では、受付/ポーターをロボットが行っている。
<4.体に良い食品>
○健康食品の規模
・食品製造品の出荷額は約30兆円で、小売は約45兆円だ。こうした中、「健康補助商品」「栄養補助商品」「栄養強化商品」「健康飲料」「サプリメント」などの健康食品が注目される。「特定保健用食品」(トクホ)だけでも6400億円の規模があり、年4%成長している。健康食品は、主に事業法、輸入・製造は健康増進法/食品衛生法、製造工程はJAS法、販売・宣伝は製品表示法/特定商取引法に従う。
○高まる健康志向
・消費者動向調査の「食の志向」のトップは「健康志向」(41.7%)だ。過去5年連続トップで、「経済性」を上回る(※私は警戒派で、新しい食品は余り信頼しない)。
・「健康表示食品」に対し、4割以上が好意を持っている。これに特定保健用食品(トクホ)/栄養機能商品/特別用途商品がある。トクホには生理学的機能に影響する成分が含まれ、血圧・コレステロールに影響したり、整腸作用がある。栄養機能商品はビタミン/ミネラルが補給できる。特別用途商品には、病者用/妊産婦用/授乳婦用/乳児用/嚥下困難者用などがある。これらは健康増進法に基づくが、消費者庁は審査していない。
○体に良い食品は伸びる
・健康志向でブームになった食品は多い。最近だけでも、老化防止アーモンド/免疫力を高めるヨーグルト/中性脂肪を減らすトマトジュース/整腸作用のあるココア(※以下省略)などがある。健康食品・サプリメント市場は1.6兆円で、前年から2.9%伸びた。
・健康志向のメニューを提供する外食産業もある。タニタ食堂が丸の内に店を出した。ガストは糖質ゼロの麺、プロントは善玉菌を増やすパスタ、モスバーガーは低カロリーのマヨネーズなどを提供している。また訪日外国人が日本の健康食品・サプリメントを購入している。
<5.仮想通貨>
○仮想通貨を通貨として認める
・「仮想通貨」は決済手段としての側面と投資商品としての側面を持つ。決済手段としては為替の影響を受けず、低コストで決済できる。投資商品としては価格の変化でキャピタルゲインを得られる。一般的であり、少ない金額で購入できる(※仮想通貨を推奨するトランプの当選により、ビットコインが高騰している)。金融審議会が議論を重ね、「発行体が存在しない」「担保がない」などの疑問点があるが、「世界共通の暗号化された通貨」のようだとした。2016年資金決済法が改正され、仮想通貨を現金と交換する業者を登録制にする。
※主な仮想通貨/仮想通貨交換業などを説明する図表あり。
○1.5兆円規模
・仮想通貨は取引所で購入した時点で現金が仮想通貨になる。購入者を保護する方法はあるのか。ビットコインを扱っている企業は世界に10万社で、1日で5億ドル取引される。およそ100ある仮想通貨の時価総額は1兆円を超える。
・第15回先進国首脳会議(1989年。※G7サミットだな)により大蔵省に金融活動作業部会(FATF)が設置される。この政府間機関で、仮想通貨の無記名性やマネーロンダリングが懸念され、取引所の規制強化が確認された(※そんなに古くからの問題なんだ)。2014年ビットコインでマウントゴックス事件が起き、2.7兆円の資産が失われた(※最近でも仮想通貨の消失事件は多い)。
○銀行は仮想通貨に期待
・仮想通貨は怪しさがあり、金融庁は慎重に監視している。しかし安く海外に送金できるメリットがある。コインベースはビットコインのブローカーで、33ヵ国に430万人の利用者を持ち、1%の手数料を得ている。2016年同社は三菱東京UFJ銀行と提携し、出資を受ける。ビットコインは無記名で手数料が安く、人気が高い。銀行としても海外送金でメリットがある。現在は電信送金/送金小切手の古典的方法しかない(※SWIFT経由かな)。
<6.フィンテック>
○一般顧客向けサービスの充実
