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『2050年の経済覇権』嶋中雄二(2019年)を読書。

経済サイクル/覇権サイクル(コンドラチェフ・サイクルなど)の長期波動を解説。
各国・地域の固定資本形成/軍事力・科学技術力/人口動態/国際収支/相対価格・交易条件/GDPから長期波動を解説。

4人の執筆で、各章の内容が充実している。図表も随所にある。
しかし専門的なので、読者は限られるかな。

お勧め度:☆☆
内容:☆☆☆

キーワード:<次の勝者>覇権、コンドラチェフ・サイクル、<コンドラチェフ・サイクル>鄭和の大航海、ポルトガル/スペイン、近代世界システム、覇権、戦争・革命、社会インフラ投資、再投資循環説、発明・発見、イノベーション、<コンドラチェフ・サイクルの計測>固定資本形成率、バンドパス・フィルター、<軍事力・科学技術力>モデルスキー、ポルトガル/オランダ/英国/米国、海軍力、リーディング・セクター、科学的発見、<人口動態>人口増加、従属人口指数、出生率、<国際収支>経常黒字、基軸通貨、国際公共財、発展段階説、貯蓄率/固定資本形成率、<相対価格>ロストウ、交易条件、インフレ率、<GDP・実質成長率>マディソン、生産関数、生産要素/全要素生産性

序章 次の勝者

○『大国の興亡』と長期波動分析
・ポール・ケネディの大著『大国の興亡』(1988年。※1987年かな。以下本書の記載のまま)は、大国の興亡を経済と軍事から描いた。しかし彼は「世界システム」「コンドラチェフ・サイクル」「長期波動に関する問題」を扱っていないとしている。※コンドラチェフ・サイクルは50~60年サイクルで景気が循環する説。詳細は後述かな。因みに私は一定周期のサイクルを信じていない。
・篠原三代平は論文「経済大国の興隆と衰退」(1979年)/『経済大国の盛衰』(1982年)/『世界経済の長期ダイナミクス』(1991年)を著している。彼は「資本主義の発展は国家間の競争以外の何物でもない」とした(※詳細省略)。彼は「パックス・ブリタニカ」「パックス・アメリカーナ」を分析し、経済大国の条件を①強大な軍事力、②国際金融市場のノウハウ、③支配的な経済力、④経常収支黒字とした。

○本書の特徴
・イマニュエル・ウォーラーステイン/ジョージ・モデルスキーなどの世界システム学派は、コンドラチェフ・サイクルを基礎にして世界の覇権史を振り返り、2050年に覇権を握る国を予測している。
・本書は篠原の条件①③④(②国際金融を除く)について十分論じる。コンドラチェフが主張する「社会インフラ投資の再投資循環」から世界の長期波動と各国の長期波動を別々論じ、経済覇権の先行きを予測する(※難しそう)。軍事力・科学技術力については独自に検討している。加えて、人口動態/経常収支/相対価格・交易条件/GDP・成長率などの尺度も用いる。
※ニコライ・ドミートリエヴィチ・コンドラチェフ(※1892~1938年)はソ連の経済学者。1926年コンドラチェフ・サイクルを発表。

○中国の夢
・第1章「コンドラチェフ・サイクルと経済覇権」は「世界システム」の交代サイクルと日本史の関係を述べる。明・ポルトガル・オランダ・英国・米国の覇権サイクルを明らかにする。そして今は米中の競争が本格化し、「中国の夢」が正夢になるのか、カルタゴの様に敗れるのか。さらにコンドラチェフ・サイクルの戦争・革命説/社会インフラ投資の再投資循環説/イノベーション説などを説明する。

○インドの強さ
・第2章「コンドラチェフ・サイクルを計測する」では、インフラ投資循環(長期波動)を実証する。固定資本形成率(=固定資本形成/GDP)から「バンドパス・フィルター」を用いて波動を抽出する(※現状の説明は省略)。

○覇権交代前の科学的発見
・第3章「軍事力・科学技術力から見た覇権」は最も魅力的な章だ。覇権の獲得=海の制覇から分析する(※現状の説明は省略)。またイノベーションを行うリーディング・セクターにおける発見から分析する。具体的には論文数・大学進学者数・直接対内投資などだ。

○人口減少
・第4章「人口動態からみた経済覇権」は、アルヴィン・ハーヴィ・ハンセンの長期停滞論と問題意識を共有する。世界的に少子高齢化しており、貯蓄率の低下は経済の足枷になる。※米中印日の人口動態の説明は省略。

○中国は経常赤字国に
・第5章「国際収支からみた経済覇権」はチャールズ・P・キンドルバーガーの「国際収支発展段階説」を援用し、覇権国の交易を分析する。経常収支黒字も永遠に続かない。米国は成熟債権国だ。中国は2050年には世界最大の経常赤字国になる。インドは2050年代まで経常黒字が続く。ユーロ圏は2050年に未成熟債権国になる(※未成熟なんだ)。日本は2050年までに、未成熟債権国・成年債権国・成熟債権国と変化する。

○相対価値
・第6章「相対価値で世界経済を捉える」は、コンドラチェフ・サイクルの第5波が20世紀末まで上昇しなかった謎を、ブライアン・ベリーとラビー・バトラの主張から説く。相対価格(=工業製品価格/原材料価格、=産出価格/投入価格)で見ると、各国は2040年代まで上昇する(※詳細省略)。交易条件(輸出価格/輸入価格)で見ると、相対価格と違いはないが、英米の様に石油開発で資源国化した国は上昇が延長される。

○米中印の逆転
・第7章「名目GDP・実質成長率・1人当たりGDPからみた経済覇権」は、アンガス・マディソンの歴史統計から紀元1年以降の覇権を見る。英米の覇権交代期にはGDPなどの経済力が逆転している。日本はバブル期に米国に迫るも追い付けず、今は中国が挑戦国。中国は2030年米国を上回るが、その後抜きつ抜かれつになる。インドの名目GDPは2040~50年に米中を追い越す。

○頭角を現す日本
・印中の1人当たり名目GDPは上昇するが、2050年でも米国の1/3以下。日本は上昇し、米国に迫る。日本は1人当たりGDPを上昇させるが、経済規模の世界シェアは低下する。存在感を保つには、同盟国・米国との連携が不可欠。日本はG2(米国、日本)による「共同覇権」(パックス・コンソルティス)が重要になる(※G2は一般的には米中かな)。

第1章 コンドラチェフ・サイクルと経済覇権

<1.世界史的にみた覇権国>

○永楽帝と鄭和の大航海
・15~19世紀日本は覇権国(明、ポルトガル、スペイン、オランダ、英国、米国)などと貿易・外交があった。1401年足利義満は明の冊封を受け、朝貢貿易を行う。永楽帝(※位1402~24年)の最も輝かしい功績が「南海大航海」(鄭和の大航海)だ。航海を7回行い、船団は200余隻(大型艦船60隻)、乗務員は2.7万人だ。航海はベンガル湾・アラビア海を経て、アフリカ東岸に及んだ。1498年ポルトガルのヴァスコ・ダ・ガマがカリカットに到達するが、船3隻/乗務員60名に過ぎない(※インド人首長に馬鹿にされたらしい)。この目的は国威発揚と朝貢貿易の催促で、植民地化ではない。
・この航海を可能にしたのが羅針盤と造船能力だ。この中華思想からの世界秩序の再編は、習近平の「一帯一路」「21世紀の海のシルクロード」に繋がっている。これにより南シナ海の軍事拠点化を進めている。

○欧州諸国の来航
・日本の近世・近代史は中国より欧米諸国(ポルトガル、スペイン、オランダ、英国、米国)の影響を受ける。ポルトガル/スペインはアフリカ・中南米・インド・東南アジアの多くの地域を支配する。1543年ポルトガル人が種子島に漂着し、鉄砲を伝える。多くの宣教師も日本に来た。
・ポルトガルは日本と貿易を開始し、九州の諸港に来航する。遅れてスペインも貿易を始める。1494年両国はトルデシリャス条約を結び、世界を分割する(※詳細省略)。1529年両国はサラゴサ条約でアジアでの領有権を確認する。2007年中国の軍事当局者が米太平洋軍司令官に太平洋の分割を提案する(※習近平前だな)。2013年習近平がオバマ大統領に同様の事を言っている。

○マニラへの出兵
・ポルトガルとスペインは日本・明の征服の野望を抱く。1585年イエズス会の宣教師がフィリピン布教長に「日本人を改宗させれば、好戦的な兵を得られ、明の制服が容易になる」と伝える。一方豊臣秀吉も明征服の野望から、朝鮮に出兵する。また彼はフィリピン総監に日本に服従する様要求している。
・江戸時代になるとオランダ・英国が主要な外国勢力になる。1853年ペリーが来航し、薩英戦争・下関砲撃事件などを経て、明治維新になる。覇権国家の盛衰は日本史でも捉えられる。その日本は20世紀に軍事と経済で2度米国に挑戦するが、いずれも敗退する。

<2.世界システム論の鍵 コンドラチェフ・サイクル>

○近代世界システム
・2008年リーマン・ショックに伴う世界金融危機により、米国の生産・通商・金融・軍事の覇権(ヘゲモニー)に様々な予測が惹起される。2019年現在、トランプ政権による厳しい標的型保護貿易で、中国の勢いも失われた様に思われる。ブルームバーグのD・フィックリングは「中国の公式発表は経済規模で16%、実質GDP成長率で2%近く水増しされている」「中国のGDPは2050年まで米国を下回る」としている。

・近代以前の世界システムはローマ/中国の様な政治的に統合された世界帝国だった(※これは中世以前で、近世は絶対王政のイメージだが)。大航海時代(※近世の始まり)になると資本主義と呼ばれる国民経済が進行し、政治との一体性がなくなり、国際分業体制になる。この体制は「近代世界システム」と称される(※以下世界システム)。世界システムは大航海時代に始まり、波動を伴い今に至る。世界経済は中心地域と周辺地域に分かれ発展する。

・世界システムはアナール学派(※フランスで生まれた歴史学の学派で、歴史を総合的に見る)のイマニュエル・ウォーラーステイン(※1930~2019年)のネオ・マルクス主義で特徴づけられる。彼は世界システムを「長期の16世紀」(1450~1640年)に生まれた資本主義世界とした。そのため資本主義と世界経済を同一事象の別表現とした。そしてこれを「利潤追求を目指し、市場向けの商品を生産する世界分業体制」(※一部補正)とした。

○ロジスティクス波と覇権サイクル
・ウォーラーステインは150~300年の超長期波動を示唆し、「ロジスティクス波」と呼ぶ。そのため「長期の16世紀」の拡大と17世紀の停滞「危機の時代」を1つのロジスティクス波の上昇局面と下降局面とした(※17世紀は危機か。西洋史に詳しくないので困る)。また彼は2つのコンドラチェフ・サイクル(周期50年)を組み合わせた周期100年の「覇権サイクル」も提起した(※これは覇権限定かな)。例えば第1コンドラチェフ・サイクルの上昇局面A1(1897~1920年)を「覇権への躍進」、続く下降局面B1(1920~45年)を「覇権の獲得」、続く第2コンドラチェフ・サイクルの上昇局面A2(1945~73年)を「覇権の成熟」、続く下降局面B2(1973年以降)を「覇権の衰退」とした。

○覇権サイクルの4局面
・A1「覇権への躍進」では激しい対立が起きる。この時期は需要超過で生産が増大し、原材料需要も拡大するが、周辺地域は交易条件が有利でより成長する(※21世紀になり新興国は成長し、米中対立が激化している。しかし途上国の成長が著しいとは思えない)。B1「覇権の獲得」で覇権が交代する(※第2次世界大戦で覇権は米国に移ったかな)。周辺地域で経済停滞が始まり、中心地域に及ぶ。中心国で低所得層の不満が高まり、所得の再分配が起こる(※これは政治による?)。
・A2「覇権の成熟」で覇権が確定する。需要は回復し、中心国の交易条件が有利になり、他を凌駕する成長をする(※先進国が高度成長したかな)。B2「覇権の衰退」で覇権国と次期覇権国の対立が激化する。利潤を維持するため供給過剰になり、恐慌が起きる。この時期は世界経済が下降し、保護貿易・ブロック化が強まる(※直近はこの状況)。今はB2で米国の覇権が終わる時期、あるいはA1で覇権を巡る対立が激化する時期だ。
・ウォーラーステインはこの循環を考え、覇権国をハプスブルク/オランダ/英国/米国とした。米国の次が中国になるか注目される。

<3.モデルスキー・サイクル>

○日米の共同覇権
・ジョージ・モデルスキー(※1926~2014年)は、100~120年の覇権サイクルを理論とデータで証明した。これは4つの局面からなり、まず25~30年間の戦争で覇権(ヘゲモニー)を確立する(世界大戦局面)。次に同国のリーダーシップで世界経済が発展する(世界大国局面)。覇権国の能力が衰え、競争者が現れる(非正統化局面)。そして国際秩序が崩壊する(分散化局面)。
・彼は覇権国をポルトガル(1494~1580年)、オランダ(1580~1688年)、第1次英国(1688~1792年)、第2次英国(1792~1914年)、米国(1914年~)とした。それぞれスペイン/フランス/ドイツ/日本/ソ連の挑戦を退けた。第3章で詳述するが、彼は海軍力(空軍力)を分析に用いた。

・今は分散化局面で覇権を巡る対立が激化し、世界大戦が起きる世界大戦局面かもしれない。彼は1ヵ国が覇権を握るのではなく、連合・同盟による「共同覇権」「共同管理」の可能性も示唆している。また覇権国の条件として島国性・海上権力を挙げており、いずれの覇権国も海洋国家だ。島国だと輸送ルート/貿易/漁業/海軍基地/探索に優位で、敵国からの侵略にも強い。

○ジャパンアズナンバーワンと日米同盟
・1979年E・F・ヴォーゲルは『ジャパンアズナンバーワン』で、次のグローバル・パワーを日本とした。日本は織田信長・豊臣秀吉時代にはポルトガル人が活動し、徳川幕府になるとオランダに替わる。英国のアヘン戦争(1840年)で、日本は開国に進む。第2次世界大戦で米国に敗れ、占領体制を通し、米国の影響下になる。米国の影響力は低下し、経済大国になる。モデルスキーは日本を次の覇権国の有力候補と考えていた。一方で覇権国の連合化も考えており、日米貿易摩擦の矢面に立たされた日本が日米同盟となり、共同覇権を担う事も想定していた。

○第5世代コンピュータと5G
・2017年トランプが就任し、米中貿易戦争が激化する。これは米国の貿易赤字だけが要因ではない。それは中国が「中国製造2025」でハイテク産業を育成し、「国家情報法」で国民が入手した情報を国家に供出させ、米国の最新情報を盗み、軍備増強を進めているからだ。※2018年ペンス副大統領の演説は省略。
・1982年テキサス州に官民一体の研究所「マイクロエレクトロニクス・アンド・コンピュータ・テクノロジー社」が設立される。これは日本の「第5世代コンピュータ・プロジェクト」に対抗するためで、米国が国防の危機を抱いたからだ。今の米中ハイテク摩擦(5Gなど)も同様だ。

<4.戦争・革命の波>

○上昇期に多い戦争・革命
・コンドラチェフは論文「景気変動の長波」(ロシア語「景気の大循環」、1925年)で「長波発現形態の経験則」として5つの「一般的命題」を掲げている。その5番目の命題が戦争・革命に関するもので、「長波の上昇期、すなわち経済の高圧期に戦争や国内の社会的動揺が高まる」とした。第1循環(1789~1848年)の上昇期(1789~1815年)では18件の社会変動を認めた。①米国の独立宣言など(1783~89年、※以下発生年省略)、②フランス革命、③第1回対仏大同盟など、④英仏戦争、⑤第2回対仏大同盟など、⑥フランス勢力下での軍事・政治改革、⑦露土戦争、⑧ポーランド第2次分割、⑨ポーランド第3次分割、⑩第3回対仏大同盟、⑪第4回対仏大同盟、⑫大陸封鎖、⑬スペイン/イタリアにおける蜂起・戦争、⑭第5回対仏大同盟、⑮ロシアへの侵攻・退却、⑯スペイン憲法、⑰第6回対仏大同盟とナポレオン帝国崩壊、⑱ナポレオンの百日天下。
・一方下降期(1815~48年)は社会変動は5件しか起きていない。①スペイン革命運動など、②イタリア革命運動など、③ギリシャ独立運動など、④フランス7月革命、⑤チャーティスト運動。

・同様に第2循環の上昇期(1848~73年)は18件、下降期(1873~95年)は4件、第3循環の上昇期(1895~1920年)は22件の社会変動が起きた。この様に上昇期では戦争・革命が頻発し、下降期は相対的に変動が少ない。

○トロツキーvs.コンドラチェフ
・コンドラチェフは論文「景気変動の長波」の中で戦争・革命が経済発展に影響を及ぼす」とし、「戦争・革命は経済の外部から、外的ショックとして起こる」を否定した。彼は戦争・革命の規則性を「戦争・革命は市場・原材料の経済闘争の先鋭化で、社会動揺も経済的諸力の圧力の下で生じる」とした。※多くの戦争・革命の原因は経済だろうな。

・レフ・ダヴィードヴィチ・トロツキー(※1879~1940年、政治家)はこれを「形式的な類推による誤った一般化」と批判した。彼は「コンドラチェフ・サイクルの性格・期間は資本主義的諸力の内在的作用ではなく、外在的諸条件で規定される。新しい諸国・大陸の吸収/新しい天然資源の発見/戦争・革命などの上部構造の要因は資本主義的発展の高揚・停滞・衰退の諸時代の性格と交替を規定する」とした(※経済ではなく上部構造がコンドラチェフ・サイクルの性格・期間を規定するかな)。※その後のトロツキーとコンドラチェフの論争は省略。

○外因説か内因説か
・トロツキーは「資本主義発展の90年間」(※何時から何時までか)を長期トレンドの「基礎曲線」と「景気曲線」を用いて、①極めて緩慢な20年、②精神的上昇の40年、長引く危機と衰退の30年に分割した。そして戦争・革命は局面の接点(※移行時?)で起こるとした。彼の戦争サイクルの外因説とコンドラチェフの内因説の決着は付いていない。

・ジョシュア・S・ゴールドスティン(※1952年~)は戦争サイクルを経済長波(周期50年)と政治長波(周期150年、戦争・覇権循環)から、①拡大、②スタグフレーション(戦争)、③停滞、④再生の4局面とした。彼はグレインジャー因果検定(※時系列データの分析手法)を用い、戦争を価格上昇の要素とした。ただ様々な要素を挙げ、戦争はその1つに過ぎない。

<5.社会インフラ投資としてのコンドラチェフ・サイクル>

○第3次の均衡
・コンドラチェフは長期波動は資本主義経済の動態に内在するとし、偶然の外的要因を主張する技術革新説/ニューフロンティア説/戦争説/金数量説などを批判した。彼は報告「経済的景気の大循環」(2026年、※「景気の大循環」?)で景気循環・波動の本質を「資本主義の均衡水準からの偏差を拡大・縮小させる過程、もしくは動態均衡の破壊・再建のプロセス」とした。
・彼はこの過程を3つの次元に区別した。第1次の均衡は、費用の掛らない消費財・各種原材料と生産手段の需給による均衡。第2次の均衡は、利用中の資本財・社会インフラ設備の需給による均衡。これは長期間機能し、多額の支出を要する。第3次の均衡は、基礎的資本財のストックの変動による均衡。これは可能になるための期間と巨額の支出を要する。これに巨大設備の建設/鉄道路線の敷設/運河の建設/土地改良/熟練労働者の育成などが含まれる。彼の商工業循環は基礎的資本財の時間的長さに基づき、カール・マルクス(※1818~83年)の産業循環の再投資循環説の援用だ。

○マルクスの再投資循環説
・マルクスは「固定資本の耐用年数経過に伴う更新が、周期的な循環の基礎」「建物・工場・店・倉庫・穀倉・道路・灌漑施設などに投じられる資本は、20~50年で回転する」とした(再投資循環説)。この説を発展させたのがデニス・ロバートソンで、「交換価値が上昇すれば、生産設備に大規模な投資が行われる。設備の摩損は生産物の不足を生じさせ、交換価値の上昇に反映し通例の諸結果が続き、新たな投資爆発が導かれる」とした。この原理を「こだま」「倍音」とした。そして彼は鉄道・綿紡績・毛織物・造船での設備耐用年数/資本ストックと投資爆発の周期が一致する事を実証した。
・彼の実証を理論化したJ・アイナルセンも「再投資循環説」を唱えた(※詳細省略)。

○再投資循環説と長期波動
・この再投資循環説を耐用年数がより長い基礎的資本財・社会インフラ投資に適用したのがコンドラチェフの長期波動理論だ。コンドラチェフは「マルクスは生産手段の物質的損耗・更新・拡大から10年周期の中期循環を唱えた。一方大規模循環は長い期間と巨額の支出を要する基礎的資本財の損耗・更新・拡大による。これらの財の更新・拡張は群生的に行われ、景気の大波動になる」とした。基礎的資本財の建設ラッシュ時が大循環の上昇局面で、第3次の均衡の上方への乖離で、景気が長期に上昇する。
・この様に彼は「基礎的資本財の更新投資の需要が新たな投資を誘発し、長期波動の”物質的基礎”になる」とした。そしてその条件を師匠ミハイル・トゥガン=バラノフスキーの「自由な貸付資本」とした。「自由な貸付資本」の利子率の変動を通し、投資が調整される。絶頂期には貸付ファンドが枯渇し、利子率が高騰し、投資は落ち込む。逆に不況期には貸付資本が蓄積され、貸付資本が固定資本に転換され拡大が始まる。※利子率(金融政策)と基礎的資本財への投資は関係しそうだが、50年周期になるだろうか。

・コンドラチェフの長期波動理論は以上だ。上昇波の開始は、固定資本の形成を上回る長期の貯蓄と貸付資本の蓄積と新規投資を誘因する利潤機会が前提になる。この新規投資により新興国は世界市場に編入されるが、政治的・社会的不安(戦争・革命)を生み、貸付資本は枯渇し、利子率は上昇し、資本蓄積は緩慢化する。
・下降波に変わると、科学・技術の発明・発見が復活する。ただしこれは資本蓄積が盛行されるまで生産に応用されない。この下降波では、物価水準は下降し、貯蓄は固定所得者層(※サラリーマンだけど)で蓄積される。生産が価格変動に順応できない農業部門で不況は先鋭化され、都市・農村間の交易条件は後者で悪化する。一方工業部門の貯蓄・投資活動は加速化する。下降波におけるこれらの変化により利子率は低下し、新規投資が刺激され、上昇の条件が整えられる。
・この様に低落したコストを企業が利用する事で景気は拡大する。しかしやがてコストは高騰し、景気は下降する。低落した利子率により社会インフラ投資が増大し、利子率は上昇するが、やがて低落する。彼はこの長期循環を説明した。

<6.イノベーションの波としてのコンドラチェフ・サイクル>

○長波の上昇開始と発明・発見
・コンドラチェフの「長波発現形態の経験則」の3番目の命題が、「長波の下降期に生産・交通の発明・発見がなされるが、それらが広範に応用されるのは新しい長波が始まってから」だ。彼は「新しい長期波動が始まる20年前から、発明・発見が盛り上がる」「上昇波の発生直前、あるいは発生初期に発明・発見の応用が始まる」とした。

・例えば第2循環の上昇期(1848~73年)前、タービン(1824~27年、※以下発生年省略)、自動刈り取り機、電磁誘導、電信、電気鋳造法、外輪船、モールス式電信機、蒸気揚水ポンプ、蒸気ハンマー、輪転印刷機、ミシンなどが先行している。またこの上昇波にはカリフォルニア・豪州での金鉱脈発見(1847~51年)による金生産量の増大が伴う。
・第3循環の上昇期(1895~1920年)前も、直流発電機(1870年、※以下発生年省略)、真空ポンプ、アンモニア製造機、ボール盤、ガスエンジン、直流送電、電話、トーマス製鋼法、電気機関車、空気ブレーキ、電気溶接・鍛造、市街電車、変圧器、ガソリンエンジン、無煙火薬、無線電信、電動起重機、電気溶解、ディーゼルエンジン、飛行機などが先行する。

○コンドラチェフとシュンペーターの見解
・上昇波前に発明・発見が先行するが、彼はこれらが上昇の原因(外的ショック)と考えていない。「科学・技術の発明だけでは変化は起きない。経済的前提がないと不毛に終わる。17~18世紀の発明が実用化されるのは18世紀末(産業革命)になってからだ」とした。したがって「長波発現形態の経験則」の3番目の命題を、「原因と結果を取り違えている」とした。つまり彼の考え方はヨーゼフ・シュンペーター(※1883~1950年)の「革新説」と対極にある。

・シュンペーターは『景気循環論Ⅰ』(1958年)で、コンドラチェフ・サイクルの原因を起業家の革新・新結合とした。それ以前の『経済発展の理論』(1912年)で、イノベーションを①新財貨、②新生産方法、③新販路、④新供給源、⑤新組織と定義している。『景気循環論』(1939年)で、コンドラチェフ・サイクル/ジュグラー・サイクル/キッチン・サイクルの長・中・短期の景気循環はイノベーションによって起こされるとした。どのサイクルも「均衡の近傍」から企業家の革新により繁栄・沈滞(好況・不況)するとした。

○不況こそ革新の母
・彼は第1長波(1783~1842年)を綿織物・鉄鋼・蒸気機関の時代、第2長波(1842~97年)を鉄道建設の時代、第3長波(1897~1953年)を電気・化学の時代とした。第4長波は原子力・エレクトロニクス・石油化学・宇宙開発の時代で、1970年代の石油危機で沈滞局面に入った。そして1910年代に低炭素エネルギー・5G・IoT・ビッグデータ・AI搭載ロボット・自動運転車・3Dプリンター・ドローン・iPS細胞などの時代になったと予想される。

・コンドラチェフにとって彼の説は迷惑で、論文「経済静態・動態および景気変動の概念の問題によせて」(1924年)で「彼の視点は理論的・生産的でない。動態を企業家の創造的行動に結び付け、動態の理論の定立を奪っている」と批判する。シュンペーターは「不況こそ革新の母」と考えていた。この見方はゲンハルト・メンシュに引き継がれ、「不況トリガー仮説」を唱えている。逆にジュディス・シュクラー/クリストファー・フリーマンは、需要が好調な時に革新が起こるとした(デマンド・プル伝説)。

・この様にコンドラチェフ・サイクル(長期波動)を巡り、戦争・革命説/イノベーション説/再投資循環説/覇権に関わる世界システム論などが展開された。
※各章に「本章のポイント」があるが省略。

第2章 コンドラチェフ・サイクルの計測

<1.物価・金利と固定資本形成率>

○長期波動の計測
・1925年コンドラチェフは論文「景気変動の長波」で長期時系列データから長期波動を計測している。そこでは物価指数/利子率・債券相場/賃金/貿易額/石炭の産出・消費高/銑鉄・鉛の産出高から、英国・フランス・米国・ドイツ・世界を解析し、18世紀後半~20世紀前半に47~60年の長期波動を見出した。
・最も明確な結果が得られたのが、英国の物価指数/利子率・債券相場による解析だ。物価指数から第1波は1789~1814年が上昇、~1849年まで下降(※周期60年)。第2波は~1873年まで上昇、~1896年まで下降(※周期47年)。第3波は~1920年まで上昇している。利子率・債券相場(コンソル公債)から1790~1816年が上昇、~1844年まで下降(※周期54年)。第2波は~1874年まで上昇、~1897年まで下降(※周期53年)。第3波は~1920年まで上昇している。物価指数と利子率・債券相場で同様の結果となった。※同じ金融の指標で関連が深いかな。 v
○コンドラチェフ後の長期波動
・1938年コンドラチェフが亡くなり、第3波の下降局面以降は解析されていない。そこで米国の長期波動を抽出したのが図だ(※生産者物価指数と長期金利の2本のギザギザ線)。生産者物価指数(9年移動平均)から第3波は~1940年まで下降し、第4波は~1982年まで上昇し、~2017年まで下降している。米国の長期金利から第3波は~1945年まで下降し、第4波は~1981年まで上昇し、~2012年まで下降している。

○コンドラチェフの長期波動理論と固定資本形成
・前述の様に彼は様々データから長期波動を抽出した。彼の当初の関心は長期波動の実証だったが、発生メカニズムなどに移り、長期波動と投資の関係に言及している。第1章5節で述べた様に、彼の長期波動理論は再投資循環説を基礎的資本財/社会インフラ投資に適用した理論だ(※彼は様々な指標から長期波動を見出したが、メカニズムは再投資循環説かな)。ゴールドスティンは長期波動の発生メカニズムを「資本投下説」「革新説」「資本主義説」「戦争説」に分類し、コンドラチェフの理論は「資本投下説」に含めている。
・システム・ダイナミックス(※社会・ビジネス・自然システムを解析・予測する)を開発したジェイ・フォレスターはコンドラチェフを踏襲し、「長期波動を資本の過剰膨張・減少の結果」とした。図は米国の生産者物価指数から抽出した長期波動と世界の固定資本形成率(=固定資本形成/GDP)の推移だ。固定資本形成率が生産者物価指数に先行している事が分かる。

<2.バンドパス・フィルターで卓越周期を検出>

○コンドラチェフの長期波動の抽出
・コンドラチェフは上方トレンドを持たないデータ系列(物価など)は未加工のデータで解析し、上方トレンドを持つデータ系列(債券相場、賃金、貿易額、石炭生産高・消費高など)はタイムトレンドとの偏差から解析している。ただ偏差は9年移動平均を用いている。移動平均を用いると「ユール・スルツキー効果」が現れるが、彼は25系列を解析しているので、検証されていると言える(※詳細省略)。

○バンドパス・フィルターによる抽出
・経済・金融の時系列データから波動を抽出する試みはコンドラチェフ以降も行われている。様々な周期を持つ時系列データから特定周期の波動を抽出するのがフーリエ変換を用いる「バンドパス・フィルター」だ。このフィルターは基は電気信号解析で用いられたが、1999年バクスター/キングにより経済にも用いられ、さらに2003年クリスティアーノ/フィッツジェラルドも経済で用いる(※最近の話だな)。前者はBKフィルター、後者はCFフィルターと呼ばれる(※両フィルターの特徴を詳述しているが省略)。

○固定資本形成率から抽出
・前節で生産者物価指数から抽出した長期波動と固定資本形成率が連動する事を示したが、ここでは固定資本形成率からバンドパス・フィルター(CFフィルター)を用いて長期波動を抽出する。CFフィルターを用いるには、まず周期の設定が必要になるが、50年前後が適切と思われる。日本の固定資本形成率(民間非住宅)をスペクトル解析すると、10年強/26年強/60年程度の波動が多い。よって40~70年を抽出する周期とする。

<3.日本は2028年まで上昇>

○日本は56年周期
・上記条件で日本の長期波動を抽出したのが図だ(データは1885年以降)(※きれいな正弦波。これはデータを9年移動平均とした事と、フィルターにより特定周期の波動だけを抽出したためかな)。1985年以前からの上昇は1916年まで続き、1944年ボトムになった。次の上昇は1972年まで続き、2000年ボトムになった。長期波動の上昇・下降局面はいずれも28年で、周期は56年となる。

○上昇局面は企業勃興期と高度成長期
・最初の上昇局面(~1916年)は企業勃興期だ。1880年代は第1勃興期で、綿紡績/鉄道/電力/海運が成長した。日清戦争(1894・95年)を経て1910年代は第2勃興期になり、軽工業/鉄鋼/機械/造船が発展する。下降局面(1916~44年)に入り、関東大震災(1923年)、金融恐慌(1927年)、世界恐慌(1929年)が経済を悪化させる。満州事変(1931~33年)により戦争経済になり、1941年太平洋戦争に突入する。

・次の上昇局面(1944~72年)では、朝鮮戦争(1950~53年)で特需が発生し、「神武景気」「岩戸景気」「いざなぎ景気」が続き、高度成長期になる(※各景気の名前の由来を今知った)。先進国から技術導入され、設備投資は拡大し、合成繊維/石油化学/電子などの新産業も現れる。1960年代には国際収支が黒字基調になる。
・1971年ドルの金交換が禁止され、ドルが切り下げられる。下降局面(1971~2000年)に入り、1973年変動相場制に移行し円高になる。石油危機(1973・79年)が起こり、1980年代世界同時不況になる。1985年プラザ合意で円高不況になる。1980年代後半にバブル景気になるが、金融引き締めによりバブルが崩壊し、長期不況が始まる。アジア通貨危機(1997年)/金融危機(1988年)により経済は著しく悪化し、デフレ状況になる。※失われた30年の最初の10年が下降局面か。