・「フィンテック」(FinTech)は金融(Finance)と技術(Technology)の造語だ(※近年「~テック」が無数に出現している)。低金利は銀行・証券・保険に死活問題で、リテール向けのサービスが重要になる。金融機関はIT開発力を持たないが、先の仮想通貨の様にIT会社への投資を続けてきた。金融機関は差別化が難しく、新技術の取り組みに積極的だ。
※ブロックチェーンの仕組み/フィンテックの応用範囲の図表あり。
○ブロックチェーン
・仮想通貨は分散型で、「ブロックチェーン」技術を使う。複数の取引をワンセットで書き込むので、改竄ができない。伝統的な金融取引ではできなかった事が、ITで可能になった。ITにより、安全性・低コスト・利便性・即時性が高められた。これは複数のサーバーが連携する「クラウド」を利用しており、低コストで運用される。
○フィンテックが金融を変える
・2016年カブドットコム証券/MUFGイノベーションラボ(※MUFJでは)/ZEROBILLBANKがブロックチェーンを利用し、東京都大手町で企業コイン「OOIRI」を始める。LINEは相手の口座番号を知らなくても送金できる「LINE Pay」を始める(※詳細省略)。クレジットカード/デビットカードでできない事がスマホのアプリで無料でできる。資産管理もクラウド・サービスで可能になり、アドバイスも少額で受けれる様になった。マネックス証券はロボ・アドバイザーを提供している。
<7.VR>
○ARとVRが席捲
・2016年7月「ポケモンGO」がリリースされ世界的にヒットし、1ヵ月で5つのギネス記録を作った。これは現実に架空のキャラクターを出現させるAR技術(Augmented Reality、拡張現実)を使っている。同年10月ソニーの「PlayStation VR」が発売され、注目される。こちらはヘッドセットでVR(Virtual Reality、仮想現実)を提供する。
※VRとARを比較する図表あり。
○幅広い分野での応用
・AR/VRは異なる技術でゲーム以外では、観光・地域振興/物作り/教育/防災などで利用されるだろう。1つの要素が高解像だ。ディスプレイに高い解像度や高い処理能力が求められる(※詳細省略)。「ポケモンGO」の大ヒットはスマホの性能向上による。※防災/観光での利用を紹介しているが省略。
○継続的な運営力とコンテンツ開発
・AR/VRへの投資は活発化している。今の市場規模は50億ドルだが、2020年には30倍(1500億ドル)になると考えられる。この分野でのハードウェア開発/ソフトウェア開発への投資と需要が見込める。問題になるのがコンテンツ開発力の維持だ。また利用者の対応力(アプリをダウンロードしない)も問題だ(※「ポケモンGO」はダウンロードされたのでは)。
<8.IoT>
○物が繋がる
・もし冷蔵庫がインターネットに繋がっていれば、スマホが足りない物を教えてくれたり、レシピを作ってくれる。さらにこの情報がビッグデータとして集計されれば、スーパー/コンビニの品揃えに応用できる。IoT(Internet of Things)は物をインターネットに接続する事だ。2020年には500億個が接続される。これは半導体/通信装置の小型化による。
※IoT推進組織などの図表あり。
○第4次産業革命
・日本の「第4次産業革命」もドイツの「インダストリー4.0」もIoTによる変革を目指す。物がネットに繋がる事で、「サイバー・フィジカル・システム」が実現する。これにより高効率の社会が実現する(※初耳の気がする。ネットとリアルの融合かな)。「日本再興戦略2016」はGDP600兆円を目指す。ここで生産性革命を主導するのが、IoT/ビッグデータ/人工知能/ロボット・センサーによる第4次産業革命だ。
○情報から価値を創出