○東京五輪・大阪万博、上昇局面は2028年まで
・2000年ITブームになり長期波動はボトムになる。翌年ITバブルになるが、新興国拡大/財政出動・金融緩和/不良債権処理により、景気拡張期間はいざなぎ景気を超える。2008年世界金融危機もV字回復する。2011年東日本大震災が発生するが、翌年末安倍政権が誕生し、アベノミクスで経済は好転する。
・この上昇はどこまで続くのか。過去2度の下降局面が28年だった事から、2028年までと予想される。今は東京五輪に向けた投資が行われ、2024年には統合型リゾートの開業、2025年には大阪万博があり、2027年にはリニア中央新幹線の開業がある。さらに社会資本の老朽化があり、政府は国土強靭化を進めている。※今はホルムズ海峡の封鎖で石油危機になり、下降局面に転じる感がある。

<4.米国は2034年まで上昇>

○上昇局面の中心は「黄金の60年代」
・同様の条件で米国の長期波動を抽出したのが図だ(データは1947年以降)。1947年以前からの下降は1956年ボトムになった。続く上昇局面は1982年がピークで、続く下降局面は2008年がボトムになった(※日本と比べると約10年後ずれ)。上昇・下降局面はいずれも26年で、周期は52年となる。
・下降局面を26年とすると、最初の下降は1930年からで、1929年「暗黒の木曜日」による世界恐慌から始まる。第2次世界大戦後の動員解除でマイナス成長になり、朝鮮戦争でも同様になる。アイゼンハワー政権(※位1953~61年)になり、1956年上昇局面に転じる。

・第2次世界大戦前からのニューディール政策など、米国は戦後も財政政策による需要管理政策のケインズ政策が浸透する。ケネディ政権(※位1963~69年)・ジョンソン政権(※位1961~63年)はこの「ニュー・エコノミクス」を支柱にした。1960年代に戦後最長の景気拡大をして、「黄金の60年代」と呼ばれる。その後インフレ率が高まり、国際収支も悪化する。ニクソン政権(※位1969~74年)は、1971年ドルの金交換を禁止し、ドルを切り下げる。さらに石油危機(1973・79年)が起こる。続く政権によるインフレ対策・景気対策・法人税減税で固定資本形成率は上昇を続ける。

○下降局面でITバブル崩壊、リーマン・ショック
・続くレーガン政権(※位1981~89年)は積極主義を排する。1982年長期波動はピークになり、下降局面に転じる。「レーガノミクス」(歳出削減、減税、規制緩和)はブッシュ父政権(※位1989~93年)に引き継がれ、景気拡大も見られるが、企業の関心はリストラクチャリング/M&Aで設備投資に向かわなかった。クリントン政権(※位1993~2001年)でのインターネットの商業利用/金融緩和・ドル高政策により景気拡張期間は「黄金の60年代」を超える。ブッシュ子政権(※位2001~09年)で住宅バブルが発生し、金融機関の資産・経営が不安視され、2008年世界金融危機(リーマン・ショック)になる。

○2008年から2034年が上昇局面
・リーマン・ショックにブッシュ子政権・オバマ政権(※位2009~17年)は迅速に対応し、2008年が長期波動のボトムになる。政府は不良債権の対応や史上最大の景気対策(インフラ投資、財政出動、雇用対策、各種減税)を行う。FRBも利下げ/流動性供給/量的緩和を行う。トランプ政権(※位2017~21年)も2018年一般教書演説で1.5兆ドル、2019年2兆ドルのインフラ投資法案を決定する。
・この上昇は2034年まで続くと予想される。今後は投資により堅調が続く。

<5.英国は2028年まで上昇、ユーロ圏は2036年まで下降>

○英国の長期波動は56年周期、ユーロ圏は48年周期
・同様の条件で英国の長期波動を抽出したのが図だ(データは1948年以降)。1948年以前からの上昇は1972年まで続き、2000年まで下降が続いた。下降局面が28年なので、周期は56年になる(※日本と全く重なる)。
・同様の条件でユーロ圏の長期波動を抽出したのが図だ(データは1970年以降)。1970年以前からの下降は1989年まで続き、上昇局面は2013年で終わった。上昇局面が24年なので、周期は48年になる(※日本・英国より約10年先行)。

○英国は2000年ボトム、2028年ピーク
・英国は1944年がボトムだったと想定される。英国も第2次世界大戦前からケインズ政策が採られ、1960年代に黄金時代になる。福祉政策を推し進めた事で財政赤字になり、輸出競争力は低下し経常収支も悪化し、1972年がピークになる。
・1973年第1次石油危機によりスタグフレーションになり、ポンドの下落が続く。1976年外貨準備が枯渇し、国際通貨基金(IMF)に支援を要請する。サッチャー政権(※1979~90年)はインフレ抑制のため引き締めを行い、国営企業の民営化を進める。メージャー政権(※1990~97年)はこれを引き継ぐ。ブレア政権(※1997~2007年)は「第3の道」を掲げ、政府支出・公的雇用を拡大する。この2000年に上昇に転じる。
・上昇局面(2000年~)で世界経済は拡大し、英国は金融緩和で住宅ブームになる。2008年リーマン・ショックで落ち込むが、金融危機対策/金融緩和/景気対策で持ち直す。

・周期が56年なので、2028年まで上昇すると想定される。インフラは老朽化し、潜在需要は大きい。また鉄道輸送能力は限界に来ている。電力供給力も課題だ。政府は「長期産業戦略」でインフラ投資基金を拡大し、電気自動車・通信設備を強化している。

○ユーロ圏は2013年ピーク、2036年ボトム
・ユーロ圏は1965年がピークだったと想定される。1950年代西ドイツは「経済の奇跡」となる。1960年代半ばには金融引き締めや労働供給の限界から、「1966・67年不況」になる。第1次石油危機後にも「1974・75年不況」になる。フランスは1960年代にアルジェリアから大量の帰還者があり、労働供給制約はなく、1960年代後半も堅調だった。しかし第1次石油危機後に弱含む。1970年代は両国ともマイクロエレクトロニクスで遅れを取った。

・1989年上昇に転じる。同年冷戦が終結し、東欧は民主化し、ベルリンの壁も崩壊する。翌年ドイツは統一され、「欧州共同体」(EC)は東方に拡大し、インフラ投資は拡大する。1999年ユーロが導入される。上昇は2013年まで続く。2008年リーマン・ショックで落ち込むが、金融危機対策/金融緩和で持ち直す。翌年ギリシャ発の欧州債務危機で弱含む。国際機関・欧州委員会・欧州中央銀行による債務危機対策/金融緩和で失速は回避している。2013年に始まる下降局面は、2037年まで続くと想定される。

<6.中国は2047年まで下降>

○大躍進政策、文化大革命
・同様の条件で中国の長期波動を抽出したのが図だ(データは1958年以降)。1958年以前からの下降は1975年まで続き、その後の上昇は2011年で終わった。上昇局面が36年なので、周期は72年になる(※長期波動は日英と逆に近い)。
・下降局面(~1975年)で大躍進政策(※1958~62年)の失敗や文化大革命(※1966~76年)による混乱があった。1962年大躍進は総括され、毛沢東が復権を掛け、文化大革命を展開し、混乱する。1970年代に混乱は徐々に収束し、1977年文化大革命の終結が宣言される。

○2011年からの下降は2047年まで続く
・1978年改革・開放政策が採用され、市場メカニズムが導入される(※鄧小平以前にあったのか)。農業から企業経営に拡大され、高成長する。1989年天安門事件で一時経済は停滞する。1992年鄧小平が「南巡講話」で改革・開放政策の重要性を説き、高成長に戻る。中国は「世界の工場」と称され、2001年WTOに加盟し加速する。2008年リーマン・ショックで落ち込むが、4兆元の景気対策で高成長に戻る。しかしこれは過剰生産能力・過剰債務を生み、難しい政策が求められている。
・2011年ピークになり、下降局面に転じた。過剰生産能力・過剰債務により成長は鈍化した。この下降局面は2047年まで続くと想定される。

<7.インドは2032年がボトム>

○混合経済体制で停滞が続く
・同様の条件でインドの長期波動を抽出したのが図だ(データは1960年以降)。1960年以前からの下降は1978年まで続き、その後の上昇は2005年で終わった。上昇局面が27年なので、周期は54年になる(※長期波動は中国とほぼ重なり、日英と逆)。
・下降局面(~1978年)では社会主義色が強い混合経済体制だった。経済の中心は公的企業で、重要物資は統制された。輸入規制(関税、ライセンス制)で国内産業は保護され、外資も規制され、輸入代替で工業化が進められた。そのため成長ペースは低かった。

○経済自由化で高成長
・1978年上昇に転じる。1982・85年輸入規制が部分的に緩和される。1990年湾岸危機に伴う石油危機で、財政赤字・経常赤字になり、翌年外貨危機になる。IMF・世界銀行から借款を受け、公的部門を優先し、開放政策を展開する。2000年代には通信改革・電力改革が進められる。発展を遂げ、BRICsの一員になる。リーマン・ショック後は成長ペースが低下し、2005年がピークになった。※人口世界一になり注目されるが、今は下降局面か。
・今の下降局面は2032年まで続き、その後2059年まで上昇すると想定される。

<8.世界は2031年まで上昇>

○世界の長期波動は50年周期
・最後に世界全体の長期波動を見る。ここも同様の条件で長期波動を抽出したのが図だ(データは1960年以降)。1960年以前からの上昇は1981年にピークになった。続く下降は2006年ボトムになった(※米国とほぼ重なる。戦後は先進国の影響が大かな)。下降局面が25年で、周期は50年となる。

○日米英と欧中印が対照的
・最初の上昇局面(~1981年)は1956年に始まったと想定される。この時期は日米欧が安定し始めた時期で、米国は「黄金の60年代」、西ドイツは「経済の奇跡」、日本は「高度成長」となった。1981年から始まる下降局面(1981~2006年)は1970年代のスタグフレーションの克服から始まる。日本のバブル発生・崩壊、ITブーム・ITバブル、欧米の住宅バブルが起きている。
・2006年に上昇に転じるが、欧米の住宅バブル崩壊/リーマン・ショックが起き、緩和的金融政策が実行される。この上昇は2031年まで続くと想定される。日米英の上昇を伴うが、ユーロ圏・中国・インドは下降する。

第3章 軍事力・科学技術力から見た覇権

<1.軍事的中心の変遷>

○モデルスキーは海軍力で理論を補強
・覇権の長期サイクル論には2グループある。1つは世界システム論がベースで、経済(生産、貿易、金融)から見た周期100年のウォーラーステインのものだ。もう1つはこれを発展させ、指導国の興亡と世界大戦に注目したモデルスキーのものだ。

・モデルスキー(※1926~2014年)は『世界システムの動態』(1991年)でこの理論を示した(※結構新しい)。これは海軍力データで補強されている。これは4つの局面から成り、第1局面は世界大戦などの主導権争いがあり、秩序を求める度合いは高いが、その供給は不足している(※当モデルは秩序から区分している)。第2局面は世界大戦により秩序がもたらされる。この秩序をもたらすのが世界大国だ。第3局面は秩序の優先順位が低下する(非正統化)。秩序を望む度合いは低下し、秩序をもたらす国もその意欲を失う。第4局面では秩序を望む度合いも秩序を利用する度合いも最低水準になる(分散化)。そして次のサイクルに移る。※今は第3・第4局面かな。

○5つの覇権サイクル
・彼は5つの覇権サイクル(ポルトガル、オランダ、第1次英国、第2次英国、米国)とその局面(世界大戦、世界大国、非正統化、分散化)を明示した(※表あり)。当サイクルはイタリア戦争(※1494~1559年、スペイン・ハプスブルク家とフランス・ヴァロア家の争い)に始まる。当戦争により領土・国民の意識が高まり、主権国家体制が確立した。※主権国家体制を確立させたのは、30年戦争後の1648年ウェストファリア条約と習った。

○ポルトガル・サイクル ※1494~1580年
・イタリア戦争はイタリアが主戦場になり、ヴェネチアが衰退する。1509年インド洋でのディーウ沖海戦でポルトガルが勝利する(※ポルトガルとインド・オスマン帝国の争い。1498年ヴァスコ・ダ・ガマがカリカットに到達。迅速過ぎる)。ポルトガルがインド洋の主要港を占領し、アラブ勢力・ヴェネチアが支配していたインド洋の覇権を奪う。
・ポルトガルは地中海とアントワープ(オランダ)の中間で、大西洋・アフリカに進出するのにも優位だった。しかしアジア貿易独占を維持できなかった。1550年頃にポルトガル船の難破が相次ぎ、海上運輸能力を西インドとの銀取引で力を付けたスペインに頼る様になる。1580年スペインはポルトガルを併合(※1580~1640年)するが、覇権国になれなかった。

○オランダ・サイクル ※1580~1688年
・1588年スペインは英国・オランダに海戦で敗れる(※有名なアルマダ海戦だな)。1600年モルッカ諸島、1609年スリランカをオランダに奪われる(※世界大戦局面は1580~1609年)。スペインは貿易を独占しようとし、貿易の自由を掲げたオランダに敗れ、覇権を握る事ができなかった。つまり覇権を握るにはグループとして纏まる必要があった(※ポルトガルとスペインはトルデシリャス条約・サラゴサ条約を結んでいるが。今の米国も西側に支えられた)。オランダは英国王/フランスのユグノー/スイス諸侯/ドイツ諸公から支持された(※英国とライン経済圏かな)。ただし1640年ポルトガルが独立し、スペインが衰退すると、オランダ側の連合は統制が利かなくなる。

○第1次英国サイクル ※1688~1792年
・英国とフランスがオランダ覇権に挑戦する。英国は島国で覇権を継承する条件が揃っていた。一方フランスは西は海で東は大陸で、主に東を重視した。ルイ14世(※位1643~1715年)が欧州で最強の軍隊を持つ様になり、これに英国・オランダ・スペインなどが同盟を組んで対抗する。1692年英国がフランスとの海戦に勝利し、1713年英国の勝利が確定する(※世界大戦局面は1688~1713年)。
・英国は新しい世界システムを構築する。内閣は議会から選出され、国王に対してではなく議会に対し責任を負う(議会システム)。また議会と宗教が分離された。さらに中央銀行が設立され、ポンドは安定し、貿易が促進される。
・しかし英国の覇権も揺らぐ。東インド会社は貿易組織から地域の統制組織に変わる。米国独立戦争(※位1775~83年)が起き、フランス・スペイン・オランダも参戦する。英国は植民地政策の再考を迫られる。

○第2次英国サイクル ※1792~1914年
・挑戦国はフランスだったが、英国を超える事はできなかった。英国は海軍を再構築し、ナポレオン戦争(※1803~15年)でフランスに勝利する(※世界大戦局面は1792~1815年)。当サイクルは産業革命が原動力だ。しかしこの影響は英国以外のドイツ・米国・フランスの経済力も高めた。

○米国サイクル ※1914~2030年
・1870年ドイツの統一により、欧州の中央に工業化され軍事力が強大な帝国が生まれる。しかしドイツもフランスも大陸に拘泥した。一方米国はカナダ・メキシコとの国境を確定させ、世界システムの構築にうってつけだった。第1次世界大戦(※1914~18年)・第2次世界大戦(※1939~45年)で連合国に加わり、リーダー的存在になる。1947年米国がトルーマン・ドクトリン/マーシャルプランを発表し、覇権交代が確定する(※世界大戦局面は1914~1945年)。
・この様にモデルスキーの覇権サイクルは史実に沿っている。そして覇権達成は海との関りが深い。

<2.海軍データで見る覇権>

○モデルスキーとトンプソンによる海軍力の計測
・1988年モデルスキーとトンプソンは長期(1494~1993年)に亘る海軍力を発表する(※書名省略)。彼らは覇権には経済・社会・文化も重要だが、海軍力が不可欠と考えた。16世紀になると世界規模の航海が可能になり、世界的な政治システムが登場する。

○モデルスキーとトンプソンの計測法
・軍艦の性能は向上する。そのため彼らは、①戦列艦以前(1494~1654年)、②戦列艦時代(1655~1860年)、③戦艦時代(1861~1945年)、④空母・潜水艦時代(1946年~)に分けた。①は人力のガレー船を対象にした。②は戦列艦を対象にしたが、大砲の搭載数を条件とした。③の前期(1861~80年)は技術革新が速かったが、戦艦を対象にした。③の中期(1881~1905年)は1級戦艦を対象にした。③の後期(1906~45年)はドレッドノート級戦艦を対象にした。④は空母・攻撃型原潜・弾道ミサイル原潜を対象にした。この様に世界覇権を達成するための戦力を対象にした。