・21世紀は情報から価値を創出する時代だ。これまでの産業革命は資源から製品を作っていたが、情報から価値を創出する時代になる(※これは的を得ている気がする)。ソラコムはIoTプラットフォームを提供し、3千社以上が利用している。交通系では運行情報、大型店舗では客層分析、他に介護などで活用されている。ただし無線でのセキュリティ、IoTデバイスの寿命などの問題がある(※踏み台にされる問題があったかな)。
<9.物流>
○注文から1時間で配達
・アマゾンは注文から1時間で配達するサービスを始めた。帰宅して必要な物がないと気付き、注文すると深夜に届く。ただし地域は限定され、商品は日用品・食品の6.5万点に限られる。物流のIT化と配送要員の確保がこれを支えている。
※物流ABC/SCM/3PL/4PL/グリーン物流を説明する図表あり。
○仕入れから変革
・ヨドバシカメラは一等地に店舗を持つが、物流センターを強化し、ネット通販を最短で当日に配送できる。これは仕入れ・在庫・受発注・配送をITでトータルに管理しているからだ。
・品物にはリードタイムが必要になる。特に重要なのが仕入れ予測だが、今はこれが常識になっている。売れてから仕入れては遅い。かと言って過剰在庫は経営を圧迫するし、天気/季節変動などにも対応する必要がある。
○人手不足とラストワンマイル
・「下車勤」の言葉がある。これは駐車違反などの身代わり事件から知られる様になった。これは人手不足も要因だ。千葉市は国家戦略特区に指定され、ドローンによる宅配サービスの実験をやっている。東京メトロ/ヤマト運輸は地下鉄での宅配便輸送を実験している(※新幹線での物品輸送もあった)。国交省はフルトレーラ連結車・ダブルス連結車による幹線輸送を検討している。小口輸送では、受取人不在/再配送/駐車禁止などによるラストワンマイル問題がある。※東京大阪間の自動物流道の計画もある。
<10.サブスクリプション>
○見放題、読み放題、聴き放題
・2015年アマゾンが動画配信/電子書籍の読み放題/音楽の3つの「サブスクリプション」の提供を始めた。これらのサブスクリプション・サービスは定額制だ。
※各種定額サービスと販売のビジネスモデルを説明する図表あり。
○無料から有料へ(マネタイズ)
・ネット社会が高度化し、様々なサービス(Webビジネス、アプリ、コンテンツ)が無料で提供される(※広告によるかな)。これまでは読み物であれば購読料、ソフトウェアであれば購入してもらっていたが、それまでに時間が掛った。ところが今はまず無料でサービスを提供し、利用者を獲得し、それを担保にしてソフトウェアを開発している。利用者が増えるとバグの修正が早くなり、利用者の要望にも応じやすくなり、後発は追い付けなくなる(※ネット社会に最適なビジネスモデルだな)。
○取れる所から細かく取る
・基本部分は無料にし、広告収入で賄う形態も定着した。広告を止めたり、機能を追加すると課金する。どう「マネタイズ」するかがテーマになった。NTTドコモは雑誌が読み放題の「dマガジン」を提供し、2年で300万契約を突破した。(※Kindleの話は省略)。コンテンツが優れていても、マネタイズが良くないと、利益を得られない。この仕組みは、ソフトウェア/アプリ/電子書籍/音楽/映画/アニメなどがデジタル化された事による。
<11.iPS細胞と再生医療>
○再生医療のトップランナー
・2007年山中伸弥による「ヒト人口多能性幹細胞」(iPS細胞)で再生医療の道が開かれる。2012年彼はノーベル生理学・医学賞を受賞し、今は「京都大学iPS細胞研究所」の所長をしている。河本宏がiPS細胞を使って、がん細胞を攻撃する「キラーT細胞」を作った。
・2014年薬事法が改正され法律名も変わり、再生医療のための安全性配慮と実治験の短縮が追加される。同時に「再生医療等の安全性の確保等に関する法律」も制定される。2015年「日本医療研究開発機構」(AMED)も設置される(※これは研究開発・実用化に取り組む機関なのか、支援する機関なのか)。
※再生医療の実現化ハイウェイ構想の図表あり。
○不可能だった治療が可能に
・再生医療により治療が困難な疾患にも希望が持てる様になった。京都大学iPS細胞研究所では、糖尿病/パーキンソン病/心筋梗塞/網膜疾患の治療を目指している。「東京大学医科学研究所」では、iPS細胞等を用いた次世代遺伝子・細胞治療法を開発している。慶応大学医学部には、iPS細胞・ES細胞・体性幹細胞研究拠点がある。理化学研究所には、多細胞システム形成研究センターがある。
・再生医療には倫理の問題がある。それは胎児期でしか形成されない組織を回復させるからだ。再生医療の手法にはiPS細胞以外に、クローン/臓器培養/自己組織誘導(※再生機能の強化かな)/遺伝子操作がある。
○日本で1兆円市場に
・iPS細胞は本人の細胞で作るため拒否反応がなく、クローン/遺伝子操作で議論になった倫理的問題がない。再生医療の市場は、日本だけでも2020年950億円、2030年1兆円に達する。実用化の研究は海外でも加速している。実際、実用化されている製品のほとんどは米国製だ(77%)。日本は基礎研究には力を入れるが、実用化もリードし、再生医療のスタンダード(?)を構築すべきだ。
<12.エネルギー革命>
○原発と省エネ
・原発は日本だけでなく、世界でテーマになっている。東日本大震災で全ての原発が停止し、新規制基準適合性審査に適合した原発に限り再稼働が認められる。日本には59基あり、6基の廃炉が決まり、19基は審査を受けていない。一方で電力自由化が進められ、2016年から「インデペンデント・パワー・プロデューサー」(IPP)から一般家庭への供給が可能になった。※IPP(独立系発電事業者)もPPS(新電力)と同等になったのかな。
※エネルギー政策を解説する図表あり。
○優先順位は省エネから
・政府は「日本再興戦略2016」で、省エネの重視/新たなエネルギー・システムの構築/革新的エネルギーの研究/エネルギー安全保障(LNGの確保)を掲げた。
・2000年代後半からのシェールガス革命で原油価格は下がった(※シェールオイルも含めては)。LNGは産油国との交渉で価格が決まっていたが、LNG市場の構築が進められている。超々臨界圧火力発電(※高効率の石炭火力発電)への取り組み/再生可能エネルギーの導入/水素社会も推進されている。スマート・コミュニティ構想/ネガワット取引も注目される。新材料によるパワーエレクトロニクス/蓄電池/メタンハイドレートなども期待される。※何れも世界での話かな。
第6章 文化・教育の常識
<1.伝統芸能>
○補助金を打ち切り、寄付金のみに
・2012年橋下徹・大阪市長が伝統芸能への補助金の打ち切りを発言する。公営財団法人・文楽協会は前年度に5200万円の補助金を得ていたが、2160万円に減る。さらにこの制度は廃止され、今は「なにわの芸術応募募金」だけになった。これは「ふるさと納税」と同様の仕組みだ(※詳細省略)。
※日本の無形文化遺産の図表あり。先日「伝統的酒造り」が登録され23件になった。
○ユネスコ無形文化遺産でも
・独立行政法人・日本芸術文化振興会のHPに「能楽師が活躍し、全国・世界各国の公演で高い評価を受けている」(※簡略化)とある。能楽堂は全国に77ヵ所ある。一方落語の常設は5ヵ所しかない。2008年能・狂言/歌舞伎/文楽は「ユネスコ無形文化遺産」(※以下無形文化遺産)に登録される。しかし何れも厳しい状況にある。能は全国に協会の支部が7つあり、地域に根差した活動をし、一般人が習い事にしている。しかし多くの伝統芸能が後継者不足/観客不足に悩んでいる。
○孤立する芸能、高齢化する観客