○海軍力の集中度
・以上の条件で主要国の海軍力の集中度の推移を図にした。図を見ると旧覇権国から新覇権国へのバトンタッチはスムーズではない。例えばポルトガルからオランダの移行期には、スペインが台頭している。またオランダから英国への移行期もフランスが一時的にトップになっている。※2極時代・3極時代があっても不思議でない。

・覇権サイクルの世界大戦局面は平均27年、以降の3局面の平均は80.3年で、覇権サイクルの平均は107.3年だ。6つ目の覇権サイクル(世界大戦局面)は2025年頃に始まると想定される。※1914+107.3=2021.3だけど。

<3.中国は軍事力で米国をいつ抜くか>

○中国は2013年以降、海軍力を増強
・米国への挑戦国はどこか。ハーバード大学による海軍力では、ロシアは衰退し、中国が台頭している。米議会の分析では、鄧小平は「韜光養晦」で軍事面は控え目だった。ところが習近平(※位2012年~)は「中国は世界の中心に近づいた」「中国的なアプローチで問題を解決する」とした。この状況は米国・同盟国のリスクだ。中国は東シナ海・南シナ海で現状変更を試み、ジブチに初の海外基地を建設した。そして支援する国の港の軍事基地化を要請している。2013年以降、中国は海軍力を増強している。船舶数では米国を上回るが、総トン数は半分以下だ。性能などの質を加味すると、さらに差は広がる。※台湾有事をシミュレーションすると米国が負けるみたいだが。

○米中の空母・潜水艦
・米国が保有する空母は11隻(※詳細省略)。一方中国は2隻だ。遼寧は1998年ウクライナから購入した(※詳細省略)。2隻目(※山東かな)は初の国産空母だ(※詳細省略)。米国は約70隻の潜水艦を保有する。中国も同様に約70隻の潜水艦を保有する。

○米中の国防費
・現時点米中の軍事力には大きな開きがあるが、急速に縮まる。2030年中国の空母は4隻になり、弾道ミサイル搭載原潜は米国を超える。
・今後の米中の国防費をGDPから算出した。中国はGDP比1.87%とした。一方米国は①GDP比3.16%(現状維持)、②GDP比2.0%に均等に低下、③GDP比1.5%に均等に低下の3ケースを算出した。米国②だと2050年に両国が並び、米国③だと2045年に中国が米国を上回る。

<4.インドの軍事力は中国を超えるか>

○活発化するインド海軍
・中国海軍のインド洋進出により、インド海軍も活発化している。中国は胡錦涛時代から南シナ海・マラッカ海峡・インド洋・ペルシャ湾に拠点を設営してきた。習政権になり潜水艦の活動が活発になっている。インドは空母1隻体制だ(※詳細省略)。潜水艦は14隻で、いずれも中国に劣る。

○2042年中国を上回る
・インドは2隻目の空母を建造しており、3隻目の計画もある。潜水艦も強化しており、2030年に24隻になる。今後のインドの国防費もGDPから算出した。先程と同様、①GDP比2.42%(現状維持)、②GDP比1.87%に均等に低下、③GDP比3.16%に均等に上昇の3ケースを算出した。①では2044年、②では2048年、③では2042年に中国を上回る(※いずれも2040年代)。

<5.新産業の発展>

○覇権サイクルとコンドラチェフ・サイクル
・覇権サイクルは軍事が大きく影響するが、同様に経済も大きく影響する。アーノルド・ジョゼフ・トインビー(※1889~1975年)は『歴史の研究』(1971年)で様々なサイクルを掲示し、「戦争と平和の変化は、経済の繁栄と衰退の変化で表せるかもしれない」とした。ただし「1494年以降の戦争-平和サイクルは明確だが、産業革命以前の経済サイクルは不明確」とし、結論を急がなかった(※統計が未整備かな)。

・1996年モデルスキーとトンプソンはこれに応じ、覇権サイクルとコンドラチェフ・サイクルの関係性を明らかにする(※書名省略)。彼らは両サイクルの共振性を主張し、平和でないと経済は発展せず、政治的な混乱は経済にマイナスとした。新しい産業が興れば国家の歳入になり、その資金が軍事を支えるとした。

○学習サイクル
・彼らは1つの覇権サイクル(周期100~120年)に2つのコンドラチェフ・サイクル(周期50~60年)が含まれると考えた。覇権サイクル(学習サイクル・モデル)を4つの局面(アジェンダ設定、協調体制の構築、重要な決定、実行)に分けた。そしてそれぞれを2つのコンドラチェフ・サイクルのスタートアップ局面/高成長局面に割り当てた(※なぜ上昇局面/下降局面を言い換えたのか)。
・覇権サイクル(学習サイクル・モデル)の最初の局面(アジェンダ設定)で問題を定義し、2番目の局面(協調体制の構築)で同盟を組み、3番目の局面(重要な決定)で解決手段を決定し、最後の局面(実行)で実行する(※それぞれに25年も必要とする?)。コンドラチェフ・サイクルの前半のスタートアップ局面は経済が立ち上がる局面、後半は高成長局面だ。因みに覇権サイクル(リーダーシップ・モデル)の4つの局面と対比させると、アジェンダ設定=非正統化、協調体制の構築=分散化、重要な決定=世界大戦、実行=世界大国となる(※前半の2局面が分散化で、後半の2局面が安定化かな)。
※ところで何でモデルを2つも提起したのか。少し調べると、学習サイクル・モデルはプロセス視点で、リーダーシップ・モデルは歴史視点かな。

・世界的なリーダーシップを得るには、1つ目のコンドラチェフ・サイクルで経済的に成功する必要がある。そして「重要な決定」(世界大戦)局面の前後に高い成長が起きる。例えば第1次・第2次世界大戦前に鉄鋼業・エネルギー産業・化学産業が飛躍し、世界大戦後に新しい産業が飛躍している(※まあ戦時に経済は発展しないが、平和時に経済が発展するかな)。

<6.イノベーションの中心は変遷する>

○イノベーションとリーディング・セクター
・彼らはイノベーションがリーダーシップに影響すると考え、リーディング・セクターの動向に注目した。表は覇権サイクル(学習サイクル・モデル)/コンドラチェフ・サイクルとリーディング・セクターの関係を表す(※1430年からの表あり)。ここで興味深いのはコンドラチェフ・サイクルは本来は産業革命以降(18世紀末~)しか存在しないが、彼らはポルトガル・サイクル(15世紀前半~)から存在させている。
※リーディング・セクターは、ポルトガル・サイクル(1430~1540年)の前半はギニア・金、後半はインド・胡椒。オランダ・サイクル(1540~1640年)の前半はバルチック貿易、後半は東方貿易。第1次英国サイクル(1640~1740年)の前半はアメリカ・アジア貿易(砂糖)、後半はアメリカ・アジア貿易。第2次英国サイクル(1740~1850年)の前半は綿・鉄、後半は鉄道・蒸気。米国サイクル(1850~1973年)の前半は鉄鋼・化学・電気、後半は車・航空機・電子機器。未定(1973~2080年、※第2次米国サイクルor中国サイクル)の前半は情報産業、後半は未定。

・図は各コンドラチェフ・サイクルのリーディング・セクターの伸び率の推移だ。注目されるのは世界大戦(重要な決定)局面の前後でリーディング・セクターが大幅に伸びている。

○リーディング・セクターと覇権サイクル
・図は覇権国のリーディング・セクターにおけるシェアの推移だ。ポルトガルの折れ線は、アジアから欧州に輸入された胡椒のシェアを示す。1570年頃まではポルトガルが独占していた。オランダの折れ線は、バルチック貿易とアジア貿易のシェアの平均を示す。同国は17世紀を通し、高いシェアを維持した。
・17世紀後半、英国が台頭する。最初の英国の折れ線は、インドとの繊維貿易と米国との砂糖貿易のシェアを示す。フランスなどのデータが欠落し、高くなっている。次の英国の折れ線は、これに米国との奴隷貿易と中国との茶貿易を加えた。しかしこのシェアは18世紀半ばから低下する(※第1次英国サイクルと第2次英国サイクルの移行期(1740年頃)はシェアが低下)。1780年以降は工業化により、データの信頼性が高まる。英国は綿の消費と銑鉄の生産で他国を圧倒する。
・19世紀後半になると英国の地位が揺らぐ(※米国サイクルは1850年から)。鉄道建設は1860年代に米国が逆転し、鉄鋼生産・化学品生産・電力使用量は1890年代に米国が逆転する。その後米国は自動車・半導体・航空機でも圧倒する。しかし20世紀後半になり、陰りが見られる(※米国サイクルは1973年で終わる)。

・米国の次の覇権国を捉えるためには新しい産業に着目する必要がある。これに情報産業・バイオ産業が該当すると思われる。これまでの覇権国(ポルトガル、オランダ、英国、米国)はリーディング・セクターを牽引した。経済的リーダーになるには軍事力も必要になる。よって覇権サイクルとリーディング・セクターにおける覇権国のシェアは似た動きになる。

<7.覇権サイクルと科学的繁栄>

○ライノフの科学技術サイクル
・モデルスキーとトンプソンは1780年代以前のイノベーションに革新的科学技術だけでなく、貿易路の開拓なども含めた(※シュンペーターのイノベーションもかなり広範囲)。産業革命以前(※1780年代以前と同じ?)のコンドラチェフ・サイクルも革新的科学技術で説明できれば良いが、データがない。そのため何時、どれだけ科学的発見があったかを直接観察する方が説得力がある。
・T・J・ライノフは英国・フランス・ドイツでの物理学での発見件数を分析した(※物理学だけか)。英国(1651~1891年)の推移から、コンドラチェフ・サイクルに似た40~60年のサイクルが確認された。

○湯浅光朝の科学史研究
・1963年湯浅光朝は論文「科学における創造的活動の中心地の移動」を発表する。同論文によると、科学的繁栄の中心は、イタリア(16世紀)→英国(1700年前後)→フランス(1800年前後)→ドイツ(19世紀)→米国(20世紀後半)と移動した。※オランダ・サイクル(1540~1640年⦅学習サイクル・モデル⦆)ではイタリアが中心。第1次英国サイクル(1640~1740年)では英国が中心。第2次英国(1740~1850年)サイクルではフランスが中心。米国サイクル(1850~1973年)では前半はドイツ、後半は米国が中心。
・このデータを基に覇権国の科学的発見のシェアを見ると、明確ではないが、科学的発見が覇権獲得に影響したと考えられる。

<8.中国の科学技術力>

○科学技術力の米中比較
・現時点では米国が科学技術力のリーダーと考えられる。しかし中国が台頭しており、その戦略は「中国製造2025」で窺われる。1998年中国は教育法を変更し、教育機関の設置を地方に移譲する。これにより地方大学も学位取得者も急増した。

・まず研究開発から見る。図は米国・中国・日本のトップ10%に入る論文のシェアの推移だ。図が9つあるのは、各科学技術8分野と合計だ。合計では米国が多く(※米国約30%、中国約20%)、環境・地球科学/臨床医学/物理学/基礎生命科学でも米国が多い。一方化学/材料/工学/計算機・数学では中国が米国を追い越している。
・次に研究開発費を見る。2015年では米国の研究開発費の世界シェアは26%、中国は21%だ(※10年以上前でデータが古い)。研究開発費の伸びは米国4%/中国14%なので、2018年に追い越した可能性がある。

○米国の一国主義化と中国の追い上げ
・米国は一国主義化しており、高度人材の流入が減る可能性がある。米国には35万人の留学生がおり、彼らは卒業後に米国で働き、米経済に貢献する(※東京の大学に行って、東京で働く感じかな)。米国の科学技術産業で働く博士号を持つ外国人労働者の2割が中国人だ。米国の外国人受け入れ政策次第で、科学技術力が低下する恐れがある。※既にトランプ政権は留学生・外国人労働者を規制している。

・科学技術の進展だけでは経済発展に直結しない。米国はリスクテイクをサポートするベンチャー・キャピタルが整っている。ベンチャー・キャピタルの投資額は米国65億ドル(世界シェア50%)/中国34.1億ドル(27%)で米国が優位だ。

・中国の追い上げに対し、米国は中国企業への圧力を高めている。2019年通信機器大手・華為(ファーウェイ)への部品輸出を禁止し、通信ネットワークでの同社製品の使用を禁止した。※今はAI半導体が輸出規制されている。

<9.インドの科学技術力>

○遅れが目立つ科学技術・教育
・1980年代中国とインドの科学技術力の差はなかった。ところが1990年代に中国は教育・研究開発に重点投資し、差を広げた。これは中国のリーダーに理系出身者が多かったためと考えられる(※詳細省略)。図は中国とインドの研究開発費のGDP比だ。中国は2%を超え、まだ伸びている。インドは1%にも達しておらず、低下傾向にある。※インドは英語・数学が得意でIT・宇宙に強いイメージがある。一方で商人のイメージもある。実際は農業従事者が多い。

・教育でも遅れが目立つ。識字率は中国90.9%(2000年)/インド61.0%(2001年)で、2015年の識字率は中国96.4%/インド72.2%だ。博士号取得者でも大差がある。中国は2000年代に急増し、3万人を超えるが、インドは1万人に留まる。これが科学技術系の論文数の違いになっており、中国42.6万本に対し、インドは11.0万本だ。

○2025年大学進学者は中国を超える
・ただ長いスパンで考えると、インドは中国に追い付く。今の科学技術系の卒業生は中国470万人、インド260万人だ。中国の大学進学率は9.8%(1998年)から42.7%(2016年)に上昇した。インドは27%(2016年)とまだ低い。両国とも進学率が毎年1%増え、進学率が50%を超えると毎年0.5%増えるとして大学進学者を計算すると、2025年頃インドは中国を抜くと推定される。科学技術系の大学進学者も2035年頃に抜くと推定される(※人口でインドは中国を抜いた)。

・インドの研究開発への投資は低調だが、インドはIT産業が盛んで、大手IT企業がインドに拠点を設けている。インドのGDPは第1次産業15.4%/第2次産業31.4%/第3次産業53.2%で、第3次産業の割合が高い。そこでモディ政権は製造業の比率を60%に上げる目標を掲げている。それには外資が必要で、海外直接投資(FDI)のGDP比は1990年代の中国のレベルまで上がっている。※日本もインド向けに様々な直接投資を行っているかな。

第4章 人口動態から見た経済覇権

<1.2050年世界人口は97億人に>

○長期停滞と人口動態
・国連の「人口推計」によると、2020年77.9億人で、2030年85.5億人/2040年92.0億人/2050年97.4億人と予想される。もっとも増加ペースは緩やかに減少し、1960年代2.0%/1970年代1.9%/1980年代1.8%で、2020年代1%未満/2030年代0.7%/2040年代0.6%と予想される。

・人口増加率は経済成長の循環変動と深く関わる。アルヴィン・ハーヴィ・ハンセンは1929年大恐慌後の長期停滞は人口成長率の低下による投資需要の減少が原因としている。ウォルト・ホイットマン・ロストウ(※1916~2003年)は20年周期の「建設投資循環」(クズネツク・サイクル)の学説を、①ライフ・サイクル説、②投資切り替え説、③イノベーション説に分類する。そして「外生的なベビーブームが将来の住宅・投資インフラを生む」とし、人口動態を①に位置づけた。
・コンドラチェフ・サイクルにも人工的要因が長期波動を生むとの見方もある。これは「コンドラチェフ・サイクルの上昇期と下降期の終わりに労働者の気分が変化し、破局的出来事が起きる」(※人口とは無関係かな)とする説で、ウォーラーステインやモデルスキーの世界システム論に近い。