・高齢化により観客は増えている。歌舞伎ではイヤホンガイド、液晶画面による字幕ガイド/英語字幕なども行っている。能はiPadで解説をしている。伝統芸能の課題に横の繋がりがあり、相互の交流がない。そのため市川海老蔵などが、1つの舞台で狂言・能・歌舞伎を公演した。
<2.美術による地方再生>
○美術を体験する
・新潟県に「越後妻有」と呼ぶ地域がある(※十日町市、津南町)。ここで3年毎に「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」が開かれる。2015年は51万人が訪れ、アーティストは350組となった。作品は点在するので、来訪者は地域を歩く事になり、経済効果は過去6回で500億円になる。単に鑑賞するだけなく、体験が得られる。
※「大地の芸術祭」や各地の芸術祭を紹介する図表あり。
○世界中からサポーターが来る
・VR/4Kテレビ/プロジェクションマッピングなどが話題になっている。2016年JR東日本は上越新幹線で現代美術を鑑賞できる「現美新幹線」の運行を始めた(※車内にアートを展示しているみたい)。青森県立美術館/十和田市現代美術館/水戸芸術館/ハラ・ミュージアム・アーク/金沢21世紀美術館/地中美術館/熊本市立現代美術館などの現代アートが話題になった。田舎館村/行田市の田んぼアートも有名だ。グローバリズムと同時にローカルへの関心も高まっている。
<3.オリンピックと文化>
※東京五輪は無観客となり、イベントなどは自粛されたと思う。
○カルチュラル・オリンピアード
・東京五輪(2020年)はロンドン五輪(2012年)を超えられるだろうか。オリンピック憲章に「オリンピックは文化・教育・スポーツを一体にして見出される喜び、教育的価値、普遍的・基本的・倫理的原則を尊重した生き方の創造」(※簡略化)とある。ロンドン大会では「カルチュラル・オリンピアード」と題し、17万を超えるイベントが開かれた。シェークスピアは各国の劇団により37言語で上演された。
○高まる期待感
・1964年東京大会では組織委員会が美術展を開き、芸能を上演した。2017年小池都知事は経費削減から「中身の充実」に切り替えた。2020年東京大会の経済波及効果を招致委委員は3兆円、日銀は実質GDP成長率を0.2~0.3%上昇とした。
・2016年10月「スポーツ・文化・ワールド・フォーラム」が開催された。これはラグビーワールドカップ2019/2020東京五輪/関西ワールドマスターズゲームズ2021などに向け、スポーツ・文化・ビジネスでの国際貢献や有形無形のレガシーについて議論・情報発信し、国際的な機運を高めるイベントだ。
○多彩な人材を巻き込む
・このイベントに宮本亜門(演出家)/蜷川実花(写真家、映画監督)/市川海老蔵/チームラボ(※デジタルコンテンツ制作会社)が参加した。チームラボはサイエンス/テクノロジー/アートを融合させたソリューションを提供している(※人の動きに背景が反応するアートなどかな)。これらの動きから、2020年は最先端テクノロジーを活用したアートになるだろう。
・2015年文化庁は「文化芸術の振興に関する基本方針」を打ち出し、閣議決定される。それにアーティスト・イン・レジデンス/若手芸術家の育成/「日本遺産」の創設(※点在する文化財をパッケージ化し、地域を活性化させる)/芸術作品のデジタルアーカイブ化(※非代替性トークン(NFT)を利用するのかな)などの戦略が掲げられている。そして国・都/企業(メセナ)/ボランティアなどを巻き込んだ文化活動が期待される。
<4.江戸の芸術>
○ゴッホも浮世絵に魅了された
・1998年米国雑誌『LIFE』が「この千年で重要な功績を残した100人」を企画し、葛飾北斎(※1760~1849年)が唯一の日本人として選ばれる。「浮世絵」は世界で高く評価されている。浮世絵の影響を受けた芸術家は、ゴッホを始め多くいる。19世紀中頃には「ジャポニズム」(日本趣味)の言葉が生まれた。浮世絵には奇抜な色使い、大胆な構図、庶民が題材などの特徴がある(※アニメの原点がここにあるかな)。因みに浮世絵は陶磁器の包み紙として海外に伝わった。