○人口増加と覇権サイクル
・人口増加は経済発展の結果であり原因でもある。アダム・スミスも「繁栄の決定的な指標は人口増加」と述べている。実際18世紀の産業革命で世界経済は飛躍的に成長し、世界人口も爆発的に増大した。
・世界大国の資源能力は都市人口に表れる(※都市人口は工業化・豊かさを表すかな)。覇権サイクルは2つのコンドラチェフ・サイクルで捉えられるが、2つの覇権サイクルで急激な都市人口の増加が見られる。※図あり。ヴェネチア(1346年)0.16万人、ポルトガル(1500年)1.25万人、オランダ(1600年)1.50万人、英国Ⅰ(1700年)9.25万人、英国Ⅱ(1800年)16万人、米国(1914年)100万人。確かにオランダ(1600年)0.16万人と英国Ⅰ(1700年)9.25万人、英国Ⅱ(1800年)16万人と米国(1914年)100万人で大差がある。しかし100年の時間差がある。それと江戸は1721年頃に既に100万人を超えていた。
・モデルスキーは「世界システムに最も明白な圧力は人口増大」としており、「次の世界大国は人口で米国を超える」としている。またウォーラーステインは、覇権国が衰退するコンドラチェフ・サイクルの下降局面で「工場の逃避」が起き、非都市人口が多い国に賃金雇用・所得増大の機会が訪れるとした(※今の中国などの新興国だな)。

○人口動態と覇権国の条件
・覇権サイクルの原動力はコンドラチェフ・サイクル(長波)だが、長波は人口の増減と結び付いていない。コンドラチェフは人口を趨勢変動(トレンド)要因とし、経済指標(石炭産出・消費、銑鉄・鉛産出など)から人口要因を除去している。彼は長波の特徴を、①上昇局面は好況の年数が規則的に優位になる(下降局面は逆)、②下降局面は農業が長く停滞する、③下降局面での発見・発明は次の上昇局面で実践される、④上昇局面で金産出が増大し、植民地が組み入れられる事で世界市場が拡大する、⑤上昇局面で戦争などが多発・激化するとし、人口に触れていない。

・彼は長波の外因説(技術革新説、戦争説、金量説、フロンティア説など)を批判し、長波の内在的な動因の特定を避けている(※経済成長には様々な要因がある)。一方シュンペーターは長波の原動力を技術革新とした。人口に関しては、「人口が伸び悩んでも悲観する必要はない」「出生率が低下すると自由に使える所得が増え、仕事に就く女性が増える」「死亡率が低下すると就労期間が伸び、省力化投資などで生産効率が上がる(※機械化かな)」とした。ただ「出生率の低下は勤労意欲を低下させ、資本主義の推進力が低下する」とした。
※経済規模=1人当たり生産高(消費高)×人口。原則的には人口(第2項)が増えると経済は成長する。生産高・消費高(第1項)は先進国/新興国/途上国で異なるし、人口動態でも変わる。

・これらから人口動態上の「覇権国の条件」は、①覇権国より大きい都市人口(モデルスキー)、②労働力と成り得る非都市人口(ウォーラーステイン)、③強い貯蓄・投資意欲を象徴する出生率(シュンペーター)となる。

<2.世界の人口動態は少子高齢化>

○人口オーナス期
・高齢化は世界的な課題になっている。国連の「人口推計」によると生産年齢人口(15~64歳)に対する高齢者(65歳以上)の割合を示す「老年人口指数」は、2010年11.7/2020年14.4/2030年18.0/2040年22.1/2050年25.2と上昇する。1950~2050年で世界人口は3.8倍になり、老年人口指数は8.4から25.2で3倍になる。生産年齢人口に対する年少者(15歳未満)・高齢者の割合を示す「従属人口指数」は、2020年52.2から2050年59.1に上昇する(※年少者:生産者:高齢者の割合は、4:10:1から3:10:2)。従属人口指数は1965年75.2がピークで以降減少していたが(※少子化の始まりかな)、2020年から上昇している(※高齢化の影響が大かな)。人口動態は経済成長の重石になる人口オーナス期になった。

○少子高齢化と覇権サイクル
・中国・インドは覇権国・米国の人口を超え、都市人口比率は米国より低いが、将来的には米国の都市人口を超えるだろう。ユーロ圏の人口は米国より多く、都市人口比率は米国より少し低いが、都市人口が米国を超えるかは分からない(※共に工業化・都市化は落ち着いているかな)。
・出生率は先進国より新興国が高い。先進国でも移民を受け入れていると出生率は高くなる。新興国での出生率の高さは農業労働力の確保や老後の生活保障の必要性による。移民を受け入れている先進国は「強い貯蓄・投資意欲」の発揮により高い出生率が維持される(※これは移民の意欲か非移民の意欲か。それと強い貯蓄・投資意欲が出生率を維持する仕組みも不明)。ところが少子高齢化すると勤労者は年金・教育の負担が増え、貯蓄・投資が減少する(※教育負担の増加は少子ではなく多子で増えるのでは)。小峰隆夫は少子高齢化・人口減少が経済に与える影響を、①労働力人口の減少、②貯蓄率の低下、③勤労世代の負担上昇とした。これは覇権国の足枷になる。

○2050年の人口動態
・貯蓄率の低下は従属人口指数の上昇で表される。従属人口指数が低下すると、貯蓄・投資が増加する(人口ボーナス期)。逆に従属人口指数が上昇すると、年金・教育の負担が増え、貯蓄・投資が減少する。※少子化は直近の経済にはプラス(教育負担の減少、貯蓄・投資の増加)、数十年後には経済にマイナス(生産年齢人口の減少、貯蓄・投資の減少)かな。

・次節以降で国連の「人口推計」から国・地域の従属人口指数を推測する。コンドラチェフ・サイクルは固定資本形成率から導かれるため、人口要因は外生的な位置付けになる。国・地域の人口動態を概説すると以下となる。
 ①インドの人口は世界最大になる。中国の人口は減少する。
 ②いずれの国・地域も都市人口比率は上昇するが、中国の上昇が目立つ(※さらに都市化が進むのか)。インドは2050年でも50%に留まる。
 ③インド以外は従属人口指数が上昇し、経済成長の重石になる。
 ④2050年でも中国・インドの人口は米国を上回る。
 ⑤インドには非都市人口が豊富にある。一方中国は既に都市化が進み、人口動態も成熟し、少子高齢化が課題(※②と矛盾では)。
 ⑥2050年でも米国の出生率はインドを上回る。ただし移民政策が変われば、人口動態も変わる。
 ⑦中国・インドは人口流出に歯止めを掛けられれば、出生率を人口置換水準の2.1以上に引き上げられる。※中国は1.0を切っているが。

<3.米国の高齢者は上昇傾向>

○2050年でも移民の純流入国
・国連の「人口推計」によると米国の人口は順調に増え、2050年3.8億人に達する。人口増加率も0.5%でインド(0.6%)に見劣りしない。米国の特徴は移民流入だ。純移動率(人口1千人当たりの純移民数)は2015年3.151で、欧州1.863/日本0.558より大幅に高い。

○異例に高い出生率
・米国の出生率は先進国の中で顕著に高い。1976年1.7まで低下する。これは女性の社会進出による晩婚化・高齢出産化が原因だ。その後上昇に転じ、2006年人口置換水準2.1に戻る。2015年は1.88だが、日本1.41/欧州1.63/中国1.60より高い。2050年では1.91になりインド1.86を上回る。
・移民で出生率が高いのがヒスパニック系だ。欧州系白人の出生率は2.1を下回るが、欧州での出生率より高い。これは子供を多く持つ事を美徳とする宗教が影響している(※プロテスタントとカトリックの違いかな)。

○少子高齢化の負担は小さい
・米国は2050年まで老年人口指数は増え、年少人口指数は20台後半を維持する。従属人口指数は64.8に達するが、日本95.8/ユーロ圏82.1より低く、負担は軽い。米国の従属人口指数は1960年代からそれ程変化がない。

○経済覇権を維持する条件
・米国は移民政策を変えない限り、人口動態は経済覇権の条件を維持できる。米国は2035年からコンドラチェフ・サイクルの下降局面に入り、ウォーラーステインの「工場の逃避」が起きる恐れがある。有効需要(※現実的な需要)を維持するために賃金を上げると、「工場の逃避」は加速する。近年米国は保護主義を強めているが、これは「工場の逃避」への抵抗だ。
・ウォーラーステインは「覇権を維持するために政治・軍事にエネルギーを費やすと生産効率が下がり、他国が生産効率を上げ、次の覇権国として台頭する」とした。

<4.中国は人口減少国に転じる>

○1人っ子政策の副作用
・中華人民共和国が成立した1949年、内戦による農業生産の停滞や自然災害で中国の人口は5.4億人だった。毛沢東は「毛沢東人口論」を主張し、人口増加を推進する。農村では労働力として男子が不可欠だった。また生産物の分配に子供も含まれ、多産が促された。
・1970年代になると人口抑制が始まる。1971周恩来は「計画生育運動」を再開し、「晩婚・晩産 夫婦で子供は2人まで」を方針とする。1979年「1人っ子政策」が始まる。結婚許可年齢の引き上げ、1人っ子世帯に対する優遇、計画外出産への罰則などを行なった。農村では男子が望まれるため、女子の殺害などが起きた。生産年齢人口が急減し、将来の経済成長への懸念や社会保障制度の整備が政治課題になる。
・2000年代北京・上海の人口は減少に転じる。2013年農村での第2子出産が認められ、2016年「1人っ子政策」は撤廃される。しかし過保護に育てられた子供、人口の男女比などの副作用が残っている。

○日本に20年遅れて人口減少社会
・中国も人口減少社会になり、少子高齢化の対応が必要になる。中国の出生率は1995年2.1を下回り、2015年1.60まで低下した。これは米国1.88/EU1.63より低い。中国を除く新興国は2.97だ。国連の「人口推計」によると、2024年中国は人口でインドに抜かれる。2030年人口減少国に転じ(※2021年既に人口減少国)、2050年減少率は0.5%に達する。これは日本が2010年人口減少国になり、2030年減少率が0.5%に達するパターンと一緒で、20年遅れとなる。

・中国の生産年齢人口の減少は潜在成長力を低下させ、高齢化による勤労世帯の負担増加は経済成長を鈍化させる。老年人口指数は2050年まで上昇し続ける。一方年少人口指数は生産年齢人口自体が減少するため、22台で下げ止まる。

○人口流出リスク
・出生率低下に歯止めは掛けられるだろう。しかし高齢者の社会保障のためには移民の受け入れが必要になる。ところが中国は人口流出国で、2000年代後半以降は加速している。ウォーラーステインは「覇権国は主要産業の企業家を安定させるだけでなく、万人の将来を保証する事により、万人に支持される」とした。この観点で中国は移民流入国の米国に見劣りする。※米国は万人を支持するので、移民が入るかな。中国への移民は少なそうだし、資産家が米国などに移住している。少し調べると、中国は社会不安も多そうだ。

<5.インドは人口16億人に>

○人口増大を成長に繋げられない
・インドは人口増大を経済成長の制約条件とし(※中国と逆だな)、1952年世界初となる家族計画プログラムを導入する。しかし住民・地域社会の理解が不十分で成果はなかった(※この辺りは後で詳細を調べたい)。国民の強い反対で人口抑制政策を断念する。
・インドが人口増大を経済成長に繋げられなかった理由は、①製造業の育成に失敗し、雇用を創出できなかった。②労働者を過度に保護し、民間企業の活力をそいだ。③識字率に代表される労働者の質の低さ、脆弱な職業訓練制度。

○世界最大の人口
・2015年インドの人口は13.1億人で中国14.0億人に次ぐ。人口増加率は1.2%で中国0.5%を上回り、2024年中国を抜く。2050年インドは16.6億人、中国は13.6億人になる見通しだ。インドの人口増加を支えるのは高い出生率2.44(2015年)だ。潤沢な年少者が生産年齢に移行するため、年少人口指数は低下し続ける。長寿化による老年人口指数の増加に相殺され、従属人口指数は横ばいになる。したがって人口動態が経済成長の重石になるのは2050年以降になる。ただ2050年の出生率は1.86まで低下し、少子高齢化が課題になる。

・インドの課題は人口の流出(純移民数の減少)だ。1990年代前半まで流入超だったが、その後大幅流出に転じている。純移動率はマイナス0.401になっている。

○世界の工場
・国際人口移動は中位所得国から高位所得国に移動する。今後コンドラチェフ・サイクルの下降局面に入ると「工場の逃避」が起こり、非都市人口比率が高いインドでの雇用創出・所得増大が期待される。インドは2030年代後半から工業化が進み、人交流出に歯止めが掛かるだろう。

<6.変化が少ないユーロ圏>

○袋小路
・欧州では出生率の低さは古くからの問題で、社会保障支出の問題と結び付いている。出生率の低下は女性の社会進出や教育普及による。解決法は移民の受け入れになるが、既存の価値観を破壊するとして反発が強まっている。

○人口増加は期待薄
・ユーロ圏はドイツ・フランス・イタリア・スペインで人口の3/4を占める。しかし増加率はドイツ・フランス・オランダ・ベルギーは0.3~0.6%増で、イタリア・スペイン・ギリシャ・ポルトガルは0.1~0.5%減だ(※PIGSは減少か)。国連の「人口推計」によると、ユーロ圏の人口増加率は0.1%で2031年に減少に転じる。しかし2015年3.4億人、2050年3.3億人と緩やかな減少だ。
・米国・欧州は移民の純流入国だ。2015年米国の純移動率は2.86、EU(15ヵ国)は1.73だ(出生率は米国1.88、EU1.63)。欧州の人口動態は経済成長に影響する。ユーロ圏の老年人口指数は2015年30.7から2050年56.6に大幅に上昇する。従属人口指数は2050年82.1まで上昇し、少子高齢化により勤労世帯の負担が増大する(※従属人口指数は60位であれば安定で、80を超えると高負担かな)。

○政治的統合が不可欠
・モデルスキーは海(空)軍力から覇権国を特定したが、核分散後は諸国家連合による「共同覇権」になると主張した。ユーロ圏19ヵ国は政治統合されていないが、その可能性を持つ。※EUには委員会・議会・裁判所があるが、あくまでも諸国家連合で、政治統合されていないかな。この前EU法人の話があった。
・1999年ユーロ圏は11ヵ国で発足し、その後加盟国は増え、移民・人口は増えた。ユーロ圏が経済覇権を握るには政治的統合が不可欠だ。しかし金融政策で足並みが揃っておらず、生産効率の向上は期待できない(※ECBにより足並みは揃っているのでは)。

<7.日本の人口は1億人を切る>

○1970年代に人口動態が転換
・日本は終戦後、第1次ベビーブームになる。農村部がその人口増大を吸収し、食糧不足の問題は回避される。1960年代ベビーブーム世代が生産年齢に達すると、彼らは潤沢な労働力になり、商工業に吸収される。1960年代人口は農村部から都市に移動し、都市は過密化、農村部は過疎化する。
・1970年代人口動態が転換する。石油危機により高度成長は終焉し、晩婚化・晩産化が始まり、未婚率は上昇し、出生率が低下する。一方医療技術の発展や生活環境の改善で死亡率は低下する。出生率の低下と平均寿命の長期化で少子高齢化に直面する。政府は高齢者・女性の労働参加や移民受け入れを進めるが、抜本的な解決に至っていない。

○労働力人口の引き上げ
・日本の人口動態の困難さは群を抜いている。人口は2015年1.28億人が2050年1.09億人まで減少する。移民を受け入れても経済規模は維持できない。人口減少だけでなく少子高齢化も進む。2050年従属人口指数は95.8まで上昇する。
・一方出生率は緩やかに上昇するが人口置換水準2.1には届かない。純移動率も2005年にプラス転換し、2015年0.56になったが、米国2.86/EU1.73に及ばない。政府の移民拡大方針により移民は増えると思われる(※直近の政府は右に向かっているが)。

○移民受け入れ、共同覇権
・2013年以降円安などにより訪日外国人観光客が急増した。また外国人永住者も増加している。その理由は生活・就労関係の優位性による(※安全性は理解できるが、就労は何だろう。具体例が欲しい)。エコノミスト・インテリジェンス・ユニットの「世界で最も住みやすい都市ランキング」で大阪3位/東京7位だ。旅行誌『コンデ・ナスト・トラベラー』の「世界で最も魅力的な都市ランキング」(米国を除く)でも東京が3年連続1位、京都2位だ。日本の移民受け入れ余地は大きく、人口動態の困難さを軽減できるだろう。日本は独自の軍事力が弱いが、「共同覇権」であれば覇権を握る事ができる。

第5章 国際収支から見た経済覇権

<1.覇権国の国際収支>

○永遠に続かない経常収支黒字
・覇権国の源泉に軍事・政治があるが、経済が最も重要だ(※経済が最重要かな)。過去の覇権国(オランダ、英国、米国)はいずれも生産・流通・金融で他を圧倒した。16世紀スペインは強大な軍事力を持ち、植民地の銀山で莫大な富を得たが、覇権は獲得できなかった。
・19世紀の覇権国・英国は1792年までに世界貿易で優位になり、1800年には世界貿易の1/3を占めた。1870~1914年英国のシェアは低下する。一方米国は綿花・小麦の輸出でシェアを高め、第2次世界大戦後にトップに立つ。