※江戸絵画の図表あり。
○春画は老若男女が楽しんだ
・浮世絵=版画ではない。浮世絵は風俗画の事で、紙や絹に書いた物もある。浮世絵の始祖は17世紀半ばの菱川師宣(※1618~94年)で、『見返り美人図』が代表作だ。その後色数が増え、メディアの役割を果たす。美人画では喜多川歌麿(※1753~1806年)、役者絵では東洲斎写楽(※1763~1820年)、東海道五十三次の歌川広重(※1797~1858年)、先述の葛飾北斎が有名だ。1枚の価格は400円程度だった。
・西洋で人気があった浮世絵が「春画」だが、日本で展示される事は少ない。2013年大英博物館での展示会には9万人が来場した。春画は女性だけを題材にしているのではない。詞書はウィットに富み、老若男女が楽しんだ。※平和な時代だったので、優美・精緻な文化が興隆したかな。
○人気の若冲も逆輸入
・春画は逆輸入されたが、伊藤若冲(※1716~1800年)も逆輸入だ。彼は40年前まで無名だったが、ジョー・プライスの若冲コレクションが紹介され人気になった。彼の色彩・技法・精緻さを西洋画家は真似できない。
・同じく京都の画家に「琳派」を完成させた尾形光琳(※1658~1716年)がいる。彼は『燕子花図』に代表されるが、洗練されたデザインで、西洋人を熱狂させた(※詳細省略)。琳派は俵屋宗達に始まる。狩野派とは異なり師弟関係はない。※京都で大和絵(狩野派、琳派)が引き継がれ、江戸で庶民向けの風俗画(浮世絵)が生まれたかな。
<5.大学入試改革>
○記述式に、英語は4技能に
・2020年大学入試が大きく変わり、「大学入試センター」が「大学入学希望者学力評価テスト」(仮称。※正式名は大学入学共通テスト。以下共通テスト)になる。別に「高校基礎学力テスト」(※以下基礎学力テスト)が新設される。試験の内容も大きく変わり、記述式になり、英語は読む・書く・聞く・話すの4技能になる。問題の内容も暗記から、思考力・判断力・表現力を問うものになる。
○思惑通り行くか不透明
・共通テストは難関大学が対象になり、基礎学力テストは偏差値の低い大学が対象になる。各大学の2次試験も変化を迫られる。今回の改革はグローバル時代に対応するためで、思考力・判断力・表現力を求めている。2次試験では部活・ボランティアの実績や面接を求めている。しかし記述式などは結論ありきで進められた様で、実施まで4年を切ったのに、議論が纏まっていない。複数回実施や記述式の採点など、課題が多い。
○中高・塾は先取り
・この注目される大学入試改革は「高大接続改革」の一部に過ぎない。大学教育/高校教育とそれを繋ぐ大学入試の改革なのだ。
・「アクティブ・ラーニング」の言葉がある。これは教師が一方的に教えるのではなく、学生にテーマを与え、議論・調査・行動をさせる授業方法だ(※西洋型かな)。実際この方法が導入され、「プロジェクト・ベースド・ラーニング」(PBL)などで効果が見られる。これを見据え、高校受験・中学受験で思考力・表現力を問う内容に変えた学校もある。またアクティブ・ラーニングを取り入れた塾もある。
<6.変わる大学地図>
○護送船団方式は終焉
・大学に旧帝大・早慶上智・MARCH・日東駒専・・の序列があった。これに変化の兆しが見られる。2014年文科省は「スーパーグローバル大学創成支援事業」を開始した。これに東洋大/創価大は当選したが、一橋大/神戸大/青学大/同志社大は落選した。文科省は護送船団方式を止めた。
※大学の枠組みの図表あり。新しい枠組みは、スーパーグローバル大学/国公立大学(地域貢献型、教育研究型、卓越した教育研究型)/L型大学・G型大学。