・工業製品輸出による貿易黒字は、経済の成熟化で解消される(※解消とは赤字に転落?)。英国は17世紀末から18世紀後半まで、米国は1874~1970年まで、共に貿易黒字が100年続き赤字に転じた。しかし共に経常収支は黒字で、英国は海運・金融、米国は特許・金融・情報などのサービス収支が補った。サービス収支の黒字は海外投資収益の黒字も拡大させた(※19世紀英国の図あり)。投資収益は再投資され、対外債権残高が増え、さらに投資収益が増える好循環が生まれた(※今の日本・中国などがこれかな)。
・ところが経常収支黒字(※以下経常黒字)も永遠に続かない。英国は1915年頃から赤字が現れ、1948年以降は黒字と赤字を繰り返し、1980年代に赤字が恒常化する。今の覇権国・米国も1990年代以降は赤字だ。

○経常収支赤字でもドルが基軸通貨
・米国の経常収支赤字(※以下経常赤字)は20年以上続くが、ドルが基軸通貨であり続けている。チャールズ・P・キンドルバーガーは「米国が経常黒字を上回る資本収支赤字を計上しても、”世界の銀行”としての短期借・長期借の結果であればドルの信認は低下しない」とした。※米国は経常赤字だが。資本収支の説明はない。因みに「経常収支+資本収支+金融収支=0」だったが、今は資本収支は金融収支に含まれるみたい。
・しかし民間銀行が不健全な貸付で金融不安を招くリスクがあるのと同様に、「世界の銀行」としてのシステムが機能不全に陥るリスクがある。その時米国に代わる国が国際経済システムを安定化させる保証はない。

○国際公共財の供給
・覇権国には「国際公共財の供給」の役割がある(※国際公共財は地球環境、自由貿易、国際金融システム、平和・治安維持、感染症対策など。要するに世界秩序かな)。ウォーラーステインは「覇権国が政治・軍事に資力を分散させ経済効率性を疎かにしていると、他の国が経済効率性で優位になる」とした。政治力が失われると軍事力を行使する様になり、これにより政治的・経済的土台が崩れる。覇権国は経済力で覇権を獲得するが、国際公共財を供給する事により経済効率性を下げ、軍事力を行使する事で覇権を失う(※全く今の米国だな。絶えない戦争、国際条約・機関からの離脱)。また覇権国の衰退期では「工場の逃避」が起きる。新たに覇権を目指す国は農村を都市化し、工場を受け入れ、世界貿易で圧倒的なシェアを得るべく経済効率性の向上に邁進する(※これも全く今の中国だ)。

<2.国際収支の発展段階説>

○覇権安定論
・キンドルバーガーは「国際収支の発展段階説」を唱えた。①未成熟債務国-債務の開始、②成年債務国-債務の返済と富の蓄積、③成熟債務国-純債務国だが経常黒字、④未成熟債権国-純債権の蓄積、⑤成年債権国-純債権の利子・配当で経常収支が均衡、⑥成熟債権国-債権の一部を消費(※消滅かな)。
・整理すると、経常赤字の純債務国が貿易・サービス収支の黒字により③成熟債務国になる。純債権による利子・配当により経常黒字が厚みを増す(④未成熟債権国)。貿易・サービス収支が赤字に転じ、経常収支も赤字に転じる。資本収支は流入超過になり対外純資産残高は減少する(⑤成年債権国)。

・英国は1910年代半ばに経常収支が赤字に転じ、覇権国の地位が揺らぐ。1929年大恐慌が発生するが、英国は国際経済システムを安定させれなかった。キンドルバーガーは「覇権国が国際公共財の供給の責任を負う事で世界経済は安定する」との「覇権安定論」を唱えた。恒常的な経常黒字による通貨安定や潤沢な外貨準備高などは、国際経済システムを安定化させる5機能(市場の維持、安定的な長期融資、安定的な為替相場、マクロ経済調整、最後の貸し手)に不可欠となる。

○経常収支から見た覇権国の条件
・経常収支から見た「覇権国の条件」は、①長期かつ大幅な経常黒字、②覇権初期において、工業製品のシェアが拡大、③貿易収支が赤字に転じても、サービス収支が黒字を維持。※時代の流れはモノからサービスなので、サービスも同等に重要かな。

・英国・米国は覇権国だったが、財・サービスの中身は大きく異なる。19世紀の英国は綿織物・毛織物の輸出で圧倒した。一方20世紀の米国は、機械・鉄鋼・自動車などの重工業を牽引した。また英国は覇権を握った19世紀半ばで既に貿易収支は赤字に転じていた。一方米国は1970年代まで貿易収支は黒字だった。

○国際収支を規定する人口動態と景気サイクル
・覇権国となった要因の財・サービスや所得収支の各寄与度は、覇権国の地理的・文化的な特性や技術進歩によって異なる。ただ共通するのは経常収支が貯蓄と投資の差額と等しくなる点だ(経常収支=国民総貯蓄-総投資)。※ピンと来ない。国民総貯蓄は家計・企業・政府の貯蓄の合計。
・総貯蓄は概ね人口動態によって決定する。人口に占める生産者の割合が上昇すると、貯蓄率も上昇する。逆に年少者・高齢者がの割合が上昇すると、貯蓄率は低下する。従って従属人口指数と貯蓄率は逆相関の関係にある。ただ新興国ではこの関係が見られるが、先進国は明確でない。新興国は年金などの社会保障制度や金融インフラが未整備のため、人口動態に対する貯蓄率の弾力性が大きい(※反応性が高いかな)。一方先進国は女性・高齢者の就労支援が行われ、貯蓄率の変動は少ない。
・一方総投資は各国の中長期的な景気サイクルが規定する。貯蓄・投資バランスは第2章で計測した固定資本形成率と概ね一致する。この景気サイクルと人口動態から経常収支を予測できる。

<3.成熟債権国が続く米国>

○世界最大の対外純債務国
・米国は世界最大の経常赤字国(4885億ドル)で、2位は英国(1089億ドル)だ。2006年が過去最大の8060億円だ。世界金融危機で輸入が急減し、赤字幅が縮小したが、その後拡大基調にある。
・1970年まで経常収支は黒字だったが、1971年貿易収支が赤字になり、経常収支も赤字に転じた。しかし海外資産からの利子・配当収入(所得収支)とサービス収支により、1980年代初めまで経常赤字は恒常的でなかった。しかし1980年代半ばから赤字が定着する。

・米国はサービス収支・所得収支は黒字だが、巨額の貿易赤字により経常赤字が拡大している。所得収支の内、利子・配当収入(第1次所得収支)は黒字だが、政府開発援助・国際機関分担金など(第2次所得収支)は大幅な赤字で、赤字全体の2割を占める(※それでトランプは国際機関から離脱か)。これは第1節で説明した「国際公共財の供給」で、経常収支を悪化させる要因だ。
・経常赤字の累積で米国は世界最大の対外純債務国(9.7兆ドル)で、2位はスペイン(1.1兆ドル)だ。米国は債権の一部を消費しており、国際収支の発展段階説の⑥成熟債権国に相当する(※世界最大の純債務国なのに債権国とは何か変だな)。

○経常収支の赤字は拡大する
・経常収支の予測期間(※1980~2018年が実績、2019~50年が予測)で米国は経常赤字を拡大させ、GDP比5%に達する。経常収支は総貯蓄と総投資の差額になる。総投資は固定資本形成率(=総固定資本形成/GDP)で代替できる(※総固定資本形成=固定資本形成+減価償却)。固定資本形成率は20%近傍で推移し、総貯蓄率(=国民総貯蓄/GDP)は10%台で緩やかに低下する。経常収支比率(=経常収支/GDP)は2006年マイナス5.8%には及ばないが、2050年はマイナス5.2%と予測される。米国は1980年代に⑥成熟債権国に転じたが、今後も変わらない。米国は経常赤字を拡大するが、それは年0.1ポイント低下する貯蓄率の低下による。
・現在までのGDPギャップ(短期の景気循環の代理変数)と線形トレンドから貯蓄率の線形回帰モデルを推計する。そしてその線形トレンドから将来の貯蓄率を推計する。米国の従属人口指数は2030年半ばまで上昇するが(第4章3節)、政府が女性・高齢者の就労支援を推進するため貯蓄率に影響しない。これは日本・ユーロ圏も同様とした。
※コンドラチェフ・サイクルは固定資本形成から導出した。一方経常収支は総貯蓄と総投資(固定資本形成)の差額とした。基本的な疑問だけど固定資本形成はコンドラチェフ・サイクルにはプラス要因、経常収支にはマイナス要因になる。

○固定資本形成率は低下
・米国の固定資本形成率は第2章4節による。ただしこれは民間部門のみが対象で、公共投資・公的住宅投資を含んでいない(※統計上の都合かな)。2018年民間部門だけの固定資本形成率は13.7%、公的部門を含めると20.8%で、7ポイント程度の差がある。そのため本予測は民間部門のみの固定資本形成率に7ポイント加算し、経常収支を予測している。
・1980年から現在(2018年)までは固定資本形成率を切り下げた。今後は2040年まで20~21%で横這いで推移する。2040年代はコンドラチェフ・サイクルの下降局面になるため固定資本形成率が低下し、経常収支の悪化に歯止めが掛かる。

<4.中国は未成熟債権国>

○急激な縮小は構造変化による
・中国は世界最大の経常黒字国で、2015年3042億ドルに達するが、その後急減し2018年491億ドルになる。2015年は中国/ドイツ/日本に順だったが、ドイツ/日本/中国になる。この激減は中国の国際収支構造の変化による。中国の経常収支は貿易収支に支えられるが、サービス収支は2009年以降赤字、所得収支も2015年以降赤字になった(※中国の対外資産・投資は膨大と思うが)。サービス収支の赤字は増加基調で、貿易収支の黒字は縮小している。2018年以降は米国の圧力も高まる。

○サービス業育成前に経常赤字に
・予測期間で中国は経常赤字に転じ、赤字を拡大する。2050年GDP比でマイナス15%になり、米国のマイナス5%を大幅に超える。経常収支は貯蓄と投資の差額で、中国は投資超過・貯蓄不足になる。今は貯蓄不足の米国を中国がファイナンスしているが、米中の貯蓄不足をファイナンスする国が現れる(※中国が保有する米国債は売られるのかな)。

・中国が経常赤字に転じる最大の要因は人口動態による貯蓄減少だ。貯蓄率は2008年52.3%がピークで低下している。それと足並みを合わせ従属人口指数は上昇に転じた(第4章4節)。従属人口指数は2010年35.6を付け、2015年37.7になり、2050年67.4まで上昇する。
・一方固定資本形成率は2050年まで40%前後で横ばいとなる。ただし日米などは20%近傍であり、高水準を維持する。中国の長期波動は2011年ピークで2047年ボトムになる(第2章6節)。したがって過度な国内投資は控えられるが、人口動態の急激な変化による貯蓄の減少に抗えない。

・今の中国は経常黒字により純債権を蓄積し、発展段階説の④未成熟債権国に相当する。中国の経常黒字は貿易収支に依存する。そのため所得収支によって経常収支が均衡する⑤成年債権国に移行せず、経常赤字国に転落する。中国はサービス業の育成が不可欠で、その前に経常赤字に転落するのは、かつての英米と異なる。

<5.インドは未成熟債務国>

○海外の人的資産が収入源
・インドは恒常的な経常赤字国(2018年651億ドル)で米英に次ぐ。対外純債務は2018年4384億ドルで、発展段階説の①未成熟債務国に相当する。インドは海外資本を導入し、工業製品の生産・輸出で経常収支の均衡・黒字化を図っている。
・インドは貿易収支は大幅な赤字だが、サービス収支と第2次所得収支が黒字だ。サービス収支の黒字はソフトウェア/アウトソースにより、第2次所得収支の黒字は出稼ぎ労働者の海外からの送金による(※中東で稼いでいるかな)。

○経常黒字への転換
・インドは2020年代前半で経常黒字に転じ、以降黒字が続く。2018年貯蓄率28.5%、固定資本形成率28.9%で均衡しているが、経常収支比率はマイナス2.5%だ。インドは貯蓄・投資バランス(=貯蓄・投資の差額/GDP)と経常収支比率が乖離する。2010~17年貯蓄・投資バランスがプラスなのに、経常赤字になった。
・この乖離は在庫投資(民間在庫)の変動による。新興国は先進国に比べGDPに占める在庫投資の割合が高く、変動も大きい。一方総固定資本形成に在庫投資は含まれない。例えば景気拡大局面では積極的に海外からの輸入を増やすと、経常赤字が増える。一方総固定資本形成に在庫は含まれていない。インドの在庫投資はGDP比で2%の揺れ幅があり、乖離の原因になっている。
・本章の予測は短期循環(在庫投資循環、キッチン・サイクル)を除いている。そして中期循環(設備投資循環、ジュグラー・サイクル)/長期循環(建設投資循環、クズネツク・サイクル)/超長期循環(インフラ投資循環、コンドラチェフ・サイクル)から固定資本形成率を導出している。そのため在庫投資が要因と見られる乖離は数年で解消される。※この乖離についてさらに詳しく説明しているが省略。

・インドの貯蓄率は従属人口指数の低下に合わせ緩やかに上昇する。インドは2040年頃まで生産年齢人口が増え、経済成長にプラスになる「人口ボーナス期」が続く。2040年を過ぎると従属人口指数の低下は止まるが、大きく反転はしない。長期かつ高水準の貯蓄率の上昇により、経常黒字が恒常的になる。
・一方の固定資本形成率は2050年まで緩やかに上昇する。現在は28.9%で2050年34.1%になる(※コンドラチェフ・サイクルとの関係を説明しているが省略)。固定資本形成率の緩やかな上昇は経常黒字に貢献する(※固定資本形成は経常収支にマイナスでは)。ただ予測期間後半はコンドラチェフ・サイクルの上昇局面に入り、従属人口指数も上昇するため、貯蓄・投資バランスのプラス幅は縮小する。

・インドは発展段階説の①未成熟債務国から②成年債務国、さらに③成熟債務国に移行する。社会・金融インフラが整備されれば、海外資本から解放され、純債権を積み上げる④未成熟債権国への移行も見えてくる。

<6.ユーロ圏は成熟債務国>

○貢献は一様でない
・1999年ユーロが導入された。その後経常収支は赤字と黒字を繰り返した。2009年欧州債務危機に陥るが、2012年以降は経常黒字になった。ただ加盟国が一様に貢献している訳ではない。経常黒字の半分をドイツが計上し、イタリア/スペインの貢献も大きい。一方フランスは赤字を計上している。
・ユーロ圏の対外純資産残高は恒常的にマイナス(純債務国)だが、マイナス幅は縮小している。よってユーロ圏は発展段階説の③成熟債務国に相当する。経常収支の内訳は、貿易・サービス収支/第1次所得収支は黒字だ(※第2次所得収支だけ赤字)。政府開発援助/国際機関分担金により第2次所得収支は赤字になっているが、「国際公共財の供給」と言う覇権国の役割を担っているからだ(※移民による送金もあるかな)。

○経常黒字は拡大
・ユーロ圏の経常黒字は拡大し、2050年GDP比で7%台に達する。これは貯蓄率の緩やかな上昇と固定資本形成率の低下傾向による。2012年経常黒字が定着し、2016年GDP比3.2%まで上昇し、今後も上昇する。
・ユーロ圏も従属人口指数は上昇するが、政府が女性・高齢者の就労を支援するため貯蓄率への影響は少ない。現在までのGDPギャップ(短期の景気循環の代理変数)と線形トレンドから貯蓄率の線形回帰モデルを推計する。そしてその線形トレンドから将来の貯蓄率を推計する。貯蓄率は年0.06ポイント上昇する。これは就労支援だけでなく、ユーロ加盟国の拡大や移民・難民の受け入れにもよる。
・ただし各加盟国の貯蓄率は一様ではない。ドイツ/オランダ/オーストリアは大幅に上昇するが、フランスは横ばいで、ギリシャ/ポルトガルなどは低下する(※詳細省略)。

・一方固定資本形成率はコンドラチェフ・サイクルに基づくと2037年に上昇に転じる(第2章5節)。もっともコンドラチェフ・サイクルより周期が短いジュグラー・サイクル(設備投資循環)は2037~40年/2046~50年、クズネツク・サイクル(建設投資循環)は2040~47年が下降局面のため、固定資本形成率は2050年まで低下する。

・ユーロ圏は対外純債務残高を抱えるが、2012年以降の経常黒字により縮小している。そのため早い段階で発展段階説の③成熟債務国から④未成熟債権国に転じる。もっともユーロ圏は貿易・サービス収支/所得収支が黒字で、⑤成年債権国に移行する要件を備えている。

<7.日本は成年債権国に移行中>

・日本は1981年以降経常黒字で、2018年1741億ドルでドイツ(2908億ドル)に次ぐ。貿易収支は1960年代半ばから黒字だったが、2011年に赤字に転じる。しかし世界最大の対外純資産残高による所得収支の黒字が、貿易・サービス収支の赤字を大きく上回る。そのため日本は発展段階説の④未成熟債権国から⑤成年債権国の移行期にある。

○経常黒字国から赤字国への転換
・日本は2020年代後半から経常赤字に転換する。2050年にはGDP比マイナス5.5%まで低下する。日本の少子高齢化は突出しており、貯蓄率の低下が経常収支を激変させるかもしれない。

・貯蓄率は1980~2018年の実績から短期の景気循環要因を取り除き線形トレンドを求めている(※説明が簡素になった)。日本の貯蓄率は年0.16ポイント低下すると想定される。これは移民受け入れを含む労働市場改革により極端な低下が避けられるが前提だ。
・政府は労働力不足解消のため高齢者・女性の労働市場参入を支援しているが、これは貯蓄率に反映されない(※効果が小さい?)。この政府による労働力確保対策は米国・ユーロ圏の推計にも適用している。ただ年0.16ポイントの低下はユーロ圏(年0.06ポイント)/米国(年0.1ポイント)より大きく、日本は黒字縮小・赤字拡大を避けられない。

・第2章3節の日本の固定資本形成率は米国と同様に公共投資などの公共部門を含んでいない。2018年時点公共部門を含んだ総固定資本形成率は8ポイント高かった。そのため本章の予測は民間部門のみの固定資本形成率に7ポイント上乗せし、経常収支を推計している。

○成熟債権国への移行
・日本の固定資本形成率は緩やかに上昇するが、2030年頃は低下する。これはクズネツク・サイクル(建設投資循環)の下降局面による。2030年代後半、クズネツク・サイクルが上昇局面になり、固定資本形成率が上昇し、経常赤字が拡大する。
・日本は世界最大の対外純資産残高を有し、安定した所得収支を得る発展段階説の④未成熟債権国だ。しかし予測期間において経常収支が均衡する⑤成年債権国に移行する(※これは経常赤字が拡大する2040年頃かな)。2011年以降貿易収支が赤字になるケースが見られる。一方サービス収支はインバウンドにより赤字幅を縮小している。しかし2050年までの経常収支の大幅の悪化で⑤成年債権国からさらに⑥成熟債権国に移行する可能性がある。

第6章 相対価格で世界経済を捉える

<1.ロストウの相対価格説>

○相対価格の循環メカニズム
・ウォルト・ホイットマン・ロストウ(※1916~2003年)は『大転換の時代』(1982年)でコンドラチェフ・サイクルを再検討した。彼は相対価格(=工業製品の価格/農産物・原材料の価格)の変動に着目する。彼は「農産物・原材料の産出において生産要素(労働力など)を増やすと1単位当たりの生産は減る(収穫逓減)。逆に工業製品は生産要素を増やすと1単位当たりの生産は増える(収穫逓増)」とした(※農産物・原材料の産出でも機械化などであれば、生産性は高まりそうだが)。また「経済が拡大すると工業製品の生産に原材料の供給が追いつかず、原材料価格が相対的に上昇する(※相対価格の下落)。技術進歩により工業製品の生産性が高まると、原材料が不足し価格が高騰し、経済が危機的になる(※これも相対価格の下落)。経済が停滞すると農産物・原材料も工業製品も需要は減少する。しかし農産物・原材料(原油、石炭、小麦など)は工業製品よりの生産調整が難しいため、原材料価格が相対的に下落する(※相対価格の上昇)。そして原材料価格が十分下落すると、経済は上昇に転じる」とした。※相対価格の下落期は第1次産業(鉱業を含む)が第2次産業(鉱業を除く)より優位な時期で、供給不足/景気拡大の時期かな。
・つまり彼は相対価格は長期的な波動を形成するとした。ただし相対価格は凶作/景気変動/戦争/技術革新の影響で変動すると認識していた。

○ロストウのコンドラチェフ・サイクル
・彼は相対価格から過去2世紀(1770~1977年)のコンドラチェフ・サイクルを見出そうとする。相対価格が上昇あるいは高い時期を、1790~1815年/1848~73年/1896~1920年/1936~51年/1972~77年とした(※景気の下降局面だな)。彼のコンドラチェフ・サイクルは1920年まではコンドラチェフ・サイクル(1926年発表)と一致する。しかしその後は多くの研究者が発表したコンドラチェフ・サイクルと異なる。図は相対価格(=工業製品価格/1次産品価格、貿易統計より)とロストウのコンドラチェフ・サイクル(※以下ロストウのサイクル)と一般的なコンドラチェフ・サイクル(※以下一般的なサイクル)を示す。

○第5波の上昇局面は20世紀末まで
・1920年までは両サイクルは一致する。その後ロストウのサイクルは下降局面(1917~32年)/上昇局面(1932~51年)とし、一般的なサイクルの下降局面(1920~50年)と一致しない。1950~70年は原材料価格の安定と工業製品価格の上昇で相対価格は上昇し(※1950~70年下降局面)、1970年以降は石油危機などで相対価格は下落する。
・彼は1978年に執筆しており、その後相対価格はどうなったのか。1981年原材料価格の高騰が収束し、相対価格は上昇に転じる(※1970~81年上昇局面。石油ショックで下降局面に思えるが)。ところが相対価格は1986年に早くも下落に転じ、2012年にボトムを付ける(※1981~86年下降局面。1981~2012年上昇局面)。

・改めて相対価格のサイクルを見ると、ボトムは1917年・1951年・1981年・2012年で、間隔は34年・30年・31年だ。これはコンドラチェフ・サイクルの40~70年と比べ、大幅に短い。

<2.交易条件は相対価格の代理変数か>

○交易条件は構造変化に注意
・ロストウは相対価格の代理変数として「交易条件」を用いた。交易条件は1国の輸出入の交換比率(=輸出価格/輸入価格)だ。工業国であれば原材料を輸入し、工業製品を輸出するため、相対価格に近くなる。英国は原材料(除く石炭)を輸入し、工業製品を輸出したため、彼は世界の相対価格の代理変数として英国の交易条件を用いた。
・そこで交易条件が相対価格の代理変数になるかを英国で検証する。1930年以前の相対価格は貿易統計から、以降は卸売物価統計から算出した。1850~1970年は相対価格と交易条件の変動が一致し、代理できる。ところが1970年以降は交易条件の変動を認識しづらい。これは英国が北海油田を開発し、資源国の側面を持ったためと考えられる。

○交易条件を用いた理由
・彼が交易条件を用い理由は、交易条件のデータが長期間存在するからだ(1698年から存在)(※詳細省略)。
・交易条件は1711年・1750年・1802年がピークで、間隔は39年・52年で、これはコンドラチェフ・サイクルの40~70年と合致する。これらのピークはスペイン継承戦争(1701~14年)の終盤やオーストリア継承戦争(1740~48年)の直後で、戦争の影響が考えられる。

○1つの長期波動に2つの相対価値のサイクル
・次に産業革命後のコンドラチェフ・サイクルと相対価格・交易条件のサイクルを比較する。彼は「相対価格はコンドラチェフ・サイクルに逆相関する」とした。ところが1881~1920年だけは逆相関だが、他の期間(1790~1881年、1920~)では1つのコンドラチェフ・サイクルの上昇局面あるいは下降局面が、1つの相対価格・交易条件のサイクルに対応している。

<3.米国経済30年周期説>

○想定外だった1940年以降の卸売物価指数
・相対価格・交易条件のサイクルはコンドラチェフ・サイクルより短く、1790年以降は1つのコンドラチェフ・サイクルに2つの相対価格・交易条件のサイクルが含まれている。そこで物価とコンドラチェフ・サイクルの関係を確認する。1926年コンドラチェフは論文「景気変動の長波」でコンドラチェフ・サイクルを発表するが、抽出するのに物価/利子/賃金/貿易額/鉱物産出額などを用いた。そしてこれらの指数を、トレンドが存在しない第1グループとトレンドが存在する第2グループに分けた。大半の指数を第2グループに含めたが、物価はトレンドが存在しない第1グループに含めた。それは当時は物価に上昇トレンドがなかったからだ。

・図は米国と英国の卸売物価指数を示す(※元資料の説明省略)。英国の第1波は1789年(ボトム)-1814年(ピーク)-1849年(ボトム)、第2波は1849年-1873年-1896年、第3波は1896年-1920年-1939年となり、レンジ内で推移している。ところが1940年代以降は上昇トレンドを続けている。彼は上昇トレンドを持つ貿易量は人口で除している。物価も何らかの調整が必要だった。
・そこで卸売物価指数の前年比(インフレ率)を図にすると、1940年以降も循環を確認できる。英国だと1797年・1835年・1856年にピークになり、しばらく期間を開けて1916年・1944年・1978年・2009年にピークになる。19世紀後半を除いて約30年周期だ。
※英国の相対価格・交易条件(1917年・1951年・1974年・2011年がボトム)とインフレ率(1916年・1944年・1978年・2009年がピーク)を比較すると、逆相関だな。インフレ時は供給不足で農産物・原材料が相対的に高騰するのは当然か。

・1987年ラビ・バトラがこのインフレ率のサイクルを『マネー・インフレ・大恐慌』で発表している。彼は社会は、戦士の時代/知識人の時代/資本家の時代と遷移するとした「社会循環法則」を唱える(※最後に労働者の時代があるみたい)。そして今の資本家の時代は、貨幣供給が株式・公債・不動産・その他の生産手段を支配する資本家の運命を左右するとした。そして彼は貨幣を唯一の変動の原因とした。
・図は米国のマネーストックと生産者物価指数(インフレ率)を示す。1860年代の南北戦争に続く20年間を除き、30年周期の貨幣増加が見られる。またインフレ率は貨幣増加と同じサイクルを示している。※マクロ経済は金融政策に大きく影響し、周期的かな。

・このインフレ率とコンドラチェフ・サイクルの関係を研究したのがブライアン・ベリーだ。彼はこの研究の前に都市部への人口移動を研究し、その中で経済成長率と都市の人口集中率に長期サイクルがある事を見出した。彼は「社会循環法則」をバックボーンにするバトラを批判した(※詳細省略)。

○インフレ率と相対価格の30年サイクル
・彼はバトラを批判したが、水準ではなく変化率に焦点を合わせる手法はバトラそのものだ。彼は『景気の長波と政治行動』(1995年)でインフレ率と貨幣増加率のグラフを示した。これはバトラの30年周期と同様なのに、彼はコンドラチェフ・サイクルと同じ60年周期を唱えた。つまり彼は最初20年掛けて上昇し、急激に下げ、再び上昇するが最初のピークを超えられず、再度下がるとした。要するに2つの30年サイクルで1つの60年サイクルとした。

・ではインフレ率の30年サイクル、相対価格・交易条件の30年サイクル、ロストウのコンドラチェフ・サイクルはどんな関係なのか。図の上段は米国の原材料価格と工業製品価格の伸び率(インフレ率)、下段は相対価格(=工業製品価格/原材料価格)を示す。上段の原材料価格と工業製品価格のインフレ率は30年周期で、かつ原材料価格の方が変動が大きい(※インフレ時、原材料価格のインフレ率がさらに高い。逆にデフレ時、原材料価格のインフレ率がさらに低い)。したがってインフレ時に相対価格はボトム、デフレ時にピークの30年周期になる。
・ロストウは相対価格の循環からコンドラチェフ・サイクルを導こうとしたが、これには無理があった。ただし2つの相対価格の循環が1つのコンドラチェフ・サイクルに対応すると考えられる。

<4.相対価格で見る英米日中印>

○2041年まで続く英国の上昇
・相対価格は工業製品価格を第1次産品価格で除す。第1次産品の開かれたマーケットがあれば、相対価格は各国で大きな違いはないと考えられる。図は英米日中印の相対価格を示す。

・英国は1873年大恐慌があり(※この恐慌は知らなかった。英国衰退の要因みたい)、1877年相対価格はボトムになる(これは異例)。不況は続き、1895年相対価格はピークを付ける。20世紀に入り第1次世界大戦に向けてインフレになり、2017年相対価格はボトムになる。第2次世界大戦後もモノ不足でインフレになり、2051年相対価格はボトムになる。他に相対価格が低下した時期として、石油危機による1974~1984年、原油価格高騰による2011年がある。
・ここからも1つの相対価格のサイクルが1つのコンドラチェフ・サイクルの上昇局面あるいは下降局面とする事ができる。英国は1917~51年がコンドラチェフ・サイクルの下降局面、1951~74年が上昇局面、1974~2011年が下降局面と推定される。1974年の相対価格の谷は1984年としても良い。そして2011年からの上昇局面は2041年まで続く。

○相対価格から見る米日中印のコンドラチェフ・サイクル
・次に米国を見る。米国は最後まで第1次世界大戦に参戦せず、第1次産品の価格上昇は抑えられ、その後も価格低下は抑えられた。一方大恐慌(1929~33年)における物価下落は英国より大きい。この様な揺れ幅に違いはあるが、インフレ率(※相対価格)の転換点は英国と一致する。
・米国は1917~48年がコンドラチェフ・サイクルの下降局面、1948~73年が上昇局面、1973~2008年が下降局面と推定される。そして2008年からの上昇局面は2038年まで続く。

・同様に日本のコンドラチェフ・サイクルを推定すると、1893~1919年が上昇局面、1919~50年が下降局面、1950~80年が上昇局面、1980~2014年が下降局面、2014年からの上昇局面は2044年まで続く。最後に中国/インドを推定すると、中国は1989~2012年が下降局面、2012年からの上昇局面は2042年まで続く。インドは1989~2016年が下降局面、2016年からの上昇局面は2046年まで続く。

<5.交易条件で見る英米日中印>

・最後に各国の交易条件(=輸出物価/輸入物価)からサイクルを見る。工業国であれば原材料を輸入し工業製品を輸出するため、相対価格と交易条件のサイクルは近似する。※交易条件は資源産出が影響する。サイクルと言うより産業構造かな。

・英国は北海油田の開発により相違がある。相対価格は1999年にピークになるが、交易条件は2006年がピークになる。原油価格の上昇が産出価格の上昇を大きく上回り、交易条件に優位に働いた。英国の交易条件から見るコンドラチェフ・サイクルは1917~51年が下降局面、1951~74年が上昇局面、1974~2015年が下降局面と推定され、2015年からの上昇局面は2045年まで続く。
・米国はシェール革命により世界的な産油国になるが、輸出解禁は2016年でこの影響はまだ見られない。米国の交易条件から見るコンドラチェフ・サイクルは1926~51年が下降局面、1951~85年が上昇局面、1985~2008年が下降局面と推定され、2008年からの上昇局面は2038まで続く。
・日本の交易条件から見るコンドラチェフ・サイクルは1914~50年が下降局面、1950~83年が上昇局面、1983~2012年が下降局面と推定され、2012年からの上昇局面は2042年まで続く。※中国/インドは省略。

・相対価格と交易条件のサイクルの違いは小さい。本来は相対価格に着目すべきだが、英国の様に石油生産により交易条件のサイクルが伸びる。これはコンドラチェフ・サイクルの上昇局面の延長を示唆する。

第7章 GDP・実質成長率・1人当たりGDPで見る経済覇権

<1.GDPの変遷>

○経済力の変動が国際秩序を変える
・米ソ冷戦が終結し、今は米中貿易摩擦などの覇権争いが見られる。覇権の波はジョージ・モデルスキーが『世界システムの動態』(1991年)で示している(第1章3節)。そこでは島国性/海上権力を重要な要素とし、大国は安定的・開放的な社会や主導的な経済を有するとした。そして主導的な経済がもたらす巨額な利潤により、世界を舞台にする事業に乗り出し、世界的な問題の責任を負うとした。またA・F・K・オーガンスキーは、国際秩序の変動は経済力の変動で、それは工業化の段階の違いによるとした。先に工業化した国は他を圧倒し、国際秩序を築く。ところが後から工業化する国に追い越され、この経済力の逆転が国際秩序の変化になるとした。