○開学10年で旧帝大に並ぶ
・国際系学部の人気が上昇している。有名私立大学/国立大学が国際系学部を設けている。その切っ掛けが秋田の「国際教養大学」だ。卒業生の評価が高く、偏差値は旧帝大に並んだ。
・実学志向で人気を高めているのが「近畿大学」だ。クロマグロの養殖で名を馳せた。他に「鰻の味に似た鯰」、廃材を利用した燃料「バイオコークス」などを開発した。国際学部も新設した。
・大学の序列は学生の人気が大きく左右する。国際系学部/実学志向以外に立地も影響する。中央大学/青山学院大学/東洋大学などが都心回帰を進めている。
○L型指定は死活問題
・2014年文科省は交付金のため国立大学を「地域貢献型」「教育研究型」「卓越した教育研究型」に分類した。旧帝大は卓越した教育研究型に入る。他に「G型大学」「L型大学」の枠組みがある。G型はグローバルな人材を育て、L型は地域の生産性向上に資する人材を育てる(※詳細省略)。L型に指定されると、大学の死活問題になる。
・そもそも日本には大学が多く、職業訓練校化しても仕方がない。1990年代前半は18歳人口が200万人を超えていたが、2014年は118万人まで減った。良い学生を取ろうとする大学もあれば、なりふり構わず集める大学もある(二極化)。
<7.就職率が高い大学>
○就職ランキング上位は高偏差値
・ビジネス雑誌が大学の就職をよく特集する。上位は高偏差値大学が占めるが、知名度が高くない大学もある。中京圏で「豊田工業大学」がトップになった。当大学はトヨタが設立し、実践重視で、就職率は100%に近い。「金沢大学」も面倒見が良く、就職率が高い。就職に強い大学は、実学重視/面倒見が良いのどちらかだ。
○警察官試験に特化した大学
・21世紀に入り医療系学部が増え、看護師の受験資格が取れる学部・学科が増えた。これも実学重視の表れだ。「日本文化大学」は警察官採用試験のカリキュラムがあり、5人に1人が警察官になる(※こんな大学もあるんだ)。「国士舘大学」は消防士になる人が多い。
・先の金沢大学の就職率は99.7%で、上場企業が1/4を占める。しかし学生を徹底的に教育し、弱点の分野を指導したり、プレゼンテーション能力・コミュニケーション能力を磨く授業もある。
○高校内容の学び直し
・高校で学んだ事を身に付けていない学生は多い。それを学び直す「リメディアル教育」が盛んに行われている。就職に力を入れる大学は、「キャリアデザイン教育」「日本語表現」を重視している。前者は就職への意識を高めるのが目的だ。これに就職部が加わり、就職活動の遅れ対策/面接対策などの支援をしている。後者は作文対策だ。
・しかし就職実績を高めるのは難しく、就職部に書類を提供した人だけを分母にするなどの誤魔化しがある。また内定者の7割は正規社員だが、3割は非正規だ。
<8.専門職大学院>
○在籍者の減少
・「専門職大学院」は、高度な専門知識を備えた職業人の養成が目的だ。代表的なものに、法科大学院/ビジネススクール(経営大学院)がある。他にMOT(技術経営)/会計/公共政策/公衆衛生/知的財産/臨床心理/教職/原子力/助産/ウェブビジネスなどがある(※大学院なので修士以上を取得できるのかな)。これらでは討議/事例研究/実習が中心になる。即戦力を期待されたが、2009年以降、在籍者が減少している。
※専門職大学院を種類毎に解説する図表あり。
○MBAを取得しても昇進・昇級は1/3
・法科大学院は司法試験の合格率の低さが問題だ。当初は7~8割の合格率が期待されたが、3割に留まっている。試験に合格しても弁護士が余っている。会計大学院も定員割れとなっている。MBAには専門職型と修士課程があるが、企業は修了者を有効に使えていない(※MBAを雇っても、簡単には業績は上がらないかな)。MBAを取得しても昇進・昇級は1/3に過ぎない。現状では「MBAはお勧め」と言えない。