○紀元1年から1950年までのGDP
・GDPは国力を測る重要な指標だ。2003年アンガス
・マディソン(※1926~2010年)は紀元1年~1950年までの各国のGDPを発表した(※図あり)。紀元1年ではインド32.9%/中国26.2%で大半を占めた。1000年ではインド28.9%/中国22.7%で依然大半を占める。1700年ではインド/中国/西欧・米国が同水準になる。1820年では中国が32.9%で最大になるが、アヘン戦争などで低下する。1870年では産業革命により西欧・米国が逆転する。※日本については省略。
・同じく彼の1人当たりGDPを見ると(※図あり)、紀元1年ではインド/中国/西欧で差はない。1000年では中国/インドが西欧を上回るが、1500年には西欧が逆転し、産業革命により差を広げる。米国は1700年では中国/インドを下回るが、1820年では両国を逆転し、1870年に西欧も追い越し、差を広げる。※日本については省略。

<2.覇権交代前後のGDP>

○1900年頃、米国は1人当たりGDPで英国を逆転
・英国から米国への覇権交代は1900年頃と考えられる。モデルスキーは『世界システムの動態』で英国から米国への覇権交代を2014年とした(第1章3節)。一方イマニュエル・ウォーラーステインは『長期波動』(1992年)で、1897~1913・20年は「覇権への躍進期」(A1)で激しい対立があり、その後(~1945年)の「覇権の獲得期」(B1)で覇権が交代するとした。P・テミン/D・バインズは『リーダーなき経済』(2014年)で、「大恐慌前、英国が失った主導権を米国が引き継げなかった」とした。キンドルバーガーは「ロンドンでもなく、ニューヨークでもない」(2009年)とし、覇権の移行期とした。

・この時期(1820~1930年)の各国のGDPが図の上段だ。1820年英国に迫ったのがドイツで、GDPは英国の74%になり、1830年に88%に迫るが、その後は後退する(※因みにプロイセン王国は1701~1918年)。次に迫ったのが米国で、1860年代に英国の85%に迫り、1872年英国を超え、その後引き離す。図の下段が各国の1人当たりGDPだ。1820年米国の1人当たりGDPは英国の74%だったが、1880年代に接近し、1901年に初めて超え抜きつ抜かれつになり、1918年以降は米国優位になる。

○第2次世界大戦後の経済力
・第2次世界大戦後は「米国の時代」になる。1960年以降の各国のGDPが図だ。米国は「黄金の60年代」になるが、日本/ドイツ/フランスなどの成長が速く、シェアは低下する。リーマン・ショック直後は最低だった1995年(※ITバブルが起きる前かな)を下回るが、2012年以降は持ち直している。
・日本は1950・60年代に高度成長し、1967年英国・フランスを抜き、翌年西ドイツを抜き、世界第2位になる。1970年代に成長は鈍り、1990年代後半に成長は緩やかになる。世界シェアは1994年まで上昇し(18%)、以降は低下している。対米で見ると、1970年代後半4割、1980年代後半6割、1994年7割まで迫るが、以降低下している。
・中国は大躍進政策・文化大革命により1970年代後半まで成長は緩やかだったが、1978年改革開放が転機になる。1990年代に成長が速まり、2010年日本を抜いて世界第2位になる。2018年世界シェアは16%、対米では66%になっている。ユーロ圏は2008年米国に迫るが、リーマン・ショック/金融危機により規模もシェアも低下している。インドは開放政策により、1990年代から成長し、シェアを拡大している。

・米国は規模は世界最大だが、シェアは低下している。日本は貿易摩擦で米国に退けられた。今は米中摩擦が激化している。

<3.固定資本形成率による長期予想>

○中国のGDPが米国を上回る
・注目されたのがゴールドマン・サックスが発表した世界経済見通しだ(2003年)。経済発展が目覚ましいブラジル/ロシア/インド/中国をBRICsと名付けた。2039年BRICsがG6(米国、日本、ドイツ、フランス、イタリア、英国)を経済規模で上回るとし、2041年中国は経済規模で米国を上回るとした。国際機関でも経済協力開発機構(OECD)が『長期展望』(2012年)で中国が米国を上回るとしている。

○労働・資本・生産性から予測
・これらの長期予測は生産関数から推計される。生産関数は生産要素(労働、資本など)と生産性から導かれる。2015年林敏彦と永濱利廣・星野卓也が長期予測している。林は人口とその他の要因(資本ストック、国土面積、技術進歩、政治的効率性)で生産関数を設定した(※詳細省略)。一方永濱・星野は生産関数を設定していないが、生産年齢人口の伸びと「人口ボーナス指数」(=生産年齢人口/従属年齢人口、※従属人口指数の逆数)から成長率を推計した。
・ただ生産要素として労働力/資本ストックを用い、それと全要素生産性から成長率を予測するのが一般的だ。労働力は就業者数と就業時間の積になる。資本ストックは稼働資本ストックを用い、将来については設備投資でこれを補正する。生産性は労働投入/資本投入の実績から求め、将来については補正する。

○固定資本形成率から予測
・本書では労働・資本・生産性より、世界・日本・米国・英国・ユーロ圏・中国・インドのGDPを2050年まで予測する(※成長率を求め、それからGDPを推計かな)。労働投入は国連の「人口推計」の生産年齢人口を用いる。資本ストック・全要素生産性は固定資本形成率を用いる。固定資本形成から資本ストックの消耗分を除くと資本ストックの伸びと連動する(※図あり)。固定資本形成率は第2章で説明したバンドパス・フィルターを用いる。※さらに推計方法の説明が続くが省略。

<4.2030年 中国1位、米国2位>

○揺れる中国への期待・警戒感
・2003年ゴールドマン・サックスが2041年に中国が経済規模で米国を上回ると発表する。ところが中国の成長が速まり、2007年の改訂で2027年に逆転すると修正する。ところが成長は鈍化し、中国への期待・警戒感が揺らいでいる。

○中国の成長は鈍化するが、2030年に逆転
・生産年齢人口/固定資本形成率でGDPを予測すると、中国は2030年に米国を上回る。中国経済は減速し、生産年齢人口も減少している。労働投入は鈍化しても生産性の低い部門(農業など)から生産性の高い部門への移動があれば成長は保てる。この流れが止まる事を「ルイスの転換点」と呼ぶが、中国は2010年頃に迎えたと考えられる。日本は1970年頃に「ルイスの転換点」を迎えた。

・中国の長期波動は2011年がピークで、固定資本形成率を下げている(第2章6節)。資本投入・資本蓄積は減少し、生産性の伸びも鈍化している。中国の成長率は2010年代は10.2%だったが、2020年代は7.2%に低下する(※直近は5%)。一方米国は生産年齢人口の伸びは鈍化するが、長期波動が上昇局面(2008~34年、第2章4節)で、成長率は2010年代は4.0%、2020年代は4.3%になる。2018年のGDPは米国20.5兆ドル/中国13.6兆ドルだが、2030年は米国33.9兆ドル/中国34.2兆ドルで逆転する。
・世界の成長率は2010年代3.8%/2020年代5.7%、GDPは2018年85.5兆ドル/2020年96.1兆ドル/2030年165.3兆ドルになる。2030年米国のシェアは20.5%、中国は20.7%で逆転する。

<5.2050年 インド1位、中国2位、米国3位>

○米国が再逆転
・2030年代になると、中国の生産年齢人口の減少が本格化し、2030年代はマイナス1.0%、2040年代はマイナス0.8%になる。長期波動は下降局面(2011~47年、第2章6節)で、固定資本形成は弱く、生産性の回復も期待できない。成長率は2020年代7.2%/2030年代3.6%/2040年代3.3%と低下する。一方米国は2030年代生産年齢人口は増加し、長期波動は上昇局面(2008~34年、第2章4節)で、成長率は2020年代4.3%/2030年代4.7%と上昇する。そのためGDPは2040年米国53.4兆ドル/中国53.1兆ドルで再逆転する。ところが米国は下降局面(2035年~)になり、2040年代の成長率は3.0%に鈍化し、GDPは2050年米国71.7兆ドル/中国75.1兆ドルで再々逆転する。
・世界の成長率は2030年代5.4%/2040年代4.6%、GDPは2030年165.3兆ドル/2040年286.3兆ドル/2050年475.8兆ドルになる。中国のシェアは2030年20.7%/2040年18.5%/2050年15.8%と低下する。米国のシェアも2030年20.5%/2040年18.7%/2050年15.1%と低下する。

○インドが中国・米国を上回る
・中国・米国に代わるのがインドだ。中国とインドは発展段階が異なる。中国は1978年に改革開放政策に転じ、高成長した。一方インドが改革開放政策に転じたのは1991年で、しかも段階的に行なった。この経済発展の遅れは成長余地だ。中国経済は成熟化したがインド経済は未成熟で、GDPの押し上げ余地が大きい。また中国の長期波動は下降局面(2011~47年、第2章6節)だが、インドは上昇局面(2032~59年、第2章7節)になる。
・インドの成長率は既に中国を上回り、中国が減速する2030年以降はさらに差が広がる。インドの成長率は2020年代8.8%/2030年代8.8%/2040年代9.3%と上昇する。GDPは2018年2.7兆ドル/2020年3.5兆ドル/2030年10.1兆ドル/2040年30.7兆ドル/2050年79.2兆ドルになる。2019年英国、2026年日本、2037年ユーロ圏、2049年米国、2050年中国を超える。
・インドのGDP世界シェアは、2018年3.3%/2020年3.6%/2030年6.1%/2040年10.7%/2050年16.6%と上昇する。順位は2030年中国/米国/ユーロ圏、2040年米国/中国/インド、2050年インド/中国/米国になる。

<6.実質成長率もインド、中国>

○先進国では米国が堅調
・リーマン・ショックで世界経済は落ち込むが、緩やかに回復している。実質成長率は2000年代2.8%、2010~18年2.9%となった。生産年齢人口と固定資本形成率から予測した今後の各国・地域の実質成長率は二分化した。上昇局面にある米国・日本・英国は上昇が速まる。日本の実質成長率は2010年代0.9%/2020年代2.3%、英国は2010年代1.9%/2020年代2.2%と上昇するが、その後は鈍化する(※2020年代までか)。米国は上昇局面(2008~34年)なので、実質成長率は2010年代2.2%/2020年代2.3%/2030年代2.7%と拡大が続く。

○インドは実質成長率も高い
・一方下降局面の中国・ユーロ圏・インドは成長が抑制される。ユーロ圏は下降局面(2013~37年、第2章5節)で、実質成長率は2010年代1.1%/2020年代1.4%/2030年代1.0%と低位に留まる。2040年代は上昇局面になり1.9%に上昇する。中国は下降局面(2011~47年)で、実質成長率は2010年代7.2%/2020年代4.3%/2030・40年代1.7%と低下する(※大減速だな)。インドは早めに上昇局面(2032~59年)に転じ、2020年代6.0%/2030年代6.0%/2040年代6.1%と推移する。
・世界の実質成長率は2010年代2.8%/2020年代3.2%/2030年代3.2%/2040年代2.6%と推移する(※詳細省略)。2020~50年の実質成長率はインド6.0%/中国2.6%/米国2.1%の順になる。2020~50年の1人当たり実質成長率はインド5.4%/中国2.7%/日本2.5%で、日本は3位に入る。

<7.インド・中国の1人当たりGDP>

○GDP1位インド
・2018年1人当たりGDPは中国9800ドル、インド2100ドルで依然低い。世界銀行は1人当たり国民総所得から、低所得国/下位中所得国/上位中所得国/高所得国に分類している。中国は上位中所得国、インドは下位中所得国に入っている。2050年GDPは1位インド、2位中国になる。各国・地域の1人当たりGDPの推移が表だ。インドは2018年2100ドル/2020年2500ドル/2030年6700ドル/2040年1.9万ドル/2050年4.8万ドルになる。2018年以降は年率10%で増える。一方中国は2018年9800ドル/2020年1.2万ドル/2030年2.4万ドル/2040年3.8万ドル/2050年5.4万ドルになる。2018年以降は年率5.6%で増える。

○米国は年率3%増加、日本は年率で上回る
・先進国の2010年1人当たりGDPは、米国4.9万ドル/日本4.5万ドル/英国3.9万ドル/ユーロ圏3.8万ドルだった。米国は2050年18.5万ドルで、2018年以降は年率3.4%で増える。2050年英国は13.3万ドル、ユーロ圏は11.2万ドルに増える。日本は2018年4.0万ドル/2020年4.2万ドル/2030年6.8万ドル/2040年10.2万ドル/2050年15.5万ドルになる。2018年以降、年率4.3%で増え、米国との差が縮まる。
・2050年のインド・中国の1人当たりGDPは米国の1/3~1/4、その他先進国の1/2になる。本章2節で英国から米国への覇権交代を説明した。1872年米国はGDPで英国を抜き、1918年1人当たりGDPで英国を抜いた。しかしインド・中国はその状況に達しない。

<8.英国は底堅い、ユーロ圏は低下>

○英国は底堅い
・英国は2000~28年が上昇局面で(第2章5節)、実質成長率は2010年代1.9%/2020年代2.2%/2030年代1.5%/2040年代1.2%と推移する。2020年以降の実質成長率は年率1.7%になる。英国のGDP世界シェアは2018年3.3%/2050年2.1%に低下する。2018年1人当たりGDPは2050年13.3万ドルになり、2018年以降は年率3.6%で増える。英国経済は総じて底堅い。

○ユーロ圏のシェアは半減
・ユーロ圏は2013~37年が下降局面で(第2章5節)、2020年以降の実質成長率は年率1.4%で、他の先進国を下回る。ユーロ圏のGDP世界シェアは1999年21.9%/2008年22.2%と米国に迫るが、以降低下し、2018年15.9%/2020年14.2%/2030年11.3%/2040年8.7%/2050年7.9%まで低下する。

<9.日本はシェア縮小も1人当たりGDPは健闘>

○総じて好転
・日本は2000~28年が上昇局面で(第2章3節)、実質成長率は2010年代0.9%/2020年代2.3%と上昇する。この期間の成長率は年率4.3%で増え、2020年代にデフレを脱却する(※このところインフレ率が上がっている)。
・2028年より下降局面になるが、実質成長率は2030年代1.5%/2020年代1.7%と底堅く推移する。2020年以降の実質成長率は年率1.8%になる。2020年以降の1人当たりGDPの実質成長率は年率2.5%で、米国・英国・ユーロ圏を上回る。成長率は2030年2.8%/2040年3.4%で、2020年以降の成長率は年率3.5%になる。これは2000~20年の年率0.3%を大幅に上回る。ただ日本のGDP世界シェアは2018年5.8%/2020年5.5%/2030年4.8%/2040年3.9%/2050年3.3%と低下する。一方1人当たりGDPは2050年15.6万ドルに達し、米国との差を縮める。

○FTA/EPAの拡大、米国との連携
・2020~50年日本経済は好転するが、GDP世界シェアは2050年3.3%に低下し、国際的な存在感が低下する。存在感を保つにはグローバル化・経済連携が欠かせない。自由貿易協定(FTA)・経済連携協定(EPA)の拡大や、米国との連携の強化・深化が重要になる。2050年GDPはインド・中国・米国の順になるが、米国+日本だとインド・中国を超える。

あとがき

・日本経済新聞社の堀口祐介から「各国のコンドラチェフ・サイクルが推計できるなら、経済覇権の話をやりましょう」と誘われたのが、本書の始まりだ。彼との付き合いは31年前の『89年・世界同時不況』から始まり、『先読み! 景気循環入門』『第3の超景気』も編集してもらった。

・本書は日本における景気循環論の父である篠原三代平(※1919~2012年)の業績に負っている。また長期波動論の第一人者・岡田光正の研究にも負っている。本書は三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所の4名による共同作品だ。マクロ経済・計量分析に詳しい鹿野達史が第2章(コンドラチェフ・サイクルの計測)・第7章(GDPから見る経済覇権)を担当した。日本経済の短期見通しをしている宮嵜浩が第4章(人口動態から見る経済覇権)・第5章(国際収支から見る経済覇権)を担当した。国際経済の短期見通しをしている福田圭亮が第3章(軍事力・科学技術力から見る経済覇権)・第6章(相対価格で世界経済を捉える)を担当した。そして嶋中雄二が序章・第1章(コンドラチェフ・サイクルと経済覇権)を担当した。